説明

グラスラン

【課題】グラスラン上辺部が長手方向で圧縮された場合に、そのグラスラン上辺部に埋設された線状の芯材が波打ち形状とならないようにする。
【解決手段】ドアサッシュ3のサッシュ上辺部に装着されるグラスラン上辺部4aとドアサッシュ3のサッシュ縦辺部に装着されるグラスラン縦辺部とをコーナー型成形部4dを介して接続するとともに、グラスラン上辺部4aに当該グラスラン上辺部4aの長手方向に延びる線状の芯材13を埋設したグラスラン4において、コーナー型成形部4dのうちグラスラン上辺部4a側の端部に、芯材13のうちコーナー型成形部4d側の端末が臨む凹部14を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアのうちドアサッシュの内周に沿って配設されるグラスランに関し、特に、ドアサッシュのサッシュ上辺部に装着されるグラスラン上辺部に線状の芯材を埋設したグラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のグラスランとして例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載のグラスランは、ドアサッシュのうち車両前後方向に延びるサッシュ上辺部に装着されるグラスラン上辺部と、ドアサッシュのうち上下方向に延びるサッシュ縦辺部に装着されるグラスラン縦辺部と、上記グラスラン上辺部とグラスラン縦辺部とを接続する略L字状のコーナー型成形部と、を有していて、上記グラスラン上辺部に当該グラスラン上辺部の長手方向に延びる線状の芯材を埋設することにより、上記グラスラン上辺部の車両組付時における伸びや温度変化に伴う伸縮を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−150993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記グラスラン上辺部およびサッシュ上辺部の長さは、当然のことながら所定の公差の範囲内でばらつくことになるが、このようなグラスラン上辺部およびサッシュ上辺部の長さのばらつきにより、当該グラスラン上辺部がサッシュ上辺部に対して相対的に長くなった場合、上記グラスラン上辺部はドアサッシュへの組付時に長手方向で圧縮されることになる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のグラスランでは、上記グラスラン上辺部に埋設された芯材が伸縮性を有していないため、ドアサッシュへの組付時に上記グラスラン上辺部が長手方向で圧縮された場合、上記芯材がいわゆる波打ち形状に屈曲または湾曲し、その波打ち形状がドアサッシュ周りの見栄えまたは美観を損ねる虞があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、上記グラスラン上辺部およびサッシュ上辺部の長さのばらつきによって上記グラスラン上辺部がサッシュ上辺部よりも長くなり、上記グラスラン上辺部がドアサッシュへの組付時に長手方向で圧縮された場合であっても、上記芯材がいわゆる波打ち形状とならないようにしたグラスランを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ドアサッシュのサッシュ上辺部に装着されるグラスラン上辺部とドアサッシュのサッシュ縦辺部に装着されるグラスラン縦辺部とをコーナー型成形部を介して接続するとともに、上記グラスラン上辺部に当該グラスラン上辺部の長手方向に延びる線状の芯材を埋設したグラスランにおいて、上記コーナー型成形部のうち上記グラスラン上辺部側の端部であって、且つ断面略コ字状を呈するグラスラン本体の内面および外面のうち一方の面に、上記芯材のうち上記コーナー型成形部側の端末が臨む凹部を形成したことを特徴としている。
【0008】
したがって、この請求項1に記載の発明では、上記グラスラン上辺部およびサッシュ上辺部の長さのばらつきによって上記グラスラン上辺部がサッシュ上辺部よりも長くなり、グラスランのドアサッシュへの組付時に上記グラスラン上辺部が長手方向で圧縮されたときに、上記グラスラン上辺部のうち上記芯材の近傍の部分によって上記凹部が押し潰されることで、上記グラスラン上辺部とサッシュ上辺部との長さの差が吸収されることになる。
【0009】
その上で、望ましくは請求項2に記載の発明のように、上記グラスラン本体のうち上記凹部の反グラスラン上辺部側であって、且つ当該グラスラン本体の内面および外面のうち他方の面に、上記凹部との間に当該凹部の底壁に相当する薄肉部を含む隔壁を隔てて別の凹部を形成し、その別の凹部側への上記隔壁の撓み変形をもって上記グラスラン上辺部とサッシュ上辺部との長さの差をより有効に吸収可能とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
少なくとも請求項1に記載の発明によれば、グラスランのドアサッシュへの組付時に上記グラスラン上辺部が長手方向で圧縮されたときに、上記グラスラン上辺部とサッシュ上辺部との長さの差を上記凹部の潰れ変形によって吸収することができるようになり、上記芯材がいわゆる波打ち形状となることを防止することができる。
【0011】
その上で、請求項2に記載の発明によれば、上記隔壁の撓み変形によって上記グラスラン上辺部とサッシュ上辺部との長さの差をより有効に吸収できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態として自動車のフロントドアを示す図。
【図2】図1に示すグラスランのa部を車室内側から見た図。
【図3】図2に示すグラスランのA−A線に沿った断面図。
【図4】図2に示すグラスラン上辺部が長手方向で圧縮された状態を示す図。
【図5】図4に示すグラスランのB−B線に沿った断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す図であって、グラスランのうち図1のa部に相当する部分を車室内側から見た図。
【図7】図6に示すグラスランのC−C線に沿った断面図。
【図8】本発明の第3の実施の形態を示す図であって、グラスランのうち図1のa部に相当する部分を車室内側から見た図。
【図9】図8に示すグラスランのD−D線に沿った断面図。
【図10】図9に示すグラスラン上辺部が長手方向で圧縮された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の好適な実施の形態として、本発明にかかるグラスランが装着された自動車のフロントドアを示す図である。
【0014】
図1に示すように、自動車用ドアであるフロントドア1は、ドア本体2との間に窓開口部1aを形成する側面視略アーチ状のドアサッシュ3を有していて、ドア本体2内に収容された図示外のウインドウレギュレータによって駆動される昇降式のドアガラスGによって窓開口部1aを開閉するようになっている。そして、ドアサッシュ3の内周側には、ドアガラスGを昇降案内しつつそのドアガラスGとドアサッシュ3との間をシールするグラスラン4が装着されている。
【0015】
グラスラン4は、ドアサッシュ3のうち車体前後方向に延びるサッシュ上辺部3aに装着されるグラスラン上辺部4aと、ドアサッシュ3のうち車体上下方向に延びる前後のサッシュ縦辺部3b,3cにそれぞれ装着される一対のグラスラン縦辺部4b,4cと、両グラスラン縦辺部4b,4cのそれぞれの上端部とグラスラン上辺部4aの長手方向両端部をそれぞれ接続する側面視略L字状の前後のコーナー型成形部4d,4eと、を有している。すなわち、グラスラン4は、押出成形によってそれぞれ形成されたグラスラン上辺部4aの両端部と両グラスラン縦辺部4b,4cの上端部とを、金型成形された両コーナー型成形部4d,4eによって互いに接合することにより、一本の連続した長尺状のものとして形成されている。なお、グラスラン上辺部4aと両グラスラン縦辺部4b,4cおよび両コーナー型成形部4d,4eは、EPDMに代表されるようなゴム材料、または熱可塑性エラストマーであるTPOに代表されるような樹脂材料によっていずれも形成されている。
【0016】
図2は、グラスラン4のうち車体前方側のコーナー型成形部4d近傍、すなわち図1のa部を車室内側から見た図である。また、図3は、図2に示すグラスラン4のA−A線に沿った断面図である。
【0017】
図2に示すように、グラスラン4は、ドアガラスGの外周縁を受容する断面略コ字状のグラスラン本体6を中心として構成されていて、ドアサッシュ3のうちいわゆるロールフォーミングをもって形成されたチャンネル部5にグラスラン本体6が嵌合保持されているとともに、グラスラン本体6の外側面に突出形成された複数の保持リップ10a,10bがチャンネル部5側の段状部5a,5bに弾接または係止されることで、チャンネル部5からの抜け止めが施されている。
【0018】
グラスラン本体6は、車室外側および車室内側のそれぞれの側壁7,8と、それらの両側壁7,8の基端部同士を接続する底壁9とを有しており、当該グラスラン本体6の開口端縁、すなわち両側壁7,8の先端には、グラスラン本体6の内側に向けて斜めに延びる車室内側および車室外側のシールリップ11a,11bと、グラスラン本体6の外側に向けて突出する車室内側および車室外側のモールリップ12a,12bとがそれぞれ形成されている。そして、グラスラン本体6をチャンネル部5に装着した状態で、チャンネル部5の開口端縁が両モールリップ12a,12bによって覆われるとともに、ドアガラスGの表裏両面に両シールリップ11a,11bがそれぞれ弾接または圧接することにより、車室内外をシールすることになる。
【0019】
図2のほか図3に示すように、グラスラン上辺部4aには、先にも述べたようにグラスラン上辺部4aの伸縮防止の観点から、例えば黄銅等の金属からなるワイヤに代表されるような線状の芯材13が長手方向に沿って埋設されている。芯材13は、予め接着剤をコーティングした上でグラスラン上辺部4aの押出成形のための押出機の口金に送り込むことにより、車室内側の側壁7のうち肉厚方向の略中央部にいわゆる同時押し出しのかたちで埋設・一体化されたものであって、グラスラン上辺部4aの全長に亘って設けられている。なお、芯材13は、必ずしも金属製のものである必要はなく、グラスラン上辺部4aの伸縮防止機能さえ発揮できれば例えば樹脂等の非金属材料をもって形成してもよい。言い換えると、グラスラン上辺部4aを構成する材料よりも剛性が高く、且つ温度変化による伸縮が小さい材料であれば、芯材13の材質は問わない。
【0020】
他方、車体前方側のコーナー型成形部4dのうちグラスラン上辺部4a側の端部には、略四分球形状の凹部14がグラスラン本体6のうち車室内側の側壁7の内面7aに凹設されているとともに、その凹部14の底壁に相当する薄肉部15が側壁7の外面7bと面一に形成されている。ここでいう四分球形状とは、球体を当該球体の中心を通り且つ互いに直交する二つの平面によって四等分した形状を意味している。
【0021】
凹部14は、コーナー型成形部4dのグラスラン上辺部4aに対する接合面16および側壁7の内面7aにそれぞれ略半円形状に開口しているとともに、接合面16側の開口部の深さを、芯材13のうちコーナー型成形部4d側の端末13aが当該凹部14内に露出するような深さに設定している。言い換えるならば、芯材13のうちコーナー型成形部4d側の端末13aが凹部14内に臨んでいる。
【0022】
そして、以上のように構成したグラスラン4では、上述したように、グラスラン上辺部4aおよびサッシュ上辺部3aの長さのばらつきにより、グラスラン上辺部4aがサッシュ上辺部3aよりも長くなった場合、グラスラン4のドアサッシュ3への組付時にグラスラン上辺部4aが長手方向で圧縮されることになる。このとき、グラスラン上辺部4aのうち芯材13の近傍を除く部分では、当該部分自体が弾性的に圧縮変形する一方、グラスラン上辺部4aのうち芯材13の近傍の部分は、芯材13が伸縮性を有していないことから、図4,5に示すように、コーナー型成形部4dの薄肉部15が弾性的に撓み変形または圧縮変形することになる。その結果、グラスラン上辺部4aのうち芯材13の近傍の部分は、図4に仮想線Eで示す自由状態と比較して、凹部14を押し潰すようにコーナー型成形部4d側へ相対的に押し出され、グラスラン上辺部4aとサッシュ上辺部3aとの長さの差が吸収されることになる。
【0023】
したがって、本実施の形態によれば、グラスラン上辺部4aがサッシュ上辺部3aに対して相対的に長くなった場合に、その長さの差を凹部14によって吸収することにより、芯材13が波打ち形状に屈曲または湾曲することを防止できる。その結果、特にドアサッシュ3組付状態で外部に露出することになる両モールリップ12a,12bおよび両シールリップ11a,11bがいわゆる波打ち形状となることも防止され、ドアサッシュ3周りの見栄えまたは美観が好ましいものとなる。
【0024】
また、凹部14が側壁7の肉厚方向で非貫通状態に形成されているため、その凹部14を介してグラスラン本体6の内部に雨水や洗車水等が進入するようなことはなく、シール性の低下を防止することができる。
【0025】
図6,7は本発明の第2の実施の形態を示す図であって、そのうち図6はグラスラン4のうち図1のa部に相当する部分を車室内側から見た図、図7は図6に示すグラスラン4のC−C線に沿った断面図である。なお、図6,7において図1〜5に示した第1の実施の形態と同等または相当する部分には同一の符号を付してある。
【0026】
図6,7に示す第2の実施の形態は、グラスラン本体6のうち車室内側の側壁7の外面7bに、第1の実施の形態における凹部14と同一形状の凹部17を凹設したものであって、その凹部17の底壁に相当する薄肉部18が側壁7の内面7aと面一に形成されている。他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
【0027】
したがって、この第2の実施の形態においても、グラスラン上辺部4aがサッシュ上辺部3aに対して相対的に長くなった場合に、その長さの差が凹部17の潰れ変形によって吸収されることになり、上述した第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0028】
図8〜10は本発明の第3の実施の形態を示す図であって、そのうち図8はグラスラン4のうち図1のa部に相当する部分を車室内側から見た図、図9は図8に示すグラスラン4のD−D線に沿った断面図、図10は図9においてグラスラン上辺部4aが長手方向で圧縮された状態を示す図である。なお、図8〜10において図6,7に示した第2の実施の形態と同等または相当する部分には同一の符号を付してある。
【0029】
図8,9に示すように、第3の実施の形態は、車両前方側のコーナー型成形部4dのうちグラスラン上辺部4側の端部に、凹部17とは別の凹部である溝部19を形成したものであって、他の部分は上述した第2の実施の形態と同様である。溝部19は、グラスラン本体6のうち車室内側の側壁7の内面7aに、凹部17の外周側を囲う半円状のものとして凹設されており、その溝部19と凹部17との間には、薄肉部18を含む隔壁20が断面略円弧状に形成されている。言い換えるならば、溝部19は凹部17との間に隔壁20を隔てて形成されている。
【0030】
したがって、この第3の実施の形態によれば、グラスラン上辺部4aおよびサッシュ上辺部3aの長さのばらつきにより、グラスラン上辺部4aがサッシュ上辺部3aよりも長くなり、グラスラン4のドアサッシュ3への組み付けによってグラスラン上辺部4aが長手方向で圧縮された場合、図10に示すように、隔壁20が溝部19側へ撓み変形してグラスラン上辺部4aとサッシュ上辺部3aとの長さの差をより有効に吸収することができる。その結果、芯材13がいわゆる波打ち形状となることをより確実に防止できるようになる。
【0031】
なお、上述した第3の実施の形態では、コーナー型成形部4dの側壁7のうち外面7bに凹部17を、内面7aに溝部19をそれぞれ形成したが、コーナー型成形部4dの側壁7のうち内面7aに凹部を、外面7bに溝部をそれぞれ形成してもよいことは言うまでもない。
【0032】
また、上述した各実施の形態では、グラスラン4のうち車両前方側のコーナー型成形部4dに本発明の凹部を形成した例を示したが、グラスラン4のうち車両後方側のコーナー型成形部4eにも同様に凹部を形成可能であることは言うまでもない。
【0033】
さらに、上述した各実施の形態では、グラスラン上辺部4aのうち車室内側の側壁7に芯材13を埋設した例を示したが、グラスラン本体6の他の部位に芯材13を埋設した場合においても同様に本発明を適用できるほか、グラスラン上辺部4aに芯材を複数埋設した場合であっても同様に本発明を適用可能である。なお、グラスラン上辺部4aに複数の芯材を埋設した場合には、各芯材に対応して複数の凹部を設ければよい。また、このように複数の凹部を設ける場合、それらの各凹部がグラスラン本体6の内面および外面のうち一方の面にそれぞれ形成されている必要はなく、グラスラン本体6のうち各凹部を形成する面をそれら各凹部毎に異ならしめてもよい。
【符号の説明】
【0034】
3…ドアサッシュ
3a…サッシュ上辺部
3b…サッシュ縦辺部
4…グラスラン
4a…グラスラン上辺部
4b…グラスラン縦辺部
4d…コーナー型成形部
6…グラスラン本体
13…芯材
14…凹部
15…薄肉部
17…凹部
18…薄肉部
19…溝部(別の凹部)
20…隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアサッシュのサッシュ上辺部に装着されるグラスラン上辺部とドアサッシュのサッシュ縦辺部に装着されるグラスラン縦辺部とをコーナー型成形部を介して接続するとともに、上記グラスラン上辺部に当該グラスラン上辺部の長手方向に延びる線状の芯材を埋設したグラスランにおいて、
上記コーナー型成形部のうち上記グラスラン上辺部側の端部であって、且つ断面略コ字状を呈するグラスラン本体の内面および外面のうち一方の面に、上記芯材のうち上記コーナー型成形部側の端末が臨む凹部を形成したことを特徴とするグラスラン。
【請求項2】
上記グラスラン本体のうち上記凹部の反グラスラン上辺部側であって、且つ当該グラスラン本体の内面および外面のうち他方の面に、上記凹部との間に当該凹部の底壁に相当する薄肉部を含む隔壁を隔てて別の凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のグラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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