説明

グラスラン一体型デビジョンバー

【課題】 ポリプロピレン等の高剛性樹脂で形成した樹脂部に、鉄やステンレスなどの金属製の芯金を埋設したグラスラン一体型デビジョンバーにおいて、当該樹脂部にヒケによる薄肉部が発生せず、外観性にも優れる製品を提供する。
【解決手段】 自動車のリヤドア2の後部に縦方向に設けられるデビジョンバーに、グラスランを一体的に設け、高剛性樹脂で形成した断面略H字状の樹脂部11の先端面11aから、インナーリップ12とアウターリップ13をそれぞれ内方に突設した本体部10と、樹脂部11に埋設された金属製で断面U字状の芯金20とで構成したものにおいて、芯金20を、樹脂部11の先端部11bにも埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のリヤドアの後部に縦方向に設けられるデビジョンバーに、グラスランを一体的に設けたグラスラン一体型のデビジョンバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1乃至図4を参照して説明する。従来、図2に示すように、自動車のリヤドア2の後部に縦方向に設けられるデビジョンバー30には、別体成形されたグラスラン31が取付けられている。
【0003】
近年、軽量化を目的として、こうした構成に代えて、図3に示すように、デビジョンバーに、グラスランを一体的に設けたグラスラン一体型のデビジョンバー40が採用されるようになっている。
【0004】
このグラスラン一体型のデビジョンバー40は、ポリプロピレンなどの高剛性樹脂で形成した断面略H状の樹脂部11の先端面11aから、インナーリップ12とアウターリップ13をそれぞれ内方に突設した本体部10と、前記樹脂部11に埋設された鉄製やステンレス製などの断面U状の芯金41とで構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした従来のグラスラン一体型デビジョンバー40は、それまでのデビジョンバー30とグラスラン31を別体成形して組付けたものと比較して軽量であるといった利点を有するが、新たに解決すべき問題がある。
【0006】
すなわち、このグラスラン一体型のデビジョンバーは、樹脂部11に芯金41を埋設しているが、この芯金41は、図3に示すように、例えば、ドア開口縁に沿って取付けられるオープニングシールの断面U字状の取付部に埋設される芯材と同じように、樹脂部11の先端部11bには埋設されていない。これは、芯金41の成形バラツキなどが発生しても、当該芯金41の先端部11bが樹脂部11から突出してしまうことがないことを考慮したものであり、また、樹脂部11の先端部11bにまで埋設しなくても、充分な剛性を得ることができることによるものである。
【0007】
このため新たに発生する問題とは、押出成形後では形状の変化はないものの、冷却後においては、図3および図4に示すように、樹脂部11の先端部11bにヒケが発生し、当該部分に、芯金41が埋設されている他の部分より肉薄の薄肉部42が形成されてしまうことである。
【0008】
これは、ポリプロピレン等の高剛性樹脂と鉄やステンレス等の金属との線膨張係数が大きく異なることによるものである。すなわち、例えば、ポリプロピレンのそれは、7〜10×10-5/℃であるのに対して、鉄は、12×10-6/℃で、ステンレスは10〜17×10-6/℃であり、ポリプロピレンの線膨張係数は鉄やステンレスのそれより約10倍大きい。従って、芯金41の埋設されていない樹脂部11の先端部11bには、冷却後にヒケが発生し、他の部分より肉薄の薄肉部42が形成されてしまう。この樹脂部11の先端部11bは視覚される部分であるため、部分的に薄肉部42が形成されていると外観性が大きく低下してしまう。
【0009】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、ポリプロピレン等の高剛性樹脂で形成した樹脂部に、鉄やステンレスなどの金属製の芯金を埋設したグラスラン一体型デビジョンバーにおいて、当該樹脂部にヒケによる薄肉部が発生せず、外観性にも優れる製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1および図5を参照して説明する。請求項1に記載のグラスラン一体型デビジョンバー1は、自動車のリヤドア2の後部に縦方向に設けられるデビジョンバーに、グラスランを一体的に設け、高剛性樹脂で形成した断面略H字状の樹脂部11の先端面11aから、インナーリップ12とアウターリップ13をそれぞれ内方に突設した本体部10と、前記樹脂部11に埋設された金属製で断面U字状の芯金20とで構成したものにおいて、前記芯金20を、樹脂部11の先端部11bにも埋設してなるものである。
【0011】
請求項2に記載のグラスラン一体型デビジョンバー1は、自動車のリヤドア2の後部に縦方向に設けられるデビジョンバーに、グラスランを一体的に設け、ポリプロピレン製の高剛性樹脂で形成した断面略H字状の樹脂部11の先端面11aから、インナーリップ12とアウターリップ13をそれぞれ内方に突設した本体部10と、前記樹脂部11に埋設された鉄製またはステンレス製で断面U字状の芯金20とで構成したものにおいて、前記芯金20を、樹脂部11の先端部11bにも埋設してなるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のグラスラン一体型デビジョンバー1は、高剛性樹脂製の樹脂部11に金属製の芯金20を埋設したものにおいて、その芯金20を、樹脂部11の先端部11bにも埋設しているので、押出成形後の冷却によって樹脂部11の先端部11bにヒケによる薄肉部42が形成されない。従って、樹脂部11の全体を同一の肉厚に形成することができ、外観性に優れるグラスラン一体型デビジョンバー1を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載のグラスラン一体型デビジョンバー1は、ポリプロピレン製の高剛性樹脂に、鉄製またはステンレス製の芯金20を埋設したものにおいて、その芯金20を、樹脂部11の先端部11bにも埋設しているので、同様に、押出成形後の冷却によって樹脂部11の先端部11bにヒケによる薄肉部42が発生しない。これにより、樹脂部11の全体を同一の肉厚に形成することができるので、外観性に優れるグラスラン一体型デビジョンバー1を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るグラスラン一体型デビジョンバー1の実施形態を、図1および図5に示す。これは、自動車のリヤドア2の後部に縦方向に設けられるデビジョンバーに、グラスランを一体的に設けたグラスラン一体型デビジョンバー1であり、本体部10と芯金20とで構成される。
【0015】
本体部10は、ポリプロピレン製の高剛性樹脂で形成した断面略H字状の樹脂部11の一方側(ドアガラス3側)の先端面11aから、インナーリップ12とアウターリップ13をそれぞれ内方に突設して形成している。インナーリップ12およびアウターリップ13は、軟質樹脂または軟質ゴムで形成している。
【0016】
なお、樹脂部11の先端面11aは、インナーリップ12とアウターリップ13の付け根であり、当該インナーリップ12とアウターリップ13によって覆われている。芯金20は、樹脂部11に埋設された鉄製(またはステンレス製)で断面U字状である。また、本体部10の他方側には、一対の保持リップ14を有し、当該保持リップ14で、固定ガラス4を支持する支持シール部5を保持している。
【0017】
そして、芯金20を、樹脂部11の先端部11bにも届く形状として埋設している。なお、本実施形態では、この芯金20を樹脂部11の先端面11a(インナーリップ12およびアウターリップ13との境界面)まで達するように埋設している。図1および図5において、符号3は、ドアガラスを示す。
【0018】
また、本実施形態において、樹脂部11はポリプレピレンや、ポリプロピレンにタルク,炭酸カルシウム,ガラス繊維等のフィラーを含有した材料で形成し、芯金20は鉄(またはステンレス)で形成しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、樹脂部11をABS樹脂,AES樹脂,ポリアミドまたはナイロン樹脂,ポリカーボネート,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリアセタール,塩化ビニル樹脂や、これらにタルク,炭酸カルシウム,ガラス繊維などのフィラーを含有した材料で形成し、芯金20をアルミ,およびそれらの合金で形成することもできる。
【0019】
本実施形態に係るグラスラン一体型デビジョンバー1は、ポリプロピレン製の高剛性樹脂に、鉄製(またはステンレス製)の芯金20を埋設したものにおいて、その芯金20を、樹脂部11の先端面11a(インナーリップ12およびアウターリップ13との境界面)を含む全体に埋設しているので、ポリプロピレンの線膨張係数が鉄(またはステンレス)のそれより10倍程度大きいにも関わらず、押出成形後の冷却によって樹脂部11の先端部11bにヒケの発生による薄肉部42が形成されることがない(図6参照)。これによって、樹脂部11の全体を同一の肉厚に形成することができるので、外観性に優れるグラスラン一体型デビジョンバー1を提供することができる。
【0020】
なお、本実施形態では、芯金20を、樹脂部11の先端面11a(インナーリップ12およびアウターリップ13との境界面)に達するまで埋設しているが、例えば、図7に示すように、芯金20の成形バラツキ等によってその先端部20aが樹脂部11の先端面11aから僅かに突出することがあっても、その突出部20aはインナーリップ12やアウターリップ13の付け根部分によって覆い隠されるので、外観性は良好に保たれる。
【0021】
なお、芯金20は、本実施形態のように、その先端部20aが樹脂部11の先端面11aに達するまで埋設しても良いし、図8に示すように、当該先端面11aに僅かに届かない箇所まで埋設することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】デビジョンバーを備えた自動車のリヤドアを示す側面図である。
【図2】従来例に係るデビジョンバーとグラスランを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図3】従来例に係るグラスラン一体型デビジョンバーを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図4】図3に示すグラスラン一体型デビジョンバーの樹脂部の先端部を示す拡大図であり、押出直後と、その後に冷却された形態を示す図である。
【図5】本発明に係るグラスラン一体型デビジョンバーの実施形態を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図6】図5に示すグラスラン一体型デビジョンバーの樹脂部の先端部を示す拡大図であり、押出直後と、その後に冷却された形態を示す図である。
【図7】本発明に係るグラスラン一体型デビジョンバーの他の実施形態において、樹脂部の先端部を示す拡大図である。
【図8】本発明に係るグラスラン一体型デビジョンバーのさらに他の実施形態において、樹脂部の先端部を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1 グラスラン一体型デビジョンバー
2 リヤドア
3 ドアガラス
4 固定ガラス
5 支持シール部
10 本体部
11 樹脂部
11a 先端面
11b 先端部
12 インナーリップ
13 アウターリップ
14 保持リップ
20 芯金
20a 先端部
30 デビジョンバー
31 グラスラン
40 グラスラン一体型デビジョンバー
41 芯金
42 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のリヤドア(2)の後部に縦方向に設けられるデビジョンバーに,グラスランを一体的に設けたグラスラン一体型のデビジョンバーであって、高剛性樹脂で形成した断面略H字状の樹脂部(11)の先端面(11a)から,インナーリップ(12)とアウターリップ(13)をそれぞれ内方に突設した本体部(10)と,前記樹脂部に埋設された金属製で断面U字状の芯金(20)とで構成したものにおいて、前記芯金を,樹脂部の先端部(11b)にも埋設してなるグラスラン一体型デビジョンバー。
【請求項2】
自動車のリヤドア(2)の後部に縦方向に設けられるデビジョンバーに,グラスランを一体的に設けたグラスラン一体型のデビジョンバーであって、ポリプロピレン製の高剛性樹脂で形成した断面略H字状の樹脂部(11)の先端面(11a)から,インナーリップ(12)とアウターリップ(13)をそれぞれ内方に突設した本体部(10)と,前記樹脂部に埋設された鉄製またはステンレス製で断面U字状の芯金(20)とで構成したものにおいて、前記芯金を,樹脂部の先端部(11b)にも埋設してなるグラスラン一体型デビジョンバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−37257(P2008−37257A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214071(P2006−214071)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】