説明

グルコシダーゼ活性阻害用組成物及びそのスクリーニング方法

【課題】グルコシダーゼ活性阻害用組成物及びそのスクリーニング方法の提供。さらに、抗HIV活性を有するグルコシダーゼ活性阻害用組成物及びそのスクリーニング方法の提供。
【解決手段】α−グルコシダーゼの立体構造を標的として活性部位を抽出し、その部位に適合する化合物を既知の化合物データベースからコンピュータを用いてバーチャルスクリーニングすることにより、優れたグルコシダーゼ阻害活性を有し、ヒト等の摂取において安全性が高く、さらに抗HIV活性も有する新規のグルコシダーゼ活性阻害用組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコシダーゼ活性阻害用組成物及びそのスクリーニング方法に関する。さらに、抗HIV活性を有するグルコシダーゼ活性阻害用組成物及びそのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスやヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus,以下、HIVとする)等のウイルスは、糖鎖の認識によって、宿主とするヒト等に特異的に結合し、感染することが知られている。そこで、ウイルスの宿主への結合を抑制するために、糖鎖を制御し、非感染性のウイルスとする様々な物質のスクリーニングが行われている。
糖鎖の制御はグルコシダーゼ活性を阻害することで行うことができることから、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物の培養液から単離されたα−グルコシダーゼ阻害活性を有する化合物(A−76202)や、薬用植物ディクロスタキス・シネレアから単離されるα−グルコシダーゼ阻害剤化合物(−)−メスキトール等が見出され、抗肥満剤、抗糖尿病剤又は抗HIV剤として有用であるとされている(特許文献1、2参照)。
【0003】
また、ピパタリン、セサミン、ペリトリン等のα−グルコシダーゼ阻害物質を有する製薬調合物によって、糖尿病、癌、B型/C型肝炎、HIV、AIDS等の患者にα−グルコシダーゼ阻害効果を提供する方法等も開発されている(特許文献3参照)。
しかし、これらの物質は、グルコシダーゼ阻害活性を有することは確認されているものの、投与における人体等への安全性については示されていない。
また、これらの物質を、例えば抗HIV剤として用いる場合においても、他の抗HIV剤と3〜4剤を併用する多剤併用療法に用いられる可能性が高い。多剤併用療法では、副作用、服用の複雑さ、耐性菌の出現等様々な欠点があり、さらにHIVを完全に排除できないという問題がある。そこで、優れたグルコシダーゼ阻害活性を有し、ヒト等の摂取において安全性が高く、さらに抗HIV剤等に用いる場合には単剤で有効な効果を示す物質の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−89495号公報
【特許文献2】特表2006−513178号公報
【特許文献3】特表2006−517910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、グルコシダーゼ活性阻害用組成物及びそのスクリーニング方法の提供を課題とする。さらに、抗HIV活性を有するグルコシダーゼ活性阻害用組成物及びそのスクリーニング方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、α−グルコシダーゼの立体構造を標的として活性部位を抽出し、その部位に適合する物質を既知の化合物データベースからコンピュータを用いてバーチャルスクリーニングすることにより、優れたグルコシダーゼ阻害活性を有し、ヒト等の摂取において安全性が高く、さらに抗HIV活性も有する新規の物質が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は次の(1)〜(8)のグルコシダーゼ活性阻害用組成物及び該組成物のスクリーニング方法等に関する。
(1)下記の式[化1]で表される構造を母核として有する化合物であるグルコシダーゼ活性阻害用組成物。
[化1]

(2)さらに抗HIV活性を有する上記(1)に記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物。
(3)置換基が、1)R1-6は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のシリル基から選ばれるいずれかであり、2)R7は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のシリル基、環式炭化水素誘導体、縮合多環式炭化水素誘導体、環式ヘテロ炭化水素誘導体、縮合ヘテロ多環式炭化水素誘導体から選ばれるいずれかの化合物である上記(1)又は(2)に記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物。
(4)下記の式[化4]〜[化13]のいずれかで表される化合物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物。
[化4]

[化5]

[化6]

[化7]

[化8]

[化9]

[化10]

[化11]

[化12]

[化13]

(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物を有効成分として含む抗HIV剤。
(6)次のスクリーニングルールによってin silicoバーチャルスクリーニングを行うことによるグルコシダーゼ活性阻害用組成物のスクリーニング方法。
1)グルコシダーゼのX線結晶解析像に対して推定される活性部位のタンパク質表面を、半径1〜2オングストロームの球を用いて仮想的に覆う
2)活性部位内に半径1〜2オングストロームの球を1〜10個設置し、化合物とタンパク質の疎水性相互作用を生じる可能性空間とする
3)さらに、活性部位内に半径1〜2オングストロームの球を1〜10個設置し、リガンドとタンパク質の親水性相互作用を生じる可能性空間とする
4)活性部位内に設置した可能性空間に少なくとも1〜5以上の原子が存在し、かつ、活性部位を逸脱しない化合物の検索を行う
(7)さらに、次のスクリーニングルールによってin silicoバーチャルスクリーニングを行うことによるグルコシダーゼ阻害活性を有する上記(6)に記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物のスクリーニング方法。
1)グルコシダーゼのX線結晶解析像に対して推定される活性部位空間に対して、1つの化合物当り10〜10000のコンフォマーを仮想的に作成し、活性部位空間に化合物を配置する
2)得られたモデルを水素結合、配位結合、イオン的相互作用、化合物自由度、脱溶媒和エネルギー、化合物の埋没度、物理的な接触及び化合物の基質結合部位に対する充填率について、Chemical Computing Group Inc.のMOEソフトウエアのスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする
3)上記2)で次に、得られた化合物の群に対し、水素結合、配位結合、イオン的相互作用を重要視したスクリーニングを行い、同様のスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする
4)さらに、上記3)で得られた化合物の群に対し、水素結合を重要視したスクリーニングを行い、同様のスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする
(8)さらに、グルコシダーゼ阻害活性をバイオアッセイによってスクリーニングする上記(6)又は(7)に記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のグルコシダーゼ活性阻害用組成物は、優れたグルコシダーゼ阻害活性を有する新規な物質であり、糖鎖を制御できることから、糖鎖生物学における研究用試薬等に用いることができる。また、ヒト等の摂取において安全性が高く、さらに抗HIV活性を有することから、抗HIV剤の有効成分として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】1次スクリーニングにおけるリガンドとタンパク質の親水性相互作用を生じる可能性空間のイメージを示した図である(実施例1)。
【図2】グルコシダーゼ活性阻害用組成物のグルコシダーゼへの結合モデルを示した図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の「グルコシダーゼ活性阻害用組成物」とは、下記の式[化1]で表される構造を母核として有するグルコシダーゼ活性阻害用組成物であればいずれのものも含まれる。
【0011】
[化1]

【0012】
本発明の「グルコシダーゼ活性阻害用組成物」は抗HIV活性を有している物質であることが好ましく、さらに細胞毒性の低い、人体等に安全な物質であることが好ましい。
このような物質として、置換基が、1)R1-6は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基又は炭素数1〜10のシリル基から選ばれるいずれかからなる化合物や、2)R7は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のシリル基、環式炭化水素誘導体、縮合多環式炭化水素誘導体、環式ヘテロ炭化水素誘導体又は縮合ヘテロ多環式炭化水素誘導体から選ばれるいずれかからなる化合物が挙げられる。さらに、化学式4〜化学式13([化4]〜[化13])で表される化合物等が挙げられる。
【0013】
本発明の「抗HIV剤」とは、抗HIV活性を有するグルコシダーゼ活性阻害用組成物を有効成分として含む剤であればいずれの剤も含むことができる。本発明の抗HIV活性を有するグルコシダーゼ活性阻害用組成物のみからなる剤であってもよく、また、薬物学的に許容される担体を含むものであってもよい。
【0014】
本発明の「グルコシダーゼ活性阻害用組成物」は、in silicoバーチャルスクリーニングを行うことによってスクリーニングされることは好ましい。このスクリーニングには、次のようなスクリーニングルールを用いることができる。
1)グルコシダーゼのX線結晶解析像に対して推定される活性部位のタンパク質表面を、半径1〜2オングストロームの球を用いて覆う。
2)活性部位内に半径1〜2オングストロームの球を1〜10個設置し、化合物とタンパク質の疎水性相互作用を生じる可能性空間とする。さらに、活性部位内に半径1〜2オングストロームの球を1〜10個設置し、リガンドとタンパク質の親水性相互作用を生じる可能性空間とする。
3)活性部位内に設置した可能性空間に少なくとも1〜5以上の原子が存在し、かつ、活性部位を逸脱しない化合物の検索を行う。
【0015】
さらに、本発明の「グルコシダーゼ活性阻害用組成物」のスクリーニングには、次のようなスクリーニングルールを用いることができる。
1)グルコシダーゼのX線結晶解析像に対して推定される活性部位空間に対して、1つの化合物当り10〜10000のコンフォマーを作成し、活性部位空間に化合物を配置する。
2)得られたモデルを水素結合、配位結合、イオン的相互作用、化合物自由度、脱溶媒和エネルギー、化合物の埋没度、物理的な接触及び化合物の基質結合部位に対する充填率について、Chemical Computing Group Inc.のMOEソフトウエアのスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする。
3)上記2)で次に、得られた化合物の群に対し、水素結合、配位結合、イオン的相互作用を重要視したスクリーニングを行い、同様のスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする。
4)さらに、上記3)で得られた化合物の群に対し、水素結合を重要視したスクリーニングを行い、同様のスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする。
【0016】
さらに、本発明の「グルコシダーゼ活性阻害用組成物」のスクリーニングには、グルコシダーゼ阻害活性をバイオアッセイによってスクリーニングしてもよい。
【0017】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
グルコシダーゼ活性阻害用組成物のスクリーニング方法
1.1次スクリーニング
in silicoバーチャルスクリーニングを、Chemical Computing Group Inc.のMOEソフトウエアを用いて以下の1次スクリーニングルールに従い行った。
標的酵素となるグルコシダーゼの立体構造座標を用いて、基質が結合可能な部位を探索し、基質の分子サイズに適合するくぼみを探索し、得られた最適なくぼみ空間を基質結合部位と決定した。得られた基質結合部位を解析し基質結合部位の形状を抽出し基質結合部位モデルを作成した。そのモデルに対して、阻害剤候補化合物を当てはめ基質結合部位よりも大きな分子を排除した。
【0019】
<1次スクリーニングルール>
1)グルコシダーゼのX線結晶解析像に対して推定される活性部位のタンパク質表面を、半径1〜2オングストロームの球を用いて仮想的に覆った。
2)活性部位内に半径1〜2オングストロームの球を1〜10個設置し、化合物とタンパク質の疎水性相互作用を生じる可能性空間とした。
3)さらに、活性部位内に半径1〜2オングストロームの球を1〜10個設置し、リガンドとタンパク質の親水性相互作用を生じる可能性空間として、紫色のメッシュの玉で示した(図1)
4)活性部位内に設置した可能性空間に少なくとも1〜5以上の原子が存在し、かつ、活性部位を逸脱しない化合物の検索を行った。
【0020】
この1次スクリーニングにより、6,000,000構造の化合物データベース“An adaptation for the Lipinski’s Rule of five”から、スクリーニングルールに当てはまる28,441個の化合物を得た。
【0021】
2.2次スクリーニング
1次スクリーニングと同様に、Chemical Computing Group Inc.のMOEソフトウエアを用いて、以下の2次スクリーニングルールに従い、in silicoバーチャルスクリーニングを行った。
【0022】
<2次スクリーニングルール>
1)グルコシダーゼのX線結晶解析像に対して推定される活性部位空間に対して、1つの化合物当り10〜10000のコンフォマーを仮想的に作成し、活性部位空間に化合物を配置した。
2)得られたモデルの水素結合、配位結合、イオン的相互作用、化合物自由度、脱溶媒和エネルギー、化合物の埋没度、物理的な接触及び化合物の基質結合部位に対する充填率について、Chemical Computing Group Inc.のMOEソフトウエアのスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とした。
3)上記2)で得られた化合物の群に対し、水素結合、配位結合、イオン的相互作用を重要視したスクリーニングを行い、同様のスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とした。
4)さらに、上記3)で得られた化合物の群に対し、水素結合を重要視したスクリーニングを行い、同様のスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とした。
これにより、計算精度を高め、化合物数をしぼることができた。
【0023】
この2次スクリーニングにより、1次スクリーニングによって得られた28,441個の化合物から、スクリーニングルールに当てはまる2個の化合物を得た。これらの化合物の構造を化学式2(下記、[化2])及び化学式3(下記、[化3])として示した。
【0024】
[化2]

【0025】
[化3]

【0026】
3.3次スクリーニング
2次スクリーニングで得られた2個の化合物のグルコシダーゼ阻害活性をバイオアッセイによりスクリーニングした。
【0027】
1)in vitro アッセイ
酵素反応は次のように行った。
各化合物(いずれも純度99%以上)について、10mMジメチルスルフォキシド溶液を作製した。この溶液をジメチルスルフォキシドで希釈し、各化合物を78μM〜10mM含む化合物溶液を得た。
各濃度の化合物溶液5μLをそれぞれ用い、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)20μL、グルコシダーゼ溶液25μLとともに37℃・20分・600rpmで振盪しプレインキュベートした。
その後、これに基質溶液(3mM p−Nitrophenyl α‐D‐glucopyranoside/100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0))25μLを加え、37℃・20分・600rpmで振盪し酵素反応を行い、0.3M K2CO3 75μLで停止した。各化合物におけるグルコシダーゼ阻害活性は、反応により遊離したパラニトロフェノールの405nmにおける吸光度を測定することにより求めた。
【0028】
その結果、この2個の化合物のうち、化学式2で表される化合物がグルコシダーゼ阻害活性を有することが確認され、この化合物を本発明のグルコシダーゼ活性阻害用組成物とした。
【0029】
また、上記で得られたグルコシダーゼ活性阻害用組成物と同じ構造(上記、式[化1]で表される構造)を母核として有する化合物(化学式4〜化学式13(下記、式[化4]〜[化13]で表される化合物))をナミキ商事株式会社より購入し、本発明のグルコシダーゼ活性阻害用組成物とした。
さらに、図2において、化学式7又は化学式10で表される化合物がグルコシダーゼ活性阻害用組成物として、どのようにグルコシダーゼに結合するかを結合モデルで示した。
【0030】
[化4]

【0031】
[化5]

【0032】
[化6]

【0033】
[化7]

【0034】
[化8]

【0035】
[化9]

【0036】
[化10]

【0037】
[化11]

【0038】
[化12]

【0039】
[化13]

【0040】
2)Cell base アッセイ
上記で得られたグルコシダーゼ活性阻害用組成物を用い、HIV感染細胞に対する効果を調べた。
即ち、上記で得られた各グルコシダーゼ活性阻害用組成物をDMSOに溶解し、100mMとしたものをそれぞれHIV感染細胞に付与し、Cell baseアッセイによって50%細胞死阻止濃度(EC50)及び細胞毒性濃度(CC50)を調べ、治療係数SI値(SI値=CC50値/EC50値)を求めた。
HIV感染細胞は、FCSを含むDMEM培地に懸濁し、マイクロプレートに播種したヒトT細胞株に、常法により作製した感染性HIV−1(NL432株)を感染させ、37℃で培養することで得たものを用いた。
また、各化合物によるHIV感染細胞の増殖阻害効果は、HIV感染細胞を培養した後、培養上清中のHIV−1逆転写酵素量を、ポリARNAを鋳型とする逆転写酵素アッセイにより定量することで評価した。さらに、細胞毒性をWST法(WSTアッセイキット)により評価した。
比較として、ナミキ商事株式会社より購入した化学式14(下記、式[化14])で表される化合物を用いて、50%細胞死阻止濃度(EC50)及び細胞毒性濃度(CC50)を調べ、治療係数SI値(SI値=CC50値/EC50値)を同様に求めた。
その結果、表1に示したように、本発明のグルコシダーゼ活性阻害用組成物は、治療係数SI値が抗HIV活性を有する公知の化合物より高く、強い抗HIV活性を有することが確認された。
【0041】
[化14]

【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のグルコシダーゼ活性阻害用組成物は、糖鎖を制御できる優れたグルコシダーゼ活性阻害用組成物であり、糖鎖生物学における研究用試薬等に用いることができる。また、ヒト等の摂取において安全性が高く、抗HIV剤の有効成分として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式[化1]で表される構造を母核として有する化合物であるグルコシダーゼ活性阻害用組成物。
[化1]

【請求項2】
さらに抗HIV活性を有する請求項1に記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物。
【請求項3】
置換基が、1)R1-6は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のシリル基から選ばれるいずれかであり、2)R7は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のシリル基、環式炭化水素誘導体、縮合多環式炭化水素誘導体、環式ヘテロ炭化水素誘導体、縮合ヘテロ多環式炭化水素誘導体から選ばれるいずれかの化合物である請求項1又は2に記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物。
【請求項4】
下記の式[化4]〜[化13]のいずれかで表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物。
[化4]

[化5]

[化6]

[化7]

[化8]

[化9]

[化10]

[化11]

[化12]

[化13]

【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物を有効成分として含む抗HIV剤。
【請求項6】
次のスクリーニングルールによってin silicoバーチャルスクリーニングを行うことによるグルコシダーゼ活性阻害用組成物のスクリーニング方法。
1)グルコシダーゼのX線結晶解析像に対して推定される活性部位のタンパク質表面を、半径1〜2オングストロームの球を用いて仮想的に覆う
2)活性部位内に半径1〜2オングストロームの球を1〜10個設置し、化合物とタンパク質の疎水性相互作用を生じる可能性空間とする
3)さらに、活性部位内に半径1〜2オングストロームの球を1〜10個設置し、リガンドとタンパク質の親水性相互作用を生じる可能性空間とする
4)活性部位内に設置した可能性空間に少なくとも1〜5以上の原子が存在し、かつ、活性部位を逸脱しない化合物の検索を行う
【請求項7】
さらに、次のスクリーニングルールによってin silicoバーチャルスクリーニングを行うことによるグルコシダーゼ阻害活性を有する請求項6に記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物のスクリーニング方法。
1)グルコシダーゼのX線結晶解析像に対して推定される活性部位空間に対して、1つの化合物当り10〜10000のコンフォマーを仮想的に作成し、活性部位空間に化合物を配置する
2)得られたモデルを水素結合、配位結合、イオン的相互作用、化合物自由度、脱溶媒和エネルギー、化合物の埋没度、物理的な接触及び化合物の基質結合部位に対する充填率について、Chemical Computing Group Inc.のMOEソフトウエアのスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする
3)上記2)で次に、得られた化合物の群に対し、水素結合、配位結合、イオン的相互作用を重要視したスクリーニングを行い、同様のスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする
4)さらに、上記3)で得られた化合物の群に対し、水素結合を重要視したスクリーニングを行い、同様のスコアリング関数によって評価し、上位1/3をヒット化合物とする
【請求項8】
さらに、グルコシダーゼ阻害活性をバイオアッセイによってスクリーニングする請求項6又は7に記載のグルコシダーゼ活性阻害用組成物のスクリーニング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−206959(P2012−206959A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72427(P2011−72427)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】