説明

クロム系薄膜のエッチング方法及びフォトマスクの製造方法

【課題】 パターンの形状や寸法差や粗密差に関係なく、変換差を低減でき、しかもホール・ドットの形状差を低減できるフォトマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】 クロムを含む材料からなるクロム系薄膜を有する被処理体における前記薄膜を、レジストパターンをマスクとしてエッチングし、かつ、ハロゲン含有ガスと酸素含有ガスを含むドライエッチングガスに、プラズマ励起用パワーを投入してプラズマ励起させ、生成した化学種を用いて前記薄膜をエッチングする。前記薄膜のエッチングを、前記プラズマ励起用パワーとして、プラズマの密度ジャンプが起こるプラズマ励起用パワーよりも低いパワーを用いてエッチングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロム系薄膜をドライエッチングする方法に関し、特に、半導体装置製造等に用いられるフォトマスクの製造方法において実施されるクロム系薄膜からなる遮光膜をドライエッチングする方法に関する。さらに、本発明は、クロム系薄膜からなる遮光膜をドライエッチングする工程を有するフォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体集積回路等の高集積化等により、その製造工程中の微細加工プロセスにおいて使用されるフォトマスクに対しては、高いパターン精度が要求されてきている。
【0003】
現在用いられているフォトマスクは、高精度なパターンの加工性の点から、遮光膜として、一般にクロム系材料が使用されている。
【0004】
しかしながら、半導体集積回路の高集積化等によるフォトマスクのパターンの高精細化の要求に対して、現行のレジストパターンをエッチングマスクとして用いるクロム系遮光膜のパターン作成方法では、微小開口パターン(ホール)の高精細化に伴い、マイクロローディング効果による微小開口パターン(ホール)の寸法や形状の悪化の影響が無視できなくなり、実用上の障害となることが明らかとなった。
【0005】
現行のレジストパターンをエッチングマスクとして用いるクロム系遮光膜のパターン作成方法は、具体的には、Cl2+O2の混合ガスを主体にするガス系を用い、Cr膜上のレジストパターンをマスクとして、ドライエッチングによりCrパターンを形成する方法が主に用いられている(特開2001−183809号公報参照)。
【0006】
ドライエッチングには、通常RIE(反応性イオンエッチング)装置が使用されるが、近年のパターンの微細化及びパターン精度に対する要求に対応すべく、ICP(誘導結合型プラズマ)方式が検討されている(「SPIE」、Vol.3236、C.Constantine et al、1997年、p94〜103参照、以下第1の従来技術という)。
【0007】
この場合、通常、電子密度ジャンプが起こるICPパワーよりも高いICPパワー(安定したプラズマ放電が得られる条件)を使用して高いプラズマ密度でエッチングを行っている(論文誌「SPUTTERING & PLASMA PROCESSES」、Vol.13 No.4参照(論文名:「高密度プラズマの生成と物理」、著者:菅井秀郎、第7頁)、1998年10月9日発行、社団法人日本工業技術振興協会スパッタリング及びプラズマ技術部会発行、以下、第2の従来技術という)。
【0008】
しかしながら、上記第1及び第2の従来技術には、以下に示す3つの問題点があった。
【0009】
第1に、現像後のレジストパターン寸法とエッチング後のCrパターン寸法との寸法差(以下、レジストとCrの変換差、又は単に変換差という)が大きいという問題点がある。従来においては、変換差を見越した現像エッチング条件を採用することによって、設計パターンデータに対する精度を向上させる方法が採られてきた。
【0010】
しかしながら、近年においては、例えば、近接効果補正(OPC)パターンのような微細でかつ複雑な形状のパターンが使用されている。さらに、マスク面内において寸法差及び疎密差のあるパターンを高精度に形成する要求がある。このため、従来のような方法では、高精度のパターンを形成することが困難である。
【0011】
詳しくは、レジストの等方性エッチングによってCrが後退することに起因して、同じサイズの正方形パターンで比較した場合、正方形開口パターン(抜き部)はサイズが拡大すると共に角部が丸くなるのに対し、正方形遮光パターン(残し部・Cr部)はサイズが縮小すると共に角部はほぼ直角を維持する。この結果、両者のサイズ、角部の形状に形状差が生じる。
【0012】
この問題がマスク製造工程および品質に与える影響は次のようになる。まず、正方形開口パターンの角部が丸くなることが、疑似欠陥の発生を誘起し、検査工程に対し重大な障害になる。また、パターン形状が設計パターンデータに対して忠実に仕上がらないので、半導体製造工程におけるリソグラフィー工程でのマージンの低下や、条件設定に多大な工数を必要とする原因となる。さらに、上記の変換差は、マスク上での微細パターン形成の障害になる。なお、上記変換差をデータサイジングで対処することも可能であるが、この場合サイジング量が大きくなり変換時間が増大する。
【0013】
第2に、マイクロローディング効果によって、レジストとCrの変換差が開口パターン(ホール)の寸法によって大きく変動し、開口パターンの寸法が小さい微小開口パターンとなるほど小さく仕上がり、変換差の絶対値が大きくなるという問題点がある。パターンの設計寸法の変化に対する、パターンの設計寸法からのシフト量の関係をCDリニアリティといい、パターンの設計寸法の変化に対する、パターンの設計寸法からのシフト量の変化が大きい場合、CDリニアリティが悪いと表現する。
【0014】
パターンの設計寸法の変化に対するパターンの設計寸法からのシフト量の変化が大きいということは、レジストとCrの変換差のばらつきが大きいことを意味する。この問題がマスク製造工程および品質に与える影響は次のようになる。
【0015】
まず、この問題により、開口パターンの寸法により変換差が変動するのでCD精度(特にCDリニアリティ)が劣化する。このことは半導体製造工程におけるリソグラフィー工程でのマージンの低下や、条件設定に多大な工数が必要となる原因となる。これは、CD精度を露光等の別工程で補償することも可能であるが、CDリニアリティ以外の他のCD精度を考慮した場合の最適条件とはならないことがあるためである。
【0016】
第3に、Crの断面形状が、開口パターン(ホール)の寸法に依存し、開口パターンの寸法が小さくなり微小開口パターンになると、断面形状にテーパーが発生するという問題点がある。この問題がマスク製造工程および品質に与える影響は次のようになる。
【0017】
まず、この問題により、Crの断面形状が面内で変動すると、電磁光学効果により、断面形状に起因する変動より数倍に達する大きな光学的寸法変動を引き起こす。このことは半導体製造工程におけるリソグラフィー工程でのマージンの低下や、条件設定に多大な工数が必要となる原因となる。また、マスクの測長を光学式測長機で行う場合は測長精度が劣化する。
【0018】
【特許文献1】特開2001−183809号公報
【非特許文献1】「SPIE」、Vol.3236、C.Constantine et al、1997年、p94〜103
【非特許文献2】論文誌「SPUTTERING & PLASMA PROCESSES」、Vol.13 No.4参照(論文名:「高密度プラズマの生成と物理」、著者:菅井秀郎、第7頁)、1998年10月9日発行、社団法人日本工業技術振興協会スパッタリング及びプラズマ技術部会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本発明の第1の目的は、パターンの形状(開口パターン(ホール)、遮光パターン(ドット)、ライン&スペースなど)や寸法差や粗密差に関係なく(特にホール・ドットに関係なく)、変換差を低減でき、しかもホール・ドットの形状差を低減できるフォトマスクの製造方法の提供をすることにある。
【0020】
また、本発明の第2の目的は、ホールの寸法が小さくても、CDリニアリティが良好(変換差が一定)であるフォトマスクの製造方法を提供することにある。
【0021】
さらに、本発明の第3の目的は、ホールの断面形状が、寸法に依らず、寸法が小さくても断面形状が良好であるフォトマスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、以下の態様を有する。
【0023】
(第1の態様) クロムを含む材料からなるクロム系薄膜を有する被処理体における前記薄膜を、レジストパターンをマスクとしてエッチングし、かつ、ハロゲン含有ガスと酸素含有ガスを含むドライエッチングガスに、プラズマ励起用パワーを投入してプラズマ励起させ、生成した化学種を用いて前記薄膜をエッチングするクロム系薄膜のエッチング方法おいて、
前記薄膜のエッチングを、レジストパターン以外の有機物の存在下で、前記化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射させながら行うことによって、等方性エッチング成分によりエッチングされる前記レジスト層の側壁に、有機生成物を堆積させながらエッチングを行うクロム系薄膜のエッチング方法。
【0024】
(第2の態様) 前記ハロゲン含有ガスが、塩素含有ガスである第1の態様のクロム系薄膜のエッチング方法。
【0025】
(第3の態様) 前記レジストパターン以外の有機物として、ドライエッチングガスに有機ガスを添加することによって、前記レジストパターン以外の有機物を存在させる第1又は第2の態様のクロム系薄膜のエッチング方法。
【0026】
(第4の態様) 前記有機ガスを、前記ドライエッチングガスの30体積%以下とする第3の態様のクロム系薄膜のエッチング方法。
【0027】
(第5の態様) 前記有機ガスがエタノールである第3又は第4の態様のクロム系薄膜のエッチング方法。
【0028】
(第6の態様) 前記前記レジストパターン以外の有機物として、有機高分子材をエッチング室内に配置した第1又は第2の態様のクロム系薄膜のエッチング方法。
【0029】
(第7の態様) 前記薄膜のエッチングにおいて、前記プラズマ励起用パワーとして、プラズマの密度ジャンプが起こるプラズマ励起用パワーよりも低いパワーを用いる第1〜第6の態様のいずれかのクロム系薄膜のエッチング方法。
【0030】
(第8の態様) 前記ドラエッチングガスに、さらにヘリウムを含む第7の態様のクロム系薄膜のエッチング方法。
【0031】
(第9の態様) 被処理体が、透明基板上にクロムを含む材料からなる遮光膜が形成されたフォトマスクブランクである第1〜第8の態様のいずれかのクロム系薄膜のエッチング方法。
【0032】
(第10の態様) 透明基板上にクロムを含む材料からなる遮光膜が形成されたフォトマスクブランクにおける前記遮光膜を、レジストパターンにおけるレジスト層をマスクとしてエッチングする工程を有するフォトマスクの製造方法において、
前記遮光膜をエッチングする工程に、第9の態様のクロム系薄膜のエッチング方法を用いたフォトマスクの製造方法。
【0033】
(第11の態様) 前記遮光膜のエッチングにより、光近接効果補正(OPC)パターンを含むパターンを形成する第10の態様のフォトマスクの製造方法。
【0034】
(第12の態様) 前記遮光膜のエッチングにより、0.4μm以上2.0μm以下の設計寸法のパターンに対し、CDリニアリティ誤差が15nm以下であるパターンを含むパターンを形成する第10又は第11の態様のフォトマスクの製造方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、以下の効果を有する。
【0036】
(1)上述した第1の問題に関し、パターンの形状((開口パターン(ホール)、遮光パターン(ドット)、ライン&スペースなど)や寸法差や粗密差に関係なく(特にホール・ドットに関係なく)、変換差を低減でき、しかもホール・ドットの形状差を低減できる。
(2)上述した第2の問題に関し、ホールの寸法が小さくても、CDリニアリティが良好(変換差が一定)である。
(3)上述した第3の問題に関し、ホールの断面形状が、寸法に依らず、寸法が小さくても垂直性が良好である。
【0037】
なお、上述した第3の問題に関連し、マスクの測長を光学式測長機で行う場合において、形状のリニアリティが改善されると、寸法が異なる図形も同一の測長条件で測長が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態は、レジストパターンをマスクとしてクロムを含む材料からなるクロム系薄膜をエッチングする際に、ハロゲン含有ガスと酸素含有ガスを含む混合ガスからなるドライエッチングガスに、プラズマ励起用パワーを投入してプラズマ励起させ、生成した化学種を用いてエッチングを行う。そのときのプラズマ励起用パワーを、プラズマの密度ジャンプが起こるプラズマ励起用パワーよりも低いパワーとする。
【0039】
尚、プラズマ励起パワーとは、例えばICP方式の場合は、ICPパワーである。また、プラズマの密度ジャンプについては、上記第2の従来技術に、プラズマの電子密度とICPパワーの関係について、ICPパワーを増加させるとプラズマの電子密度が増加する傾向を示すが、あるICPパワーにおいて、プラズマの電子密度が急激に増加する密度ジャンプが存在することが記載されている。本発明におけるプラズマの密度ジャンプが起こるプラズマ励起用パワーとは、このような、プラズマ密度が急激に増加するプラズマ励起用パワーを指す。
【0040】
従来技術では、ICPパワーを低くすると、プラズマ放電が不安定になる傾向を示すことから、採用されていなかった。しかしながら、本発明者は、変換差を低減させるには、パターンの等方性エッチングを促進させて側壁のエッチングを促進させるラジカルの量をコントロールすることが必要であり、そのためには、プラズマ励起パワーを低く設定してプラズマ密度を低減させる方法が有効であることを見出した。さらに、ドライエッチングを行うと、通常被処理体の温度上昇が起こるが、プラズマ励起パワーが大きい程被処理体の温度の上昇は大きくなる。
【0041】
被処理体の温度の上昇は、等方性エッチングの促進する原因にもなっている。このため、本発明のように、低いプラズマ励起パワーを用いることによって被処理体の温度の上昇を抑えると、等方性エッチングの促進を抑制することができる。例えば、フォトマスクブランクのガラス基板などの低熱伝導率の材質を有する被処理体のように、被処理体の温度制御が困難な場合は、被処理体がエッチング中に高温とならないような温度制御をあえて行わずに、本発明の方法により被処理体の温度上昇を抑えることができる。
【0042】
具体的には、例えば、ICP方式の場合、ICPパワーを200W〜300Wの低ICPパワー範囲とする。これにより、0.4〜2.0μmの開口パターンに関し、前記開口パターンの寸法の変化に対する、レジストとCrの変換差の変化量(パターンリニアリティ)が、15nm以下(従来の半分以下)であるフォトマスクが得られる。この結果、レジストとCrの変換差が開口パターン(ホール)の寸法によって大きく変動する(開口パターンの寸法が小さいほど小さく仕上がる)。
【0043】
さらに、Crの断面形状が、開口パターン(ホール)の寸法に依存し、開口パターンの寸法が小さくなると、断面形状にテーパーが発生するという問題を著しく改善できる。なお、より安定したプラズマ放電を得る観点から、ICPパワーを200Wより高くすることが好ましい。また、よりリニアリティを良好にする観点から、ICPパワーを300Wより低くすることが好ましい。これらのことから、ICPパワーは、220W〜280W、さらには240W〜260Wの低ICPパワー範囲とすることが好ましい。
【0044】
尚、低いプラズマ励起パワーにてプラズマ放電を安定化させるには、プラズマ装置の改良を行うことが考えられる。さらに、他にガス圧、ガス流量等のドライエッチング条件を最適化する方法も考えられる。ドライエッチング条件の最適化については、他の特性(選択比、エッチング均一性等)とのバランスを考慮する必要がある。
【0045】
本発明においては、他の特性への悪影響が最も少ない方法として、ドライエッチングガス中に、プラズマの放電安定化に寄与するガスとして、Heを添加する。さらに、Heは、マイクロローディング効果を低減させる効果があることも確認された。Heの添加量は、多いほどプラズマ放電は安定化するが、多すぎるとパターンのリニアリティーが悪化することも確認された。このような観点から、Heのドライエッチング中の含有量は、1〜20体積%以下、さらに好ましくは5〜15体積%とすることが好ましい。
【0046】
さらに、本発明においては、ドライエッチングのプラズマ励起によって発生する化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射させながら、ドライエッチングを行う。このようにして、等方性エッチング成分によりエッチングされる前記レジストパターンの側壁に、有機物を堆積させながらエッチングを行う。この結果、ドライエッチング中のレジストパターンの寸法変動を効果的に抑制することができる。
【0047】
即ち、化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射することによって、被エッチング面に対して垂直方向からの化学種によるスパッタエッチング成分が増加する。その結果、レジストパターンが上方から削られる。その削られたレジストが気化して生成する有機生成物が、等方性エッチング成分によりエッチングされるレジストパターンの側壁に堆積する。このようにして、エッチングと堆積が相殺されることにより、寸法変動を低減することができる。尚、有機生成物の堆積は等方的に起こることが考えられる。しかし、異方性スパッタエッチング成分により、薄膜の被エッチング面に堆積する有機生成物はスパッタリングにより除去されると考えられる。
【0048】
上記化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射させる手段としては、被処理体に高周波電力(RFバイアス)を印加する方法が挙げられる。RFバイアスを印加する電源は、通常プラズマ励起用パワーを投入する電源とは別電源を用いて行われるものであり、通常プラズマ励起用パワーは、RFバイアスの約10倍以上である。
【0049】
上記の方法において、エッチングと堆積を相殺するには、エッチングと堆積のバランスを考慮する必要がある。エッチングに対する堆積量を確保するためには、削られたレジストが気化して生成する有機生成物のある程度の量が必要となる。そのため、本発明においては、レジストパターンと前記薄膜のエッチング選択比(薄膜のエッチング速度/レジスト層のエッチング速度)が1.5未満と低選択比なるように、前記化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射させることによって、エッチングを相殺するに足りる有機生成物を生成できることを見出した。RFバイアスを用いる場合は、RFバイアスを高めに設定することによって実現可能である。尚、エッチング選択比は、薄膜のエッチング中に必要最低限以上のレジストパターンが残存するように設定される。
【0050】
尚、前記薄膜に対するレジスト層の被覆率が70%以上である場合は、充分な有機生成物を生成できるが、レジストの被覆率が小さい場合は、堆積させるための有機物が不足することが考えられる。このため、前記薄膜のエッチングを、レジストパターン以外の有機物の存在下で行うことで、その有機物から生成する有機反応物を堆積する、このようにして、エッチングと堆積とが相殺するバランスを図ることができる。
【0051】
レジストパターン以外の有機物を存在させる方法として、例えば、ドライエッチングガスに有機ガスを添加する方法や、有機高分子材をドライエッチング装置内に配置する方法が挙げられる。尚、前記有機物としては、ドライエッチングガスにCl等のハロゲン含有ガスを用いる。このため、他のハロゲンの混用によるCrのエッチングへの悪影響を回避するために、前記有機物には、ドライエッチングに用いるハロゲン以外のハロゲン元素を含まないことが好ましい。ドライエッチングガスに塩素を用いる場合は、F、Br、I、Atを成分として(又は分子中に)含まない有機ガスを用いることが好ましい。
【0052】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態においては、レジストパターンをマスクとしてクロムを含む材料からなるクロム系薄膜をエッチングする際に、塩素と酸素を含む混合ガスからなるドライエッチングガスに、プラズマ励起用パワーを投入してプラズマ励起させ、生成した化学種を用いてエッチングを行う。前記薄膜のエッチングを、レジストパターン以外の有機物の存在下で、前記化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射させながら行うことによって、等方性エッチング成分によりエッチングされる前記レジスト層の側壁に、有機生成物を堆積させながらエッチングを行う。
【0053】
本発明の第2の実施の形態によれば、レジストパターン以外の有機物の存在下で、前記化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射させながらドライエッチングを行う。これにより、有機物から生成する有機生成物、及び化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射することによって発生した、被エッチング面に対して垂直方向からの化学種によるスパッタエッチング成分により削られたレジストが気化して生成する有機生成物を、等方性エッチング成分によりエッチングされるレジストパターンの側壁に堆積する。このようにして、エッチングと堆積が相殺されて寸法変動を低減することができる。
【0054】
尚、有機生成物の堆積は等方的に起こると考えられるが、異方性スパッタエッチング成分により、薄膜の被エッチング面に堆積する有機生成物はスパッタリングにより除去されると考えられる。上記の方法において、エッチングと堆積を相殺するために、薄膜に対するレジスト層の被覆率等を考慮して、各種ドライエッチング条件を最適化する。これによって、エッチングと堆積のバランスを図ることができる。
【0055】
レジストパターン以外の有機物を存在させる方法として、例えば、ドライエッチングガスに有機ガスを添加する方法や、有機高分子材をドライエッチング装置内に配置する方法が挙げられる。尚、前記有機物としては、ドライエッチングガスにCl等のハロゲン含有ガスを用いるため、他のハロゲンの混用によるCrのエッチングへの悪影響を回避するために、ドライエッチングに用いるハロゲン以外のハロゲン元素を含まないことが好ましい。ドライエッチングガスに塩素を用いる場合は、F、Br、I、Atを成分として(又は分子中に)含まない有機ガスを用いることが好ましい。
【0056】
ドライエッチングガスに有機ガスを添加する方法は、任意のレジスト被覆率のマスクに対して、有機ガスの種類及び添加量を制御することによって、任意の変換差を設定可能であることから好ましい。さらに、有機ガスの添加量は、塩素と酸素を含む混合ガス全体積の30体積%以下であることが、Crのエッチング速度の制御性の観点や、エッチング室内の不要な過剰の有機物のデポジションを回避する観点から好ましい。
【0057】
また、この有機ガスとしては、エタノール等のアルコール、メタン、エタン、アセトン、塩化ビニル、青酸ガス等を用いることができる。特に、エタノールを用いると、上述した3つの問題を実用レベルで解決する上で好ましく、さらにマイクロローディング効果による微小開口パターン(ホール)の寸法や形状の悪化の影響の問題を解消し、実用上の障害を除く上で好ましい。
【0058】
また、有機高分子材をドライエッチング装置内に配置する方法としては、電極カバー等に有機高分子材を用いる方法が挙げられる。
【0059】
さらに、上記薄膜のエッチングにおいて、前記プラズマ励起用パワーとして、プラズマの密度ジャンプが起こるプラズマ励起用パワーよりも低いパワーを用いる。これにより、プラズマ密度を低減させること及び被処理体の温度上昇を抑えるによって、等方性エッチングが抑制される。この結果、レジストパターン側壁におけるエッチングと堆積のバランスを容易に図ることができる。尚、この場合、プラズマを安定化させるために、ドライエッチングガスに、Heを添加することが好ましい。
【0060】
尚、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、近年において、高精度なパターン形成が要求されているフォトマスクを製造するため、フォトマスクブランクにおけるクロムを含む材料からなる遮光膜のドライエッチングに好適に適用することができる。
【0061】
ここで、クロム系薄膜或いはクロムを含む材料からなる薄膜とは、クロムに他の元素が含まれるものも含み、例えば、Cr単体、CrO(クロム、酸素を含むことを意味し、それらの含有率を規定するものではない。以下、同様)CrN、CrC、CrCO、CrCN、CrON、CrCONなどが挙げられ、均一な組成の単層膜、膜厚方向で組成の異なる複数層、膜厚方向で組成が変化する組成傾斜した層等あらゆる層構造のものを含むものである。
【0062】
本発明においては、特に、微細でかつ複雑な形状のパターンである光近接効果補正(OPC)パターンを含むパターンの形成に対し、パターンのリニアリティー低減に非常に効果的である。
【0063】
本発明方法を適用すると、開口パターンの寸法の変化に対する、レジストとCrの変換差の変化を極めて小さくでき、従来に比べCDリニアリティを著しく改善できる。この結果、0.4μm以上の開口パターンに関し、前記開口パターンの寸法の変化に対する、レジストとCrの変換差の変化量(パターンリニアリティ)が、15nm以下であるフォトマスクが得られる。このフォトマスクは、マイクロローディング効果による微小開口パターン(ホール)の寸法や形状の悪化の影響の問題を極めて効果的に解消し、実用上の障害を除くことに初めて成功したものであることから、かかる態様を規定したものである。同様の観点から、0.4μm以上の開口パターンに関し、前記開口パターンの寸法の変化に対する、レジストとCrの変換差の変化量(パターンリニアリティ)は、好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。
【0064】
本発明において、ドライエッチングの方式としては、RIE、MERIE、ICP、NLD、又は各種方式を応用した方式を用いることができるが、クロム系薄膜の最適なエッチング方式であるICPを用いることが好ましい。
【0065】
また、本発明において、ドライエッチングガスとして用いられるハロゲン含有ガスとしては、Clが最も一般的であるが、SiCl、HCl、CCl、CHCl等が挙げられる。この他、臭素、ヨウ素を含むガスも用いることができる。また、酸素を含むガスとしては、Oが最も一般的であるが、CO、CO等でもよい。
【実施例1】
【0066】
まず、本実施例においてエッチングの対象となる、レジストパターンを形成したマスク基板101を図1に示す。マスク基板101は、厚さ400nmのレジストパターン102,厚さ100nmのCr系膜(Crを含む材料からなる膜をいう、以下同様)103,ガラス基板(合成石英基板等)104の積層構造からなる。レジストパターン102としては、使用する露光機によりフォトレジストもしくはEBレジストを使用する。どちらの場合においてもレジストパターンの側壁が垂直に近い断面形状を有する。また、Cr系膜103の面積の80%以上はレジストパターン102で被覆されている。
【0067】
次に、本実施例に用いるエッチング装置(誘導結合型プラズマ(ICP)方式)の構成を図2に示す。
【0068】
この装置は、プラズマ発生用コイル201,コイル用RF電源202,減圧容器(以下チャンバーという)203,RF電極204,RF電極用RF電源205,ガス導入系206,排気系207、RF電極カバー208(基板101が設置される部分以外を被覆するカバー部材)より構成されている。なお、エッチング中のマスク基板101を一定温度に制御する機構についてはこれを有していない。
【0069】
上記装置においては、あらかじめ、RF電極204上にはマスク基板101が設置されており、排気系207によりチャンバー203は高真空の状態に保たれている。チャンバー203に対し、ガス供給系206より塩素と酸素とヘリウムの混合ガス(Cl2:O2:He=160:40:20[sccm])が供給される。排気系207の排気量を調整して、所望の圧力(2Pa)に保つ。プラズマ発生用コイル201に対し、コイル用RF電源202より高周波電力(ICPパワー)を供給し、チャンバー203内にプラズマを発生させる。供給される高周波電力(ICPパワー)は、電子密度ジャンプを起こす高周波電力(ICPパワー)より小さい値でかつ放電限界近傍の値(200W〜300W、本実施例では210W)を使用する。
【0070】
プラズマ安定後、速やかにRF電極にRF電極用RF電源205より高周波電力を供給する(RFバイアス)。この高周波電力は、レジストとCrのエッチング選択比(Crのエッチング速度/レジストのエッチング速度)(以下、単に選択比という)が1.5未満になるように高めに設定する。ただし、コイル用RF電源202より供給される高周波電力は、RF電極用RF電源205より供給される高周波電力の10倍以上である。RFバイアスの値は好ましくは10W〜20Wであり、本実施例では20Wとした。また、Heは、プラズマの放電安定化及びマイクロローディング効果の改善の目的で添加した。Crのエッチングが終了後、適度のオーバーエッチングを行った後にエッチングを終了する。
【0071】
本実施例1においては、プラズマ密度が低い状態でエッチングを行うことがでる。この結果、レジストの等方性エッチングに寄与するラジカル密度を低減させる効果及び基板温度の上昇の抑止効果が得られる。これにより、レジストの横方向のエッチング量が抑制される。
【0072】
また、本実施例1においては、プラズマ密度が低い状態でエッチングを行うことによって得られるレジストの横方向のエッチング量の上記抑制効果に加え、レジストパターンが高被覆状態(80%以上)にある基板を、RFバイアスを高めに設定することでレジストとCrのエッチング選択比(Crのエッチング速度/レジストのエッチング速度)が1.5未満の低選択比でエッチングする。これによって、大量の有機ガスがチャンバー内に放出され、有機ガスの等方性デポジションによるレジストの等方性エッチングの抑制効果が相乗効果的に発揮される。この結果、上述した3つの問題を実用レベルで極めて効果的に解決できる。
【0073】
具体的には、
(1)パターンの形状(ホール、ドット、ライン&スペースなど)やサイズに関係なく(特にホール・ドットに関係なく)、変換差を低減でき、しかもホール・ドットの形状差を低減できる。
ホールの寸法が小さくても、リニアリティが良好(変換差が一定)である。
ホールの断面形状が寸法に依らず、寸法が小さくても垂直性が良好であるフォトマスクが得られる。
【0074】
なお、実施例1においては、パターンの形状(ホール、ドット、ライン&スペースなど)やサイズに関係なく、0.4μm〜2.0μmにおいてCDリニアリティ誤差が8nm以下となり、極めて良好なCDリニアリティを実現できた。
【0075】
また、実施例1は、後述する実施例2(有機ガス系増設)あるいは実施例3(チャンバー改造)のような装置の特別な改造を必要としない。
【実施例2】
【0076】
まず、本実施例においてエッチングの対象となる、レジストパターンを形成したマスク基板101を図1に示す。
【0077】
マスク基板101は、厚さ400nmのレジストパターン102,厚さ100nmのCr系膜103,ガラス基板(合成石英基板等)104の積層構造からなる。レジストパターン102としては、使用する露光機によりフォトレジストもしくはEBレジストを使用する。どちらの場合においてもレジストパターンの側壁が垂直に近い断面形状を有する。また、レジストパターン102でCr系膜103の面積が被覆されている割合は10%である。
【0078】
次に、本実施例に用いるエッチング装置の構成を図2に示す。
【0079】
この装置は、プラズマ発生用コイル201,コイル用RF電源202,チャンバー203,RF電極204,RF電極用RF電源205,ガス導入系206,排気系207,RF電極カバー208(基板101が設置される部分以外を被覆)より構成されている。なお、エッチング中のマスク基板101を一定温度に制御する機構についてはこれを有していない。
【0080】
実施例1と実施例3との相違は、ガス導入系が、塩素と酸素以外に有機ガス(本実施例ではエタノールを使用)の供給機能を有する点である。
【0081】
上記装置においては、あらかじめ、RF電極204上にはマスク基板101が設置されており、排気系207によりチャンバー203は高真空の状態に保たれている。チャンバー203に対し、ガス供給系206より塩素と酸素とヘリウムと有機ガス(本実施例ではエタノール)の混合ガス(Cl2:O2:He:エタノール=160:40:20:20[sccm](よって、エタノールは約8体積%))の混合ガスが供給される。排気系207の排気量を調整して、所望の圧力に保つ。プラズマ発生用コイル201に対し、コイル用RF電源202より高周波電力(ICPパワー)を供給し、チャンバー203内にプラズマを発生させる。供給される高周波電力(ICPパワー)は、電子密度ジャンプを起こす高周波電力(ICPパワー)より小さい値を使用する。具体的には、プラズマ均一性や安定性を考慮した範囲(240W〜300W)を使用し、本実施例では250Wとした。
【0082】
プラズマ安定後、速やかにRF電極にRF電極用RF電源205より高周波電力を供給する。この高周波電力は、実施例1と異なり、Cr/レジスト選択比を低く設定する必要がない。このため、Cr/レジストのエッチング特性(パターン形状等)が良好な条件で設定すれば良く、実施例1より低い値で良い。Cr/レジスト選択比が1.7となる条件に設定した。Crのエッチングが終了後、適度のオーバーエッチングを行った後にエッチングを終了する。
【0083】
本実施例2においては、プラズマ密度が低い状態でエッチングを行うことがでる。この結果、レジストの等方性エッチングに寄与するラジカル密度を低減させる効果及び基板温度の上昇の抑止効果が得らる。これにより、レジストの等方性エッチング量が抑制される。
【0084】
また、本実施例2においては、プラズマ密度が低い状態でエッチングを行うことによって得られるレジストの横方向のエッチング量の上記抑制効果に加え、独自に添加する有機ガスによって、有機ガスの等方性デポジションによるレジストの横方向のエッチング量の抑制効果が相乗効果的に発揮される。この結果、上述した3つの問題を実用レベルで極めて効果的に解決できる。
【0085】
具体的には、パターンの形状(ホール、ドット、ライン&スペースなど)やサイズに関係なく(特にホール・ドットに関係なく)、変換差を低減でき、しかもホール・ドットの形状差を低減できる。ホールの寸法が小さくても、リニアリティが良好(変換差が一定)である。ホールの断面形状が寸法に依らず、寸法が小さくても垂直性が良好であるフォトマスクが得られる。
【0086】
なお、実施例2においては、パターンの形状(ホール、ドット、ライン&スペースなど)やサイズに関係なく、0.4μm〜2.0μmにおいてCDリニアリティ誤差が8nm以下となり、極めて良好なCDリニアリティを実現できた。
【0087】
なお、実施例2は上述した実施例1に対し以下の優位点を有する。
【0088】
(1)有機ガスを独自に添加するので、より大量に有機物を発生できる。この結果、実施例1よりプラズマ密度を高めに設定可能である。これにより、プラズマの均一性と安定性が優れた状態が選べる利点がある。
(2)レジストより発生する有機ガスに依存しないので、レジストパターンの被覆率と選択比に制限を持たない。よって、あらゆる(全ての)パターンのマスクに適用できる。
(3)チャンバー内の有機ガス密度にマスクパターン起因の分布が生じにくい。
【0089】
また、実施例2は後述する実施例3に対し以下の優位点を有する。
【0090】
(1)電極材の時間変化による特性変動が生じない。
(2)チャンバーの改造が必要でない。
【実施例3】
【0091】
まず、本実施例においてエッチングの対象となる、レジストパターンを形成したマスク基板101を図1に示す。
【0092】
マスク基板101は、厚さ400nmのレジストパターン102,厚さ100nmのCr系膜103,ガラス基板(合成石英基板等)104の積層構造からなる。レジストパターン102としては、使用する露光機によりフォトレジストもしくはEBレジストを使用する。どちらの場合においてもレジストパターンの側壁が垂直に近い断面形状を有する。また、レジストパターン102でCr系膜103の面積が被覆されている割合は10%である。
【0093】
次に、本実施例に用いるエッチング装置の構成を図3に示す。
【0094】
この装置は、プラズマ発生用コイル201,コイル用RF電源202,チャンバー203,RF電極204,RF電極用RF電源205,ガス導入系206,排気系207 RF電極カバー208(基板101が設置される部分以外を被覆するカバー部材)より構成されている。なお、エッチング中のマスク基板101を一定温度に制御する機構についてはこれを有していない。
【0095】
実施例1と実施例2との相違は、RF電極カバー208の材質が有機高分子(本実施例ではポリスチレン)である点である。
【0096】
上記装置においては、あらかじめ、RF電極204上にはマスク基板101が設置されており、排気系207によりチャンバー203は高真空の状態に保たれている。チャンバー203に対し、ガス供給系206より塩素と酸素とヘリウムの混合ガス(Cl2:O2:He=160:40:20[sccm])が供給される。排気系207の排気量を調整して、所望の圧力に保つ。プラズマ発生用コイル201に対し、コイル用RF電源202より高周波電力を供給し、チャンバー203内にプラズマを発生させる。供給される高周波電力は、電子密度ジャンプを起こす高周波電力より小さい値を使用する。具体的には、プラズマ均一性や安定性を考慮した範囲(240W〜300W)を使用し、本実施例では250Wとした。
【0097】
プラズマ安定後、速やかにRF電極にRF電極用RF電源205より高周波電力を供給する。この高周波電力は、実施例2と同様に、Cr/レジスト選択比を低く設定する必要がないため、Cr/レジストのエッチング特性(パターン形状等)が良好な条件で設定すれば良く、実施例1より低い値で良い。Cr/レジスト選択比が1.7となる条件に設定した。Crのエッチングが終了後、適度のオーバーエッチングを行った後にエッチングを終了する。
【0098】
本実施例3においては、プラズマ密度が低い状態でエッチングを行うことがでる。この結果、レジストの等方性エッチングに寄与するラジカル密度を低減させる効果及び基板温度の上昇の抑止効果が得られる。これにより、レジストの横方向のエッチング量が抑制される。
【0099】
また、本実施例3においては、プラズマ密度が低い状態でエッチングを行うことによって得られるレジストの横方向のエッチング量の上記抑制効果に加え、有機高分子からなるRF電極カバー部材から発生する有機ガスによって、有機ガスの等方性デポジションによるレジストの横方向のエッチング量の抑制効果が相乗効果的に発揮される。この結果、上述した3つの問題を実用レベルで極めて効果的に解決できる。
【0100】
具体的には、パターンの形状(ホール、ドット、ライン&スペースなど)やサイズに関係なく(特にホール・ドットに関係なく)、変換差を低減でき、しかもホール・ドットの形状差を低減できる。ホールの寸法が小さくても、リニアリティが良好(変換差が一定)である。ホールの断面形状が寸法に依らず、寸法が小さくても垂直性が良好であるフォトマスクが得られる。
【0101】
なお、実施例3は実施例1に対し以下の優位点を有する。
【0102】
(1)より大きな面積の電極カバーから発生する大量の有機ガスを利用できるので、実施例1よりプラズマ密度を高めに設定可能である。これにより、プラズマの均一性と安定性が優れた状態が選べる利点がある。
(2)レジストより発生する有機ガスに依存しないので、レジストパターンの被覆率と選択比に制限を持たない。
(3)チャンバー内の有機ガス密度にマスクパターン起因の分布が生じにくい。
【0103】
また、実施例3は実施例2に対し、有機ガス系の増設が必要でないという優位点を有する。
【0104】
(比較例)
上記実施例2において、有機ガス(エタノール)を添加しなかったこと及びプラズマ発生用コイル201に対し、コイル用RF電源202より高周波電力(ICPパワー)を供給し、チャンバー203内にプラズマを発生させる際に、供給される高周波電力(ICPパワー)を、500Wとした(通常用いられているような電子密度ジャンプを起こす条件とした)こと以外は、上記実施例2と同様にしてエッチングを行い、CDリニアリティについて調べた。その結果を、図5に示す。
【0105】
図5において、横軸は設計寸法、縦軸は設計寸法からのシフト量(CD誤差量)である。パターンの測長は、0.4μm〜2.0μmのCrパターン(孤立ホール(iso hole)と密集ホール(Dense hole))についてCD−SEMにて行った。図5から、比較例の条件(エタノールの添加なし、ICPパワー500W)では、1.0μm以下の設計寸法に対してCD誤差が大きくなっており、CDリニアリティ誤差が約40nmとなっており、CDリニアリティが悪いことが判る。
【0106】
これに対し、実施例2の条件(エタノールの添加あり、ICPパワー250W)では、図6に示すように、0.4μm〜2.0μmにおいてCDリニアリティ誤差が8nm以下となり、パターンリニアリティが極めて良好であることが判る。
【0107】
また、Crパターンの断面形状とICPパワーとの関係について調べた結果を、図7(SEM写真)に示す。
【0108】
図7は、0.5μm、0.4μm、0.3μm、0.2μmのCrパターンの断面形状のSEM写真である。また、図7の上段が比較例(エタノールの添加なし、ICPパワー500W)で得られたCrパターンの断面形状を示し、下段が実施例2(エタノールの添加あり、ICPパワー250W)で得られたCrパターンの断面形状を示す。
【0109】
図7の上段の比較例では、ホールの断面形状が寸法が小さくなるに従いテーパが発生して垂直性が悪化するのに対して、図7の上段の実施例2では、ホールの断面形状が寸法に依らず寸法が小さくても垂直性が良好(形状のリニアリティが良好)であることが判る。
【0110】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。
【0111】
実施例2において有機ガスとしてエタノールを用いたが、マスフローコントローラーで使用可能な塩素以外のハロゲンを含まない炭素と水素を含有する有機ガス(例として、メタン,エタン,アセチレン,塩化ビニル,青酸ガス等)も使用できる。
【0112】
実施例3において電極カバーとしてポリスチレンを用いたが、塩素以外のハロゲンを含まない炭素と水素を含有する有機高分子(例として、ポリエステル,ポリ塩化ビニル,メラミン,ポリエチレン等)および炭素も使用できる。
【0113】
実施例3においては、図4に示すように、電極カバー208及びチャンバー内壁部等(内壁に部分的に設ける態様を含む)にも上記材質(有機高分子)を適用できる。チャンバー内壁部等(内壁に部分的に設ける態様を含む)にだけ上記材質(有機高分子)を適用した態様(図示せず)も本願発明に含まれる。
【0114】
本発明においてICPパワーは、使用する装置に応じて、本発明の要旨の範囲内で、適宜調整、変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本実施例においてエッチングの対象となる、レジストパターンを形成したマスク基板を説明するための断面模式図である。
【図2】実施例で使用したエッチング装置の概略構成を説明するための模式図である。
【図3】実施例で使用したエッチング装置の変形例を説明するための模式図である。
【図4】エッチング装置の他の変形例を説明するための模式図である。
【図5】比較例で得られたパターンのCDリニアリティを説明するための図である。
【図6】実施例2で得られたパターンのCDリニアリティを説明するための図である。
【図7】実施例及び比較例で得られたパターンの断面形状を説明するための図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムを含む材料からなるクロム系薄膜を有する被処理体における前記薄膜を、レジストパターンをマスクとしてエッチングし、かつ、ハロゲン含有ガスと酸素含有ガスを含むドライエッチングガスに、プラズマ励起用パワーを投入してプラズマ励起させ、生成した化学種を用いて前記薄膜をエッチングするクロム系薄膜のエッチング方法において、
前記薄膜のエッチングを、レジストパターン以外の有機物の存在下で、前記化学種の少なくとも一部を前記薄膜に対して垂直方向から入射させながら行うことによって、等方性エッチング成分によりエッチングされる前記レジスト層の側壁に、有機生成物を堆積させながらエッチングを行うクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項2】
前記ハロゲン含有ガスが、塩素含有ガスである請求項1に記載のクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項3】
前記レジストパターン以外の有機物として、ドライエッチングガスに有機ガスを添加することによって、前記レジストパターン以外の有機物を存在させる請求項1又は2に記載のクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項4】
前記有機ガスを、前記ドライエッチングガスの30%体積以下とする請求項3に記載のクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項5】
前記有機ガスがエタノールである請求項3又は4に記載のクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項6】
前記レジストパターン以外の有機物として、有機高分子材をエッチング室内に配置した請求項1又は2に記載のクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項7】
前記薄膜のエッチングにおいて、前記プラズマ励起用パワーとして、プラズマの密度ジャンプが起こるプラズマ励起用パワーよりも低いパワーを用いる請求項1〜6のいずれかに記載のクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項8】
前記ドライエッチングガスに、さらにヘリウムを含む請求項7に記載のクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項9】
被処理体が、透明基板上にクロムを含む材料からなる遮光膜が形成されたフォトマスクブランクである、請求項1〜8のいずれかに記載のクロム系薄膜のエッチング方法。
【請求項10】
透明基板上にクロムを含む材料からなる遮光膜が形成されたフォトマスクブランクにおける前記遮光膜を、レジストパターンにおけるレジスト層をマスクとしてエッチングする工程を有するフォトマスクの製造方法において、
前記遮光膜をエッチングする工程に、請求項9に記載されたクロム系薄膜のエッチング方法を用いたフォトマスクの製造方法。
【請求項11】
前記遮光膜のエッチングにより、光近接効果補正パターンを含むパターンを形成する請求項10に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項12】
前記遮光膜のエッチングにより、0.4μm以上2.0μm以下の設計寸法のパターンに対し、CDリニアリティ誤差が15nm以下であるパターンを含むパターンを形成する、請求項10又は11に記載のフォトマスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−20534(P2009−20534A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264821(P2008−264821)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【分割の表示】特願2005−505364(P2005−505364)の分割
【原出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】