説明

グラム陰性細菌の除去のための組成物及び方法

胃腸管における他の場所での有意な投与なしに、抗菌薬剤を回腸、盲腸、及び/又は結腸に特異的に投与する経口薬物送達製剤を開示する。製剤は、活性剤として、マクロライド又はアミノグリコシド、又はキノロン抗菌剤及び抗グラム陰性リポペプチド(ポリミキシン)抗菌薬剤又はグラム陰性細菌に対して効果的である他のペプチド抗菌剤の組み合わせを含む。製剤を使用し、結腸における感染又は不要なコロニー形成を処置し、不要な又は潜在的に病原性の細菌から結腸菌叢の効果的な除染を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回腸、盲腸、及び/又は結腸に抗菌薬剤を投与するための経口の薬物送達システムの分野にある。より具体的には、本発明は、結腸における感染又は不要なコロニー形成を処置するための、及び結腸菌叢からの潜在的な病原性細菌の効率的な除去のためのマクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌剤とリポペプチド抗菌剤(例えばポリミキシン抗菌剤など)の組み合わせの遠位回腸、盲腸、及び/又は結腸への経口投与、及び送達に関する。
【0002】
発明の背景
典型的には、結腸において多くの種類の細菌(有益な細菌及び悪い(病原性)細菌を含む)がある。有意な死亡率及び/又は罹病率を招きうる多くの結腸細菌感染がある。これらの例は、大腸菌(E.coli)の特定株により起こされる感染を含む。
【0003】
多くの例において、結腸は、抗生物質耐性の潜在的に病原性の細菌(例えば腸内細菌など)又は他のグラム陰性細菌(例えばシュードモナス(Pseudomonas)、アシネトバクター(Acinetobacter)など)、又は他の非発酵性グラム陰性細菌などによりコロニー形成される。経口投与された抗菌剤を使用し、これらの細菌が除去されてきた。この診療は「選択的消化管除染」又はSDDと称される。(Selective decontamination of the digestive tract. de Smet AM, Bonten MJ. Curr Opin Infect Dis. 2008 Apr; 21(2): 179-83)
【0004】
腸結腸菌叢は、5つの主な理由のため、抗菌薬剤に対する細菌耐性の出現及び伝播の原動力の主要システムとして認識される。
【0005】
第1に、それは密集した数百の細菌種群で構成され、それらの内の耐性菌の宿主となりうる。
【0006】
第2に、抗菌剤に感受性である共生菌叢からの細菌は、例えば食物と共に腸管に進入する環境からの耐性細菌からの、又は胃腸管に既に存在する他の細菌からの耐性遺伝子の水平伝達後に耐性になりうる。
【0007】
第3に、抗菌剤に感受性である共生菌叢からの細菌は、抗菌剤処置の間での天然に生じる耐性突然変異体の淘汰後に耐性になりうる。
【0008】
第4に、共生菌叢からの耐性細菌は、その由来にかかわらず、糞便と共に除去される場合、環境において拡散される。
【0009】
第5に、共生菌叢からの耐性細菌は、それらの耐性遺伝子を、他の細菌に(腸管内又は環境中のいずれか)、ヒト及び/又は動物について毒性/病原性でありうる又は非毒性でありうる他の細菌種にさらに伝達することができ、このように、抗菌剤に対する細菌耐性の負荷及び範囲をさらに増加させる。
【0010】
これらの事象は、2つの型の有害な結果を有しうる。第1に、結腸が耐性細菌によりコロニー形成される患者には、これらの耐性細菌により起こされる感染を発症するリスクがある(患者らが、そのような発生を支持する状況に遭遇する場合)。そのような状況の例は、免疫不全患者における、又は手術を受けている患者、集中治療室に入院した患者、人工器官材料が移植されている患者などにおける尿路感染(女性において非常に一般的な感染)の発生、又は全身性の全身感染症の発生である。第2に、コロニー形成された被験者は、環境において又は他の被験者に(病院において及び共同体において)耐性細菌を拡散しうる。
【0011】
従って、臨床医が、被験者に対する任意の実質的な副作用を起こすことなく、コロニー形成された患者の結腸菌叢からそのような耐性細菌を除去する組成物を有することが有利であろう。そのような副作用は、実際の処置を用いて周知である。そのような処置では腸管がより重視され、局所又は全身の副作用が限定又は回避されることが有利でありうる。
【0012】
より具体的には、これらの副作用は、一般的に、腸レベルで、副作用(例えば嘔気、嘔吐、胃不快感、下痢、便秘など)を含む。追加の副作用は、使用される薬物に対して耐性である細菌の淘汰、及びそのような細菌によるコロニー形成であり、最初のコロニー形成細菌についての上に記載する可能な結果の全てを伴う。特に懸念されるのは、そのような細菌により起こされる感染の潜在的な発生であり、それは、処置するのが困難である。なぜなら、それらは(例えば最初にコロニー形成する細菌など)多くの抗菌薬剤、また、それらの除去のために使用される薬剤に対して耐性であり、従って、非常に限定された数の処置だけ利用できる。
【0013】
局所処置を標的にしながら、全身レベルでSDDのために使用される抗菌剤の有意な吸収を制限又は回避し、公知の副作用、例えば二次的作用及び毒性など(抗菌薬剤の全身吸収後にしばしば生じる)を回避することも有利になりうる。
【0014】
上の理由の全てに対し、SDDのために設計された理想的な生成物は、以下の特性を有しうる。
【0015】
第1に、それは、コロニー形成された被験者に、理想的には経口投与により簡単に投与可能であるべきである。第2に、それは、腸のコロニー形成する標的耐性株を除去する際での高い効力を実証し、それは、標的生物の間での耐性の出現を最小限にすべきである。第3に、それは、そのような生成物を後回腸又は結腸に送達することにより抗菌剤の全身吸収を制限すべきである。第4に、それは、上に記載する副作用(局所又は全身性)の有意な低下を実証すべきである。
【0016】
本発明は、そのような組成物、及び、この組成物を使用した、コロニー形成された被験者の腸管からグラム陰性耐性細菌を除去するための方法を提供する。
【0017】
一般的な記述として、結腸が、耐性の潜在的に病原性の細菌(例えば腸内細菌など)又は他のグラム陰性細菌(例えばシュードモナス、アシネトバクターなど)、又は他の非発酵性グラム陰性細菌などによりコロニー形成される状況は多数あり、抗菌剤処置後(原因にかかわらず)のコロニー形成、及び環境、食物、又は他の外的供給源からの汚染を含みうる。
【0018】
結腸でのそのようなコロニー形成の結果は多数ある。主要な1つは、コロニー形成された患者における又は動物における感染の発生である。これは、免疫不全患者を処置する場合に特に高い頻度で生じうる。これは、また、感染に対する耐性を減少させうる任意の医学的処置の間に生じうる。そのような医学的処置の例は、手術手順、例えば患者中への臓器(人工又はヒト/動物由来)、人工器官、カテーテル、心臓弁などの移植のために実施される手順などの間でありうる。
【0019】
感染は、また、感染源が腸のグラム陰性ミクロフローラである場合(例えば、尿路感染において)、非免疫不全患者において生じうる(J Clin Nurs. 2002 Sep; 11(5): 568-74. Pathogenesis of urinary tract infections: a review. Moore KN, Day RA, Albers M.)。
【0020】
耐性の潜在的に病原性の細菌(例えば腸内細菌など)又は他のグラム陰性細菌(例えばシュードモナス、アシネトバクターなど)、又は他の非発酵性グラム陰性細菌などによる腸管でのコロニー形成の結果は、環境中でのそのような細菌の拡散(The role of the intestinal tract as a reservoir and source for transmission of nosocomial pathogens. Donskey CJ.Clin Infect Dis. 2004 Jul 15; 39(2): 219-26; Antibacterial regimens and intestinal colonization with antibacterial-resistant Gram-negative bacilli. Donskey CJ. Clin Infect Dis. 2006 Sep 1; 43 Suppl 2: S62-9)又は1人のコロニー形成された被験者から健常な被験者へのそれらの伝染(院内感染の大流行を招く)でもありうる(Outbreak of multidrug-resistant Acinetobacter baumannii in a Belgian university hospital after transfer of patients from Greece. Wybo I, Blommaert L, De Beer T, Soetens O, De Regt J, Lacor P, Pierard D, Lauwers S. J Hosp Infect. 2007 Dec; 67(4): 374-80)。
【0021】
抗菌薬剤を、少なくとも2つの異なる臨床状態にある結腸に特異的に送達することは、主要な臨床上のブレークスルーでありうる:第1に、確立された結腸感染を処置すること、及び第2に、不要な微生物(耐性及び/又は潜在的に病原性の微生物)による無症候性コロニー形成を、不要な微生物の環境(病院、看護/特別介護ホーム、又は普通の家庭)における伝播を予防し、コロニー形成された宿主における続く感染の発生を予防することを目的とした措置として除去すること。
【0022】
そのように行うために、所望の効果の他、細菌耐性を促進しない、及び/又は役立つ細菌(それらは、理想的には、大半が影響を受けないままであるべきである)よりも有害な(病原性の)又は不要な微生物について選択的である効率的な濃度の活性薬剤を結腸に送達する必要がありうる。
【0023】
また、結腸に送達された抗菌薬剤の任意の他の作用又は副作用(腸管の生理機能に対する任意の薬理学的効果、例えば胃又は小腸に対する運動促進効果などを含む)を抑制し、加速された移行又は任意の全身毒性及び副作用(腎臓、肝臓、又はその他)を招き、それらは、腸管による抗菌剤の吸収及び結腸以外の身体の他の部分における抗菌剤の拡散に続きうる。
【0024】
結腸への抗菌剤の特異的な標的送達での臨床上の利点のいくつかの例を以下に列挙する:
【0025】
不要な微生物によるコロニー形成及びその除去に関して、「選択的消化管除染」(SDD)と称される医療行為が、上に記述された通り、記載されており、この目的で30年以上にわたり使用されてきた。それは、実際の感染を発症する前に感染の高いリスクがある重い病気の患者(例えば集中治療、又は血液癌患者など)の結腸からの共生及び/又は潜在的に病原性の微生物(例えば腸内細菌、シュードモナス、エンテロコッカスなど)を除去することを目的とする。しかし、SDDは、非常に高いリスクのあるこれらの患者におけるグラム陰性感染の発生を予防する恐らくは最も好ましいその効果にもかかわらず、一般に認められることは決してなかった(Impact of SDD of the digestive tract on carriage and infection due to Gram-negative and Gram-positive bacteria: a systematic review of randomized controlled trials. Anaesth Intensive Care. 2008 May; 36(3): 324-38. Silvestri L, van Saene HK, Casarin A, Berlot G, Gullo A.)。
【0026】
SDDの有効性における医学界のこの信頼の欠如は、いくつかの要因に起因する:
【0027】
第1に、除染は、グラム陽性感染の発生に対する効果を伴わない。なぜなら、それは、現在、抗グラム陰性抗菌剤に依存するからである。これによって、非常に高リスクな患者における診療の全体的な関心が低下する。なぜなら、患者らにはグラム陽性感染の高リスクもあるからである。中心的な試験において、著者らは、SDDを、機械的換気下にあるICU患者において使用した場合に観察されるグラム陰性感染の減少が、グラム陽性感染の増加を伴い、このように、SDDの全ての有益な効果を無効にすることを示した。
【0028】
第2に、SDDのために使用される抗菌剤は、感染患者を処置するためにも使用される同じ抗菌剤ファミリーに属す(例えば、アミノグリコシド又はフルオロキノロン又はコリスチン)。これは、選択的除染のためのこれらの薬剤の大量使用が、最終的には、耐性細菌を淘汰し、それらは、現在利用可能である抗菌剤の大半により処置不可能である感染を招きうる心配を伴う。
【0029】
SDDの別の可能な使用を、農場動物においても見出すことができる。実際に、ウシ及びヒツジが、しばしば、大腸菌株の特定の種、即ち、志賀毒素大腸菌(又はSTEC)(ベロ毒素大腸菌(又はVETEC)とも呼ばれる)により無症候性にコロニー形成される(Treatment and prevention of enterohemorrhagic Escherichia coli infection and hemolytic uremic syndrome. Expert Rev Anti Infect Ther. 2007 Aug; 5(4): 653-63. Goldwater PN.)。これらの株は、洗浄用の汚染水又は肥料用の動物排泄物の使用後での食料(屠殺の間での肉、搾乳プロセスの間での牛乳、及び生で食べる果物及び野菜を含む)を汚染しうる。
【0030】
症例は、また、動物排泄物により汚染された水中でのレクリエーション活動後に観察されてきた。わずかに少数のSTEC(10〜100個の細胞)の摂取が、ヒトにおいて、特に幼児において血性下痢を起こしうる。また、そのような下痢を発症する被験者の約5%が、翌週に、溶血性尿毒症症候群(又はSHU)と呼ばれる極めて重度の疾患に苦しみうる。SHUは重度の疾患であり、入院及び腎外性クリアランスがしばしば必要となる。死亡率は約5%である。家畜においてSTECコロニー形成を減少させるための現在承認されている有効な手段はない(Fairbrother JM, Nadeau E Escherichia coli: on-farm contamination of animals, Rev Sci Tech. 2006 Aug; 25(2):555-69)。しかし、コロニー形成された動物の結腸に効果的な抗菌剤を標的化することによって、この目標が達成されうる。
【0031】
SDDは、また、病院における抗菌剤耐性グラム陰性感染の大流行の制御に役立てるために提唱されている(Brun-Buisson C, Legrand P, Rauss A, Richard C, Montravers F, Besbes M, Meakins JL, Soussy CJ, Lemaire F, Intestinal decontamination for control of nosocomial multiresistant Gram-negative bacilli.Study of an outbreak in an intensive care unit. Ann Intern Med. 1989 Jun 1; 110(11): 873-81.)。この使用は、大半が、TEM又はSHVβ−ラクタマーゼファミリーに由来する広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)の分泌により第三世代セファロスポリンに対して耐性である腸内細菌(大半がクレブシエラ(Klebsiella))により起こされる院内感染の大流行に対して提唱された。そのような細菌は、大半が、病院において観察され、市中において非常に稀である。しかし、この型のESBL及び関連する大流行は、アルコール溶液を用いた手指消毒の使用及び接触予防措置が病院において大規模に実施され、患者間での細菌の交差伝染が予防されて、現在では大半が多くの国の病院から消えている。しかし、新型のESBL(CTX−Mと呼ばれる)は、出現及び拡散の著しく異なる疫学的パターンを有し、現在、病院において普及している(Pitout JD, Laupland KB.Extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae: an emerging public-health concern. Lancet Infect Dis. 2008 Mar; 8(3): 159-66)。CTX−M腸内細菌は、ESBL腸内細菌と同様に、第三世代セファロスポリンに対して耐性であるだけでなく、それらは、それらが最初に出現すると思われる市中及び入院した際に既にコロニー形成した市中の患者のために外部から侵入されたと思われる病院の両方において広く存在する。また、CTX−Mは、最もしばしば、以前に公知のESBLを保有するものよりも腸管生態系にずっと良く適合した腸内細菌種(例えば大腸菌など)により保有される。このように、それらは、見かけ上は、自然に排除される非常に小さな傾向を有する。これらの組み合わされた事実のため、CTX−M腸内細菌によるコロニー形成は、今後の抗菌剤処置のための主要な脅威であると考えられる。また、多数の腸内細菌が、現在、記載されており、それらは、さらにより重要な脅威を起こしうるカルバペネマーゼ酵素を保有する。なぜなら、それらは、現在利用可能なβラクタム抗菌剤のいずれにも感受性ではないからである(Carbapenemases: molecular diversity and clinical consequences.Poirel L, Pitout JD, Nordmann P. Future Microbiol. 2007 Oct; 2(5): 501-12.)。
【0032】
可能な新たな戦略は、実際には、SDDの古典的な使用のものとはかなり異なり、病院への入院時に、例えば、結腸に標的化された特定の抗菌薬剤を使用したスクリーニング後に、コロニー形成した患者の結腸からグラム陰性耐性細菌を除去することでありうる。
【0033】
次に、そのような薬剤を、経口投与後に後回腸又は結腸にその活性形態で送達するための組成物及び方法を提供することが有利でありうる。本発明は、そのような組成物及び方法を提供する。
【0034】
発明の概要
結腸においてグラム陰性細菌の除去を提供する、及び/又は結腸においてグラム陰性細菌感染を処置するための組成物及び方法が開示されている。組成物は、アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤と、抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤(例えばポリミキシン型抗菌剤など)又はグラム陰性細菌に対して効果的な他のペプチド抗菌剤との組み合わせを含む。
【0035】
組成物は、活性薬物を後回腸又は結腸に局所的に送達するように特異的に設計されており、上部管における全身吸収を制限し、任意の不要な副作用が制限又は回避される。薬物送達システムを調製するため及びそのような薬物送達システムを使用した結腸におけるグラム陰性細菌の除去を提供するための方法も開示されている。
【0036】
特定のポリミキシン抗菌剤、例えばコリスチン(コリマイシン又はポリミキシンEとも呼ばれる)は、全身性に(即ち、静脈内注射により)投与された場合に毒性があるが、しかし、長年にわたり腸消毒のために経口で使用されてきた(Antibacterial agents edited by Andre Bryskier Published by ASM press, Washington, in 2005, Chap 30)。
【0037】
マクロライド抗菌剤処置は、しばしば、マクロライドに対する細菌耐性の発生を招くが、しかし、そのような細菌は、他の抗菌剤、例えば、キノロン抗菌剤を用いて処置することができる。対照的に、キノロンをリポペプチド抗菌剤との組み合わせで使用し、そしてキノロン耐性細菌が結果として生成された場合、マクロライド抗菌剤は、そのような細菌感染を処置することができない可能性が高くなりうる。この理由のために、マクロライド抗菌剤とリポペプチド抗菌剤の組み合わせは、キノロン抗菌剤とリポペプチド抗菌剤の組み合わせよりも好ましい。
【0038】
アミノグリコシド抗菌剤とリポペプチド抗菌剤の組み合わせも好ましい。
【0039】
そのように言われているが、以下の両方の特定の組み合わせ
− ポリミキシン、又は任意の他の抗グラム陰性リポポリペプチド抗菌剤又はグラム陰性細菌に対して効果的な他のペプチド抗菌剤、及び
− マクロライド又はキノロン又はアミノグリコシド抗菌剤(結腸からの耐性グラム陰性細菌の除去用)、1つの薬剤に対して発生した細菌耐性の問題が最小限になる
を使用することによる。
【0040】
これらの実施態様の一局面において、薬剤は経口投与されるが、しかし、結腸部位で特異的に送達及び放出される。本明細書で使用される通り、結腸送達は、遠位回腸/盲腸/結腸への送達を含むが、結腸送達が好ましい。
【0041】
結腸に薬物を送達するための公知の多くの手段がある。上部腸管における胃液の攻撃に対して組成物を保護し、下部腸管において活性薬物を放出する腸溶コーティングが、長年にわたり開発されてきた(Singh et al., Modified-Release solid formulations for colonic delivery, in Recent patents on drug delivery & formulation, 2007, 1, 53-63; Rubinstein et al., Colonic drug delivery; in Drug discovery today: technologies, 2005 Vol. 2, No. 1, 33-37)。
【0042】
活性薬剤を、カプセル、錠剤、又は任意の許容可能な医薬的組成物中に製剤化することができ、理想的には、プログラムされた様式で、腸管の特定部位(例えば、限定はされないが、遠位回腸又は結腸など)で活性薬剤を特異的に放出するように設計される。プログラムされた送達によって、経口吸収後での胃における薬剤の分解が抑制され、それらが、小腸の下部(即ち、回腸)及び結腸中に放出されることが可能になる。一実施態様において、本組成物は、製剤化された活性薬剤が、それらが腸管の所望の部位に達した場合に最高の抗菌能力を再生できるようにする。
【0043】
一実施態様において、組み合わせた抗菌剤を、2つの異なる生成物として投与することができる、又は、所定の効果的な用量で同じ製剤中に組み合わせることができる。例えば、抗菌剤を、回腸/盲腸/結腸送達のための単一の製剤中に組み合わせることができる。別の例示的な実施態様において、抗菌剤を個別に製剤化する。この実施態様において、次に、2つの個別の製剤を、1つの単一カプセル中に又は別々のカプセル中に含めてもよい(これらの別々のカプセルは、最終使用生成物に同じブリスターで組み合わせてもよく、又は、異なるブリスターに分割してもよい)。別の例示的な実施態様において、リポペプチド(又はペプチド)抗菌剤を、後回腸、盲腸、又は結腸における送達のために製剤化し、マクロライド、アミノグリコシド、又はキノロン抗菌剤を遅延放出のために製剤化しない。この後の実施態様において、両方の抗菌剤が、同じ生成物中(例えば同じカプセル又は錠剤中)又は異なる生成物中(例えば異なる錠剤又はカプセル中、これらの異なる生成物は同じブリスター中にある又はない)に含まれうる。
【0044】
臨床医が投与できる用量に柔軟性を与え、各抗菌剤の結腸送達のために設計されうる2つの異なる産物を考えることが望ましいであろう。しかし、所定の効果的な用量で両方の抗菌剤を含む、組み合わせた医薬的投与形態は、大半の場合に適するであろう。
【0045】
製剤は、以下
(i)抗菌剤の任意の全身吸収を抑制し、次に任意の可能な全身毒性又は副作用を除去する、
(ii)上部腸管に対する任意の効果を抑制する、及び
(iii)後回腸、盲腸、及び結腸において管腔濃度(不要なグラム陰性細菌である標的生物を殺すために十分に高い)を達成し、また、これらの細菌集団の間での耐性の出現を抑制する
のために好ましく設計される。
【0046】
このように、本発明は、経口投与され、後回腸、盲腸、又は結腸に特異的に送達し、胃腸管の他の部位への送達を実質的に回避する薬物送達システムを含む組成物に関し、それにおいて薬物送達システムは以下:
a)アミノグリコシド、キノロン、又はマクロライド抗菌剤、及び
b)抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤又はグラム陰性細菌に対して効果的である他のペプチド抗菌剤
を含む。
【0047】
好ましくは、リポペプチド抗菌剤はコリスチンである。
【0048】
特定の実施態様において、薬物送達システムは、ペプチド抗菌剤(例、コリスチン)と、スペクチノマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、アルベカシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、及びアプラマイシンからなる群より選択されるアミノグリコシド抗菌剤の組み合わせを含む。
【0049】
特定の実施態様において、マクロライドはアジスロマイシンである。
【0050】
本発明は、さらに、第1及び第2の組成物の組に関し、それにおいて、
第1の組成物は、アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤を含み、
第2の組成物は、経口投与され、後回腸、盲腸、又は結腸に特異的に送達し、胃腸管の他の部位への送達を実質的に回避する薬物送達システムを含み、それにおいて、薬物送達システムは、抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤又はグラム陰性細菌に対して効果的である他のペプチド抗菌剤を含む。特定の実施態様において、第1の組成物は、経口投与され、後回腸、盲腸、又は結腸に特異的に送達し、胃腸管の他の部位への送達を実質的に回避する薬物送達システムであり、それにおいて、薬物送達システムは、アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤を含む。
【0051】
特定の実施態様において、本発明に記載の組成物又は組に存在する抗菌剤は、役立つ(有益な)細菌よりも有害な(病原性の)細菌について選択的である。
【0052】
本発明は、また、そのような細菌によりコロニー形成された患者の結腸からのグラム陰性耐性細菌の除去を提供するための方法における使用のための上の組成物又は組成物の組に関する。特に、この方法は、環境における(例えば、病院での入院時だけではない)耐性細菌の拡散を抑制し、コロニー形成された患者における(例えば、手術手順前だけではない)これらの細菌により起こされる感染の発生を抑制する。
【0053】
本発明は、また、実際の感染を発生する前にリスクのある患者の結腸からのグラム陰性耐性細菌の除去を提供するための方法における使用のための上の組成物又は組成物の組に関する。
【0054】
本発明は、また、腸管の管腔内の病原性微生物を除去する、及び感染細菌により放出される化合物の作用に起因する粘膜の病原性変化を最小限にする方法における使用のための上の組成物又は組成物の組に関する。
【0055】
本発明は、さらに、農場動物の結腸からのグラム陰性細菌の除去を提供するための方法における使用のための上の組成物又は組成物の組に関し、特に、それにおいて、標的化される結腸細菌は志賀毒素大腸菌(又はSTEC)である。
【0056】
上の組成物又は組成物の組は、また、病院において抗菌剤耐性グラム陰性感染(例えば院内感染など)の大流行を制御するための患者における選択的な除染を提供するための方法において使用することができる。前記の院内感染は以下により起こされうる:a)TEM又はSHVβ−ラクタマーゼファミリーに由来する広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)の分泌により第三世代セファロスポリンに対して耐性であるグラム陰性細菌、b)CTX−Mβ−ラクタマーゼファミリーに由来する広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)の分泌により第三世代セファロスポリンに対して耐性であるグラム陰性細菌、又はc)他の種類の酵素、例えばKPCのカルバペネマーゼならびに他の酵素ファミリーの分泌により抗菌剤に対して耐性であるグラム陰性細菌。
【0057】
本発明は、さらに、結腸細菌感染を有する、又は結腸細菌感染を有するリスクがある患者の結腸において細菌の濃度を低下させる方法における使用のための上の組成物又は組成物の組に関する。この場合において、本発明の組成物は、さらに、第3の活性薬剤、例えば、抗炎症化合物、抗ヒスタミン剤、抗コリン剤、抗ウイルス剤、抗有糸分裂剤、診断用薬剤、又は免疫抑制薬剤を含むことができる。
【0058】
本発明は、また、以下を含むキットに関する:
経口投与され、後回腸、盲腸、又は結腸に特異的に送達し、胃腸管の他の部位への送達を実質的に回避する薬物送達システムを含む第1の組成物(それにおいて、薬物送達システムは、抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤又はグラム陰性細菌に対して効果的である他のペプチド抗菌剤を含む)、及び
アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤を含む第2の組成物。
【0059】
本発明は、以下の詳細な説明を参照してより良く理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】35%FS30Dコーティングを施したcelletのヒトモデルによるアジスロマイシン放出プロファイルを示した図である。
【図2】BioDiss装置におけるヒトモデルによるコリスチン放出モデルプロファイルを示した図である。
【0061】
詳細な説明
薬物送達組成物、及び本明細書に記載する処置方法によって、不要なグラム陰性細菌が下部腸から除去され、これらの細菌集団の間での耐性の出現が抑制される。
【0062】
一実施態様において、本組成物は以下
− 抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤(例えばコリスチンなど)又は任意の他の抗グラム陰性ペプチド抗菌剤、及び
− マクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌剤、好ましくはマクロライド又はアミノグリコシド抗菌剤
を含む。
【0063】
送達組成物によって、抗菌剤の任意の有意な全身吸収が抑制され、このように、全身の毒性効果の任意の可能性が回避又は制限される。
【0064】
組成物は、長年にわたりヒト及び動物の処置のために広く使用されてきた抗菌薬剤の組み合わせを含み、従って、グラム陰性細菌に対する活性に関して、ならびに薬理学及び可能な毒性と副作用に関して周知である。
【0065】
また、これらの2つの薬物の組み合わせによって、成分のいずれかの任意の1つに対して耐性である突然変異体の淘汰による耐性細菌の出現が抑制される。実際に、薬物の組み合わせは、そのような突然変異体の出現を抑制する効果的な手段である。
【0066】
薬物の各々は、それらだけで、それらに感受性であるグラム陰性細菌を腸管から除去することができることが示されている。
【0067】
薬物の各々は、それらだけでは、グラム陰性細菌を腸管から除去するために使用された場合、ほとんど耐性細菌が選択されないことが示されている。
【0068】
一実施態様において、マクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌剤を1つの製剤で投与し、ペプチド抗菌剤を結腸送達製剤として別々に投与する。別の実施態様において、組み合わせた抗菌剤を、同じ製剤中で、所定の効果的な用量で組み合わせることができる。以下の記載は、本発明を行う最良の現在熟考されている様式を含む。この記載は、本発明の一般的な原理を例示する目的のために作成され、限定の意味で解釈すべきではない。
【0069】
本明細書に記載する薬物送達システムは、以下の詳細な説明、及び以下の定義を参照してより良く理解されうる。
【0070】
用語「a」、「an」、及び「the」は、本明細書で使用する通り、「1つ又は複数」を意味するように定義され、文脈が不適切ではない場合、複数形を含む。
【0071】
他に定義されない場合、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解される同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似又は等価の他の材料及び方法を、本発明の実施又は試験において使用することができるが、当業者に明らかであり得る通り、好ましい方法及び材料が本明細書に記載されている。
【0072】
用語「阻害する」、「阻害」、「阻害的」、及び「阻害剤」は、全て、生物学的活性又は機能を低下させる機能を指す。活性又は機能におけるそのような低下は、例えば、細胞成分(例、酵素)と関連しうる、又は細胞プロセス(例、特定のタンパク質の合成)と関連しうる、又は細胞の全体的プロセス(例、細胞増殖)と関連しうる。細菌の細胞増殖に関して、例えば、阻害的効果(即ち、細菌阻害効果)は殺菌的(細菌細胞を殺す)又は静菌的(即ち、細菌の細胞増殖を停止させる又は少なくとも遅らせる)でありうる。後者は、細胞増殖を遅らせる又は抑制し、株のより少ない細胞が、非阻害細胞と比べて、所定の期間にわたり産生されるようになる。分子的な観点から、そのような阻害は、特定の細菌標的の転写及び/又は翻訳のレベルにおける低下、又はその除去、あるいは、特定の標的生体分子の活性の低下又は除去と等価でありうる。
【0073】
本明細書で使用する「ポリミキシン」は抗グラム陰性リポペプチドであり、それは、ヘプタペプチド環及びN末端位置における脂肪酸鎖を含む塩基性デカペプチドである。リポペプチドに加えて、もはや脂質部分を含まないが、しかし、抗グラム陰性効力を保持するそのアナログを使用することができる。
【0074】
用語「リポペプチド」及び「リポポリペプチド」を本明細書において互換的に使用する。
【0075】
「標的」は細菌中の生体分子を指し、それは、本明細書で記載する活性薬剤により作用され、それにより、細菌細胞の増殖又は生存を調節、好ましくは阻害することができる。大半の場合において、そのような標的は、核酸配列又は分子、あるいはリポペプチド又はタンパク質でありうる。しかし、他の種類の生体分子も標的でありうる(例、膜脂質及び細胞壁構造成分)。
【0076】
1.マクロライド抗菌剤
マクロライドは活性がマクロライド環の存在に由来する薬物の群(典型的には抗菌剤)である。マクロライド環は大きな大環状ラクトン環であり、それに1つ又は複数のデオキシ糖(通常、クラジノース及びデソサミン)が結合しうる。ラクトン環は、通常、14、15、又は16員である。マクロライドは天然産物のポリケチドクラスに属する。
【0077】
いくつかの一般的に使用されるマクロライド抗菌剤があり、アジスロマイシン(Zithromax, Zitromax, Sumamed)、クラリスロマイシン(Biaxin)、ジリスロマイシン(Dynabac)、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン(Rulid, Surlid, Roxid)、ジョサマイシン、タイロシン/タイロシン(Tylan)、及びツラスロマイシンを含む。
【0078】
また、開発中のいくつかのマクロライド抗菌剤があり、カルボマイシンA、キタサマイシン、ミデカマイシン/酢酸ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、及びトロレアンドマイシンを含む。追加のマクロライドは、ロキシスロマイシン、ロキタマイシン、ミオカマイシン、フルリスロマイシン、ロサラマイシン、及びABT−229又はABT−269と命名される化合物を含む。
【0079】
2.ケトライド
ケトライドは新たなクラスの抗菌剤であり、それらはマクロライドに構造的に関連する。代表的なケトライドは、テリスロマイシン(Ketek)、セスロマイシン、スピラマイシン、アンサマイシン、オレアンドマイシン、カルボマイシン、及びタイロシンを含む。
【0080】
追加のマクロライドは、"Antibacterial Agents," Chapter 30, Andre Bryskier, ed., ASM press, Washington (2005)に記載するものを含む。
【0081】
マクロライド抗菌剤は、過去に、主にそれらの全身性の抗グラム陽性活性のために、グラム陽性の病原性細菌(例えばスタフィロコッカス又はストレプトコッカスなど)により起こされる感染を処置するために使用されてきた。実際に、第一世代マクロライド(例えばエリスロマイシンなど)を用いて達成される血清及び組織レベルは、これらのグラム陽性生物を殺すために十分に高い。しかし、それらは、グラム陰性生物を殺すために十分ではない。このように、これらの初期のマクロライドは、全身性のグラム陰性感染の処置に使用されなかった。
【0082】
しかし、状況は結腸の管腔において異なる。ここで、達成されるマクロライドの濃度は、血液及び組織中よりもずっと高い(例えば、1mg/mL対血清中の1〜5μg/mL程度の大きさ)。結果は、結腸において存在する通常の腸内細菌が、エリスロマイシンを用いた処置の間に管腔から除去される。このように、分子を、結腸から腸内細菌を除去するために使用することができる(Reduction of the aerobic Gram-negative bacterial flora of the gastro-intestinal tract and prevention of traveller's diarrhea using oral erythromycin. Andremont A, Tancrede C. Ann Microbiol (Paris). 1981 Nov-Dec; 132 B(3): 419-27)。
【0083】
結腸中に存在する高濃度のエリスロマイシンに対して耐性である腸内細菌の淘汰は、稀な事象である。このように、薬物は、かなり長期間にわたり結腸から腸内細菌を除去するための良い候補であり、耐性クローンが淘汰する可能性は低い。
【0084】
同時に、薬物は、結腸生態系からの他の細菌集団に対して活性を有する。しかし、これらの他の細菌集団の感受性クローンは、典型的には、耐性クローンにより非常に迅速に置換され、エリスロマイシン処置の間での結腸菌叢の組成の分析が、腸内細菌の除去を除き、存在する種に関して主要な変化を示さないであろう事実をもたらす。
【0085】
また、エリスロマイシン処置の間に結腸中に生存する菌叢は、それがエリスロマイシンに耐性である細菌からなるが、外因性生物によるコロニー形成を抑制するその特性、いわゆる「コロニー形成に対する耐性」を保持することが観察された(Effect of erythromycin on microbial antagonisms: a study in gnotobiotic mice associated with a human fecal flora. Andremont A, Raibaud P, Tancrede C. J Infect Dis. 1983 Sep; 148(3): 579-87.)。このように、薬物は、結腸からのグラム陰性細菌の除去を達成するための良い候補である。実際に、それは、種々の臨床設定におけるそのような使用について試験された(Reduction of the aerobic Gram-negative bacterial flora of the gastro-intestinal tract and prevention of traveller's diarrhea using oral erythromycin. Andremont A, Tancrede C. Ann Microbiol (Paris). 1981 Nov-Dec; 132 B(3): 419-27, Selective digestive decontamination by erythromycin-base in a polyvalent intensive care unit. de Champs CL, Guelon DP, Garnier RM, Poupart MC, Mansoor OY, Dissait FL, Sirot JL. Intensive Care Med. 1993; 19(4): 191-6.)。しかし、それは、いくつかの理由のため一般的に認められなかった:エリスロマイシンは、胃及び回腸に作用する運動促進性薬剤であり、除染されるべきである患者において許容可能ではない加速された移行時間に関与する。
【0086】
また、この使用において、腸の上部においてエリスロマイシンの吸収を抑制するための措置が取られず、このように、エリスロマイシンの起こりうる全身毒性が依然として存在した。最後に、エリスロマイシンを比較的高用量(3g/日まで)で使用した。用量は、重度の病気の患者(例えば集中治療室(ICU)に入院している患者など)において吸収が困難である。
【0087】
エリスロマイシンを上回るアジスロマイシンの利点の内で、アジスロマイシンは、運動促進性効果を有さない又はほとんど有さず、そのため、副作用に悩む必要がないこと、第2に、結腸から除去すべきグラム陰性細菌に対するその活性が、エリスロマイシンのものよりずっと強いことがある。1日用量500mgのアジスロマイシンは、結腸からグラム陰性腸内細菌を除去するために効果的であり、より低用量もアジスロマイシンの高い活性のために効果的である。また、腸の下部を標的化することにより、アジスロマイシンの全身吸収及び全身毒性が回避されうる。
【0088】
作用機構
マクロライドの作用機構は、細菌リボソームの50Sサブユニットに可逆的に結合することによる細菌タンパク質生合成の阻害を含み、それにより、ペプチジルtRNAの転位を阻害する。この作用は主に静菌的であるが、しかし、高濃度では殺菌的でもありうる。マクロライドは白血球内に蓄積する傾向があり、従って、感染の部位に効率的に輸送される。
【0089】
耐性
マクロライドに対する細菌耐性の第一の手段は、23S細菌リボソームRNAの転写後メチル化により生じる。この獲得耐性はプラスミド媒介性又は染色体性(即ち、突然変異による)のいずれかでありうるが、マクロライド、リンコサミド、及びストレプトグラミンに対する交差耐性(MLS耐性表現型)を招く。
【0090】
稀にしか見られない獲得耐性の2つの他の種類は、薬物不活化酵素(エステラーゼ又はキナーゼ)の産生ならびに細胞の外側に薬物を輸送する活性なATP依存性排出タンパク質の産生を含む。
【0091】
副作用
マクロライドは腸肝再循環を示す;即ち、薬物は腸において吸収され、肝臓に送られ、十二指腸中に肝臓からの胆汁とともに排出されるだけである。これは、身体において生成物の蓄積をもたらし、嘔気を起こしうる。しかし、これらの副作用は、結腸、盲腸、又は回腸への局所送達により最小限になりうる。
【0092】
アジスロマイシンが好ましいマクロライドであり、その形態のいずれかで使用することができる。本明細書で使用する「アジスロマイシン」は、アジスロマイシンの全ての非晶質及び結晶質の形態(アジスロマイシンの全ての多形体、同形体、仮晶、クラスレート、塩、溶媒和物、及び水和物を含む)、ならびに無水アジスロマイシンを意味する。特許請求の範囲における治療量の点での又は放出速度でのアジスロマイシンの言及は、活性アジスロマイシン、即ち、分子量749g/モルを有する非塩、非水和アザライド分子に関する。
【0093】
好ましくは、本発明のアジスロマイシンはアジスロマイシン二水和物であり、米国特許第6,268,489号に開示される。
【0094】
本発明の代わりの実施態様において、アジスロマイシンは、アジスロマイシン非二水和物、アジスロマイシン非二水和物の混合物、又はアジスロマイシン二水和物及びアジスロマイシン非二水和物の混合物を含む。適したアジスロマイシン非二水和物の例は、限定はされないが、代わりの結晶形態B、D、E、F、G、H、J、M、N、O、P、Q、及びRを含む。
【0095】
アジスロマイシンは、また、ファミリーI及びファミリーII同形体として生じ、それらはアジスロマイシンの水和物及び/又は溶媒和物である。空洞中の溶媒分子は、特定の条件下で溶媒と水の間で交換する傾向を有する。
【0096】
従って、同形体の溶媒/水含量は、特定の範囲まで変動しうる。
【0097】
アジスロマイシンの吸湿性水和物の、アジスロマイシン形態Bは、米国特許第4,474,768号に開示される。
【0098】
アジスロマイシン形態D、E、F、G、H、J、M、N、O、P、Q、及びRが、米国特許第6,977,243号に開示される。
【0099】
形態B、F、G、H、J、M、N、O、及びPはファミリーIアジスロマイシンに属し、単斜晶系のP21空間群を有し、細胞格子サイズはa=16.30.3A、b=16.2+0.3A、c=18.40.3A、及びβ=1092°である。
【0100】
形態Fアジスロマイシンは、単結晶構造の化学式C387220 2HO5COHのアジスロマイシンエタノール溶媒和物であり、アジスロマイシン一水和物ヘミエタノール溶媒和物である。形態Fは、さらに、粉末試料では2〜5重量%水及び1〜4重量%エタノールを含むことを特徴とする。
【0101】
形態Fの単結晶を単斜晶系の空間群P21で結晶化すると、2つのアジスロマイシン分子、2つの水分子、及び1つのエタノール分子を含む非対称単位を一水和物/ヘミエタノラートとして有する。それは、全てのファミリーIアジスロマイシン結晶形態に対して同形である。理論上の水及びエタノール含量はそれぞれ2.3及び2.9重量%である。
【0102】
形態Gアジスロマイシンは、単結晶構造に化学式C3872125HOを有する。アジスロマイシンセスキ水和物である。形態Gは、さらに、粉末試料では2.5〜6重量%水及び<1重量%有機溶媒を含むことを特徴とする。形態Gの単結晶構造は、非対称単位当たり2つのアジスロマイシン分子及び3つの水分子から成り、理論上の水含量3.5重量%を含有するセスキ水和物に対応する。形態Gの粉末試料の水含量は、約2.5〜約6重量%の範囲である。
【0103】
全残留有機溶媒は、結晶化のために使用される対応する溶媒の1重量%未満である。
【0104】
形態Hアジスロマイシンは、化学式C387212O 0.5 Cを有し、アジスロマイシン一水和物ヘミ−1,2プロパンジオール溶媒和物として特徴付けることができる。形態Hは、アジスロマイシン遊離塩基の一水和物/ヘミプロピレングリコール溶媒和物である。
【0105】
形態Jアジスロマイシンは、単結晶構造に化学式C387212O 0.5 COHを有し、アジスロマイシン一水和物ヘミ−nープロパノール溶媒和物である。形態Jは、さらに、粉末試料では2〜5重量%水及び1〜5重量%n−プロパノールを含むことを特徴とする。算出された溶媒含量は、約3.8重量% n−プロパノール及び約2.3重量%水である。
【0106】
形態Mアジスロマイシンは、化学式C387212O 0.5 COHを有し、アジスロマイシン一水和物ヘミ−イソプロパノール溶媒和物である。形態Mは、さらに、粉末試料では2〜5重量%水及び1〜4重量%2−プロパノールを含むことを特徴とする。形態Mの単結晶構造は、一水和物/ヘミイソプロプラノレート(hemi−isopropranolate)でありうる。
【0107】
形態Nアジスロマイシンは、ファミリーIの同形体の混合物である。混合物は、可変するパーセンテージの同形体F、G、H、J、M、及びその他ならびに可変量の水及び有機溶媒(例えばエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、プロピレングリコール、アセトン、アセトニトリル、ブタノール、ペンタノールなど)を含みうる。水の重量パーセントは1〜5.3重量%の範囲でありうる。有機溶媒の全重量パーセントは2〜5重量%でありうる(各溶媒が0.5〜4重量%を構成する)。
【0108】
形態Oアジスロマイシンは、化学式C387212 0.5 HO, 0.5 COHを有し、単結晶構造データによりアジスロマイシン遊離塩基の半水和物ヘミ−n−ブタノール溶媒和物である。
【0109】
形態Pアジスロマイシンは、化学式C387212O 0.5 C12Oを有し、アジスロマイシン一水和物ヘミ−n−ペンタノール溶媒和物である。
【0110】
形態Qは、ファミリーとは異なり、化学式C387212O 0.5 COを有し、アジスロマイシン一水和物ヘミ−テトラヒドロフラン(THF)溶媒和物である。それは約4%水及び約4.5重量%THFを含む。
【0111】
形態D、E、及びRは、アジスロマイシン中のファミリーに属し、斜方晶系のP21 2121空間群を含み、細胞格子サイズはa=8.90.4A、b=12.30.5A、及びc=45.80.5Aである。
【0112】
形態Dアジスロマイシンは、その単結晶構造において化学式C387212O C12を有し、アジスロマイシン一水和物モノシクロヘキサン溶媒和物である。形態Dは、さらに、粉末試料では2〜6重量%水及び3〜12重量%シクロヘキサンを含むことを特徴とする。単結晶データから、形態Dの算出された水及びシクロヘキサン含量はそれぞれ2.1及び9.9重量%である。
【0113】
形態Eアジスロマイシンは、化学式C387212O COを有し、単結晶解析によりアジスロマイシン一水和物モノTHF溶媒和物である。
【0114】
形態Rアジスロマイシンは、化学式C387212O C12Oを有し、アジスロマイシン一水和物モノメチルtert−ブチルエーテル溶媒和物である。形態Rは、理論上の水含量2.1重量%及び理論上のメチルtert−ブチルエーテル含量10.3重量%を有する。
【0115】
アジスロマイシン非二水和物の他の例は、限定はされないが、アジスロマイシンのエタノール溶媒和物又はアジスロマイシンのイソプロパノール溶媒和物を含む。アジスロマイシンのそのようなエタノール及びイソプロパノール溶媒和物の例が、米国特許第6,365,574号及び第6,245,903号ならびに米国特許第6,977,243号に開示されている。
【0116】
アジスロマイシン非二水和物の追加の例は、限定はされないが、米国特許第6,586,576号、ならびに国際出願公報WO 01/00640、WO 01/49697、WO 02/10181、及びWO 02/42315に開示されるアジスロマイシン一水和物を含む。
【0117】
アジスロマイシン非二水和物のさらなる例は、限定はされないが、米国特許第7,414,114号及び第6,528,492号に開示される無水アジスロマイシンを含む。
【0118】
適したアジスロマイシン塩の例は、限定はされないが、米国特許第4,474,768号に開示されるアジスロマイシン塩を含む。
【0119】
好ましくは、多重粒子の少なくとも70重量%のアジスロマイシンは結晶性である。多重粒子のアジスロマイシン結晶化度の程度は、「実質的に結晶性」(多重粒子の結晶性アジスロマイシンの量が少なくとも約80%であることを意味する)、「ほぼ完全に結晶性」(結晶性アジスロマイシンの量が少なくとも約90%であることを意味する)、又は「本質的に結晶性」(多重粒子の結晶性アジスロマイシンの量が少なくとも約95%であることを意味する)でありうる。
【0120】
多重粒子のアジスロマイシンの結晶化度は、粉末X線回折(PXRD)解析を使用して決定してもよい。例示的な手順において、PXRD解析をBruker AXS D8 Advance回折計で実施してもよい。この解析において、サンプル(約500mg)をルーサイトサンプルカップ中に充填し、サンプル表面を、ガラス顕微鏡スライドを使用して平滑化し、サンプルカップの上端と同じ高さである一様に平滑なサンプル表面を提供する。サンプルをp面に、速度30rpmで回転させ、結晶方位効果を最小限にする。X線源(S/B KCua、A=1.54A)を、電圧45kV及び電流40mAで操作する。各サンプルについてのデータを、約20〜約60分の期間にわたり、連続検出器スキャンモードで、スキャンスピード約12秒/ステップ及びステップサイズ0.02°/ステップで回収する。ディフラクトグラムを10°〜16°の20の範囲にわたり回収する。
【0121】
テストサンプルの結晶化度を、較正基準との比較により以下の通りに決定する。較正基準は、20重量%/80重量%アジスロマイシン/担体及び80重量%/20重量%アジスロマイシン/担体の物理的混合物からなる。各々の物理的混合物を15分間、Turbulaミキサーで一緒に混ぜる。計測ソフトウェアを使用し、ディフラクトグラム曲線下面積を、10°〜16°の26の範囲にわたり、線形ベースラインを使用して積分する。この積分範囲は、可能なだけ多くのアジスロマイシン特異的ピークを含み、担体関連ピークを除外する。また、約10° 29での大きなアジスロマイシン特異的ピークは、その積分された面積における大きなスキャン間の変動のために省略される。パーセント結晶性アジスロマイシン対ディフラクトグラム曲線下面積の線形較正曲線を、較正基準から生成する。
【0122】
テストサンプルの結晶化度を、次に、これらの較正結果及びテストサンプルについての曲線下面積を使用して決定する。結果を、平均パーセントアジスロマイシン結晶化度(結晶質量による)として報告する。
【0123】
アジスロマイシンと類似の特性を有する他のマクロライド抗菌剤も使用することができる。所望の特性は、ヒトにおける長期使用、1日1回投与、低1日用量の投与(成人では500mg又はそれ以下)、親薬物エリスロマイシンと比較して低下した腸内副作用、インビトロでのグラム陰性細菌に対する高い効力、腸管からグラム陰性細菌を除去する証明された効力、腸管における耐性グラム陰性細菌の低い淘汰率(単独で使用された場合でさえ)を含む。
【0124】
3.アミノグリコシド抗菌剤
アミノグリコシドは、糖類及びアミノ基で構成される分子である。いくつかのアミノグリコシドがグラム陰性細菌に対して効果的であり、アミカシン、アルベカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、スペクチノマイシン、及びアプラマイシンを含む。特に好ましいアミノグリコシドは、ストレプトマイシン、トブラマイシン、スペクチノマイシン、及びゲンタマイシンを含む。
【0125】
アミノグリコシドは、細菌の30S リボソームサブユニット(一部は50Sサブユニットに結合することにより働く)に結合し、A部位からP部位へのペプチジルtRNAの転位を阻害し、及び、また、mRNAのミスリーディングを起こし、細菌が、その増殖に重要であるタンパク質を合成できないようにすることにより働く。このように、アミノグリコシドは、それらが16S rRNAに結合してタンパク質合成を阻害することにより、及び細菌細胞膜の完全性を破壊することにより細菌を殺すと考えられている。
【0126】
また、最初の作用部位は細菌外膜であると考えられており、そこでは、陽イオン性抗生物質分子が細胞外膜中に亀裂を作り、細胞内内容物の漏出及び抗生物質の取り込みの増強をもたらす。アミノグリコシドは、主に、好気性のグラム陰性細菌(例えばシュードモナス、アシネトバクター、及びエンテロバクターなど)が関与する感染において有用である。アミノグリコシドは、大半が、嫌気性細菌(グラム陽性細菌を含む)に対して無効である。
【0127】
これらの薬剤の毒性は用量に関連し、従って、すべての個体が、用量が十分に高いという条件で、これらの副作用(毒性)を受けうる。聴器毒性及び腎毒性(腎臓毒性)についてのそれらの潜在力のため、アミノグリコシドを、体重に基づく用量で投与する。前庭損傷、聴力喪失、及び耳鳴りは不可逆的である。そのため、十分に高い用量を達しないように注意しなければならない。セファロスポリンの同時投与が腎毒性のリスクを増加させる可能性があるが、ループ利尿薬を用いた投与は聴器毒性のリスクを増加する。血中薬物レベル及びクレアチニンを、治療の経過の間にモニターする。なぜなら、個体は、用量と血漿中レベルの間での関係において広く変動するからである。血清中クレアチニン測定値を、どの程度良く腎臓が機能しているかを推定するため、及び、これらの薬物により起こされる腎臓損傷についてのマーカーとして使用する。それらは神経筋薬剤の作用と反応し、それを延長しうる。腎機能障害では低下用量が必要とされる。アミノグリコシドの投薬及びモニタリングが、病院の臨床薬剤師により定期的に実施される。
【0128】
アミノグリコシドは、典型的には、腸から吸収されない。そのため、本発明において、それらを経口投与し、結腸中又はその近くに直接的に放出される場合、全身毒性の大半を回避することができる。
【0129】
4.キノロン抗菌剤
キノロンは、合成の広域スペクトル抗生物質のファミリーである。群の親はナリジクス酸である。臨床使用におけるキノロンの大半が、フルオロキノロンのサブセットに属し、それらは、中心環系、典型的には6位に結合されたフッ素原子を有する。
【0130】
キノロンは、広域スペクトルの抗菌活性、ならびに固有の作用機構を有し、細菌DNAジャイレース及びトポイソメラーゼIVの阻害をもたらす。キノロンは、典型的には、キノリン環を含み、フルオロキノロン(また、本発明の範囲内である)は、C6にフッ素原子を含む。
【0131】
機構
キノロン及びフルオロキノロンは、化学療法の殺菌薬物であり、DNA複製を妨害することにより細菌を根絶する。キノロンは、細菌DNAジャイレース又はトポイソメラーゼIV酵素を阻害し、それによりDNA複製及び転写を阻害する。DNAジャイレースは多くのグラム陰性細菌のための標的であり、キノロンをこれらの細菌に対して効果的にする。
【0132】
細菌耐性
キノロンに対する耐性は、処置の経過の間でさえ迅速に生じうる。現在、多数の病原菌(スタフィロコッカス・アウレウス、腸球菌、及びストレプトコッカス・ピオゲネスを含む)が、世界中で耐性を示す。
【0133】
使用することができるキノロンは、限定なしに、以下を含む:シノキサシン(Cinobac)、フルメキン(Flubactin)、ナリジクス酸(NegGam、Wintomylon)、オキソリン酸(Uroxin)、ピロミド酸(Panacid)、ピペミド酸(Dolcol)、ロソキサシン(Eradacil)、シプロフロキサシン(Ciprobay、Cipro、Ciproxin)、エノキサシン(Enroxil、Penetrex)、フレロキサシン(Megalone、Roquinol)、ロメフロキサシン(Maxaquin)、ナジフロキサシン(Acuatim、Nadoxin、Nadixa)、ノルフロキサシン(Lexinor、Noroxin、Quinabic、Janacin)、オフロキサシン(Floxin、Oxaldin、Tarivid)、ペフロキサシン(Peflacine)、ルフロキサシン(Uroflox)、バロフロキサシン(Baloxin)、ガチフロキサシン(Tequin)(Zymar)、グレパフロキサシン(Raxar)、レボフロキサシン(Cravit、Levaquin)、 モキシフロキサシン(Avelox、Vigamox)、パズフロキサシン(Pasil、Pazucross)、スパルフロキサシン(Zagam)、テマフロキサシン(Omniflox)、トスフロキサシン(Ozex、Tosacin)、クリナフロキサシン、ゲミフロキサシン(Factive)、シタフロキサシン(Gracevit)、トロバフロキサシン(Trovan)、プルリフロキサシン(Quisnon)、ガレノキサシン(Geninax)、エシノフロキサシン、マルボフロキサシン、及びデラフロキサシン。
【0134】
5.ペプチド抗菌剤
本明細書で使用するペプチド抗菌剤は、グラム陰性細菌に対する特異的活性を伴うものを含む。主に、ペプチド抗菌剤は、抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤である。これらは、コリスチンならびに環状のペプチド環で及び脂肪テールからなる他の分子を含む。これらの多くが細菌由来であるが、一部の合成の例もある。脂質(脂肪)テールが存在しても、しなくてもよい(分子が有意な抗グラム陰性活性を有する限り)。
【0135】
コリスチンは、例えば、バシラス・ポリミクサ(Bacillus polymixa)の発酵物から単離される。追加の例は、Antibacterial agents edited by Andre Bryskier Published by ASM press, Washington, in 2005, Chap 30に記載されるものを含む。
【0136】
コリスチンが、多くの理由のために好まれうる。しかし、実際の効力は、恐らくは2つの主な理由のため、経口投与に続く腸内「殺菌」について今まで明確に示されなかった。第1に、そのような患者を処置するために、一部の細菌種が有する持続的な侵襲性プロセスのため粘膜においても抗菌活性を必要としうるが、コリスチンが全く吸収されないために任意の組織濃度の抗生物質が蓄積する可能性は低い。第2に、使用された用量は、恐らくは、結腸において適当な腔内濃度を達成するためには低すぎた。
【0137】
やがて、コリスチンの経口使用が用いられなくなった。しかし、本願において、結腸への又はその近くの特異的な送達を用いて、コリスチンの強い抗グラム陰性細菌活性及び経口投与後での全身吸収の欠如が主要な利点である。
【0138】
特定の理論に拘束されることを望まないが、コリスチンの一部が空腸において分解されるため、結腸中の有効濃度が高用量を用いたときだけ達成することができることが考えられる。適切な製剤化を介して腸の上部においてコリスチンを保護することにより、そこでのその可能な局所毒性を抑制すること、また、その部分分解を抑制することの両方ができる。これによって、成人において除染を達成するために現在必要な600mgの1日用量よりも低用量を投与することが可能になりうる。
【0139】
抗グラム陰性ペプチド抗菌剤が周知であり(例えば、Hancocket al. Adv. Microb. Physiol. 37: 135-175; Kleinkauf et al., 1988. Crit. Rev. Biotechnol. 8: 1-32;及びPerlman and Bodansky. 1971. Ann. Rev.Biochem. 40: 449-464を参照のこと)、2つのクラス(非リボソーム合成ペプチド、例えばグラミシジン、ポリミキシン、バシトラシン、グリコペプチドなど及びリボソーム合成(天然)ペプチド)に分類される。商業的に使用される代表的な抗菌剤は、コリスチン(コリスチン又はポリミキシンEとしても公知)、バシトラシン、グラミシジンS、及びポリミキシンBを含む。
【0140】
最良のペプチドは、広範囲のグラム陰性細菌(処置することが最も困難な抗菌剤耐性病原菌を含む)に対する最小発育阻止濃度(MIC)1〜8μg/mlを有する。それらは殺菌性であり、非常に迅速な殺傷動態を伴い(MIC付近でさえ)、天然の耐性細菌はほとんどない。
【0141】
好ましいリポペプチド抗菌薬剤はコリスチンであるが、しかし、その抗菌薬剤は、類似の特性を伴う任意の他のリポペプチド抗菌薬剤であってもよい。そのような特性は、ヒトにおける可能な長期使用、投与の低い1日用量(成人において600mg未満)、低下した腸内副作用、インビトロでのグラム陰性細菌に対する高い効力、腸管からグラム陰性細菌を除去するための証明された効力、腸管における耐性グラム陰性細菌の低い淘汰頻度(単独で使用された場合でさえ)を含む。
【0142】
コリスチン(ポリミキシンE)は、バシラス・ポリミクサの特定株(colistinus)により産生されるポリミキシン抗生物質である。コリスチンは、環状ポリペプチドコリスチンA及びBの混合物である。コリスチンは大半のグラム陰性バシラスに対して効果的であり、ポリペプチド抗生物質として使用される。
【0143】
コリスチンには、商業的に利用可能な2つの形態がある:硫酸コリスチン及びコリスチンメタナトリウム(コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、コリスチンスルホメタン酸ナトリウム)。
【0144】
コリスチンは全身毒性を有する。それは、部分的には、ノナペプチドに付加した脂質テールに起因するが、しかし、ポリミキシンの脱アシル化誘導体(ポリミキシンBノナペプチド)でさえヒトでの全身使用のためには毒性が強すぎる傾向がある(Wolinsky E, Hines JD.(1962)."Neurotoxic and nephrotoxic effects of colistin in patients with renal disease". N Engl J Med266: 759-68 ; Koch-Weser J, Sidel VW, Federman EB, et al.(1970)."Adverse effects of sodium colistimethate. Manifestations and specific reaction rates during 317 courses of therapy". Ann Intern Med72: 857-68; Li J, Nation RL, Milne RW, et al.(2005)."Evaluation of colistin as an agent against multi-resistant Gram-negative bacteria". Int J Antimicrob Agents25: 11-25.)。
【0145】
実際に、非アシル化環状デカペプチドグラミシジンSも非常に毒性が強く、多くの細菌についてのMICよりもわずか3倍高い濃度で赤血球溶解を起こす。この理由のため、これらのペプチドは、典型的には、局所適用に制限されてきた。本発明では、結腸に局所的に送達することにより、全身毒性を招くことなく、その強い抗菌活性の利点を利用することを提案する。
【0146】
ポリミキシン複合体は、環状リポペプチドのサブクラスのメンバーであるリポペプチドの一員であり、グラム陰性細菌に対して活性であるリポペプチドとして記載されている(例えばAntibacterial Agents, Chapter 30, Andre Bryskier, ed., ASM press, Washington (2005)を参照のこと)。
【0147】
抗グラム陰性リポペプチド(本明細書においてポリミキシン複合体のメンバーとしても言及される)は、8つの異なるメンバーを含む:サークリンA及びB、ポリミキシンA(M)、ポリミキシンB1及びB2、ポリミキシン(orP)、ポリミキシンD1/D2、ポリミキシンE1(コリスチンA)、ポリミキシンS1及びポリミキシンT1。
【0148】
これらの内、ポリミキシンE1(コリスチンA)が好ましい。
【0149】
抗菌剤の標的化送達
腸管の下部に、特に遠位回腸、盲腸、又は結腸にこれらの抗菌薬物の送達を提供することにより、本明細書に記載する組成物は、有効濃度でグラム陰性細菌を処置するための抗菌薬物を提供することができ、胃腸管のより上部における有害効果(特に胃内副作用)を制限し、それらの起こりうる全身毒性を制限する。
【0150】
さらに、抗菌剤を遠位回腸/盲腸/結腸に直接的に送達することにより、血流中へのそれらの吸収、ひいてはそれらの全身的な効果を抑制又は有意に制限することができる。これは、胃腸管の内腔中の微生物だけを標的化することを望む場合に特に有利である。なぜなら、それによって、(i)この部位での抗菌剤濃度が最大になる、及び(ii)抗菌剤の任意の他の効果(例えば、他の部位での、特に、例えば気道などの部位での耐性細菌の生成など)を回避又は制限する(感染を処置するためにそれらの抗菌剤を使用することを望みうる場合)ことが可能になるからである。
【0151】
薬物送達システムは、障害(そのために化合物を投与する)の適当な程度の処置又は予防を提供するために適した有効量で投与される。
【0152】
これらの化合物の効率的な量は、典型的には、任意の感知可能な副作用を誘発するために要求される閾値濃度未満である。
【0153】
化合物を治療域で投与することができ、それにおいて障害を処置し、特定の副作用を回避する。理想的には、本明細書に記載する化合物の有効量は、結腸において所望の効果を提供するために十分であるが、しかし、身体の他の場所で非所望の効果を提供するために不十分である(即ち、十分に高いレベルではない)。
【0154】
最も好ましくは、有効量は非常に低濃度であり、そこでは最大効果が生じることが観察され、最小の副作用を伴い、これは、活性薬剤の標的化された結腸送達により最適化される。先の有効量は、典型的には、単回用量として投与された量、あるいは24時間の期間にわたり投与された1又は複数の用量を示す。
【0155】
本明細書に記載する活性薬剤の毒性及び治療効力を、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順により、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%に対して治療的に効果的な用量)を決定することにより決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指標であり、LD50とED50の間の比率として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを、ヒトにおける使用のために毒性のない投与量範囲を規定する際に使用することができる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどない又はないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、この範囲内で、用いられる投与形態及び利用される投与経路に依存して変動しうる。正確な製剤、投与経路、及び投与量は、個々の医師により、患者の状態の観点から選ぶことができる(例、Fingl et al., 1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p. 1を参照のこと)。
【0156】
投与量及び間隔は個々に調整してもよく、治療効果を維持するために十分である結腸中での活性化合物のレベルを提供することができる。好ましくは、治療効果のあるレベルは、複数用量を毎日投与することにより達成されうる。当業者は、過度の実験なしに治療効果のある局所投与量を最適化することができるであろう。
【0157】
本発明において使用される抗菌剤についての代表的な投与量(ヒトでの1日用量)は、約0.2〜200mg/Kg/日、特に約4〜50mg/Kg/日である。例えば、コリスチンを、約2〜12mg/Kg/日、特に約10mg/Kg/日の1日用量で投与することができる。マクロライド抗菌剤についての代表的な投与量(ヒトでの1日用量)は、約2〜10mg/Kg/日、特に約7mg/Kg/日である。アミノグリコシドについての代表的な投与量(ヒトでの1日用量)は、約2mg/Kg〜50mg/Kg/日である。
【0158】
コリスチンについての代表的な投与量(ヒトでの1日用量)は、約600mgであり、マクロライド抗菌剤については約500mgである。
【0159】
結腸送達システムの種類
1.pH応答性送達
胃腸管においてpH勾配があり、値は、胃における1.2から近位小腸における6.6、遠位小腸における約7.5のピークまでの範囲である。胃と小腸の間でのこのpH差が歴史的に活用され、薬物が、小腸へ、pH感受性腸溶コーティングの方法により送達されてきた。これらのポリマーコーティングは、胃の酸性条件に対して不応性であるが、しかし、小腸において見られる特定の閾値pHより上でイオン化及び溶解する。このように、この概念を適用して、薬物を、回腸末端又は結腸に、溶解のために比較的高い閾値pHを有する腸溶ポリマーの使用により送達することも可能である。この目的のために最も一般的に使用されるポリマーは、メタクリル酸、メチルメタクリレート、及びメチルアクリレートのコポリマーであり、それらは、7より大きいpHで溶解するが(Eudragit(商標)、Rohm Pharma, Darmstadt, Germany)、しかし、異なる製造者の使用することができる他のポリマーがある。
【0160】
潰瘍性大腸炎の処置のために、これらの技術を使用することができる、市販の医薬品、例えば5アミノサリチル酸製剤(Asacol(商標)、Ipacol(商標)、Claversal(商標))などがある。
【0161】
2.時間応答性送達
時間依存的な投与形態を製剤化し、所定の遅延時間後にそれらの薬物負荷を放出する。それ自体が部位特異的な送達システムではないが、結腸標的化を、遅延時間を製剤化に組み入れることにより達成することができることが示唆されており、口腔から結腸への移行時間と等価である。公称遅延時間5時間が、通常、十分であると考えられている。なぜなら、小腸内移行が、3〜4時間で比較的一定であると考えられてきたからである。多くのシステムがこの原理に基づいて開発されており、最も初期のものの1つがPulsincap(登録商標)デバイスである。このデバイスは、ヒドロゲルプラグを用いてオープンエンドで密封された非崩壊ハーフカプセルシェルからなる。プラグは胃腸液と接触して水和し、それがカプセル本体から排出される程度まで膨張し、このように薬物を放出する。通常、ヒドロゲルプラグが水和し、カプセルシェルから排出されるために要する時間によって、薬物放出前での遅延時間が定められ、ひいては、ヒドロゲルプラグの組成及びサイズを変えることにより、遅延時間の変動後に薬物放出を達成することが可能である。
【0162】
3.圧力応答性送達
圧力制御結腸送達カプセル(PC DC)が最近記載されている(Hu et al. 1187-93)。この新規送達システムでは、結腸の管腔内容物の圧力の増加(その部位における水の再吸収に起因する)が使用される。PCDCは、坐剤の基剤中に分散され、疎水性ポリマーエチルセルロースでコーティングされた薬物で構成される。一旦、飲み込まれると、身体の温度によって、坐剤の基剤の溶解、及び容積の増加が起こり、システムは液体で満たされたエチルセルロースバルーンのようになる。バルーンは、腸壁の筋収縮(蠕動)に起因する小腸の腔内圧力に耐えることができるが、しかし、結腸のより強い収縮及びより濃い粘性の内容物の圧力を受けた場合に破裂しうる。
【0163】
4.細菌応答性送達
これらのシステムは、結腸部位に存在する細菌により産生される酵素により特異的に分解されるが、しかし、宿主により産生される胃腸酵素により分解されない基質を使用する。これらのポリマーの多くが、薬物製剤化における賦形剤として既に使用されており、又はヒトの食事の構成物であり、従って、一般的に安全と見なされる。結腸において特異的に分解されるが、これらのポリマーの多くが親水性であり、上部胃腸管条件への曝露下で膨張し、それによって早期の薬物放出がもたらされうる。この問題を克服するために、天然多糖類を、化学的に修飾する又は疎水性の水不溶性ポリマーと混合する。これは、上部胃腸管において膨張を制限する効果を有するが、しかし、依然として、細菌分解に起因して、結腸におけいて、マトリクス又はコーティングが部分的に可溶化され、薬物放出がもたらされる。今までに研究された多糖類の数は多く、アミロース、キトサン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、グアーガム、イヌリン、及びペクチンを含む。
【0164】
結腸、回腸、及び/又は盲腸への送達のための組成物
本明細書に記載する組成物は、リポペプチド抗菌薬剤及びマクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌薬剤を、経口投与を介して送達することを意図するが、しかし、結腸、盲腸、又は遠位回腸への特異的送達が意図される。
【0165】
成功裏の結腸送達を達成するために、薬物を、上部胃腸管(GIT)での吸収及び/又は環境から保護し、次に、遠位回腸、盲腸、及び近位結腸(薬物の結腸標的化送達のための最適な部位である)中へ放出させる必要がある。さらに、両方の抗菌剤のための薬物放出を調節し(長期送達)、結腸全体に沿って薬物を送達し、最良の除染効力を達成することができる。
【0166】
後回腸及び結腸に送達を提供しながら、本発明の組成物は以下を提供する:(i)胃腸管(GIT)の上部における分解からの抗菌剤の保護、(ii)GITの上部におけるその全身吸収の抑制(故に、望まない組織(例えば上気道)における抗菌剤の全身拡散を最小限にする)、及び(iii)遠位回腸、盲腸、及び近位結腸(除染目的のための抗菌剤の送達のための最適な部位と考えられる)中への放出。
【0167】
一実施態様において、抗菌剤の放出を調節し、結腸全体に沿って長期抗菌剤放出を提供し、最良の除染効力を達成することができる。別の実施態様において、抗菌剤の放出は、後回腸又は結腸に達するとすぐに起こる。
【0168】
本明細書に記載する組成物において、
− マクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌剤及び
− 抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤(又はグラム陰性細菌に対して効果的な他のペプチド抗菌剤)を、重量比1/1で又は類似の効力を伴う任意の他の比率で組み合わせることができる。例えば、マクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌剤とリポペプチド/ペプチド抗菌剤の重量比は、約1/99〜約99/1の間の範囲でありうる。
【0169】
本発明の化合物(又は抗菌剤)を含む医薬的組成物の投与量は、処置される被験者の年齢及び体重、投与される特定の化合物などに依存して変動しうる。
【0170】
特定の被験者のための投与量範囲及び最適投与量の決定は、当業者の技能の範囲内である。
【0171】
一般的に、これらの化合物は、最も望ましくは、約0.2mg/kg体重/日(mg/Kg/日)〜約200mg/Kg/日の範囲の用量で、単回又は分割用量(即ち、1〜4用量/日)で投与されるが、変動は、必ず、処置される被験者の種、体重、及び状態ならびに選ばれた特定の投与経路に依存して生じうる。しかし、約4mg/Kg/日〜約50mg/Kg/日の範囲にある投与量レベルが、最も望ましく用いられる。
【0172】
変動は、しかしながら、処置される哺乳動物、魚、又は鳥の種及び前記の薬剤に対するその個体の応答、ならびに選ばれた医薬的製剤の種類およびそのような投与を行う期間及び間隔に依存して生じる。
【0173】
一部の例において、前記の範囲の下限未満の投与レベルがより適当でありうるが、他の場合において、さらにより大きな用量を、任意の有害な副作用を起こすことなく用いてもよい(そのようなより大きな用量を、最初に、1日にわたる投与のためにいくつかの小用量に分割するという条件で)。
【0174】
活性化合物を、単独で又は医薬的に許容可能な担体もしくは希釈剤との組み合わせで、以前に示した経路により投与してもよく、そのような投与は、単回又は複数回用量で行ってもよい。特に、活性化合物を、種々の医薬的に許容可能な不活性担体と組み合わせてもよい。そのような担体は、固形の希釈剤又は充填剤、無菌水性媒質及び種々の非毒性溶媒などを含む。さらに、経口の医薬的組成物を、適切に甘くする及び/又は香り付けることができる。一般的に、活性化合物は、そのような投与形態で、約5.0重量%〜約70重量%の範囲の濃度レベルで存在する。
【0175】
実施態様において、組成物を、活性薬剤が不活性な非毒性層(例えばポリマー層)中にカプセル化されるような様式で調製し、それによって、それらが、回腸、盲腸、及び/又は結腸の下部において十分に活性され、分散され、そこでそれらが機能し、コロニー形成する耐性細菌が除去される。それらは、また、活性薬剤と、胃、十二指腸、空腸、及び回腸の部分における胃腸管の粘膜との接触を抑制し、このように、これらのレベルで直接的な毒性及び副作用を抑制することができる。
【0176】
この実施態様において、腸粘膜による有意な吸収及び身体の任意の他の部分における全身拡散を抑制し、薬物の非具現化形態で観察される二次的効果を最小限にする又は除去する。
【0177】
これらの薬物送達組成物の種々の局面が、以下により詳細に記載される。経口投与される薬物を結腸に標的化するための種々の戦略の内、例えば、pH感受性ポリマーを用いた固形投与形態のコーティング、持続放出型ポリマーシステム、結腸細菌により特異的に分解されるポリマー内でのカプセル化、及びより少ない程度で生体接着システム、浸透圧制御された薬物送達システム、又は薬物と担体の共有結合を引用することができる。pH感受性送達システムの概念は、主に、pH条件が胃腸管に沿って連続的に変動し、後回腸において最高に達するとの事実に基づく。
【0178】
時間依存的な薬物送達システムは、溶解するために一定の時間を必要とし、薬物を経口投与後の3〜4時間後に放出するポリマーに基づく。
【0179】
結腸の共生菌叢の微生物により産生される酵素により分解することができるポリマー(例えばアゾ架橋ポリマーなど)を使用し、薬物を結腸に標的化することができる。薬物は、アゾポリマーコーティングされた投与形態から、結腸ミクロフローラに存在するアゾレダクターゼ酵素によるアゾ結合の還元及び続く切断後に放出することができる。結腸におけるアゾレダクターゼ酵素の存在は、アゾ架橋ポリマーならびにアゾ結合プロドラッグからの薬物放出に重要である。
【0180】
特定の植物多糖類(例えばペクチン、アミロース、イヌリン、及びグアーガムなど)が、胃腸酵素の存在下で影響を受けないままであり、結腸に標的化された薬物送達システムを製剤化するために使用することができる。天然多糖類、特にペクチンを使用して、薬物を結腸に特異的に送達することができる。これらの多糖類は、胃及び小腸の生理学的環境においてインタクトなままである。しかし、一旦、投与形態が結腸中に入ると、結腸の共生菌叢の微生物により産生されるポリサッカリダーゼ(例えばペクチナーゼなど)が作用し、それは多糖類を分解し、薬物を結腸中に放出する。
【0181】
多糖類を、それらが胃及び小腸に入る前に保護することが重要になりうる。なぜなら、特定の多糖類の親水性特性によってそれらの膨張が起こるからである。多糖類を保護するための1つの方法は、多糖類を、例えば、イオン架橋により、二価イオン(例えば亜鉛イオン又はカルシウムイオン)と架橋すること、又は、それらを陽イオンポリマーを用いてコーティングすることのいずれかである。活性剤をカプセル化するために、特定の多糖類ポリマー(例えばペクチンなど)を、二価陽イオン(例えばカルシウム及び亜鉛など)で架橋しなければならない。
【0182】
別の方法は、例えば、pHが適切なポリマー(例えばこの目的のために公知である特定のEudragitポリマーなど)を使用した保護コート(腸溶コーティングとも言及される)を使用することである。
【0183】
腸溶ポリマーを用いてコーティングされた製剤は、pHがアルカリ範囲に向かう場合、活性薬剤を放出する。マルチコーティング製剤は胃を通過し、約3〜5時間の遅延時間(小腸内移行時間と等価である)後に活性薬剤を放出する。
【0184】
レドックス感受性ポリマー及び生体接着システムも使用され、薬物が結腸中に送達されてきた。
【0185】
結腸ミクロフローラのグリコシダーゼ活性を使用して、薬物をグリコシドプロドラッグから遊離することができる。
【0186】
結腸粘膜に接着を選択的に提供する生体接着ポリマーを用いてコーティングした薬物送達媒質によって、結腸において薬物が放出されうる。
【0187】
これらの薬物送達媒質の種々の局面が、以下により詳細に記載される。
【0188】
一実施態様において、マクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌薬及びペプチド抗菌薬を、同じ標的化薬物送達システムに組み合わせることができる。別の実施態様において、マクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌剤を第1の標的化薬物送達システムにおいて製剤化し、ペプチド抗菌剤を第1とは異なる第2の標的化薬物送達システムにおいて製剤化する。さらなる実施態様において、ペプチド抗菌剤を標的化薬物送達システムにおいて製剤化し、マクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗菌剤を標的化薬物送達システムにおいて製剤化しない。
【0189】
ペクチン
一実施態様において、薬物送達システムを設計し、経口投与されるが、しかし、活性薬剤を結腸に特異的に(胃腸管において実質的に他のどの場所でもない)送達する。ペクチンペレットは、活性薬剤を特異的に結腸に送達することができる製剤の1つの例である。
【0190】
ペクチンペレットをペクチンから形成し、カルシウム、亜鉛、又は他の金属イオンにより架橋し、陽イオンポリマーを用いてコーティングする及び/又はEudragit(登録商標)ポリマーを用いてさらにコーティングすることができる。ペクチンペレットは、また、1つ又は複数の活性薬剤をカプセル化しうる。
【0191】
胃媒質及び腸媒質中でのペクチンの安定性及び保護を、胃内耐性ポリマー(例えばEudragit(登録商標)ポリマーなど)を用いたコーティング又は他のポリマーコーティングにより確実にすることができる。対照的に、ペクチンの非コーティングペレットは、典型的には、そのような環境において安定ではなく、分解及び/又は不活性化に対してその内容物を適当に保護しないであろう。ポリマーコーティングによって、ペクチンペレットが、その内容物が結腸にインタクトで達することができるだけ十分に長く耐性であることが確実となる。
【0192】
ペクチンは、上位植物の細胞壁から単離された多糖類であり、農産食品産業(ジャム、アイスクリームなどの凝固剤又は増粘剤として)及び薬剤学において広く使用される。それは多分子系及び多分散系である。その薬物送達システムは、供給源、抽出条件、及び環境因子に依存して変動する。
【0193】
ペクチンは、主に、β−1,4−(D)−ガラクツロン酸の直鎖で構成され、時折、ラムノースの単位が散在する。ガラクツロン酸のカルボキシル基を部分的にエステル化して、メチル化ペクチンを得ることができる。2種類のペクチンを、それらのメチル化の程度に従って区別する(DM:メトキシ基の数/100単位のガラクツロン酸):
− 高メチル化ペクチン(HM:高メトキシ)(そこではメチル化の程度が50〜80%の間で変動する)。それはわずかに水溶性であり、酸性媒質(pH<3.6)中で又は糖の存在下でゲルを形成する;
− 低メチル化ペクチン(LM:低メトキシ)(メチル化の程度は25〜50%で変動する)。HMペクチンよりも水溶性であるため、それは、二価陽イオン(例えばCa2+又はZn2+イオンなど)の存在下でゲルを与える。実際に、Ca2+イオンは、ガラクツロン酸部分の遊離のカルボキシル化基の間に「架橋」を形成する。形成されるネットワークが、<<egg−box model>>の名前の下でGrant et al.により記載されている(Grant G.T. et al.(1973) Biological interactions between polysaccharides and divalent cations: the egg-box model, FEBS Letters, 32, 195)。
【0194】
また、アミド化ペクチンがある。アンモニアによるペクチンの処理によって、一部のメチルカルボキシレート基(−COOCH)がカルボキサミド基(−CONH)に変換される。このアミド化は、ペクチンに新規特性、特にpHにおける変動に対するより良い耐性を与える。アミド化ペクチンはpHにおける変動に対してより耐性となる傾向があり、また、結腸送達のためのマトリクス(matricial)錠剤の製造のために試験されてきた(Wakerly Z. et al.(1997) Studies on amidated pectins as potential carriers in colonic drug delivery, Journal of Pharmacy and Pharmacology. 49, 622)。
【0195】
ペクチンは、より高等な植物及び種々の微生物(真菌、細菌など)、とりわけヒト結腸菌叢からの細菌に由来する酵素により分解される。ミクロフローラにより産生される酵素は、ポリサッカリダーゼ、グリコシダーゼ、及びエステラーゼの混合物を包含する。
【0196】
金属陽イオン
種々の塩からの二価陽イオンを使用して、ペクチンを架橋することができる。例は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、及び酢酸亜鉛を含む。他の二、三、又は多価イオンを使用することができる(例えばカルシウム塩など)。
【0197】
Eudragit(登録商標)ポリマー
薬物負荷したコア(例えば錠剤、カプセル、顆粒、ペレット、又は結晶など)のコーティングは、多くの利点(例えばより高い物理化学的安定性、より良いコンプライアンス、及び活性薬剤の増加した治療効力など)を提供する。実際に、医薬の有効性は、それが含む活性剤だけではなく、製剤化及び加工にも依存する。
【0198】
ポリ(メタ)アクリレートは、コーティング材料として特に適していることが証明されている。これらのポリマーは薬理学的に不活性であり、即ち、不変で排泄される。
【0199】
EUDRAGIT(登録商標)は、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルに由来するコポリマーについての商標名であり、その特性は官能基により決定される。個々のEUDRAGIT(登録商標)グレードは、中性基、アルカリ性基、又は酸性基のそれらの割合において、ひいては物理化学的特性の点で異なる。様々なEUDRAGIT(登録商標)ポリマーの巧みな使用及び組み合わせは、種々の医薬的及び技術的適用において制御された薬物放出のための理想的な解決を提供する。EUDRAGIT(登録商標)は、持続放出性錠剤及びペレットコーティングのための機能的フィルムを提供する。ポリマーは、国際薬局方(例えばPh.Eur.、USP/NF、DMF、及びJPEなど)において記載される。
【0200】
EUDRAGIT(登録商標)ポリマーは、制御された薬物放出についての以下の可能性を提供することができる:
・胃腸管の標的化(胃内耐性、結腸中での放出)
・保護コーティング(味覚及び匂いのマスキング、湿気に対する保護)
・遅延薬物放出
【0201】
EUDRAGIT(登録商標)ポリマーは、広い範囲の異なる濃度及び物理的形態(水溶液、水分散液、有機溶液、固形物質)で利用可能である。
【0202】
EUDRAGIT(登録商標)ポリマーの医薬的特性を、それらの官能基の化学的特性により決定する。以下の差により区別される:
・ポリ(メタ)アクリレート、消化液中で可溶性(塩形成による)
【0203】
酸性基又はアルカリ性基を有するEUDRAGIT(登録商標)L、S、FS、及びEポリマーによって、活性薬剤のpH依存的放出が可能になる。
【0204】
適用:単純な味覚マスキングから胃液だけに対する耐性付与、腸の全ての部分における制御された薬物放出まで。
・ポリ(メタ)アクリレート、消化液中で不溶性
【0205】
アルカリ性基を有するEUDRAGIT(登録商標)RL及びRSポリマーならびに中性基を有するEUDRAGIT(登録商標)NEポリマーによって、pH非依存的な膨張による活性剤の制御された持続放出が可能になる。
【0206】
腸溶EUDRAGIT(登録商標)コーティングは、胃において薬物放出に対する保護を提供し、腸において制御された放出を可能にする。胃腸管における標的化された薬物放出が、特定の適用又は治療戦略のために、例えば、薬剤が上部消化管においてやや可溶性である場合、又は薬剤が胃腸液により分解されうる場合に推奨される。第2に、この投与形態は非常に患者に優しい。なぜなら、それは胃にストレスを与えず、治療用薬剤の用量を、長期送達のおかげで、大幅に低下させることができるからである。放出についての主要な基準は、コーティングのpH依存的な溶解であり、それは、胃(pH1〜5)よりはむしろ腸(pH5〜7超)の特定の部分において起こる。これらの適用のために、カルボキシル基を含む陰イオン性EUDRAGIT(登録商標)グレードを互いに混合することができる。これによって、溶解pHを精密に調整し、ひいては、腸における薬物放出部位を定めることが可能になる。EUDRAGIT(登録商標)L及びSグレードが、腸溶コーティングのために適する。EUDRAGIT(登録商標)FS 30 Dを、結腸における制御された放出のために特異的に使用することができる。腸溶EUDRAGIT(登録商標)コーティングの適用の利点は、以下:
・pH依存的な薬物放出
・胃液に対して感受性である活性剤の保護
・刺激性の活性剤からの胃粘膜の保護
・薬物の有効性の増加
・良い保存安定性
・結腸/GI標的化における制御された放出
を含む。
【0207】
Eudragit(登録商標)ポリマーと言及される上の組成物が、当業者に公知であり、特に、US 2008/0206350(USSN 12/034,943)において見出されうる。
【0208】
他の結腸送達
ペクチンペレットに加えて、結腸への送達を提供する他の薬物送達システムが、公知である。例えば、上で言及する通り、特定のEudragit(登録商標)ポリマーが、結腸中のpHで溶解することが公知であり、結腸送達のための薬物送達システムを製剤化するために使用される。また、薬剤を結腸に送達するために使用される粘膜接着性ポリマーが、公知である。粘膜接着性ポリマーを微粒子又はナノ粒子上にコーティングすることができ、投与され、粒子が結腸に達した場合、それらは粘膜に付着する。接着時に、組成物は経時的に分解し、活性薬剤を放出することができる。代表的な生体接着ポリマー、及び薬物送達システムが、Edith Mathiowitzへの米国特許第6,365,187号に記載されている。
【0209】
送達のタイミングを制御するための別の方法は、ポリマーコーティング(シェラックなど)を使用することである。例えば、Sinha and Kumria, "Coating polymers for colon specific drug delivery: A comparative in vitro evaluation," Acta Pharm,. 53 (2003) 41-47を参照のこと。Sinha及びKumriaは、コーティング濃度3%で、シェラックが、結腸特異的な薬物送達のためのポリマーコーティングを提供したことを教えている。シェラックは広範に入手可能な天然ポリマーであり、試験では、それが部位特異的な薬物送達を提供することができることが示された。さらに、シェラックコートの厚さを変えることによって、回腸末端、遠位又は近位結腸への薬物送達を促進することができる。
【0210】
他の胃腸送達
一部の実施態様において、送達システムは、活性薬剤を結腸以外の胃腸管の部分に送達し、胃を通過する(そこで活性薬剤を代謝することができる)ことが意図される。例えば、薬剤を、遠位空腸、近位回腸、又は直接的に回腸に送達することができる。そのような製剤によって、小腸の上部、即ち、遠位空腸の上部における薬剤の放出が最小限になる。
【0211】
これらの実施態様において、ペクチンペレット(薬剤を結腸に特異的に投与する)は、理想的には使用されないであろう。胃腸管における他の位置への送達のための他の製剤が、当業者に公知であり、本明細書に記載される本発明の一部であることが意図される。例えば、Krishnamachari等(Int. J. Pharm, 338(1-2): 238-237 (2007))は、非酵素分解ポリ(dl−ラクチドコグリコリド)(PLGA)コアを有する微粒子を開示し、それらは薬剤を部位特異的な様式で遠位回腸及び結腸の両方に送達する。
【0212】
特定の実施態様において、本発明は、以下の混合物を含む組成物に関する:
− グラム陰性細菌に対して効果的であるペプチド抗菌剤、好ましくは抗グラム陰性リポペプチド(例えばポリミキシンなど)、及び最も好ましくはコリスチン、ならびに
− アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤、
前記の混合物が、固形投与形態の形態、例えば錠剤、顆粒、又はペレット(例えば、押出し球形化プロセス又は錠剤化プロセスにより入手可能である小型混合物)などであり、前記の組成物が、後回腸、盲腸、又は結腸への送達のためにさらにコーティングされている。
【0213】
本発明は、さらに、少なくとも2つの異なる組成物を含むキットに関し、それにおいて
− 第1の組成物が、グラム陰性細菌に対して効果的であるペプチド抗菌剤、好ましくは抗グラム陰性リポペプチド(例えばポリミキシンなど)、及び最も好ましくはコリスチンを含み、前記の第1の組成物が、固形投与形態の形態、例えば錠剤、顆粒、又はペレットなどであり、前記の第1の組成物が、後回腸、盲腸、又は結腸へのそれに含まれる抗菌剤の送達のためにさらにコーティングされており、ならびに
− 第2の組成物がアミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤を含み、前記の第2の組成物が、固形投与形態の形態、例えば錠剤、顆粒、又はペレットなどであり、前記の第2の組成物が、後回腸、盲腸、又は結腸へのそれに含まれる抗菌剤の送達のためにさらにコーティングされている。
【0214】
一部の実施態様において、本発明の薬物送達システムは、コア及びコアの周りに1つ又は複数のコーティングを含み、コーティングは、後回腸、盲腸、又は結腸における薬物送達システムの内容物の遅延送達のために提供される。
【0215】
コアは、微結晶性セルロース又は糖で作製された不活性粒子から作製することができ、典型的には、市販の微結晶性セルロースペレット(例えば、糖ベースのペレットのためのCellets(商標)又はCelpheres(商標)又はEthispheres(商標)及びSuglets(商標))である。コア単位のサイズは、典型的には、60〜2000ミクロンの範囲内の直径を有し、好ましくはコア単位の直径は700〜1000ミクロンの範囲内である。一般的に、コア単位は、粒子組成の全重量の50〜90重量%を構成する。一部の実施態様において、コア単位は70〜90重量%であり、他の実施態様において、それは、好ましくは、粒子組成の全重量の60〜70重量%である。単位コアを使用する1つの利点は、そのコーティングが比較的簡単であり、コア単位の浸食又は溶解がコーティングの間にほとんど起こらないことである。これに起因して、コーティング速度が増加しうる(例、糖コア又は「ノンパレイユ(non−pareils)」と比較して)。それによって、粒子の品質に悪影響を及ぼすことなくプロセス時間及び、それに伴い、産生コストが低下する。また、粒子上のコート層の厚さは、コーティング及び乾燥時間により簡単に制御されうる。プロセスでの算出された収量がよりも信頼できる。なぜなら、コア材料が、異なるコーティングプロセスの間にほとんど失われないからである。
【0216】
コアが不活性粒子で作製される場合、このコアは、抗菌剤又は抗菌剤の混合物を含む組成物を用いてさらにコーティングされる。抗菌剤を含む組成物を、適切な濃度の抗菌剤の水又は有機溶液から調製し、典型的には、結合剤(例えば親水性ポリマーなど)を使用して不活性コア上に噴霧する。便利な親水性ポリマー結合剤はHPMCを含む。商業的に利用可能なグレードの内、低粘性HPMCが一般的に望ましい(例えばMethocel E5(商標)など)。しかし、十分な結合特性を有する任意の親水性ポリマー(例えばPVP、デンプン、親水性セルロース誘導体、親水性アクリレート、又はメタクリレートポリマー)を使用することができる。薬物層は、典型的には、粒子組成の全重量の2〜70重量%を構成する。活性薬剤は、一般的には、粒子の全重量の10〜70重量%を構成する。
【0217】
この実施態様において、薬物送達システムは、活性薬剤(抗菌剤又は抗菌剤の混合物)を含む層を用いてコーティングされたコアを含む。外層を活性薬剤層の周りに提供し、前記の外層は、後回腸、盲腸、又は結腸において活性薬剤(抗菌剤)の遅延放出を提供する。上に記載する遅延送達システムのいずれかを使用することができる。例えば、外層は、pH依存的、時間応答性、圧力応答性又は細菌応答性送達を提供することができる。
【0218】
本発明の特定の実施態様において、上に記載する不活性コアを、抗菌薬剤(例えば、上で定義するリポペプチド(又はペプチド)抗菌剤単独、アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤単独、又は後者の3つの少なくとも1つとリポペプチド(ペプチド)抗菌剤、特にコリスチンの混合物のいずれか)の層を用いてコーティングする。抗菌薬剤の層を、さらに、pH依存的な送達システム(例えば、Eudragitポリマー層、より具体的にはEudragit FS30D層)を用いてコーティングする。
【0219】
中間層を、コアと抗菌層の間、及び抗菌層と外層の間に提供することができる。この中間層は、例えば、HPMCを含みうる。
【0220】
一部の実施態様において、コアは、抗菌剤、例えばグラム陰性細菌に対して効果的なペプチド抗菌剤など、好ましくは、抗グラム陰性リポペプチド(例えばポリミキシンなど)、最も好ましくはコリスチン−アミノグリコシド、マクロライド、キノロン、又はその混合物から乾式もしくは湿式造粒技術を用いて作製される。この実施態様において(そこではコアが抗菌剤を含む)、前記の抗菌剤を、以下に提供する1つ又は複数の医薬的に許容可能な担体と混合することが必要でありうる。抗菌剤の顆粒を、さらに、当技術分野において公知の技術を使用して、錠剤に圧縮することができる。そのようなコアの続くコーティングを、後回腸、盲腸、又は結腸における抗菌剤の送達を提供するために適宜実施する。
【0221】
追加の製剤情報
製剤は、便利に、単位投与形態で提示することができ、薬学の当技術分野において周知の任意の方法により調製することができる。
【0222】
経口投与のために適した本発明の製剤は、カプセル、カシェー、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、ペレットの形態で、又は水性もしくは非水性液体中の懸濁剤(各々が所定量の活性薬剤又は活性薬剤の組み合わせを含む)であってもよい。
【0223】
経口投与のための本発明の固形投与形態(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒、ペレットなど)において、活性薬剤を、1つ又は複数の医薬的に許容可能な担体、例えば(1)充填剤又は増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸など;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/又はアカシアなど;(3)保湿剤、例えばグリセロールなど;(4)崩壊剤、例えば寒天−寒天、炭酸カルシウム、デンプンなど(5)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、グリセロールモノステアレート、及び非イオン界面活性剤など;(6)潤滑剤、例えばタルク、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びその混合物など;ならびに(10)着色剤などと混合する。カプセル、錠剤、及び丸剤の場合において、医薬的組成物は緩衝薬剤も含むことができる。類似の型の固形組成物を、ラクトース又は乳糖などの賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟及び硬シェルゼラチンカプセル中の充填剤としても用いることができる。
【0224】
錠剤を、圧縮又は成形により、場合により1つ又は複数の副成分を用いて作製することができる。圧縮錠剤を、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコール酸又は架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、又は分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、適した機械において、不活性な液体希釈剤を用いて湿らせた粉末化合物の混合物を成形することにより作製することができる。
【0225】
本発明の医薬的組成物の錠剤及び他の固形投与形態(例えば糖衣錠、カプセル、丸剤、顆粒など)を、場合により、コーティング及びシェル(例えば、胃腸管の特定部分において活性薬剤の放出を提供するための胃耐性コーティング及び/又は補完的な腸溶コーティングならびに医薬的製剤技術において周知の他のコーティングなど)を用いて調製することができる。
【0226】
使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質及びワックスを含む。活性薬剤を、また、適切な場合、上記の賦形剤の1つ又は複数を用いて、マイクロカプセル化形態にすることができる。
【0227】
上に記載する異なる薬物放出機構を伴うシステムを、単一又は複数単位を含む最終的な投与形態において組み合わせることができる。複数単位の例は、多層錠剤、錠剤、ペレット、顆粒などを含むカプセルを含む。
【0228】
遅延放出製剤を、固形投与形態を、胃の酸性環境において不溶性であり、小腸の中性環境において可溶性であるポリマーのフィルムを用いてコーティングすることにより作る。
【0229】
遅延放出投与単位を、例えば、送達システムを、選択したコーティング材料を用いてコーティングすることにより調製することができる。薬剤含有組成物は、例えば、カプセル中への組み込みのための錠剤、「コーティングされたコア」投与形態における内部コアとしての使用のための錠剤、又は錠剤もしくはカプセルのいずれかの中への組み込みのための複数の薬剤含有ペレット、粒子、又は顆粒でありうる。好ましいコーティング材料は、生体内浸食性の、徐々に加水分解可能な、徐々に水溶性の、及び/又は酵素的に分解可能なポリマーを含み、従来の「腸溶」ポリマーでありうる。腸溶ポリマーは、当業者により理解されうる通り、下部胃腸管のより高いpH環境において可溶性になり、又は、投与形態が胃腸管を通過する際にゆっくりと浸食されるが、酵素的に分解可能なポリマーは、下部胃腸管において、特に結腸において存在する細菌酵素により分解される。
【0230】
遅延放出を達成するための適したコーティング材料は、限定はされないが、以下を含む:セルロースポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム;アクリル酸ポリマー及びコポリマー(好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、及び/又はエチルメタクリレートから形成される)、ならびに商標名Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma; Westerstadt, Germany)で市販されている他のメタクリル酸樹脂、Eudragit(登録商標)L30D-55及びL100-55(pH5.5以上で可溶性)、Eudragit(登録商標)L-100(pH6.0以上で可溶性)、Eudragit(登録商標)S(pH7.0以上で可溶性、より高いエステル化度のため)、Eudragits(登録商標)NE、RL、及びRS(異なる透過性及び膨張性を含む水不溶性ポリマー)、ならびにEudragit FS30D(メタクリル酸、メチルアクリレート、及びメチルメタクリレートのターコポリマー);ビニルポリマー及びコポリマー、例えばポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、ビニルアセテートフタレート、ビニルアセテートクロトン酸コポリマー、及びエチレン−酢酸ビニルコポリマーなど;酵素的に分解可能なポリマー、例えばアゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロース、及びグアーガムなど;ゼイン及びシェラック。異なるコーティング材料の組み合わせも使用することができる。異なるポリマーを使用した多層コーティングも適用することができる。特定のコーティング材料についての好ましいコーティング重量は、当業者により、異なる量の種々のコーティング材料を用いて調製された錠剤、ペレット、及び顆粒についての個々の放出プロファイルを評価することにより容易に決定することができる。材料、方法、及び適用形態の組み合わせが、所望の放出特徴を産生し、それらは臨床試験だけから決定することができる。
【0231】
コーティング組成物は、従来の添加剤(例えば可塑剤、色素、着色剤、安定化剤、滑剤など)を含むことができる。可塑剤が通常、コーティングの脆弱性を低下させるために含まれ、一般的には、ポリマーの乾燥重量に対して、約10重量%〜50重量%を占める。典型的な可塑剤の例は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、ヒマシ油、及びアセチル化モノグリセリドを含む。安定化剤を好ましくは使用し、分散中で粒子を安定化する。典型的な安定化剤は、非イオン性乳化剤(例えばソルビタンエステル、ポリソルベート、及びポリビニルピロリドンなど)である。滑剤が、フィルム形成及び乾燥の間での付着効果を低下させるために推奨され、一般的には、コーティング溶液のポリマー重量の約25重量%〜100重量%を占めうる。1つの効果的な滑剤はタルクである。他の滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム及びグリセロールモノステアレートなど)も使用することができる。色素(例えば二酸化チタンなど)も使用することができる。少量の消泡剤、例えばシリコーン(例、シメチコーン)などもコーティング組成物に加えることができる。
【0232】
あるいは、遅延放出錠剤を、薬剤を、適した材料(例えば親水性ポリマー又は脂肪化合物など)のマトリクス内に分散させることにより製剤化することができる。親水性ポリマーは、セルロース、セルロースエステル、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びビニルのポリマー又はコポリマー、又は上に記載する酵素的に分解可能なポリマーもしくはコポリマーで構成されうる。これらの親水性ポリマーは、特に、遅延放出マトリクスを提供するために有用である。マトリクス材料としての使用のための脂肪化合物は、限定はされないが、ワックス(例、カルナバワックス)及びグリセロールトリステアレートを含む。一旦、活性薬剤をマトリクス材料と混合すると、混合物を錠剤に圧縮することができる。
【0233】
これらの投与形態を、治療のためにヒト及び他の動物に、任意の適した投与経路による投与することができる。
【0234】
本発明の医薬的組成物中での活性薬剤の実際の投与レベルは、腸管における任意の残留抗菌剤又は化学物質又は毒素、特定の患者については、組成物の効果的な除去、及び投与様式(患者に対する毒性なしに)を得るように変動しうる。
【0235】
活性薬剤を組み込む粒子
上記の通り、活性薬剤を含む修飾された放出粒子は、糖ベース又は微結晶性セルロースコア単位の形態でありうるが、場合により、コア単位を囲む水溶性コート、活性薬剤及び医薬的に許容可能な結合剤を含む薬物層、pH依存的ポリマー又はコポリマーを含む薬物の持続放出及び/又は制御放出のための外層が含まれる。この文脈における「pH依存的」は、薬物の透過性、従って放出特徴を、腔内pH(理想的には、結腸中又はその近くで粒子の内容物を放出するために適する)によりモニターすることができることを意味する。さらなる層が追加で存在しうるが、典型的には、追加層は存在しないか又は必要に応じて任意の最外フィルムコート層が、追加で存在するかのいずれかである。粒子成分のさらなる詳細を以下に示す。
【0236】
粒子のコア単位は、微結晶性セルロース又は糖を含む任意のコア又はシードであり、典型的には、市販の微結晶性セルロース球(例えば、糖ベースのペレットのためのCellets(商標)又はCelpheres(商標)又はEthispheres(商標)及びSuglets(商標)など)である。コア単位のサイズは、典型的には、60〜2000ミクロンの範囲内の直径を有し、好ましくはコア単位の直径は700〜1000ミクロンの範囲内である。一般的に、コア単位は、粒子組成の全重量の50〜90重量%を構成する。一部の実施態様において、コア単位は70〜90重量%であり、他の実施態様において、それは、好ましくは、粒子組成の全重量の60〜70重量%である。単位コアを使用する1つの利点は、そのコーティングが比較的簡単であり、コア単位の浸食又は溶解がコーティングの間にほとんど起こらないことである。これに起因して、コーティング速度が増加しうる(例、糖コア又は「ノンパレイユ」と比較して)。それによって、粒子の品質に悪影響を及ぼすことなくプロセス時間及び、それに伴い、産生コストが低下する。また、粒子上のコート層の厚さは、コーティング及び乾燥時間により簡単に制御されうる。プロセスでの算出された収量がより信頼できる。なぜなら、コア材料が、異なるコーティングプロセスの間にほとんど失われないからである。
【0237】
コア単位は、主に、水溶性コート(例えばビニルピロリドンポリマー、セルロースポリマー、又はその混合物など)により囲むことができる。増加した遅延時間が必要とされる場合、ヒドロキシメチルプロピルセルロース(HPMC)を、ビニルピロリドンポリマーに加えて、又はその代わりに使用してもよい。典型的には、コアを囲む水溶性コートは、粒子組成の全重量の2〜10重量%を構成する。
【0238】
一実施態様において、医薬的投与形態を、グラム陰性細菌に特異的な抗菌リポペプチド、及びマクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗生物質の両方の適当な濃度を用いて調製し、上に記載する通りに、典型的には、結合剤(例えば親水性ポリマーなど)を使用して不活性コア上に噴霧する。便利な親水性ポリマー結合剤はHPMCを含む。市販のグレードの内、低粘性HPMCが一般的に望ましい(例えばMethocel E5(商標)など)。しかし、実際には、十分な結合特性を有する任意の親水性ポリマー(例えばPVP、デンプン、親水性セルロース誘導体、親水性アクリレート、又はメタクリレートポリマー)を使用してもよい。薬物層は、典型的には、粒子組成の全重量の2〜70重量%を構成する。活性薬剤は、一般的には、粒子の全重量の10〜70重量%を構成する。
【0239】
別の実施態様において、医薬的投与形態を、適当量の別々に調製されたリポペプチド粒子及びマクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド粒子を用いて調製し、所望の臨床的な有効量に合わせ、体重に従った適当な投与量を調製することができる。各抗生物質を、上と同じスキームに従って調製する。即ち、抗生物質溶液を、不活性コア上に、典型的には結合剤(例えば親水性ポリマーなど)を使用して噴霧する。便利な親水性ポリマー結合剤はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。市販のグレードの内、低粘性HPMCが一般的に望ましい(例えばMethocel E5(商標)など)。しかし、実際には、十分な結合特性を有する任意の親水性ポリマー(例えばPVP、デンプン、親水性セルロース誘導体、親水性アクリレート、又はメタクリレートポリマーを使用してもよい。薬物層は、典型的には、粒子組成の全重量の2〜70重量%を構成する。活性薬剤は、一般的には、粒子の全重量の10〜70重量%を構成する。
【0240】
特定の実施態様において、外層は、pH依存的ポリマー、特にEudragitポリマー(上で定義する)を含む。制御された放出層におけるポリマーの量は、典型的には、粒子の全重量に基づき10%〜35%の間である。別の実施態様において、外層は、時間、圧力、又は細菌に応答性であるポリマーシステムを含む。例えば、外層は、二価陽イオンを用いて(例えば、上に記載するカルシウム又は亜鉛を用いて)架橋されたペクチンを含みうる。前記ペクチンは、場合により、陽イオンポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)を用いて又はpH依存的(腸溶解性)ポリマー(例えばEudragit、Aqoat、又はShellacなど)を用いてさらにコーティングする。
【0241】
一部の実施態様において、粘着防止剤、例えばタルクなど(典型的には、層の全重量の約10〜60重量%、好ましくは25〜50%を構成する)及び/又はグリセリルモノステアレート(典型的には、層の全重量の約1〜5重量%、好ましくは2.5〜5%を構成する)をさらに含むことが有利である。二酸化ケイ素(例えばW. R. GraceからのSYLOID商標など)も層に含めることができる。本発明の粒子は、活性成分を、好ましくは制御された様式で放出する。あるいは、一般的に必要とされない又は望まれないが、制御された放出層を、孔形成薬剤(例えばHPMCなど)又は可塑剤(例えばトリアセチン又はポリソルベートなど)と組み合わせて、適した放出プロファイルを得てもよい。
【0242】
場合により、本発明の粒子は、また、粒子の機械的特性を改善するための最外部フィルムコートを含みうる。好ましくは、そのような最外部フィルムコートは機能的コートではない。即ち、それは、薬物の制御された放出速度を実質的に改変しない。そのような最外部フィルムコートはヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はタルクを含みうるが、存在する場合、粒子組成の全重量の約0.5〜2重量%を構成する。
【0243】
粒子は、任意の従来の又は適した技術を使用して調製することができ、典型的には、以下の工程を含む:a)上に記載する通りに特定された直径サイズを有するコア単位を提供すること、b)第1に、親水性ポリマーを含む水溶性コートを、前記コア単位上に適用すること、c)第2に、リポペプチド抗菌薬剤及びマクロライド、キノロン、又はアミノグリコシド抗生物質ならびに医薬的に許容可能な結合剤を含む薬物層を、水溶性コート上に適用すること、d)第3に、pH依存的ポリマー又はコポリマーを含む制御された放出層を、薬物層上に適用すること。場合により、最外フィルムコート層を適用する工程e)も行う。f)最終的な投与形態において、適切な量の両方の粒子を、例えばカプセル中に組み合わせる又は合わせず、最終的な投与形態を作製すること。
【0244】
コーティングを流動床コーティング機器において実施してもよく、それにおいて、コートを、コーティングされる材料に段階的に適用する。コーティング操作は、好ましくは、それぞれのコーティング材料の溶液又は分散液を、コーティングされる粒子上に噴霧することにより実施する。コーティングされる材料の液体担体は、水、医薬的に許容可能な有機溶媒、例えば脂肪族アルコール(例、C−Cアルコール)など、又は両方の組み合わせでありうる。コートを粒子上に適用するための当技術分野において公知の任意の方法を使用してもよい。任意の特定のコーティング後、コーティングされた材料を、次のコートを適用する前に乾燥させてもよい。
【0245】
最終的なコーティング工程後、粒子を、一般的に、同じ流動床システムにおいて又はトレイドライヤーシステムにおいて、温度約30〜80℃まで1〜72時間にわたり加熱することにより硬化する。好ましくは、硬化は、温度約35〜50℃で、2〜48時間、より典型的には4〜24時間にわたり実施する。
【0246】
複数の修飾された放出粒子を、場合により、錠剤中に圧縮し、適切な賦形剤とともにカプセル中に、当技術分野において公知の様式で含め、活性薬剤の各々を50〜600mg含む錠剤又はカプセル投与形態を得ることができる。錠剤又はカプセルは、溶解時に、別々の制御された放出粒子に崩壊し、それらは個々に後回腸又は結腸に達し、そこで、それらは、グラム陰性細菌に対する処置のための薬物を放出することができる。
【0247】
本発明のコアをコーティングするために使用することができるpH依存的な腸溶解性ポリマーの種類及び/又は量を、実施例において提供するBiodis溶解テスター(USP III放出装置)を使用して選択してもよい。この方法を使用し、薬物送達システムの他の種類(例えば上で言及するものなど)を試験してもよい。
【0248】
pH依存的な腸溶解性コーティングは、また、異なるpH依存的な腸溶解性ポリマーの種々の組み合わせを含みうる。当業者は、この分野における一般的な知識を考慮に入れて、pH依存的ポリマーのそのような混合物を選択することができる。例えば、2つのメタクリル酸ポリマー(例えばEudragit(登録商標)L100-55及びEudragit(登録商標)S100など)の組み合わせを、本発明のコアの周りに提供することができる。
【0249】
特定の実施態様において、pH依存的な腸溶解性ポリマーを以下
− シェラック
− メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸に基づく陰イオン性コポリマー、ならびに
− メタクリル酸及びメチルメタクリレートコポリマー(1:2重量比)
より選択する。
【0250】
さらなる特定の実施態様において、本発明の薬物送達システムは以下:
− 抗菌剤、例えばリポペプチド(例えば、ポリミキシン、特にコリスチン)又はグラム陰性細菌に対して効果的な別のペプチド抗菌剤、アミノグリコシド、マクロライド、キノロン、又はその混合物(特に、リポペプチド抗菌剤(例、コリスチン)とマクロライド、アミノグリコシド、又はキノロン抗菌剤の混合物)を含むコア、ならびに
− メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸に基づく陰イオン性コポリマー、例えばEudragit(登録商標)FS30Dなどの層
を含む。
【0251】
別の特定の実施態様において、本発明の薬物送達システムは以下
− 抗菌剤、例えばリポペプチド(例えば、ポリミキシン、特にコリスチン)又はグラム陰性細菌に対して効果的な別のペプチド抗菌剤、アミノグリコシド、マクロライド、キノロン、又はその混合物(特に、リポペプチド抗菌剤とマクロライド、アミノグリコシド、又はキノロン抗菌剤の混合物)を含むコア、ならびに
− シェラックの層
を含む。
【0252】
外部の腸溶解性層を、当業者に公知の任意の適した手段によりコア上に適用してもよい。例えば、それを、古典的な流動床技術を使用して適用することができ、そこでは、コーティングの水ベース又は溶媒ベース溶液を、コアペレット上への噴霧乾燥により適用する。目的の重量に達すると、製剤を乾燥させて、さらなるコーティングを適用することができる。複数のコーティングを、このように、噴霧乾燥技術を使用して段階的に適用することができる。
【0253】
中間コーティング
本発明の特定の実施態様に従い、上に記載される薬物送達システムは、上に記載されるコアと外部腸溶コーティングの間に提供される少なくとも1つのさらなるコーティングを含む。このさらなる層(「中間コーティング」とも言及される)を提供し、外部コーティングから抗菌剤を含むコア組成物を分離する。これは、感受性の抗菌剤、例えばペプチド/リポペプチド又はキノロン抗菌剤(それらは、一部の腸溶ポリマーコーティングと不適合性を有する)について特に適する。
【0254】
特定の実施態様に従い、中間コーティングを本発明のコア上に提供し、さらなるコーティングをpH依存的な腸溶解性ポリマー、例えばEudragit(商標)FS30Dなどを用いて適用する(上で説明する通り)。pH依存的な腸溶解性ポリマーによって、胃腸管の上部における酸性環境からコアが保護される。一旦、pH依存的ポリマーが溶解すると、抗菌剤の放出を、中間コーティングが溶解した後に得ることができる。
【0255】
中間コーティングは、pH依存的又はpH非依存的ポリマーを含みうる。
【0256】
中間コーティングとして使用することができるpH依存的ポリマーの内、例は、「外部腸溶解性層」部分において上に記載されるもの、特にシェラック型ポリマー(例えばSSB(登録商標)Aquagoldなど)、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸に基づく陰イオン性コポリマー(例えばEudragit(登録商標)FS30Dなど)、メタクリル酸及びエチルアクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)L30D-55など)、HPMCAS(例えばAqoat AS-MF、MG、又はHFグレードなど)、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)(例えばHP-55グレードなど)を含む。
【0257】
pH非依存的ポリマーを、緩徐な水溶性ポリマー及び水不溶性ポリマーの間から選択することができる。pH非依存的な水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリビニルピロリドン(PVP)及び高分子量セルロースポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などを含む。pH非依存的な不溶性ポリマーのさらなる非限定的な例は、エチルセルロースポリマー及びエチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)NE30Dなど)を含む。
【0258】
本発明の特定の実施態様において、中間コーティングはポリマーの混合物を含む。第1の代替例において、ポリマーの混合物は、同じ種類のポリマーを含む。例えば、混合物は、別のpH依存的ポリマーを伴うpH依存的ポリマー、別のpH非依存的な可溶性ポリマーを伴うpH非依存的な可溶性ポリマー、又は別のpH非依存的な不溶性ポリマーを伴うpH非依存的な不溶性ポリマーを含みうる。別の代替例において、ポリマーの混合物は、異なる種類のポリマーを含む。混合物は、pH非依存的ポリマーを伴うpH依存的ポリマー(水に可溶性又は不溶性のいずれか)、pH非依存的な不溶性ポリマーを伴うpH非依存的な可溶性ポリマー、又はpH非依存的な可溶性ポリマー及びpH非依存的な不溶性ポリマーを伴うpH依存的ポリマーを含みうる。例えば、中間コーティングは、pH依存的ポリマーとpH非依存的ポリマーの混合物、例えばEudragit(登録商標)L30D55とEudragit(登録商標)NE30Dの混合物(例えば、重量比約1:9〜約9:1の間、特に約2:8〜約3:7の間)などを含みうる。
【0259】
好ましいコーティング及びコーティング成分重量比は、当業者により、例えば、実施例において提供する通り、投与形態の放出プロファイルを評価することにより容易に決定することができる。
【0260】
特定の実施態様において、中間コーティングを、インビトロ試験、例えばBioDis溶解テスター(USP III放出装置)などにより測定される、抗菌剤の遅延及び/又は制御放出を達成するために選択する。このシステムにおいて、投与形態を、胃腸管の様々な部位に対応するガラス管(約200mLの溶解媒質で満たされている)中に段階的に置く(例えばFotaki and Coll, European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 73 (2009) 115-120により記載される通り)。これによって、哺乳動物試験の前にインビボ放出の良いシミュレーションが可能になる。pH、摂食状態、及び種々の他の生理学的状態を試験することができる。BioDisシステムを使用して、当業者は、製剤化を精密に調整し、所望の所定の遅延放出を達成することが可能である。この方法は、また、腸の所望の部分において抗菌剤を送達することを意図したあらゆる薬物送達システムを試験するために有用であることが理解されるであろう。
【0261】
上に従い、本発明の特定の実施態様は、以下を含む薬物送達システム:
− 抗菌剤、例えばリポペプチド(例えば、ポリミキシン、特にコリスチン)又はグラム陰性細菌に対して効果的な他のペプチド抗菌剤、アミノグリコシド、マクロライド、キノロン、又はその混合物(特に、リポペプチド抗菌剤とマクロライド、アミノグリコシド、又はキノロン抗菌剤の混合物)を含むコア、
− pH依存的な腸溶解性ポリマーの外層、ならびに
− コアと外層の間に提供されるコーティング
に関する。
【0262】
特定の実施態様において、本発明は、以下を含む薬物送達システム:
− 抗菌剤、例えばリポペプチド(例えば、ポリミキシン、特にコリスチン)又はグラム陰性細菌に対して効果的な他のペプチド抗菌剤、アミノグリコシド、マクロライド、キノロン、又はその混合物(特に、リポペプチド抗菌剤とマクロライド、アミノグリコシド、又はキノロン抗菌剤の混合物)を含むコア、
− HPMC、エチルセルロース、ならびにメタクリル酸及びエチルアクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)L30D-55など)及びエチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)NE30Dなど)の混合物(例えば、混合比1:9〜9:1、好ましくは2:8〜3:7)からなる群より選択されるコーティング、ならびに
− メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸に基づく陰イオン性コポリマー(例えばEudragit(登録商標)FS30Dなど)の外層
に関する。
【0263】
特定の実施態様において、本発明の薬物送達システムは以下:
− 抗菌剤、例えばリポペプチド(例えば、ポリミキシン、特にコリスチン)又はグラム陰性細菌に対して効果的な他のペプチド抗菌剤、アミノグリコシド、マクロライド、キノロン、又はその混合物(特に、リポペプチド抗菌剤とマクロライド、アミノグリコシド、又はキノロン抗菌剤の混合物)を含むコア、
− メタクリル酸及びエチルアクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)L30D-55など)及びエチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)NE30Dなど)の2:8〜3:7混合物で作製された15〜35%(全製剤のw/w)コーティング、ならびに
− メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸に基づく陰イオン性コポリマー(例えばEudragit(登録商標)FS30Dなど)の15%(全製剤のw/w)外層
を含む。
【0264】
さらなる特定の実施態様において、本発明の薬物送達システムは以下:
− コリスチンを含むコア、
− メタクリル酸及びエチルアクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)L30D-55など)及びエチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)NE30Dなど)の2:8〜3:7混合物で作製された15〜35%(全製剤のw/w)コーティング、ならびに
− メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸に基づく陰イオン性コポリマー(例えばEudragit(登録商標)FS30Dなど)の15%(全製剤のw/w)外層
を含む。
【0265】
コリスチンとFS30Dの間の中間コーティングの存在によって、Bio Dissシステムにおいて観察される通り、コリスチンの放出が改善される。
【0266】
別の実施態様において、本発明は以下を含む薬物送達システム:
− 不活性コア、例えば、微結晶性セルロース(例えばCelletsなど)で作製されたコア
− 以下の1つ又は複数を含む組成物の層
i)リポペプチド又はグラム陰性細菌に対して効果的なペプチド抗菌剤(例えばコリスチンなど)
ii)アミノシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤;及び
− 後回腸、盲腸、又は結腸における送達のためのシステム、例えば、上に提供する外部コーティングなど(例えば、pH依存的ポリマー又はペクチン)
に関する。
【0267】
上で定義する中間層を、外層と、抗菌剤を含む層の間に提供してもよい。
【0268】
本発明の特定の実施態様において、薬物送達システムは以下:
− 上で定義する不活性コア;
− コリスチンを含む前記コアの周囲の層;
− 場合により、コリスチン含有層の周囲の中間コーティング(前記中間層は上で定義される通りである);及び
− 後回腸、盲腸、又は結腸において送達を提供するための外部コーティング
を含む。
【0269】
この実施態様において、中間コーティングは、例えば、HPMC、エチルセルロース、ならびにメタクリル酸及びエチルアクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)L30D-55など)及びエチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマー(例えばEudragit(登録商標)NE30Dなど)の混合物(例えば、混合比1:9〜9:1、好ましくは2:8〜3:7)からなる群より選択することができる。
【0270】
本発明は、さらに、本明細書に提示する全ての方法における使用のためのコリスチンを含む上の薬物送達システムに関する。
【0271】
本明細書に記載する薬物送達システムを使用した処置の方法
本明細書に記載する組成物を使用し、不要なグラム陰性細菌(例えば抗生物質耐性グラム陰性細菌など)を、コロニー形成された被験者の腸から除去することができる。そのようなものとして、組成物を使用し、ESBL及びカルバペネマーゼ産生グラム陰性細菌の増加した発生率を最小限にすることができる。
【0272】
本活性薬剤を、治療的に効果的な投与量で、結腸感染に羅患した、又は羅患する可能性の高い患者に投与することができる。
【0273】
本組成物及び方法を使用し、種々の結腸細菌感染、あるいは潜在的に病原性の及び/又は多耐性の細菌又は酵母によるコロニー形成、ならびにグラム陰性細菌、例えば大腸菌及び腸内細菌の他の種、特に抗菌剤に耐性又は多耐性の種、サルモネラ及びシゲラ種ならびに他の潜在的に病原性の細菌(例えばシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomanas maltophilia)、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)など)での細菌感染に起因する種々の障害を処置することができる。微生物増殖を、効果的な量の活性薬剤を、適切に設計された送達システム及び投与形態において、そのような処置を必要とする患者に投与することにより阻害することができる。投与すべき厳密な用量は、組成物の使用、患者の年齢、性別、及び生理学的な状態に従って変動しうるが、処置する医師により容易に決定することができる。組成物を、単回用量として又は複数回用量として期間にわたり投与してもよい。投与を適宜反復してもよい。
【0274】
本組成物を使用し、「選択的な除染」を達成するために、結腸に抗菌薬剤を送達し、共生及び/又は潜在的に病原性の微生物(例えば、腸内細菌、シュードモナス、及び他のグラム陰性細菌など)をリスクのある患者(例えば、集中治療、手術前、又は血液癌患者など)の結腸から、それらが実際の感染を発生する前に除去することもできる。
【0275】
さらに本組成物を使用し、農場動物における結腸細菌、特に、大腸菌株の特定の種、即ち、志賀毒素大腸菌(又はSTEC)(ベロ毒素大腸菌(又はVETEC)とも呼ばれる)の選択的除染を提供することができる。この方法の使用によって、食物及び水供給の汚染を最小限にすることができる。
【0276】
本組成物を使用し、抗菌剤耐性グラム陰性感染(例えば院内感染など)の病院における大流行を制御するのに役立てるために、不要な細菌を除去することもできる。代表的な感染は、TEM又はSHVβ−ラクタマーゼファミリーに由来する広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)、ならびに新型のESBL(CTX−Mと呼ばれる)(出現及び拡散の著しく異なる疫学的パターンを有する)の分泌により第三世代セファロスポリンに耐性である腸内細菌(大半がクレブシェラ)により起こされる院内感染を含む。一実施態様において、病院に入院した患者(これらの細菌の1つについて陽性と同定されている)は、結腸を標的とする特異的な抗菌薬剤を使用して選択的に除染される。同じものを、他の型の抗生物質分解酵素(例えばカルバペネマーゼなど)を保有するグラム陰性細菌によりコロニー形成された患者に適用することができる。
【0277】
理想的には、結腸に送達される抗菌活性薬剤は、病原細菌又は潜在的な病原細菌に特異的であり、有益な細菌に対して効果を有さない。このように、共生菌叢の有益な細菌を保存する。したがって、一実施態様において、活性薬剤は、結腸中に存在する有害な細菌の1つ又は複数の種に対して活性であるが、しかし、結腸中に存在する役立つ細菌に対しては活性ではない、又は活性が低い。抗グラム陰性リポペプチド(ポリミキシン)抗菌剤及びマクロライド又はアミノグリコシド抗菌剤の組み合わせによって、これらの薬剤の1つに対して発生する細菌耐性の問題が最小限になる。
【0278】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してより良く理解されるであろう。
【0279】
実施例1:制御された薬物送達特性を有する結腸送達のためのアジスロマイシン二水和物ペレットの製剤化
アジスロマイシンペレット製剤を、Mycrolab(Huttlin GmbH)を使用した噴霧乾燥方法により、アジスロマイシンのHPC溶液をMCCペレット上に噴霧することにより調製した。
【0280】
【表1】

【0281】
薬物とHPCの水溶液(7%溶液)の溶液を単純に混合することによりアジスロマイシン二水和物の溶液(30mg/mL)を作製し、pH7.4に調整した。溶液を、次に、MycroLabシステム中への噴霧乾燥によりCellets上に噴霧した。種々のコーティング厚を適用した(35%(添加重量)FS30Dまで)。
【0282】
BioDisアッセイの結果を、図1に、35% FS30Dコーティングについて提示するが、しかし、類似の結果が、25% FS30Dを用いて得られた。説明文:図1:Biodisシステムを使用した模擬ヒト胃腸管におけるアジスロマイシンの放出。アジスロマイシンcellet製剤を、35% FS30D(バッチGL-058B4)を用いてコーティングし、模擬液体中(例えば胃、近位空腸、後空腸、回腸、及び結腸など)に段階的に浸す。グラフから明らかなように、アジスロマイシンの完全放出は、FS30Dコーティングcelletを用いて達する。
【0283】
実施例2:制御された薬物送達特性を有する結腸送達のためのコリスチンペレットの製剤化
コリスチンペレット製剤を、Mycrolab(Huttlin GmbH)を使用した噴霧乾燥方法により、硫酸コリスチンのHPC溶液をMCCペレット上に噴霧することにより調製した。
【0284】
【表2】

【0285】
薬物とHPCの水溶液(7%溶液)の溶液を単純に混合することによりコリスチンの溶液(30mg/mL)を作製し、pH7.4に調整した。溶液を、次に、MycroLabシステム中への噴霧乾燥によりCellets上に噴霧した。
【0286】
結果を図2に提示する。説明文:Biodisシステムを使用した模擬ヒト胃腸管におけるコリスチンの放出。コリスチンcellet製剤を、15% FS30Dを用いてコーティングし(20% L30D55-NE30Dを用いたプレコーティングを行う又は行わない)、模擬液体中(例えば胃、近位空腸、後空腸、回腸、及び結腸など)に段階的に浸す。グラフから明らかなように、長期様式での完全放出は、L30D55-NE30D(3/7 w/w比率)の中間コーティングが提供される場合に達成される。コリスチン層の周囲での直接的なFS30Dコーティングの場合において、完全放出には達成されず、恐らくは、コリスチンとEudragit FS30Dとの予想外の相互作用のためである。このように、コリスチン層とEudragit FS30D層を分離し、所望の除染を得るために必要であるコリスチンの用量まで低下することが好ましいであろう。
【0287】
実施例3:制御された薬物送達特性を有する結腸送達のためのコリスチンペレットの種々の製剤のコーティング
コリスチンペレット製剤を、種々のコーティング厚及び組成物を使用して調製した。コリスチンの場合において、不適合性が、BioDisシステムにおいてインビトロで測定された全コリスチン放出を抑制するFS30Dで作製された外部コーティングを用いて観察されている。これを回避するために、本発明者らは、種々のサブコート組成物を試験した。
【0288】
全ての製剤が、実施例2のプロトコールを使用して調製された。
【0289】
【表3】

【0290】
実施例4:結腸送達のためのコリスチンペレットの製剤化
コリスチン製剤を、Bosch Profimix 44造粒機及びNica Spheronizer S-450を使用した湿式造粒、それに続く押出し球形化プロセスにより調製する。
【0291】
コリスチンを、FMC BiopolymersからのGelcarin GP 911と混合し、十分量の精製水を用いて湿式造粒し、混合物を得て、それを次に押出し(フィーダーを50rpmに、インペラを70rpmに設定する)、球形化し、約1〜3mm直径のペレットを得る(スピード750rpm)。
【0292】
球形化工程後に得られるペレットを一つにし、流動床乾燥機のボウル中に移す。ペレットを、40分間にわたり温度70℃(流入空気)で乾燥させる。ペレットを、次に、MP-1 FlexStreamに移し、Eudragit(商標)型ポリマーを用いてコーティングする。
【0293】
【表4】

【0294】
同じ製剤を、微結晶性セルロース(MCC)、デンプン、ラクトース、リン酸二カルシウム(DCP)、及び糖を含む他の賦形剤を使用して調製することができる。
【0295】
コリスチン塩の置換が可能であり、類似の製剤を、バシラス・コリスチナス(Bacillus colistinus)からのコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを使用して調製することができる。
【0296】
実施例5:結腸送達のための硫酸コリスチンペレットの製剤化
硫酸コリスチン製剤を、Bosch Profimix 44造粒機及びNica Spheronizer S-450を使用した湿式造粒、それに続く押出し球形化プロセスにより調製する。
【0297】
コリスチンを、Gelcarin GP 911及びFMC BiopolymersからのAvicel PH101と混合し、十分量の精製水を用いて湿式造粒し、混合物を得て、それを次に押出し(フィーダーを50rpmに、インペラを70rpmに設定する)、球形化し、約1〜3mm直径のペレットを得る(スピード750rpm)。
【0298】
球形化工程後に得られるペレットを一つにし、流動床乾燥機のボウル中に移す。ペレットを、40分間にわたり温度70℃(流入空気)で乾燥させる。ペレットを、次に、MP-1 FlexStreamに移し、Eudragit(商標)型ポリマーを用いてコーティングする。
【0299】
【表5】

【0300】
あるいは、顆粒化混合物は、錠剤を作製するためにも役立てることができる。同じコリスチン製剤を、Bosch Profimix 44造粒機における湿式造粒、それに続く錠剤化により調製する。コリスチンを、Gelcarin GP 911及びFMC BiopolymersからのAvicel PH101と混合し、十分量の精製水を用いて湿潤顆粒化し、混合物を得て、それを乾燥させ、続いて錠剤に圧縮する。
【0301】
得られた錠剤を、Eudragit(商標)型ポリマーを用いて、古典的な流動床装置においてコーティングする。
【0302】
実施例6:結腸送達のためのアジスロマイシン二水和物ペレットの製剤化
アジスロマイシン二水和物製剤を、Bosch Profimix 44造粒機及びNica Spheronizer S-450を使用した湿式造粒、それに続く押出し球形化プロセスにより調製する。
【0303】
アジスロマイシンを、FMC BiopolymersからのGelcarin GP 911及びAvicel PH101と混合し、十分量の精製水を用いて湿式造粒し、混合物を得て、それを次に押出し(フィーダーを50rpmに、インペラを70rpmに設定する)、球形化し、約1〜3mm直径のペレットを得る(スピード750rpm)。
【0304】
球形化工程後に得られるペレットを一つにし、流動床乾燥機のボウル中に移す。ペレットを、40分間にわたり温度70℃(流入空気)で乾燥させる。
【0305】
ペレットを、次に、MP-1 FlexStreamに移し、Eudragit(商標)型ポリマーを用いてコーティングする。
【0306】
【表6】

【0307】
あるいは、顆粒化混合物は、錠剤を作製するためにも役立てることができる。
【0308】
同じアジスロマイシン二水和物製剤を、Bosch Profimix 44造粒機における湿式造粒、それに続く錠剤化により調製する。アジスロマイシンを、Gelcarin GP 911及びFMC BiopolymersからのAvicel PH101と混合し、十分量の精製水を用いて湿式造粒し、混合物を得て、それを乾燥させ、続いて錠剤に圧縮する。
【0309】
得られた錠剤を、Eudragit(商標)型ポリマーを用いて、古典的な流動床装置においてコーティングする。
【0310】
実施例7:制御された薬物送達特性を有する結腸送達のためのアジスロマイシン二水和物及びコリスチンペレットの組み合わせの製剤化
組み合わせたアジスロマイシン二水和物及びコリスチンペレット製剤を、Mycrolab(Huttlin GmbH)を使用した噴霧乾燥方法により、両方の抗生物質のHPMC/HPC溶液をMCCペレット上に噴霧することにより調製する。
【0311】
【表7】

【0312】
薬物とHPMC及びHPCの水溶液(7%溶液)の溶液を単純に混合することによりアジスロマイシン二水和物(30mg/mL)とコリスチンの溶液を作製し、pH7.4に調整する。溶液を、次に、MycroLabシステム中への噴霧乾燥によりCellets上に噴霧する。
【0313】
実施例8:制御された薬物送達特性を有する結腸送達のためのアジスロマイシン二水和物及びコリスチンペレットの組み合わせの製剤化
抗生物質の組み合わせ製剤を、カプセル投与形態において上に記載される通りに、両方の結腸送達製剤を単純に混合することにより調製することができる。
【0314】
各抗生物質の適切な投与量を、重量比ベースで簡単に制御し、各抗生物質の臨床的に関連する用量を伴う最終投与形態を提供することができる。
【0315】
実施例9:結腸送達のためのネオマイシンペレットの製剤化
ネオマイシン製剤を、Bosch Profimix 44造粒機及びNica Spheronizer S-450を使用した湿式造粒、それに続く押出し球形化プロセスにより調製する。
【0316】
ネオマイシンを、FMC BiopolymersからのGelcarin GP 911と混合し、十分量の精製水を用いて湿式造粒し、混合物を得て、それを次に押出し(フィーダーを50rpmに、インペラを70rpmに設定する)、球形化し、約1〜3mm直径のペレットを得る(スピード750rpm)。
【0317】
球形化工程後に得られるペレットを一つにし、流動床乾燥機のボウル中に移す。ペレットを、40分間にわたり温度70℃(流入空気)で乾燥させる。ペレットを、次に、MP-1 FlexStreamに移し、Eudragit(商標)型ポリマーを用いてコーティングする。
【0318】
【表8】

【0319】
同じ製剤を、微結晶性セルロース(MCC)、デンプン、ラクトース、リン酸二カルシウム(DCP)、及び糖を含む他の賦形剤を使用して調製することができる。
【0320】
実施例10:結腸送達のためのゲンタマイシンペレットの製剤化
ゲンタマイシン製剤を、Bosch Profimix 44造粒機及びNica Spheronizer S-450を使用した湿式造粒、それに続く押出し球形化プロセスにより調製する。
【0321】
ゲンタマイシンを、FMC BiopolymersからのGelcarin GP 911と混合し、十分量の精製水を用いて湿式造粒し、混合物を得て、それを次に押出し(フィーダーを50rpmに、インペラを70rpmに設定する)、球形化し、約1〜3mm直径のペレットを得る(スピード750rpm)。
【0322】
球形化工程後に得られるペレットを一つにし、流動床乾燥機のボウル中に移す。ペレットを、40分間にわたり温度70℃(流入空気)で乾燥させる。ペレットを、次に、MP-1 FlexStreamに移し、Eudragit(商標)型ポリマーを用いてコーティングする。
【0323】
【表9】

【0324】
同じ製剤を、微結晶性セルロース(MCC)、デンプン、ラクトース、リン酸二カルシウム(DCP)、及び糖を含む他の賦形剤を使用して調製することができる。
【0325】
実施例11:結腸送達のためのスペクチノマイシンペレットの製剤化
スペクチノマイシン製剤を、Bosch Profimix 44造粒機及びNica Spheronizer S-450を使用した湿式造粒、それに続く押出し球形化プロセスにより調製する。
【0326】
スペクチノマイシンを、FMC BiopolymersからのGelcarin GP 911と混合し、十分量の精製水を用いて湿式造粒し、混合物を得て、それを次に押出し(フィーダーを50rpmに、インペラを70rpmに設定する)、球形化し、約1〜3mm直径のペレットを得る(スピード750rpm)。
【0327】
球形化工程後に得られるペレットを一つにし、流動床乾燥機のボウル中に移す。ペレットを、40分間にわたり温度70℃(流入空気)で乾燥させる。ペレットを、次に、MP-1 FlexStreamに移し、Eudragit(商標)型ポリマーを用いてコーティングする。
【0328】
【表10】

【0329】
同じ製剤を、微結晶性セルロース(MCC)、デンプン、ラクトース、リン酸二カルシウム(DCP)、及び糖を含む他の賦形剤を使用して調製することができる。
【0330】
実施例12:制御された薬物送達特性を有する結腸送達のためのアミノシド及びポリミキシンペレットの組み合わせの製剤化
組み合わせたアミノシド及びポリミキシンペレット製剤を、Mycrolab(Huttlin GmbH)を使用した噴霧乾燥方法により、両方の抗生物質のHPMC/HPC溶液をMCCペレット上に噴霧することにより調製する。
【0331】
【表11】

【0332】
薬物とHPMC及びHPCの水溶液(7%溶液)の溶液とを単純に混合することによりアミノシド(30mg/mL)とコリスチンの溶液を作製し、pH7.4に調整する。溶液を、次に、MycroLabシステム中への噴霧乾燥によりCellets上に噴霧する。
【0333】
実施例13:制御された薬物送達特性を伴う結腸送達のためのアミノシド及びコリスチンペレットの組み合わせの製剤化
抗生物質の組み合わせ製剤を、例えば、カプセル又は錠剤投与形態において上に記載される通りに、ペレットの形態での両方の結腸送達製剤を単純に混合することにより調製することもできる。
【0334】
各抗生物質の適切な投与量を、重量比ベースで簡単に制御し、各抗生物質の臨床的に関連する用量を伴う最終投与形態を提供することができる。
【0335】
実施例14:結腸送達のためのスペクチノマイシンペレット又は錠剤の製剤化
スペクチノマイシンを、Gelcarin GP 911及びFMC BiopolymersからのAvicel PH101と混合し、次にBosch Profimix 44造粒機及びNica Spheronizer S-450を使用して十分量の精製水を用いて湿式造粒し、混合物を得て、それを押出し(フィーダーを50rpmに、インペラを70rpmに設定する)、球形化し、約1〜3mm直径のペレットを得る(スピード750rpm)又は打錠機を使用して錠剤化することができる。
【0336】
球形化工程後に得られるペレットを一つにし、流動床乾燥機のボウル中に移す。ペレットを、40分間にわたり温度70℃(流入空気)で乾燥させる。ペレットを、次に、MP-1 FlexStreamに移し、Eudragit(商標)型ポリマーを用いてコーティングする。
【0337】
得られた錠剤を、Eudragit(商標)型ポリマーを用いて、古典的な流動床装置においてコーティングする。
【0338】
【表12】

【0339】
実施例15:標的細菌に対する及びミクロフローラの残りに対する除染組み合わせの効力のインビトロ評価
生成物の効力を評価するために、除染薬剤の各々の最小発育阻止濃度(MIC)を、標的細菌について、増加濃度のいずれかの薬剤を含む固形培地上でのそれらの増殖を評価することにより試験する。MICは、目に見える増殖が、37℃での24時間のインキュベーション後に観察されない濃度として定義される。
100の標的細菌で作製された代表的なサンプル上での各除染薬剤のMIC中央値、ならびにMIC50及びMIC90(これらは、代表的なサンプルからの標的株のそれぞれ50%又は90%の増殖を阻害するMICとして定義される)を算出する。
標的細菌は、多耐性グラム陰性細菌(例えば、広域スペクトルβ−ラクタマーゼを産生する細菌及びカルバペネマーゼを産生する細菌など)として定義される。例えば、ESBL耐性CTX−M、TEM由来、SHV由来の産生株及びカルバペネマーゼ産生株、例えばクレブシエラ・ニューモニエカルバペネマーゼ(KPC)、VIM、GES産生株などを、この方法に従って試験する。
【0340】
標的細菌での除染薬剤の各々のMICを、除染された被験者の腸管の下部(後回腸、盲腸、及び結腸)において得られるこれらの薬剤の濃度と比較する。MIC、MIC50、及びMIC90の中央値と糞便中での除染薬剤の濃度の比率を算出する。これらの比率を以下で効力比(ER)として言及する。
【0341】
同じ方法を使用して、結腸菌叢からの他の細菌(除染組み合わせにより標的化される細菌ではない)に対する薬剤のERを評価する。他の細菌は、結腸菌叢の完全性に保護的であることが公知であるバクテロイド属及びクロストリジウム属の共生メンバーを含む。
【0342】
好ましくは、除染薬剤の組み合わせは(i)標的細菌に対する最低ER、及び(ii)他の細菌に対する最高ERを有する薬剤を関連付けるものである。
【0343】
上で引用する全ての文書が、その全体において参照により本明細書に組み入れられる。先のことから、当業者には、この実施態様及び実施例が、全ての点において、制限的ではなく、例示的として考えられ、特許請求の範囲の意味及び等価性の範囲内に入る全ての変化が、従って、本明細書に包含されることが意図される。本明細書で言及される全ての文書が、参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与され、後回腸、盲腸、又は結腸に特異的に送達し、胃腸管の他の部位への送達を実質的に回避する薬物送達システムを含む組成物であって:
a)アミノグリコシド、キノロン、又はマクロライド抗菌剤、及び
b)抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤又はグラム陰性細菌に対して効果的である他のペプチド抗菌剤
を含む、薬物送達システム。
【請求項2】
リポペプチド抗菌剤が、コリスチンである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
薬物送達システムが、スペクチノマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、アルベカシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、及びアプラマイシンからなる群より選択されるアミノグリコシド抗菌剤を含む、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
マクロライドが、アジスロマイシンである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
第1及び第2の組成物の組であって、ここで、
第1の組成物は、アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤を含み、及び
第2の組成物は、経口投与され、後回腸、盲腸、又は結腸に特異的に送達し、胃腸管の他の部位への送達を実質的に回避する薬物送達システムを含み、ここで、薬物送達システムは、抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤又はグラム陰性細菌に対して効果的である他のペプチド抗菌剤を含む、前記組。
【請求項6】
第1の組成物が、経口投与され、後回腸、盲腸、又は結腸に特異的に送達し、胃腸管の他の部位への送達を実質的に回避する薬物送達システムであって、ここで、薬物送達システムが、アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤を含む、請求項5記載の組。
【請求項7】
そのような細菌によりコロニー形成された患者の結腸からのグラム陰性耐性細菌の除去を提供するための方法における使用のための、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物又は請求項5若しくは6記載の組。
【請求項8】
実際の感染を発生する前にリスクのある患者の結腸からのグラム陰性耐性細菌の除去を提供するための方法における使用のための、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物又は請求項5若しくは6記載の組。
【請求項9】
腸管の管腔内の病原性微生物を除去する、及び感染細菌により放出される化合物の作用に起因する粘膜の病原性変化を最小限にする方法における使用のための、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物又は請求項5若しくは6記載の組。
【請求項10】
農場動物の結腸からのグラム陰性細菌の除去を提供するための方法における使用のための、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物又は請求項5若しくは6記載の組。
【請求項11】
標的化される結腸細菌が志賀毒素大腸菌(又はSTEC)である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
病院において抗菌剤耐性グラム陰性感染(例えば院内感染など)の大流行を制御するために患者における選択的な除染を提供するための方法において使用するための、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物又は請求項5若しくは6記載の組。
【請求項13】
院内感染が以下により起こさる請求項12記載の組成物:a)TEM又はSHVβ−ラクタマーゼファミリーに由来する広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)の分泌により第三世代セファロスポリンに対して耐性であるグラム陰性細菌、b)CTX−Mβ−ラクタマーゼファミリーに由来する広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)の分泌により第三世代セファロスポリンに対して耐性であるグラム陰性細菌、又はc)他の種類の酵素、例えばKPCのカルバペネマーゼならびに他の酵素ファミリーの分泌により抗菌剤に対して耐性であるグラム陰性細菌。
【請求項14】
結腸細菌感染を有する、又は結腸細菌感染を有するリスクがある患者の結腸において細菌の濃度を低下させる方法における使用のための、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物又は請求項5若しくは6記載の組。
【請求項15】
組成物が、さらに、第3の活性薬剤を含み、そこで第3の活性薬剤が、抗炎症化合物、抗ヒスタミン剤、抗コリン剤、抗ウイルス剤、抗有糸分裂剤、診断用薬剤、又は免疫抑制薬剤である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
以下:
経口投与され、後回腸、盲腸、又は結腸に特異的に送達し、胃腸管の他の部位への送達を実質的に回避する薬物送達システムを含む第1の組成物(ここで、薬物送達システムは、抗グラム陰性リポペプチド抗菌剤又はグラム陰性細菌に対して効果的である他のペプチド抗菌剤を含む)、及び
アミノグリコシド、マクロライド、又はキノロン抗菌剤を含む第2の組成物
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520268(P2012−520268A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553474(P2011−553474)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053231
【国際公開番号】WO2010/103119
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(507246969)
【出願人】(591140123)
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE − HOPITAUX DE PARIS
【出願人】(508266546)ユニベルシテ パリ ディドロ−パリ 7 (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS DIDEROT−PARIS 7
【住所又は居所原語表記】5, rue Thomas Mann F−75205 Paris Cedex 13 FRANCE
【Fターム(参考)】