説明

グリセミック指数に影響を与える化合物

グリセミック指数低下剤として、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤として有用な式I:


の化合物を開示する。これらの化合物の一種以上を含有する栄養組成物及び/又は医薬組成物、並びに栄養補給剤も開示する。化合物は、食後ブドウ糖レベルの安定化を必要とする患者に有益であろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物含有食物のグリセミック指数の調節に有用な化合物に関する。より詳細には、本発明は、グリセミック指数低下剤として有用な、サトウキビから単離されたフラボノイド及びフラボノイド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセミック指数(GI)は、血中ブドウ糖レベルに対する飲食物中の炭水化物の効果の評価基準である。消化中に急速に分解される炭水化物は、ブドウ糖を血流中に急速に放出するため高いGIを有し、逆に、ゆっくりと分解する炭水化物は、ブドウ糖を序々に血流中に放出し、低いGIを有する。
【0003】
食物のGI評価を決定するために、10〜50グラムの炭水化物を含有する食物の測定部分を、一晩の断食後、10人の健康な人々に供給する。その後二時間に亘って、15〜30分の間隔を置いて指先の血液サンプルを採取する。これらの血液サンプルを使用して、二時間の血糖応答曲線を構成する。曲線下面積(AUC)を計算して、試験食物の摂取後の血中ブドウ糖レベルにおける総上昇を反映させる。試験食物のAUCを基準食物(通常、ブドウ糖又は精白パン)のAUCで除算し、100を乗算することによりGI評価(%)を計算する。55以下のGI値は、「低」と見なされ、56〜69は「中」、70以上は「高」と見なされる。
【0004】
より低いグリセミック指数は、より遅い食物の炭水化物の消化吸収を示唆し、より低いインスリン必要量、より良好な長期間の血中ブドウ糖制御、及び血中脂質における低下と同等であると考えられている。長年に亘り低GI食をとってきた個人は、2型糖尿病、及び白内障のような関連状態の両方、並びに冠動脈性心疾患の発症のリスクが有意に低いことが示されている。食後の高い血中ブドウ糖レベル又は反復される血糖の「急上昇」は、これらの疾病を、血管系に対する酸化障害の増大により、またインスリンレベルの直接的な上昇を介して促進し得る。食後高血糖は、主に糖尿病に関連したリスク因子と見なされてきたが、非糖尿病集団においてアテローム性動脈硬化症及び他の状態のリスクも増大させると現在では考えられている。
【0005】
低GI食は、それらの遅い消化吸収により、血糖及びインスリンレベルの緩やかな上昇を生じ、糖尿病(1型及び2型の両方)を有する人々のブドウ糖及び脂質レベルの両方を改善し、また低GI食は、食欲を制御し、空腹を遅延させることを助けるため、体重管理に有益であることが示されている。低GIダイエットはまた、インスリンレベル及びインスリン抵抗性を低下させる。
【0006】
ヒト体内で炭水化物の分解を担っている主要な酵素は、α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼであり、これらの酵素の一方又は両方を阻害することは、食物のGIの低下をもたらし得る。アカルボースは抗糖尿病薬であり、α−グルコシダーゼの公知の阻害剤である。これは、複合体炭水化物の消化を遅延させ、食後ブドウ糖レベルの急激な上昇を防止する。
【0007】
特許文献1は、炭水化物含有食物のGI低下におけるフラボノイドのルテオリン、アピゲニン及びトリシンの使用を記載している。これらの化合物は、α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼの両方に対して様々な程度の適度な活性を示し、トリシンの使用は、食後ブドウ糖レベルを低下させる能力を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際出願PCT/AU2003/001001号
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、炭水化物含有食物のグリセミック指数(GI)の低下に有効性を示す更なる化合物の必要性を確認した。
【0010】
第一の態様において、本発明は、唯一の形態又は実際に最も広い形態である必要はないが、グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式Iの化合物、及び/又はその塩に存在し:

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
は、水素、CHOH、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル、糖部分であり、又はRは、以下の構造で表されてもよく、

式中、R13及びR14は、独立してアルキル、アリール、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アルカノン、アルカノイル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケノイル又はカルボアルコキシから選択され;
Xは、存在する場合、酸素、硫黄、窒素、アルキル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキレン又はアルケニルであり;
15、R16、R17、R18及びR19は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され、
点線は、各々単結合を表すことがある。
【0011】
本発明の第一の態様の一実施態様は、グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式IIの化合物、及び/又はその塩に存在し:

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
13及びR14は、独立してアルキル、アリール、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アルカノン、アルカノイル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケノイル又はカルボアルコキシから選択され;
Xは、酸素、硫黄、窒素、アルキル、アルキレン又はアルケニルであり;
15、R16、R17、R18及びR19は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
20は、水素、酸素、硫黄、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル又はO−アルケノイルから選択され;
点線は、各々単結合を表すことがある。
【0012】
本発明の第一の態様の別の実施態様は、グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式IIIの化合物、及び/又はその塩に存在し:

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19は、独立して水素、ヒドロキシル、カルボキシル、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル又は糖部分から選択され;
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19は、独立して、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19と組み合わせて以前に定義したように考慮され;
点線は、各々単結合を表すことがある。
【0013】
本発明の第一の態様の更なる別の実施態様は、グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式IV:

の化合物、及び/又はその塩に存在する。
【0014】
本発明の尚更なる別の実施態様は、グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式V:

の化合物、及び/又はその塩に存在する。
【0015】
式I〜Vに示した構造は、全ての立体異性体を想定している。
【0016】
好ましい一実施態様において、第一の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルからなる群より選択される。
【0017】
式I〜Vの化合物は、例えば、一つ以上のエステル部分を有するプロドラッグの形態で処方及び/又は投与されてもよい。
【0018】
α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼは、哺乳動物のα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼが好ましい。
【0019】
α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼは、ヒトのα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼがより好ましい。
【0020】
本発明の第二の態様は、化合物がトリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−(エリトロ−β−グアイアシルグリセリル)エーテル又はトリシン−4’−O−(トレオ−β−グアイアシルグリセリル)エーテルではない、式Iの化合物及び/又はその塩を提供する。
【0021】
本発明の第三の態様は、化合物がトリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル及び/又はトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルである、式Iの化合物及び/又はその塩を提供する。
【0022】
本発明の第四の態様は、第一、第二又は第三の態様の一種以上の化合物を単離する方法を提供し、該方法は、植物、植物部分又は植物誘導体から前記一種以上の化合物を抽出するステップを含む。
【0023】
一実施態様において、植物は、別名イネ科(Gramineae)としても公知のイネ科(Poaceae)に属する。
【0024】
一実施態様において、属は、ワセオバナ属(Saccharum)、エリアンサス属(Erianthus)、ススキ属(Miscanthus)、Sclerostachya属、Narenga属、ササ属(Sasa)、Hyparrhenia属、オカヒジキ属(Salsola)、カラスムギ属(Avena)、ヒカゲノカズラ属(Lycopodium)及びこれらの種の雑種からなる群より選択される。
【0025】
一実施態様において、種は、サトウキビ(Saccharum officinarum)、サトウキビ野生種(Saccharum spontaneum)、クマザサ(Sasa veitchii(Carr.)Rehder)、Hyparrhenia hirta(L)Stapf、Salsola collina、エンバク(Avena sativa L.)及びLycopodium japonicumからなる群より選択される。
【0026】
植物部分は、果実、種子、樹皮、葉、茎、花、根及び木の部分を含み得る。
【0027】
好ましくは、抽出物は、植物の葉及び/若しくは茎から、又は糖蜜、液糖、畑屑、生長点及び絞り粕等の圧搾前及び圧搾後廃棄物流を含むサトウキビ加工廃棄物流等の植物誘導体から得ることができる。
【0028】
本発明の第五の態様は、第四の態様の方法に従って単離された第一の態様の化合物に存在する。
【0029】
本発明の第六の態様は、第一、第二、第三及び/又は第五の化合物を投与するステップを含む、フラボノイド又はフラボノイド誘導体に応答する疾病、疾患又は状態の処置方法に存在する。
【0030】
好適には、疾病、疾患又は状態は、食後血中ブドウ糖レベルの低下、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害に応答する。
【0031】
処置されるべき疾病、疾患又は状態は、肥満症、糖尿病、並びに網膜変性症、心血管系疾患、潰瘍及び腎不全等の糖尿病関連状態からなる群より選択されることが好ましい。
【0032】
本発明の第七の態様は、第一、第二、第三及び/若しくは第五の態様の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩と、栄養成分とを含有する栄養組成物を提供する。
【0033】
第一の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルからなる群より選択されてもよい。
【0034】
栄養組成物は、更に食物添加剤を含有してもよい。
【0035】
食物添加剤は、糖蜜、ポリフェノール、インゲンマメ、及びファセオラミン含むインゲンマメ抽出物、繊維添加剤、並びに酸からなる群より選択されることが好ましい。
【0036】
栄養成分は、炭水化物含有食物である。
【0037】
本発明の第八の態様は、疾病、疾患又は状態の処置又は予防のための、有効量の第一、第二、第三及び/若しくは第五の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る担体、希釈剤及び/又は賦形剤とを含有する医薬組成物を提供する。
【0038】
医薬組成物は、二種以上の第一、第二、第三及び/又は第五の態様の化合物を含有してもよい。
【0039】
二種以上の化合物は、任意の比にあってもよい。
【0040】
一種以上の第一の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルからなる群より選択されてもよい。
【0041】
本発明の第九の態様は、有効量の第一、第二、第三及び/若しくは第五の態様の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩と、添加剤とを含有する栄養補給剤を提供する。
【0042】
栄養補給剤は、カプセル剤、錠剤、散剤、丸剤、液剤、飲料又は顆粒を含む、消化可能な固体又は液体形態で調製されてもよい。
【0043】
添加剤は、充填剤、結合剤、湿潤剤、賦形剤、加工助剤、ビタミン及び無機物からなる群より選択されてもよい。
【0044】
本発明の第十の態様は、疾病、疾患又は状態の処置又は予防のための医薬の製造における第一、第二、第三及び/若しくは第五の態様の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩の使用を提供する。
【0045】
上記の個々のセクションに言及された本発明の様々な特徴及び実施態様は、変更すべきところは変更して、適宜他のセクションに適用される。その結果、一セクションにて特定された特徴は、適宜、他のセクションにて特定された特徴と組み合わされてもよい。
【0046】
本明細書において、用語「を含む」、「を含んでいる」又は類似する用語は、非排他的な包含を意味することが意図され、従って、要素のリストを構成する生成物、組成物、方法、システム又は装置は、それらの要素のみを含むのではなく、列挙されていない他の要素も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】サトウキビ葉のメタノール抽出物から単離された所定の化合物と、いくつかの対照化合物との構造。
【図2】サトウキビ(Saccharum officinarum)葉のメタノール抽出物の残渣からの、化合物5〜8を含む所定の化合物の単離の概略図。
【図3】化合物7及び8に関する、有意な長距離異核多重結合相関の図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、α−アミラーゼ及び/又はα−グルコシダーゼ酵素の阻害剤としての驚く程高い有効性レベルを示すフラボノイド誘導体の発見から生じた。これらの化合物は、グリセミック指数(GI)低下剤として使用されて、血中ブドウ糖レベルを制御するのに好適である。
【0049】
第一の態様において、本発明は、唯一の形態又は実際に最も広い形態である必要はないが、上記に記載したように、グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式Iの化合物、及び/又はその塩に存在し:

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル、糖部分であり、又はRは、以下の構造で表されてもよく、

式中、R13及びR14は、独立してアルキル、アリール、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アルカノン、アルカノイル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケノイル又はカルボアルコキシから選択され;
Xは、存在する場合、酸素、硫黄、窒素、アルキル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキレン又はアルケニルであり;
15、R16、R17、R18及びR19は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され、
点線は、各々単結合を表すことがある。
【0050】
本明細書で使用される用語「グリセミック指数低下剤」は、炭水化物含有食物と併せて適切に投与された後、対象における食後血中ブドウ糖レベルを、食物単独で投与した後に得られるそのレベルと比較して低下させることが可能な化合物を指す。
【0051】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容され得る塩」は、無機塩基又は有機塩基及び無機酸又は有機酸を含む、薬学的に許容され得る毒性のない塩基又は酸から調製される塩等の、全身又は局所投与に関して毒性学的に安全な塩を指す。薬学的に許容され得る塩は、アルカリ及びアルカリ土類、アンモニウム、アルミニウム、鉄、アミン、グルコサミン、塩化物、硫酸塩、スルホン酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩(bitarate)、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ナプシル酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、テレフタル酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ピペラジン、ペクチン酸塩(pectinate)、並びにS−メチルメチオニン塩等を含む群より選択されてもよい。
【0052】
用語「アルキル」は、1〜20個の炭素原子を有する、場合により置換された線状又は分枝状の炭化水素基を指す。必要に応じて、アルキル基は特定の数の炭素原子を有してもよく、例えばC〜Cアルキルであり、これは線状又は分枝状配置において1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含む。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−及びt−ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2−エチルブチル、3−エチルブチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシルが挙げられる。
【0053】
用語「アルキレン」は、アルカンジイルとしても公知の、両端が置換された飽和脂肪鎖を指す。非限定的な例としては、−CH−、−CHCH−及び−CHCHCH−が挙げられる。
【0054】
用語「アルケニル」は、2〜20個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、場合により置換された不飽和の線状又は分枝状の炭化水素基を指す。必要に応じて、アルケニル基は特定の数の炭素原子を有してもよく、例えばC〜Cアルケニルであり、これは線状又は分枝状配置において2、3、4、5又は6個の炭素原子を含む。アルケニル基の非限定的な例としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、s−及びt−ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプタ−1,3−ジエン、ヘキサ−1,3−ジエン、ノナ−1,3,5−トリエン等が挙げられる。
【0055】
用語「アルキニル」は、2〜20個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する、場合により置換された不飽和の線状又は分枝状の炭化水素基を指す。必要に応じて、アルキニル基は特定の数の炭素原子を有してもよく、例えばC〜Cアルキニル基は、線状又は分枝状配置において2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する。アルキニル基の非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル(penrynyl)、ヘキシニル等が挙げられる。
【0056】
「アリール」は、各環に7個迄の原子を有し、少なくとも1つの環が芳香族であるC〜C14員の単環、二環又は三環式の炭素環系を意味する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル及びビフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールは、1〜3個のベンゼン環を含んでもよい。二つ以上の芳香環が存在する場合、環は共に縮合されていてもよく、従って隣接する環は共通の結合を共有する。
【0057】
「アルカノイル」は、1〜20個の炭素原子を有する直線状又は分岐状の形態のアシル部分を意味する。アルカノイル基の例としてはアセチル、プロピオニル(propionoyl)、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル及びヘキサノイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「アルケノイル」は、アルケニルが上記に定義された通りである「アルケニルカルボニル」を意味する。アルケノイル基の例としては、ペンテノイル、ヘキセノイル又はヘプテノイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
用語「カルボアルコキシ」は、アルキルが上記に見出される定義と同一の定義を有する、カルボン酸のアルキルエステルを意味する。例としては、カルボメトキシ、カルボエトキシ、カルボイソプロポキシ等が挙げられる。
【0060】
用語「アリールアルキル」は、上記に定義したような、置換又は非置換であってもよいアリール基で置換された、例えば−CH−等のアルキレンを定義する。「アリールアルキル」の例としては、ベンジル、フェネチレン等が挙げられる。
【0061】
「アルカノン」は、線状、分岐状又は環状配置において2〜12個の炭素原子を有するケトン置換基を指し、該置換基は、場合により、各々の出現においてハロゲン、シアノ又はニトロから独立して選択される1〜5個の置換基で置換されてもよい。
【0062】
用語「ヒドロキシアルキル」は、1〜12個の炭素原子を有し、更に主炭素鎖上及び/又は側鎖上に少なくとも一つのヒドロキシル基を有する、分岐状であってもよい脂肪族基を指す。ヒドロキシアルキル基は、単なる例としてCHOH、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−エチル、1−ヒドロキシメチル−2−メチル−プロピル及び2−ヒドロキシ−プロピルを含む。
【0063】
第一の態様の好ましい一実施態様において、化合物は、式IVの化合物、及び/又はその塩である。

【0064】
第一の態様の好ましい別の実施態様において、化合物は、式Vの化合物、及び/又はその塩である。

【0065】
一実施態様において、第一の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテルである。更なる実施態様において、第一の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテルである。また更なる実施態様において、第一の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルである。また尚更なる実施態様において、第一の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルである。これらの化合物のα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼ酵素に対する活性データは、表1に示されており、これらの化合物は化合物7(エリトロp−クマロイル形態)、8(トレオp−クマロイル形態)、5(トレオO−メチル形態)及び6(エリトロO−メチル形態)として標識されている。
【0066】
本発明は、グリセミック指数低下剤、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての化合物、又はその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。これらの化合物は、一つ以上のキラル中心又は不斉中心を含んでもよく、そのようなキラル中心(一つ又は複数個)が存在する場合、本発明は、特に示されない限り、ラセミ混合物と、純粋な立体異性体(即ち個々のエナンチオマー又はジアステレオマー)と、それらの異性体の、立体異性体に富んだ混合物とを対象とし得る。特定の立体異性体が示される場合、当業者は、特に示されない限り、組成物全体としての有用性が他の立体異性体の存在により排除されなければ、本発明の組成物中に微量のそれらの他の立体異性体が存在してもよいことを理解するであろう。
【0067】
従って、本発明は、例えば約90%eeを越え、例えば約95%又は97%ee等、又は99%eeを越える、一つ以上の不斉中心にて実質的に純粋な異性体形態、及びその混合物を含む。そのような異性体は、天然の供給源から単離することにより、又は例えばキラル中間体を使用した不斉合成により、又はキラル分割により得ることができる。
【0068】
加えて、特に明記しない限り、適用できる場合、第一の態様の化合物の全てのシス/トランス又はE/Z異性体(幾何異性体)、エリトロ及びトレオ形態、互変異性形態及び位置異性形態が本発明の範囲内に含まれる。
【0069】
好ましいエナンチオマーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及びキラル塩の形成と結晶化を含む当業者に公知の任意の方法により、ラセミ混合物から単離することができ、又は本明細書に記載した方法により調製することができる。例えば、それらの開示全体が参照により本明細書に組みこまれる、Jacques,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron,33:2725(1977);Eliel,E.L.Stereochemistry of Carbon Compounds,(McGraw−Hill,NY,1962);Wilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions,p.268(E.L.Eliel,Ed.,University of Notre Dame Press,Notre Dame,Ind.1972)を参照されたい。
【0070】
立体異性体の絶対立体化学は、結晶性生成物、又は誘導体化された結晶性中間体のX線結晶学等の当技術分野にて周知の方法により、必要であれば既知の絶対立体配置を有する不斉中心を含む試薬を使用して、決定することができる。
【0071】
所望であれば、化合物のラセミ混合物を個々のエナンチオマーが単離されるように分離してもよい。分離は、化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物と結合させてジアステレオマー混合物を形成した後、個々のジアステレオマーを分別結晶又はクロマトグラフィー等の標準的な方法により分離する等、当技術分野にて周知の方法により行うことができる。結合反応は、多くの場合、エナンチオマー的に純粋な酸又は塩基を使用した塩の形成である。次いで、加えたキラル残基を切断することにより、ジアステレオマー誘導体を純粋なエナンチオマーに変換し得る。化合物のラセミ混合物は、キラル固定相を使用したクロマトグラフ法により直接分離することもでき、この方法は当技術分野にて周知である。
【0072】
代替的に、既知の立体配置を有する、光学的に純粋な出発物質又は試薬を使用した立体選択的合成により、当技術分野にて周知の方法により化合物の任意のエナンチオマーを得ることができる。
【0073】
用語「キラル」は、鏡像パートナーと重ね合わせることができない性質を有する分子を指す一方、用語「アキラル」は、鏡像パートナー上に重ね合わせることができる分子を指す。
【0074】
用語「立体異性体」は、同一の化学構造を有するが、空間における原子又は基の配置に関して異なる化合物を指す。
【0075】
「ジアステレオマー」は、二つ以上のキラリティーの中心を有し、分子が互いに鏡像ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理的性質、例えば融点、沸点、スペクトル的性質及び反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、例えば電気泳動法及びクロマトグラフィー等の高分解能分析手順下で分離することができる。
【0076】
「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である、化合物の二つの立体異性体を指す。
【0077】
本明細書で使用する立体化学の定義及び慣例は、一般にS.P.Parker,Ed.,McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(1984) McGraw−Hill Book Company,New York;及びEliel,E.and Wilen,S.,Stereochemistry of Organic Compounds(1994)John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに従う。
【0078】
用語「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」は、光学活性を有さない、二つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。
【0079】
隣接する立体中心を有する非環式構造、又は部分構造の相対的な立体配置を指定するのに使用される二つの共通の接頭辞は、「トレオ」及び「エリトロ」である。分子がフィッシャー投影式の形態で描かれた際、エリトロ異性体は二つの同一の置換基を同一側に有し、トレオ異性体はそれらを対向側に有する。
【0080】
第一の態様の化合物は、食後高血糖を低下させることができ、従って食後血中ブドウ糖レベルの低下、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害に応答する任意の状態の処置に有用であろう。
【0081】
処置されるべき疾病、疾患又は状態は、非常に多数の状態から選択することができ、そのいくつかの非限定的な例は、肥満症、糖尿病、並びに網膜変性症、心血管系疾患、潰瘍及び腎不全を含む多数の糖尿病関連状態である。他の糖尿病関連状態は、文献にて周知である。
【0082】
化合物は、摂取される炭水化物含有食と同時に投与されてもよい。代替的に、化合物は炭水化物含有食の摂取前に投与されてもよい。化合物はまた、炭水化物含有食の摂取の後であっても、所望のGI低下効果を有し得る時間枠内で、即ち、炭水化物が実質的に完全に消化される前に投与されてもよい。
【0083】
第一の態様の化合物は、α−アミラーゼ及び/又はα−グルコシダーゼの阻害剤であり得る。
【0084】
これらの酵素は、炭水化物消化に関与する主要な酵素として認識されている。
【0085】
α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼは、哺乳動物のα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼが好ましい。
【0086】
α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼは、ヒトのα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼがより好ましい。
【0087】
ヒトα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼは、二つ以上のイソ型を含んでもよく、その場合、少なくとも一つのイソ型が本発明の化合物により阻害されるであろう。
【0088】
表1は、サトウキビのメタノール抽出物から単離された化合物5〜8の、ブタα−アミラーゼ、パン酵母α−グルコシダーゼ及びラット腸管α−グルコシダーゼに対する阻害活性をいくつかの対照と共に示す。列ヘッダー「CMP」は、化合物番号を表す。化合物5〜8は、サトウキビのメタノール抽出物から単離された本発明の化合物であった一方、化合物18及び19(アピゲニン及びルテオリン)、並びにアカルボース及びフコイダンは、購買された対照であった。アカルボースはα−グルコシダーゼ酵素を強力に阻害することが公知の抗糖尿病薬である一方、フコイダンは酵母α−グルコシダーゼの阻害剤である。化合物4(トリシン)は公知であり、サトウキビ葉及びサトウキビ圧搾加工廃棄物流から単離された、商業的に重要なグリセミック指数低下化合物である。
【0089】
表1から、各々トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル及びトリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテルである化合物7及び8が、トリシン、ルテオリン及びアピゲニン等の公知のGI低下剤と比較して、驚くべき高いレベルの有効性を示すことが明らかである。特に、化合物7及び8は、トリシン(4)の50〜100倍のα−アミラーゼに対する阻害レベルを示す。
【0090】
本発明の化合物は、α−アミラーゼ及び/又はα−グルコシダーゼ酵素に対して、トリシンに関して観察された活性の少なくとも3倍の活性を示し得、その活性は、トリシンに関して観察された活性の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140又は150倍であり得る。
【0091】
化合物7は、ブタα−アミラーゼに対して2.0μMのIC50値を示し、200μMにおいて、トリシンと比較して高いラット腸管α−グルコシダーゼに対するパーセント阻害も示した。従って、この化合物は、炭水化物消化に関与する主要な酵素の両方に対して卓越した阻害レベルを示すため、好適なGI低下剤である。
【0092】
化合物8は、ブタα−アミラーゼに対して化合物7よりも更に高い有効性を示し、ラット腸管α−グルコシダーゼに対して、トリシンよりも僅かにのみ低い活性レベルを有した。この化合物は、トリシンのほぼ110倍、アカルボースの130倍のブタα−アミラーゼに対する活性レベルを示し、かつラット腸管α−グルコシダーゼの明らかな阻害レベルを示すため、有益なGI低下剤に相当する。
【0093】
化合物7及び8によって示されるように、第一の態様の化合物は、α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼ酵素に対して異なる有効性の程度を示す場合があることが予測される。化合物が、これら酵素の少なくとも一つを阻害するのに有効である限り、GI低下剤として有用であり得る。
【0094】
任意の特定の理論に束縛されるものではないが、化合物7及び8の効能は、酵素結合ポケット内の異なるアミノ酸に結合する遊離ヒドロキシル基を含む三つの芳香族部分(フラボノイドコアA−環、グアイアシルグリセリル基及びp−クマロイル基)の結果であると仮定される。
【0095】
新規な化合物5及び6も、試験した一種以上の酵素に対して強い活性レベルを有し、特に化合物5及び6は、ブタα−アミラーゼに対してトリシンと比較して有意に改善された活性、即ち3〜4倍の増大を示した。化合物7及び8ほど有効ではないが、これら二種の化合物も、単独で又は他の化合物との組み合わせにて、グリセミック指数低下剤として、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤として有用であろう。
【0096】
サトウキビのメタノール抽出物から単離された化合物5〜8の構造を、図1に示す。化合物5〜8は、二つの異なる立体異性体化合物のトレオ及びエリトロジアステレオマーからなる、フラボノリグナンとして公知のフラボノイド誘導体である。以前論じたように、p−クマロイル基を示している化合物7及び8は、α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼ酵素の両方に対して最大の有効性を示す。
【0097】
本発明の第二の態様は、化合物がトリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−(エリトロ−β−グアイアシルグリセリル)エーテル又はトリシン−4’−O−(トレオ−β−グアイアシルグリセリル)エーテルではない式Iの化合物及び/又はその塩を提供する。
【0098】
第三の態様において、本発明は、化合物がトリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(表1の化合物5)及び/又はトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(表1の化合物6)である式Iの化合物及び/又はその塩を提供する。これらの本発明の化合物は、新規な化合物である。
【0099】
本発明の化合物は、植物、植物部分、陸生生物、陸生生物部分、海洋生物及び/若しくは海洋生物部分からの単離により、又は単離された化合物の誘導体化により、又は関連化合物の誘導体化により、又は合成により得ることができる。合成は、全合成又は半合成であってもよい。化合物は、植物又は植物部分からの単離により得られることが好ましい。
【0100】
本発明の第四の態様は、一種以上の第一、第二又は第三の態様の化合物を単離する方法を提供し、該方法は、前記一種以上の化合物を、植物、植物部分又は植物誘導体から抽出するステップを含む。
【0101】
一実施態様において、植物は、別名イネ科(Gramineae)としても公知のイネ科(Poaceae)に属する。
【0102】
更なる実施態様において、植物の属は、ワセオバナ属(Saccharum)、エリアンサス属(Erianthus)、ススキ属(Miscanthus)、Sclerostachya属、Narenga属、ササ属(Sasa)、Hyparrhenia属、オカヒジキ属(Salsola)、カラスムギ属(Avena)、ヒカゲノカズラ属(Lycopodium)及びこれらの種の雑種からなる群より選択される
【0103】
別の実施態様では、植物の種は、サトウキビ(Saccharum officinarum)、サトウキビ野生種(Saccharum spontaneum)、クマザサ(Sasa veitchii(Carr.)Rehder)、Hyparrhenia hirta(L)Stapf、Salsola collina、エンバク(Avena sativa L.)及びLycopodium japonicumからなる群より選択される。
【0104】
植物部分は、果実、種子、樹皮、葉、茎、花、根及び木の部分を含み得る。
【0105】
好ましくは、抽出物は、植物の葉及び/若しくは茎から、又は糖蜜、液糖、畑屑、生長点及び絞り粕等の圧搾前及び圧搾後廃棄物流を含むサトウキビ加工廃棄物流等の一種以上の植物誘導体から得ることができる。
【0106】
抽出物がサトウキビ植物の葉から得られる場合、バイオマスは最初に、例えば非限定的にメタノール及び/又はジクロロメタン(DCM)等の溶媒による溶媒抽出に供されてもよい。次いで、抽出物が例えば、シリカフラッシュカラム又は逆相分離方法による分離に供され得る。次いで、画分が分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により更に分離されてもよく、そして分析HPLCにより分析され、サンプル中に見出される化合物の保持時間に従って集められてもよい。単離方法の更なる詳細は、実施例にて論じる。
【0107】
本発明の他の化合物は、植物又は植物部分から上記に概略したように単離した第一の態様の化合物を誘導体化することにより得ることができる。
【0108】
天然化合物の誘導体は、当技術分野にて公知の技術により得ることができる。例えば、ヒドロキシ基は、クロム酸、ジョーンズ試薬、過マンガン酸カリウム(KMnO)、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)等の過酸、又はジメチルジオキシラン(DMDO)及びメチル(トリフルオロメチル)ジオキシラン(TFDO)等のジオキシラン等の酸化剤に暴露することによりケトン、アルデヒド又はカルボン酸に酸化され得る。酸化剤は分子内の他の官能基も酸化され、又は酸化されないように選択されてもよい。例えば、第一級アルコールは、第二級アルコールの存在下、RuCl(PPh−ベンゼン等の試薬を用いてアルデヒド又はカルボン酸に選択的に酸化され得る。第二級アルコールは、第一級アルコールの存在下、Cl−ピリジン又はNaBrO−硝酸セリウムアンモニウムを用いてケトンに選択的に酸化され得る。アルコールは、二重及び三重結合の存在下、ジョーンズ試薬を用いて、隣接する立体中心におけるエピマー化を有することなく酸化され得る。代替的に、選択される試薬は選択性がより低いものであってもよく、その結果、二つ以上の官能基において酸化される。
【0109】
ヒドロキシ基は、例えばエーテル化又はアシル化によっても誘導体化され得る。例えば、エーテルは、塩基の存在下でアルコキシドイオンを形成し、このアルコキシドを適切なハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル又はハロゲン化アリールと反応させることにより調製され得る。同様に、アシル化は、アルコキシドイオンを形成し、適切なカルボン酸又は活性化カルボン酸(例えば無水物等)と反応させることにより達成され得る。
【0110】
アシル基は、当技術分野にて公知のように、酸又は塩基加水分解により加水分解されてアルコールを提供し得る。
【0111】
弱塩基と、塩化シリル試薬、例えばテトラヒドロフラン(THF)中のMeSiCl及びトリエチルアミン、又はTHF中のMeSiNHCOSiMe等の化学物質を用いて、ヒドロキシ基上にシリル基を導入してシリルエーテルを提供してもよい。
【0112】
スルホネートは、好適なスルホネート基との反応により、ヒドロキシ上に容易に導入され得る。例えば、メタンスルホネートは、ヒドロキシ基をジクロロメタン中で塩化メシル(MsCl)及びトリエチルアミンで処理することにより導入され得る。トシレート基は、ヒドロキシ基を塩化トシル(TsCl)及びピリジンと反応させることにより導入され得る。アリルスルホネートは、ヒドロキシ基をジクロロメタン中で塩化アリルスルホニル及びピリジンと反応させることにより導入され得る。
【0113】
α−不飽和ケトンを含むケトンは、水素化リチウムアルミニウム及び他の金属水素化物等の還元剤により、二重結合を還元することなく第二級アルコールに還元され得る。
【0114】
二重結合及び三重結合は、触媒による還元、例えばH/Pdを用いて単結合に還元され得る。二重結合はまた、例えばメタ−クロロ過安息香酸(mCPBA)等の過酸、又はジメチルジオキシラン(DMDO)等のジオキシラン等の酸化剤を用いてエポキシドに酸化され得る。二重結合はまた、付加反応に供されて、ハロ基、ヒドロキシ又はアルコキシ基及びアミン等の置換基が導入され得る。
【0115】
当業者は、例えば合成方法体系に関連した教科書を参照することにより、単離された化合物の誘導体を得るための好適な条件を決定することができ、前記教科書の非限定的な例は、Smith M.B.and March J.,March’s Advanced Organic Chemistry,Fifth Edition,John Wiley & Sons Inc.,2001及びLarock R.C,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers Ltd.,1989である。更に、官能基の選択的操作は、他の官能基の保護を必要とし得る。望ましくない副反応を防止するための好適な保護基は、Green and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons Inc.,3rd Edition,1999に提供されている。
【0116】
本発明の化合物はまた、市販の出発物質から合成されてもよい。
【0117】
本発明の第五の態様は、第四の態様の方法に従って単離された、第一、第二又は第三の態様の化合物に存在する。
【0118】
本発明の第六の態様は、有効量の第一、第二、第三及び/又は第五の態様の化合物を投与するステップを含む、フラボノイド又はフラボノイド誘導体に応答する疾病、疾患又は状態の処置方法に存在する。
【0119】
処置されるべき疾病、疾患又は状態は、食後高血糖の影響により引き起こされ、又は該影響により悪化され、又は該影響に何らかの関係を有し、食後血中ブドウ糖レベルの低下、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害に応答するであろう。
【0120】
処置されるべき疾病、疾患又は状態は、肥満症、冠動脈性心疾患、糖尿病、並びに網膜変性症、心血管系疾患、潰瘍及び腎不全等の糖尿病関連状態からなる群より選択されることが好ましい。
【0121】
第七の態様において、本発明は、第一、第二、第三及び/若しくは第五の態様の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩と、栄養成分とを含有する栄養組成物を提供する。
【0122】
栄養組成物は、一種以上の食物添加剤、例えば消化を遅延させる繊維添加剤、又は胃が空になる速度を遅延させる酢若しくはレモン汁等の酸を更に含有して、食事のGIの低下を補助してもよい。
【0123】
食物添加剤は、糖蜜、ポリフェノール、インゲンマメ、及びファセオラミン(phaseolamine)を含むインゲンマメ抽出物、繊維添加剤、並びに酸からなる群より選択されることが好ましい。
【0124】
食物添加剤はまた、ビタミン、アミノ酸栄養補給剤、消化性栄養補給剤等の認められている健康栄養補給剤を含有してもよい。
【0125】
栄養組成物は、後に活性化され、又は摂取後にそれらの活性形態に変換される、第一の態様の化合物の不活性形態又はプロドラッグ形態を含有してもよい。
【0126】
第一の態様の化合物は、実質的に純粋な形態で提供され、又は他の潜在的に有益な化合物を含有するサトウキビ葉抽出物の一部として提供されてもよい。
【0127】
栄養成分は、炭水化物含有食物を含むであろう。好ましくは、栄養成分は、低下することが所望される中〜高GIを有する炭水化物含有食物、例えば精白パン、白米、ジャガイモ及び高糖含有朝食シリアルを含むであろう
【0128】
栄養組成物中の第一、第二、第三及び/又は第五の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル(化合物7)、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル(化合物8)、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(化合物5)及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(化合物6)からなる群より選択されることが好ましい。
【0129】
本発明の第八の態様は、疾病、疾患又は状態の処置又は予防のための、有効量の第一、第二、第三及び/若しくは第五の態様の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩、並びに薬学的に許容され得る担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0130】
医薬組成物は、二種以上の第一、第二、第三及び/又は第五の態様の化合物を含有してもよい。一種以上の第一、第二、第三及び/又は第五の態様の化合物は、一、二、三、四、五、六、七、八、九又は十種の化合物であってもよい。組成物が二種以上の化合物を含有する場合、化合物は任意の比にあってもよい。
【0131】
医薬組成物中の第一、第二、第三及び/又は第五の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル(化合物7)、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル(化合物8)、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(化合物5)及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(化合物6)からなる群より選択されることが好ましい。
【0132】
第一、第二、第三及び/又は第五の態様の化合物は、処置の対象である疾病、疾患又は状態を予防、阻害又は寛解するのに十分な量で存在する。好適な剤形、及び第一の態様の化合物と該化合物を含有する医薬組成物との割合は、当業者により容易に決定され得る。
【0133】
処置されるべき疾病、疾患又は状態は、食後高血糖の影響により引き起こされ、又は該影響により悪化され、又は該影響に何らかの関係を有し、食後血中ブドウ糖レベルの低下、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害に応答するであろう。
【0134】
処置されるべき疾病、疾患又は状態は、肥満症、冠動脈性心疾患、糖尿病、並びに網膜変性症、心血管系疾患、潰瘍及び腎不全等の糖尿病関連状態からなる群より選択されることが好ましい。
【0135】
剤形としては、錠剤、分散剤、縣濁剤、注射剤、液剤、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤、坐剤、エアゾール剤、経皮パッチ等が挙げられる。これらの剤形は、医薬組成物の制御放出のために特に設計され、又は変更された注射又は移植デバイスも含み得る。
【0136】
治療薬の制御放出は、治療薬を、例えばアクリル樹脂、蝋、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸及びポリグリコール酸を含む疎水性ポリマーと、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の所定のセルロース誘導体と共に被覆することにより達成され得る。加えて、制御放出は、他のポリマーマトリクス、リポソーム及び/又はミクロスフィアを使用して作用されてもよい。
【0137】
好適には、医薬組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤、又は許容され得る賦形剤を含有する。「薬学的に許容され得る賦形剤」とは、全身投与にて安全に使用できる固体又は液体充填剤、希釈剤又はカプセル化物質を意味する。特定の投与経路に応じて、当技術分野にて公知の多様な担体が使用され得る。これらの担体又は賦形剤は、糖、澱粉、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張食塩水、及び発熱物質を含有しない水を含む群より選択されてもよい。
【0138】
任意の好適な投与経路を用いて、本発明の医薬組成物をヒト又は非ヒトに提供することができる。例えば、経口、直腸内、非経口、舌下、頬内、静脈内、関節内、筋内、皮内、皮下、吸入、眼内、腹腔内、脳室内、経皮等を用いることができる。
【0139】
本発明の医薬組成物は、経口投与されることが好ましい。
【0140】
投与に好適な本発明の医薬組成物は、各々が所定の量の一種以上の薬学的に活性な本発明の化合物を、粉末若しくは顆粒として、又は水性溶液、非水性溶液、水中油エマルション若しくは油中水エマルションの状態の溶液若しくは縣濁液として含む、バイアル、カプセル、薬袋又は錠剤等の個別の単位で存在してもよい。そのような組成物は任意の薬学の方法により調製することができるが、全ての方法は、一種以上の薬学的に活性な本発明の化合物を、一種以上の必須成分を構成する担体と結び付けるステップを含む。
【0141】
一般に、組成物は、本発明の薬剤を、液体担体又は微粉化固体担体又は両方と、均一かつ密接に混合した後、必要であれば、生成物を所望の体裁に成形することにより調製される。散剤では、担体は、微粉化活性成分との混合物である微粉化固体である。
【0142】
錠剤では、活性成分を、必要な結合能力を有する担体と好適な割合で混合し、所望の形状及びサイズに圧縮する。
【0143】
散剤及び錠剤は、5〜10から約70パーセントの活性化合物を含有し得る。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。
【0144】
錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びロゼンジは、経口投与に好適な固体形態として使用されてもよい。
【0145】
液体形態の製剤としては、液剤、縣濁液、及び乳剤、例えば、水又は水−プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射液製剤は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液として処方されてもよい。従って、本発明による化合物は、(例えば、注射、例えばボーラス注射又は連続注入による)非経口投与用に処方されてもよく、添加された保存剤を含むアンプル、予備充填注射器、低用量注入器(small volume infusion)又は多回投与用容器内の単位剤形で提供されてもよい。
【0146】
組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の縣濁液、溶液又はエマルション等の形態を有してもよく、また懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤などの処方剤を含有してもよい。代替的に、活性成分は、滅菌固体の無菌単離により、又は溶液から凍結乾燥により得られた粉末形態であってもよく、使用前に好適なビヒクル、例えば無菌の、発熱物質を含有しない水と共に構成されてもよい。経口使用に好適な水性溶液は、活性成分を水に溶解させ、所望により好適な着色剤、風味剤、安定剤及び増粘剤を添加することにより調製されてもよい。
【0147】
経口使用に好適な水性縣濁液は、微粉化活性成分を、天然若しくは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は他の周知の懸濁剤等の粘性物質と共に水中に分散させることにより作製されてもよい。
【0148】
使用の直前に経口投与用の液体形態の製剤に変換されてもよい固体形態の製剤も含まれる。そのような液体形態としては、液剤、縣濁液及び乳剤が挙げられる。これらの製剤は、活性成分に加えて着色剤、風味剤、安定剤、緩衝液、人工及び天然甘味剤、分散剤、増粘物質、可溶化剤等を含有してもよい。
【0149】
本発明の第九の態様は、有効量の第一、第二、第三及び/若しくは第五の態様の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩と、添加剤とを含有する栄養補給剤を提供する。
【0150】
栄養補給剤は、カプセル剤、錠剤、散剤、丸剤又は顆粒等の摂取可能な固体形態で調製されてもよい。固体形態では、添加剤は充填剤、結合剤及び湿潤剤であってもよい。更なる添加剤としては、賦形剤及び/若しくは加工助剤、並びに/又はビタミン及び無機物が挙げられる。例示的な賦形剤及び加工助剤としては、吸収剤、希釈剤、香味剤、着色剤、安定剤、充填剤、結合剤、錠剤崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、固結防止剤(antiadherent)、糖又はフィルムコーティング剤、緩衝液、人工甘味剤、天然甘味剤、分散剤、増粘物質、可溶化剤等又はそれらいくつかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
栄養補給剤は、液体溶液、縣濁液又は分散液としても調製され得る。液体形態は、薬学的に許容され得る界面活性剤又は懸濁剤等の他の添加剤を有する、又は有さない水及びエタノール等の担体を含有する。
【0152】
栄養補給剤中の第一、第二、第三及び/又は第五の態様の化合物は、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル(化合物7)、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル(化合物8)、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(化合物5)及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(化合物6)からなる群より選択されることが好ましい。
【0153】
本発明の第十の態様は、疾病、疾患又は状態の処置又は予防のための医薬の製造における、第一、第二、第三及び/若しくは第五の態様の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩の使用を提供する。
【0154】
化合物は、患者に経口投与されてもよく、シロップ剤、錠剤又はカプセル剤の形態に構成されてもよい。錠剤形態の場合、そのような固体組成物の処方に好適な任意の医薬担体、例えばステアリン酸マグネシウム、澱粉、乳糖、ブドウ糖、米、小麦粉及びチョークを使用することができる。化合物はまた、例えば化合物を包含するためにゼラチンを含む摂取可能なカプセルの形態であってもよく、又はシロップ剤、液剤若しくは縣濁剤の形態であってもよい。好適な液体医薬担体としては、エチルアルコール、グリセリン、生理食塩水及び水が挙げられ、これらに着香剤又は着色剤が添加されてシロップ剤を形成し得る。持続放出調合物、例えば腸溶コーティングを含む錠剤も想定される。様々な調合物及び剤形が本明細書にて既に論じられている。
【0155】
本発明は、更に、第一、第二、第三及び/若しくは第五の態様の化合物、又はそれらの薬学的に許容され得る塩を、食後高血糖及びその関連状態の処置及び/又は制御に有用な他の薬剤及び手順に対象を暴露すると共に投与する等、治療法の組み合わせも検討する。本発明の化合物は、他の薬剤又は手順と同時に、又は別々に、又は連続して投与され得る。
【0156】
「有効量」とは、少なくとも部分的に、所望の応答を獲得し、又は処置されるべき特定の状態の開始を遅延させ、又は進行を阻害し、又は開始若しくは進行を一緒に停止するのに必要な量を意味する。この量は、処置されるべき個人の健康状態及び体調、処置されるべき個人の分類学的グループ、所望の保護の程度、組成物の調合物、医学的状態の評価、並びに他の関連因子に応じて変動する。この量は、日常的な試験により決定され得る、比較的広い範囲に含まれることが予想される。ヒト患者に関連した有効量は、例えば、一用量につき体重1kg当たり約0.1ng〜1gの範囲内にあり得る。用量は、例えば一用量につき体重1kg当たり1mg〜1g等、一用量につき体重1kg当たり1μg〜1gの範囲内にあり得る。一実施態様において、用量は、一用量につき体重1kg当たり1mg〜500mgの範囲内にある。別の実施態様では、用量は、一用量につき体重1kg当たり1mg〜250mgの範囲内にある。更なる別の実施態様では、用量は、例えば一用量につき体重1kg当たり50mg迄等、一用量につき体重1kg当たり1mg〜100mg、更なる別の実施態様では、用量は、一用量につき体重1kg当たり1μg〜1mgの範囲内にある。
【0157】
投与計画は、最適な治療的応答を提供するよう調整され得る。例えば、数個の分割用量を毎日、毎週、毎月、若しくは他の好適な時間間隔で投与してもよく、又は状態の危急により、用量を指示通り比例的に低下させてもよい。
【0158】
本明細書の「処置」及び「制御」という引用は、それらの最も広い文脈にて考慮されるべきである。用語「処置」は、対象が完全に回復する迄処置されることを必ずしも意味するものではない。同様に、「制御」は、対象が疾病又は状態の効果を経験しないことを意味するものではなく、また対象が最終的に疾状態態に罹患しないことを必ずしも意味するものではない。従って、処置及び制御は、特定の状態の症状の寛解と、状態の効果又は特定の状態の発生のリスクの予防又は別様の低減、並びに特定の状態の重症度又は開始の低減を含む。「処置」及び「制御」はまた、存在する状態の重症度を低減し得る。
【0159】
本発明を容易に理解することができ、また実際に実施するために、以下の非限定的な実施例を提供する。
【実施例】
【0160】
[化合物の単離]
サトウキビ葉(Q136)をバリナ(オーストラリア、NSW)のサトウキビ(cane)農場から3回収集した。葉材料を40℃で乾燥し、工業用カッティング・ミル(レッチェ、SM2000)を使用して粉砕した。乾燥及び粉砕したサトウキビ葉(13kg)を、抽出溶媒としてジクロロメタン(3×20L)及びメタノール(3×20L)を有する壁取り付けロッカービン(wall−mounted rocker bin)を使用して48時間連続して抽出した。メタノール抽出物を回転蒸発で個別に濃縮したが、これらが同様のHPLCプロファイルを有したため、後に組み合わせた。サトウキビ葉のメタノール抽出物(1.5L)を水(10L)中に懸濁させ、472gで10分間遠心分離し、水溶性成分をデカントして、水性画分(491g)及び有機残渣(94.5g)を与えた。
【0161】
18固定相で充填されたカラム(O’Neill[1]に記載されているように調製)上に溶液を通す前に、有機残渣をごく少量の溶媒(水中25%アセトニトリル)に溶解させた。代謝産物の分離は、25%、50%、75%及び100%アセトニトリル/水混合物)で溶出する、真空下での段階的な勾配溶出(2ベッド容積)により達成された。50%画分を回転真空濃縮器(RVC)(ドイツ、クリスト)を使用して乾燥する迄蒸発させ、ごく少量の40%アセトニトリル:水に再び溶解させた。50%画分をC18固定相(前述したような)を収容する第二カラムに適用し、30%、40%、50%及び100%アセトニトリル/水混合物で溶出した。
【0162】
40%画分をRVCにより乾燥する迄蒸発させ、40:60のメタノール及び水に再び溶解させた。得られた溶液を、水中0.05%トリフルオロ酢酸(溶媒A)及びメタノール中0.05%トリフルオロ酢酸(溶媒B)を溶離液として使用した分取HPLCに供した。45分間に亘り流した溶媒Bの40〜60%勾配の間に40画分が得られた。5つの画分を更にセミ分取HPLC及びサイズ排除クロマトグラフィーに供して、いくつかの化合物を得た。図2に、この反復単離方法を概略的に示す。
【0163】
図2にて、用語VLC(真空液体クロマトグラフィー)は、(A)25、50、75&100% MeCN/HO及び(B)30、40、50、100%MeCN/HOで溶出する工程を指す。分取HPLC工程は(C)40〜60%MeOH/HO勾配での溶出を組み込んだ。バイナリポンプ(306)を有するGilson分取HPLCシステムを、二波長UV/VIS検出器及びPhenomenex Luna C18(5μ、150×22mm i.d.)カラムと共に使用した。Gilson FC 204画分収集器を使用した。
【0164】
溶出溶液A(Milli−Q水及び0.05% TFA)及び溶出溶液B(メタノール及び0.05% TFA)を流速15mL/分にて使用して分取HPLCを行い、1分間画分を収集した。使用した溶出勾配は、以下に示すものである。

【0165】
均一濃度のMeCN/TFA/HO溶媒混合物(分析物に応じて30〜45%のMeCN、以下に詳細する)で溶出してセミ分取HPLCを行い、50% CHCl/MeOHで溶出するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。セミ分取HPLC工程は、(C)40〜60% MeOH/HO勾配による溶出を組みこんだ。クォータナリー・ポンプを有するAgilent 1100システムをダイオードアレイ検出器(DAD)及びPhenomenex Luna C18(5μ、250×10mm i.d.)カラムと共に使用した。Gilson FC 204画分収集器を使用した。
【0166】
溶出溶液A(Milli−Q水)及び溶出溶液B(アセトニトリル)を流速1mL/分にて使用してセミ分取HPLCを行い、1分間画分を収集した。溶出溶媒、画分識別番号、及び各画分中に見出された化合物を以下に示す。

【0167】
[化合物7及び8の同定]
トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル(化合物7)を重量2.4mgにて非晶質薄黄色固体として単離した。スペクトルデータは以下のようであった:UV λmax nm(CHCN):273sh、290”sh、313;APCI m/z:673[M+H]H及び13C NMR(各々、500及び125MHz、CDOD)は、表2に示す。表2は、化合物7及び8に関するH及び13C NMRスペクトルデータの文献値との比較である(CDOD中)。表2にて、比較物として使用した文献データは、Nakajima et al(参考文献[2])から取り、上付き文字a、b、c及びdは、そのデータ間で交換可能であった割り当てを指す。
【0168】
トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル(化合物8)を、3.0mgの量で非晶質薄黄色固体として単離した。スペクトルデータは、以下のようであった:UV λmax nm(CHCN):273sh、290sh、313;APCI m/z:673[M+H]H及び13C NMR(各々、500及び125MH、CDOD)は表2に示す。
【0169】
上述したように、化合物7及び8の構造は、分光分析データ(H NMR、13C NMR及びMS)により同定した。化合物7及び8のNMR割り当ては、溶媒として重水素化メタノール(CDOD)を使用して得られた文献[2]に報告されたものと比較した。しかしながら、公表されているC−3”、C−5”、H−2’”、H−6’”、H−3’”及びH−5’”に関する割り当ては、得られた表2に示したものとは異なっていた。正確な割り当ては、トリシン−4’−O−(エリトロ−β−グアイアシルグリセリル)エーテル、トリシン−4’−O−(トレオ−β−グアイアシルグリセリル)エーテル[3]、及びトリシン−7−O−β−(6”−メトキシシンナミック)−グルコシド[4]のシンナミック部分に関する公知の化学シフトデータの比較に加えて、図3に示した長距離JCH相関により確認した。
【0170】
[化合物5及び6の同定]
トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル(guaicyl)−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(化合物5)を6.2mgの量にて黄色結晶として単離した。スペクトルデータは、以下のようであった:UV λmax nm(CHOH):280、235sh、205;APCI m/z:541[M+H]H及び13C NMR(各々、500及び125MHz1、CDOD)は、表3に示す。
【0171】
トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル(guaicyl)−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル(化合物6)を7.3mgの量にて非晶質黄色固体として単離した。スペクトルデータは、以下のようであった;UV λmax nm(CHOH):280、235sh、205;APCI m/z:541[M+H]H及び13C NMR(各々、500及び125MHz、CDOD)は、表3に示す。
【0172】
化合物5は黄色結晶として得られた一方、化合物6は非晶質黄色粉末として得られた。化合物5及び6の両方に関するMSスペクトルは、C282811の分子式に一致する分子イオン[M+H]をm/z 541に示した。m/z 331における断片イオンの存在は、トリシン部分の存在を示唆した。5及び6の13C NMR及びHMBCスペクトルデータは、13個の第四級炭素、10個のメチン、一つのメチレン及び四つのメチル基を示した。5のH NMRスペクトル試験は8個の芳香族プロトンの存在を示した。7.25ppmの一重項は、二つの同一の芳香族プロトン(H−2’及びH−61)の存在を示唆した一方、6.23及び6.50ppmの二重項は、各々H−6及びH−8のメタカップリングを示す2.1HzのHH値を与えた。
【0173】
6.72ppm(H−3)の一重項と、3.94ppmの二つの等価なメトキシ基の存在は、トリシンアグリコンの構造を裏付けた。6.96、6.83及び6.80ppmの三つの残りの芳香族プロトンは、ABD環系全体に分布され、各々H−2”、H−5”及びH−6”に割り当てられた。H−2”及びH−6”のC−4”(δ147.5ppm)に対する及びH−5”のC−3”(δ149.0ppm)に対するCH相関は、酸化第四級炭素の位置を確立し、C−3”の酸素置換基を介して結合したメチル基(δ56.6ppm)の存在を示した。3.63及び3.34ppm(H−9a”及びH−9b”)で共鳴する二つのオキシメチレンプロトンと共に、二つのオキシメチンプロトンが4.54及び4.45ppm(各H−7”及びH−8”)に観察された。COSY及びHMBCは、これらのプロトンがグリセロール部分として配置され、H−7”のC−1”に対するCH相関は、グリセロール部分がどのように芳香族環と接続されているかを示した。3.18ppm及びC−7”(δ85.5ppm)のメトキシプロトン間のCH相関は、最終的なメトキシ基をC−7”位に配置させた。
【0174】
化合物5のH及び13Cスペクトルデータに見られた共鳴及び分裂パターンは、化合物6に見られたものと類似していた。しかしながら、化学シフト及び結合定数における相違は、5及び6が、C−7”及びC−8”の隣接するキラル中心にて異なるジアステレオ異性体であることを示唆した。4’−O−8”ネオグリナンのH−7”、H−8”結合定数は、トレオ形態と比較してエリトロでより小さいことが公知であり、異なる溶媒中で行った場合、エリトロ(4.5−5.4Hz)形態と比較してトレオ(5.0−8.2Hz)においてより大きい変動が見られる。重水素化メタノール中のHH結合定数は、化合物5では6.7Hzであったが、H−7”及びH−8”の重複するプロトンシグナルにより、化合物6に関しては測定されなかった。重水素化クロロホルム中での化合物5及び6の結合定数の測定では、各々7.7及び6.1HzのHH値を与えた。このようにして、化合物5の構造はトリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル(guaicyl)−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルとして決定され、化合物6の構造はトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル(guaicyl)−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルとして決定された。
【0175】
[インビトロでの酵素アッセイ]
パン酵母α−グルコシダーゼ[EC 3.2.1.20]、及びブタ膵臓α−アミラーゼ[EC 3.2.1.1]をバイオアッセイ誘導分画中に使用した。ラット腸管アセトン粉末を哺乳動物α−グルコシダーゼの供給源として使用した。EnzChek(登録商標)Ultra Amylase Assayキット(E−33651)をモレキュラープローブス(米国オレゴン州ユージーン)から購入した。アカルボース(グルコバイ、50mg/錠剤)を地元の薬局から得た。参照基準アピゲニン及びエピガロカテキンガラートを、クロマデックス(Chromadex)(米国カリフォルニア州サンタアナ)から購入した。
【0176】
各バイオアッセイにおいて、Victor 2マルチ−プレートリーダー(フィンランド、トゥルク、ワラク(Wallac))を使用して加水分解生成物を測定し、全サンプルは二重又は三重にて試験した。酵素吸光度から非酵素対照を引いて、試験サンプルのパーセント阻害を:
((A−B)/A)×100
として計算し、
式中、A及びBは、各々、阻害剤の不在及び存在下での加水分解生成物の吸光度である。パーセント阻害値を平均±標準偏差として表した。IC50は、アッセイ条件下で酵素活性の50%阻害に必要な濃度であり、値は、Microsoft Excel Solver用いて4パラメータ適合により計算した。
【0177】
表1に列挙したように、化合物4、18及び19は、それらが予めサトウキビ又は糖製造生成物から単離されていたため、アッセイに含ませる参照基準として選択された。アピゲニンはクロマデックス(米国カリフォルニア州サンタアナ)から購入した一方、ルテオリンはシグマ・アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(オーストラリア、キャッスルヒル)から購入した。
【0178】
[酵母α−グルコシダーゼ阻害アッセイ]
抽出物及び画分を、純粋な化合物に関して30mg/mL又は10mMにてDMSOに溶解させ、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中で作用濃度に希釈した。最終的なサンプル濃度は、特に提示しない限り50μg/mLであった。50μLの酵母α−グルコシダーゼ(3mU/mL)及び5μLのサンプルを収容する96−ウェルプレートに基質、4−メチルウンベリフェリル−α−D−グルコピラノシド(84μM、45μL)を加えた。プレートをオービタル・シェーカー上で30秒間混合し、37℃で20分間インキュベートした。100mMナトリウム−グリシン緩衝液(100μL、pH10.6)を加えて反応を停止させ、プレートを更に30秒間振とうし、蛍光強度をλex 355nm、λem 460nmにて測定した。正の阻害剤対照としてフコイダン(20μg/mL)を使用し、負の対照として酢酸ナトリウム緩衝液を使用した。
【0179】
[哺乳動物α−グルコシダーゼ阻害アッセイ]
純粋な化合物のα−グルコシダーゼ阻害活性を、以前に記載されているように[5]、いくつかの変更を加えて測定した。50mgのラット腸管アセトン粉末を0.9%塩化ナトリウム溶液(1.5mL)中に懸濁させることにより、粗酵素溶液を調製した。混合物を氷冷水中での10分間の超音波処理によりホモジナイズした後、10,000gで30分間遠心分離した。得られた上清をアッセイに使用した。
【0180】
純粋な化合物をDMSOに溶解させ、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)中で希釈して最終濃度100μMを与えた。粗α−グルコシダーゼ混合物(20μL)及びサンプル(10μL)を収容する96−ウェルプレートに基質麦芽糖(3mM、20μL)を加えた。マイクロタイタープレートをオービタル・シェーカー上で30秒間混合し、37℃で30分間インキュベートし、2Mトリス緩衝液(75μL)を加えて反応を停止させた。遊離したブドウ糖を、30μLの反応混合物をブドウ糖ヘキソキナーゼアッセイ試薬(170μL)に加え、これを混合し、室温で15分間インキュベートすることにより測定した。混合物の蛍光をλex 340nm、λem 470nmにて測定した。正の対照としてアカルボース(30μM)を使用し、負の対照としてリン酸ナトリウム緩衝液を使用した。
【0181】
[ブタα−アミラーゼ阻害アッセイ]
このアッセイは、EnzChek(登録商標)Ultra Amylase Assayキットを使用して行った。特に提示しない限り、サンプルをDMSO中で溶解させ、100mMの3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH6.9)で希釈して最終濃度300μg/mLを与えた。基質(95μL)、蛍光(BODIPY)染料で標識した澱粉化合物を、95μLのα−アミラーゼ溶液(125U/mL)及び10μLのサンプルを収容するマイクロタイタープレートに加えた。蛍光強度をλex 485nm、λem 538nmにて15分間連続して測定した。正の対照としてアカルボースを使用し、負の対照としてMOPS緩衝液(pH6.9)を使用した。
【0182】
三つのアッセイの結果を表1に示し、これは本明細書にて既に論じられている。
【0183】
本発明は、GI低下剤として有用な式I〜Vの化合物を提供する。本発明は、一種以上のこれらの化合物を含有する栄養組成物及び/又は医薬組成物/栄養補給剤も含む。化合物は、主な炭水化物消化酵素、α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼを阻害することによって、食後ブドウ糖レベルの安定化を必要とする患者に有益であろう。これらの酵素の一方又は両方の阻害は、炭水化物の消化の遅延をもたらし、従ってブドウ糖の生成及びその後の血流中への吸収が遅延される。このことは食後血中ブドウ糖レベルの低下を可能にする。
【0184】
このような制御は、例えば肥満症に苦しむ患者、又は糖尿病及び関連状態に苦しむ患者、若しくは糖尿病及び関連状態の素因を有する患者の過食を、満腹感覚の時間枠を延長し、又はカロリー摂取の低下を別様に試みることにより抑えるのに有用である。
【0185】
本発明の化合物は、栄養組成物又は医薬組成物中で送達されてもよい単離及び精製された単一の化合物として投与されてもよく、又はいくつかのそれらの化合物を含有するサトウキビ抽出物として患者に投与されてもよい。
【0186】
当業者は、本発明が本明細書に詳細に記載された実施態様に限定されず、本発明の幅広い趣旨及び範囲に尚合致する他の様々な実施態様を想定し得ることを理解するであろう。
【0187】
本明細書に言及した全てのコンピュータ・プログラム、アルゴリズム、特許及び特定の文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0188】
[参考文献]
[1]I.A.O’Neill,Reverse Phase Flash Chromatography:A Convenient Method for the Large Scale Separation of Polar Compounds,Synlett(1991)661−662.
[2]Y.Nakajima,Y.S.Yun,and A.Kunugi,Six New Flavonolignans from Sasa veitchii(Carr.)Rehder,Tetrahedron 59(2003)8011−8015.
[3]M.Bouaziz,N.C.Veitch,R.J.Grayer,M.S.J.Simmonds,and M.Damak,Flavonolignans from Hyparrhenia hirta,Phytochemistry 60(2002)515−520.
[4]J.M.Duarte−Almeida,G.Negri,A.Salatino,J.E.de Carvalho,and F.M.Lajolo,Antiproliferative and Antioxidant Activities of a Tricin Acylated Glycoside from Sugarcane(Saccharum officinarum)Juice,Phytochemistry 68(2007)1165−1171.
[5]T.Oki,T.Matsui,and Y.Osajima,Inhibitory Effect of Alpha − Glucosidase Inhibitors Varies According to Its Origin,Journal of Agricultural and Food Chemistry 47(1999)550−553.
【0189】
【表1】

【0190】
【表2】

【0191】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式Iの化合物、及び/又はその塩であって:

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル、糖部分であり、又はRは、以下の構造により表すことができ:

式中、R13及びR14は、独立してアルキル、アリール、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アルカノン、アルカノイル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケノイル又はカルボアルコキシから選択され;
Xは、存在する場合、酸素、硫黄、窒素、アルキル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキレン又はアルケニルであり;
15、R16、R17、R18及びR19は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され、
式中、点線は、各々単結合を表すことがあることを特徴とする化合物、及び/又はその塩。
【請求項2】
グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式IIの化合物、及び/又はその塩であって:

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
13及びR14は、独立してアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アルカノン、アルカノイル、アルケノイル又はアリールから選択され;
Xは、酸素、硫黄、窒素、アルキル、アルキレン又はアルケニルであり;
15、R16、R17、R18及びR19は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
20は、水素、酸素、硫黄、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル又はO−アルケノイルから選択され;
式中、点線は、各々単結合を表すことがあることを特徴とする化合物、及び/又はその塩。
【請求項3】
グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式IIIの化合物、及び/又はその塩であって:

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19は、独立して水素、ヒドロキシル、カルボキシル、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル又は糖部分から選択され;
式中、点線は、各々単結合を表すことがあることを特徴とする化合物、及び/又はその塩。
【請求項4】
グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式IVの化合物、及び/又はその塩であって、当該式IVが、

であることを特徴とする化合物、及び/又はその塩。
【請求項5】
グリセミック指数低下剤としての、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための式Vの化合物、及び/又はその塩であって、当該式Vが、

であることを特徴とする化合物、及び/又はその塩。
【請求項6】
グリセミック指数低下剤、並びに/又はα−アミラーゼ及び/若しくはα−グルコシダーゼ阻害剤としての使用のための化合物、及び/又はその塩であって、当該化合物が、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルからなる群より選択されることを特徴とする化合物、及び/又はその塩。
【請求項7】
式Iの化合物、及び/又はその塩であって:

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル、糖部分であり、又はRは、以下の構造により表すことができ:

式中、R13及びR14は、独立してアルキル、アリール、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アルカノン、アルカノイル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルケノイル又はカルボアルコキシから選択され;
Xは、存在する場合、酸素、硫黄、窒素、アルキル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキレン又はアルケニルであり;
15、R16、R17、R18及びR19は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシル、アルデヒド、アルカノン、カルボキシル、カルボキサミド、アルカノイル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、カーボネート、O−アルキル、O−アリール、O−アルケニル、O−アルカノイル、O−アルケノイル又は糖部分から選択され;
点線は、各々単結合を表すことがあり;
前記化合物は、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−(エリトロ−β−グアイアシルグリセリル)エーテル又はトリシン−4’−O−(トレオ−β−グアイアシルグリセリル)エーテルではない;ことを特徴とする化合物、及び/又はその塩。
【請求項8】
式Iの化合物、及び/又はその塩であって、当該化合物がトリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル及び/又はトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルであることを特徴とする化合物、及び/又はその塩。
【請求項9】
式I、II、III、IV又はVのいずれか一つの化合物の単離方法であって、イネ科(Poaceae)/(Gramineae)の植物、植物部分又は植物誘導体から前記化合物を抽出するステップを含むことを特徴とする単離方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記植物が、サトウキビ(Saccharum officinarum)、サトウキビ野生種(Saccharum spontaneum)、クマザサ(Sasa veitchii(Carr.)Rehder)、Hyparrhenia hirta(L)Stapf、Salsola collina、エンバク(Avena sativa L.)及びLycopodium japonicumからなる群より選択される種であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、前記抽出による抽出物が、植物の葉及び/若しくは茎、並びに/又はサトウキビ加工廃棄物流から得られることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記サトウキビ加工廃棄物流が、糖蜜、液糖、畑屑、生長点及び絞り粕を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、前記化合物が、サトウキビ葉からメタノールを使用して抽出されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の方法に従って単離されたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記植物、植物部分又は植物誘導体の抽出物中に存在する場合を特徴とする請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1乃至請求項6、請求項14又は請求項15のいずれか一項に記載の化合物の使用において、前記α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼがヒトα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼであることを特徴とする化合物の使用。
【請求項17】
請求項1乃至請求項8、請求項14又は請求項15のいずれか一項に記載の化合物を投与するステップを含むことを特徴とするフラボノイド又はフラボノイド誘導体に応答する疾病、疾患又は状態の処置方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、処置されるべき疾病、疾患又は状態が、肥満症、糖尿病及び糖尿病関連状態からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1乃至請求項8、請求項14若しくは請求項15のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩、及び栄養成分を含有することを特徴とする栄養組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の栄養組成物において、前記化合物が、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルからなる群より選択されることを特徴とする栄養組成物。
【請求項21】
糖蜜、ポリフェノール、インゲンマメ、及びファセオラミンを含むインゲンマメ抽出物、繊維添加剤、並びに酸からなる群より選択される食物添加剤を更に含有することを特徴とする請求項19に記載の栄養組成物。
【請求項22】
有効量の請求項1乃至請求項8、請求項14若しくは請求項15のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩、並びに薬学的に許容され得る担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含有することを特徴とする疾病、疾患又は状態の処置又は予防のための医薬組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の医薬組成物であって、前記化合物が、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(9”−O−p−クマロイル)−グリセリル]エーテル、トリシン−4’−O−[トレオ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテル及びトリシン−4’−O−[エリトロ−β−グアイアシル−(7”−O−メチル)−グリセリル]エーテルからなる群より選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項24】
有効量の請求項1乃至請求項8、請求項14若しくは請求項15のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩、及び添加剤を含有することを特徴とする栄養補給剤。
【請求項25】
請求項24に記載の栄養補給剤において、前記添加剤が、充填剤、結合剤、湿潤剤、賦形剤、加工助剤、ビタミン及び無機物からなる群より選択されることを特徴とする栄養補給剤。
【請求項26】
疾病、疾患又は状態の処置又は予防のための医薬の製造において、請求項1乃至請求項8、請求項14若しくは請求項15のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容され得る塩を使用することを特徴とする医薬の製造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524028(P2012−524028A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504996(P2012−504996)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000427
【国際公開番号】WO2010/118474
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511248906)サクロン イノベーションズ ピーティーワイ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SACRON INNOVATIONS PTY LIMITED
【Fターム(参考)】