説明

クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法およびクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂並びにそれを含有するゴム組成物

【課題】本発明の目的は、樹脂の軟化点が110℃以下で、残存する未反応クレゾールが5%未満であり、さらに補強材との接着性、ゴムの硬度および転がり抵抗性について十分なゴム物性を有する加硫ゴムを提供することができるクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法およびクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂並びにそれを含有するゴム組成物を提供することにある。
【解決手段】 (A)クレゾールと(B)ホルムアルデヒド類とを(C)酸触媒の存在下、酸性下において反応させて(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を製造する方法において、(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルを添加する工程を含む製造方法で得られた(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を用いたゴム組成物により、補強材との接着性、ゴムの硬度が良好でかつ転がり抵抗性の低減された加硫ゴムが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)クレゾールと(B)ホルムアルデヒド類とを反応させる(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは(E)脂肪族多価アルコール類、および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルを含有した(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂およびそれを含有するゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造法としては、例えば、原料であるクレゾール、ホルムアルデヒド、蓚酸を仕込み、水還流条件下で反応進行させ、最後には200℃付近まで昇温して釜内に残留している水、ホルムアルデヒド、蓚酸、未反応のクレゾールを除去するという極めて簡便な製造方法であった(特許文献1)。
近年、環境汚染防止の観点から、残存する未反応クレゾールを5%未満とすることが望まれているが、特許文献1で製造された樹脂において、残存する未反応クレゾールを5%未満まで除去した場合、得られる樹脂の軟化点が120℃以上となる。
樹脂をゴムに十分に分散させるためには、樹脂の軟化点以上の温度で混練するのが好ましいが、120℃以上で樹脂とゴムとを混練するとゴムの架橋反応が起きる。従って、均一なゴム組成物を得るためには、軟化点を110℃以下に抑える必要があり、特許文献1の方法では残存する未反応クレゾールを5%未満まで除去することは実質的に困難であった。
【0003】
また、近年は安全性確保のための高制動性と耐久性に加えて、環境への配慮から省エネルギーに寄与するタイヤとして、転がり抵抗性が低減されたタイヤが求められているが、従来知られているクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂は、得られる加硫ゴムの転がり抵抗性は充分ではないため、補強材との接着性、ゴムの硬度が良好でかつ転がり抵抗性の低減された加硫ゴムが得られるゴム組成物の開発が強く要望されていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−201430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、樹脂の軟化点が110℃以下で、残存する未反応クレゾールが5%未満であり、さらに補強材との接着性、ゴムの硬度および転がり抵抗性について十分なゴム物性を有する加硫ゴムを提供することができるクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法およびクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂並びにそれを含有するゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、(A)クレゾールと(B)ホルムアルデヒド類とを(C)酸触媒の存在下において反応させて(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を製造する方法において、(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルを添加する工程を含む製造方法で得られた(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を用いたゴム組成物により、補強材との接着性、ゴムの硬度が良好でかつ転がり抵抗性の低減された加硫ゴムが得られることを見いだし、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、樹脂の軟化点が110℃以下で、残存する未反応クレゾールが5%未満であるクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂およびその製造方法、さらに当該樹脂を用いることにより補強材との接着性、ゴムの硬度および転がり抵抗性について十分なゴム物性を有する加硫ゴムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明のクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法を詳細に説明する。
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法における(A)クレゾールとしては、m−クレゾール単独やm−クレゾールとp−クレゾールを任意の割合に混合したもの、あるいは工業製品の混合クレゾールを用いることができる。
【0009】
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法における(A)クレゾール中のm−クレゾールの割合は、通常、30〜100重量%であり、好ましくは60〜100重量%である。また、p−クレゾールの割合は、通常、0〜70重量%であり、好ましくは0〜40重量%である。
【0010】
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法における(B)ホルムアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド(水溶液であるホルマリンを含む)、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどが挙げられる。中でも反応速度の観点から、特にホルムアルデヒドが好適に用いられる。 ホルムアルデヒド類の使用量は、特に制限されないが、前記クレゾールに対するモル比は0.6〜1.0が好ましい。より好ましくは、0.7〜0.95であり、さらに好ましくは、0.8〜0.9である。クレゾールに対するモル比が0.6を下回る条件で反応を行った場合は、収率が低下する傾向があり、一方、クレゾールに対するモル比が1.0より多い場合はゲル化する傾向がある。
【0011】
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法における(C)酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、蓚酸、酢酸等が使用される。酸触媒の使用量は、(A)クレゾール1モル当たり、通常、1×10-5〜1モルであり、1×10-4〜1×10-2モルが好ましい。(C)酸触媒のモル比が1×10-5より少ない場合は、触媒としての効果が充分に現れない傾向がある。一方、(C)酸触媒のモル比が1モルより多い場合は、ゲル化する傾向がある。
【0012】
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法において(A)クレゾールと(B)ホルムアルデヒド類とを(C)酸触媒の存在下、酸性下で反応させて(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を得る際の反応は、溶媒中で行うのが好ましい。反応溶媒としては、水あるいは、水と共沸し、水から容易に分液できる有機溶媒が好ましく用いられる。また、水と有機溶媒を併用してもよい。かかる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン等が挙げられる。これらのうち水単独が好ましい。
【0013】
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法において(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を得る際の反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜調整されるが、通常、10〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応時間は、通常1〜5時間、好ましくは2〜4時間である。
【0014】
本発明において(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルは(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を製造する際のどの段階において添加してもよいが、前記で得られた(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の反応マスに添加することが好ましい。反応マスに添加後、反応系内に存在するホルムアルデヒド、水、酸触媒を除去するため、一般的には常圧下で100〜200℃、好ましくは120〜160℃に上昇させ、クレゾール分が5重量%未満となるまで保温することによって、本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
本発明における(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルの添加量は、反応のどの段階で添加するかによって(D)中に含まれる(E)および/または(F)の量は増減することがあるが、通常、(A)クレゾールと(B)ホルムアルデヒド類との仕込み合計量を100重量部とした場合に1〜30重量部であり、好ましくは3〜25重量部、さらに好ましくは5〜20重量部である。
【0015】
本発明における(E)脂肪族多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられ、これらのなかでも、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール#400、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の常圧での沸点が200℃以上のものが好ましく、ジエチレングリコールがさらに好ましい。
【0016】
本発明における(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、式(1)
【化1】

(nは4〜10、R およびRは置換基を有してもよい炭素数4〜13のアルキル基またはアルコキシアルキル基であり、RとRは同一でも異なっていてもよい。)であらわされる化合物が挙げられる。具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等のジアルキルエステルやジアルコキシアルキルエステル等が挙げられ、さらに具体的には、アジピン酸ジブチルエステル、アジピン酸ジイソブチルエステル、アジピン酸ジブトキシエチルエステル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチルエステル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、アジピン酸ジイソノニルエステル、アジピン酸ジイソデシルエステル、アジピン酸ジイソトリデシルエステル、アゼライン酸ジブチルエステル、アゼライン酸ジイソブチルエステル、アゼライン酸ジブトキシエチルエステル、アゼライン酸ジブトキシエトキシエチルエステル、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、アゼライン酸ジイソノニルエステル、アゼライン酸ジイソデシルエステル、アゼライン酸ジイソトリデシルエステル、セバシン酸ジブチルエステル、セバシン酸ジイソブチルエステル、セバシン酸ジブトキシエチルエステル、セバシン酸ジブトキシエトキシエチルエステル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、セバシン酸ジイソノニルエステル、セバシン酸ジイソデシルエステル、セバシン酸ジイソトリデシルエステル、ドデカン二酸ジブチルエステル、ドデカン二酸ジイソブチルエステル、ドデカン二酸ジブトキシエチルエステル、ドデカン二酸ジブトキシエトキシエチルエステル、ドデカン二酸ジ2−エチルヘキシルエステル、ドデカン二酸ジイソノニルエステル、ドデカン二酸ジイソデシルエステル、ドデカン二酸ジイソトリデシルエステル等が挙げられる。
これら脂肪族ジカルボン酸ジアルキルエステルのうち、アジピン酸ジブチルエステル、アジピン酸ジイソブチルエステル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、アジピン酸ジイソノニルエステル、アジピン酸ジイソデシルエステル、アジピン酸ジイソトリデシルエステル、アゼライン酸ジブチルエステル、アゼライン酸ジイソブチルエステル、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、アゼライン酸ジイソノニルエステル、アゼライン酸ジイソデシルエステル、アゼライン酸ジイソトリデシルエステル、セバシン酸ジブチルエステル、セバシン酸ジイソブチルエステル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、セバシン酸ジイソノニルエステル、セバシン酸ジイソデシルエステル、セバシン酸ジイソトリデシルエステル、ドデカン二酸ジブチルエステル、ドデカン二酸ジイソブチルエステル、ドデカン二酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、ドデカン二酸ジイソノニルエステル、ドデカン二酸ジイソデシルエステル、ドデカン二酸ジイソトリデシルエステルが好ましく、アジピン酸ジブチルエステル、アジピン酸ジイソブチルエステル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、アジピン酸ジイソノニルエステル、アジピン酸ジイソデシルエステル、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、セバシン酸ジブチルエステル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、ドデカン二酸ジ(2−エチルヘキシル)エステルがさらに好ましい。
【0017】
本発明における(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されないが、具体的には、例えば、公知のクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂に(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルを添加して得られる樹脂や(A)クレゾールと(B)ホルムアルデヒド類とを(C)酸触媒の存在下において反応させて(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を製造する方法において、(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルを添加する工程を含む製造方法で得られた樹脂等が挙げられ、これらのうち、(A)クレゾールと(B)ホルムアルデヒド類とを(C)酸触媒の存在下において反応させて(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を製造する方法において、(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルを添加する工程を含む製造方法で製造された樹脂が好ましい。
【0018】
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂中の(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルの含有量は、1〜30重量%であり、5〜20重量%がさらに好ましい範囲である。(E)および/または(F)の含有量が1重量%未満であれば、軟化点の低減効果が認められない場合があり、30重量%を超えると架橋ゴムの硬度の減少、軟化点の降下に伴う製品ブロッキング等の問題を招く可能性がある。
【0019】
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂中に含まれる(A)クレゾールの残留量は、通常、5重量%未満、好ましくは3重量%以下である。
【0020】
(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量は、配合するゴム組成物の粘度およびヒステリシスロスの点から、通常、1,000〜6,000であり、さらには2、000〜5,000にするのが好ましい。
【0021】
本発明のゴム組成物はゴム100重量部に対して、(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を0.5〜10重量部(以下、ゴム100重量部あたりの配合成分の重量部をphrの単位で表す)の範囲で添加する。当該樹脂の添加量は1〜5phrが好ましく、2〜4phrが更に好ましい。
本発明のゴム組成物を調製する方法としては、例えば、本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とゴムとをバンバリーミキサー、ニーダ、2本ロール等を用いて、通常90〜120℃、好ましくは、100〜120℃で混練する方法等が挙げられる。
【0022】
本発明に適用されるゴムは、天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれ、それぞれ単独のゴムからなるものであっても、また2種以上のゴムのブレンド物であってもよい。
【0023】
本発明の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の接着対象である補強材としては、有機繊維や金属繊維等が挙げられ、有機繊維としては、例えば、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アラミド等が挙げられ、金属繊維としては例えば、スチール等が挙げられる。
【0024】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、通常ゴムに使用されている各種のホルムアルデヒド発生剤、すなわち加熱によりホルムアルデヒドを発生する化合物を、併せて使用することができる。
【0025】
本発明において必要に応じて用いられるホルムアルデヒド発生剤としては、ホルムアルデヒド受容体であるクレゾール系樹脂などに従来から使用されているものが好ましく用いられる。例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミンとホルムアルデヒドの縮合物やヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、ペンタキス(メトキシメチル)メチロールメラミン等のメラミンとホルムアルデヒドとメタノールの縮合物、さらにはヘキサメチレンテトラミンなどが用いられる。ホルムアルデヒド発生剤の配合量は、本発明の目的を阻害しない量であれば特に制限されないが、1〜10phrの範囲が好ましく、さらに好ましくは1〜6phrの範囲である。
【0026】
また本発明のゴム組成物は、必要に応じてさらに充填剤を含むことができる。充填剤としては、通常、ゴムに使用される充填剤、例えばカーボンブラックや、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、ガラス繊維などの無機充填剤が挙げられる。なかでもカーボンブラックを配合するのが好ましく、通常、ゴムに使用されているカーボンブラックの種類としては、SAF(Super Abrasion Furnace 超耐磨耗性)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace 準耐磨耗性)、HAF(High Abrasion Furnace 高耐磨耗性)、FF(Fine Furnace 微粒性)、FEF(Fast Extruding Furnace 良押出性)、GPF(General Purpose Furnace汎用性)、SRF(Semi Reinforcing Furnace 中補強性)、FT(Fine Thermal 微粒熱分解性)、MT(Medium Thermal 中粒熱分解)などが好ましい。充填剤の配合量は、補強性やゴムの硬度、発熱性、動的耐久性などの観点より、ゴム組成物中、20〜150phrの範囲が好ましい。
【0027】
本発明においてはまた、ゴムに通常使用されている各種ゴム薬品、例えば老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、加硫剤、架橋材、加硫促進剤、リターダー、しゃっ解剤、軟化剤、石油樹脂、滑材、可塑剤、粘着付与剤などを、必要に応じて併用してもよい。
【0028】
本発明のクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂は、ゴムと補強材との加硫接着において優れた接着性能を付与するものであり、ゴム製品、例えばタイヤの各種部材やその他のゴム製品に適用した場合に優れた効果を発揮する。そして本発明のクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を配合したゴム組成物は、補強材との加硫接着において良好な接着強度を示し、かつ、得られた加硫ゴムは、転がり抵抗性の指標となる60℃におけるヒステリシスロス(tanδ)が低いため、タイヤ、特にビート部やカーカス部のような、補強材で補強される部分に適用することができ、タイヤ業界で通常行われている方法により、成形、加硫工程を経て、タイヤを製造することができる。
【0029】
本発明のクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を配合したゴム組成物を用いて補強材との接触下で加硫するにあたっては、ベースゴムの種類や各種配合剤の種類によって適切な条件が採用される。加硫条件は、従来から一般に採用されているものでもよい。
【0030】
次に、本発明について実施例をもって詳述するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の例中、添加量ないしは含有量を表す%および部は、特にことわりがない限り、それぞれ重量%および重量部である。
【0031】
(クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の評価方法)
「樹脂中のm−クレゾール、p−クレゾール、
(E)脂肪族多価アルコール、(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステル含有量の測定」
樹脂1g、標品としてアニソール0.1gを、アセトン20mlに溶解させ、ガスクロマトグラフィー内部標準法(GC−IS法)により、樹脂中のm−クレゾール、p−クレゾール、(E)脂肪族多価アルコール、(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルの含有量(%)を測定した。
クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂のGCでの内部標準法(GC−IS)は以下の通り。
ガスクロマトグラフィー(GC)分析条件
装置;GC−14B(島津製作所製)
カラム;ガラスカラム(3mmφ×3m)
充填剤;FAPS 10%
検出器;FID
Range;10
キャリヤーガス;窒素
注入口温度 ;200℃
検出器温度 ;250℃
保持時間 ;45分(一定)
カラム温度 ;155℃(一定)
標準物質:アニソール

「重量平均分子量の測定」
樹脂15mgを、テトラヒドロフラン10mlに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。ちなみに、ポリスチレンを標準品として、製造時に添加した(E)脂肪族多価アルコールおよび(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルのピークを除いて重量平均分子量(Mw)を算出した。
クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂のGPC分析条件は以下記載の通り。
装置:HLC−8220GPC(東ソー製)
カラム; TSK ガードカラム SUPER HZ−L(東ソー製)
+TSK−GEL SUPER HZ1000(4.6mmφ×150mm)
+TSK−GEL SUPER HZ2500(4.6mmφ×150mm)
+TSK−GEL SUPER HZ4000(4.6mmφ×150mm)
検出器;RI
キャリヤー及び流速;テトラヒドロフラン 0.2ml/min
カラム温度 ;40℃
「軟化点の測定」
JIS K2207準拠
【実施例1】
【0032】
還流冷却器および温度計を備えた4ッ口フラスコに、(A)m−クレゾール100.0g(0.92モル)、(B)37%ホルムアルデヒド63.8g(0.79モル)および(C)蓚酸2水和物0.4g(0.003モル)、水9.0gを仕込み、内温を100℃に昇温後、同温で3時間保温させてクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂173.2gを得た。
【0033】
還流冷却器を分留器に取り替え、このクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂に(E)ジエチレングリコール10.8gを加え、145℃まで昇温、濃縮して、水、未反応クレゾール、ホルムアルデヒドおよび蓚酸を除くことによってクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−1)(軟化点:103℃、重量平均分子量:3,900)119.5gを得た。
このクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−1)について、樹脂中のm−クレゾール、p−クレゾール、ジエチレングリコール含有量、軟化点、重量平均分子量の測定結果について表1に示す。
【実施例2】
【0034】
還流冷却器および温度計を備えた4ッ口フラスコに、(A)混合クレゾール(m−クレゾール/p−クレゾールの重量比率:60/40)100.0g(0.92モル)、(B)37%ホルムアルデヒド43.7g(0.54モル)および(C)蓚酸2水和物0.4g(0.003モル)、水9.0gを仕込み、内温を100℃に昇温後、同温で3時間保温させてクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂153.1gを得た。
【0035】
還流冷却器を分留器に取り替え、このクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を145℃まで昇温、濃縮して、水、未反応クレゾール、ホルムアルデヒドおよび蓚酸を除いた後、(F)アジピン酸ジイソブチルエステル8.0gを加えることによってクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−2)(軟化点:100℃、重量平均分子量:2,200)86.3gを得た。
このクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−2)について、樹脂中のm−クレゾール、p−クレゾール、アジピン酸ジイソブチルエステル含有量、軟化点、重量平均分子量の測定結果について表1に示す。
【実施例3】
【0036】
実施例1において(E)ジエチレングリコール10.8gを加える代わりに(E)ジエチレングリコール18gを加える以外は実施例1と同様の操作を行い、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−3)(軟化点:92℃、重量平均分子量:3,700)126.7gを得た。
このクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−3)について、樹脂中のm−クレゾール、p−クレゾール、ジエチレングリコール含有量、軟化点、重量平均分子量の測定結果について表1に示す。
【実施例4】
【0037】
実施例1において(E)ジエチレングリコール10.8gを加える代わりに(E)ジエチレングリコール7.2gと(F)アジピン酸ジイソブチルエステル7.2gを加える以外は実施例1と同様の操作を行い、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−4)(軟化点:98℃、重量平均分子量:3,800)123.1gを得た。
このクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−4)について、樹脂中のm−クレゾール、p−クレゾール、ジエチレングリコール含有量、アジピン酸ジイソブチルエステル含有量、軟化点、重量平均分子量の測定結果について表1に示す。
【0038】
(比較例1)
還流冷却器および温度計を備えた4ッ口フラスコに、(A)m−クレゾール100.0g(0.92モル)、(B)37%ホルムアルデヒド63.8g(0.79モル)および(C)蓚酸2水和物0.4g(0.003モル)、水9.0gを仕込み、内温を100℃に昇温後、同温で3時間保温した。
【0039】
その後、還流冷却器を分留器に取り替え、145℃まで昇温、濃縮し、水、未反応クレゾール、ホルムアルデヒドおよび蓚酸を除くことによってクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−5)(軟化点:129℃、重量平均分子量:3,400)109.2gを得た。
このクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−4)について、樹脂中のm−クレゾール、p−クレゾール、軟化点、重量平均分子量の測定結果について表2に示す。
【0040】
(比較例2)
還流冷却器および温度計を備えた4ッ口フラスコに、比較例1で得られたクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−6)50gを仕込み、m−クレゾール2gを添加後、140℃まで昇温後、同温で0.5時間保温した冷却することによってよってクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−5)(軟化点:110℃、重量平均分子量:3,400)53.8gを得た。
このクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−6)について、樹脂中のm−クレゾール、p−クレゾール、軟化点、重量平均分子量の測定結果について表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
実施例1〜4および比較例1〜2で得られたクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂(D−1〜D−6)を用い、表3に示した配合処方のゴム組成物(未加硫)を調製し、前記ゴム組成物を加硫して得られた加硫ゴムの物性を表4に示した。
【0044】
(加硫ゴムの作成方法)
バンバリーミキサーとして(株)東洋精機製作所製の60mlラボプラストミルを用い、設定温度100℃で、上記配合処方に基づき、天然ゴムに、カーボンブラック、酸化亜鉛、老化防止剤、ステアリン酸コバルトを投入し、15分混練で作成した。
【0045】
次にこの配合物をロールに移し、設定温度60℃で、上記配合処方に示した硫黄、加硫促進剤、メトキシ化メチロールメラミン樹脂および供試共縮合物を添加し混練した。
【0046】
(未加硫ゴム組成物および加硫ゴムの試験方法と評価)
未加硫ゴム組成物の粘度(ML1+4(125℃))の測定:ASTM−1646に準拠して実施。結果は、比較例1の値を100としたときの相対値で表す。値が小さいほど加工性が良好である。
接着性:加硫前のゴム配合物を未処理ナイロンコードと接触させて加硫したときの接着性を、ASTM D 2138に記載のHテストにより評価した。接着性試験の結果は、12個の試験片から得られた平均値で示した。使用した未処理ナイロンコードは1890d/2であり、比較例1の値を100としたときの相対値で表す。値が大きいほど接着性が良好であり、相対値が97以下であることが望ましい。
硬度:JIS K 6301に準拠し、厚さ12.7mm、半径14.5mmの直円柱状試料を用いて、スプリング式硬さ試験(A型)にて硬度を測定した。結果は、比較例1の値を100としたときの相対値で表す。値が大きいほど剛性が良好である。
耐破壊特性の測定:JIS K6301−1995の3号試験片を加硫により作成し、この試験片の両端を引っ張り、破断するまでに入力したエネルギーを測定した。結果は、比較例1の値を100としたときの相対値で表す。値が大きいほど耐破壊特性は良好であり、相対値が103以上であることが望ましい。
動的弾性率およびヒステリシスロス(tanδ)の測定:レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を使用し、温度60℃、歪2%、周波数15Hzで行なった。 結果は、比較例1の値を100としたときの相対値で表す。動的弾性率は値が大きいほど動的状態における強靭化の効果が大きく、ヒステリシスロスは値が小さいほど耐発熱性が良好であり、動的弾性率は相対値が103以上、ヒステリシスロス(tanδ)は、相対値が97以下であることが望ましい。
る。
【0047】
【表3】

天然ゴム:RSS#3、カーボンブラックN330:東海カーボン社製、
ノクラック6C:老化防止剤。大内新興化学社製、
ノクセラーDZ:加硫促進剤。大内新興化学社製、
SKL507A:田岡化学工業社製
【0048】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)クレゾールと(B)ホルムアルデヒド類とを(C)酸触媒の存在下において反応させて(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を製造する方法において、(E)脂肪族多価アルコール類および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルを添加する工程を含むことを特徴とする(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の製造方法。
【請求項2】
樹脂100重量部中の(E)脂肪族多価アルコール類、および/または(F)脂肪族ジカルボン酸ジエステルの含有量が1〜30重量部である(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂。
【請求項3】
天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びエチレン・プロピレンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種からなるゴム100重量部に対して、請求項2記載の(D)クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂を0.5〜10重量部含有することを特徴とするゴム組成物。

【公開番号】特開2010−53161(P2010−53161A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216202(P2008−216202)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】