説明

グラフト化シリコーンポリマー及びそれよりなる製品

【課題】皮膚刺激性のない揮発性溶媒に対する溶解性が高いグラフト化シリコーンポリマー、及びそれを用いた化粧品を提供する。
【解決手段】(a)メルカプト変性シリコーンポリマー、及び(b)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むラジカル重合性モノマー成分であって、該成分のみの重合物の溶解度パラメーターが9.14(cal/cm1/2以上となるように選択されるラジカル重合性モノマー成分の重合生成物を含み、37℃、周波数1Hzにおいて1×10Pa以上の貯蔵弾性率を示し、23℃においてデカメチルシクロペンタシロキサンに1重量%以上溶解する、グラフト化シリコーンポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト化シリコーンポリマー及びそれを用いた製品、特に化粧品を含むパーソナルケア製品に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品は、皮膚、毛髪、爪の洗浄、手入れ、保護又は視覚的魅力の付与のために広く使用される。特に、皮膚の洗浄や水仕事による肌荒れの予防又は改善のためには、ゲル、乳液又はクリームからなる皮膚用化粧品が適用される。これらの皮膚用化粧品は、水分、保湿剤及び油分を皮膚に補給することで皮膚のモイスチャーバランスを整え、皮膚の保湿・柔軟機能を果たしている。
【0003】
一方、洗浄や水仕事の頻度が高く肌荒れの進行しやすい主婦、医師及び理容師等は、水分、保湿剤及び油分の皮膚への補給が間に合わずに肌荒れが進み、ひどい場合は炎症を起こす場合もある。このような場合、一般に、ワセリンや保湿剤が不揮発性成分として含まれるハンドクリームが用いられる。しかしながら、このようなハンドクリームは、洗浄や水仕事により洗い流されたり、接触した物に付着したりするため、治療効果を維持するために、頻繁に使用することが求められる場合がある。
【0004】
そこで、洗浄や水仕事により水分、天然保湿因子及び脂質が失われないように、作業前に皮膚上に耐水性皮膜を形成して肌荒れを予防する皮膚保護化粧品が有用である。このような化粧品は、一般に、撥水性を付与するために、シリコーンオイル、皮膜形成性のアクリルポリマー又はシリコーンポリマーを含有している。
【0005】
有機シリコーン樹脂を用いた皮膚保護用化粧品は、例えば、特公平6−15448号公報及び特許第2539190号に開示されている。
【0006】
その他の皮膚保護用化粧品として、太陽光線中の紫外線であるUVA(320nm〜400nm)及びUVB(290nm〜320nm)をカットして皮膚を保護する日焼け止め化粧品や、UVBによる紅斑を起こさずに均一な日焼け色の肌を作るサンタン化粧品がある。特に、夏場の強い紫外線にさらされる場合、日焼け止め化粧品は、成分が海水又は汗で流れないように固定するため、耐水性皮膜の形成を必要とする。例えば、特公平6−72085号公報では、有機シリコーン樹脂を用いた日焼け止め化粧品が開示されている。
【0007】
また、ヘアケア化粧品として、コンディショニング剤が用いられる。コンディショニング剤としては、カチオン性界面活性剤やアミノ変性シリコーンが用いられるが、これらを用いた場合、べたつき感やアレルギー反応等が生じる場合がある。コンディショニング剤として、たんぱく質も用いられるが、付着力が弱く、容易に水で流れてしまう。
【0008】
皮膚、毛髪又は爪の上(特に、皮膚及び睫毛)に塗布されるメークアップ化粧品は、容易な化粧剥がれを引き起こす汗、涙及び皮脂による化粧崩れを防止するために、耐水耐皮脂性皮膜の形成が必要とされる。そこで、油性原料の中に顔料又は無機粉体を分散させ、メークアップ化粧品の皮膚への付着性を向上させることが試みられているが、化粧品にべたつき感を与える傾向がある。特許第3552741号には、有機シリコーン樹脂、及び分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するジメチルポリシロキサン化合物と(メタ)アクリル酸エステルを主体とするラジカル重合性モノマーとをラジカル重合して得られるアクリル−シリコーンポリマーを含むアイメークアップ化粧品が開示されている。
【0009】
さらに、特許第2700816号においては、分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するジメチルポリシロキサン化合物と(メタ)アクリル酸エステルを主体とするラジカル重合性モノマーとをラジカル重合して得たアクリル−シリコーンポリマーの化粧品への応用について述べられている。このようなポリマーは、アクリルポリマー主鎖にシリコーン化合物の側鎖がグラフトされた構造を有している。
【0010】
特許第2939309号には、付着性、持続性に優れる皮膜形成剤として、メルカプト変性シリコーンとラジカル重合性ビニルモノマーを溶液重合してなるビニル−シリコーンポリマーの製造方法、並びに、感圧接着剤用の剥離塗料としての用途が開示されている。このようなポリマーは、シリコーンポリマー主鎖にビニル化合物の側鎖がグラフトされた構造を有している。上記ポリマーは、メルカプト変性シリコーンポリマーを連鎖移動剤として用いたものであり、メルカプト変性シリコーンポリマーの反応率は高い。また、メルカプト変性シリコーンポリマーはいくつかの手法により調製でき、組成比や分子量等を容易に変更できるため、様々なメルカプト変性シリコーンポリマーを入手することができる。なお、特表平7−508027号公報及び特表平10−512233号公報においては、メルカプト変性シリコーンとラジカル重合性ビニルモノマーを溶液重合したビニル−シリコーンポリマーを用いた化粧品が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これまで、長い間、1)皮膚刺激性のない揮発性溶媒に対して高い溶解性を有し、化粧品として使用したときに、皮膚上でのべたつきがなく、且つ耐水耐皮脂性に優れる皮膜の形成が可能なポリマー、及び2)そのようなポリマー含有する化粧品が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、グラフト化シリコーンポリマーに関し、(a)下記一般式(1)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー、及び
【化1】


(b)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むラジカル重合性モノマー成分の重合生成物を含む。(b)成分は、該ラジカル重合成モノマー成分のみの重合物の溶解度パラメーターが9.14(cal/cm1/2以上となるように選択され、上記グラフト化シリコーンポリマーは、37℃、周波数1Hzにおいて1×10Pa以上の貯蔵弾性率を示し、23℃においてデカメチルシクロペンタシロキサンに1重量%以上溶解する。
【0013】
式(1)中、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アリル基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基;Rはアリーレン基又は炭素数1〜3のアルキレン基;mは10〜540の整数;nは1以上の整数;をそれぞれ示す。
【0014】
ここで、重量パーセント(重量%)は、[グラフト化シリコーンポリマーの重量]/[(グラフト化シリコーンポリマーの重量)+(デカメチルシクロペンタシロキサンの重量)]の式に基づき計算される。また、用語「溶解」とは、ポリマーの析出や溶液の白濁が生じない状態を意味する。
【0015】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、典型的には、シリコーンポリマー((a)成分)の主鎖に、(b)成分由来の側鎖がグラフトされた構造を有しており、上記した所定の溶解度パラメーター、貯蔵弾性率と溶媒溶解性を示す。そのために、皮膚刺激性のない揮発性溶媒に対して高い溶解性を示し、このグラフト化シリコーンポリマーを用いて得られた化粧品は、皮膚上でのべたつきがなく、耐皮脂性に十分優れる皮膜を形成する。また、かかる化粧品の皮膜は、皮膚からの汗や外部からの水に対する耐水性にも優れている。
【0016】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーにおいて、(a)成分が下記一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマーであることが好ましい。なお、式(2)中、mは10〜540の整数を示し、nは1以上の整数を示す。
【化2】

【0017】
このようなグラフト化シリコーンポリマーは、皮膚刺激性の無い揮発性溶媒に対する溶解性に富んでいる。また、化粧品としての配合の自由度が増すと共に、皮膚上でのべたつきの減少、及び耐水耐皮脂性にも優れている。
【0018】
本発明はまた、上述のグラフト化シリコーンポリマーを含有する化粧品を提供する。このような上記グラフト化シリコーンポリマーを含有する化粧品は、皮膚上でのべたつきが減少しており、耐水耐皮脂性に優れるため、皮膚外用化粧品として特に有用となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」又はそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、用語「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは「アクリル酸アルキルエステル」又はそれに対応する「メタクリル酸アルキルエステル」を意味する。
【0020】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、(a)メルカプト変性シリコーンポリマーと、(b)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須成分とするラジカル重合性モノマーとを重合して得られる。
【0021】
本発明で用いるメルカプト変性シリコーンポリマー((a)成分)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化3】

【0022】
ここで、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アリル基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基を示す。好ましくは、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立にヒドロキシル基、アリル基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。Rはアリーレン基又は炭素数1〜3のアルキレン基である。Rとしては、炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
【0023】
一般式(1)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマーは、下記一般式(2)で表されるものが特に好ましい。
【化4】

【0024】
式(1)及び(2)において、mは10〜540の整数であり、nは1以上の整数である。mが小さくなると、皮膚上でのべたつき感が生じやすくなる。一方、mが大きくなると、デカメチルシクロペンタシロキサン(DMCPS、すなわちD5)への溶解性が低下する。よって、mは50〜300であることが好ましい。また、nが小さくなると、メルカプト変性シリコーンポリマー上の成分(b)のグラフト数が減少する。一方、nが大きくなると、重合時にゲル化を起こしやすくなる。したがって、nは1〜50の整数であることが好ましく、より好ましくは10〜30の整数である。
【0025】
上述したメルカプト変性シリコーンポリマーは、任意の公知の方法、例えば、(1)1又は複数のメルカプト置換炭化水素基を有するオルガノアルコキシシランとメルカプト基を有さないオルガノアルコキシシランとの混合物の同時加水分解、(2)1又は複数のメルカプト置換炭化水素基を有するオルガノアルコキシシランと、環状オルガノポリシロキサン又はメルカプト基を有さないシラノール末端型ジオルガノポリシロキサンとの反応、(3)1又は複数のメルカプト置換炭化水素基を有する環状又は直鎖オルガノポリシロキサンと、メルカプト基を有さない環状又は直鎖オルガノポリシロキサンとの平衡反応、(4)1又は複数の求核基と求電子試薬とのメルカプト変性シリコーンポリマーを得るための反応、及び(5)1又は複数の求電子基と求核試薬とのメルカプト変性シリコーンポリマーを得るための反応によって調製できる。
【0026】
上記一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマーは、市販品として購入することもできる。例えば、信越化学社製、商品名「KF−2001及びKF−2004」、Gelest社製、商品名「SMS−022、SMS−042及びSMS−992」、United chemical社製、商品名「PS848、PS849、PS849.5、PS850、PS850.5及びPS927」が挙げられる。これらの市販品は、それぞれ重量平均分子量、分子量分布及びメルカプト基の導入率が異なり、本発明においては任意に選択することができる。
【0027】
(a)成分であるメルカプト変性シリコーンポリマーの重量平均分子量は、750〜40000であることが好ましく、3500〜25000がより好ましい。重量平均分子量が750未満では、皮膚上でべたつき感が生じやすくなる傾向があり、40000を超えるとDMCPSへの溶解性が悪くなる傾向がある。
【0028】
本発明で用いるラジカル重合性モノマー成分((b)成分)は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む。(b)成分として用いられる(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルが挙げられる。(b)成分は、更に、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のラジカル重合性モノマーを含んでいてもよく、かかるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニル、ビニルエーテル、塩化ビニル、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン及びこれらの変性物等が挙げられる。(b)成分に占める(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルの比率は、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、100重量%が特に好ましい。
【0029】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、上記メルカプト変性シリコーンポリマーと、上記ラジカル重合性モノマー成分とを、ラジカル重合開始剤の存在下において、重合することにより得ることができる。ラジカル重合開始剤については制限はない。具体的には、熱重合開始剤として、アゾ化合物、ペルオキシド、ヒドロキシペルオキシド、過酸及び過エステルを用いることができる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2’―アゾビス(2―メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス―イソブチレート、ジメチル2,2’―アゾビス(2―メチルプロピオネート)、アゾビス―ジフェニルメタン、4,4’―アゾビス―(4―シアノペンタノン酸)が挙げられる。ペルオキシドとしては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、キュミルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、グルタル酸ペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化水素が挙げられる。ヒドロキシペルオキシドとしては、例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドが挙げられる。過酸としては、例えば、過酢酸、過安息香酸、過硫酸カリウムが挙げられる。過エステルとしては、例えば、過炭酸ジイソプロピル等が挙げられる。また、光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル、例えば、ジエトキシアセトフェノン、オキシミノーケトン、アシルホスフォンオキシド、ジアリールケトン、ベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、キノン誘導体、3−ケトクマリンを用いることができる。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、溶媒中において行われる溶液重合で調製されることが好ましい。溶液重合で用いられる溶媒としては、ラジカル重合におけるモノマー及び反応生成物に対して不活性であり、反応に有害な影響を及ぼさない任意の有機溶媒であることが好ましい。また、溶媒は、−10℃から50℃の間で液体であることが好ましい。より具体的には、エステル系溶媒、ケトン系溶媒及びアルコール系溶媒を用いることが好ましい。これらの溶媒の具体例として、エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチルや酢酸ブチルが、ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトンが、アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。
【0031】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、メルカプト変性シリコーンポリマー((a)成分)、ラジカル重合性モノマー成分((b)成分)、ラジカル重合開始剤及び溶媒を任意の容器に入れ、ラジカル重合開始剤を分解させ、光又は熱によりラジカル重合を行うことにより得ることが可能である。また、生成したポリマーは、溶媒のエバポレーションや、適当な溶媒(例えば、メタノール、ヘキサン又は水)への沈殿により回収することができる。また、本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、ポリマーの重合度、ポリマー末端等が異なるポリマーの混合物であってもよい。
【0032】
通常、ポリマーの硬さやべたつきについては、レオロジーで説明することが可能である。一般に貯蔵弾性率(G’)が高いポリマーは硬くなり、G’が低いポリマーは柔らかくなる。特にポリマーのべたつき、いわゆるタックについては、Dahlquistの基準と言われる値が広く知られている。Dahlquistの基準によれば、ある粘着剤の室温におけるG’を周波数1Hzで測定すると、3×10Pa以下になっている。
【0033】
タックの強いポリマーは、べたついた感触を使用者に与えるので、化粧品に配合する皮膜形成性ポリマーとして好ましくないものとなる。一方、ある程度のタックを持つポリマーは、べたついた感触というよりもしっとりとした感触を使用者に与えることができる。このような現象について検討した結果、上記感触はグラフト化シリコーンポリマーのG’のみに基づき説明できることが判明した。このことは、粘着剤におけるDahlquistの基準とは異なる現象である。
【0034】
すなわち、グラフト化シリコーンポリマーのG’が、37℃、周波数1Hzにおいて1×10Pa未満であると、このポリマーを化粧品に配合した場合、べたついた感触を使用者に与える。この理由により、このようなポリマーは、化粧品用の皮膜形成性ポリマーとしては好ましくないことが推測できる。
【0035】
したがって、本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、37℃、周波数1Hzの測定におけるG’が、1×10Pa以上である必要がある。このような基準を設けることで、本発明のグラフト化シリコーンポリマーを配合した化粧品を作製して使用テストをすることなく、化粧品の与える感触を推定することができる。つまり、G’が1×10Pa未満のグラフト化シリコーンポリマーを含有する化粧品は、べたついた感触を与えるために好ましくない。これに対して、G’が1×10Pa以上である場合、G’が低めのグラフト化シリコーンポリマーはしっとり感を与え、G’がより高いグラフト化シリコーンポリマーはさらさら感を与えることを相対的に比較することができる。つまり、目的とする化粧品の感触に最適なグラフト化シリコーンポリマーを、化粧品の使用テストをしなくとも、選択することができるようになる。なお、G’は、平行円盤式の回転式レオメーターで測定することができる。
【0036】
グラフト化シリコーンポリマーのG’は、用いるメルカプト変性ジメチルポリシロキサン((a)成分)の重量平均分子量、ラジカル重合性モノマー成分((b)成分)の種類、各原料の配合比率、重合時の条件等により調製することができる。例えば、G’を高くしたい場合、メルカプト変性ジメチルポリシロキサンの重量平均分子量を大きくする、単独重合した場合のガラス転移温度が高いラジカル重合性モノマーを用いる、ラジカル重合性モノマーの配合比率を高くする、ラジカル重合開始剤の濃度を下げる、又は、重合温度を低くすることが考えられる。G’を低くしたい場合は、メルカプト変性ジメチルポリシロキサンの重量平均分子量を低くする、単独重合した場合のガラス転移温度が低いラジカル重合性モノマーを用いる、ラジカル重合性モノマーの配合比率を低くする、ラジカル重合開始剤の濃度を上げる、又は、重合温度を高くすることが考えられる。ここで、G’の上限値は特に限定されないが、1×10Pa以下が好ましい。べたつき感をより確実に低減させるためには、グラフト化シリコーンポリマーのG’は1.1×10〜4.1×10Paが好ましい。
【0037】
一方、べたつき感の無い皮膜形成性ポリマーを配合した化粧品を使用したとしても、皮膚上の様々な原因で化粧崩れを起こすことがある。例えば、汗、涙又は皮脂を吸収してべたついてしまったり、皮膜が溶解して化粧崩れを起こしたりする。このようなポリマーの相溶性又は溶解性といった特性は、溶解度パラメーター(SP値)で説明することが可能である。
【0038】
皮脂との相溶性又は溶解性が良い皮膜形成性ポリマーは、べたつきや化粧崩れを起こしやすいことが予想される。一般に、SP値の近い物質同士は、相溶又は溶解しやすい。しかし、本発明のグラフト化シリコーンポリマーの場合、グラフト化シリコーンポリマーの組成比から求めたSP値と耐皮脂性については相関関係が見られなかった。そこで、より詳細に検討した結果、耐皮脂性は、グラフト化シリコーンポリマーのSP値ではなく、(b)成分であるラジカル重合性モノマー成分のみを重合して得られる重合物のSP値のみに依存することが判明した。この現象は、一般にSP値で議論される相溶又は溶解の議論とは異なる現象である。すなわち、本発明のグラフト化シリコーンポリマーにおいて、(メタ)アクリル系モノマー((b)成分)の重合物のSP値が、9.14(cal/cm1/2[ここで、1(cal/cm1/2=2.046(MPa)1/2]以上であれば皮脂によるべたつきが起こらないことがわかった。
【0039】
なお、SP値は、1974年発行のPolymer and Engineering Scienceに発表されたFedorsの論文(Fedors, RF: A methodfor estimating both the solubility parameters and molar volumes of liquids.Polymer and Engineering Science 1974 14: 147-154)に基づいて計算可能である。
【0040】
上記SP値を基準とすることにより、グラフト化シリコーンポリマーを作製する前に耐皮脂性を推測することができるようになる。このことにより、グラフト化シリコーンポリマーを含有する化粧品を実際に製造することなく、耐皮脂性を知ることができる。SP値が9.14(cal/cm1/2以下であれば、そのグラフト化シリコーンポリマーは耐皮脂性に劣り、SP値が9.14(cal/cm1/2以上である場合、耐皮脂性が高く、持続性のある化粧品の作製に適したグラフト化シリコーンポリマーとなる。ここで、SP値の上限値は特に限定されないが、12(cal/cm1/2以下が好ましい。耐皮脂性をより確実に向上させるためには、SP値は、9.18〜12(cal/cm1/2であることが好ましく、9.18〜10.23(cal/cm1/2であることがより好ましい。
【0041】
ラジカル重合性モノマー成分を重合して形成された側鎖のSP値は、(b)成分として用いるラジカル重合性モノマーの種類と配合比率により調製することができる。例えば、SP値を高くしたい場合、(メタ)アクリル酸のようなイオン性基を持つモノマーや、アルキル基の短い(メタ)アクリル酸エステルを用いる。上記モノマーは単独重合した場合のガラス転移温度が高い傾向にあるため、上記モノマーを多く配合したグラフト化シリコーンポリマーはG’が高くなり、さらさら感を与えるようになる。一方、グラフト化シリコーンポリマーの耐皮脂性を維持しつつ、しっとり感を与えるようなグラフト化シリコーンポリマーが望ましい場合は、SP値が9.14(cal/cm1/2以上になるように、アルキル基の長い(メタ)アクリル酸アルキルエステルを配合することが好ましい。上記モノマーは単独重合した場合のガラス転移温度が低い傾向にあるため、上記モノマーを多く含有するグラフト化シリコーンポリマーはG’が低くなり、しっとり感を与えるようになる。
【0042】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、化粧品に用いられる任意の原料と混合して化粧品に配合することができる。化粧品に用いられる原料としては、炭化水素、室温で液状の油脂、室温で固体の油脂、ロウ、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、エステル、シリコーン油及びフッ素系溶媒が挙げられる。具体的には、下記に示す化合物が挙げられる。炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、パラフィン、オゾケライト、スクワラン、植物性スクワラン、プリスタン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、オレフィンオリゴマー、ポリイソブチレン、ポリブテン、及び水素添加ポリイソブテン等が挙げられる。室温で液状の油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、グレープシード油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、月見草油等が挙げられる。室温で固体の油脂としては、例えばカカオ脂、ヤシ油、牛脂、羊脂、馬脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヤシ油、硬化パーム油、硬化牛脂、硬化油、及び硬化ヒマシ油等が挙げられる。ロウとしては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、カポックロウ、サトウキビロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、還元ラノリン、硬質ラノリン、ラウリン酸ヘキシル、ジョジョバロウ、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、及びPOE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2―デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、及びオクチルドデカノール等の分枝鎖アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。また、エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、1,2―ヒドロキシステアリン酸コレステリル、1,2―ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ―2―ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ―2―エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ―2―エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ―2―エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2―エチルヘキサノエート、2―エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリ2―エチルヘキサン酸エリスリチル、トリ2―エチルヘキサン酸ジトリメチロールプロパン、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパンオリゴエステル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、(アジピン酸・2−エチルヘキサン酸・ステアリン酸)グリセリンオリゴエステル、(2−ヘキシルデカン酸・セバシン酸)ジグリセリルオリゴエステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、及びクエン酸トリエチル等が挙げられる。シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の直鎖状シリコーン油、ポリオキシエチレンポリアルキルシロキサン等の変性シリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン(DMCPS)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状シリコーン油が挙げられる。フッ素系溶媒としては、例えば、メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル及びエチルパーフルオロイソブチルエーテルが挙げられる。
【0043】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーを化粧品に配合し、皮膚上に耐水、耐皮脂性に優れた皮膜を形成させるためには、溶解させる原料は揮発性の溶媒である必要がある。しかしながら、揮発性の炭化水素、例えば水素添加ポリイソブテン等に溶解させた場合、炭化水素特有の臭気が化粧品に悪影響を与える。また、揮発性のアルコール、例えばエタノールやイソプロパノールや、揮発性のエステル、例えば酢酸エチルに溶解させた場合、皮膚に対する刺激や、特有の臭気が化粧品に影響を与える。
【0044】
一方、揮発性のシリコーンオイルは、臭気が無く、皮膚に対しての刺激が比較的少ないため、化粧品に広く用いられている。DMCPSは皮膚に対しての刺激や臭気が無く、また化粧品を十分に伸ばし、かつ伸ばした後にすみやかに蒸発、乾燥する適度な蒸発速度を持つため、化粧品用の揮発性溶媒として非常に適している。よって、本発明のグラフト化シリコーンポリマーもDMCPSに溶解させて用いることが好ましい。
【0045】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーがDMCPSへの溶解性に乏しい場合、使用中に粘度が上昇して化粧品の使用感に影響を及ぼしたり、経時及び/又は温度変化により析出したりする等、実用上好ましくないものとなる。化粧品の使用感や安定性、化粧品への配合の自由度について検討した結果、本発明のグラフト化シリコーンポリマーの23℃におけるDMCPSへの溶解性が1重量%以上(好ましくは1.5重量%以上、さらには2重量%以上)であれば、これらの特性に優れていることがわかった。ここで、「溶解」とはポリマーの析出や、溶液の白濁が起こらない状態のことである。本発明のグラフト化シリコーンポリマーのDMCPSへの溶解性は、メルカプト変性シリコーンポリマーとラジカル重合性モノマーの配合比や、ラジカル重合性モノマーの種類に大きく左右される。DMCPSへの溶解性を良くしたい場合、メルカプト変性シリコーンポリマーの配合量を増やす、(メタ)アクリル酸のようなイオン性基を持つモノマーの配合量を減らす、又は、アルキル基の長い(メタ)アクリル酸エステルを用いる等が考えられる。
【0046】
すなわち、本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、(b)成分の単独重合物の溶解度パラメーターが、9.14(cal/cm1/2以上であり、グラフト化シリコーンポリマーが、37℃、周波数1Hzにおいて1×10Pa以上の貯蔵弾性率を示し、DMCPSに23℃において1%以上溶解することで、化粧品として使用したときに、皮膚上でのべたつきがなく、皮膚に対する刺激性も十分に低減され、耐皮脂性に優れる皮膜の形成が可能となる。DMCPSへの溶解性は、化粧品配合におけるより大きな自由度、及び実用性を与える。
【0047】
特定の理論に拘束されるものではないが、溶解度パラメーターを所定値以上にしたことで耐皮脂性が向上し、貯蔵弾性率を所定値以上としたことでべたつきが防止されたものと推察される。
【0048】
以下に、本発明のグラフト化シリコーンポリマーとして好ましい組成を示す。
【0049】
図1は、一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びアクリル酸メチル(MA)を重合して得られる3元系相図である。図1に示す3元系相図において、グラフト化シリコーンポリマーは、
(MMSP)/(MMA)/(MA)=63.7/36.3/0.0
(MMSP)/(MMA)/(MA)=46.2/26.9/26.9
(MMSP)/(MMA)/(MA)=46.2/7.6/46.2
(MMSP)/(MMA)/(MA)=63.7/7.6/28.7
(MMSP)/(MMA)/(MA)=63.7/25.9/10.4
(MMSP)/(MMA)/(MA)=71.2/29.8/0.0
で囲まれる範囲内の組成を有することが好ましい。
【0050】
図2は、一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びアクリル酸エチル(EA)を重合して得られる3元系相図である。図2に示す3元系相図において、グラフト化シリコーンポリマーは、
(MMSP)/(MMA)/(EA)=63.7/36.3/0.0
(MMSP)/(MMA)/(EA)=46.2/36.3/17.5
(MMSP)/(MMA)/(EA)=46.2/21.8/32.0
(MMSP)/(MMA)/(EA)=63.7/21.8/14.5
(MMSP)/(MMA)/(EA)=63.7/25.9/10.4
(MMSP)/(MMA)/(EA)=71.2/29.8/0.0
で囲まれる範囲内の組成を有することが好ましい。
【0051】
図3は、一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸エチル(EMA)及びアクリル酸メチル(MA)を重合して得られる3元系相図である。図3に示す3元系相図において、グラフト化シリコーンポリマーは、
(MMSP)/(EMA)/(MA)=46.2/53.8/0.0
(MMSP)/(EMA)/(MA)=35.0/53.8/11.2
(MMSP)/(EMA)/(MA)=30.0/35.0/35.0
(MMSP)/(EMA)/(MA)=46.2/18.8/35.0
(MMSP)/(EMA)/(MA)=46.2/38.4/15.4
(MMSP)/(EMA)/(MA)=56.3/43.7/0.0
で囲まれた範囲内の組成を有することが好ましい。
【0052】
図4は、一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸エチル(EMA)及びアクリル酸エチル(EA)を重合して得られる3元系相図である。図4に示す3元系相図において、グラフト化シリコーンポリマーは、
(MMSP)/(EMA)/(EA)=46.2/53.8/0.0
(MMSP)/(EMA)/(EA)=35.0/53.8/11.2
(MMSP)/(EMA)/(EA)=35.0/41.5/23.5
(MMSP)/(EMA)/(EA)=40.0/36.5/23.5
(MMSP)/(EMA)/(EA)=56.3/43.7/0.0
で囲まれた範囲内の組成を有することが好ましい。
【0053】
図5は、一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びメタクリル酸エチル(EMA)を重合して得られる3元系相図である。図5に示す3元系相図において、グラフト化シリコーンポリマーは、
(MMSP)/(MMA)/(EMA)=63.7/36.3/0.0
(MMSP)/(MMA)/(EMA)=46.2/0.0/53.8
(MMSP)/(MMA)/(EMA)=56.3/0.0/43.7
(MMSP)/(MMA)/(EMA)=71.3/28.7/0.0
で囲まれた範囲内の組成を有することが好ましい。
【0054】
図6は、一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸イソブチル(IBMA)及びメタクリル酸(MAA)を重合して得られる3元系相図である。図6に示す3元系相図において、グラフト化シリコーンポリマーは、
(MMSP)/(IBMA)/(MAA)=70.0/22.5/7.5
(MMSP)/(IBMA)/(MAA)=42.5/52.9/4.6
(MMSP)/(IBMA)/(MAA)=42.5/55.7/1.8
(MMSP)/(IBMA)/(MAA)=70.0/29.0/1.0
で囲まれた範囲内の組成を有することが好ましい。
【0055】
上述の範囲の組成を有することで、本発明のグラフト化シリコーンポリマーは、化粧品として使用したときに、皮膚上でのべたつきがなく、耐水耐皮脂性に優れる皮膜の形成が可能となる。
【0056】
本発明のグラフト化シリコーンポリマーを含む化粧品は、ローション状、クリーム状、固体状等、化粧品に用いられる任意の剤形を取ることができる。特に本発明のグラフト化シリコーンポリマーをDMCPSに溶解させた場合、DMCPSベースの配合として利用する他にも、W/O型及びO/W型のエマルションとして利用することも可能である。
【0057】
このような化粧品は、様々な用途に使用することができる。皮膚用化粧品としては、例えば、ハンドクリーム、日焼け止め化粧品、化粧下地、パック等に用いることができる。また、メーキャップ化粧品としては、例えば、パウダリーファンデーション、リキッドファンデーション、リップスティック、リップグロス、アイライナー、マスカラ、アイシャドー、アイブロー、ネールエナメルに用いることができる。このような化粧品は、皮膚、毛髪又は爪上にフレキシブルで滑らかな皮膜を形成し、耐水性、耐皮脂性、付着性及び持続性に十分に優れている。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の好適な実施例について更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[グラフト化シリコーンポリマーの合成]
【0060】
(実施例1)
225mLガラス製ボトル容器に、メルカプト変性ジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製、商品名「KF−2001」、メルカプトプロピルメチルシロキサン単位:4モル%、重量平均分子量:20000)67.5重量部、メタクリル酸メチル32.5重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びメチルエチルケトン(MEK)102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、窒素ガスで10分間バブリングを行った。次いで、容器を密封し、65℃の恒温槽中で攪拌しながら重合を行った。24時間後、容器を恒温槽から取り出し、室温まで冷却した。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。上記析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0061】
(実施例2)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸メチル28.56重量部、アクリル酸メチル11.44重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0062】
(実施例3)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸メチル15重量部、アクリル酸メチル25重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0063】
(実施例4)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸メチル28.56重量部、アクリル酸エチル11.44重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0064】
(実施例5)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」52.5重量部、メタクリル酸エチル47.5重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0065】
(実施例6)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸エチル42.8重量部、アクリル酸メチル17.2重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0066】
(実施例7)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸エチル42.8重量部、アクリル酸エチル17.2重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計101.5gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0067】
(実施例8)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸エチル20重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0068】
(実施例9)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸イソブチル35重量部、メタクリル酸5重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるよう投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0069】
(実施例10)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」45重量部、メタクリル酸イソブチル51.6重量部、メタクリル酸3.4重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるよう投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0070】
(実施例11)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」52.5重量部、メタクリル酸メチル17.8重量部、アクリル酸メチル29.7重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計101.5gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0071】
(実施例12)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」52.5重量部、メタクリル酸メチル33.92重量部、アクリル酸エチル13.58重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0072】
(実施例13)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸エチル30重量部、アクリル酸メチル30重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0073】
(比較例1)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸メチル40重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0074】
(比較例2)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」52.5重量部、メタクリル酸メチル33.92重量部、アクリル酸メチル13.58重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0075】
(比較例3)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸メチル20重量部、アクリル酸メチル40重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0076】
(比較例4)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸メチル40重量部、アクリル酸エチル20重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0077】
(比較例5)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸エチル60重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計101.5gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0078】
(比較例6)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」30重量部、メタクリル酸エチル50重量部、アクリル酸メチル20重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0079】
(比較例7)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」30重量部、メタクリル酸エチル50重量部、アクリル酸エチル20重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0080】
(比較例8)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」52.5重量部、メタクリル酸メチル23.75重量部、メタクリル酸エチル23.75重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0081】
(比較例9)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸イソブチル32.5重量部、メタクリル酸7.5重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0082】
(比較例10)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」45重量部、メタクリル酸イソブチル50重量部、メタクリル酸5重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0083】
(比較例11)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸イソブチル57.5重量部、メタクリル酸2.5重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0084】
(比較例12)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸エチル20重量部、アクリル酸メチル40重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0085】
(比較例13)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」20重量部、メタクリル酸エチル40重量部、アクリル酸メチル40重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0086】
(比較例14)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸イソブチル60重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0087】
(比較例15)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」30重量部、メタクリル酸イソブチル70重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0088】
(比較例16)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」15重量部、メタクリル酸イソブチル85重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0089】
(比較例17)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」45重量部、メタクリル酸イソブチル45重量部、メタクリル酸メチル10重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0090】
(比較例18)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」30重量部、メタクリル酸イソブチル65重量部、メタクリル酸メチル5重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0091】
(比較例19)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」75重量部、メタクリル酸メチル25重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計101.5gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0092】
(比較例20)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」67.5重量部、メタクリル酸メチル23.2重量部、アクリル酸メチル9.3重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0093】
(比較例21)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」67.5重量部、メタクリル酸メチル12.19重量部、アクリル酸メチル20.31重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計101.5gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0094】
(比較例22)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、アクリル酸メチル40重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0095】
(比較例23)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」52.5重量部、アクリル酸メチル47.5重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0096】
(比較例24)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」67.5重量部、メタクリル酸メチル23.2重量部、アクリル酸エチル9.3重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0097】
(比較例25)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸メチル15重量部、アクリル酸エチル25重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0098】
(比較例26)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸メチル20重量部、アクリル酸エチル40重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計162.4gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0099】
(比較例27)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸エチル40重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0100】
(比較例28)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」52.5重量部、メタクリル酸エチル33.75重量部、アクリル酸メチル13.75重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0101】
(比較例29)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」52.5重量部、メタクリル酸エチル33.75重量部、アクリル酸エチル13.75重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計101.5gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0102】
(比較例30)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」40重量部、メタクリル酸エチル30重量部、アクリル酸エチル30重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0103】
(比較例31)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」67.5重量部、メタクリル酸メチル16.25重量部、メタクリル酸エチル16.25重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0104】
(比較例32)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」80重量部、メタクリル酸イソブチル10重量部、メタクリル酸10重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0105】
(比較例33)
225mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」60重量部、メタクリル酸イソブチル40重量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.6重量部及びMEK100重量部を、総合計160.48gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液をメタノールと水の2:1の混合溶媒中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0106】
(比較例34)
140mLガラス製ボトル容器に、上記メルカプト変性ジメチルポリシロキサン「KF−2001」45重量部、メタクリル酸イソブチル55重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.6重量部及びMEK102.4重量部を、総合計81.2gとなるように投入し、実施例1と同様の操作を行った。得られた重合溶液を水中に攪拌しながら滴下し、析出物を回収した。析出物を室温で乾燥し、グラフト化シリコーンポリマーを得た。
【0107】
[グラフト化シリコーンポリマーの皮膜特性:初期皮膜特性の評価]
実施例及び比較例で得られたグラフト化シリコーンポリマーを、固形分が10重量%になるようにDMCPSに溶解させた。また、グラフト化シリコーンポリマーがDMCPSに溶解しない場合は、固形分が20重量%となるようにMEKに溶解させた。これらのポリマー溶液をワイヤーバーでガラスプレート上に塗布し、ポリマー皮膜サンプルを作製した。ポリマー皮膜サンプルを室温で12時間以上乾燥し、乾燥後の皮膜の状態を手で触って確認した。
【0108】
初期皮膜特性の評価は、被験者5人で行い、表1に示す基準で点数をつけ、5人の平均点が1.0以下であるポリマー皮膜サンプルを合格とした。結果を表2及び図7に示す。
【0109】
[グラフト化シリコーンポリマーの皮膜特性:耐皮脂性の評価]
実施例及び比較例で得られたグラフト化シリコーンポリマーを用い、初期皮膜特性の評価と同様にポリマー皮膜サンプルを作製した。作製したポリマー皮膜サンプルは室温にて12時間以上乾燥し、乾燥後にマカデミアナッツオイルを適量塗布し、30分間放置した。なお、マカデミアナッツオイルは皮脂の代わりとして用いた。30分放置後、皮膜の状態を手で触って確認した。
【0110】
耐皮脂性の評価は、被験者5人で行い、表1に示す基準で点数をつけ、5人の平均点が1.0以下であるポリマー皮膜サンプルを合格とした。結果を表2及び図8に示す。なお、初期皮膜の評価で平均点が1.0よりも大きかったポリマー皮膜サンプルは、耐皮脂性の評価を実施しなかった。
【表1】

【0111】
[グラフト化シリコーンポリマーの粘弾性測定]
実施例及び比較例で得られたグラフト化シリコーンポリマーの粘弾性を、7.9mmの平行円盤式の回転式レオメーター(Rheometric Scientific社製、商品名「ARES」)を用いて測定した。37℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率G’の測定結果を表2及び図7に示す。
【0112】
[グラフト化シリコーンポリマーのSP値の計算]
実施例及び比較例について、ラジカル重合性モノマーが重合して形成された側鎖のSP値を上述のFedorsの手法に基づいて計算した。結果を表2及び図8に示す。
【0113】
[グラフト化シリコーンポリマーのDMCPSへの溶解性]
実施例及び比較例で得られたグラフト化シリコーンポリマーを、固形分が10重量%になるようにDMCPSと混合しポリマー溶液を調製した。次いで、適宜攪拌を行いながら2日間60℃にて加熱を行った後、23℃まで冷却し、ポリマーの析出又は溶液の白濁が無いかを目視で確認した。また、析出や白濁が起こった試料は、DMCPSで固形分1%まで希釈をし、同様の確認を行なった。固形分1%の状態でポリマーの析出や溶液の白濁が生じたポリマー溶液を不合格とした。すなわり、不合格とされたポリマー溶液は、DMCPSと混合させるポリマー溶液が、23℃において1重量%以上DMCPSに溶解しないことを示す。結果を表2に示す。
【表2】

【0114】
[グラフト化シリコーンポリマーを用いた化粧品の作製及び評価]
以下に示す条件で上記実施例及び比較例で得られたグラフト化シリコーンポリマーを用いて化粧品をそれぞれ作製し、評価を行なった。
【0115】
(実施例14)
表3に示すように、実施例2のグラフト化シリコーンポリマーを用い、W/O型ハンドクリームを作製した。
製法:(3)及び(4)を混合し、60℃で溶解後、室温まで冷却し、ここへ(1)及び(2)を滴下して混合し油相成分を調製した。一方、(9)及び(10)を60℃で攪拌しながら混合し、溶解後、室温まで冷却し、ここへ(5)〜(8)を滴下し水相成分を調製した。次いで、油相成分中へ室温で水相成分を滴下して混合し、乳化物を得た。この乳化物を汎用のプラスチック容器に充填し、W/O型ハンドクリームとした。
【表3】

【0116】
得られたW/O型ハンドクリームについて、両手部に塗布したときのクリームの伸び、クリームの感触及び塗布後の違和感の有無を、表4に示す基準に基づき22名の被験者で評価した。結果を表5に示す。
【表4】


【表5】

【0117】
クリームの伸びについての平均は4.7であり、得られたW/O型ハンドクリームは非常に良好な伸びを示し、均一に塗布できることがわかった。また、クリームの感触についての平均は3.8であり、得られたW/O型ハンドクリームはややしっとりとした感触であり、塗布時はしっとりとした感触でありながら、形成された皮膜はべたつき感が無く、滑らかな感触が継続することがわかった。さらに、塗布後の違和感の有無についての平均は4.3であり、得られたW/O型ハンドクリームは違和感の無いフレキシブルな皮膜を形成することがわかった。
【0118】
また、食器を洗ったときの感触について、試料を両手部に塗布した後に食器を洗ってもらい、使用感について聞き取りを行なった。形成された皮膜のべたつきが無いため、食器への付着が無い、衣服等への付着に注意する必要が無いことが利点としてあげられた。また、撥水性の皮膜が形成されることにより、手荒れ防止効果があることがわかった。
【0119】
(実施例15)
表6に示すように、実施例2のグラフト化シリコーンポリマーに代えて、実施例1のグラフト化シリコーンポリマーを用いた以外は、実施例14と同様にしてW/O型ハンドクリームを作製した。
【表6】

【0120】
得られたW/O型ハンドクリームについて、両手部に塗布したときのクリームの伸び、クリームの感触及び塗布後の違和感の有無を、表4に示す基準に基づき5名の被験者で評価した。結果を表7に示す。
【表7】

【0121】
クリームの伸びについての平均は4.0であり、得られたW/O型ハンドクリームは良好な伸びを示し、均一に塗布することができることがわかった。また、クリームの感触についての平均は3.6であり、試料はややさっぱりとした感触であることがわかった。さらに、塗布後の違和感の有無についての平均は4.4であり、得られたW/O型ハンドクリームは違和感の無いフレキシブルな皮膜を形成することがわかった。
【0122】
(実施例16)
表8に示すように、実施例2のグラフト化シリコーンポリマーに代えて、実施例5のグラフト化シリコーンポリマーを用いた以外は、実施例14と同様にしてW/O型ハンドクリームを作製した。
【表8】

【0123】
得られたクリームを両手に塗布したときの伸びは良好であり、均一に塗布することができた。また、クリームは違和感のないフレキシブルな皮膜を形成することがわかった。
【0124】
(比較例35)
表9に示すように比較例15のグラフト化シリコーンポリマーを用い、W/O型ハンドクリームを作製した。
製法:(4)及び(5)を60℃で混合し、溶解後、室温まで冷却し、ここへ(1)〜(3)を滴下して混合し、油相成分を調製した。一方、(11)及び(12)を60℃で混合し、溶解後、室温まで冷却し、ここへ(6)〜(10)を滴下して混合し、水相成分を調製した。次いで、油相成分中へ室温で水相成分を滴下して混合し、乳化物を得た。この乳化物を汎用のプラスチック容器に充填し、W/O型ハンドクリームとした。
【表9】

【0125】
得られたW/O型ハンドクリームは、良好な伸びを示し均一に塗布できるものの、塗布後に著しいべたつきを皮膚上で示したため、ハンドクリームとしての使用には適さないものであった。
【0126】
(実施例17)
表10に示すように、実施例1のグラフト化シリコーンポリマーを用い、O/W型ハンドクリームを作製した。
製法:(1)〜(11)を75℃で混合し、溶解した。ここへ(12)及び(13)を60℃で混合し、溶解後、室温まで冷却したポリマー溶液を滴下して混合し、油相成分を調製した。一方、(14)〜(20)を75℃で混合し、溶解後、(21)を滴下して混合し、水相成分を調製した。次いで、油相成分及び水相成分を75℃で攪拌しながら混合し、その後室温まで冷却して乳化物を得た。この乳化物を汎用のプラスチック容器に充填し、O/W型ハンドクリームとした。
【表10】

【0127】
得られたO/W型ハンドクリームを両手部に塗布したときの伸びは良好であり、さっぱりとした感触であった。また、得られたO/W型ハンドクリームは違和感の無いフレキシブルな皮膜を形成することがわかった。
【0128】
(実施例18)
表11に示すように、実施例2のグラフト化シリコーンポリマーを用いW/O型サンスクリーンクリームを作製した。
製法:(10)及び(11)を60℃で混合し、溶解後、室温まで冷却した。そこへ(1)〜(9)及び(12)〜(14)を滴下して混合し、油相成分を調製した。一方、(16)及び(17)を60℃で攪拌しながら混合し溶解後、室温まで冷却し、(15)を滴下して混合し水相成分を調製した。次いで、油相成分中へ水相成分を滴下して混合し、乳化物を得た。この乳化物を汎用のプラスチック容器に充填し、W/O型サンスクリーンクリームとした。
【表11】

【0129】
得られたW/O型サンスクリーンクリームを両手部に塗布したときの伸びは良好であり、さっぱりとした感触であった。また、得られたW/O型サンスクリーンクリームはムラなく、均一に塗布することができ、さらに、違和感の無いフレキシブルな皮膜を形成することがわかった。
【0130】
(実施例19)
表12に示すように、実施例1のグラフト化シリコーンポリマーを用い、マスカラを作製した。
製法:(12)及び(13)を60℃で混合し、溶解後、室温まで冷却し、(14)及び(15)を滴下して混合したポリマー溶液を調製した。一方、(1)〜(11)を90℃で混合し、溶解した溶液を調製した。この溶液へ上記ポリマー溶液を90℃で滴下し、混合後、室温まで冷却しながら十分に攪拌し、油性ペーストを得た。油性ペーストをマスカラ容器に充填し、マスカラとした。
【表12】

【0131】
得られたマスカラについて、マスカラを睫毛に塗布したときのボリューム感、マスカラの持続性及びマスカラのカール保持力を、表13に示す基準に基づき5名の被験者で評価した。結果を表14に示す。
【表13】


【表14】

【0132】
マスカラのボリューム感の平均は3.6であり、睫毛にボリューム感を与えることができることがわかった。また、マスカラの持続性の平均は4.0であり、汗、涙、皮脂等による化粧崩れを防ぐことができることがわかった。さらに、マスカラのカール保持力の平均は3.8であり、睫毛のカールを維持する能力に優れていることがわかった。
【0133】
(実施例20)
表15に示すように、実施例1のグラフト化シリコーンポリマーを用い、W/O型リキッドファンデーションを作製した。
製法:(12)及び(13)を60℃で混合し、溶解後、室温まで冷却し、ここへ(1)〜(11)及び(14)〜(16)を滴下して混合し、油相成分を調製した。一方、(17)、(19)〜(22)を常温で攪拌しながら混合、溶解後、(18)を滴下して混合し、水相成分を調製した。次いで、油相成分へ室温で水相成分を滴下して混合し、乳化物を得た。乳化物をボトル容器に充填し、W/O型リキッドファンデーションとした。
【表15】

【0134】
得えられたW/O型リキッドファンデーションについて、ファンデーションを塗布したときの伸び及びリキッドファンデーションの持続性を、表16に示す基準に基づき5名の被験者で評価した。結果を表17に示す。
【表16】


【表17】

【0135】
得えられたW/O型リキッドファンデーションの伸びの平均は3.6であり、得えられたW/O型リキッドファンデーションは良好な伸びを示し、均一に塗布することができることがわかった。また、ファンデーションの持続性の平均は3.8であり、汗、涙、皮脂等による化粧崩れを防ぐことができることがわかった。
【0136】
本発明によれば、皮膚刺激性にない揮発性溶媒に対する溶解性に十分に優れ、化粧品として使用したときに、皮膚上でのべたつきがなく、耐水耐皮脂性に十分優れる皮膜の形成が可能で、配合の自由度が担保されたグラフト化シリコーンポリマー及びそれを含有する化粧品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びアクリル酸メチル(MA)を重合して得られる3元系相図である。
【図2】一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びアクリル酸エチル(EA)を重合して得られる3元系相図である。
【図3】一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸エチル(EMA)及びアクリル酸メチル(MA)を重合して得られる3元系相図である。
【図4】(a)一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸エチル(EMA)及びアクリル酸エチル(EA)を重合して得られる3元系相図である。
【図5】一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びメタクリル酸エチル(EMA)を重合して得られる3元系相図である。
【図6】一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸イソブチル(IBMA)及びメタクリル酸(MAA)を重合して得られる3元系相図である。
【図7】本発明のグラフト化シリコーンポリマーの貯蔵弾性率と初期皮膚特性をプロットした図である。
【図8】本発明のグラフト化シリコーンポリマーのSP値と耐皮脂性をプロットした図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー;及び
【化1】


[式(1)中、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アリル基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基;Rはアリーレン基又は炭素数1〜3のアルキレン基;mは10〜540の整数;nは1以上の整数;をそれぞれ示す。]
(b)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むラジカル重合性モノマー成分であり、該成分のみの重合物の溶解度パラメーターが9.14(cal/cm1/2以上となるように選択されるラジカル重合性モノマー成分;
の重合生成物を含むグラフト化シリコーンポリマーであって、
該グラフト化シリコーンポリマーは、37℃、周波数1Hzにおいて1×10Pa以上の貯蔵弾性率を示し、23℃においてデカメチルシクロペンタシロキサンに1重量%以上溶解する、グラフト化シリコーンポリマー。
【請求項2】
(b)ラジカル重合性モノマー成分が、更に、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のラジカル重合性モノマーを含む、請求項1記載のグラフト化シリコーンポリマー。
【請求項3】
(a)成分が下記一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマーである、請求項1記載のグラフト化シリコーンポリマー。
【化2】


[式(2)中、mは10〜540の整数;nは1以上の整数;をそれぞれ示す。]
【請求項4】
一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びアクリル酸メチル(MA)を重合して得られ、図1に示す3元系相図において、
(MMSP)/(MMA)/(MA)=63.7/36.3/0.0
(MMSP)/(MMA)/(MA)=46.2/26.9/26.9
(MMSP)/(MMA)/(MA)=46.2/7.6/46.2
(MMSP)/(MMA)/(MA)=63.7/7.6/28.7
(MMSP)/(MMA)/(MA)=63.7/25.9/10.4
(MMSP)/(MMA)/(MA)=71.2/29.8/0.0
で囲まれる範囲内の組成を有する、請求項3記載のグラフト化シリコーンポリマー。
【請求項5】
一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びアクリル酸エチル(EA)を重合して得られ、図2に示す3元系相図において、
(MMSP)/(MMA)/(EA)=63.7/36.3/0.0
(MMSP)/(MMA)/(EA)=46.2/36.3/17.5
(MMSP)/(MMA)/(EA)=46.2/21.8/32.0
(MMSP)/(MMA)/(EA)=63.7/21.8/14.5
(MMSP)/(MMA)/(EA)=63.7/25.9/10.4
(MMSP)/(MMA)/(EA)=71.2/29.8/0.0
で囲まれる範囲内の組成を有する、請求項3記載のグラフト化シリコーンポリマー。
【請求項6】
一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸エチル(EMA)及びアクリル酸メチル(MA)を重合して得られ、図3に示す3元系相図において、
(MMSP)/(EMA)/(MA)=46.2/53.8/0.0
(MMSP)/(EMA)/(MA)=35.0/53.8/11.2
(MMSP)/(EMA)/(MA)=30.0/35.0/35.0
(MMSP)/(EMA)/(MA)=46.2/18.8/35.0
(MMSP)/(EMA)/(MA)=46.2/38.4/15.4
(MMSP)/(EMA)/(MA)=56.3/43.7/0.0
で囲まれた範囲内の組成を有する、請求項3記載のグラフト化シリコーンポリマー。
【請求項7】
一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸エチル(EMA)及びアクリル酸エチル(EA)を重合して得られ、図4に示す3元系相図において、
(MMSP)/(EMA)/(EA)=46.2/53.8/0.0
(MMSP)/(EMA)/(EA)=35.0/53.8/11.2
(MMSP)/(EMA)/(EA)=35.0/41.5/23.5
(MMSP)/(EMA)/(EA)=40.0/36.5/23.5
(MMSP)/(EMA)/(EA)=56.3/43.7/0.0
で囲まれた範囲内の組成を有する、請求項3記載のグラフト化シリコーンポリマー。
【請求項8】
一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸メチル(MMA)及びメタクリル酸エチル(EMA)を重合して得られ、図5に示す3元系相図において、
(MMSP)/(MMA)/(EMA)=63.7/36.3/0.0
(MMSP)/(MMA)/(EMA)=46.2/0.0/53.8
(MMSP)/(MMA)/(EMA)=56.3/0.0/43.7
(MMSP)/(MMA)/(EMA)=71.3/28.7/0.0
で囲まれた範囲内の組成を有する請求項3記載のグラフト化シリコーンポリマー。
【請求項9】
一般式(2)で表されるメルカプト変性シリコーンポリマー(MMSP)、メタクリル酸イソブチル(IBMA)及びメタクリル酸(MAA)を重合して得られ、図6に示す3元系相図において、
(MMSP)/(IBMA)/(MAA)=70.0/22.5/7.5
(MMSP)/(IBMA)/(MAA)=42.5/52.9/4.6
(MMSP)/(IBMA)/(MAA)=42.5/55.7/1.8
(MMSP)/(IBMA)/(MAA)=70.0/29.0/1.0
で囲まれた範囲内の組成を有する、請求項3記載のグラフト化シリコーンポリマー。
【請求項10】
請求項1記載のグラフト化シリコーンポリマーを含有する化粧品。

【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−274116(P2008−274116A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−119340(P2007−119340)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】