説明

クレーンの異常検出装置

【課題】接続コネクタを用いたカウンタウェイト重量の検出手法を採用したクレーンにおいて、検出異常の有無を自動的にチエックし確認するのに有効な技術を提案する。
【解決手段】コネクタ接続状態検出手段1からの信号を受けて各分割ウェイト31〜33の合計重量を検出重量として取得する検出重量取得手段を備えたクレーンZにおいて、搭載されたカウンタウェイト30の重量が反映された物理量を取得し該物理量に基づいて上記カウンタウェイト30の重量を演算重量として取得する演算重量取得手段を備え、検出重量と演算重量を対比することで、コネクタ接続状態検出手段1の異常判定を行なうように構成しているので、コネクタ接続状態検出手段1の異常判定が自動的に行なわれ、クレーンの作業上の安全性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、旋回台の後部にカウンタウェイトを搭載したクレーンにおける異常検出装置に関し、さらに詳しくは、カウンタウェイトの重量検出系の異常を検出する異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンのカウンタウェイトの重量を検出する手法として、クレーンを浮上支持するアウトリガに掛かる反力、即ち、アウトリガ反力に基づいて演算によって検出する手法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、特に、分割ウェイトを適数個積み重ねてカウンタウェイト全体としての重量を調整するものにおいては、各分割ウェイト間を接続する接続コネクタの接続状態に対応する信号に基づいて搭載されている分割ウェイトの総重量、即ち、カウンタウェイト重量を検出する手法も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−30911号公報
【特許文献2】特開2008−1444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これら両手法のうち、後者の接続コネクタを用いた手法にあっては、電気的な検出手法であることから、例えば、接続コネクタの接続誤り・接触不良、配線の断線・短絡等の原因によって誤検出が発生することを完全に排除することはできず、仮に誤検出が発生した場合、この誤ったカウンタウェイト重量に基づいてクレーンの作業性能が制御されることになり、クレーンの作業上の安全性の確保という点において看過できない重大な問題を生じることにもなりかねない。
【0006】
しかるに、このような接続コネクタを用いたカウンタウェイト重量の検出手法における検出異常の有無を自動的にチエックし確認するための有効な技術は未だ提案されておらず、現状では、オペレータがカウンタウェイトを直接視認にて確認する方法を採っている。
【0007】
しかし、このようなオペレータによる直接確認は、誤認等による二次的な問題を生じる恐れがあり、好ましいものとは言えない。
【0008】
そこで、本願発明は、接続コネクタを用いたカウンタウェイト重量の検出手法を採用したクレーンにおいて、検出異常の有無を自動的にチエックし確認するのに有効な技術を提案することを目的としている。
【0009】
さらに、正常に重量検出が行なわれていると判断された場合において検出された重量(検出重量)を基準とし、この検出重量と、接続コネクタに依らない他の検出手法によって演算取得される重量(演算重量)との異同を継続的に監視することで、上記他の検出手段を含む制御システム全体の異常の有無をチエックする技術を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0011】
本願の第1の発明では、車両21に搭載された旋回台22の後部に、分割ウェイト31〜33を積み重ねてカウンタウェイト30として使用するとともに、積み重ねられた上記分割ウェイト31〜33間において接続されるコネクタの接続状態を検出するコネクタ接続状態検出手段1からの信号を受けて上記各分割ウェイト31〜33の合計重量を検出重量W1として取得する検出重量取得手段Xを備えたクレーンにおいて、搭載されたカウンタウェイト30の重量が反映された物理量を取得し該物理量に基づいて上記カウンタウェイト30の重量を演算重量W2として取得する演算重量取得手段Yを備えるとともに、上記検出重量W1と上記演算重量W2を対比しこれらの異同に基づいて上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定を行なう第1異常判定手段13を備えたことを特徴としている。
【0012】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係るクレーンの異常検出装置において、上記物理量が、上記車両21を浮上支持するアウトリガ25〜28に掛かるアウトリガ反力、又はウェイト支持部29に発生する歪量、又は積み重ねられた上記分割ウェイト31〜33の上下方向又は横方向における位置であることを特徴としている。
【0013】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係るクレーンの異常検出装置において、上記コネクタ接続状態検出手段1が正常であると判定されたときの上記演算重量W2を記憶重量Wmとして記憶保持する記憶手段14を備えるとともに、上記記憶重量Wmと上記検出重量W1を受けてこれらの異同を監視することで、又は上記記憶重量Wmと上記演算重量W2を受けてこれらの異同を監視することで、上記検出重量取得手段X又は上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの異常判定を行なう第2異常判定手段15を備えたことを特徴としている。
【0014】
本願の第4の発明では、上記第1又は第2の発明に係るクレーンの異常検出装置において、上記コネクタ接続状態検出手段1が正常であると判定されたときの上記検出重量W1を記憶重量Wmとして記憶保持する記憶手段14を備えるとともに、上記記憶重量Wmと上記検出重量W1を受けてこれらの異同を監視することで、又は上記記憶重量Wmと上記演算重量W2を受けてこれらの異同を監視することで、上記検出重量取得手段X又は上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの異常判定を行なう第2異常判定手段15を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
(a)本願の第1の発明に係るクレーンの異常検出装置によれば、次のような効果が得られる。即ち、上記各分割ウェイト31〜33の合計重量を検出重量W1として取得する検出重量取得手段Xにおける上記コネクタ接続状態検出手段1は、該検出重量W1の取得についての基本情報を出力するものであり、且つここで取得される上記検出重量W1はクレーンの作業性能を規定する重要な制御要素であるため、該コネクタ接続状態検出手段1に異常が生じた場合には、これを迅速且つ的確に判定することが重要であるところ、本願の第1の発明に係るクレーンの異常検出装置によれば、上記検出重量W1と、該検出重量W1の検出系とは別の検出系において実際に搭載されているカウンタウェイト30の重量が反映された物理量に基づいて取得される演算重量W2とを上記第1異常判定手段13において対比して上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定を自動的に行なうものであることから、該コネクタ接続状態検出手段1の異常に起因するカウンタウェイト重量の誤検出、及びこの誤検出重量に基づくクレーンの作業性能の制御が未然に且つ確実に回避され、クレーンの作業上の安全性が向上する。
【0016】
(b) 本願の第2の発明に係るクレーンの異常検出装置によれば、上記演算重量W2が、上記車両21を浮上支持するアウトリガ25〜28に掛かるアウトリガ反力、又はウェイト支持部29に発生する歪量、又は積み重ねられた上記分割ウェイト31〜33の上下方向又は横方向における位置に基づいて取得されるが、上記アウトリガ反力の検出手段はクレーンの作業性能制御用に備えられているものであってこれを演算重量W2の演算に流用するものであり、また分割ウェイト31〜33の位置とか歪量は安価なセンサによって取得できるものであるところから、例えば、アウトリガ反力等の検出用に専用の、あるいは高価な検出手段を備える場合に比して、上記異常判定装置をより安価に提供することができる。
【0017】
(c) 本願の第3の発明に係るクレーンの異常検出装置によれば、上記第1異常判定手段13による上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定に止まらず、上記第2異常判定手段15によって、上記コネクタ接続状態検出手段1が正常であると判定されたときの上記演算重量W2を記憶重量Wmとして、該記憶重量Wmと上記演算重量W2の異同を監視することで、又は該記憶重量Wmと上記検出重量W1の異同を監視することで、上記検出重量取得手段X又は上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの異常判定をも行なうことから、クレーンの安全性がより一層高められる。
【0018】
また、上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定機能を、上記第2異常判定手段15における上記検出重量取得手段X又は上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの異常判定に利用することで、例えば、制御システムの異常判定用に専用機器を備える場合に比して、異常検出装置の低コスト化が更に促進される。
【0019】
(d) 本願の第4の発明に係るクレーンの異常検出装置によれば、上記第1異常判定手段13による上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定に止まらず、上記第2異常判定手段15によって、上記コネクタ接続状態検出手段1が正常であると判定されたときの上記検出重量W1を記憶重量Wmとして、該記憶重量Wmと上記検出重量W1の異同を監視することで、又は該記憶重量Wmと上記演算重量W2の異同を監視することで、上記検出重量取得手段X又は上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの異常判定をも行なうことから、クレーンの安全性がより一層高められる。
【0020】
また、上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定機能を、上記第2異常判定手段15における上記検出重量取得手段X又は上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの異常判定に利用することで、例えば、制御システムの異常判定用に専用機器を備える場合に比して、異常検出装置の低コスト化が更に促進される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明の第1の実施の形態に係るクレーンの異常検出装置の全体システム図である。
【図2】上記クレーンの異常検出装置の制御に係る機能ブロック図である。
【図3】上記クレーンの異常検出装置の制御フローチャートである。
【図4】本願発明の第2の実施の形態に係るクレーンの異常検出装置の制御に係る機能ブロック図である。
【図5】本願発明の第3の実施の形態に係るクレーンの異常検出装置の制御に係る機能ブロック図である。
【図6】本願発明の第4の実施の形態に係るクレーンの異常検出装置の制御に係る機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
A:第1の実施形態
図1には、本願発明の第1の実施形態に係る異常検出装置が備えられたクレーンZを示している。このクレーンZは、車体の前後左右にそれぞれアウトリガ25〜28を備え、クレーン作業に際しては該各アウトリガ25〜28によって浮上支持される車両21と、該車両21上に旋回動可能に搭載された旋回台22と、該旋回台22にその基端部が連結され上記旋回台22との間に配置した起伏シリンダ24によって起伏駆動される伸縮ブーム23を備えて構成される。
【0023】
また、上記旋回台22の後部に設けたウェイト支持部29には、所要個数の分割ウェイト31〜33を順次積み重ねて構成されるカウンタウェイト30が脱着可能に搭載されている。尚、この分割ウェイト31〜33のそれぞれには接続コネクタ34が備えられており、この接続コネクタ34の接続状態を確認することで、現在搭載されている分割ウェイトの種類と個数、即ち、カウンタウェイト30全体としての重量(カウンタウェイト重量)を知ることができる。
【0024】
一方、上記クレーンZは、クレーン作業に際してその作業性能が制御されるが、この作業性能の制御においては、現に搭載されているカウンタウェイト30の重量に関する情報が必要不可欠であり、係る情報を取得するために、上記各分割ウェイト31〜33に付設された接続コネクタ34の接続状態を検出するためのコネクタ接続状態検出手段1を設け、該コネクタ接続状態検出手段1によって上記各分割ウェイト31〜33の種類と個数を検出するようにしている。
【0025】
また、クレーンZの作業性能の制御においては、クレーン姿勢に関する情報も必要不可欠であり、係る情報を取得するために、上記各アウトリガ25〜28にはそれぞれアウトリガ反力検出手段2A〜2Dを備え該アウトリガ反力検出手段2A〜2Dによって各アウトリガ25〜28に掛かっている反力を検出している。さらに、上記伸縮ブーム3のブーム長さを検出するためのブーム長さ検出手段3と、該伸縮ブーム3の起伏角を検出するためのブーム起伏角検出手段4と、上記伸縮ブーム3に掛かる荷重を検出するためのブーム荷重検出手段5と、上記伸縮ブーム3の旋回角を検出するためのブーム旋回角検出手段6と、上記各アウトリガ25〜28の張出幅をそれぞれ検出するためのアウトリガ張出幅検出手段7を備えている。そして、これら各検出手段によって検出された検出値は、それぞれ検出値に対応した検出信号として次述の制御器10に入力される。
【0026】
「制御器10」
上記制御器10は、上記各検出手段1〜7のそれぞれから出力される検出信号を受けて異常判定を行ない、その結果を出力するものであり、その具体的内容は図2に示すブロック図の通りである。即ち、上記制御器10は、第1演算手段11と第2演算手段12と第1異常判定手段13と記憶手段14と第2異常判定手段15を備えて構成される。
【0027】
「第1演算手段11」
上記第1演算手段11は、上記コネクタ接続状態検出手段1からの上記接続コネクタ34の接続状態に関する接続状態信号「C1」を受けて、現在、上記旋回台2の後部に搭載されている分割ウェイト31〜33の種類と個数に基づいて、図示しないウェイトデータから現在搭載されている分割ウェイト31〜33の総重量(即ち、カウンタウェイト重量)を「検出重量W1」として取得し、これを検出重量信号「C11」として後述の第1の異常判定手段13へ出力する。尚、この第1演算手段11は、特許請求の範囲中の「検出重量取得手段X」に該当する。
【0028】
上記検出重量W1は、本来的には、上記クレーンZの作業性能の制御においてカウンタウェイト重量として用いられるものであるが、例えば、上記接続コネクタの接続誤り・接触不良、配線の断線・短絡等の原因によって上記コネクタ接続状態検出手段1に検出異常が生じていることも有り得るため、後述するように、上記第1の異常判定手段13において、上記検出重量W1が上記コネクタ接続状態検出手段1の検出異常に基づく誤った重量値であるかどうかが判断される。
【0029】
「第2演算手段12」
上記第2演算手段12は、上記アウトリガ反力検出手段2A〜2Dからの反力信号「C2」と、上記ブーム長さ検出手段3からのブーム長さ信号「C3」と、上記ブーム起伏角検出手段4からの起伏角信号「C4」と、上記ブーム荷重検出手段5からの荷重信号「C5」と、上記ブーム旋回角検出手段6からの旋回角信号「C6」と、上記アウトリガ張出幅検出手段7からの張出幅信号「C7」をそれぞれ受けて、現在のカウンタウェイト重量を演算にて取得しこれを「演算重量W2」とする。そして、この「演算重量W2」を、演算重量信号「C12」として上記第1の異常判定手段13に出力する。また、上記第2演算手段12からの演算重量信号「C12」は、後述の記憶手段14及び第2異常判定手段15にもそれぞれ入力される。尚、この第2演算手段12は、特許請求の範囲中の「演算重量取得手段Y」に該当する。
【0030】
「第1異常判定手段13」
上記第1の異常判定手段13は、上記第1演算手段11からの検出重量信号「C11」と、上記第2演算手段12からの演算重量信号「C12」を受けてこれらを比較し、検出重量信号「C11」に基づく「検出重量W1」と演算重量信号「C12」に基づく「演算重量W2」の異同を判断する。即ち、「検出重量W1」と「演算重量W2」の差分の絶対値が予め設定した設定値より小さい場合には、上記コネクタ接続状態検出手段1には検出異常は発生しておらず、該コネクタ接続状態検出手段1からの接続状態信号「C1」に基づく上記「検出重量W1」は信頼性のある適正なカウンタウェイト重量であり、この「検出重量W1」に基づいて上記クレーンZの作業性能の制御を行なっても問題ないものと判断する(即ち、「正常判断」)。
【0031】
これに対して、「検出重量W1」と「演算重量W2」の差分の絶対値が予め設定した設定値より大きい場合には、上記コネクタ接続状態検出手段1に検出異常が発生しており、該コネクタ接続状態検出手段1からの接続状態信号「C1」に基づく上記「検出重量W1」は信頼性の無い誤ったカウンタウェイト重量であり、この「検出重量W1」に基づいて上記クレーンZの作業性能の制御を行なうと問題が生じるものと判断する(即ち、異常判断)。
【0032】
そして、上記第1の異常判定手段13は、「正常判断」を行なった場合には、クレーンZの駆動手段16(クレーンZの駆動に係る全ての駆動手段を総称している)にその駆動を許容すべく駆動制御信号「C13」を出力する。これに対して、「異常判断」を行なった場合には、クレーンZの駆動手段16にその駆動を規制すべく駆動制御信号「C13」を出力するとともに、警報手段17に対して異常警報を行なわせるべく警報信号「C14」を出力する。
【0033】
また、上記第1の異常判定手段13は、「正常判断」を行なった場合には、後述の記憶手段14に対して、トリガ信号「C15」を出力するとともに、必要に応じてこれを次述の第2異常判定手段15に出力する。
【0034】
このように、上記第1の異常判定手段13により上記コネクタ接続状態検出手段1の検出異常の有無が判断されることで、該コネクタ接続状態検出手段1の検出値に基づく「検出重量W1」の信頼性が担保され、上記クレーンZの作業上の安全性が確保されるものである。
【0035】
「記憶手段14」
上記記憶手段14は、上記第1の異常判定手段13からトリガ信号「C15」を受けたとき、上記第2演算手段12から入力される「演算重量W2」を「記憶重量Wm」として記憶保持する。
【0036】
「第2異常判定手段15」
上記第2異常判定手段15は、上記第2演算手段12からの「演算重量W2」と、上記記憶手段14からの「記憶重量Wm」を受けて、これら両者の異同を継続的に監視する。そして、「記憶重量Wm」と「演算重量W2」の絶対値の差分が予め設定した設定値より小さい場合には、上記演算重量取得手段Yを含む制御システムには異常は発生しておらず、信頼性の高い正常な制御が行なわれているものと判断する(即ち、正常判断)。
【0037】
これに対して、「記憶重量Wm」と「演算重量W2」の絶対値の差分が予め設定した設定値より大きい場合には、上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの何れかに異常が発生しており、制御の信頼性が損なわれていると判断する(即ち、異常判断)。
【0038】
そして、上記第2異常判定手段15は、異常判断を行なった場合には、上記駆動手段16にその駆動を規制すべく駆動規制信号「C17」を出力するとともに、上記警報手段17に対して異常警報をさせるべく警報信号「C18」を出力する。
【0039】
このように、上記第2異常判定手段15によって上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの異常の有無が判断されることで、制御の信頼性が担保され、延いては上記クレーンZの作業上の安全性が確保されるものである。
【0040】
ここで、図3を参照して、上記制御器10による制御の流れを具体的に説明する。
【0041】
本制御は、オペレータによって操作されるクレーンZの電源スイッチのON、又は異常検出スイッチのONによって開始される(ステップS1〜ステップS2)。
【0042】
制御開始後、先ず、クレーンZが上記各アウトリガ25〜28によって浮上支持されたジャッキアップ状態であるかどうか、即ち、上記クレーンZがクレーン作業を行なう状態とされているか否かが判断される。ここで、ジャッキアップ状態ではないと判断された場合は、クレーン作業を行なう状態ではないため、カウンタウェイト重量の異常判定等を行なう必要がないためリターンし、ジャッキアップ状態とされるまで待機する。
【0043】
ステップS3において、ジャッキアップ状態であると判断された場合には、クレーン作業を行なう状態であって、カウンタウェイト重量の異常判定等を行なう必要があるため、以降の制御に移行する。
【0044】
先ず、ステップS4において、クレーンZの姿勢に関する情報を読み込む。即ち、伸縮ブーム23のブーム長さと起伏角と旋回角、該伸縮ブーム23に吊持されている荷重、及び上記各アウトリガ25〜28の張出幅を読み込む。
【0045】
次に、ステップS5において、上記コネクタ接続状態検出手段1から現在のコネクタ接続状態を読み込むとともに、上記各アウトリガ反力検出手段2A〜2Dから現在のアウトリガ反力を読み込む。
【0046】
次に、ステップS6において、コネクタ接続状態に基づいて、「検出重量W1」を取得する。また、ステップS7において、アウトリガ反力に、上記クレーンZの各姿勢情報を加味して、演算にて「演算重量W2」を取得する。
【0047】
次に、ステップS8において上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定を行なう。即ち、「検出重量W1」と「演算重量W2」の差分の絶対値を、予め設定した「設定値α」と比較し、「|W1−W2|>α」又は「|W1−W2|=α」である場合は、「検出重量W1」と「演算重量W2」との間に看過できないほどの差があり、この「検出重量W1」は信頼性が担保されない誤った値である、即ち、上記コネクタ接続状態検出手段1に検出異常が発生しており、該コネクタ接続状態検出手段1は正常に機能していない、と判断される。
【0048】
従って、この場合は、上記駆動手段16にはその駆動を停止させるべく駆動制御信号「C13」を出力するとともに、上記警報手段17には上記コネクタ接続状態検出手段1の検出異常の発生を報知させるべく警報信号「C14」を出力する(ステップS16)。
【0049】
これによって、クレーンZが、検出異常の発生した上記コネクタ接続状態検出手段1の誤検出に基づく「検出重量W1」によって作業性能が制御されるのが未然に且つ確実に防止され、上記クレーンZの作動上の信頼性が確保される。
【0050】
これに対して、「|W1−W2|<α」である場合は、「検出重量W1」と「演算重量W2」との間には大差はなく、「検出重量W1」は信頼性が担保された適正な値である、即ち、上記コネクタ接続状態検出手段1には検出異常は発生しておらず、該コネクタ接続状態検出手段1は正常に機能していると判断される。
【0051】
従って、この場合には、センサ9においてフラグFを「1」だけインクリメントし(即ち、F=1)、次にステップS10においてフラグFが「F=3」であるか否かを判断する。ここで、最初は、F=1であるため、ステップS4にリターンして、再度、ステップS4〜ステップS10の制御を繰り返す。そして、フラグFが「F=3」となった時点で、ステップS11へ移行する。
【0052】
即ち、「検出重量W1」と「演算重量W2」の差分の絶対値と、予め設定した「設定値α」との比較を三度行い、三度とも「|W1−W2|<α」であると判断されたときに初めて、「コネクタ接続状態検出手段1は正常に機能している」との最終判断を下すものである。この繰り返し制御によって、例えば、何らかの原因で「|W1−W2|>α」であるにも拘らず「|W1−W2|<α」であると誤った判断が出されたとしてもこの判断が排除されるため、上記判断の信頼性が担保されるものである。
【0053】
なお、上記判断の繰り返し回数は、固定されたものではなく、適宜増減変更し得るものである。また、上記「設定値α」は、各検出手段の検出誤差に対応した値とされ、「0〜α」の範囲は検出手段の誤差の範囲内であるとしてこれを容認するものである。
【0054】
以上で、上記コネクタ接続状態検出手段1の検出異常の有無の判断制御が完了する。
【0055】
ステップS11に戻って、このステップS11以下においては、上記コネクタ接続状態検出手段1が正常であることを前提とした上で、上記演算重量取得手段Yを含む制御システム全体の異常判定が行なわれる。
【0056】
即ち、上記第1の異常判定手段13からのトリガ信号「C15」を受けて、上記記憶手段14において、現在の「演算重量W2」を「記憶重量Wm」として記憶する。
【0057】
次に、ステップS12において、クレーンZの現在の姿勢情報、即ち、伸縮ブーム23のブーム長さと起伏角と旋回角、該伸縮ブーム23に吊持されている荷重、及び上記各アウトリガ25〜28の張出幅を読み込む。
【0058】
次に、上記アウトリガ反力検出手段2A〜2Dから上記アウトリガ25〜28のアウトリガ反力を読み込む(ステップS13)。そして、このアウトリガ反力に、上記クレーンZの各姿勢情報を加味して、演算にて「演算重量W2」を取得する(ステップS14)。
【0059】
次に、「記憶重量Wm」と「演算重量W2」の差分の絶対値を、予め設定した「設定値β」と比較し、「|Wm−W2|>β」、又は「|Wm−W2|=β」であると判断された場合は、「記憶重量Wm」と「演算重量W2」との間に看過できないほどの差があり、この「演算重量W2」の取得に関与した上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの何れかに作動異常が発生しているものと判断される。
【0060】
従って、この場合には、上記駆動手段16の駆動を停止させるべく駆動信号「C17」を出力するとともに、上記警報手段17には制御システムの異常の発生を報知させるべく、警報信号「C18」を出力する(ステップS16)。
【0061】
これに対して、ステップS15において、「|Wm−W2|<β」であると判断された場合には、制御システムに異常はなく、これが正常に機能していると考えられるので、ステップS12にリターンし、継続的に制御システムの作動状態を監視する。
【0062】
上記「設定値β」は、各検出手段の検出誤差に対応した値とされ、「0〜β」の範囲は検出手段の誤差の範囲内であるとしてこれを容認するものである。
【0063】
なお、この実施形態では、上述のように、制御システムの何れかに作動異常が発生しているものと判断されたとき、駆動信号「C17」を出力して上記駆動手段16の駆動を停止させる制御と、警報信号「C18」を出力し警報を発して異常の発生を報知する制御とを並行して実行させるようにしているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、他の実施形態では、例えば上記二つの制御のうちの何れか一方のみを実行させるように構成することもできる。
B:第2の実施形態
図4には、本願発明の第2の実施形態に係るクレーンの異常検出装置の制御に係る機能ブロック図を示している。
【0064】
この第2の実施形態における制御は、上記第1の実施形態における制御を基本とし、これと異なる点は制御システムの異常検出に係る部分の構成のみである。従って、ここでは、上記第1の実施形態の制御構成と異なる部分のみ(具体的には、上記記憶手段14と上記第2異常判定手段15に対する信号の入力経路)を説明し、それ以外の構成については第1の実施形態の該当説明を援用する。
【0065】
上記第1の実施形態では、上記記憶手段14における「記憶重量Wm」として「演算重量W2」を採用し、上記第2異常判定手段15においてこの「記憶重量Wm」と対比される重量として時々刻々と変化する「演算重量W2」を採用していたのに対して、この第2の実施形態では、上記記憶手段14における「記憶重量Wm」として「演算重量W2」を採用し、上記第2異常判定手段15においてこの「記憶重量Wm」と対比される重量として時々刻々と変化する「検出重量W1」を採用したものである。
【0066】
このように上記第2異常判定手段15において、上記「記憶重量Wm」を時々刻々と変化する「検出重量W1」と対比しその異同を監視することで、上記検出重量取得手段Xを含む制御システムの異常の有無が判断されることから、制御の信頼性が担保され、延いては上記クレーンZの作業上の安全性が確保されるものである。
C:第3の実施形態
図5には、本願発明の第3の実施形態に係るクレーンの異常検出装置の制御に係る機能ブロック図を示している。
【0067】
この第3の実施形態における制御は、上記第1の実施形態における制御を基本とし、これと異なる点は制御システムの異常検出に係る部分の構成のみである。従って、ここでは、上記第1の実施形態の制御構成と異なる部分のみ(具体的には、上記記憶手段14と上記第2異常判定手段15に対する信号の入力経路)を説明し、それ以外の構成については第1の実施形態の該当説明を援用する。
【0068】
上記第1の実施形態では、上記記憶手段14における「記憶重量Wm」として「演算重量W2」を採用し、上記第2異常判定手段15においてこの「記憶重量Wm」と対比される重量として時々刻々と変化する「演算重量W2」を採用していたのに対して、この第3の実施形態では、上記記憶手段14における「記憶重量Wm」として「検出重量W1」を採用し、上記第2異常判定手段15においてこの「記憶重量Wm」と対比される重量として時々刻々と変化する「演算重量W2」を採用したものである。
【0069】
このように上記第2異常判定手段15において、上記「記憶重量Wm」を時々刻々と変化する「演算重量W2」と対比しその異同を監視することで、上記演算重量取得手段Yを含む制御システムの異常の有無が判断されることから、制御の信頼性が担保され、延いては上記クレーンZの作業上の安全性が確保されるものである。
D:第4の実施形態
図6には、本願発明の第4の実施形態に係るクレーンの異常検出装置の制御に係る機能ブロック図を示している。
【0070】
この第4の実施形態における制御は、上記第1の実施形態における制御を基本とし、これと異なる点は制御システムの異常検出に係る部分の構成のみである。従って、ここでは、上記第1の実施形態の制御構成と異なる部分のみ(具体的には、上記記憶手段14と上記第2異常判定手段15に対する信号の入力経路)を説明し、それ以外の構成については第1の実施形態の該当説明を援用する。
【0071】
上記第1の実施形態では、上記記憶手段14における「記憶重量Wm」として「演算重量W2」を採用し、上記第2異常判定手段15においてこの「記憶重量Wm」と対比される重量として時々刻々と変化する「演算重量W2」を採用していたのに対して、この第4の実施形態では、上記記憶手段14における「記憶重量Wm」として「検出重量W1」を採用し、上記第2異常判定手段15においてこの「記憶重量Wm」と対比される重量として時々刻々と変化する「検出重量W1」を採用したものである。
【0072】
このように上記第2異常判定手段15において、上記「記憶重量Wm」を時々刻々と変化する「検出重量W1」と対比しその異同を監視することで、上記検出重量取得手段Xを含む制御システムの異常の有無が判断されることから、制御の信頼性が担保され、延いては上記クレーンZの作業上の安全性が確保されるものである。
【0073】
「その他」
(1) 上記実施形態においては、「演算重量W2」を、アウトリガ反力を基礎として取得するようにしているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、他の実施形態においては、例えば、
(a) 上記車両21の旋回台22に設けられた上記ウェイト支持部29にはここに搭載されるカウンタウェイト30の重量によって歪を生じることから、このウェイト支持部29の歪量を歪センサで検出し、この歪量に基づいて「演算重量W2」を取得するとか、
(b) カウンタウェイト30の重量は上記ウェイト支持部29に積み上げられた上記各分割ウェイト31〜33の重量の総和であって、該各分割ウェイト31〜33の数、即ち、積み重ね状態における上記カウンタウェイト30の上下方向又は横方向における位置によって把握することができるため、このカウンタウェイト30の位置を位置センサによって検出し、この歪量に基づいて「演算重量W2」を取得する、
こともできる。
【0074】
(2) 上記実施形態においては、上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定に係る構成及び制御と、制御システムの異常判定に係る構成及び制御の双方を含んだものとして説明しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、上記コネクタ接続状態検出手段1の異常判定に係る構成及び制御のみを採用することもできるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 ・・コネクタ接続状態検出手段
2 ・・アウトリガ反力検出手段
3 ・・ブーム長さ検出手段
4 ・・ブーム起伏角検出手段
5 ・・ブーム荷重検出手段
6 ・・ブーム旋回角検出手段
7 ・・アウトリガ張出幅検出手段
10 ・・制御器
11 ・・第1演算手段
12 ・・第2演算手段
13 ・・第1異常判定手段
14 ・・記憶手段
15 ・・第2異常判定手段
16 ・・駆動手段
17 ・・警報手段
21 ・・車両
22 ・・旋回台
23 ・・伸縮ブーム
24 ・・起伏シリンダ
25〜28 ・・アウトリガ
29 ・・ウェイト支持部
30 ・・カウンタウェイト
31〜33 ・・分割ウェイト
34 ・・接続コネクタ
W1 ・・検出重量
W2 ・・演算重量
Wm ・・記憶重量
X ・・検出重量取得手段
Y ・・演算重量取得手段
Z ・・クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(21)に搭載された旋回台(22)の後部に、分割ウェイト(31)〜(33)を積み重ねてカウンタウェイト(30)として使用するとともに、積み重ねられた上記分割ウェイト(31)〜(33)間において接続されるコネクタの接続状態を検出するコネクタ接続状態検出手段(1)からの信号を受けて上記各分割ウェイト(31)〜(33)の合計重量を検出重量(W1)として取得する検出重量取得手段(X)を備えたクレーンにおいて、
搭載されたカウンタウェイト(30)の重量が反映された物理量を取得し該物理量に基づいて上記カウンタウェイト(30)の重量を演算重量(W2)として取得する演算重量取得手段(Y)を備えるとともに、
上記検出重量(W1)と上記演算重量(W2)を対比しこれらの異同に基づいて上記コネクタ接続状態検出手段(1)の異常判定を行なう第1異常判定手段(13)を備えたことを特徴とするクレーンの異常検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記物理量が、上記車両(21)を浮上支持するアウトリガ(25)〜(28)に掛かるアウトリガ反力、又はウェイト支持部(29)に発生する歪量、又は積み重ねられた上記分割ウェイト(31)〜(33)の上下方向又は横方向における位置であることを特徴とするクレーンの異常検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記コネクタ接続状態検出手段(1)が正常であると判定されたときの上記演算重量(W2)を記憶重量(Wm)として記憶保持する記憶手段(14)を備えるとともに、
上記記憶重量(Wm)と上記検出重量(W1)を受けてこれらの異同を監視することで、又は上記記憶重量(Wm)と上記演算重量(W2)を受けてこれらの異同を監視することで、上記検出重量取得手段(X)又は上記演算重量取得手段(Y)を含む制御システムの異常判定を行なう第2異常判定手段(15)を備えたことを特徴とするクレーンの異常検出装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上記コネクタ接続状態検出手段(1)が正常であると判定されたときの上記検出重量(W1)を記憶重量(Wm)として記憶保持する記憶手段(14)を備えるとともに、
上記記憶重量(Wm)と上記検出重量(W1)を受けてこれらの異同を監視することで、又は上記記憶重量(Wm)と上記演算重量(W2)を受けてこれらの異同を監視することで、上記検出重量取得手段(X)又は上記演算重量取得手段(Y)を含む制御システムの異常判定を行なう第2異常判定手段(15)を備えたことを特徴とするクレーンの異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−162316(P2011−162316A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27455(P2010−27455)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】