説明

グリセロールからアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法

本発明は、出発原料のグリセロールからバイオ資源起源のアクロレインおよびバイオ資源起源のアクリル酸を製造する方法、特に、グリセロールの脱水反応でアクロレインを作り、このプロセスの各種の流れの中に存在する水より重質有機化合物を除去して、重質不純物の蓄積無しに、脱水段階に再循環できる流れを作り、しかも、水の消費および汚染水流の放出量を最小にすることができるアクロレインおよびアクリル酸の製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発原料のグリセロールからバイオ資源起源のアクロレインおよびバイオ資源起源のアクリル酸を製造する方法に関すものである。
本発明は特に、グリセロールの脱水反応でアクロレインを作り、このプロセスの各種の流れの中に存在する水より重質有機化合物を除去して、重質不純物の蓄積無しに、脱水段階に再循環できる流れを作り、しかも、水の消費および汚染水流の放出量を最小にすることができるアクロレインおよびアクリル酸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業的に最も広く使われているアクリル酸の合成方法は酸素含有有混合物を使用したプロピレンの触媒反応を用いる方法である。この反応は一般に気相で実行され、大抵は2段階で行われる。第1段階はプロピレンをほぼ定量的に酸化して、アクリル酸がマイナー成分であるアクロレイン-リッチな混合物を作り、第2段階ではアクロレインの選択酸化を実行してアクリル酸にする。これら2つの段階は直列な2つの反応装置で実行されるか、単一の反応装置の二つの反応帯域で実行され、各々の反応条件は互いに異なっており、各々の反応に適した触媒を必要とする。
【0003】
バイオ資源起源の出発原料を使用してアクロレインおよびアクリル酸を合成するプロセスの研究開発をメーカーはここ数年間行っている。これらの研究は温室化現像による地球温暖化の員となる化石原料、例えば石油由来のプロピレンを出発材料として使用することを将来は避けるという関心から始まったものである。さらに、世界の石油埋蔵鉱量は次第に減っていくので、そのコストは将来増加することになる。
【0004】
メーカーはバイオ資源起源の出発原料を使用してアクロレインおよびアクリル酸を合成するプロセスの研究開発を行っている。これらの研究は温室化現像による地球温暖化の員となる化石原料、例えば石油由来のプロピレンを出発材料として使用することを将来は避けるという関心から始まったものである。さらに、世界の石油埋蔵鉱量は次第に減っていくので、そのコストは将来増加することになる。非化石原料から出発する代替プロセスの中では、グルコースまたは糖蜜の発酵によって得られる3-ヒドロキシプロピオン酸を出発原料として使用するプロセスを挙げることができる。
【0005】
また、植物油のメタノール分解でガスオイルおよび家庭用加熱オイルの燃料として使われるメチルエステルと同時に得られるグリセロール(グリセロールともよばれる)から出発するプロセスも挙げることができる。このグリセロールは「グリーンな」天然物であり、多量に入手でき、容易に貯蔵、輸送ができる。植物油または動物性脂肪のメタノール分解は種々の公知プロセス、特に均一触媒、例えば水酸化ナトリウムまたはナトリウムメトキシドのメタノール溶液を用いるか、不均一触媒を用いて実行できる。これに関しては非特許文献1を参照できる。
【0006】
出発原料として3-ヒドロキシプロピオン酸を用いた上記プロセスの主たる欠点は水中に高度希釈された条件下で実行する必要のある発酵反応を含むという経済的な観点からの欠点である。アクリル酸を得るためは多量の水を蒸留によって除去されなければならず、極めて高いエネルギーコストを必要とする。さらに、バイオ資源起源の出発原料からアクリル酸を製造するという初期の利点は化石原料から作ったエネルギで水を分離するためのエネルギとして消費されることで大きく失われる。この分野の問題に関しては、酵素ルート、特に、炭水化物から作ったアクリル酸からポリマーを製造するプロセス記載した特許文献1(国際特許第WO 2006/092271号公報)が参照できる。
【0007】
今日では、グリセロールはバイオ資源起源のアクロレインおよびバイオ資源起源のアクリル酸の工業的製造に適した出発原料として認められている。グリセロールからアクロレインを得るための反応は下記である:
℃H2OH℃HOH℃H2OH−>CH2=CH℃HO+2H2O
【0008】
この段階の後にアクロレインを酸化してアクリル酸を得る段階が続く。グリセロールからアクロレインを合成するプロセスは種々の文献に記載されており、例としては特許文献2〜8を挙げることができる。
【0009】
特許文献9(欧州特許第EP 1 710 227号公報)には気相のグリセロールの脱水反応で得られた反応生成物を次の気相の酸化段階でアクリル酸にするプロセスが記載されている。このプロセスは各反応に適した触媒を有する直列な2つの反応装置で実行される。酸化反応を改良し、クリル酸を高収率で得るためには第2の反応装置を送るガス混合物に酸素を添加することが勧められている。この2段プロセスは純粋なグリセロールまたはグリセロールを50重量%以上含む水溶液を用いて実行される。水溶液の蒸発および汚水処理に関連するエネルギーコストを減らすために濃度したグリセロール溶液を使用することが有利である。しかし、グリセロールの濃度があまりに高いと、より多くの副反応が起こり、グリセロールエーテルのような多くの副生成物が生じ、得られたアクロレインまたは得られたアクリル酸とグリセリとの間の反応が起こる危険が増す。これらの重質副生成物は脱水触媒中に残る傾向があり、また、触媒のコーキングの原因となり、触媒を急速に失活させる結果となる。
【0010】
特許文献10(国際特許第WO 06/136336号公報)に記載のアクロレインおよびアクリル酸の合成プロセスでは、脱水反応後にアクロレイン-リッチな相とアクロレインが少なくなった相とに分離する段階を行い、後者のアクロレインが少なくなった相(水がリッチな相)を上流の脱水反応装置へ戻してグリセロールを希釈し、グリセロールを10重量%以下含む水相を得ている。この特許文献10は基本的に液相脱水プロセスに関するものであり、上記のアクロレインが少なくなった相(水がリッチな相)は脱水反応段階で形成された重質化合物を含み、この重質化合物は触媒を汚染し、それを失活させる。
【0011】
特許文献11(国際特許第WO 2006/092272号公報)には液相のグリセロールの脱水段階または気相のグリセリの脱水段階を含むアクリル酸の製造プロセスが記載されている。グリセロールの脱水反応で得られるアクロレインを含む反応生成物は酸化反応装置に送られる前に急冷装置で水と接触する。しかし、多量の水流の存在下ではアクロレインの酸化触媒がその有効性および機械強度を急速に失うという危険があるため、このプロセスは維持が難しい。この特許文献11の図5から、液相の脱水反応生成物は蒸留されて、アクロレインの沸点より低い沸点を有する軽質産物と、アクロレインの沸点より高い沸点を有する重質産物とに分離され、水を多く含むこの第2のフラクションはメンブレン分離装置で不純物が除去された後に反応段階へ戻される。しかし、この再循環原則では水のループ中に不純物が蓄積し、メンブレンには選択性が無いため、ファウリング(汚れ)が生じる。
【0012】
特許文献12(国際特許第WO 08/087315号公報)にはグリセロールから2段階でアクリル酸を製造するプロセスが記載されている。このプロセスでは第1脱水段階からの流れに含まれる水および重質副生成物の少なくとも一部を凝縮してから酸化反応装置へ送る中間の段階を使用する。このプロセスでは希釈したグリセロール水溶性が使用でき、脱水反応に有利な効果が得られ、過度に多量な水の存在下でアクロレインを酸化する触媒の損傷が制限される。凝縮段階で生じた水流の全部または一部は精留塔へ送られて、存在する可能性のある軽質生成物を回収するか、排水処理ポートへ送られるが、後者の場合には多量の排水を自然環境中へ排出する前にコストのかかる処理を必要とするという欠点がある。また、この流れを熱酸化装置で燃焼させることもできるが、この熱酸化装置からのベントガスの使用については記載がない。また、上記水流れの一部を直接再循環してグリセロールを所望濃度に希釈することもできるが、この場合には、不純物が水ループ中に蓄積し、脱水触媒がコーキングするリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際特許第WO 2006/092271号公報
【特許文献2】フランス特許第FR 695931号公報
【特許文献3】米国特許第US 2558520号明細書
【特許文献4】国際特許第WO 99/05085号公報
【特許文献5】米国特許第US 5387720号明細書
【特許文献6】国際特許第WO 06/087083号公報
【特許文献7】国際特許第WO 06/087084号公報
【特許文献8】国際特許第WO 09/044081号公報
【特許文献9】欧州特許第EP 1710227号公報
【特許文献10】国際特許第WO 06/136336号公報
【特許文献11】国際特許第WO 2006/092272号公報
【特許文献12】国際特許第WO 08/087315号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】D. Ballerini et al., l'Actualite℃himique, 2002, 11-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、アクリル酸製造の上記プロセスの欠点を無くし、グリセロールを脱水してアクロレインにする最初の段階を有し、さらにアクロレインを酸化してアクリル酸にする段階を有するアクリル酸の製造プロセスを下記の点で改良することにある:
(1)水の消費を減らし、水存在下でのグリセロールの脱水反応を最適化し、
(2)汚染水の量を減らし、
(3)エネルギー使用量を減らし、設備を小型化し、
(4)生産量のロスを減らし、反応生成物を有効に回収し、
(5)脱水および酸化触媒のサイクル周期を増加させる。
【0016】
この目的のために、本発明はプロセスの多様な流れに存在しやすい重質副産物、特に水より重い質有機化合物を分離して、脱水段階に再循環される重質不純物を含まない流れを作る方法を提供する。重質不純物の分離は沸点の差で行い、プロセスの異なる場所で実行でき、それによって、重質不純物の蓄積のない閉じた水のループを作ることができ、系のエネルギが最適化できる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の対象は、少なくとも下記の(a)〜(c):
(a) グリセロールに脱水反応を行ってアクロレインを含む水性流を作り、
(b) 段階(a)で得られた水性流をアクロレインがリッチな相およびアクロレインが少なくなった相とに分離し、
(c) アクロレインが少なくなった相の全部または一部を段階(a)へ再循環させる、
の段階を有するグリセロールからアクロレインを製造する方法において、
沸点の差によって重質副産物を分離する段階を実行し、この段階を、段階(a)を入れる流れ、段階(a)から出る水性流または段階(b)のアクロレインが少なくなった相の少なくとも一つの流れに対して行うことを特徴とする方法にある。
【0018】
本発明の他の対象は、少なくとも下記の(a)〜(e):
(a) グリセロールに脱水反応を行ってアクロレインを含む水性流を作り、
(b) 段階(a)で得られた水性流をアクロレインがリッチな相およびアクロレインが少なくなった相とに分離し、
(c) アクロレインが少なくなった相の全部または一部を段階(a)へ再循環させ、
(d) アクロレインがリッチな相に触媒酸化反応を行ってアクリル酸を含む流れを作り、
(e) 段階(d)で得られた流れに一回以上の精製処理を行い、精製したアクリル酸が回収する、
の段階を有するグリセロールからアクロレインを製造する方法において、
【0019】
本発明の好ましい実施例では、上記の沸点の差によって重質副産物を分離する段階を、段階(a)に入る水性流および/または段階(b)のアクロレインが少なくなった相に行い、段階(a)から出る水性流に対して沸点の差によって重質副産物を分離する段階をさらに組み合わせる、または、組み合わせない。
【0020】
本発明のさらに他の特数および利点は添付図面を参照した以下の詳細な説明および実施例からより明瞭になろう。しかし、本発明が実施例に限定さるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のアクロレインの製造プロセスのブロック線図で、沸点の差で重質副産物を分離する段階は点線で示してある。
【図2】沸点の相違による重質副産物の分離の段階が点線において、代表される本発明のアクリル酸の製造のためのプロセスのブロック線図。
【図3】本発明のアクリル酸製造プロセスの段階(d)および(e)の詳細図。
【図4】本発明のアクリル酸製造プロセスの好ましい実施例の詳細図。
【図5】本発明のアクロレイン製造プロセスの好ましい実施例の詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[図1]は本発明のアクロレイン製造プロセスを単純化下図で、点線は従来法のブロック線図に挿入した各種オプションの重質副産物の分離段階を示している。
【0023】
グリセロールの脱水段階(a)の反応装置(B)へはグリセロールと水から成る流れ(5)を送る。水/グリセロールの重量比は0.04/1〜9/1の間、好ましくは0.7/1〜5/1の間である。流れ(5)は酸素、窒素およびCO2をさらに含むことができる。この流れ(5)はグリセロールがリッチな流れ(1)を窒素、酸素、アルゴンおよびCO2を含む再循環水がリッチな相(3)と混合する段階(A)で得るのが有利である。この流れ(1)は例えば市販の天然グリセロール(グリセロール)にすることができる。商用グリセロールは一般に80%のグリセロールと、1〜10%の塩と、1〜4%の非グリセロール有機物(メタノールを含む)と、3〜15%の水とを含む。
【0024】
脱塩したグリセロールを使用するのが有利である。この脱塩グリセロールは減圧蒸留または減圧下のフラッシュ蒸留またはイオン交換樹脂を使用した分離等の当業者に公知の任意の手段で粗グリセロールから得ることができる。これに関しては例えば下記文献13に記載されている。
【特許文献13】欧州特許第EP1978009号公報
【0025】
また、不均一触媒を用いた触媒反応で鉱油のエステル交換反応プロセスで得られる脱塩グリセロールから出発することもできる。また、純度が98%、99%または99.5%以上の精製グリセロールを使用することもできる。さらに、グリセロールを20〜99重量%、好ましくは30〜80重量%含む水溶液を使用することもできる。
【0026】
脱水反応(段階a)は高温度で行うのが有利であり、一般には反応装置(B)で気相で触媒の存在下に150℃〜500℃、好ましくは250℃〜350℃の温度で、5×105Pa〜100×105Paの圧力で実行する。また、液相で実行することもできる。その場合は温度は150℃〜350℃、圧力は5×105〜100×105Paである。最初の段階は気相で実行するのが好ましい。
【0027】
また、下記文献14、15に記載のように、酸素または酸素含有ガスの存在下で実行することもできる。
【特許文献14】国際特許第WO 06/087083号公報
【特許文献15】国際特許第WO 06/114506号公報
【0028】
この場合の酸素の量はプラントの全ての位置が引火範囲外となる量を選択する。グリセロールに対する分子酸素のモル比は一般に0.1〜1.5、好ましくは0.3〜1.0である。酸素または酸素含有ガスの一部または全部を流れ(3)で供給することができる。
【0029】
脱水反応は酸である化合物、例えば、SO3、SO2またはNO2から選ばれる化合物を1〜3000ppm含む反応媒体中で気相で実行できる。脱水反応は気相または液相で実行される。
【0030】
グリセロールの脱水反応は一般に固体酸触媒上で実行される。適した触媒は反応媒体の不溶で、+2以下のハメット酸度(H0で表す)を有する均一物質または多相物質である。ハメット酸度は特許文献16および非特許文献2に記載のように、化学指示薬を使用したアミン滴定または気相塩基吸着法で決定できる。
【特許文献16】米国特許第US 5 387 720号明細書
【非特許文献2】K.田辺達「Study of Surface Science and Catalysis」、第51巻、1989、第1章および第2章
【0031】
触媒は天然または合成の珪酸含有物質または酸性ゼオライト、無機担体、例えば酸化物、モノ-、ジ-、トリ-またはポリ酸性無機酸、オキサイドまたは混合酸化物またはヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩から選ぶことができる。この触媒は特に、ヘテロポリ酸のプロトンを元素周期律表の第I族〜第XVI族に属する元素から選択される少なくとも一つのカチオンで交換したヘテロポリ酸塩で構成できる。このヘテロポリ酸塩はW、MoおよびVから選ばれるから少なくとも一つの元素を有する。
【0032】
例としては鉄およびリンをベースにする混合酸化物およびセシウム、リンおよびタングステンをベースにする混合酸化物を挙げることができる。
【0033】
特に、触媒はゼオライト、ナフィオン[Nafion(登録商標)複合材料(フルオロポリマーのスルホン酸ベース)]、塩素化アルミナ、燐タングステン酸(phosphotungstic)および/または珪素タングステン酸(silicotungstic)および酸塩および酸基、例えばボレートBO3、サルフェートSO4、タングステートWO3、ホスフェートPO4、シリケートSiO2またはモリブデートMoO3基またはこれら化合物の混合物が含浸された金属酸化物、例えば酸化タンタルTa25、酸化ニオブNb25、アルミナAl23、酸化チタンTiO2、ジルコニアZrO2、酸化錫SnO2、シリカSiO2またはシリカアルミナSiO2/Al23を含むタイプの固体物の中から選択される。
【0034】
上記触媒はプロモータ、例えばAu、Ag、Cu、Pt、Rh、Pd、Ru、Sm、Ce、Yt、Sc、La、Zn、Mg、Fe、Co、Niまたはモンモリロナイトをさらに含むことができる。
【0035】
好ましい触媒は燐酸処理したジルコニア、タングステン酸処理したジルコニア、シリカ・ジルコニア、タングステン酸塩または燐タングステン酸塩またはシリコタングステート(silicotungstate)を含浸したチタンまたは錫の酸化物、燐酸処理したアルミナまたはシリカ、ヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩、鉄ホスフェートおよびプロモータを含む鉄ホスフェートである。
【0036】
グリセロールの脱水反応を反応混合物に対して0.1〜10容積%の量の水素の存在下で実行することもできる。この場合には本出願人の下記特許文献17記載の触媒の存在下で行う。
【特許文献17】米国特許第US 2008/018319号明細書
【0037】
反応装置(B)は固定床、移動床、流動床または循環流動床またはモジュール(シートまたはパン)形状のものを使用できる。接触時間(秒で表される)は触媒ベッド容積と1秒間に送られるガス反応物の容積と比である。ベッド中の平均温度および圧力条件は触媒の種類、触媒ベッドの種類および触媒の寸法に従って変る。一般に、接触時間は0.1〜20秒、好ましくは0.3〜15秒である。
【0038】
段階(a)の完了後、液体または気体から成る水の流れ(6)が得られる。この流れ(6)は所望するアクロレインと、水と、未反応グリセロールと、副生成物、例えばヒドロキプロパン、プロパンアルデヒド、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクリル酸、プロピオン酸、酢酸、蟻酸、アセトン、フェノール、グリセロールとアクロレインとの付加物、グリセロールの重縮合生成物または環状グリセロールエーテル物、軽質化合物、例えば窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素およびアルゴンとを含む。これらの生成物の重質化合物の一部、その他は凝縮可能であり、他の軽質化合物は一般的な温度、圧力条件下では凝縮できない。
【0039】
反応装置(グリセロール原料)および(脱水)反応自体に入る流れ(5)の組成から、流れ(6)の含水率は高い。本発明プロセスの段階(b)ではこの流れ(6)をアクロレインリッチ相(9)とアクロレインが少なく水が多い相(10)とに分離する。この段階(b)では、例えば本出願人の特許文献18に記載のように、水の部分的凝縮な凝縮を行うか、特許文献190に記載のように分離を行う。その目的は、アクロレインの製造プロセスまたはアクロレインを酸化してアクリル酸にする段階、2段階でグリセロールからアクリル酸を製造するプロセスにおいて、アクロレインを含む流れを精製段階へ送る前に存在する大部分の水と重質副生成物とを除去することにある。
【特許文献18】国際特許第WO 08/087315号公報
【特許文献19】国際特許第WO 2006/136336号公報
【0040】
水を部分的に分離することでアクロレインを酸化してアクリル酸にする第2段階の触媒の損傷を避けることができ、後で多量の水を除去した時にかかる多額のコストを減らすことができ、アクリル酸のヤスを減すことができる。さらに、グリセロール脱水時に生じる「重質」不純物の一部を除去することができる。
【0041】
この段階(b)は分離装置(D)で実行される。段階(a)を気相で実行した場合には分離装置(D)は凝縮装置である。この凝縮装置は吸収塔にすることができる。この吸収塔には蒸発器、熱交換器、凝縮器、デフレグメータおよび水溶液の部分凝縮を行うことができる公知野任意の機器を連結することができる。この段階は流れ(6)中に存在する水の20〜95%、好ましくは40〜90%が液体流(10)中に除去されるような条件下で実行する。一般に、ガス流(9)は流れ(6)中に最初に存在していたアクロレインの80%以上、好ましくは90%以上から成る。この結果は温度を60〜120℃に下げることで得られる。
【0042】
段階(a)を加圧下で液相で実行した場合には、段階(b) の圧力を1〜4バールに下げて実行でき、必要に応じて熱交換器および気液分離、例えばフラッシュドラム、蒸留塔または当業者に公知の他の任意の装置を連結することができる。流れ(6)中に最初に存在した水の20〜95%、好ましくは40〜80%を含む液体の流れ(10)と流れ(6)中に最初に存在したアクロレインの80%以上、好ましくは90%以上を含むガス流(9)とを回収する。
【0043】
得られた凝縮相(10)は一般に90〜99%の水を含み、残りはアクロレインおよび不純物、例えばアクリル酸、グリセロール、酢酸、ヒドロキシプロパン、プロピオン酸、その他の重質有機化合物から成る。
【0044】
本発明方法の一つの目的は、脱水触媒に有害な重質不純物を取り除いた流れ(3)の形で反応段階へ少なくとも一部を再循環することができる水がリッチでアクロレインが少なくなった相(10)を得ることにある。
【0045】
そのための、水より重い質有機化合物の除去段階が実行される有機化合物の除去段階を脱水反応装置(B)に入る流れ(5)のレベルか、脱水反応装置(B)をから出る水性流(6)で行うか、分離装置(D)から出る水がリッチでアクロレインが少なくなった相(10)で行う。これらの変形方法を単度津または組み合わせて用いることができる。こうして得られる水の閉ループによってプロセスで水を過度に多量に消費することが避けられる。
【0046】
水より重い有機化合物の除去分離は、これらの化合物の沸点の差を利用して蒸発で実行するか(最初に分離される流れが気体の場合)、凝縮で実行するか(最初の流れが液体の場合)、蒸発と凝縮とを組み合わせて実施する(複数の分離段階を使用する場合)。
【0047】
本発明の第1の実施例では、重い化合物の除去段階を装置(K)でグリセロール(1)と再循環された水がリッチな相(3)との混合物を蒸発させて実行、それによって、グリセロールと水がリッチで重質化合物が少なくなった相(流れ(5))と、水より重い有機化合物がリッチな液体または固体の相(20)とを作り、前者を脱水反応装置(B)へ送り、後者を除去する。
【0048】
本発明の第2の実施例では、重質化合物の除去段階を装置(C)で脱水反応装置(B)から出た流れ(6)を処理することで実行する。それによって水より重い有機化合物が少なくなった気相(6c)と、水より重い有機化合物がリッチな液体または固体の相(6a)とを作り、後者を除去する。気相脱水反応の場合には、装置(C)で流れ(6)を冷却して、液体の凝縮相(6a)と気相(6c)とを作る。液相脱水反応の場合には、装置(C)で流れ(6)の一部を減圧蒸発させるか、加熱して気体流(6c)と固体または液体の流れ(6a)とを作る。
【0049】
本発明の第3の実施例では、重質化合物の除去段階を、装置(G)で分離装置(D)から出た流れ(10)を蒸発させて実行して、水がリッチな気相(3)と水より重い有機化合物がリッチな液体または固体の相(18)とを作り、前者を再循環し、後者は除去する。
【0050】
装置(K)(G)を蒸発器または蒸留塔として使用することができる。当業者に公知の任意タイプの蒸発器、例えばジャケット付き蒸発器、コイル型蒸発缶、水平、垂直または傾斜した管式蒸発缶、自然対流式または強制循環式の蒸発器、攪拌式またはフィルム式の蒸発器を使用できる。また、プレート蒸発器、構造充填材またはランダム充填材を収容したカラムを使用することもできる。これらのカラムは当業者に公知の任意の手段、例えばスチームまたは加熱要素を用いた熱サイホンまたは強制循環熱交換器によって熱を導入できる蒸発器またはリボイラーを有するのが有利である。このカラムは還流液を作り、水より重い生成物を分離する能力を高めるための一つ以上の冷却熱交換器を有することができる。
【0051】
装置(K)は重質生成物を分離する役目の他に、グリセロールを蒸発する役目も有することができる。また、滞留時間およびグリセロール/水混合液が接触する熱交換器の壁面温度をさげるのも有利である。強制循環も有利である。装置(K)の運転温度は組成物のプラント中の条件下すなわち一般にはグリセロールの沸点近くの圧力で180℃〜320℃、好ましくは200℃〜270℃であるのが有利である。グリセロールの角のロスを避けるために、装置(K)は重質生成物からグリセロールをストリッピングするセクションを有するのが有利である。
【0052】
タイプ(G)の装置は圧力条件下の水および入って来る流れ中の組成物の沸点近く、すなわち一般には100℃〜180℃、好ましくは110℃〜150℃で運転するのが、好ましい。
【0053】
装置(C)としては空のカラムまたは外部再循環ループを有する充填カラムから成る接触装置を使用することができ、底部で液相を取り出し、熱交換器で、冷却し、カラムの最上部へ戻すことができる。空のカラムの場合、熱交換器を容易にするために、冷却された液相をカラムの最上部からスプレーする。液相の温度は一般に120℃〜180℃、好ましくは140℃〜170℃である。再循環流速は冷却熱交換器の入口と出口の間の温度差が小さくなり、一般には30℃以下、好ましくは10℃以下になるように調整するのが有利である。
【0054】
また、装置(C)は薄層熱交換器、例えば流下式フィルム熱交換器から成ることもできる。装置(C)は出口で気/液分離する多管式熱交換器から成ることもできる。
【0055】
あるいは、交換器表面との接触を増やすために、上記液体のテクニカル溶液に気相を加えることも可能である。装置(C)の運転点より大きい沸点を有する液体、例えばグリセロールを選択することもできる。
【0056】
また、反応装置(B)の出口と(C)の入口との間に気相の熱交換器が配置して、縮合せずに気相を冷却して熱を回収するのも有利である。この熱交換器の出口の温度は一般に150℃〜250℃、好ましくは180℃〜230℃である。
【0057】
本発明の上記全ての実施例で、脱水触媒上に不純物が蓄積する危険なしに、全てまたは一部をグリセロールの脱水段階(a)へ再循環できる流れ(3)を得ることができる。この流れ(3)で脱水反応装置(B)へ送るグリセロールを含む流れ(5)中の含水率を調整することができる。有利には流れ(3)を過熱して、混合段階(A)でグリセロール流を蒸発させる。熱の全ては過熱流(3)で与えられるので、蒸発するのに隔壁は必要であるが、反応ガス流体を脱水反応装置(B)へ送る前にグリセロールが非常に熱い隔壁と接触するのを避けることができる。
【0058】
水より重い有機化合物がリッチな液体または固体の相は除去するか、CO2およびH2Oの形で化合物を除去する熱酸化装置へ送る。
【0059】
グリセロールを脱水してアクロレインにする反応は、製造されたアクロレインの1分子当たり2分子の水がつくられるので、ループ中に水が蓄積するのを避けるために流れ(3)上でブリードする。このブリードオフ(bled-off)生成物は直接除去するか、水処理システム、例えば生物学的処理プラントまたは酸化処理を経て排出できる。このブリードはアクロレインがリッチな相(9)に含まれる水量に従って大きく、または、小さくできる。水のブリードは流れ(18)中の水より重い有機の副産物と一緒に装置(G)で適切な水量を出すことで行うのが有利である。
【0060】
本発明の一つの実施例では、装置(C)からの流れ(6a)を装置(G)の上流側で流れ(10)に再合流させるか、装置(K)の上流側で混合段階(A)に再合流させて脱水反応装置(B)中の未反応グリセロールを再循環させることができる。この条件下では流れ(6)から装置(C)で分離した重質生成物を装置(G)または(K)で効果的に水ループから除去できる。
【0061】
本発明の一つの実施例(図1には図上記せず)では、脱水段階(a)で生じた流れの分離段階(b)から来る重質副産物お大部分の水から分離されたアクロレインがリッチな相(9)を吸収/蒸留段階から成る精製処理、例えばプロピレンの酸化でアクロレイン流を製造する下記文献に記載のような吸収/蒸留段階から成る精製処理へ送る。
【非特許文献3】Techniques de l'Ingenieur、Traitedes Procedes J 6 100 1-4
【0062】
一つ以上の熱交換器で冷却した後のアクロレインを含む流れ(9)の精製は一般に水または再循環水流の吸収から成り、その頂部からは非凝縮性生成物を取り出し、底でからアクロレインの希釈水溶液を回収する。この吸収は充填塔留プレートカラムで好ましくは連続的に実行することができる。凝縮性の軽質化合物、例えば窒素、酸素、一酸化炭素および二酸化炭素はカラムの最上部で除去するのが有利である。
【0063】
このアクロレイン水溶液は次いで蒸留によって分離する。これは例えば下記特許文献に記載の一連の蒸留塔または下記特許文献に記載の単一カラムで実行できる。
【特許文献20】米国特許第US 3 433 840号明細書
【特許文献21】欧州特許第EP 1 300 384号公報
【特許文献22】欧州特許第EP 1 474 374号公報
【0064】
この蒸留で主として水から成る流れ(一般にこの大部分は吸収段階へ再循環される)と、ガスまたは液体流(重量で80%、および好ましくは>94%のアクロレインを含み、水の含有量がアクロレインに対して15%以下、好ましくは<5%)とを回収することができる。
【0065】
アクロレインから成る流れ(9)は水による吸収なしに、蒸留で精製することができる。流れ(9)が非凝縮性気体をほとんど含まない場合には、この選択肢が有利には使われる。
【0066】
流れ(9)の精製段階の終わりに得られる液体または気体のアクロレイン流は触媒の存在下でメタンチオールとの反応でメチルメルカプトプロピオンアルデヒドMMP)の製造で用いることができる。必要に応じて精製した後、MMPを当業者に周知のBuchererまたStrecker合成法に従ってシアン化水素またはシアン化ナトリウムと反応させ、下記非特許文献4に記載のような反応生成物の転化後にメチオニンまたはメチオニンのヒドロキシ類似体にする。
【非特許文献4】Techniques de l'Ingenieur、Traite Geniedes procedes、J 6 410-1〜9
【0067】
アクリル酸の製造
[図2]は本発明プロセスを実行する系を示し、脱水段階(a)からの流れを分離する段階(b)からから来る重質副生成物を含まず、水の大部分を除いたアクロレインがリッチな相(9)に反応装置(M)中で触媒酸化反応(d)を行って、所望のアクリル酸から成る流れ(22)を得る。その後、この流れに段階(e)で一回以上の精製処理(0)を行って精製済みアクリル酸(25)を回収する。
【0068】
アクロレインを酸化してアクリル酸を得るための反応は分子酸素または分子酸素を含む混合物の存在下で、化触媒の存在下で200℃〜350℃、好ましくは250℃〜320℃の温度、1〜5バールの圧力下で実行される。この反応には酸化触媒として当業者に周知の全てのタイプの触媒が使用できる。一般に金属の形または酸化物、硫酸塩またはリン酸塩の形をしたMo、V、W、Re、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Te、Sb、Bi、Pt、Pd、RuおよびRhの中から選択される少なくとも一種の元素から成る固形物を使用する。特に、Moおよび/またはVおよび/またはWおよび/またはCuおよび/またはSbおよび/またはFeを主成分とする配合物が使用される。
【0069】
酸化反応装置(M)は固定床、流動床または循環流動床で運転できる。また、例えば下記文献に記載の触媒をモジュール化したプレート熱交換器を使用することもできる。
【特許文献23】欧州特許第EP 995491号公報
【特許文献24】欧州特許第EP 1147807号公報
【特許文献25】米国特許第US 2005/0020851号明細書
【0070】
酸化反応から出たガス混合物(22)はアクリル酸以外下記のような多様な化合物を含む:
(1)一般に使われる温度および圧力条件下で非凝縮性の気質化合物:最後の酸化で少量作られるか、プロセス中を再循環する、N2、未変換O2、CO、CO2
(2)凝縮可能な軽質化合物:特に、上記段階または脱水反応で生じるか、希釈剤中の残留水分、未反応アクロレイン、軽質アルデヒド、例えばホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、
(3)上記段階からの重質化合物残差:フルフラール、ベンズアルデヒド、マイレン酸、無水マレイン酸、安息香酸、フェノールまたはプロトアネモニン。
【0071】
所定グレードに対応するアクリル酸を得るために、上記混合物(22)を例えば、[図3]に示す少なくとも一回の精製工程を行う必要がある:
【0072】
この精製工程の最初の段階は向流吸収によるアクリル酸の抽出段階から成る。そのためにガス混合物(22)を、必要に応じて熱交換器(N)で冷却した後に、吸収塔(P)底部に導入し、カラム最上部から導入した溶剤(23)、一般に水と向流接触させる。一般に使う温度および圧力条件下(それぞれ50℃および2×105Pa下)で非凝縮性の軽質化合物はこの吸収塔の最上部から流れ(29)として除去される。このカラムで使用する溶剤(23)は水である。例えば、特許文献27、28および29に記載のような高沸点の疎水性溶剤で水を交換する。
【特許文献26】フランス特許第FR 2 146 386号公報
【特許文献27】米国特許第US 5 426 221号明細書
【特許文献28】フランス特許第FR 96/14397号公報
【0073】
この吸収で使われる溶剤の水はプロセスの外部供給源から与えることもできるが、その全部または一部をプロセスで生じる再循環水、例えば、分離装置(D)で分離した水または精製工程のオプションとして存在する共沸乾燥カラムの最上部流から回収した水にすることもできる。変形例では、水を吸収塔に加えない。この吸収段階の運転条件は以下の通り:
【0074】
気体反応混合物をカラム底部に130℃〜250℃の温度で導入する。水はカラム最上部に10℃〜60℃の温度で導入する。水および気体反応混合物のそれぞれの量は、水/アクリル酸重量比が1/1〜1/4の間になるようにする。運転は大気圧で実行する。
【0075】
吸収塔(P)を非常に軽質な化合物の蒸留カラムに連結できる。この非常に軽質の化合物は吸収塔の底部で回収したアクリル酸水の溶液中に低濃度で存在する基本的に反応で未変換または未回収のアクロレインである。この蒸留塔(Q)は6×103〜7×104Paの圧力下で運転され、最上部に上記吸収塔の底部からの流れ(24)を供給し、最上部でアクロレインがリッチなアクリル酸の流れ(26)を除去し、この流れ(26)は液体の流れ(27)の形で凝縮器を通して吸収塔の下部に少なくとも部分的に再循環され、この同じカラムの最上部で最終的に除去され、残留するガス流(28)はコンプレッサ(S)で再圧縮され、必要に応じてアクロレインの製造プロセスの酸化装置へ送られる。未変成アクロレインから取り出した精製段階後に得られるアクリル酸の水性混合物(25)(重量比1/1〜4/1)は「粗アクリル酸」と呼ばれる。
【0076】
所望するアクリル酸のグレードに従って、上記混合物は多くの特許に記載されている追加の処理、特に、水に不溶なアクリル酸の溶剤の存在下で実行される脱水段階へ送られる。この脱水段階は溶剤、水およびアクリル酸混合物の共沸蒸留で実行でき、溶剤/水共沸混合物を蒸留塔の最上部から取り出すことができる。アクリル酸は底部で回収され、それはさらに軽質化合物の蒸留(トッピング)および重質化合物の分離(テーリング)を受ける。それによって「テクニカルグレード(技術的等級)」と呼ばれるアクリル酸が得られる。その後、さらに精製、例えば分別結晶して、氷(glacial)グレードにすることができる。
【0077】
アクリル酸の精製法の例は下記とに記載されている。
【特許文献29】国際特許第WO 10/31949号公報
【特許文献30】フランス特許第FR 09.55111号公報
【特許文献31】フランス特許第FR 09.55112号公報
【特許文献32】フランス特許第FR 10.51961号公報
【0078】
本発明のアクリル酸製造方法の好ましい実施例では、グリセロールの脱水反応を気相で実行し、沸点の差による重質副産物の分離の段階を段階(a)から出た水の流れと段階(b)のアクロレインが少なくなった相とにに適用する。この実施例は例えば[図4]に図示してある:
【0079】
脱水反応装置(B)へ送られる気体流(5)は混和装置(A)で得られる。この混和装置(A)では、分離装置(D)の底部から出るアクロレインが少なくなった流れ(10)中に存在する重質不純物(18)を除去した後の、装置(G)から生じる水相(19)の再循環(3)で得られる高温の気体を使用してグリセロールを蒸発させる。グリセロール流(1)は液体の形で、必要に応じて約100℃〜200℃の温度、最高で280℃に予熱された後に、並流または逆流のガス流でアトマイザーノズルを介して混和室に注入できる。アトマイザーノズルはメカニカルな調節(ノズルオリフィスの寸法および形状の変更)を行うことで、基本的に水、酸素およびCO2、さらには窒素から成る再循環流(3)と接触して細かな液滴を形成できる。再循環流(3)は気相の熱酸化処理後または液相の熱酸化の場合(図示せず)には蒸発後に気体の形をしている。
【0080】
アトマイザーノズルはガス、例えば流れ(2)をノズル中に射出して、一般にスプレーノズルで得られるものより小さい液滴サイズにすることができる。このシステムを用いることで1mm以下、好ましくは300μm以下の大きさの小さな液滴を作ることができる。寸法がより細かいものはより急速に液滴流(1)を蒸気にすることができる。[図4]に示した図では反応装置に入る流れ(5)を予熱するのに必要なエネルギが過熱流(3)および(2)によって与えられる。混合装置(A)と反応装置(B)との間に熱交換器を配置することもできる。
【0081】
脱水反応を促進する酸素、空気または酸素含有ガスを流れ(13)を通して、または直接に混和装置(A)に供給できる。
【0082】
反応装置から出る気体反応流(6)は熱交換器(C)で70℃〜200℃、好ましくは110℃〜180℃の温度まで冷却されてから凝縮器(E)を有する凝縮カラム(D)に入り、カラム(D)に再循環される主として水およびアクロレインから成る液相(8)を製造されたアクロレインから成るガス流(9)から分離する。この流れ(9)は一般にアクロレイン/水重量比で1/0.02〜1/3、好ましくは1/0.5〜1/2の水の他に、軽室副生成物、例えばアセトアルデヒド、プロパンアルデヒド、アセトンを含み、場合によってはO2および希ガスCOおよびCO2を含む。カラム(D)の底部に出る液体流(10)からアクロレインをストリップするために、水中のアクリル酸を吸収するためのカラム(P)からの気体流(7)をカラム(D)の底部に供給することができる。あるいは、カラム(D)の底部をリボイルするか、カラム最上部に液体流(10)を供給し、底部にガス流を供給するストリッピングカラムを追加してアクロレインをストリップすることもできる。
【0083】
吸収塔の底部から出る液体流(10)をポンプで熱交換器(F)へ送り、100℃〜180℃、好ましくは110℃〜150℃の温度、1〜5バールの圧力にして装置(G)へ送り、蒸発させる。水より重質の有機物が濃縮された液体の蒸発残さ(18)は酸化装置(J)へ液体の形で噴射するか、プロセスから除去し、当業者に公知の任意の手段で処理する。主として水と少量の軽質副産物から成る気相(19)は空気流(13)と混合され、熱交換器(H)で350℃〜550℃、好ましくは400℃〜500℃の温度に加熱される。
【0084】
製造されたアクロレインを含むガス流(9)は熱交換器(L)によって160℃〜300℃の温度に再加熱されてからアクロレインの酸化触媒を収容した第2の固定床式多管反応装置(M)(反応熱を除去するための融解塩浴を有する)中に噴射される。この反応装置の出口でガス流体(22)は吸収塔(P)および蒸留塔(Q)を使用して回収/精製シーケンスを受ける。カラム(P)の最上部を出た気相(29)の一部をコンプレッサ(S)で再圧縮し、圧縮された流れ(7)をカラム(D)に戻す。他の部分(30)は熱酸化装置(J)へ送ることができる。
【0085】
プロセスのエネルギを最適化するために、熱酸化装置(J)からの煙道ガスを熱交、特に熱交換器(H)の加熱液として使用する。
【0086】
本発明のアクリル酸製造プロセスの他の好ましい実施例では、グリセロールの脱水反応を気相で実行し、沸点の差により重質副産物の分離段階を、脱水段階(a)に入る流れと、段階(a)から出た水の流れに適用する。この実施例は実験部分の実施例2に示してある。
【0087】
本発明プロセスのエネルギー最適化
本発明プロセスには冷却、凝縮しなければならない気体流および蒸発しなければならない液体流が存在する。圧縮システム、特にヒートポンプを使用して最も冷たい媒体から最も熱い媒体に熱を移すことで熱のロスを最少にすることができる。ヒートポンプは冷媒圧縮サイクルの原則に基づいて運転される熱力学器具である。圧縮して冷媒をガス状態から液体状態へ変えると発熱(凝縮)現象が起きて熱が生じる。逆に、減圧して冷媒液体状態からガス状態に変えると吸熱(蒸発)現象が起き、熱を吸収してクールダウンする。全ては閉回路中での状態変化をベースにする。
【0088】
本発明プロセスでは脱水反応装置の出口の反応流(6c)の凝縮エネルギを回収し、段階(b)でアクロレインがリッチな相と分離されたアクロレインが少ない水相中の水を蒸発させるためにヒートポンプを使用してするのが有利である。このヒートポンプは水または当業者に公知の任意の適切な冷媒、例えば1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンまたは1,1,1,3,3-ペンタフルオロペンタンまたは少なくとも一種のハイドロクロロオレフィン、例えば1- クロル-3,3,3- リフルオロプロペンまたは2- クロル--3,3,3-トリフルオロプロピレンを副有する組成物または例えば下記文献に記載の1〜50重量%のメチルテトラハイドロフランと5〜99重量%の式C49ORのノナフルオロブチルアルキルエーテルとの組成物(Rは1〜4の炭素原子を有する)を用いて運転できる。
【特許文献30】フランス特許第FR 2 928 648号公報
【0089】
脱水反応を気相で実行した場合、流れ(6)は150℃〜550℃、好ましくは250℃〜400℃の温度のガス混合物の形で反応装置から出る。この流れは最初の熱交換器で150℃〜200℃の温度に冷却される。一般にこの熱交換器で低圧のスチームを作ってエネルギを回収できる。第2の熱交換器でこの流れを70℃〜120℃、好ましくは90℃〜110℃の温度へ冷却して吸収塔(D)へ送る。そこでアクロレインがリッチな気相(9)から分離されたアクロレインが少ない液相(10)が底部から出る。この液体流(10)は第3の熱交換器によって脱水反応装置の吸込み圧力より高い0.1〜3バールの圧力と110℃〜200℃、好ましくは130℃〜160℃の温度で蒸発され、得られた気相は酸素と混合され、高い温度に加熱さてから熱酸化装置に注入される。
【0090】
水、その他任意の冷媒で運転されるヒートポンプは上記の第2熱交換器および上記熱交換器(G)に配置される。液体流は最初の熱交換器で蒸発され、コンプレッサで2〜30バール、好ましくは2〜8バールの圧力および110℃〜200℃の温度に圧縮される。得られる流れは第2の熱交換器で凝縮され、減圧され、冷却された液体流に戻される。すなわち、2つの熱交換器の間にループが形成ささる。
【0091】
脱水反応を気相で実行した場合には、エネルギを回収できる圧縮システムを脱水反応(a)と分離段階(b)との間で使って、分離段階(b)での気体反応流中に存在する水の凝縮エネルギを回収することができる。[図4]の実施例の配置では、脱水反応装置から出たガス流(6)を熱交換器(C)で冷却し、コンプレッサ(図4には図示せず)で再圧縮してから凝縮カラム(D)に注入する。カラム(D)および熱交換器(E)は反応装置(B)のものより少なくとも1バール、好ましくは少なくとも2バール高い圧力で運転する。底部で回収した液体流(10)は熱交換器(F)および装置(G)を通って蒸発され、熱交換器(F)および装置(G)はカラム(D)および(E)より少なくとも0.5バール、好ましくは少なくとも1.5バール低い圧力かつ反応装置(B)より高い圧力で運転される。圧縮はグリセロールの脱水段階(a)と段階(b)との間で実行され、また、一連の冷却熱交換器およびコンプレッサ列で実行できる。
【0092】
上記条件下で、カラム(D)の最上部の凝縮は凝縮エネルギを回収するのに十分な温熱レベルにある。このカラム(D)の最上部の凝縮とポンプ(R)の出口の蒸発とを組み合わせることができる。すなわち、カラム最上部から出たガス流体をポンプ(R)から出る再加熱状態にある液体流で直接冷却できる。換言すれば、熱交換器(C)(E)(F)および装置(G)は同じ熱交換器にすることができる。他の配置では、カラム(D)の最上部での凝縮を熱交換器(E)で実行してスチームを作り、それをアクロレインまたはアクリル酸の製造プロセスの他の位置またはプロセス外で使うことができる。
【0093】
脱水反応装置から出るガス流(6)を熱交換器(C)で低温、一般には110℃〜160℃に冷却し、熱交換器(C)でスチームを作り、アクロレインまたはアクリル酸の製造プロセスの他の位置またはプロセス外で使うこともできる。
【0094】
本発明方法で使うるヒートポンプを用いてプロセスの内外で使用する充分な温熱のレベルのスチームを作ることができる。
【0095】
本発明のプロセスは、したがって、空気にCO2の燃料および消色の消費を減らすことに寄与する。
【0096】
本発明プロセスで得られるバイオ資源起源のアクリル酸はアクリル酸の重合で製造されるホモポリマーおよび必要に応じて他の不飽和モノマーとのコポリマーの製造で使用でき、例えば部分的に中和された酸の重合するか、上記酸を重合して得られたポリアクリル酸を不完全に中和することで超吸収ポリマーを製造することができる。
【0097】
また、本発明方法で得られるバイオ資源起源のアクリル酸はこの酸のエステルまたはアミド形の誘導体の重合によってポリマーまたはコポリマーを製造するのに使用できる。
【実施例】
【0098】
実験の部
実施例1、2では本発明プロセスを示すためにASPENソフトウェアを使用した化学シミュレーションを行った。百分比は重量%を表す。1%以下の含有量のものは記載しない。圧力は絶対バールを表す。
【0099】
実施例1(図4参照)
グリセロールを気相脱水してアクロレインを製造し、それを酸化してアクリル酸を製造し、グリセロールの脱水段階の直後に凝縮によって重質生成物を分離し、水ループ上でフラッシュ蒸発によって重質生成物を分離
220℃に予熱されるグリセロールの液体流(1)(17.4T/h、99.0%のグリセロール)中にスプレーノズル(A)を通って再循環されたガス流体(3)(65.2T/h、478℃、2.8バール、63.6%の水、24.7%のN2、7.4%のO2、1.4%のアクリル酸、1.2%の酢酸)を噴射する。グリセロール液滴としてスプレーすることで短距離で蒸発させることができる。
【0100】
得られたガス流(5)(79.2T/h、320℃、2.8バール、21.7%のグリセロール、49.8%の水、19.3%の窒素、5.8%の酸素、1.3%のアクリル酸)を35m3の不均質酸脱水触媒を収容した固定床式多管反応装置(B)へ送る。多管反応装置(B)は反応で生じる熱を除去するための溶融塩浴に連結されている。ガス流体(6)(58.2%の水、19.3%のN2、4.6%の酸素、10.6%のアクロレイン、1.0%のアセトアルデヒド、1.5%のアクリル酸、1.1%の酢酸)は320℃、1.7バールでこの反応装置から出る。この流れを熱交換器(C)で160℃に冷却して重質生成物(68kg/h)の液体流(6a)と、気体留分(6c)とが回収する。液体流は熱酸化装置(J)へ送られる。気体留分は吸収塔(D)へ送られる。気体流(7)(21.8T/h、138℃、65.3%のN2、22.0%の水、3.7%のCO2、3.1%のCO.6%のO2)はカラム(D)の底部から噴射される。カラム(D)の最上部には部分凝縮器(E)がある。この部分凝縮器(E)から出る液相(8)(48.4T/h、75℃)はカラム(D)へ戻される。この部分凝縮器(E)からはアクロレインがリッチな気相流(9)(54.6T/h)が75℃、1.7バールで出る。このガス流体は54.6%のN2、15.6%のアクロレイン、14.0%の水、7.7%のO2、2.4%のCO2、2.4%のCOおよび1.6%のアセトアルデヒドから成る。
【0101】
上記ガス流体(9)は熱交換器(L)で240℃に再加熱されてから反応熱を除去するための溶融塩浴を備えた酸化触媒を収容した第2の固定床式多管反応装置(M)中に注入される。この反応装置の出口で得られるガス流(22)(54.6T/h、54.0%のN2、19.0%のアクリル酸、14.3%の水、3.0%のCO2、2.6%のCO、2.1%の酸素、1.5%の酢酸)は熱交換器(N)で160℃に冷却されてから吸収塔(P)に注入される。このカラムの最上部には6.0T/hで25℃の水の流れ(23)が噴射される。底部で回収される液相(24)は減圧運転されるカラム(Q)に送り、アクリル酸流(25)(15.4T/h、66.2%のアクリル酸、25.0%の水、5.1%の酢酸、3.1%の蟻酸)を得る。カラム(Q)の最上部で得られるガス流(26)(1.6T/h、72℃、0.3バール)を凝縮器を介してカラム(P)に送る。カラム(P)の最上部から出る気相(29)(45.2T/h、72℃、1.1バール、65.3%のN2、22.0%の水、3.7%のCO2、3.1%のCO、2.6%のO2)の一部をコンプレッサ(S)で1.8バールまで再加圧して上記の流れ(7)を作る。他の部分(30)は熱酸化装置(J)へ送る。
【0102】
カラム(D)の底部から出たアクロレインが少なくなった液体流(10)(46.3T/h、86℃、1.8バール、93.4%の水、0.04%のアクロレイン、1.9%の酢酸、2.6%のアクリル酸、1.0%のヒドロキシプロパン、1.1%のその他の重質有機化合物)はポンプによって熱交換器(F)に送られて、2.8バール、132℃になり、それをフラッシュドラム(G)でフラッシュ蒸留して液相(18)(4.6T/h)と気相(19)(41.7T/h、94.3%の水、2.5%のアクリル酸、1.5%の酢酸)を得る。この気相(19)を20.2T/h、2.8バール、166℃の空気流(13)と混合し、478℃に加熱して流れ(3)を作る。この熱は熱交換器(H)から運ばれる。熱交換器(H)の温熱は酸化装置(J)の煙道ガスから成る。
【0103】
実施例2(図5参照)
グリセロールの気相脱水によるアクロレインの製造する方法において、グリセロールの脱水段階の前にフラッシュ蒸発によって重質生成物を分離し、グリセロールの脱水段階の直後に凝縮によって重質生成物を分離する方法
25℃の液体のグリセロール流(1)(210kg/h、99.0%のグリセロール)と再循環された液体流(3)(519kg/h、124℃、93%の水、2.6%の酢酸、2.1%のアクリル酸および1.0%のヒドロキシプロパン)とを(A)で混合し、熱交換器(C)を通して25バール、212℃に予熱し、2.8絶対バールで運転されるフラッシュ蒸留塔(K)へ送って重質副産物を分離する。このカラムはポンプ(S)とグリセロールおよび水の蒸発に必要な熱を与える熱交換器(H)とを備えた液体ループを有する。カラム(K)の底部で244℃の重質副産物流(20)(3kg/h)が回収される。この副産物は除去される。このカラム(K)の最上部から出た気相は熱交換器(T)で303℃に再加熱され、酸素流(13)(14kg/h)と混合されて流れ(5)(740kg/h、2.8絶対バール、300℃、65%の水、28%のグリセロール、1.9%の酸素、1.8%の酢酸、1.5%のアクリル酸)を形成する。
【0104】
このガス流(5)は反応熱を除去するための溶融塩浴に連結された、不均質脱水酸触媒から成る固定床式多管反応装置(B)へ送られる。この反応装置から出るガス流(6)(76%の水、13.6%のアクロレイン、2.1%の酢酸、1.7%のアクリル酸、1.2%のアセトアルデヒド、1.0%の一酸化炭素)は314℃である。この流れを上記熱交換器(C)で123℃に冷却そして、重質生成物(29kg/h)の液体流(6a)と気体留分(6c)とを回収する。液体流は熱酸化装置(J)に送られる。気体留分は吸収塔(D)へ送られる。このカラム(D)は最上部に凝縮器(E)を有する。その最上部で気相(7)(26kg/h、0℃、2.3バール、29%のCO、22%のCO2、19%のアセトアルデヒド、18%のホルムアルデヒド、13%のO2)が回収され、凝縮器(E)の底部で液相が回収される。この液相の一部(2kg/h、0℃、2.3バール、78%のアセトアルデヒド、15%のホルムアルデヒド、4%のアクロレイン)は取り出され、一部はカラムへ再循環される。側流をカラムから取り出し、熱交換器(F)で凝縮してアクロレイン流(9)(109kg/h、30℃、92.2%のアクロレイン、4.9%の水、2.2%のアセトアルデヒド)を得る。カラム(D)の底部を出るアクロレインが少なくナョタ液体流(10)(574kg/h、124℃、93%の水、<0.1%のアクロレイン、2.6%の酢酸、2.1%のアクリル酸、1.0%ヒドロキシプロパノン)は流れ(18)と上記の流れ(3)とに分割される。前者は除去される(55kg/h)。
【0105】
実施例3(本発明の実験室実験)
脱水酸触媒は300〜500μmの粒径に粉砕された細孔体積を有する酸化チタンに燐タングステン酸水溶液を含浸させて製造した。この触媒を110℃の換気オーブン中で乾燥してから500℃で3時間か焼した。7ml容積の触媒を280℃に加熱される乾燥器中に配置した直径が13mmの316Lステンレス鋼でできたが垂直な反応装置に入れた。
【0106】
50重量%の純粋なグリセロールと50重量%の水とから成る溶液を15グラム/時の流速で、流速がそれぞれ1.2および18標準リッター/時である酸素および窒素と混合し、それを反応装置に連結され蒸発器へ送り、混合物を280℃に加熱する。反応装置の出口の排出ガスは、物質収支を計算するために、最初に120gおよび80gの水を入れた0℃に冷却された2つのトラップに送って完全にアクロレインをトラップするか、0℃に冷却されたタンクへ送って反応で生じた大部分の水と重質生成物とをトラップする。いずれの場合でも、未凝縮ガスは水酸化ナトリウム溶液を収容したトラップで水洗した後に大気中に除去した。実験全体にわたって反応装置の圧降下を測定した。
【0107】
物質収支は水を充填した直列に配置したトラップで時間t=2時間〜t=3時間30、時間t=21時間〜t=22時間30で求めた。トラップ中のグリセロールおよびアクロレインの含有量はガスクロマトグラフィで測定した。グリセロール転化率およびアクロレイン収率は下記の式に従って計算した:
グリセロール転化率(%)=((物質収支期間の全体で反応装置に注入したグリセロールのモル数)−(2つのトラップで回収したグリセロールモル数))/(物質収支期間の全体で反応装置に注入したグリセロールのモル数)×100
アクロレインの収率(%)=(2つのトラップで回収したアクロレインのモル数)/(物質収支期間の全体で反応装置に注入したグリセロールのモル数)×100
実験結果は[表1]示した。
【0108】
大部分の水と重質生成物はタンクに集めた。時間t=1時間〜t=2時間の間および時間t=3時間30分〜t=21時間の間集めた。この水溶液を部分真空下で加熱された回転乾燥機上で30℃で2時間処理してアクロレインを蒸発させた。タンクに集め、蒸発させることで[図1]に示す段階(D)をシミュレーションすることができる。[図1]の段階(G)をシミュレーションするためにアクロレインから取り出した水溶液を回転乾燥機で75℃で部分真空下に蒸発させて再循環水用の凝縮液を回収し、高度に色の付いた有機生成物の残留液を回収した。[図1]の段階(A)および(B)をシミュレーションするために、上記凝縮液の再循環水をグリセロールと混合して50%グリセロール溶液としてグリセロールの脱水実験を繰り返した。結果は[表1]に示した。蒸留によって重質生成物を分離して得た再循環水を使用することで、純水を使用したときと同じグリセロール転化率およびアクロレイン収率が得られた。
【0109】
実施例4(比較例)
実施例3と同様に、グリセロールの脱水反応を50重量%の純粋なグリセロールと50重量%の水とから成る溶液で実行し、大部分の水および重質生成物をタンクに集め、それを部分真空下に30℃に加熱した回転乾燥機上で2時間処理してアクロレインを蒸発させた。再循環された重質生成物と水との混合物から成る回収された水溶液を50%の純粋なグリセロールと直接混合してグリセロール溶液を調製し、グリセロールの脱水実験を繰り返した。3時間30分で反応装置に0.1バールの圧力降下が観測され、5時間後には圧力は0.3バールに達し、7時間後には1バールを超えたので実験は継続できなかった。結果は[表1]に示す。重質生成物を含む再循環水を使用した場合には、圧力が非常に急速に上昇し、反応装置がブロックすることが観測された。
【0110】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の(a)〜(c):
(a) グリセロールに脱水反応を行ってアクロレインを含む水性流を作り、
(b) 段階(a)で得られた水性流をアクロレインがリッチな相およびアクロレインが少なくなった相とに分離し、
(c) アクロレインが少なくなった相の全部または一部を段階(a)へ再循環させる、
の段階を有するグリセロールからアクロレインを製造する方法において、
沸点の差によって重質副産物を分離する段階を実行し、この段階を、段階(a)を入れる流れ、段階(a)から出る水性流または段階(b)のアクロレインが少なくなった相の少なくとも一つの流れに対して行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記アクロレインがリッチに対して吸収/蒸留による精製処理をさらに行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも下記の(a)〜(e):
(a) グリセロールに脱水反応を行ってアクロレインを含む水性流を作り、
(b) 段階(a)で得られた水性流をアクロレインがリッチな相およびアクロレインが少なくなった相とに分離し、
(c) アクロレインが少なくなった相の全部または一部を段階(a)へ再循環させ、
(d) アクロレインがリッチな相に触媒酸化反応を行ってアクリル酸を含む流れを作り、
(e) 段階(d)で得られた流れに一回以上の精製処理を行い、精製したアクリル酸が回収する、
の段階を有するグリセロールからアクロレインを製造する方法において、
沸点の差によって重質副産物を分離する段階を実行し、この段階を、段階(a)を入れる流れ、段階(a)から出る水性流または段階(b)のアクロレインが少なくなった相の少なくとも一つの流れに対して行うことを特徴とする方法。
【請求項4】
上記の沸点の差によって重質副産物を分離する段階を、段階(a)に入る水性流および/または段階(b)のアクロレインが少なくなった相に行い、段階(a)から出る水性流に対して沸点の差によって重質副産物を分離する段階をさらに組み合わせるまたは、組み合わせない、製造〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
重質副産物の分離段階を、分離される流れが最初に液体である場合には蒸発で実行し、分離される流れが最初に気体である場合には凝縮で実行し、複数の分離段階を用いる場合にはこれらを組み合わせて実行する製造1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
重質化合物を除去する段階をグリセロール(1)と再循環された水の豊富な位相(3)との混合物の蒸発によって装置(K)で実行して、グリセロールおよび水がリッチで、重質化合物が少なくなった相(流れ5)と、水より重い有機化合物がリッチな液体または固体の相(20)と作り、前者は脱水反応装置(B)に送り、後者は除去する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法
【請求項7】
上記の重い化合物の除去段階を、装置(C)で脱水反応装置(B)から出る流れ(6)を処理して、水より重い有機化合物が少なくなった気相(6c)と水より重い有機化合物がリッチな液体または固体の相(6a)とを作り、後者を除去することでて実行する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記の重い化合物の除去段階を装置(G)で分離装置(D)から出る流れ(10)の蒸発で実行しけ、水がリッチな気相(3)と水より重い有機化合物がリッチな液体または固体の相(18)とを作り、前者は再循環し、後者は除去する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応ガス流体を脱水反応装置(B)へ送る前に、混合段階(A)でグリセロール流を蒸発させるために、気体流(3)の形で脱水段階(a)に再循環される水性相を用いる請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
グリセロール流をスプレーまたはアトマイズノズルを介して混和室(A)に噴射する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
段階(a)を気相で実行し、ヒートポンプを用いて、段階(a)で気体反応流の水の凝縮エネルギを回収し、段階(b)でアクロレインがリッチな相から分離されたアクロレインが少なくなった水相を蒸発させる請求項1介して0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
段階(a) を気相で実行し、段階(a)で生じる気体流を圧縮し、段階(b)で反応流中の水の凝縮エネルギを回収をする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513592(P2013−513592A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542606(P2012−542606)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052668
【国際公開番号】WO2011/073552
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】