説明

グラファイトシート及びその製造方法

【課題】 各種の電子・電気機器における発熱部品の放熱用部品として、熱抵抗がなく小型で、多機能を具備したグラファイトシート及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 グラファイトシート本体1の一部分に溝4a等を設けて放熱部3を形成し、残りの部分を板状の熱伝導部2として、同一シート上に熱伝導部2と放熱部3とを一体に形成し、1枚のグラファイトシートでヒートコンダクターとフィンの機能をさせ、更に高熱伝導性フィラーを含有させた高分子シート8で、グラファイトシート本体1の少なくとも一方の面をラミネートして補強する。これにより発熱体11からグラファイトシート本体1へ効率良く熱伝達され、一枚のシートからなるグラファイトシート上を小さな抵抗で熱伝導されて放熱部3で放熱できると共に、高い熱伝導性のため放熱部の小型化が可能となり、制限されたスペースへの取付けが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、電子・電気機器における発熱部品の放熱に好適なグラファイトシート及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンピューターなどの各種の電子・電気機器に搭載されている半導体素子や、その他の発熱部品などの冷却の問題が注目されている。
【0003】このような冷却すべき部品の冷却方法としては、それが搭載される機器筐体にファンを取り付け、その機器筐体を冷却する方法や、その冷却する部品にヒートパイプやヒートスプレッダー、ヒートシンクやフィンなどの熱伝導体を取り付け、その素子からの熱を外部に運ぶことで冷却する方法等が一般的である。
【0004】冷却すべき部品に取り付ける熱伝導材料としては、アルミニウム板や銅板などが挙げられる。そして、この場合、アルミニウムや銅板の一部、またはヒートパイプに発熱部品を取り付け、更に、その板の部分をフィンやファンを用いて外部に放熱する。
【0005】ところで、近年は半導体素子等の発熱部品が搭載される各機器が小型化され、また、その部材の発熱量が大きくなる傾向がある。しかし筐体が小型化するため、フィンやヒートシンク及びファンなどの部品を挿入するスペースが制限されてきている。
【0006】そこで近年は、熱伝導体(ヒートコンダクタ)として、熱伝導性に優れるグラファイトシートが有力視されている。グラファイトシートはカーボンが層状構造をとっており、グラファイトシートの面内の熱伝導率が600から800W/mKと銅やアルミニウムなどの金属より高く、かつ密度が1g/cm3程度と軽い上に、高い電気伝導性を持つ材料である。また、シートの厚さを薄くでき、フレキシブルなために狭い場所や、隙間をぬって取り回す必要のある場所のヒートコンダクタ材として期待される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、グラファイトシートをヒートコンダクタとして用いても、最後は大気中に放熱しなければならず、別途作製したフィンを筐体につけるスペースがないことや、フィンとヒートコンダクタの熱抵抗が問題となっていた。
【0008】そこで本発明の目的は、熱抵抗がなく小型で、多機能を具備したグラファイトシート及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、グラファイトシート本体に、凹凸部からなる放熱部と板状の熱伝導部とが形成されたグラファイトシート(以下、本発明のグラファイトシートと称する。)に係るものである。
【0010】本発明のグラファイトシートによれば、グラファイトシート本体に凹凸部からなる放熱部と板状の熱伝導部とが形成されているので、この凹凸部によって放熱部の表面積が増大し、放熱部と熱伝導部とが同一のグラファイトシート上に一体形成され、放熱と熱伝導との両機能を具備することができる。従って、高熱伝導性のグラファイトシートにより伝導された熱が、同一の本体に形成された凹凸部から直接放熱されるため、高効率な熱伝達及び放熱が可能になり、その結果、同一シート上を小さい熱抵抗で熱伝導されるために、発熱体からの熱を効率良く放熱部へ伝達でき、しかも高熱伝導性のために放熱部を小型化しても外部への放熱効率が向上することから、小型化が可能になって、制限されたスペースへの取付けが可能になる。
【0011】また、本発明は、グラファイトシート本体に、凹凸部からなる放熱部と板状の熱伝導部とを形成する工程を有する、グラファイトシートの製造方法(以下、本発明の製造方法と称する。)に係るものである。
【0012】本発明の製造方法によれば、上記した本発明のグラファイトシートと同様にグラファイトシートが形成されるので、本発明のグラファイトシートと同様な効果が奏せられる、再現性の良いグラファイトシートの製造方法を提供することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0014】上記した本発明のグラファイトシート及び製造方法においては、前記熱伝導部に発熱体が配されるグラファイトシートとして使用されるのが望ましく、このため、前記熱伝導部の少なくとも一方の面に高分子シートが設けられているのが、グラファイトシートの補強と柔軟性を持たせる点で望ましい。
【0015】そして、前記高分子シートが、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又はシリコーンゴムにより形成されていることが、グラファイトシートを絶縁し、高分子シートの可撓性によってグラファイトシートを保護できる点で望ましい。
【0016】更に、前記高分子シートに、高熱伝導性材料を含有させることが、高分子シートに熱伝導性を持たせ、発熱体の熱を効率良くグラファイトシートに伝導できる点で望ましい。
【0017】この場合、前記放熱部及び前記熱伝導部の少なくとも一方の面がダイヤモンドライクカーボンで被覆されていてもよい。これによりグラファイトシートの補強と共に、発熱体からグラファイトシートへの熱伝導も良く、グラファイトシートからの粉落ちを防止できる点で望ましい。
【0018】そして、前記熱伝導部の少なくとも一方の面に前記高分子シートが被着され、前記グラファイトシート上に発熱体が接合されることがグラファイトシートと発熱体間を絶縁すると共に、高分子シートに付加された熱伝導性によって発熱体からグラファイトシートへ熱伝導できる点で望ましい。
【0019】また、前記熱伝導部に被着された前記高分子シートに欠除部が形成され、この欠除部において絶縁性の熱伝導性接着材を介して発熱体が前記グラファイトシート本体に接合されていてもよく、これにより、発熱体の熱が直にグラファイトシートに伝導され、熱伝導効率が高められる点で望ましい。
【0020】更に、前記発熱体が熱伝導性接着材によって前記熱伝導部に接合されることが、発熱体の接着性を高めると共に、接合部の熱伝導を高める点で望ましい。
【0021】また、前記凹凸部がエンボッシングにより形成されていることが凹凸部を精度良く形成できる点で望ましい。
【0022】この場合、前記グラファイトシート本体を加熱処理しながら加工して少なくとも前記熱伝導部を形成し、凹凸部も加熱処理しながらエンボッシングすることが、加工を容易にできる点で望ましい。
【0023】更に、前記熱伝導部を曲げ加工する場合やエンボッシング時は、前記加熱処理を室温から100℃の温度で行うのが加工性が高められる点で望ましい。
【0024】以下、本発明の好ましい実施の形態を具体的に説明する。
【0025】本発明のグラファイトシートは、例えば、厚みが0.05〜0.5mmに圧延されたグラファイトシートの一部分にエンボッシング(以下、エンボス加工と称することがある。)を行ない、表面積を増やすことにより小型のフィンとしての機能を持たせ、残りの部材にヒートスプレッダーもしくはヒートコンダクタの役割を負わせることにより、フィンとヒートコンダクタが一体成形された放熱部品である。図1〜図3にその基本的なグラファイトシートの形状を示す。
【0026】但し、グラファイトシート本体1の厚さが、0.05mm未満であれば、薄すぎるために、グラファイトシート本体1の強度が低下し、シート化が難しくなり、また面方向への熱伝導が不均一になり易い。グラファイトシート本体1の厚さが、0.5mmを超えると、グラファイトシート本体1の機械的強度は増すが熱伝導性が損なわれると共に、制約された場所への設置性が妨げられる。
【0027】即ち、図1は、グラファイトシート本体1に、板状の熱伝導部2と横方向に溝4aが複数形成された放熱部3が設けられ、発熱体取付け部6上に発熱体が配される。従って、発熱体の熱は熱伝導部2に伝導され、これと一体の放熱部3へ運ばれて放熱され、溝4aと平行な空気の流れ7によって効率的に放熱部3が冷却される。
【0028】図2は、図1と同様なグラファイトシート本体1に、放熱部3の溝4aを縦方向に形成したものであり、この場合も、冷却するための空気の流れも溝4aに平行な方向がよい。また、図3は、図1と同様なグラファイトシート本体1に、放熱部3が上記した溝4aと異なるブラインド孔4bを設けて形成される。この場合の冷却のための空気の流れ方向7はいずれの方向でもよく、空気が孔内に巻き込まれることによりフィンとして機能すると共に、強度が高い利点を有している。
【0029】上記した基本的な形状は、圧延によってシート加工後にエンボス加工によって形成される。そして、これらのグラファイトシート本体1の寸法は、図1に示すように、長さLが10cm、幅Wが4cm、厚さTが0.2mmのグラファイトシートの一部(長さ3cm)を放熱部3として室温から100℃の低温でエンボス加工を行う。
【0030】そして、図4に放熱部3の拡大概略断面図として示すように、溝4a(又はブラインド孔4b)の幅W1と深さDとのアスペクト比は1:10(0.1mm:1.0mm)、溝4aの幅W1と溝間の距離W2との比が1:1(0.1mm:0.1mm)に形成される。しかし、これらの比はこのサイズに限定されるものではない。
【0031】上記したグラファイトシート本体1の熱伝導部2と放熱部3のエンボス加工の形状は、用途に応じて図1〜図3など、どの構造をとってもよい。このように同一部材上に熱伝導部2と放熱部3を一体形成することにより、従来、熱伝導部と放熱部が異なる部材を用いていたために生じていた両者間の熱抵抗を大幅に低下させることができる。
【0032】しかし、グラファイトシート本体1は、図5R>5に示すようにカーボンが層構造をなしたものであり、面内方向(a−b方向)の分子の結合は強固であるが、面方向と直交する方向のc1〜c2〜c3間は分子間力によって結合されているため、結合力は弱く、面内方向にはずれ易い。従って、圧延によって形成したグラファイトシート本体1にエンボス加工することにより、その一部分に放熱部3を凹凸に形成して表面積を増大させると共に、エンボス加工時の押圧により分子が緻密になり、厚みが10%程減少するもののグラファイトシートの強度が向上する。
【0033】また、既述したように、グラファイトシートは材質的に脆いので、グラファイトシート本体1の絶縁のためなど、必要に応じてシートの熱伝導部2の少なくとも片面をPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどの高分子シート又はシリコーンなどの樹脂材でラミネートすることにより、グラファイトシートを補強し、柔軟性を持たせることができる。
【0034】更に、上記高分子シートに高熱伝導性のフィラー(金属粉など)を含有させておくことにより、絶縁性のある高分子シートに熱伝導性が付加されるため、発熱体の熱のグラファイトシートへの伝導効率を高めることができる。
【0035】また、グラファイトシート本体1の表面に、例えば、スパッタリングによりダイヤモンドライクカーボン(DLC)を薄くコーティング(厚さ10μm以下)しておけば、ダイヤモンドライクカーボンは硬く、熱伝導率も良いためにシートの強度も向上し、発熱体からグラファイトシートへの熱伝導性も良くなり、シートからの粉落ちを防ぐことができる。
【0036】実施の形態1図6は本実施の形態を示す概略断面図であり、上記した図1のような構造のグラファイトシート本体1の熱伝導部2の一方の面に、PET等からなる高分子シート8をラミネートし、この上に発熱体11が熱伝導性接着材9を介して接合されたグラファイトシート10Aを示す。
【0037】この高分子シート8は、上記のようにして熱伝導性を持たせたものであり、これによりグラファイトシート本体1が補強されて柔軟性を帯びると共に、発熱体11とグラファイトシート本体1との間が電気的に絶縁される。但し、この高分子シート8でラミネートする面はこれに限るものではない。
【0038】即ち、図6は、グラファイトシート本体1の上面に高分子シート8がラミネートされ、その上方に発熱体11が配されているが、高分子シート8を反対側の面にもラミネートしてグラファイトシート本体1の両面に配してもよく、また、高分子シート8を図6とは反対側のみに設けることもできる。しかし、高分子シート8を図6とは反対側のみに設ける場合は、発熱体11とグラファイトシート本体1との間に絶縁性のある熱伝導性接着材等を配し、双方を接合することが必要である。
【0039】このような構成により、放熱して冷却すべき半導体素子等の発熱体11の熱が、熱伝導性接着材9から高分子シート8を経て、グラファイトシート本体1の熱伝導部2へ伝導され、熱伝導部2と一体に形成された放熱部3から大気中に放熱される。
【0040】このように、本実施の形態のグラファイトシート10Aは、冷却すべき発熱体11をこのグラファイトシート10Aに接合して放熱する放熱用部品であり、このグラファイトシート10Aを筐体に結合して筐体内部で放熱したり、グラファイトシート10Aの放熱部3を筐体の外部へ配置するなど、様々な放熱形態に使用される。
【0041】従って、放熱部3からの放熱と同時に、グラファイトシート10Aの熱伝導部2からも機器の筐体に熱を直接逃がす場合には、絶縁性無機物や金属粉が充填された電気絶縁性を持つ熱伝導性接着剤や、100ミクロン以下の厚さを持つ熱伝導性テープを用いて筐体とグラファイトシート本体1を接着してもよい。
【0042】また、発熱体11とグラファイトシート10Aの熱伝導部2との密着性を高めるには、それらの間に高熱伝導率を持つ絶縁性無機物や金属粉が充填された電気絶縁性を持つ熱伝導性接着剤を塗布して接着したり、グリースや放熱シート又は相変化(フェーズチェンジ)材等を用いてもよい。上記した用途及び接着方法や接着剤は後述する他の実施の形態も同様。
【0043】実施の形態2図7は、本実施の形態を示す概略断面図であり、図1のような構造のグラファイトシート本体1の一方の面に、スパッタリングによりDLC5を用いて被覆したグラファイトシート10Bであり、この熱伝導部2の上方に発熱体11が熱伝導性接着材9を介して接合されている。そして、この例も上記実施の形態1の場合と同様に、グラファイトシート本体1の両面又は反対側の面のみを被覆することができる。
【0044】このような構成により、硬いDLC5による被覆によって補強されるため、グラファイトシート本体1の強度が向上すると共に、熱伝導性が妨げられることもなく、シートからの粉落ちが防がれながら、図1と同様な放熱性能を発揮することができる。
【0045】実施の形態3図8は、本実施の形態を示す概略斜視図であり、図1のような構造のグラファイトシート本体の熱伝導部2の一方の面に、高分子シート8をラミネートし、この高分子シート8の一部分が欠除されたグラファイトシート10Cである。
【0046】図示の如く、このグラファイトシート10Cは、発熱体11が接合される部分の高分子シート8の一部分が欠除された欠除部12が形成され、この欠除部12に熱伝導性接着材9を介して発熱体11が接合される。従って、発熱体11の位置決めが容易であり、接合した発熱体11の熱は、密着性と熱伝導性の優れた熱伝導性接着材9を介して直にグラファイトシート10Cに接合されるため、熱伝導性が向上するという利点がある。そして、これも上記した実施の形態1と同様に、高分子シート8をグラファイトシート本体1の両面又は図8R>8とは反対側面のみに設けることができる。
【0047】図9は変形例の一例を示す概略断面図であり、図1のような構造のグラファイトシート本体1において、放熱部3の溝4aを放熱部3の両面に設けたグラファイトシートを示し、実施の形態1と同様に、発熱体11は熱伝導部2の一方の面にラミネートした高分子シート8の上方に、熱伝導性接着材9を介して接合される。
【0048】従って、上記した各実施の形態と同様に放熱部3に運ばれた熱は、放熱部3の両面に設けた溝4aで形成された凹凸によって、放熱効率を高めて放熱することができる。
【0049】図10は、他の変形例を示す概略断面図であり、放熱部3をグラファイトシート本体1の中央部に設け、上記例(図9)と同様にシートの両面に溝4aを形成し、グラファイトシート本体1の両端部を熱伝導部2とし、この両端部に発熱体11を配するようにしたものである。
【0050】従って、発熱体11は、双方の熱伝導部2の一方の面にラミネートした高分子シート8の上方に熱伝導性接着材9を介して接合することができ、これら発熱体11の熱は放熱効率の高い放熱部3で放熱される。そして、図示の如くこの場合、グラファイトシート本体1は、両端部の熱伝導部2の端部を支持体14で支持できるので、グラファイトシート本体1の応力が軽減されるため、本体の厚みを薄く形成でき、その結果、グラファイトシートの熱伝導性を更に高めることができる。
【0051】図11は、他の変形例を示す概略断面図であり、グラファイトシート本体1の両端部において、互いに反対側面に溝4aを設けて放熱部を形成し、それぞれの溝4aとは反対側の面に高分子シート8をラミネートし、そこに発熱体11が熱伝導性接着材9を介してグラファイトシート本体1上に配設されたものである。つまり、この場合、グラファイトシート本体の両端部において、一方の面側が熱伝導部2となり、その反対面側が放熱部3として形成される。
【0052】従って、各発熱体11の熱は、熱伝導性接着材9及び高分子シート8を経てグラファイトシート本体1へ伝導され、発熱体11の接合面の反対側面の放熱部3へ最短距離を熱伝導して放熱することができる。
【0053】図12は、他の変形例を示す概略断面図であり、グラファイトシート本体1に折り曲げ加工を施し、筐体等の内面角等にグラファイトシートを配する例である。
【0054】即ち、グラファイトシート本体1を例えば筐体に沿って90度に曲げた構造が必要な場合、これまではシートを曲げることにより折れ、粉が落ち、かつその部分で熱伝達が悪くなることが多かったが、グラファイトシート本体1を前もって室温から100℃の低温で熱処理しながら加工することにより、折り目の破断を防ぐことができる。これにより、グラファイトシート本体1の熱伝導部2を筐体15の内角部に両面テープ16で接着し、かつ放熱部3のみを筐体15の外側に配置することも可能になる。なおグラファイトシートの強度を上げるためや絶縁のために、高分子シート8でラミネートし、補強してもよい。また、高分子シート8をラミネート後に曲げ加工してもよく、これにより曲げ部の割れ等を防ぐことができる。
【0055】図13は、更に他の変形例を示す概略斜視図であり、図12の例がコ型に曲げ加工したのに対し、Z型に曲げ加工した例である。
【0056】この曲げ加工は図12の場合と同様にして実施することができる。そして、発熱体11の接合部のみの高分子シート8を、上記した実施の形態3と同様に欠除して欠除部12を設け、この欠除部12において、発熱体11を絶縁性のある熱伝導性接着材9を介してグラファイトシート本体1に接合してもよい。そしてこのグラファイトシートを筐体内の支持板14等に両面テープ16等で接着し、図12の場合と同様に使用することができる。
【0057】上記した各実施の形態及び変形例によれば、グラファイトシート本体1の一部分に溝4a又はブラインド孔4bを設けて放熱部3を形成し、残りの部分を板状の熱伝導部2とすることにより、熱伝導部2と放熱部3とが同一部材上に一体に形成され、換言すれば、1枚のグラファイトシートがヒートコンダクタとフィンとして機能する。しかも、高熱伝導性のフィラーを含有させた高分子シート8でグラファイトシート本体1の少なくとも一方の面をラミネートすることにより、グラファイトシートに柔軟性を持たせて補強すると共に、絶縁性のある高分子シート8に熱伝導性が付加される、またDLC5で少なくとも一方の面を被覆することにより補強される。そしていずれも、熱伝導部2上に配される発熱体11の熱が熱伝導性良くグラファイトシートに伝わり、同一部材上で熱伝導部2の反対側に形成された放熱部3から高効率で放熱することができ、フィンやヒートシンクなどを設置するスペースのない小型の電気・電子機器等の放熱に効果的に用いることができる。
【0058】上記した各実施の形態及び変形例は、本発明の技術的思想に基づいて変形することが可能である。
【0059】例えば、凹凸部の形状は実施の形態等に示した溝4a又はブラインド孔4b以外の形状(鋸刃型等)であってもよく、ラミネート材も実施の形態以外の適宜の材料を使用してもよい。
【0060】また、グラファイトシート本体1の形状、寸法等も実施の形態等に限定するものでもなく、適宜であってよい。
【0061】
【発明の作用効果】上述した如く、本発明のグラファイトシート及びその製造方法は、凹凸部によって放熱部の表面積が増大し、放熱部と熱伝導部とが同一のグラファイトシート上に一体形成され、放熱と熱伝導との両機能を具備することができる。従って、高熱伝導性のグラファイトシートにより伝導された熱が、同一の本体に形成された凹凸部から直接放熱されるため、高効率な熱伝達及び放熱が可能になり、その結果、同一シート上を小さな熱抵抗で熱伝導されるために、発熱体からの熱を効率良く放熱部へ伝達でき、しかも高熱伝導性のために放熱部を小型化しても外部への放熱効果が向上することから、小型化が可能になって、制限されたスペースへの取付けが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のグラファイトシート本体の基本的な形状を示す概略斜視図である。
【図2】同、グラファイトシート本体の基本的な他の形状を示す概略斜視図である。
【図3】同、グラファイトシート本体の基本的な更に他の形状を示す概略斜視図である。
【図4】同、グラファイトシートの放熱部の拡大概略断面図である。
【図5】同、グラファイトシートの層構造を示す概略図である。
【図6】同、実施の形態1によるグラファイトシートを示す概略断面図である。
【図7】同、実施の形態2によるグラファイトシートを示す概略断面図である。
【図8】同、実施の形態3によるグラファイトシートを示す概略断面図である。
【図9】同、グラファイトシートの変形例を示す概略断面図である。
【図10】同、グラファイトシートの他の変形例を示す概略断面図である。
【図11】同、グラファイトシートの他の変形例を示す概略断面図である。
【図12】同、グラファイトシートの他の変形例を示す概略断面図である。
【図13】同、グラファイトシートの更に他の変形例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…グラファイトシート本体、2…熱伝導部、3…放熱部、4a…溝、4b…ブラインド孔、5…DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、6…発熱体取付け部、7…空気の流れ、8…高分子シート、9…接着材、10A、10B、10C…グラファイトシート、11…発熱体、12…欠除部、14…支持板、15…筐体、16…両面テープ、c〜c…カーボン層、L…長さ、W…幅、T…厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 グラファイトシート本体に、凹凸部からなる放熱部と板状の熱伝導部とが形成されたグラファイトシート。
【請求項2】 前記熱伝導部に発熱体が配される、請求項1に記載したグラファイトシート。
【請求項3】 前記熱伝導部の少なくとも一方の面に高分子シートが設けられている、請求項1に記載したグラファイトシート。
【請求項4】 前記高分子シートが、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又はシリコーンゴムからなる、請求項3に記載したグラファイトシート。
【請求項5】 前記高分子シートが高熱伝導性材料を含有している、請求項4に記載したグラファイトシート。
【請求項6】 前記放熱部及び前記熱伝導部の少なくとも一方の面がダイヤモンドライクカーボンで被覆されている、請求項1に記載したグラファイトシート。
【請求項7】 前記熱伝導部の少なくとも一方の面に前記高分子シートが被着され、前記グラファイトシート上に発熱体が接合される、請求項3又は5に記載したグラファイトシート。
【請求項8】 前記熱伝導部に被着された前記高分子シートに欠除部が形成され、この欠除部において発熱体が前記グラファイトシート本体に接合されている、請求項3に記載したグラファイトシート。
【請求項9】 前記発熱体が熱伝導性接着材によって前記熱伝導部に接合される、請求項2、7又は8に記載したグラファイトシート。
【請求項10】 前記凹凸部がエンボッシングにより形成されている、請求項1に記載したグラファイトシート。
【請求項11】 グラファイトシート本体に、凹凸部からなる放熱部と板状の熱伝導部とを形成する工程を有する、グラファイトシートの製造方法。
【請求項12】 前記凹凸部をエンボッシングにより形成する、請求項11に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項13】 前記グラファイトシート本体を加熱処理しながら加工して少なくとも前記熱電導部を形成する、請求項12に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項14】 前記熱伝導部を曲げ加工する、請求項13に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項15】 前記加熱処理を室温から100℃の温度で行う、請求項13又は14に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項16】 前記熱伝導部に発熱体を配する、請求項11に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項17】 前記熱伝導部の少なくとも一方の面に高分子シートを設ける、請求項11に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項18】 前記高分子シートに、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又はシリコーンゴムを用いる、請求項17に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項19】 前記高分子シートに、高熱伝導性材料を含有させる、請求項18に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項20】 前記放熱部及び前記熱伝導部の少なくとも一方の面をダイヤモンドライクカーボンで被覆する、請求項11に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項21】 前記熱伝導部の少なくとも一方の面に前記高分子シートを被着し、前記グラファイトシート上に発熱体を接合する、請求項17又は19に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項22】 前記熱伝導部に被着した前記高分子シートに欠除部を形成し、この欠除部において発熱体を前記グラファイトシート本体に接合する、請求項17に記載したグラファイトシートの製造方法。
【請求項23】 前記発熱体を熱伝導性接着材によって前記熱伝導部に接合する、請求項16、21又は22に記載したグラファイトシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2003−188323(P2003−188323A)
【公開日】平成15年7月4日(2003.7.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−385583(P2001−385583)
【出願日】平成13年12月19日(2001.12.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(501488527)大成ラミネーター株式会社 (1)
【Fターム(参考)】