説明

グルコピラノシル−置換シクロプロピルベンゼン誘導体、そのような化合物を含む医薬組成物、SGLT阻害剤としてのそれらの使用及びそれらの製造方法

【課題】本発明の化合物は、代謝性疾患の治療に適する。
【解決手段】請求項1に記載のグルコピラノシル-置換シクロプロピル-ベンゼン誘導体、それらの互変異性体、立体異性体又はそれらの混合物及びそれらの塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式I:
【化1】

(基R3は、以下に定義するものである)
のグルコピラノシル-置換シクロプロピル-ベンゼン誘導体、並びにそれらの互変異性体、立体異性体、混合物及びそれらの塩に関する。本発明は、更に、本発明の式Iの化合物を含む医薬組成物及び代謝性疾患の治療用医薬組成物を製造するための、本発明の化合物の使用に関する。また、本発明は、本発明の化合物及び医薬組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文献によれば、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT2に対して阻害効果を有する化合物が、疾患、特には、糖尿病の治療のために提案されている。
【0003】
グルコピラノシル-置換芳香族基及びそれらの製造及びSGLT2阻害剤として見込まれるそれらの活性が、国際出願WO 2005/092877及びその中において引用された刊行物に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願WO 2005/092877
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的
本発明の目的は、新規グルコピラノシル-置換シクロプロピル-ベンゼン誘導体、特には、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT、特にはSGLT2に対して活性のあるものを見い出すことにある。本発明の更なる目的は、既知の、構造的に類似する化合物と比較して、インビトロ及び/又はインビボでナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT2に対して強化された阻害作用を有し及び/又はより良好な薬理学的又は薬物速度論的特性を有するグルコピラノシル-置換シクロプロピル-ベンゼン誘導体を発見することにある。
【0006】
本発明の更なる目的は、代謝性疾患、特には、糖尿病の予防及び/又は治療に適する新規医薬組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、先の及び以下の記載から直接的に当業者に明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の対象
第1の態様においては、本発明は、式Iのグルコピラノシル-置換シクロプロピル-ベンゼン誘導体:
【0009】
【化2】

(式中、R3は、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロプ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、メチルオキシ、エチルオキシ、イソプロピルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ、テトラヒドロピラン-4-イルオキシ、1-アセチル-ピペリジン-4-イルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル及びエチルスルファニルを示す)、又はβ-D-グルコピラノシル基のヒドロキシル基の1以上が、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C1-3-アルキル)-カルボニルより選ばれる基でアシル化されている、それらの誘導体;それらの互変異性体、立体異性体又はそれらの混合物;及びそれらの生理学的に許容可能な塩に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物及びそれらの生理学的に許容可能な塩は、有益な薬理学的特性、特には、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT、特にはSGLT2に対する阻害効果を有する。更に、本発明の化合物は、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT1に対する阻害効果を有し得る。SGLT1に対する見込みのある阻害効果と比較して、本発明の化合物は、好ましくは、選択的に、SGLT2を阻害する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、また、本発明の化合物と無機又は有機酸との生理学的に許容可能な塩に関する。
【0012】
本発明は、また、少なくとも1つの、本発明の化合物又は本発明の生理学的に許容可能な塩を、場合により、1以上の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物に関する。
【0013】
本発明は、また、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT、特にはSGLT2を阻害することにより影響を受け得る疾患又は状態の治療又は予防に適する医薬組成物を製造するための、少なくとも1つの、本発明の化合物又はそれらの生理学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0014】
本発明は、また、1以上の代謝性疾患の治療に適する医薬組成物を製造するための、少なくとも1つの、本発明の化合物又はそれらの生理学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0015】
本発明は、また、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT、特にはSGLT2を阻害するための医薬組成物を製造するための、少なくとも1つの、本発明の化合物又はそれらの生理学的に許容可能な塩の使用に関する。
【0016】
本発明は、更に、本発明の医薬組成物を製造する方法であって、本発明の化合物又はそれらの生理学的に許容可能な塩の1つを、非化学的な方法により1以上の不活性担体及び/又は希釈剤に導入する方法に関する。
【0017】
本発明は、また、本発明の一般式Iの化合物を製造する方法であって、
a)先に及び以下で定義した一般式Iの化合物を製造するために、一般式IIの化合物:
【0018】
【化3】

(式中、R'は、H、C1-4-アルキル、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、アリールカルボニル及びアリール-(C1-3-アルキル)-カルボニルを示し、ここで、アルキル又はアリール基は、ハロゲンにより一置換又は多置換されていてもよく;
R8a、R8b、R8c、R8dは、互いに独立して、水素又はアシル基、アリル基、ベンジル基又はRaRbRcSi基又はケタール又はアセタール基、特には、アルキリデン又はアリールアルキリデンケタール又はアセタール基を示し、ここで、各ケースにおいて、2つの隣接基R8a、R8b、R8c、R8dは、環状ケタール又はアセタール基又は1,2-ジ(C1-3-アルコキシ)-1,2-ジ(C1-3-アルキル)-エチレン架橋を形成してもよく、ここで、上記エチレン架橋は、ピラノース環の2つの関連(associated)炭素原子及び2つの酸素原子と一緒に、置換ジオキサン環、特には、2,3-ジメチル-2,3-ジ(C1-3-アルコキシ)-1,4-ジオキサン環を形成し、及び、ここで、アルキル、アリル、アリール及び/又はベンジル基は、ハロゲン又はC1-3-アルコキシにより一置換又は多置換されていてもよく、及び、ここで、ベンジル基は、また、ジ-(C1-3-アルキル)アミノ基により置換されていてもよく;及び
Ra、Rb、Rcは、互いに独立して、C1-4-アルキル、アリール又はアリール-C1-3-アルキルを示し、ここで、アリール又はアルキル基は、ハロゲンにより一置換又は多置換されていてもよく;
ここで、上記基の定義において記載したアリール基は、フェニル又はナフチル基、好ましくは、フェニル基を意味し、
及び、ここで、基R3は、先に及び以下で定義したものである)を、ルイス又はブレンステッド酸の存在下において還元剤と反応させ、一方、存在する保護基を同時に又はその後開裂させ;又は
b)一般式Iの化合物を製造するために、一般式IIIの化合物:
【0019】
【化4】

(式中、R8a、R8b、R8c、R8d及びR3は、先に及び以下で定義したものであり、但し、R8a、R8b、R8c、R8dより選ばれる少なくとも1つの置換基は、水素ではない)において、水素でない保護基R8a、R8b、R8c、R8dを開裂させ;及び
所望なら、そのようにして得た一般式Iの化合物を、アシル化により、一般式Iの対応するアシル化合物に転化し、及び/又は、
必要なら、上記反応において使用した保護基を開裂させ、及び/又は、
所望なら、そのようにして得た一般式Iの化合物を、その立体異性体に分解し、及び/又は、
所望なら、そのようにして得た一般式Iの化合物を、特には、それらの生理学的に許容可能な塩への医薬的使用のために、それらの塩に転化する方法に関する。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明の態様、特には、化合物、医薬組成物及びそれらの使用は、先に及び以下で定義した一般式Iのグルコピラノシル-置換シクロプロピル-ベンゼン誘導体、又はそれらの互変異性体、立体異性体又は混合物を含む誘導体、及びそれらの生理学的に許容可能な塩に言及する。
【0021】
好ましくは、β-D-グルコピラノシル基の全ての環外オキシ基は置換されず、即ち、β-D-グルコピラノシル基のオキシ基O-6のみが、定義されるように置換される。好ましい置換基は、(C1-8-アルキル)カルボニル、(C1-8-アルキル)オキシカルボニル及びフェニルカルボニルより選ばれる。更により好ましい置換基は、アセチル、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニル、特には、アセチル及びエトキシカルボニルより選ばれる。
【0022】
例えば、フェニル環のような環状基の置換基の結合が、環状基の中心へ向かって示されている、先に及び以下で使用した構造式における命名(nomenclature)は、他に記載のない限り、この置換基が、H原子を含む環状基の自由な位置に結合し得ることを示す。
【0023】
本発明の化合物は、原則として、既知の合成方法を用いて得ることができる。好ましくは、化合物は、以下により詳細に記載する本発明の以下の方法により得る。
【0024】
本発明の式IIのグルコース誘導体は、D-グルコノラクトン又はそれらの誘導体から、所望のベンジルベンゼン化合物を有機金属化合物の形態で添加することにより合成することができる(スキーム1)。
【0025】
スキーム1:グルコノラクトンに対する有機金属化合物の添加
【化5】

【0026】
スキーム1による反応は、好ましくは、一般式IVのハロゲン化ベンジルベンゼン化合物から出発して行い、ここで、Halは、塩素、臭素又はヨウ素を示す。スキーム1のR1は、シクロプロピル、又はその後シクロプロピル基に転化され得る基、例えば、ハロゲン又は擬ハロゲン原子、例えば、塩素又は臭素、又はビニル基を示す。ベンジルベンゼン(V)のグリニャール又はリチウム試薬は、対応する塩素化、臭素化又はヨウ素化ベンジルベンゼンIVから、いわゆるハロゲン-金属交換反応を介するか又は金属を炭素-ハロゲン結合に挿入することによるかのいずれかで製造することができる。対応するリチウム化合物Vを合成するためのハロゲン-金属交換は、例えば、有機リチウム化合物、例えば、n-、sec-又はt-ブチルリチウムを用いて行うことができる。類似マグネシウム化合物は、また、メタル化工程を促進し得る付加塩、例えば、塩化リチウムなしに又はその存在下で、適切なグリニャール試薬、例えば、イソプロピル-又はsec-ブチルマグネシウム臭化物又は塩化物又はジイソプロピル-又はジ-sec-ブチルマグネシウムを用いるハロゲン-金属交換により生成することができ;特定の金属交換反応性有機マグネシウム化合物は、また、現場で、適切な前駆体から製造することができる(例えば、Angew. Chem. 2004, 116, 3396-3399及びAngew. Chem. 2006, 118, 165-169及びそれらの中において引用された参考文献を参照されたい)。また、例えば、ブチルマグネシウム塩化物又は臭化物又はイソプロピルマグネシウム塩化物又は臭化物及びブチルリチウムを組み合せることにより得られる有機マグネシウム化合物のアート錯体も同様に使用することができる(例えば、Angew. Chem. 2000, 112, 2594-2596及びTetrahedron Lett. 2001, 42, 4841-4844及びそれらの中において引用された参考文献を参照されたい)。ハロゲン-金属交換反応は、好ましくは、40〜-100℃で、特に好ましくは、20〜-80℃で、不活性溶剤又はそれらの混合物、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン又はそれらの混合物中において行う。そのようにして得たマグネシウム又はリチウム誘導体化化合物は、場合により、金属塩、例えば、三塩化セリウム、塩化又は臭化亜鉛、塩化又は臭化インジウムでトランスメタル化して、添加に適する代替有機金属化合物(V)形成することができる。あるいはまた、有機金属化合物Vは、また、金属をハロ芳香族化合物IVの炭素-ハロゲン結合に挿入することにより製造することができる。リチウム又はマグネシウムは、この変換に適切な元素金属である。挿入は、溶剤、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物中において、-80〜100℃、好ましくは、-70〜40℃の範囲の温度で達成することができる。自然反応が金属の活性化前に起こらないケースにおいては、例えば、1,2-ジブロモエタン、ヨウ素、トリメチルシリルクロライド(trimethylsilylchloride)、酢酸、塩酸での処理及び/又は超音波処理が必要となるかもしれない。グルコノラクトン又はそれらの誘導体(VI)への有機金属化合物Vの添加は、好ましくは、40〜-100℃、特に好ましくは、0〜-80℃の温度で、不活性溶剤又はそれらの混合物中において行って、式IIの化合物を得る。全ての前記反応は空気中において行うことができるが、不活性ガス雰囲気、例えば、アルゴン及び窒素下で行うのが好ましい。メタル化及び/又はカップリング反応は、また、高い交換速度を可能にするマイクロリアクター及び/又はマイクロミキサーにおいて;例えば、WO 2004/076470に記載された方法と同様にして行うことができる。適切に保護されたグルコノラクトンVIへの、メタル化フェニル基Vの添加に適する溶剤は、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N-メチルピロリドン及びそれらの混合物である。付加反応は、更なるアジュバントなしに又はカップリングパートナーを緩慢に反応させるケースにおいては、プロモーター、例えば、BF3*OEt2又はMe3SiClの存在下で行うことができる(M. Schlosser, Organometallics in Synthesis, John Wiley & Sons, Chichester/New York/Brisbane/Toronto/Singapore, 1994を参照されたい)。スキーム1における置換基R8の定義のうち好ましいものは、ベンジル、置換ベンジル、アリル、トリアルキルシリルであり、特に好ましいものは、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、アリル、4-メトキシベンジル及びベンジルである。2つの隣接置換基R8が一緒に結合している場合には、これらの2つの置換基は、好ましくは、ベンジリデンアセタール、4-メトキシベンジリデンアセタール、イソプロピルケタールの部分であり又は2,3-ジメトキシ-ブチレンとジオキサンを構成し、それは、ブタンの2及び3位を介して、ピラノースの隣接酸素原子と結合する。基R'は、好ましくは、水素、C1-4-アルキル、C1-4-アルキルカルボニル又はC1-4-アルキルオキシカルボニルであり、特に好ましくは、水素、メチル又はエチルである。基R'は、グルコノラクトンVIへの、有機金属化合物V又はそれらの誘導体の添加後に導入する。R'が水素又はC1-4-アルキルである場合には、反応溶液は、アルコール、例えば、メタノール又はエタノール又は水と、酸、例えば、酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸又は塩酸の存在下において処理する。R'は、また、水素化合物IIの製造後、アノマーヒドロキシル基を、適切な求電子試薬、例えば、ヨウ化メチル、硫酸ジメチル、ヨウ化エチル、硫酸ジエチル、塩化アセチル又は無水酢酸で、塩基、例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、炭酸ナトリウム又はカリウム又はセシウム、水酸化ナトリウム又はカリウム又はセシウムの存在下において反応させることにより結合させることができる。ヒドロキシル基は、また、例えば、水素化ナトリウムを用いて、求電子試薬の添加前に脱プロトン化することができる。R'を取り付ける間、対応するプロトン化化合物、即ち、R8がHである化合物IIを生じる、使用する反応条件下で不安定である場合には、保護基R8を開裂させてもよい。
【0027】
式IVのハロ芳香族化合物の合成は、有機化学的に又は少なくとも、有機合成専門文献に記載の方法で、標準変換を用いて行うことができる(とりわけ、J. March, Advanced Organic Reactions, Reactions, Mechanisms, and Structure, 4th Edition, John Wiley & Sons, Chichester/New York/Brisbane/Toronto/Singapore, 1992及びその中に引用された文献を参照されたい)。より具体的には、芳香族化合物の合成のための遷移金属及び有機金属化合物の使用が、異なるモノグラフで詳細に記載されている(例えば、L. Brandsma, S.F. Vasilevsky, H.D. Verkruijsse, Application of Transition Metal Catalysts in Organic Synthesis, Springer-Verlag, Berlin/Heidelberg, 1998; M. Schlosser, Organometallics in Synthesis, John Wiley & Sons, Chichester/New York/Brisbane/Toronto/Singapore, 1994; P.J. Stang, F. Diederich, Metal-Catalyzed Cross-Coupling Reactions, Wiley-VCH, Weinheim, 1997及びそれらの中において引用された参考文献を参照されたい)。以下に記載する合成方法により、この証明を例示的に提供する。また、アグリコン部分は、同一の合成アプローチを用いて、既に存在するピラノース基と組み合せることができる。
【0028】
スキーム2:ジアリールケトンフラグメントの合成
【化6】

【0029】
スキーム2は、フリーデル・クラフツアシル化状態又はそれらの変形体を適用する、塩化ベンゾイル及び第2芳香族基から出発する、式IVのハロ芳香族化合物の合成に役立ち得る前駆体化合物の製造を示す。スキーム2におけるR1は、シクロプロピル、又はその後、シクロプロピル基に転化され得る基、例えば、塩素、臭素、ヨウ素又はビニルを示す。この古典的反応は、基質範囲が広く及び一般的には、触媒量又は化学量論量で使用する触媒、例えば、AlCl3、FeCl3、ヨウ素、鉄、ZnCl2、硫酸又はトリフルオロメタンスルホン酸の存在下で行う。塩化ベンゾイルの代わりに、対応するカルボン酸、無水物、エステル又はベンゾニトリルを、同様に使用することができる。反応は、優先的に、塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタン及び1,2-ジクロロエタン中において、-30〜120℃、好ましくは、30〜100℃の温度で行う。しかしながら、電子レンジ中における反応又は溶剤のない反応もまた可能である。
【0030】
スキーム3:ジアリールケトン及びジアリールメタノールのジアリールメタンへの還元
【化7】

【0031】
スキーム3においては、置換基Rは、C1-3-アルキル又はアリールを示し及びR1は、シクロプロピル又はその後シクロプロピル基に転化され得る基、例えば、塩素、臭素、ヨウ素又はビニル基を示す。ジアリールケトン又はジアリールメタノールから出発して、ジアリールメタンは、1つ又は2つの反応工程において使用可能である。ジアリールケトンは、対応するジフェニルメタノールを介する2つの工程において又は1つの工程において還元してジアリールメタンにすることができる。2つの工程の変形においては、ケトンは、還元剤、例えば、金属水素化物、例えば、NaBH4、LiAlH4又はiBu2AlHを用いて還元して、アルコールを形成する。得られたアルコールは、ルイス酸、例えば、BF3*OEt2、InCl3又はAlCl3又はブレンステッド酸、例えば、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸又は酢酸の存在下において、還元剤、例えば、Et3SiH、NaBH4又はPh2SiClHを用いて、所望のジフェニルメタンに転化することができる。ケトンから出発してジフェニルメタンを得る1つの工程での方法は、例えば、シラン、例えば、Et3SiH、ホウ化水素、例えば、NaBH4又はアルミニウム水素化物、例えば、LiAlH4を用いて、ルイス又はブレンステッド酸、例えば、BF3*OEt2、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフルオロ酢酸、塩酸、塩化アルミニウム又はInCl3の存在下において行うことができる。反応は、好ましくは、溶剤、例えば、ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリル又はそれらの混合物中において、-30〜150℃、好ましくは、20〜100℃の温度で行う。遷移金属触媒、例えば、Pd(木炭上)の存在下における水素での還元は、他の主要な可能性のある合成方法である。ウォルフ・キッシュナー還元又はその変形もまた使用可能である。ケトンを、最初に、ヒドラジン又はそれらの誘導体、例えば、1,2-ビス(t-ブチルジメチルシリル)ヒドラジンを用いてヒドラゾンに転化し、それが、強塩基反応条件及び加熱下で分解して、ジフェニルメタン及び窒素を形成する。反応は、1つの反応工程において又は2つの別々の反応工程においてヒドラゾン又はそれらの誘導体の単離後に行うことができる。適切な塩基としては、例えば、溶剤、例えば、エチレングリコール、トルエン、DMSO、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール又はt-ブタノール中におけるKOH、NaOH又はKOtBuが挙げられ;溶剤のない反応もまた使用可能である。反応は、20〜250℃、好ましくは、80〜200℃の温度で行うことができる。ウォルフ・キッシュナー還元の塩基性条件の代替は、酸性条件下で行われ、本件明細書においても使用可能なクレメンゼン還元である。ジアリールメタノールにおけるアルコール官能基は、また、最初に、より良好な脱離基、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、アセテート、カーボネート、ホスフェート又はスルフェートに変換することができ;ジアリールメタンを形成するためのその後の還元工程は、有機化学の文献において幅広く記載されている。
【0032】
スキーム4:ジアリールメタンユニット及びそれらの可能性のある前駆体化合物の合成
【化8】

【0033】
スキーム4においては、R1は、シクロプロピル又はその後シクロプロピル基に転化され得る基、例えば、塩素、臭素、ヨウ素又はビニルを示す。用語“Alk”はC1-3-アルキルを示し及び各置換基Rは、独立して、互いに、H、C1-3-アルキル及びC1-3-アルコキシからなる群より選ばれる。スキーム4は、メタル化フェニル基を出発とするジアリールメタン及びそれらの可能性のある前駆体化合物の合成を描写するものである。リチウム又はマグネシウム置換芳香族化合物は、例えば、ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムハロゲン化物又はジイソプロピルマグネシウムでのハロゲン-金属交換反応により又はハロゲン-炭素結合中への元素金属の挿入により、塩素化、臭素化又はヨウ素化芳香族化合物から合成することができる。対応するホウ素置換化合物、例えば、ボロン酸、ボロン酸エステル又はジアルキルアリールボランは、ホウ素求電子試薬、例えば、ボロン酸エステル又はそれらの誘導体との反応により、これらのメタル化フェニル基からアクセスできる。また、ボリル化された(borylated)芳香族化合物は、また、遷移金属、例えば、パラジウムの触媒反応により、対応するハロゲン化又は偽ハロゲン化前駆体及びジボロン又はボラン化合物から製造することができる(例えば、Tetrahedron Lett. 2003, p. 4895-4898及びそれらの中において引用された参考文献を参照されたい)。リチウム又はマグネシウム置換フェニル化合物の添加を、ベンズアルデヒドに対して(工程3)及び安息香酸又はそれらの誘導体、例えば、安息香酸エステル、ベンズアミド、例えば、ワインレブタイプのもの、ベンゾニトリル又は塩化ベンゾイルに対して(工程4)行った。これらの反応は、主には、付加的遷移金属触媒又は他の金属、例えば、セリウム、インジウム又は亜鉛への金属交換反応なしに行うことができる。アリールボロン酸は、各ジアリールメタノールを提供するロジウム触媒によりベンズアルデヒドに添加することができる(例えば、Adv. Synth. Catal. 2001, p. 343-350及びそれらの中において引用された参考文献を参照されたい)。更に、アリールボロン酸、それらのエステル、ジアルキルアリールボラン又はアリールトリフルオロボレートは、遷移金属、例えば、パラジウムにより媒介される塩化ベンゾイル、ジアリールケトンを運搬するそれらの複合体又は塩と結合し得る。メタル化フェニル基は、ベンジル求電子試薬、例えば、ベンジルの塩化物、臭化物又はヨウ化物と反応させて、ジアリールメタンを提供し得る。リチウム又はマグネシウム誘導体化フェニル化合物は、有利に、しかし、必ずしも必要ではなく、遷移金属、例えば、銅、鉄又はパラジウムの存在下において反応させる(例えば、Org. Lett. 2001, 3, 2871-2874及びその中において引用された参考文献を参照されたい)。リチウム又はマグネシウムから、例えば、ホウ素、錫、ケイ素又は亜鉛への金属交換反応は、例えば、対応する芳香族ボロン酸、スタンナン、シラン又は亜鉛化合物を、それぞれ提供し、それらは、ベンジル求電子試薬、例えば、ベンジルのハロゲン化物、カーボネート、ホスフェート、スルホネート又はカルボン酸エステルとの結合に付され得る。反応は、遷移金属、例えば、パラジウム、ニッケル、ロジウム、銅又は鉄の存在下で行う(例えば、Tetrahedron Lett. 2004, p. 8225-8228 and Org. Lett. 2005, p. 4875-4878及びその中において引用された参考文献を参照されたい)。
【0034】
スキーム5:シクロプロピル残基の導入
【化9】

【0035】
スキーム5は、標的分子への種々の合成段階で中心フェニル基に対してシクロプロピル残基を結合させる可能性のある経路を示す。シクロプロピル基の導入は、適切なシクロプロピル源、例えば、シクロプロピルリチウム、シウロプロピルマグネシウムハロゲン化物、シクロプロピル亜鉛ハロゲン化物、ジシクロプロピル亜鉛、シクロプロピルインジウムハロゲン化物、トリシクロプロピルインジウム、シクロプロピルボロン酸又はエステル、例えば、ピナコールから誘導されるもの、リチウム、ナトリウム又はカリウムのシクロプロピルトリフルオロホウ酸塩の遷移金属介在カップリング反応を介して、ハロゲン化又は偽ハロゲン化フェニル基を用いて行うことができる。適切な触媒は、元素形態、例えば、パラジウム木炭において、塩、例えば、パラジウムの塩化物、臭化物又はアセテートとして又は例えば、ホスフィン、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン又はdppf又はアルケン、例えば、ジベンジリデンアセトンとの複合体として使用可能な遷移金属、例えば、パラジウム、ロジウム、ニッケル、鉄又は銅から誘導することができる。活性触媒は、現場で又は反応混合物への添加前に生成してもよい。添加剤、例えば、塩基、例えば、水酸化物、アルコキシド、例えば、メトキシド、エトキシド又はt-ブトキシド、ホスフェート、アセテート、カーボネート又はフッ化物、又は付加塩が、本質的又は少なくとも有利であり得る。反応は、好ましくは、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン、トルエン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はそれらの混合物中において、0〜180℃の範囲の温度で、窒素又はアルゴンの不活性ガス雰囲気下で行う(例えば、Tetrahedron Lett. 2002, 43, 6987-6990及びその中において引用された参考文献を参照されたい)。反応相手の逆極性、即ち、求電子性シクロプロピル化合物、例えば、シクロプロピルの塩化物、臭化物、ヨウ化物又はスルホネート及びメタル化アリール基の使用が、また、原則的には可能である(例えば、Tetrahedron Lett. 1998, 39, 1521-1524及びAdv. Synth. Catal. 2004, 346, 863-866及びそれらの中において引用された参考文献を参照されたい)。
【0036】
スキーム6:ビニルベンゼン誘導体からのシクロプロピル残基の導入
【化10】

【0037】
シクロプロピルユニットを取り入れるための代替法は、置換された又はありのままのメチレンカルベン又はカルベノイドでの、適切なスチレン化合物のシクロプロパン化である。置換カルベン又はカルベノイドは、更なる置換基を免れて、一置換シクロプロパンを提供しなければならず;好ましい更なる置換基はハロゲンであるので、標的シクロプロパンは、還元により利用可能である。適切なそのままのカルベン又はカルベノイド前駆体は、ジアゾメタン、ジハロメタン、例えば、ブロモクロロメタン、ジブロモメタン又はジヨードメタン、又はハロメタン、例えば、クロロメタン又はブロモメタンであり得る。適切なハロ又はジハロカルベン又はカルベノイド前駆体は、テトラハロメタン、例えば、テトラクロロメタン、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン又はトリブロモクロロメタン、トリハロメタン、例えば、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン又はブロモホルムであり得る。シクロプロパン化反応の条件は、使用する前駆体により異なる。ジアゾメタンは、通常、オレフィンを用いて、添加剤なしに、適切な溶剤又はニート(neat)オレフィン中において、0〜150℃で行う。ハロメタンは、プロトンを1つ取り除いて(abstract)、順に、オレフィンに添加されるカルベン又はカルベノイドを生成する、塩基、例えば、水酸化物、アルコキシド又はアミドと、オレフィンの存在下で反応させる。シクロプロパンを製造するのに最も一般的な反応の1つであるシモンズ-スミス反応では、ポリハロメタンから出発して、対応する亜鉛カルベノイドを生成するための亜鉛又はジアルキル亜鉛でのハロゲン-金属交換を使用する。このアプローチをベースとして、異なる金属種を使用して、カルベン又はカルベノイド、例えば、サマリウム、マグネシウム、アルキルリチウム又はアルキルマグネシウムハロゲン化物を形成する変形体が知られている。一般に、二重結合のシクロプロパン化は、良好に確立された反応であり、それは、有機化学文献において幅広く記載されている(とりわけ、J. March, Advanced Organic Reactions, Reactions, Mechanisms, and Structure, 4th Edition, John Wiley & Sons, Chichester/New York/Brisbane/Toronto/Singapore, 1992及びその中において引用された文献を参照されたい)。
【0038】
一般式Iの化合物を製造するために、本発明の工程a)においては、前述のようにして得ることができる一般式IIの化合物:
【0039】
【化11】

(式中、R'及びR3は先に定義したものであり及び
R8a、R8b、R8c、R8dは先に定義したものであり及び互いに独立して、例えば、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アリル、トリアルキルシリル、ベンジル又は置換ベンジルを表し又は各ケースにおいて、2つの隣接基R8a、R8b、R8c、R8dは、ベンジリデンアセタール又はイソプロピリデンケタール又はブチレン基の2及び3位を介して、ピラノース環の酸素原子に結合し及びそれらと共に置換ジオキサンを形成する2,3-ジメトキシ-ブチレン基を表す)をルイス又はブレンステッド酸の存在下において還元剤と反応させる。
【0040】
その反応に適切な還元剤としては、シラン、例えば、トリエチル-、トリプロピル-、トリイソプロピル-又はジフェニルシラン、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、ボラン、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム又はヨウ化サマリウムが挙げられる。還元は、適切なブレンステッド酸、例えば、塩酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又は酢酸、又はルイス酸、例えば、三フッ化ほう素エーテラート、トリメチルシリルトリフレート、四塩化チタン、四塩化錫、スカンジウムトリフラート又はヨウ化亜鉛なしに又はそれらの存在下において行う。還元剤及び酸に依存して、反応は、溶剤、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、水又はそれらの混合物中において、-60〜120℃の温度で行うことができる。ある特に適切な試薬の組み合わせは、例えば、トリエチルシラン及び三フッ化ホウ素エーテラートからなり、それは、好都合には、アセトニトリル又はジクロロメタン中において、-60〜60℃の温度で使用する。更に、水素を、遷移金属触媒、例えば、パラジウム木炭又はラネーニッケルの存在下で、溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水又は酢酸中において、記載した変換のために使用することができる。
【0041】
あるいはまた、本発明の工程b)に従って一般式Iの化合物を製造するために、一般式IIIの化合物:
【0042】
【化12】

(式中、R3は先に定義したものであり及び
R8a〜R8dは、先に定義した保護基の1つ、例えば、アシル、アリールメチル、アリル、アセタール、ケタール又はシリル基を示し、及びそれは、例えば、先に記載したように、式IIの化合物の還元により得ることができる)において、保護基を開裂させる。
【0043】
使用するアシル保護基の開裂は、例えば、加水分解的に、水性溶剤中において、例えば、水、イソプロパノール/水、酢酸/水、テトラヒドロフラン/水又はジオキサン/水中において、酸、例えば、トリフルオロ酢酸、塩酸又は硫酸の存在下において又はアルカリ金属塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの存在下において又は非プロトン的に、例えば、ヨードトリメチルシランの存在下において、0〜120℃の温度で、好ましくは、10〜100℃の温度で行う。トリフルオロアセチル基の開裂は、好ましくは、酸、例えば、塩酸を用いて、場合により、溶剤、例えば、酢酸の存在下において、50〜120℃の温度で処理することにより又は水酸化ナトリウム溶液を用いて、場合により、溶剤、例えば、テトラヒドロフラン又はメタノールの存在下において、0〜50℃の温度で処理することにより行う。
【0044】
使用するアセタール又はケタール保護基の開裂は、例えば、加水分解的に、水性溶剤中において、例えば、水、イソプロパノール/水、酢酸/水、テトラヒドロフラン/水又はジオキサン/水中において、酸、例えば、トリフルオロ酢酸、塩酸又は硫酸の存在下において又は非プロトン的に、例えば、ヨードトリメチルシランの存在下において、0〜120℃の温度、好ましくは、10〜100℃の温度で行う。
【0045】
トリメチルシリル基の開裂は、例えば、水、水性溶剤混合物又は低級アルコール、例えば、メタノール又はエタノール中において、塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム又はナトリウム・メトキシドの存在下で行う。水性又はアルコール溶剤においては、酸、例えば、塩酸、トリフルオロ酢酸又は酢酸もまた適切なものである。有機溶剤、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジクロロメタン中における開裂のためには、フッ化物試薬、例えば、フッ化テトラブチルアンモニウムを使用することもまた適切なことである。
【0046】
ベンジル、メトキシベンジル又はベンジルオキシカルボニル基の開裂は、有利には、水素化分解的に、例えば、水素を用いて、触媒、例えば、パラジウム/木炭の存在下において、適切な溶剤、例えば、メタノール、エタノール、酢酸エチル又は氷酢酸中において、場合により、酸、例えば、塩酸を添加して、0〜100℃の温度で、好ましくは、20〜60℃の周囲温度で、及び1〜7バール、好ましくは、3〜5バールの水素ガス圧力で行う。しかしながら、2,4-ジメトキシベンジル基の開裂は、好ましくは、トリフルオロ酢酸中において、アニソールの存在下で行う。
【0047】
t-ブチル又はt-ブチルオキシカルボニル基の開裂は、好ましくは、酸、例えば、トリフルオロ酢酸又は塩酸で処理することにより又はヨードトリメチルシランで、場合により、溶剤、例えば、塩化メチレン、ジオキサン、メタノール又はジエチルエーテルを用いて処理することにより行う。
【0048】
先に記載した反応においては、存在する反応基、例えば、エチニル、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ又はイミノ基を、反応の間、従来の保護基により保護してもよく、それらは、反応後、再び開裂させる。
【0049】
例えば、エチニル基のための保護基は、トリメチルシリル又はトリイソプロピル基であり得る。2-ヒドロキシイソプロピ-2-イル基もまた、保護基として使用することができる。
【0050】
例えば、ヒドロキシ基のための保護基は、トリメチルシリル、アセチル、トリチル、ベンジル又はテトラヒドロピラニル基であり得る。
【0051】
アミノ、アルキルアミノ又はイミノ基のための保護基は、例えば、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ベンジル、メトキシベンジル又は2,4-ジメトキシベンジル基であり得る。
【0052】
更に、得られた一般式Iの化合物は、先に記載したように、分解して、それらの光学異性体及び/又はジアステレオマーにすることができる。従って、例えば、シス/トランス混合物は分解して、それらのシス及びトランス異性体にすることができ、及び少なくとも1つの光学活性炭素原子を有する化合物を、それらの光学異性体に分けることができる。
【0053】
従って、例えば、シス/トランス混合物はクロマトグラフィーにより分解して、それらのシス及びトランス異性体とすることができ、ラセミ化合物として生じ、得られた一般式Iの化合物は、それ自体が既知の方法により分別して(Al-linger N. L. and Eliel E. L. in "Topics in Stereochemistry", Vol. 6, Wiley Interscience, 1971を参照されたい)、それらの光学対掌体にすることができ及び少なくとも2つの不斉炭素原子を有する一般式Iの化合物は、それらの物理化学的相違をベースとして、それ自体が既知の方法を用いて、例えば、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶により分解して、それらのジアステレオマーにすることができ、及び、これらの化合物がラセミ体で得られた場合には、上述のように、それらを、その後、分解して、光学異性体にすることができる。
【0054】
光学異性体の分別は、好ましくは、キラル相でのカラム分離により又は光学活性溶剤での再結晶化により又はラセミ化合物、特には、それらの酸及び活性誘導体又はアルコールとの塩又は誘導体、例えば、エステル又はアミドを形成する光学活性物質と反応させること、及び、例えば、それらの溶解性の相違をベースとする、そのようにして得られた塩又は誘導体のジアステレオマー混合物を分別することにより行うが、遊離対掌体は、純粋なジアステレオマー塩又は誘導体から、適切な薬剤作用により放出させることができる。一般的に使用されている光学活性酸は、例えば、D-及びL-形態の酒石酸又はジベンゾイル酒石酸、ジ-o-トリル酒石酸(di-o-tolyltartaric acid)、リンゴ酸、マンデル酸、カンファースルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸又はキナ酸である。光学活性アルコールは、例えば、(+)又は(-)-メントールであってもよく及びアミドにおける光学活性アシル基は、例えば、(+)-又は(-)-メンチルオキシカルボニル(a (+)-or (-)-menthyloxycarbonyl)であってもよい。
【0055】
更に、式Iの化合物を転化して、それらの塩に、特には、医薬的使用のために、無機又は有機酸との、生理学的に許容可能な塩にすることができる。この目的のために使用可能な酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、リン酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸又はマレイン酸が挙げられる。
【0056】
更に、得られた化合物は、混合物、例えば、1:1又は1:2での、アミノ酸との、特には、αアミノ酸、例えば、プロリン又はフェニルアラニンとの混合物に転化することができ、それは、特に有益な特性、例えば、高い結晶度を有し得る。
【0057】
本発明の化合物は、有利には、また、以下の例に記載した方法を用いて得ることができ、それは、また、この目的のために、文献により当業者に知られる方法、例えば、WO 98/31697、WO 01/27128、WO 02/083066、WO 03/099836及びWO 2004/063209に記載された方法と組み合せることができる。
【0058】
既に記載したとおり、本発明の一般式Iの化合物及びそれらの生理学的に許容可能な塩は、有益な薬理学的特性、特には、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT、好ましくは、SGLT2に対する阻害作用を有する。
【0059】
新規化合物の生物学的特性は、以下の通り研究することができる。
【0060】
物質がSGLT-2活性を阻害する能力は、発現ベクターpZeoSV(インビトロジェン、EMBL受け入れ番号L36849)が安定して導入され、ヒトナトリウムグルコース共輸送体2のコード配列についてのcDNA(ジェンバンクAcc. No.NM_003041)を含むCHO-K1細胞系(ATCC No. CCL 61)あるいはまた、HEK293細胞系(ATCC No. CRL-1573) (CHO-hSGLT2又はHEK-hSGLT2)がセットアップ(set-up)された試験において証明することができる。
【0061】
SGLT-2アッセイは以下のとおり行う:
CHO-hSGLT2細胞は、10%ウシ胎仔血清及び250 μg/mLのゼオシン(インビトロジェン)を含むハムF12培地(バイオフィッカー)中において培養し及びHEK293-hSGLT2細胞は、10%ウシ胎仔血清及び250 μg/mLのゼオシン(インビトロジェン)を含むDMEM培地中において培養する。細胞は、PBSで2回洗浄し及び次いでトリプシン/EDTAで処理することにより培養フラスコから取り出した。細胞培養液の添加後、細胞を遠心分離にかけ、培地に再懸濁し及びケーシー(Casy)セルカウンターにおいてカウントする。次いで、ウエルあたり4,000個の細胞を、ポリ-D-リジンでコーティングし及び37℃、5%CO2で一晩インキュベートした白色96-ウエルプレートに添加(seed)する。細胞を、250μlのアッセイ緩衝液(ハンクス平衡塩溶液、137 mM NaCl、5.4 mM KCl、2.8 mM CaCl2、1.2 mM MgSO4及び10 mM HEPES(pH 7.4)、50 μg/mLのゲンタマイシン)で2回洗浄する。250μlのアッセイ緩衝液及び5μlの試験化合物を、次いで、各ウエルに添加し及びプレートを更に15分間インキュベーターにおいてインキュベートする。5μlの10% DMSOを陰性対照として使用する。反応は、5μlの14C-AMG(0.05μCi)を各ウエルに添加することにより開始する。37℃、5% CO2で2時間インキュベートした後、細胞を、再び、250μlのPBS(20℃)で洗浄し及び次いで、25μlの0.1N NaOHの添加により溶解する(5分、37℃)。200μlのマイクロシント20(パッカード)を各ウエルに添加し及びインキュベートを更に20分間、37℃で継続する。このインキュベートの後、吸収された14C-AMGの放射能を、トップカウント(パッカード)において、14Cシンチレーションプログラムを用いて測定する。
【0062】
ヒトSGLT1に対する選択性を測定するため、hSGLT2 cDNAの代わりにhSGLT1のcDNA(ジェンバンクAcc. No. NM000343)を、CHO-K1又はHEK293細胞において発現させる類似試験をセットアップする。
【0063】
本発明の化合物は、EC50値が、例えば、1000 nM未満、特には、200 nM未満、最も好ましくは、50 nM未満であってもよい。
【0064】
SGLT活性を阻害するそれらの能力の観点から、本発明の化合物及びそれらの対応する医薬的に許容可能な塩が、SGLT活性、特には、SGLT-2活性の阻害により影響を受け得る、それらの全ての状態又は疾患の治療及び/又は予防的治療に適する。従って、本発明の化合物は、疾患、特には、代謝性疾患、又は状態、例えば、1型及び2型糖尿病、糖尿病の合併症(例えば、網膜症、腎症又は神経障害、糖尿病足、潰瘍、大血管障害)、代謝性アシドーシス又はケトーシス、反応性低血糖、高インスリン血、グルコース代謝性疾患、インスリン耐性、メタボリック・シンドローム、起源の異なる脂質異常症、アテローム性動脈硬化症及び関連疾患、肥満、高血圧症、慢性心不全、浮腫及び高尿酸血症の予防又は治療に特に適する。これらの物質は、また、β細胞変性、例えば、膵臓β細胞の壊死又はアポトーシスを予防するのに適する。物質は、また、膵臓細胞の機能を改善又は回復させるのに適しており及びまた、膵臓β細胞の数及びサイズを高める。本発明の化合物は、また、利尿薬又は降圧剤として使用することができ及び急性腎不全の予防及び治療に適する。
【0065】
特に、本発明の化合物及びそれらの生理学的に許容可能な塩は、糖尿病、特には、1型及び2型糖尿病及び/又は糖尿病性合併症の予防又は治療に適する。
【0066】
また、本発明の化合物は、過体重、肥満(肥満度I、II及び/又はIIIを含む)、内臓型肥満及び/又は腹部肥満の予防又は治療に特に適する。
【0067】
治療又は予防に対応する活性を達成するために必要な投薬量は、通常、投与する化合物、患者、病気又は状態の性質及び重さ及び投与の方法及び頻度に依存し、患者の医者が決定することができる。都合良くは、投薬量は、静脈ルートで、1〜100 mg、好ましくは、1〜30 mgであってもよく、及び経口ルートで、1〜1000 mg、好ましくは、1〜100 mgであってもよく、各ケースにおいて、1日あたりの投与は1〜4回であり得る。この目的のために、本発明の化合物は、場合により、他の活性物質と一緒に、1以上の従来の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒に、例えば、コーンスターチ、ラクトース、グルコース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール(cetylstearyl alcohol)、カルボキシメチルセルロース又は脂肪性物質、例えば、固い脂肪、又はそれらの適切な混合物と共に配合して、従来のガレン製薬(galenicals)、例えば、素錠又は被覆タブレット、カプセル、パウダー、サスペンション又は座薬とすることができる。
【0068】
本発明の化合物は、また、他の活性物質と併せて、特には、上述した疾患及び状態の治療及び/又は予防のために使用することができる。そのような組み合わせに適する他の活性物質としては、例えば、記載した状況の1つに関連して本発明のSGLT拮抗薬の治療効果を高め及び/又は本発明のSGLT拮抗薬の投薬量の低減を可能にするものが挙げられる。そのような組み合わせに適する治療剤としては、例えば、抗糖尿病薬、例えば、メトホルミン、スルホニル尿素(例えば、グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド)、ナテグリニド、レパグリニド、チアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、PPAR-γ-アゴニスト(例えば、GI 262570)及び拮抗薬、PPAR-γ/αモジュレータ(例えば、KRP 297)、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース)、DPPIV阻害剤(例えば、LAF237、MK-431)、α2-拮抗薬、インスリン及びインスリン類似体、GLP-1及びGLP-1類似体(例えば、エキセンディン-4)又はアミリンが挙げられる。そのリストには、また、以下のものが含まれる:蛋白質チロシンホスファターゼ1の阻害剤、肝臓における無秩序なグルコース産生に影響を及ぼす物質、例えば、グルコース-6-ホスファターゼの阻害剤、又はフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ、グリコーゲン・ホスホリラーゼ、グルカゴン受容体拮抗薬及びホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼ又はピルベートデヒドロキナーゼ、脂質異常症治療薬、例えば、HMG-CoA-還元酵素阻害剤(例えば、シンバスタチン、アトルバスタチン)、フィブレート(例えば、ベザフィブレート、フェノフィブレート)、ニコチン酸及びそれらの誘導体、PPAR-αアゴニスト、PPAR-δアゴニスト、ACAT阻害剤(例えば、アバシミブ(avasimibe))又はコレステロール吸収阻害剤、例えば、エゼチミブ、胆汁酸-結合物質、例えば、コレスチラミン、回腸胆汁酸共輸送体の阻害剤、HDL-増加化合物、例えば、CETP阻害剤又はABC1調整剤又は肥満治療用活性物質、例えば、シブトラミン又はテトラヒドロリポスタチン(tetrahydrolipostatin)、デクスフェンフルラミン、アクソカイン、カンナビノイド1受容体の拮抗薬、MCH-1受容体拮抗薬、MC4受容体拮抗薬、NPY5又はNPY2拮抗薬又はβ3-アゴニスト、例えば、SB-418790又はAD-9677及び5HT2c受容体のアゴニスト。
【0069】
更に、高血圧症、慢性心不全又はアテローム性動脈硬化症に影響を及ぼす薬剤、例えば、A-II拮抗薬又はACE阻害剤、ECE阻害剤、利尿薬、β-ブロッカー、Ca-拮抗薬、中枢性降圧剤、α-2-アドレナリン受容体の拮抗薬、中性エンドペプチダーゼの阻害剤、血小板凝集阻害剤及び他のものとの組み合わせ又はそれらの組み合わせが適切なものである。アンジオテンシンII受容体拮抗薬の例は、カンデサルタン・シレキセチル、ロサルタンカリウム、エプロサルタンメシレート、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、EXP-3174、L-158809、EXP-3312、オルメサルタン、メドキソミル、タソサルタン、KT-3-671、GA-0113、RU-64276、EMD-90423、BR-9701などである。アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、好ましくは、多くの場合、利尿薬、例えば、ヒドロクロロチアジドと組み合せて、高血圧症及び糖尿病合併症の治療又は予防のために使用する。
【0070】
尿酸合成阻害剤又は尿酸排泄薬との組み合わせが、通風の治療又は予防に適する。
【0071】
GABA-受容体拮抗薬、Na-チャンネル遮断薬、トピラマット(topiramat)、プロテインキナーゼC阻害剤、糖化最終産物阻害剤又はアルドース還元酵素阻害剤との組み合わせを、糖尿病合併症の治療又は予防のために使用することができる。
【0072】
上述した組み合わせの相手の投薬量は、役立つように、最低投与量の1/5であり、通常推奨される投与量の1/1までが通常推奨される。
【0073】
従って、他の態様においては、本発明は、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLTを阻害することにより影響を受け得る疾患又は状態の治療又は予防に適する医薬組成物を製造するための、組み合わせの相手として上述した活性物質の少なくとも1つとの組み合わせでの、本発明の化合物又はそのような化合物の生理学的に許容可能な塩の使用に関する。これらは、好ましくは、代謝性疾患、具体的には、上述した疾患又は状態の1つ、最も具体的には、糖尿病又は糖尿病合併症である。
【0074】
他の活性物質との組み合わせでの、本発明の化合物又はそれらの生理学的に許容可能な塩の使用は、同時に又は時間をずらして、但し、短時間以内に行うことができる。
【0075】
それらを同時に投与する場合には、2つの活性物質を一緒に患者に与えるが;一方、それらを時間をずらして使用する場合には、2つの活性物質を、12時間以内、特には、6時間以内に患者に与える。
【0076】
従って、他の態様においては、本発明は、本発明の化合物又はそのような化合物の生理学的に許容可能な塩及び組み合わせの相手として上述した活性物質の少なくとも1つを、場合により、1以上の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物に関する。
【0077】
従って、例えば、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物又はそのような化合物の生理学的に許容可能な塩及び少なくとも1つのアンジオテンシンII受容体拮抗薬の組み合わせを、場合により、1以上の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒に含む。
【0078】
本発明の化合物又はそれらの生理学的に許容可能な塩及びそれらと組み合せる付加的な活性物質は、共に、1つの配合物、例えば、タブレット又はカプセル中において一緒に存在していてもよく、又は別々に、2つの同質の又は異なる配合物中において、例えば、いわゆるパーツのキット(kit-of-part)として存在していてもよい。
【0079】
先の及び以下の記載において、ヒドロキシル基のH原子は、構造式においてあらゆる場合にも明示しない。以下の例は、本発明を制限することなしに説明することを目的とするものである。
【0080】
出発化合物の製造
例I
【化13】

【0081】
(2-ブロモ-5-ヨード-フェニル)-(4-エチル-フェニル)-メタノン
塩化オキサリル(9mL)及びジメチルホルムアミド(0.5mL)を、ジクロロメタン(80ml)中の2-ブロモ-5-ヨード-安息香酸(25g)の混合物に添加した。反応混合物を、14時間、室温で攪拌し、次いでろ過し及び回転式蒸発器において全ての揮発性成分から分離した。残留物をジクロロメタン(50mL)及びエチルベンゼン(23mL)中に溶解し及び得られた溶液を−5℃に冷却した。次いで、三塩化アルミニウム(12.5g)を、温度が10℃未満に保たれるようにバッチ式に添加した。溶液をゆっくりと室温まで温め及び一晩攪拌した。溶液をクラッシュ・アイスに注ぎ、有機相を分離し、及び水性相を酢酸エチルで抽出した。組み合わされた有機相を塩酸(1mol/l)、水酸化ナトリウム溶液(1mol/l)で及び塩水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し及び溶剤を除去して、そのままで(on standing)結晶化するオイルとして生成物を得た。
収量:30.8g(理論の97%)
質量スペクトル(ESI+): m/z = 415/417 (Br) [M+H]+
【0082】
例II
【化14】

【0083】
1-ブロモ-4-ヨード-2-(4-エチル-ベンジル)-ベンゼン
ジクロロメタン(30mL)及びアセトニトリル(200mL)中の(1-ブロモ-4-ヨード-フェニル)-(4-エチル-フェニル)-メタノン(30.8g)及びトリエチルシラン(36mL)の溶液を10℃に冷却した。次いで、攪拌しながら、三フッ化ホウ素エーテル(10.5mL)を、温度が20℃を越えないように添加した。別のトリエチルシラン10mL及び三フッ化ホウ素エーテル4.5mLを添加する前に、溶液を14時間、周囲温度で攪拌した。溶液を更に3時間、50〜55℃で攪拌し及び次いで、周囲温度に冷却した。水酸化カリウム水溶液(4mol/l)を添加し及び得られた混合物を0.5時間攪拌した。有機相を分離し及び水性相を酢酸エチルで抽出した。組み合わされた有機相を、水酸化カリウム溶液(2mol/L)で2回及び塩水で1回洗浄し及び次いで、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶剤を蒸発させた後、残留物を、シリカゲルでのクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 1:0->9:1)により精製した。
収量:22.6g(理論の76%)
質量スペクトル(ESI+): m/z = 418/420 (Br) [M+NH4]+
【0084】
例III
【化15】

【0085】
1-ブロモ-2-(4-エチル-ベンジル)-4-(1-メトキシ-β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン
乾燥テトラヒドロフラン(30mL)中の1-ブロモ-4-ヨード-2-(4-エチル-ベンジル)-ベンゼン(5.85g)の溶液を-60℃に冷却した。テトラヒドロフラン(1mol/l、17.6mL、Chemmetal社製)中のiPrMgCl*LiClの溶液を添加し及び得られた溶液を30分間、-60℃で攪拌した。テトラヒドロフラン(5mL)中の2,3,4,6-テトラキス-O-(トリメチルシリル)-D-グルコピラノン(8.50g)の溶液を、次いで、添加し及び反応溶液を、2時間かけて-5℃に温めた。反応体を塩化アンモニウム水溶液で急冷し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出し及び組み合わされた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下での溶剤除去の後、残留物を、メタノール(60mL)中に溶解し及びメタンスルホン酸(0.5mL)で処理した。得られた溶液を16時間、周囲温度で攪拌した。溶液を、次いで、固形炭酸水素ナトリウムで中和し及び溶剤を真空除去した。炭酸水素ナトリウム水溶液を残留物に添加し及び得られた混合物を酢酸エチルで抽出した。組み合わされた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し及び溶剤を蒸発させて、更なる精製なしに更に反応する粗生成物を得た。
収量:6.74g(理論の99%、粗生成物)
質量スペクトル(ESI-): m/z = 511/513 (Br) [M-HCOO]-
【0086】
例IV
【化16】

【0087】
1-ブロモ-2-(4-エチル-ベンジル)-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン
アセトニトリル(40mL)及びジクロロメタン(25mL)中の1-ブロモ-2-(4-エチル-ベンジル)-4-(1-メトキシ-β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン(6.74g、例IIIからの粗生成物)を-20℃に冷却した。トリエチルシラン(7mL)の添加後、三フッ化ほう素エーテラート(4mL)を、温度が-10℃を越えないように滴下した。反応溶液を1.5時間かけて5℃に温め及び炭酸水素ナトリウム水溶液で急冷した。有機溶剤を減圧下で除去し及び残留物を酢酸エチルで抽出した。組み合わせられた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を除去し及び残留物をジクロロメタン(40mL)中に溶解した。得られた溶液を、ピリジン(7.1mL)、無水酢酸(7.0mL)及び4-ジメチルアミノピリジン(0.4g)で処理し及び周囲温度で2時間攪拌した。溶液をジクロロメタン(100mL)で希釈し及び炭酸水素ナトリウム水溶液で及び塩酸(1mol/L)で2回洗浄し及び(硫酸ナトリウムで)乾燥した。溶剤を蒸発させた後、残留物をエタノール中において結晶化させた。
収量:3.46g(理論の40%)
質量スペクトル(ESI+): m/z = 622/624 (Br) [M+NH4]+
【0088】
例V
【化17】

【0089】
1-シクロプロピル-2-(4-エチル-ベンジル)-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン
アルゴン雰囲気下で、1-ブロモ-2-(4-エチル-ベンジル)-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン(0.50g)、シクロプロピルボロン酸(85mg)及びリン酸カリウム(0.62g)を、脱気水(1mL)及びトルエン(3mL)の混合物中に溶解した。酢酸パラジウム(19mg)及びトリシクロヘキシルホスホニウムテトラフルオロボレート(tricyclohexylphosphonium tetrafluoroborate)(61mg)を添加し及び混合物をシール化反応容器中において100℃で16時間激しく攪拌した。室温に冷却した後、酢酸エチル及び水を添加した。有機相を分離し、塩水で洗浄し及び(硫酸ナトリウムで)乾燥した。溶剤を除去した後、残留物がそのままで結晶化した。結晶性生成物をジイソプロピルエーテルで洗浄し及び乾燥した。
収量:0.25g(理論の53%)
質量スペクトル(ESI+): m/z = 584 [M+NH4]+
【実施例1】
【0090】
最終化合物の製造:
実施例1
【化18】

【0091】
1-シクロプロピル-2-(4-エチル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン
テトラヒドロフラン(1mL)及びメタノール(2mL)中の1-シクロプロピル-2-(4-エチル-ベンジル)-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン(0.25g)の溶液に対して、水酸化ナトリウム水溶液(4mol/L、0.5mL)を添加した。溶液を室温で1時間攪拌した。塩酸(1mol/L)で中和した後、有機溶剤を蒸発させ及び残留物を塩水で希釈し及び酢酸エチルで抽出した。組み合せられた水性相を(硫酸ナトリウムで)乾燥し及び溶剤を減圧下で除去して、生成物を白色固体として得た。
収量:0.14g(理論の81%)
質量スペクトル(ESI+): m/z = 421 [M+Na] +
以下の化合物をまた、上記例又は文献に記載の他の方法と同様にして製造した:
【0092】
【化19】

【0093】
【化20】

【0094】
【化21】

【0095】
【化22】

【0096】
配合物のいくつかの例を記載するが、その中において、用語“活性物質”は、1以上の本発明の化合物、それらのプロドラッグ又は塩を示す。先に記載した1つ又は付加的活性物質との組み合わせの1つのケースでは、用語“活性物質”は、また、付加的活性物質を含む。
【0097】
実施例A
100mgの活性物質を含むタブレット
組成
1つのタブレットは以下のものを含む:

【0098】
製造方法:
活性物質、ラクトース及びスターチを一緒に混合し及びポリビニルピロリドン水溶液で均一に湿潤させた。湿潤組成物をスクリーニング(メッシュサイズ2.0mm)にかけ及びラックタイプの乾燥機により50℃で乾燥した。最終混合物を圧縮して、タブレットを形成した。
タブレットの質量:220mg
直径:10mm、2平面、両面をファセットし及び片面をノッチした。
【0099】
実施例B
150mgの活性物質を含むタブレット
組成
1つのタブレットは以下のものを含む:

【0100】
製造:
ラクトース、コーンスターチ及びシリカと混合した活性物質を、20%ポリビニルピロリドン水溶液で湿潤させ及びメッシュサイズ1.5mmのふるいにかけた。45℃で乾燥した顆粒を、再び、同一のふるいにかけ及び特定量のステアリン酸マグネシウムと混合した。混合物を圧縮して、タブレットを得た。
タブレットの質量:300mg
ダイ:10mm、フラット
【0101】
実施例C
150mgの活性物質を含むハードゼラチンカプセル
組成
1つのタブレットは以下のものを含む:

【0102】
製造:
活性物質を賦形剤と混合し、メッシュサイズ0.75mmのふるいにかけ及び適切な装置を用いて均質に混合した。最終混合物を、サイズ1のハードゼラチンカプセルにパックした。
カプセル充填物:約320mg
カプセル殻:サイズ1のハードゼラチンカプセル
【0103】
実施例D
150mgの活性物質を含む座薬
組成
1つの座薬は以下のものを含む:

【0104】
製造:
座薬塊を溶解した後、活性物質をそれらの中に均質に分配し及び溶解物を冷却金型に注入した。
【0105】
実施例E
10mgの活性物質を含むアンプル
組成

【0106】
製造:
活性物質を必要量の0.01N HCl中に溶解し、食塩で等張にし、殺菌ろ過し及び2mlのアンプルに移した。
【0107】
実施例F
50mgの活性物質を含むアンプル
組成

【0108】
製造:
活性物質を必要量の0.01N HCl中に溶解し、食塩で等張にし、殺菌ろ過し及び10mlのアンプルに移した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのグルコピラノシル-置換シクロプロピル-ベンゼン誘導体:
【化1】

(式中、R3は、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロプ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、メチルオキシ、エチルオキシ、イソプロピルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ、テトラヒドロピラン-4-イルオキシ、1-アセチル-ピペリジン-4-イルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル及びエチルスルファニルを示す)、又は、β-D-グルコピラノシル基のヒドロキシル基の1以上が、(C1-18-アルキル)カルボニル、(C1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C1-3-アルキル)-カルボニルより選ばれる基でアシル化されているそれらの誘導体;並びに、それらの互変異性体、立体異性体又はそれらの混合物;及びそれらの生理的に許容可能な塩。
【請求項2】
β-D-グルコピラノシル基のヒドロキシル基O-6の水素原子が、(C1-8-アルキル)カルボニル、(C1-8-アルキル)オキシカルボニル及びフェニルカルボニルより選ばれる基で置換されている請求項1記載のグルコピラノシル-置換シクロプロピル-ベンゼン誘導体又はそれらの生理的に許容可能な塩。
【請求項3】
無機又は有機酸と請求項1又は2記載の化合物との生理的に許容可能な塩。
【請求項4】
請求項1又は2記載の化合物又は請求項3記載の生理的に許容可能な塩を含み、任意に1以上の不活性担体及び/又は希釈剤を含み得る医薬組成物。
【請求項5】
ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLTを抑制することにより影響を受け得る疾患又は状態の治療又は予防に適する医薬組成物を製造するための、少なくとも1つの、請求項1又は2記載の化合物又は請求項3記載の生理的に許容可能な塩の使用。
【請求項6】
1以上の代謝性疾患の治療又は予防に適する医薬組成物を製造するための、少なくとも1つの、請求項1又は2記載の化合物又は請求項3記載の生理的に許容可能な塩の使用。
【請求項7】
代謝性疾患が、1型及び2型糖尿病、糖尿病合併症、代謝性アシドーシス又はケトーシス、反応性低血糖、高インスリン血、グルコース代謝性疾患、インスリン抵抗、メタボリック・シンドローム、起源が異なる異脂質血症、アテローム性動脈硬化及び関連疾患、肥満、高血圧、慢性心不全、浮腫及び高尿酸血症からなる群より選ばれる請求項6記載の使用。
【請求項8】
ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT2を抑制するための医薬組成物を製造するための、少なくとも1つの、請求項1又は2記載の化合物又は請求項3記載の生理的に許容可能な塩の使用。
【請求項9】
膵臓β細胞の変性を予防するための及び/又は膵臓β細胞の機能を改良及び/又は回復するための医薬組成物を製造するための、少なくとも1つの、請求項1又は2記載の化合物又は請求項3記載の生理的に許容可能な塩の使用。
【請求項10】
利尿薬及び/又は降圧剤を製造するための、少なくとも1つの、請求項1又は2記載の化合物又は請求項3記載の生理的に許容可能な塩の使用。

【公表番号】特表2010−500394(P2010−500394A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524184(P2009−524184)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058382
【国際公開番号】WO2008/020011
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】