説明

グラブバケット用油圧シリンダ装置

【課題】
シリンダ内に空気が混入しても好適に収縮することができ、且つ安全性の高いグラブバケット用油圧シリンダ装置の提供。
【解決手段】
グラブバケットに使用され、油圧シリンダ6と油圧シリンダ制御手段とをもって構成されたグラブバケット用油圧シリンダ装置において、油圧シリンダ6は、シリンダ本体9と、シリンダ本体9内に往復動可能に挿入されたピストン10と、ピストン10に固定されてシリンダ本体9の上端側に出入可能に導出されたピストンロッド11とを備え、油圧シリンダ制御手段は、上側油圧室9aと下側油圧室9bとを連通する油圧制御流路30と、流路30を上側油圧室側から下側油圧室側へ流れる状態と流れない状態とに切換可能な切換弁33とを備え、油圧制御流路30の途中にオイルタンク31を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に木材チップ等の所謂バラ物の荷役作業に供されるグラブバケットに使用されるグラブバケット用油圧シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材チップ、粉状鉱石、土砂等の所謂バラ物の荷役作業を行うものとして、クレーン等で操作する単索式グラブバケットが使用されている。
【0003】
この単索式グラブバケットは、図3に示すように、グラブ1を構成し互いに対向して開閉動作される一対のシェル2,2と、各シェル2,2の回動中心を軸2a,2aにて軸支させた下部フレーム3と、下部フレーム3の上側に位置し、各シェル2,2の背面と吊りアーム4,4…を介して連結した上部フレーム5と、上部及び下部フレーム5,3間にあって、下部フレーム3に対して油圧シリンダ6を介して連結された中間可動フレーム7と、中間可動フレーム7に対して下端が固定されるとともに中間可動フレーム7と上部フレーム5とにそれぞれ備えた滑車に巻きかけられて上方に延長された吊下げ兼グラブ閉塞用のワイヤーロープ8とを備え、油圧シリンダ6及びワイヤーロープ8を操作することにより、シェル2,2を開閉させるようになっている。
【0004】
このグラブバケットに使用される油圧シリンダ装置は、図4に示すように、油圧シリンダ6と、油圧シリンダ6を制御する油圧シリンダ制御手段とをもって構成されている。
【0005】
油圧シリンダ6は、上下端が閉鎖された筒状のシリンダ本体9と、シリンダ本体9内に往復動可能に挿入されたピストン10と、ピストン10に固定されシリンダ本体9の上端部に出入可能に導出されたピストンロッド11とを有し、ピストン10に下側油圧室9bから上側油圧室9aへの一方向流れのみを許容する逆止弁付流路12を設けている。
【0006】
一方、油圧シリンダ制御手段は、両端がそれぞれシリンダ本体9の上下端部に接続され、ピストン10により区画された上側油圧室9aと下側油圧室9bとを連通する油圧制御流路13と、流路13を上側油圧室9a側から下側油圧室9b側へ流れる状態と流れない状態とに切換え可能な切換弁14とを備え、切換弁14の動作により油圧シリンダ6を制御するようになっている。
【0007】
また、シリンダ本体の下側油圧室9bには、連通管15を介してオイルタンク16が連通されており、油圧シリンダ6が伸長方向に動作した際には、ピストンロッド体積分の動作油を下側油圧室9bに供給し、逆に油圧シリンダ6が収縮方向に動作した際には、ピストンロッド体積分の動作油が下側油圧室9bより排出されるようになっている。従って、オイルタンク16内は、ピストン10が上死点に近づくほど内部圧が低く、ピストン10が下死点に近づくほど内部圧が高くなる。尚、図中の符号17はオイルタンク16上部に設けられた給油口、18はエア抜き用のエアブリーザ、19は無線信号受信器用アンテナである。
【0008】
無線信号受信器は、無線信号発信器より信号を受信すると、切換弁13に対し上側油圧室9aから下側油圧室9bへ流れる状態に切り換える命令を発信するようになっている。
【0009】
このように構成された単索式グラブバケットは、切換弁14を上側油圧室9a側から下側油圧室9b側へ流れる状態に切り換え、油圧シリンダ6をフリーな状態にすることにより、下部フレーム3がシェル2,2及び下部フレーム3の自重によって中間可動フレーム7より離脱して下降し、シェル2の背面が吊りアーム4によって吊られ状態で回動中心軸2a位置が降下してグラブ1が開放されるようになっている。
【0010】
一方、グラブ1を閉塞させ荷物を掴む動作は、図5(a)〜(c)に示すように、グラブ1を開放させた状態で着床させ、切換弁14を下側油圧室9b側から上側油圧室9a側への一方向流れのみを許容し、上側油圧室9a側から下側油圧室9b側へ流れない状態に切り換え、その状態でワイヤーロープ8を降下させる方向に繰り出すことにより中間可動フレーム7を降下させて下部フレーム3に接近させ、この状態で油圧シリンダ6が伸長不能な状態にあるので、ワイヤーロープ8を引き上げることにより、中間可動フレーム7が上部フレーム5に接近するように引き上げられ、これによって上下部両フレーム4,5間の距離が縮まり両シェル2,2が互いに閉じる方向に動作されるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0011】
尚、このような単索式グラブバケットでは、掴み動作において、切換弁14を上側油圧室9a側から下側油圧室9b側へ流れない状態にし、中間可動フレーム7を降下させることにより全荷重が油圧シリンダ6に作用し、上側油圧室9a内に一瞬負圧(真空)状態が生じてロッド導出部のVパッキンの反耐圧側より空気が吸入される場合がある。
【0012】
この空気は、油圧シリンダ6を伸長させた際に、上側油圧室9aより油圧制御流路13を通して下側油圧室9bに送られ、下側油圧室9b内でオイルタンク16より供給された動作油と混合され、次に、油圧シリンダ6を収縮させた際に、空気を含有した動作油の一部はオイルタンク16に排出され、その他は油圧シリンダ6を含む油圧回路内を循環し、この循環する動作油に空気が徐々に蓄積されるようになる。一方、オイルタンク16内の空気は、シリンダ伸長時にエア抜きされて収縮動作開始時には常圧となっている。
【0013】
しかしながら、油圧シリンダ6や油圧制御流路13内を循環する動作油に空気が蓄積されていると、シリンダ収縮時に、動作油によって上側油圧室9a内の空気及びオイルタンク16内の空気が圧縮されて高圧となるため、動作油の一部が上側油圧室9a又はオイルタンク16のどちらにも排出できずに下側油圧室9b内に残留し、油圧シリンダ6が収縮しきれなくなるという問題があった。
【0014】
そこで、このような単索式グラブバケットでは、通常、油圧シリンダ6の収縮できない距離が微少であるため、図3に示すように、上部フレーム5と中間可動フレーム7との間に、油圧シリンダ6が収縮しきれなかった距離を吸収できるように逃げ用のクリアランスtが設けられている。
【特許文献1】実公平7−56295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上述の如き従来の技術では、グラブバケットの大型化に伴って油圧シリンダも大型化し、シリンダ内に流れる動作油量及びシリンダ内に混入される空気量も多くなるため、シリンダの収縮しきれなかった距離をクリアランスで吸収しきれず、上下部両フレーム間に所定間隔以上の間隔が生じ、シェルが閉じきれず、粉粒物がグラブよりこぼれ落ちてしまい、作業環境が悪化するという問題があり、このことで公害問題に発展する場合もあり、取り扱い物によっては荷役作業の中止を余儀なくされる場合もある。
【0016】
また、シリンダの収縮しきれなかった分をクリアランスで吸収できなかった場合、グラブ閉塞動作時に、中間可動フレームと上部フレームとが衝突してしまい、その際に衝撃が生じ、装置の破損を招くおそれがあった。
【0017】
そこで本発明は、上述の従来技術の問題を鑑み、シリンダの未収縮分をクリアランスによって好適に吸収することができ、シェルを確実に閉じて、粉粒物のこぼれ落ちをなくし、安全に荷役作業を行うことのできるようにするグラブバケット用油圧シリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、グラブを構成し互いに対向して開閉動作される一対のシェルと、該シェルの回動中心を軸支させた下部フレームと、該下部フレームの上側に位置し、前記各シェルの背面と吊りアームを介して連結した上部フレームと、前記上部及び下部フレーム間にあって、下部フレームに対して油圧シリンダを介して連結された中間可動フレームと、該中間可動フレームに対して下端が固定されるとともに該中間可動フレームと前記上部フレームとにそれぞれ設けた滑車に巻き掛けられて上方に延長された吊り下げ兼グラブ閉塞用のワイヤーロープとを備えてなるグラブバケットに使用され、前記油圧シリンダと、該油圧シリンダを制御する油圧シリンダ制御手段とをもって構成されたグラブバケット用油圧シリンダ装置において、前記油圧シリンダは、上下両端が閉鎖され、下端部が前記下部フレームに固定された筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内に往復動可能に挿入され、前記シリンダ本体内を上側油圧室と下側油圧室とに区画するピストンと、該ピストンに固定されて前記シリンダ本体の上端側に出入可能に導出され、導出側端部が前記中間可動フレームに固定されたピストンロッドとを備え、前記油圧シリンダ制御手段は、一方の端部が前記シリンダ本体の上端部に接続されるとともに他方の端部が前記シリンダ本体の下端部に接続されて、前記上側油圧室と下側油圧室とを連通する油圧制御流路と、該油圧制御流路を上側油圧室側から下側油圧室側へ流れる状態と流れない状態とに切換え可能な切換弁とを備え、前記油圧制御流路の途中にオイルタンクを設けたグラブバケット用油圧シリンダ装置であることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加え、オイルタンクは、その内部を上下の貯留室に区画する仕切り板を備え、該仕切り板に上下両貯留室間を連通する連通口を設けるとともに、前記上貯留室を前記油圧制御流路の上側油圧室側を介して前記シリンダ本体の上側油圧室に連通させ、前記下貯留室を前記油圧制御流路の下側油圧室側を介して下側油圧室に連通させたことを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成に加え、仕切り板は、オイルタンク内底面と互いに対向し、且つ斜めに傾けて配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るグラブバケット用油圧シリンダ装置は、グラブを構成し互いに対向して開閉動作される一対のシェルと、該シェルの回動中心を軸支させた下部フレームと、該下部フレームの上側に位置し、前記各シェルの背面と吊りアームを介して連結した上部フレームと、前記上部及び下部フレーム間にあって、下部フレームに対して油圧シリンダを介して連結された中間可動フレームと、該中間可動フレームに対して下端が固定されるとともに該中間可動フレームと前記上部フレームとにそれぞれ設けた滑車に巻き掛けられて上方に延長された吊り下げ兼グラブ閉塞用のワイヤーロープとを備えてなるグラブバケットに使用され、前記油圧シリンダと、該油圧シリンダを制御する油圧シリンダ制御手段とをもって構成されたグラブバケット用油圧シリンダ装置において、前記油圧シリンダは、上下両端が閉鎖され、下端部が前記下部フレームに固定された筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内に往復動可能に挿入され、前記シリンダ本体内を上側油圧室と下側油圧室とに区画するピストンと、該ピストンに固定されて前記シリンダ本体の上端側に出入可能に導出され、導出側端部が前記中間可動フレームに固定されたピストンロッドとを備え、前記油圧シリンダ制御手段は、一方の端部が前記シリンダ本体の上端部に接続されるとともに他方の端部が前記シリンダ本体の下端部に接続されて、前記上側油圧室と下側油圧室とを連通する油圧制御流路と、該油圧制御流路を上側油圧室側から下側油圧室側へ流れる状態と流れない状態とに切換え可能な切換弁とを備え、前記油圧制御流路の途中にオイルタンクを設けたことによって、油圧回路内に空気が蓄積されるのを抑えられ、油圧シリンダが好適に収縮することができ、油圧シリンダの未収縮分を上部フレームと中間可動フレームとの間に設けられたクリアランスによって吸収することができ、シェルが好適に閉鎖して収容物が零れ落ちるのを防止し、上部フレームと中間可動フレームとの衝突を防止して安全に荷役作業を行うことができる。
【0022】
オイルタンクは、その内部を上下の貯留室に区画する仕切り板を備え、該仕切り板に上下両貯留室間を連通する連通口を設けるとともに、前記上貯留室を前記油圧制御流路の上側油圧室側を介して前記シリンダ本体の上側油圧室に連通させ、前記下貯留室を前記油圧制御流路の下側油圧室側を介して下側油圧室に連通させたことによって、グラブバケットが斜めに着床したり転倒したりしても、下貯留室内の動作油に空気が混入され難くなり、シリンダの下側油圧室に対し常に空気を含まない動作油のみを供給することができる。
【0023】
仕切り板は、オイルタンク内底面と互いに対向し、且つ斜めに傾けて配置されたことによって、仕切り板に沿って動作油に含まれた気泡がオイルタンク内上部に移動し、好適に空気と動作油とに分離される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明に係るグラブバケット用油圧制御シリンダ装置について説明する。尚、上述の実施例と同一の部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0025】
この油圧制御シリンダ装置は、従来の油圧シリンダ装置に換えて図3に示す単索式グラブバケットに使用するものであり、図1は、本発明に係る油圧制御シリンダ装置の概略を示し、図中符号6は油圧シリンダ、符号30は油圧制御流路、符号31はオイルタンクである。
【0026】
グラブバケットは、グラブ1を構成し互いに対向して開閉動作される一対のシェル2,2と、各シェル2,2の回動中心を軸2a,2aにて軸支させた下部フレーム3と、下部フレーム3の上側に位置し、各シェル2,2の背面と吊りアーム4,4…を介して連結した上部フレーム5と、上部及び下部フレーム5,3間にあって、下部フレーム3に対して油圧シリンダ6を介して連結された中間可動フレーム7と、中間可動フレーム7に対して下端が固定されるとともに中間可動フレーム7と上部フレーム5とにそれぞれ備えた滑車に巻きかけられて上方に延長された吊下げ兼グラブ閉塞用のワイヤーロープ8とを備え、油圧制御シリンダ6及びワイヤーロープ8を操作することにより、上部フレーム5と下部フレーム3との間の距離を調整し、シェル2,2を開閉させるようになっている。
【0027】
このグラブバケットに使用される油圧制御シリンダ装置は、油圧シリンダ6と、油圧シリンダ6を制御する油圧シリンダ制御手段とをもって構成されている。
【0028】
油圧シリンダ6は、上下端が閉鎖された筒状のシリンダ本体9と、シリンダ本体9内に往復動可能に挿入され、シリンダ本体9内を上側油圧室9aと下側油圧室9bとに区画するピストン10と、ピストン10に固定されてシリンダ本体9の上端より出入可能に導出したピストンロッド11とを有し、ピストン10には、下側油圧室9bから上側油圧室9aへ向う一方向流れのみを許容する逆止弁付流路12が設けられている。
【0029】
この油圧シリンダ6は、シリンダ本体9の下端部を下部フレーム5に固定し、ピストンロッド11の導出側端部を中間可動フレーム7に固定することにより、下部フレーム5に対し中間可動フレーム7を連結している。
【0030】
一方、油圧シリンダ制御手段は、一方の端部がシリンダ本体9の上端部に接続されるとともに他方の端部がシリンダ本体9の下端部に接続されて、上側油圧室9aと下側油圧室9bとを連通する油圧制御流路30を備えている。尚、図中符号32は流量調節用絞り弁である。
【0031】
また、油圧シリンダ制御手段は、この油圧制御流路30の途中に、両方向流れを許容し、上側油圧室9a側から下側油圧室9b側へ流れる状態と、下側油圧室9b側から上側油圧室9a側への一方向流れのみを許容し、上側油圧室9a側から下側油圧室9b側に向けて流れない状態とに流路30を切換え可能な切換弁33を備え、この切換弁33を、上側油圧室9a側から下側油圧室9b側へ流れない状態に切り換えることにより油圧シリンダ6を伸長不能な状態となし、上側油圧室9a側から下側油圧室9b側へ流れる状態、即ち両方向流れを許容する状態に切り換えることにより油圧シリンダ6を伸縮自在、即ちフリーな状態となすようになっている。
【0032】
切換弁33は、パイロット流路34に介在された電磁弁35が閉じた状態ではシリンダ本体9の上側油圧室9a側から下側油圧室9b側への流れが阻止され、電磁弁35に通電し、該電磁弁35を開いてパイロット流路34に油圧を作用させた状態では、逆止状態が解除され、油圧制御流路30における何れの向きの流れも阻止されない構造となっている。
【0033】
また、油圧制御流路30の途中には、オイルタンク31が設けられ、シリンダ本体9内の動作油量を調整するようになっている。
【0034】
オイルタンク31は、内部が仕切り板40により上下の貯留室31a,31bに区画された箱状に形成され、上貯留室31aが油圧制御流路30の上側油圧室側を構成する連通管41を介してシリンダ本体9の上側油圧室9aに連通され、下貯留室31bが油圧制御流路30の下側油圧室側を構成する連通管42を介してシリンダ本体9の下側油圧室9bに連通されている。
【0035】
また、仕切り板40には、連通口43を備え、該連通口43により上下の両貯留室31a,31b間が連通されている。
【0036】
各連通管41,42が接続される接続口44,44は、それぞれオイルタンク31側面部のシリンダ伸長時における動作油面xより低い位置に設けられている。
【0037】
また、このオイルタンク31の上面部には、給油口45とエアブリーザ46とが設けられ、動作油の補給及びオイルタンク31内の圧力調整を行えるようになっている。
【0038】
仕切り板40は、オイルタンク31内底面と互いに対向し、且つ斜めに傾けた状態に配置され、動作油に含まれる気泡が仕切り板に沿ってオイルタンク31上部に移動し易いようになっている。
【0039】
このように構成された油圧制御シリンダ装置では、油圧シリンダ6が伸長動作する場合、上側油圧室9aより排出された空気を含有した動作油は、切換弁33が介在された連通管41を通してオイルタンク31の上貯留室31aに流入し、上貯留室31a内で空気と動作油とに分離され、動作油のみが連通口43を通して下貯留室31bに流入し、シリンダ本体9の下側油圧室9b内には、空気を含有しない動作油のみが充填される。また、その際、エアブリーザ46が開放されてオイルタンク31内の空気圧は常圧となる。
【0040】
一方、油圧シリンダ6が収縮動作する場合、下側油圧室9b内の動作油は、ピストン10の逆止弁付流路12を通して上側油圧室9a側に排出されるとともに、連通管42を通してオイルタンク31に排出され、更に、オイルタンク31より連通管41を通してシリンダ本体9の上側油圧室9aに流入する。
【0041】
このとき、オイルタンク31内の空気は徐々に圧縮されてピストン10が下死点に近づくほど高圧となり、シリンダの上側油圧室9a内に外部より空気が混入した場合には、この空気も徐々に圧縮されてピストン10が下死点に近づくほど高圧となる。しかしながら、下側油圧室9bとオイルタンク31との間の動作油の行き来において空気が混入した動作油が介在されないので、オイルタンク31内の空気圧の上昇は許容範囲内に留まり、下側油圧室9b内の動作油は略全てが上側油圧室9a又はオイルタンク31に排出され、油圧シリンダ6は好適に収縮する。
【0042】
従って、伸縮動作を繰り返しても油圧シリンダ装置の油圧回路内には空気が蓄積されず、シリンダ収縮時に上側油圧室9a内及びオイルタンク31内の空気が圧縮されても、下側油圧室9b内の動作油の排出に支障をきたさず、油圧シリンダ6は好適に収縮することができる。
【0043】
この油圧制御シリンダ装置を図3に示す単索式グラブバケットに用いた場合、油圧シリンダ6は好適に収縮し、未収縮分は微小であるのでクリアランスtの範囲で吸収でき、掴み持ち作業の際、シェル2,2が閉じきらずに零れ落ちることがない。更には、上部フレーム5と中間可動フレーム7との衝突が回避でき、装置に作用する衝撃を抑え安全に作業を行うことができる。
【0044】
また、グラブバケットが傾いて着床した場合又は転倒した場合、オイルタンク31が仕切り板40により上下の貯留室31a,31bに区画されているので、オイルタンク31内で動作油と空気とが混合されるのを防ぐことができ、常に油圧シリンダ6の下側油圧室9b内には、空気を含まない動作油のみが供給されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るグラブバケット用油圧制御シリンダ装置の概略を示す油圧回路図である。
【図2】(a)は図1中のオイルタンクを示す正面図、(b)は同縦断面図、(c)は同横断面図である。
【図3】グラブバケットの一例を示す正面図である。
【図4】同上のグラブバケットに使用する油圧制御シリンダ装置の概略を示す油圧回路図である。
【図5】同上のグラブバケットによる掴み動作の各工程を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0046】
9 シリンダ本体
9a 上側油圧室
9b 下側油圧室
10 ピストン
11 ピストンロッド
12 逆止弁付流路
19 無線信号受信機用アンテナ
30 油圧制御流路
31 オイルタンク
31a 上貯留室
31b 下貯留室
32 絞り弁
33 切換弁
34 パイロット流路
35 電磁弁
40 仕切り板
41 連通管
42 連通管
43 連通口
44 接続口
45 給油口
46 エアブリーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラブを構成し互いに対向して開閉動作される一対のシェルと、該シェルの回動中心を軸支させた下部フレームと、該下部フレームの上側に位置し、前記各シェルの背面と吊りアームを介して連結した上部フレームと、前記上部及び下部フレーム間にあって、下部フレームに対して油圧シリンダを介して連結された中間可動フレームと、該中間可動フレームに対して下端が固定されるとともに該中間可動フレームと前記上部フレームとにそれぞれ設けた滑車に巻き掛けられて上方に延長された吊り下げ兼グラブ閉塞用のワイヤーロープとを備えてなるグラブバケットに使用され、前記油圧シリンダと、該油圧シリンダを制御する油圧シリンダ制御手段とをもって構成されたグラブバケット用油圧シリンダ装置において、
前記油圧シリンダは、上下両端が閉鎖され、下端部が前記下部フレームに固定された筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内に往復動可能に挿入され、前記シリンダ本体内を上側油圧室と下側油圧室とに区画するピストンと、該ピストンに固定されて前記シリンダ本体の上端側に出入可能に導出され、導出側端部が前記中間可動フレームに固定されたピストンロッドとを備え、
前記油圧シリンダ制御手段は、一方の端部が前記シリンダ本体の上端部に接続されるとともに他方の端部が前記シリンダ本体の下端部に接続されて、前記上側油圧室と下側油圧室とを連通する油圧制御流路と、該油圧制御流路を上側油圧室側から下側油圧室側へ流れる状態と流れない状態とに切換え可能な切換弁とを備え、前記油圧制御流路の途中にオイルタンクを設けたことを特徴としてなるグラブバケット用油圧シリンダ装置。
【請求項2】
オイルタンクは、その内部を上下の貯留室に区画する仕切り板を備え、該仕切り板に上下両貯留室間を連通する連通口を設けるとともに、前記上貯留室を前記油圧制御流路の上側油圧室側を介して前記シリンダ本体の上側油圧室に連通させ、前記下貯留室を前記油圧制御流路の下側油圧室側を介して下側油圧室に連通させた請求項1に記載のグラブバケット用油圧シリンダ装置。
【請求項3】
仕切り板は、オイルタンク内底面と互いに対向し、且つ斜めに傾けて配置された請求項2に記載のグラブバケット用油圧シリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−137580(P2006−137580A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330011(P2004−330011)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(591164978)東部重工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】