説明

ケラチノサイトの過剰増殖、特に、アトピー性皮膚炎および乾癬を特徴とする疾患を治療するためのリルゾールの使用

本発明は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖、特に、乾癬および神経皮膚炎を特徴とする疾患の治療薬を製造するために、所望の場合には適当なアジュバントおよび添加剤を用いる、リルゾールの使用、ならびにリルゾールを含む組成物およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患、特に、乾癬およびアトピー性皮膚炎の治療薬の製造のための、所望の場合には適当な添加剤および補助物質を用いる、リルゾールの使用、ならびにリルゾールを含む組成物およびその使用に関する。本発明は、さらに、リルゾールを含む経皮投与および/または局所投与用の薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
下式のリルゾール(2−アミノ−6−(トリフルオロメトキシ)−ベンゾチアゾール):
【化1】

は、高濃度で麻酔特性(非特許文献1)を有する抗痙攣物質(非特許文献2)である。これは、局所虚血および全身虚血の際に神経保護機能を有する(たとえば、非特許文献3)。さらに、この物質は、鎮静剤であり、特に脊髄損傷に対する保護に適している(非特許文献4および5)。また、リルゾールは、抗不安薬的に作用する(特許文献1)。該物質は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に使用され、該疾患の進行の減弱に成功している(非特許文献6)。リルゾールは、インビボでの動物モデルにおいて、他の神経変性疾患に試験されて成功してきた(非特許文献7および8):
【0003】
分子レベルにおいては、作用機構は完全には解明されていない。リルゾールは、高濃度ではグルタミン酸塩のシナプス後作用のいくつかを阻害する(非特許文献9)。しかし、リルゾールの正の作用は、主として、グルタミン酸塩の放出を阻害することによるグルタミン酸伝達の阻害に起因する(非特許文献9、上掲)。次いで、当該作用は、部分的には、電位依存性ナトリウムチャンネルに対するリルゾールの阻害作用に関連付けることができるが、潜在的に、2個のP領域カリウムチャンネル(TREK-1、TRAAK)に対するリルゾールの活性化作用にも関連する(非特許文献10および11)。しかし、リルゾールは、他のいくつかのイオンチャンネルにも作用する。たとえば、リルゾールはNa+チャンネルを阻害するが(非特許文献12)、百日咳毒素に敏感な機序によるNMDA介在応答に干渉し(非特許文献13)、ラージコンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャンネルを活性化し(非特許文献14)、高低電位依存性カルシウム電流を阻害し(非特許文献15)、電位依存性Kv1.4カリウムチャンネルの不活化を減速させ(非特許文献16)、SK3カリウムチャンネルを活性化する(非特許文献17)。
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【非特許文献2】Stutzmann et al., 1991, J. Pharmacol., 193: 223-229
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【特許文献1】米国特許第4,370,338号
【特許文献2】WO94/15601
【特許文献3】米国特許第5,527,814号
【特許文献4】米国特許第6,432,992号
【特許文献5】欧州特許第0050551号
【特許文献6】欧州特許第0305276号
【特許文献7】欧州特許第0305277号
【特許文献8】欧州特許第0282971号
【特許文献9】WO94/13288
【特許文献10】米国特許第5,830,907号
【特許文献11】WO94/15600
【特許文献12】WO94/20103
【特許文献13】WO95/19170
【特許文献14】米国特許第6,245,791号
【特許文献15】米国特許第6,660,757号
【特許文献16】米国特許第6380208号
【特許文献17】米国特許第6239156号
【特許文献18】欧州特許第0558861号
【特許文献19】WO95/040461
【特許文献20】WO90/14826
【特許文献21】欧州特許第0378321号
【特許文献22】WO95/09857
【特許文献23】WO96/35299
【特許文献24】欧州特許第0626385号
【特許文献25】イギリス国特許第1491509号
【特許文献26】ドイツ国特許第2941080号
【発明の開示】
【0004】
発明
今回、驚くべきことに、リルゾールにより、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の増殖の阻害に成功した。したがって、リルゾールは所望の場合には適当なアジュバントおよび添加剤と組み合せて、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の発症を治療し、ならびに/または予防することに驚くほど適していることが分かった。そのような疾患の例は、乾癬、特に尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、逆位乾癬;アトピー性皮膚炎、光線性角化症;表皮剥離性角化亢進症、恒久性レンズ形角質増加症、毛孔性角化症、魚鱗癬などの角化亢進;円形脱毛症、全頭脱毛症、近全頭脱毛症、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚紅斑性狼瘡、苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、斑状強皮症、強皮症、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触性皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎、接触性皮膚炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕性粘膜類天疱瘡、類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、蕁麻疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ビダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA水疱症、多型日光疹、日光性紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚発疹、薬物発疹、慢性進行性紫斑病、発汗異常性湿疹、湿疹、固定薬物発疹、光アレルギー性皮膚反応、単純性苔癬口囲皮膚炎、ざ瘡、酒さ、異常瘢痕、ケロイド、白斑症、および移植片対宿主疾患である。好ましい疾患は、アトピー性皮膚炎および乾癬であり、特に乾癬である。
【0005】
したがって、本発明は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防用の薬剤を製造するための、リルゾールまたは薬理学的に許容される塩の使用に関する。所望の場合には、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩を適当なアジュバントおよび添加剤と組み合わせることができる。
【0006】
好ましい実施形態では、疾患は、乾癬、アトピー性皮膚炎、光線性角化症;表皮剥離性角化亢進症、恒久性レンズ形角質増加症、毛孔性角化症、魚鱗癬などの角化亢進から選択される。
【0007】
特に好ましい疾患は、乾癬およびアトピー性皮膚炎であり、特に乾癬である。
【0008】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患
本発明における、ケラチノサイトの過剰増殖によって特徴付けられる疾患とは、健康な表皮と比較して、患者が、局所的に、または全身にわたって肥厚した表皮を有する疾患である。肥厚した表皮とは、健康な皮膚と比較して、少なくとも約10%、好ましくは約30%、特に約50%、最も好ましくは約80%肥厚している表皮とみなされる。表皮厚の測定方法は、当業者に知られている。たとえばWetzelら(非特許文献18)は、光干渉断層法を記載し、Baulieuら(非特許文献19)は、皮膚超音波計測法を記載しており、どちらも表皮厚の非侵襲的測定方法を示している。さらに、たとえば、El-Domyatiら(非特許文献20)やSchopfら(非特許文献21)が記載しているように、皮膚生検試料の切片中で組織学的に表皮厚を測定することができる。表皮は、皮膚の異なる領域で厚みが異なるので、健康な表皮と疾患表皮の厚みの比較には、皮膚の類似する領域で、それぞれの表皮厚を比較する必要がある。さらに、2個人間の皮膚の同一領域内では表皮厚にある種のばらつきがある。したがって、たとえば、すべての皮膚が罹患していない前提条件下で、疾患個人の左右の脚部表皮厚を測定することが好ましい。一般に、ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患には、当業者が発赤だけに基づいて患者の疾患皮膚領域と健康な皮膚領域を識別できるような皮膚疾患領域の発赤が伴う。ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患表皮の肥厚は、たとえば、局所的にのみ生じることがあり、または乾癬として、それぞれ、発赤および病変に基づいては明確には発症していない乾癬患者の皮膚で既に認められることがある。しかし、乾癬患者では、一層の表皮の肥厚が皮膚患部領域(=病変)でも認められる。本発明においてケラチノサイトの過剰増殖によって特徴付けられる疾患の例は、乾癬、特に、尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、逆位乾癬、アトピー性皮膚炎、光線性角化症;表皮剥離性角化亢進症、恒久性レンズ形角質増加症、および毛孔性角化症による角化亢進;ざ瘡、異常瘢痕、ケロイド、ならびに魚鱗癬である。本発明において、特に好ましい疾患は、アトピー性皮膚炎および乾癬であり、特に乾癬である。
【0009】
表皮は、主として、基底膜から外面にゆっくりと移動するケラチノサイトから形成される。この過程の間に、ケラチノサイトは増殖から分化状態になり最後に死に至る。次いで、死ケラチノサイトは、皮膚表面に角層下体を形成し、該角層下体は絶えず死細胞を脱落させる。この過程によって、皮膚は常に再生される。ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患では、ケラチノサイトの分化と増殖の間の平衡は増殖方向に傾き、それによってより多くのケラチノサイト、特に増殖性ケラチノサイトを含む表皮は著しく肥厚する。そのような疾患では、誤ったバリア機能が見出されることも多く、それによって超抗原または病原体がより容易に皮膚に浸透し得る。しばしば、炎症の増大は、たとえば、アトピー性皮膚炎および乾癬でも観察され、該乾癬には次いで既に述べた皮膚の発赤が伴う。
【0010】
驚くべきことに、本発明において、リルゾールはT細胞の過剰増殖に対する阻害作用を有することも観察されている。この別の作用は、一方で、疾患パターンがケラチノサイトの過剰増殖およびT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患に対するリルゾールおよびリルゾールを含む組成物の有効性を増大させ、他方で、主としてT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患へのリルゾールの使用の可能性を開く。
【0011】
本発明において、T細胞の過剰増殖を特徴とする疾患は、患者が局所的に、または全身にわたって、身体の健康な領域と比較して、特に健康な皮膚と比較して、主として皮膚で増殖T細胞数が増加する疾患である。検査した皮膚の特定の領域にある身体領域が、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、特に約50%、より好ましくは100%、最も好ましくは200%以上の増殖T細胞を含む場合、増殖T細胞数が増加したとみなされる。本明細書で使用する用語「身体領域」は、それぞれ、たとえば、皮膚、造血系、リンパ節のようなどんな領域および器官を含んでいてよい。用語「皮膚」には、表皮、真皮、および皮下組織が含まれるが、特に表皮をさす。増殖T細胞数は、従来技術で知られている様々な方法によって定量することができる。S相またはG2相のT細胞数は、たとえば、皮膚パンチ生検の組織染色によって定量することができ、または皮膚パンチ生検から得た単一細胞懸濁液をFACS分析することによって細胞の細胞周期相について検査することができる。
【0012】
本発明において、T細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の例には、乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、全頭脱毛症、近全頭脱毛症、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚紅斑性狼瘡、苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、斑状強皮症、強皮症、尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、逆位乾癬、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触性皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎、接触性皮膚炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕性粘膜類天疱瘡、類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、蕁麻疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ビダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA水疱症、多型日光疹、日光性紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚発疹、薬物発疹、慢性進行性紫斑病、発汗異常性湿疹、湿疹、固定薬物発疹、光アレルギー性皮膚反応、単純性苔癬口囲皮膚炎、酒さ、白斑症、および移植片対宿主疾患がある。
【0013】
特に、乾癬およびアトピー性皮膚炎が、ケラチノサイトおよびT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患であり、リルゾールおよびリルゾール含有組成物は、その治療に特に適している。これらが、少なくとも2種の異なる作用方式によって疾患を攻撃するからである。
【0014】
目下、これらの疾患の治療には満足のゆく治療は存在していない。それらの治療は、患者亜集団にしか有効でない事が多く、アトピー性皮膚炎または乾癬の場合にコルチコステリオドまたはシクロスポリンをトピック適用し、または全身適用する既存の治療には、しばしば重篤な副作用が伴う。したがって、これらの疾患の治療に、好ましくは副作用のない新規な薬剤が必要とされている。本発明において使用可能なリルゾールは、そのような一薬剤である。たとえば、側索硬化症の治療に100 mgまで投与中、比較的軽度の副作用しか認められず、副作用の中で最も重篤なものでも、アネステニア(治療患者の18%)および嘔気(全治療患者の16%)である。さらにこれらも、たとえば、6ヵ月にわたる持続治療中に著しく低減した。加えて、リルゾールは、その親油性のためにトピック適用に適当であり、それによって続いてさらに副作用が低減する。
【0015】
本発明において使用可能な薬剤は、局所病変の治療に使用できるが、疾患の発症の予防にも使用することができる。すなわち、たとえば、リルゾール投与による表皮の一層の肥厚の阻害によって、病変のない乾癬患者の初期治療を行うことにより、皮膚上の徴候を伴う疾患の発症を予防することができる。
【0016】
薬理学的に許容される塩
本発明において使用可能なリルゾールは、投与に適した無数の形態で提供することができる。薬理学的に許容される適当な形態には、リルゾールの塩、または予備成形体もしくは後成形体が含まれる。
【0017】
薬理学的に許容される塩の例には、これに限定されないが、酢酸(acetic acid)に由来する酢酸塩(acetate)、アコニット酸(aconitic acid)に由来するアコニット酸塩(aconitate)、アスコルビン酸(ascorbic acid)に由来するアスコルビン酸塩(ascorbate)、安息香酸(benzoic acid)に由来する安息香酸塩(benzoate)、桂皮酸(cinnamic acid)に由来する桂皮酸塩(cinnamate)、クエン酸(citric acid)に由来するクエン酸塩(citrate)、エンボン酸(embonic acid)に由来するエンボン酸塩(embonate)、ヘプタン酸(heptanoic acid)に由来するエナント酸塩(enantate)、ギ酸(formic acid)に由来するフォルミエート(formiate)、フマル酸(fumaric acid)に由来するフマル酸塩(fumarate)、グルタミン酸(glutamic acid)に由来するグルタミン酸塩(glutamate)、グリコール酸(glycolic acid)に由来するグリコール酸塩(glycolate)、塩酸(hydrochloric acid)に由来する塩化物(chloride)、臭化水素酸(hydrobromic acid)に由来する臭化物(bromide)、乳酸(lactic acid)に由来する乳酸塩(lactate)、マレイン酸(maleic acid)に由来するマレイン酸塩(maleate)、マロン酸(malonic acid)に由来するマロン酸塩(malonate)、マンデル酸(mandelic acid)に由来するマンデル酸塩(mandelate)、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)に由来するメタンスルホン酸塩(methanesulfonate)、ナフタリン−2−スルホン酸(naphtaline-2-sulfonic acid)に由来するナフタリン−2−スルホン酸塩(naphtaline-2-sulfonate)、硝酸(nitricacid)に由来する硝酸塩(nitrate)、過塩素酸(perchloric acid)に由来する過塩素酸塩(perchlorate)、リン酸(phosphoric acid)に由来するリン酸塩(phosphate)、フタル酸(phthalic acid)に由来するフタル酸塩(phthalate)、サリチル酸(salicylicacid)に由来するサリチル酸塩(salicylate)、ソルビン酸(sorbic acid)に由来するソルビン酸塩(sorbate)、ステアリン酸(stearic acid)に由来するステアリン酸塩(stearate)、コハク酸(succinic acid)に由来するコハク酸塩(succinate)、硫酸(sulphuric acid)に由来する硫酸塩(sulphate)、酒石酸(tartaric acid)に由来する酒石酸塩(tartrate)、p−トルエン−スルホン酸(p-toluene-sulfonic acid)に由来するトルエン−p−硫酸塩(toluene-p-sulfate)、他、無毒の無機塩または有機塩が含まれる。そのような塩は、当業者に知られ、従来技術に記載されている方法によって製造することができる。
【0018】
医薬として受容可能とは見なされない、シュウ酸に由来するシュウ酸塩などの他の塩も、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩を製造するための中間製造物として適当であり得る。
【0019】
製剤
本発明に記載する用語「アジュバント」は、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩と不利益に反応しない限り、あらゆる薬理学的に許容される固体または液体の充填材、希釈物、または詰込材をさす。液状の製剤用アジュバントは、たとえば、滅菌水、生理食塩水、糖液、エタノール、および/または油である。錠剤およびカプセル剤を製造するための製剤用アジュバントは、たとえば、結合剤および充填剤を含んでいてよい。
【0020】
通常、リルゾールを含む薬剤の製造、および本発明に従う使用における適用は、確立されている製薬技術の方法にしたがって実施される。この目的のために、リルゾールは、薬理学的に許容される適当なアジュバントおよび担体と共に加工されて医薬製剤になり、該製剤は種々の兆候およびそれぞれの適用領域に適切である。それによって、所望の放出速度、たとえば、それぞれ、急速流出効果および/または遅延持効効果を示す薬剤を製造することができる。
【0021】
本発明の特に好ましい使用では、前記薬剤は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防に局所的に提供される。
【0022】
皮膚、創傷、または粘膜への局所塗布には、リルゾールを含む薬剤は、乳濁液、ゲル、軟膏、フォーム、バンドエイド、それぞれ乳濁系(油/水−水/油−混合相)である混合相両親媒性クリーム、リポソーム、あるいはトランスフェロソームの形で調製されることが好ましい。これらの医薬製剤は、従来技術で知られており、当業者は、そうした医薬製剤の1種を含む薬剤として、過度の負担なしにリルゾールを調製することができる。特に好ましい実施形態では、薬剤は、クリーム、特にベースクリームDAC(ドイツ薬局方外規格)Basiscremeの形で調製される。
【0023】
さらに、局所的に塗布できる製剤は、粉末、ペースト、または溶液である。ペーストは、しばしば、ベース成分として、粘稠性を付与するために固形分含有量が高い親油親水性添加剤を含む。粉末、特に局所に塗布される粉末は、分散性、流動性、滑動性を増大させ、かつ集塊を防止するために、コムギやコメ澱粉などの澱粉、炎光分散性二酸化ケイ素および/またはシリカを含んでよい。これらの添加剤は、希釈剤としても機能し得る。
【0024】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防に使用されるリルゾール含有薬剤は、軟膏、ゲル、バンドエイド、乳濁液、ローション、フォーム、混合相または両親媒性乳濁液系(油−水/水−油混合相)クリーム、リポソーム、トランスフェロソーム、ペースト、あるいは粉末として調製される。
【0025】
本発明の局所に塗布される薬剤を調製するための特定の適当なアジュバントおよび担体にはそれぞれ、たとえば、適当なベース、またはセルロース誘導体を製造するためのゲル形成剤として、たとえば、グァーガムやキサンタンガムなどのアルギン酸ナトリウム;たとえば、水酸化アルミニウムやベトナイトなどの無機ゲル形成剤(いわゆる揺変性ゲル形成剤);たとえば、Carbopol(登録商標)、ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、たとえば、カルボキシメチルセルロース製造物IntraSite(Smith & Nephew、ロンドン)などのポリアクリル酸誘導体がある。さらに、たとえば、熱可逆性ゲルを形成するFloGel(登録商標)など、生体適合性ポリオキサマーを使用することができる。さらに、リン脂質または両親媒性低分子量または高分子量化合物を考慮することができる。ゲルは、水をベースとするヒドロゲルでも、または、たとえば、低分子量および高分子量パラフィン炭水化物とワセリンの混合物をベースとする疎水性オルガノゲルでもよい。さらに、合成生体物質を担体として使用でき、それによってリルゾールは非共有結合または共有結合で、たとえば、直接またはリンカーによって結合することができる。
【0026】
当業者に知られている皮膚鎮静剤および/または抗炎症添加剤、たとえば、合成物質、ならびに/あるいは薬草、特に、ビソボロールおよびパンテノールから得た抽出物および/または物質を薬剤に加えることもできる。さらに、たとえば、黄色、赤色酸化鉄(II)、および/または二酸化チタンなどの色彩を調整するための着色剤、ならびに/あるいは香料を薬剤に加えることができる。
【0027】
さらに、本発明において利用可能な薬剤は乳化剤を含んでよい。適当な乳化剤は、中性、アニオン性、またはカチオン性テンシデ;たとえば、アルカリ石鹸、金属石鹸、アミン石鹸;硫化化合物およびスルホン化化合物、逆性石鹸、長鎖脂肪族アルコール、ソルビタンおよびポリオキシエチレンソルビタンの部分脂肪酸エステル、たとえば、ラネッテ型、ウールワックス、ラノリン、あるいは油/水および/または水/油性エマルジョンの生成に適当である他の合成物である。親水性オルガノゲルは、たとえば、高分子量ポリエチレングリコールをベースとして調製することができる。このゲル型製剤は、洗浄することができる。軟膏、クリーム、または乳濁液の調製に、脂肪性、油性、および/または蝋様成分の形をとる脂質として使用されるものは、ワセリン、天然および/または合成ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール;たとえば、モノ−、ジ−、またはトリグリセリドとして脂肪酸エステル;パラフィン油または植物油、硬化ひまし油、または硬化ココナッツ油、ラード;たとえば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、およびステアリン酸をベースとする、Softisan(登録商標)などの合成脂肪、またはMiglyol(登録商標)のようなトリグリセリド混合物である。
【0028】
pH値を調整するためには、浸透圧的に有効な酸、塩基を使用することができ、たとえば、塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、さらに、たとえば、クエン酸塩、リン酸塩、トリス緩衝液、またはトリエタノールアミンなどの緩衝液系を使用することができる。また、安定性は、たとえば、安息香酸メチルもしくはプロピレン(パラベン)、またはソルビン酸などの保存料を添加することによって改善することができる。
【0029】
経鼻適用には、点鼻剤、鼻内スプレー噴霧器、または鼻用クリームもしくは軟膏を使用することができる。鼻内スプレーもしくは乾燥粉調製物、およびエアロゾル剤形が、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩の全身の投与に適当である。さらに、本発明による薬剤は、それぞれ、圧力およびエアロゾル剤形、ならびに乾燥粉剤により、吸入し吹入れることができる。そのような製剤は、それぞれ、直接、肺、気管支、および/または喉頭領域で適用するために、かつ局所適用するために使用することもできる。乾燥粉剤は、たとえば、活性剤軟質ペレットとして、たとえば、乳糖およびブドウ糖などの適当な担体と共に活性剤の混合粉として製剤することができる。吸入または吹入れには、当業者に知られている通常使用される器具を利用することができ、この器具は鼻腔、口腔および/または咽頭腔の治療に適当である。リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩は、超音波気化器によって投与することもできる。エアロゾル製剤形の代わりに、噴霧剤不含手動ポンプシステムを使用することもできる。噴霧剤エアロゾルは、たとえば、ミリスチン酸イソプロピル、ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸エステル、レシチン、大豆レシチンなどの界面活性剤アジュバントを含むのが好適である。生体内原位置の領域での適用には、たとえば、滴下溶液が好適である。
【0030】
さらに、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩は、全身投与薬剤の形で使用することができる。これらには、特に、注射液および注入液を含む非経口剤が含まれる。注射液は、アンプルの形でも、またはいわゆる使用準備済注射液として、たとえば、使用準備済注射器または1回使用注射器として、およびそれに加えて多数回の採取用に穿孔可能フラスコに製剤される。注射液の投与は、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、または皮内(i.c.)適用形にすることができる。特に、それぞれ、適当な注射製剤結晶懸濁液、溶液、ナノ粒子、または、たとえば、ヒドロゾルなどのコロイド分散系として製造することができる。
【0031】
注入可能製剤は、さらに、濃縮物として製造することができ、該濃縮物を水性等張希釈液で溶解し、または分散させることができる。注入液はまた、等張溶液、脂肪性乳濁液、リポソーム製剤、およびマイクロ乳濁液の形に調製することもできる。注射液と同様に、注入製剤は、希釈用濃縮物の形に調製することもできる。注入可能製剤は、入院患者および外来患者の治療において持続性注入液の形で、たとえば、ミニポンプの形で適用することもできる。
【0032】
たとえば、アルブミン、血漿、増量剤、表面活性物質、有機希釈液、pH作用物質、錯化剤物質、重合物質を親薬物製剤に添加し、特に、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が、蛋白質またはポリマーに吸着するのに作用する物質として添加することができる。または注射機器またはパッケージング物質、たとえば、プラスチックやガラスなどの物質に、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が吸着するのを低減することを目的として、こうした物質を加えることもできる。
【0033】
リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩は、非経口剤中のマイクロキャリアまたはナノ粒子、たとえば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリラクテート、ポリグリコレート、ポリアミノ酸、またはポリエーテルウレタンをベースとする微細分散粒子に結合させることができる。非経口製剤は、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩を、それぞれ、微細分散形態および分散懸濁形態で導入する場合は、たとえば、「多単位原理」に基づく持効性調製物として改変することもできる。あるいは非経口製剤は、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩を製剤中に、たとえば、その後インプラントされる錠剤またはロッド中に封入する場合は、薬剤中の結晶懸濁液として、「単一単位原理」に基づいて改変することもできる。単一単位および多単位製剤中のこれらのインプラントまたは持効性薬剤は、たとえば、乳酸ポリエステル、グリコール酸ポリエステル、ポリエーテルウレタン、ポリアミノ酸、ポリ(メタ)アクリレート、多糖類など、いわゆる生分解性ポリマーからなることが多い。
【0034】
非経口剤として製剤される、本発明により利用可能な薬剤の製造中に添加されるアジュバントおよび担体は、aqua sterilisata(滅菌水); pH値作用物質、例えば有機もしくは無機の酸もしくは塩基およびその塩;pH値調整緩衝化物質;等張化物質、例えば塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ブドウ糖、果糖;テンシデおよび界面活性剤、乳化剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸部分エステル(たとえば、Tween(登録商標))、または、たとえば、ポリオキシエチレンの脂肪酸エステル(たとえば、Cremophor(登録商標));脂肪油、例えばピーナッツ油、大豆油、ひまし油;脂肪酸合成エステル、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル;中性油(たとえば、Miglyol(登録商標));さらに、ポリマーアジュバント、たとえばゼラチン、デキストラン、ポリビニルピロリドンなどの;有機溶媒の溶解度を上昇させる添加剤、たとえばプロピレングリコール、エタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコール;あるいは、複合体形成物質、たとえばシトレートや尿素;保存料、たとえば安息香酸ヒドロキシプロピルエステルおよびメチルエステル、ベンジルアルコール;抗酸化剤、たとえば亜硫酸ナトリウムなどの;ならびに、安定剤、たとえばEDTAなどであることが好ましい。
【0035】
好ましい実施形態で本発明において利用可能な薬剤を懸濁液として製剤する場合、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩の沈殿を防止するための増粘剤、沈殿物の再懸濁を確実にするためのテンシデ(tenside)および高分子電解質、および/または複合体形成剤、たとえばEDTAなどを加える。様々なポリマーによって活性成分の複合体を得ることも可能である。そのようなポリマーの例には、ポリエチレングリコール、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、Pluronics(登録商標)、ポリエチレングリコールソルビット脂肪酸エステルがある。リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩は、包接化合物の形で、たとえば、シクロデキストリンによって液体製剤に組み込むこともできる。特定の実施形態では、さらに、アジュバントとして分散剤を加えることもできる。凍結乾燥物を製造するためには、マンニット、デキストラン、サッカロース、ヒトアルブミン、乳糖、PVP、種々のゼラチンなどの足場剤を使用することができる。
【0036】
リルゾールが、その塩基形で液体薬物製剤に含まれていない限り、その酸付加塩溶媒和物の形で非経口剤内にリルゾールを使用することができる。
【0037】
さらに重要な全身適用製剤は、錠剤、硬軟ゼラチンカプセル剤、コート錠、粉剤、ペレット剤、マイクロカプセル剤、圧縮長円形剤、粒剤、カシェ剤、ドロップ錠、チューインガム、またはサシェの形の経口投与である。こうした固形経口投与製剤は、それぞれ、遅延系および持効系として製剤することもできる。その中に含まれるものは、たとえば、脂肪、蝋様物質もしくはポリマー物質、またはいわゆる貯蔵系を使用することによって、マトリックスをベースとした拡散侵食形の、1種または複数の微粉末活性剤成分を含む薬剤である。長時間に渡ってリルゾールを放出するように薬剤を製剤する場合、フィルムもしくはマトリックス形成物質、たとえば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリラート誘導体、(たとえば、Eurdragit(登録商標))、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースフタラートなどの遅延剤および制御放出剤を、それぞれ、有機溶液に水性分散液の形で加えることができる。この意味において、身体粘膜との密接した接触により、体内での留置が長時間となり生じる生体接着調製物も挙げるのが好ましい。生体接着ポリマーの一例は、たとえば、Carbomere(登録商標)のグループである。
【0038】
胃腸路の異なる区域内でリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩を制御放出する目的では、異なる場所で放出されるペレットの混合物を使用することができる。たとえば、それぞれ、胃液溶解性および胃液耐性のフィルム、物質、化合物、または組成物の混合物で薬剤製剤をコートすることができる。胃腸路の異なる区分で放出に作用するという同じ目的は、コアを含む適切に製造されたコート錠によって達成することもでき、その際、コーティングは胃液に活性成分を迅速に放出し、コアは小腸環境中に活性成分を放出する。胃腸路の異なる区分での制御放出の目的は、多重コート錠によっても実現することもできる。たとえば、硬ゼラチンカプセル剤中に、差次的に放出される活性剤を含むペレット混合物を充填することができる。
【0039】
たとえば、錠剤、硬軟ゼラチンカプセル剤、コート錠、顆粒などの圧縮製剤の製造に使用される別のアジュバントは、たとえば、反糊剤、滑沢剤、分離剤;たとえば、炎光分散二酸化ケイ素などの分散剤;たとえば、様々な型の澱粉などの崩壊剤;PVP、セルロース;たとえば、Eudragit(登録商標)、セルロース、またはCremophor(登録商標)をベースとする蝋様物質および/またはポリマー物質など、造粒剤または遅延剤としてのエステルである。
【0040】
さらに、経口投与用に製剤された薬剤は、抗酸化剤;たとえば、サッカロース、キシライト、マンニットなどの甘味剤;矯味剤、香味料、保存料、着色剤、緩衝化剤、直接圧縮賦形剤、微結晶セルロース、澱粉、加水分解澱粉(たとえば、Celutab(登録商標))、乳糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、リン酸二カルシウム、滑沢剤;たとえば、乳糖や澱粉などの充填剤;乳糖の形をとる結合剤;たとえば、それぞれ、コムギもしくはトウモロコシ澱粉、およびコメ澱粉などの澱粉類;たとえば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;シリカ、タルカム;たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸塩;タルク、シリコン処理タルク、ステアリン酸、セチルアルコール、水添脂肪などを含んでいてよい。当業者には、経口投与製剤用薬剤に加えることができる様々な物質が知られている。
【0041】
別の実施形態では、リルゾールまたは治療上許容されるその塩は、特に、たとえば、GIT(胃腸治療系)またはOROS(経口浸透圧系)など、浸透圧原理に基づく経口治療系として製剤することもできる。
【0042】
発泡錠もしくは発泡タブも圧縮製剤に含まれる。これらは経口投与することができ、水に迅速に溶解し、または懸濁させることができ、速やかに飲むことができる即時薬物製剤である。
【0043】
経口投与製剤は、溶液、たとえば、点滴薬、ジュース、および当技術分野で知られている方法にしたがって製造することができる懸濁液も含まれ、かつ経口投与製剤は、既に述べた安定性を高めるためのアジュバントおよび添加剤の他に、保存料、所望の場合には、摂取を容易にするための香味剤、区別し易くするための着色剤、抗酸化剤、および/またはビタミン剤;糖類や人工甘味料などの甘味剤を含めてよい。経口投与製剤は、使用前に水で調製する乾燥ジュースにも適用される。本発明の薬剤製剤の好ましい実施形態では、経口可能な液体製剤は、イオン交換樹脂を含んでいてもよい。
【0044】
特殊な放出製剤は、たとえば、体液と接触後にガスを発生し、したがって胃液表面を浮遊する錠剤またはペレットをベースとする、いわゆる浮遊薬物製剤の構築である。さらに、いわゆる電子定方向放出系を製剤することも可能であり、その際活性成分の放出は、外部電子インパルスによって個々の要件に合わせることができる。
【0045】
経直腸適用薬剤は、別の薬物製剤群であり、これは、全身的に投与することができ、所望の場合は、局所的に作用させることもできる。それらには座薬や浣腸製剤がある。浣腸製剤は、当該投与を生じさせるための水性溶媒と共に錠剤をベースとして調製することができる。また、たとえば、ゼラチンや当該技術分野で知られている他の担体をベースとして直腸カプセル製剤を提供することも可能である。
【0046】
座薬のベースとしては、硬脂肪、たとえば、Witepsol(登録商標)、Massa Estarium(登録商標)、Novata(登録商標)、ココナッツ油、グリセリン/ゼラチン物質、グリセリン/石鹸ゲル、およびポリエチレングリコールを考慮することができる。
【0047】
数週間までの期間に及ぶ活性剤の全身放出を伴う長期適用には、圧縮インプラントが適当であり、これは、いわゆる生分解性ポリマーをベースとして製剤することが好ましい。
【0048】
本発明にしたがって製剤される、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩を含む薬剤は、経皮系として製剤することもできる。ちょうど上記直腸形のような当該製剤は、それぞれ、肝臓循環および肝臓代謝を回避することを特徴とする。経皮系として特に適当なものは、異なる層ならびに/あるいは適当なアジュバントおよび担体の混合物をベースとするバンドエイドである。該バンドエイドは、長期または短期にわたって目標とした方式で活性成分を放出することができる。そのような経皮系を製造中、皮膚への浸透を改善し、かつ/または浸透を促進するために物質を加えることができる。該物質は膜浸透を上昇させ、場合によっては、たとえば、オレイン酸、Azone(登録商標)、アジピン酸誘導体、エタノール、尿素、プロピレングリコールなどの透過促進剤であってよい。適当なアジュバントおよび担体の他に、溶媒、ポリマー成分、たとえば、Eudragit(登録商標)をベースとする成分を、本発明により利用可能な薬剤の別の成分として考慮することができる。
【0049】
この研究の前後関係では、驚くべきことに、リルゾールが表皮を例外的によく通り抜けることが分かった(実施例3を参照)。すなわち、以下のことが見出された。
a)リルゾールは、皮膚疾患を治療するための局所塗布に例外的によく適している。リルゾールが、死細胞からなる角化表皮層を例外的によく通り抜け、したがって皮膚中に存在する基底ケラチノサイトおよびT細胞が、有効量のリルゾールに容易に曝露されるからである。
b)任意の浸透促進剤を添加しなくても、ALSのように高い血漿濃度が必要とされる他の疾患の治療に、リルゾールを局所に塗布することができる。したがって、驚くべきことに、リルゾールは、どんな浸透促進剤を添加しなくても経皮送達に適当である。
【0050】
この知見によって、容易な局所投与計画の機会が提供され、それによって胃腸刺激や肝臓での代謝など、経口投与に付随する問題が回避される。
【0051】
皮膚は天然バリアであり、したがって、通常、皮膚を通る薬剤の輸送は複雑な機序であるので、浸透促進剤なしで製剤した場合も、リルゾールは皮膚を浸透するという知見は驚くべきことである。皮膚表面に塗布(すなわち局所塗布)される生理学的に活性な薬剤が有効に経皮送達されるためには、薬剤は、まず、賦形剤から角質層中に分配されなければならない。次いで典型的には、薬剤は角質層中に拡散し、その後角質層から実行可能な表皮に分配されなければならない。真皮層を超える輸送に付随した経皮送達の問題のいくつかを克服するためには、1種または複数の皮膚浸透促進剤を組み込んで生理学的活性剤を製剤する(非特許文献22)。しかし、該促進剤は、角質層中に容易に分配され、そこで皮膚バリアを超える薬物輸送の改善にその効果を発揮する親油性化学薬品であることが多い。今回、驚くべきことに、リルゾールの場合には浸透促進剤が必要ではないことが分かった。この結果は、全く予想外であったので、今までに、経皮送達を意図したリルゾールを含む局所薬剤の作出が試みられることはなかった。本発明は、初めて、血漿曝露による経口投与さえをも超える単純で安全なリルゾール用局所送達系を提案する。
【0052】
a)の事例では、実施例3は、特に、皮膚疾患の局所治療に対するリルゾールの適合性を証明し、それによって有効であり、取扱いが容易な、病変の局在治療が可能になる。
【0053】
b)の事例では、驚くべきことに、たとえば、高い血漿濃度が必要である事例で、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が、経皮送達に例外的に適当であることが証明されている。現在、リルゾールは、その神経保護作用のために、特に、神経および脳の疾患および損傷の治療に投与されている。したがって、本発明は、有効量のリルゾールを投与することによって根治する疾患の治療に向けた、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩の経皮送達に関する。これらの疾患には、神経および脳の疾患および損傷が含まれ、特に、パーキンソン病またはパーキンソン病症候群(特許文献2)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(特許文献3)、副腎白質萎縮症(特許文献4)、運動障害、脊髄筋萎縮症や乳児性筋萎縮症などの運動神経疾患、原発性側索硬化症;抗痙攣剤、抗不安剤(特許文献5);統合失調症(特許文献6)、睡眠疾患(特許文献7)、機能低下(特許文献7)、脳血管疾患(特許文献8);脊髄性、頭蓋性、または頭蓋脊髄性外傷(特許文献9および10);放射傷害(特許文献11)、神経AIDS(特許文献12)、ミトコンドリア性疾患(特許文献13)、小脳機能異常(特許文献14);聴覚外傷、特に聴覚障害および耳鳴(特許文献15);痙縮、特に錐体痙縮(特許文献16);たとえば大動脈遮断によって誘発された脊髄損傷(特許文献17)などが含まれる。リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩の局所製剤は、麻酔薬(特許文献8)として、放射回復剤(特許文献11)として、または催眠剤(特許文献5)として使用することもできる。
【0054】
さらに、皮膚以外の他の器官にも作用する、リルゾールまたは薬理学的に許容される塩を局所投与することによって根治する皮膚疾患にも経皮送達は適当である。乾癬の場合には、疾患は皮膚に作用するだけでなく、炎症は関節にも作用し乾癬性関節炎をもたらすことが多い。したがって、乾癬患者にリルゾールまたは薬理学的に許容される塩を局所投与することによって、皮膚症状および身体の他の部分に作用する炎症を治療することができる。
【0055】
したがって、リルゾールまたは薬理学的に許容される塩の局所投与は、特に、そのような皮膚疾患、特に乾癬に適当である。
【0056】
すなわち、本発明の一実施形態は、リルゾールの経皮送達用局所薬剤の調製に向けたリルゾールの使用に関する。
【0057】
別の実施形態は、以下の治療または予防に向けて、局所薬剤を調製するためのリルゾールの使用に関する:神経細胞および脳の疾患および損傷、特にパーキンソン病、パーキンソン病症候群、ALS、副腎白質萎縮症、運動障害、脊髄筋萎縮症や乳児性筋萎縮症などの運動神経疾患、原発性側索硬化症;抗痙攣剤、抗不安剤、または催眠活性剤が必要な病態;統合失調症、睡眠疾患および機能低下、脳血管疾患および圧痛;脊髄性、頭蓋性、または頭蓋脊髄性外傷;放射による傷害、神経AIDS、ミトコンドリア性疾患、小脳機能異常;聴覚外傷、特に聴覚障害および耳鳴;痙縮、特に錐体痙縮;たとえば大動脈遮断によって誘発された脊髄損傷の減少。好ましい使用では、局所薬剤は、皮膚浸透促進剤を含まない。しばしば、これらの物質は皮膚を刺激するので、製剤から浸透促進剤を除去することは有利である。皮膚浸透促進剤の例は、オレイン酸(oleic acid)、オレイルアルコール(oleyl alcohol)、エトキシジグリコール(ethoxydiglycol)、ラウロカプラム(laurocapram)、アルカンカルボン酸類(alkanecarboxylic acids)、Azone(登録商標)、アジピン酸(adipic acid)誘導体、エタノール(ethanol)、尿素(urea)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)(DMSO)、極性脂質、またはN−メチル−2−ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone)である。
【0058】
さらに、本発明は、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩を含む局所薬剤に関する。好ましい実施形態では、前記局所薬剤は、皮膚浸透促進剤を含まないことによって特徴付けられる。
【0059】
より好ましい実施形態では、局所薬剤は、水中油滴型または油中水滴型乳濁液に製剤されたリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩からなることを特徴とする。好ましい局所製剤は、乳濁液、ゲル、軟膏、気泡、バンドエイド、それぞれ乳濁系(油/水−水/油−混合相)である混合相両親媒性クリーム、リポソーム、またはトランスフェロソームである。特定の好ましい製剤は、ベースクリームDAC(DAC Basiscreme)を含む。再度、このような製剤は、皮膚浸透促進剤を含まないことが好ましい。
【0060】
ベースクリームDAC(DAC Basiscreme)は、局所塗布するためのクリーム製剤である。クリーム100 gには、以下の組成物が含まれる。
モノステアリン酸グリセリン60 4.0 g
セチルアルコール 6.0 g
中鎖トリグリセリド 7.5 g
白色ワセリン 25.5 g
マクロゴール−20−グリセリンモノステアラート7.0 g
プロピレングリコール 10.0 g
精製水 40.0 g
【0061】
好ましい実施形態では、局所薬剤には、全製剤の重量に対して、0.01%〜10%のリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、好ましくは0.1%〜8%のリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、より好ましくは1%〜4%のリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が含まれる。前述したように、これらの量のリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が、好ましい局所製剤または特定の好ましい局所製剤に含まれることが特に好ましい。再度、そのような製剤には、皮膚浸透促進剤が含まれないことが好ましい。
【0062】
本発明は、以下からなる群から選択される疾患を治療し、または予防する方法にも関し:パーキンソン病、副腎白質萎縮症、運動障害、脊髄筋萎縮症や乳児性筋萎縮症などの運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症;抗痙攣剤、抗不安剤、または催眠活性剤が必要な病態;統合失調症、睡眠疾患および機能低下、脳血管疾患および圧痛;脊髄性、頭蓋性、または頭蓋脊髄性外傷;放射による傷害、パーキンソン病症候群、神経AIDS、ミトコンドリア性疾患、小脳機能異常;聴覚外傷、特に聴覚障害および耳鳴;痙縮、特に錐体痙縮;あるいはたとえば大動脈遮断によって誘発された脊髄損傷の減少、その際、本発明による局所薬剤は、皮膚に塗布することによって投与される。
【0063】
本発明は、以下からなる群から選択される疾患の治療方法にも関し:乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、全頭脱毛症、近全頭脱毛症、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、皮膚紅斑性狼瘡、苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、斑状強皮症、スクレロデルミア、尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、逆位乾癬、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触性湿疹、刺激性接触性湿疹、接触性湿疹、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕性粘膜類天疱瘡、類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、蕁麻疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ビダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA水疱症、多型日光疹、日光性紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚発疹、薬物発疹、慢性進行性紫斑病、発汗異常性湿疹、湿疹、固定薬物発疹、光アレルギー性皮膚反応、エリオラル単純性苔癬、皮膚炎、「移植片対宿主疾患」、ざ瘡、酒さ、異常瘢痕、ケロイド、および白斑症、その際、本発明による局所薬剤は、皮膚に塗布することによって投与される。
【0064】
特に好ましい実施形態では、疾患は、乾癬およびアトピー性皮膚炎から選択され、特に乾癬である。
【0065】
経口投与に適当な既知のリルゾール製剤は、たとえば、特許文献18および特許文献1に開示されている。
【0066】
それぞれの投与方式に適した薬物製剤は、製剤説明書および一般に知られている医薬物理学概念を基礎とする作動方式にしたがって、当業者が製造することができる。
【0067】
別の物質との組合せ
本発明の別の実施形態では、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療および/または予防に適当である他の治療活性成分と組み合わせることができる。
【0068】
すなわち、別の態様では、本発明は、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、ならびにケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防に利用できることが知られている1種または複数の別の活性成分を含む組成物に関する。リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩と組み合わせることができる特に適当な活性成分は、ビタミンD受容体作用薬としてビタミンD誘導体、特にカルシポトリオール;レチノイド受容体(RAR)作用薬としてレチノイド、たとえば、タザロテン;グルココルチコイドの作用薬としてコルチコステロイド誘導体、たとえば、ベタメタゾンおよびコルチゾン;フマル酸;皮膚薄化剤、たとえば、クロベタゾール;TNFα拮抗薬、ジヒドロ葉酸脱水素酵素拮抗薬、たとえば、メトトレキセート;ならびに免疫抑制性物質、たとえば、アンフォテリシン、ブスルファン、コトリモキサゾール、クロランブシル、コロニー刺激因子、シクロホスファミド、フルコナゾール、ガンシクロビル、抗リンパ球免疫グロブリン、メチルプレドニゾロン、オクトレオチド、オキスペンチフィリン、サリドマイド、ゾリモマブアリトキス、クロトリマゾールである。
【0069】
別の特に好ましい実施形態は、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、ならびにカルシニューリン拮抗薬を含む組成物に関する。本発明において、用語「カルシニューリン拮抗薬」は、カルシニューリン脱リン酸酵素活性に対して拮抗薬として作用する物質に関すると理解されるものである。物質が、カルシニューリン脱リン酸酵素活性に拮抗薬として作用するかどうかは、従来技術に記載されているカルシニューリン脱リン酸酵素活性の定量検定によって決定することができる。たとえば、非特許文献23に記載されている検定を行うことができる。その中の反応には、100μmol/lのCaCl2、ウシ血清アルブミン(画分V)1 ml当たり100μg、40 mmol/lのTris−HCl(pH8.0)、100 mmol/lのNaCl、6 mmol/lの酢酸マグネシウム、500μmol/lのジチオトレイトール、40μmol/lの[33P]RII−ペプチド(600 cpm/pmol)、190 nmol/lのウシカルモジュリン、3 nmol/lのウシカルシニューリン、カルシニューリン阻害を試験するための物質(「試験物質」)50μmol/l、ならびに1種のイムノフィリン、たとえば、FKBP12およびサイクロフィリンが含まれる。RII−ペプチドの配列は、DLDVPIPGRFDRRVSVAAEである。非特許文献2および25に記載されている通りにセリン残基でのリン酸化を実施する。ペプチドの非存在下、反応物を30℃で30分間培養する。ペプチドの添加によって脱リン酸化反応を開始し、次いで30℃で10分間培養する。LiuらおよびManalanおよびKlee(上掲)の記載の通りに、反応を停止し、リン酸化ペプチドから遊離リン酸塩を分離する。試験物質の非存在下で測定した脱リン酸化の程度を100%のカルシニューリン活性として定義する一方で、試験物質とカルシニューリンの非存在下で測定した脱リン酸化の程度を0%のカルシニューリン活性として定義する。次いで、それぞれのカルシニューリン拮抗薬の活性は、それぞれの拮抗薬の存在下でのカルシニューリン活性の減少百分比として示すことができる。本発明の組成物に使用されるカルシニューリン拮抗薬は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約90%カルシニューリン活性を減少させる。本発明によるカルシニューリン拮抗薬は、たとえば、特許文献19〜26により知られている。
【0070】
本発明による組成物は、シクロスポリンA 、シクロスポリンG、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、ジヒドロ−シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンH、シクロスポリンI、ASM-240、ピメクロリムス、タクロリムス、タクロリムスの13−デスメチル誘導体(L-685487)、L-683519、および/またはタクロリムスの17−エチル誘導体から選択される1種または複数のカルシニューリン拮抗薬を含むことが好ましい。特に好ましいものは、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩の他に、ピメクロリムス、タクロリムス、およびシクロスポリンAを含む組成物である。さらに好ましい実施形態では、組成物には、1種または複数の上記の活性成分を含めてよく、それによって特に1種または複数の特に適切な活性成分を含めてよい。
【0071】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を低減し、または阻害する1種または複数の別の活性成分、ならびに/あるいは1種または複数のカルシニューリン拮抗薬を含む本発明による組成物は、リルゾールについて先に開示した製剤の1種を用いて当業者は製造することができ、それぞれ、示したアジュバントおよび添加剤と混合することができる。
【0072】
したがって、本発明の別の態様は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患、特にアトピー性皮膚炎および乾癬の治療または予防用薬剤を製造するための上記組成物の1種の使用である。本発明による組成物を本発明にしたがって使用中、リルゾールについて上記した同じ形態の適用例は、特に皮膚の患部への局所塗布に適当である。
【0073】
別の態様では、本発明は、それぞれの活性成分、すなわちリルゾール、カルシニューリン拮抗薬、ならびに/もしくはケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を低減させる活性成分の空間的および/または時間的に分離した投与にも関する。
【0074】
本発明の別の態様は、以下の治療に投与される、リルゾールおよび化合物を含む局所製剤に関する:パーキンソン病、副腎白質萎縮症、運動障害、脊髄筋萎縮症や乳児性筋萎縮症などの運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症;抗痙攣剤、抗不安剤、または催眠活性剤が必要な病態;統合失調症、睡眠疾患および機能低下、脳血管疾患および圧痛;脊髄性、頭蓋性、または頭蓋脊髄性外傷;放射による傷害、パーキンソン病症候群、神経AIDS、ミトコンドリア性疾患、小脳機能異常;聴覚外傷、特に聴覚障害および耳鳴;痙縮、特に錐体痙縮;あるいはたとえば大動脈遮断によって誘発された脊髄損傷の減少。好ましいそのような局所製剤は、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、ならびに前述した局所賦形剤の他に、上記の疾患の1つを治療するために投与される、以下からなる群から選択した少なくとも1種の化合物を含む:トコフェロールと組み合せたセレギリン、セレゲリン;レボドパ、ブロモクリプチン、トリヘキシフェニジル、アマンタジン、A型ボツリヌス菌毒素、チザニジン、ダントロレンナトリウム、バクロフェン、ベンゾジアゼピン、好ましくはジアゼパムまたはクロナゼパム、クロニオジン、ガバペンチン、ラモトリギン、シプロヘプタジン、カンナビノイド様化合物、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム、セイヨウオトギリソウ、エンラファキシン、ブプロピオン、ネファゾドン、ミルタザピン、トラゾドン;3環系抗うつ剤、好ましくはアミトリプチリン、ノルトリプチリン、デシプラミン、クロミプラミン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、またはイミプラミン;MAO−阻害剤、好ましくはフェネルジンまたはトラニルシプロミン;抗コリン作用剤、好ましくはベンズトロピン、プロサイクリジン、ジフェンヒドラミン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、トピラマート、チアガビン、オキシカルバゼピン、フェニトイン、カルバマゼピン、ホスフェニトイン、ゾニサミド、クロバザム、クロナゼパム、フェノバルビタール、プリミドン、ビガバトリン、バルプロ酸塩、フェルバマート、レベチラセタム、バルビツール酸塩、イミダゾピリジン;抗ヒスタミン、好ましくはドキシラミン;ピペリジン、好ましくはグルテチミドまたはメチプリロン;エスクロルビノール;クロラール誘導体、好ましくはクロラール水和物、ならびにカルバミン酸塩、好ましくはメプロバメート。これらの局所製剤内に、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が、全製剤の重量に対して、0.01%〜10%のリルゾールの範囲、より好ましくは0.1%〜8%の範囲、より好ましくは1%〜4%の範囲で含まれることが好ましい。
【0075】
したがって、以下を治療するために、リルゾールおよび1種もしくは複数の上記化合物を含む先の局所製剤の使用も想定されている:パーキンソン病、副腎白質萎縮症、運動障害、脊髄筋萎縮症や乳児性筋萎縮症などの運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症;抗痙攣剤、抗不安剤、または催眠活性剤が必要な病態;統合失調症、睡眠疾患および機能低下、脳血管疾患および圧痛;脊髄性、頭蓋性、または頭蓋脊髄性外傷;放射による傷害、パーキンソン病症候群、神経AIDS、ミトコンドリア性疾患、小脳機能異常;聴覚外傷、特に聴覚障害および耳鳴;痙縮、特に錐体痙縮;あるいはたとえば大動脈遮断によって誘発された脊髄損傷の減少。
【0076】
用量
使用する用量は、それぞれの疾患、およびそれぞれの疾患の重症度に依存し、看護する内科医の裁量に従う。本発明により利用可能な薬剤には、好ましくは1回用量当たり活性成分約0.01〜約500 mg、好ましくは1回用量当たり活性成分約1〜約100 mgが含まれる。活性成分は、1日当たり1回または複数回用量で投与することができ、あるいは活性成分を長い時間間隔で投与することができる。
【0077】
インビトロ測定(実施例1)の場合には、増殖に対するリルゾールの阻害作用は、リルゾール濃度1μmol/lで既に測定した。皮膚の透過性、疾患の型および重症度に応じて、かつ製剤型および使用頻度に依存して、薬剤中の活性成分の様々な濃度によって、局所塗布による治療効果を十分引き出すことができるが、本発明により利用可能な薬剤中のリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩の濃度は、1μmol/l〜100 mmol/lの範囲であることが好ましい。
【0078】
したがって、本発明の別の実施形態では、本発明により利用可能な薬剤、特に局所塗布薬剤は、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が1μmol/l〜100 mmol/l、好ましくは0.01%〜10%のリルゾール、好ましくは0.1%〜8%のリルゾール、より好ましくは1%〜4%の(重量/重量で示す)のリルゾール濃度で含まれることによって特徴付けられる。
【0079】
以下の実施例および図は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示した技術は、本発明の実施にあたって首尾よく機能させるために本発明者らによって発見された技術を表し、したがってその実施に向けた好ましい方式とみなすことができると当業者には理解されたい。しかし、本開示を考慮して、添付の特許請求の範囲に述べた本発明の趣旨と範囲を逸脱しない範囲内で、開示されている特定の実施形態に多くの手直しを行うことができることを当業者には理解されたい。引用した参照文献はすべて、参照により本明細書に組み込む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
実施例
リルゾールの製造
リルゾールの製造は、従来技術に記載されている。たとえば、リルゾールは、非特許文献26、特許文献1、非特許文献27または非特許文献28に記載されているように製造することができる。
【実施例1】
【0081】
ケラチノサイトの増殖に対するリルゾールの影響
HaCaT細胞を基にして、ケラチノサイトの増殖に対するリルゾールの影響を解析した。この目的のために、各200μlのKBM/10%のFCSを含む96穴プレートの60個のウェルに、5×103個のHaCaTケラチノサイトを播種し、37℃にて24時間培養した。培養後、それぞれHaCaT細胞を含む6個のウェルと細胞不含の1個のウェルは、ネガティブコントロール(KMB/1%のDMSO)、ポジティブコントロール(KBM/FCS/1%のDMSO)、またはKBM/FCS(リルゾール貯蔵液:DMSO中100 mmol/l)中0.1〜250μmol/lのリルゾールで48時間処理し、37℃にて48時間培養した。試験したリルゾールの濃度はすべて、DMSOの濃度を1%で一定に維持した。2回目の培養期間の最後で、培地を除去し、プロメガ社のCell Titer Viability Assay(#G7571/G7572)により製造元の指示書にしたがって細胞の増殖を定量した。ポジティブコントロール(RLU相対的冷光単位)に関する冷光の低下は増殖の減少と相関した。細胞を含む6個のウェルの平均から、細胞不含ウェルから得た値を背景値として引いた。少なくとも4回の別個の実験を実施した。結果を図1に示す。リルゾールは、低いμmol/l濃度範囲で既にケラチノサイトの増殖を阻害し、増殖の完全な阻害は、より高いμmol/lの範囲(100μmol/l、250μmol/l)で、すなわち、ネガティブコントロールで実現した値と同程度の値で実現したように見えた。これは、ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防に、特に、乾癬の治療に対するリルゾールのある種の適合性を示す。
【実施例2】
【0082】
乾癬動物モデルにおける乾癬表現型に対するリルゾールの影響
リルゾールの効果は、たとえば、非特許文献29に記載されている、たとえば、SCIDマウス動物モデルで測定することができる。そのためには、紡錘形をした皮膚生検試料を乾癬患者の病変から採取し、直径1cmの移植片を類似する寸法のSCIDマウスの背の創傷に移植する。次いで、組織が接着するまで約2週間待機する。
【0083】
続いて、クリームベースに製剤したリルゾールを局所に塗布し、または移植した生検試料中に溶液として皮内注入することができる。リルゾールは、たとえば、1μmol/l、10μmol/l、100μmol/l、1 mmol/l、10 mmol/l、20 mmol/lのおよび100 mmol/lの濃度で試験することができる。
【0084】
クリームまたは溶液を1日1〜2回再適用する。処置から3週間後、動物を屠殺し、生検試料を取り出し、組織学的に検査する。生検試料を標準エオシンおよびヘマトキシリン染色によって染色し、表皮厚の変化を検査する。担体物質単独で処置した対照マウスと比較して表皮厚が減少することは、動物モデルにおけるリルゾールの有効性を示す。
【実施例3】
【0085】
T細胞の増殖に対するリルゾールの影響
フィコール勾配遠心分離法によって、末梢血単核細胞(PBMC)を末梢血から単離した。1×106個のPBMC/mlをRPMI/10%のウシ胎仔血清(FCS)に再懸濁し、10μg/mlの可溶性抗CD3抗体で2日間活性化させた。続いて、細胞をPBSで3回洗浄し、2×105個の細胞/ウェルの濃度で96穴プレートに再懸濁した。細胞を0.1、1、10、30、および100μmol/lのリルゾール/0.1%のDMSOで1時間予備培養し、次いで10μg/mlの可溶性抗CD3抗体で再度模擬実験した。ポジティブおよびネガティブコントロールとして、それぞれ、抗CD3抗体によって刺激したPBMC、およびPBMCに0.1%のDMSOを加えた非刺激PBMCを使用した。0.1%のDMSOを添加しても増殖速度に影響を与えることはなかった。培養からさらに2日後、細胞を1μCi/ウェルの[3H]チミジンで18時間培養した。次いで、Micro 96 Harvester(Skatron Instruments, Lier, Norway)の使用によってガラス繊維フィルタ上に細胞を回収した。Packard Matrix 9600 Counter(Canberra Packard, Schwadorf, Austria)によって個々のcpmをカウントした。異なる3人のドナーの血液によって実験を実施した。
【0086】
リルゾールのIC50を定量するために、抗CD3刺激細胞に0.1%のDMSOを加えた値を100%の増殖に設定した。他の値はすべて、100%値で割って増殖の相対的百分比を得た。得られた百分比の値を使用して、リルゾールの理想的な曲線を決定し、そこからIC50を導いた(4回の測定のパラメータ、SigmaBlot)。リルゾールのIC50は43μmol/lである。
【実施例4】
【0087】
リルゾールの局所送達
リルゾールが、局所送達に適当であるかどうかを判定するために、DAC Basiscremeで製剤したリルゾールを雌のニュージーランド白色ウサギ(NZW)に経皮塗布した。比較には、1%カルボキシメチルセルロース(MC)懸濁液としてリルゾールを経口投与した。
【0088】
1%リルゾールMC懸濁液を2.5 mg/kg体重の用量で1回経口投与することによって6頭のNZWウサギを処置した。4%の濃縮クリームリルゾール製剤を2.5 mg/kg体重の用量で1回経皮塗布することによって、別の6頭の雌NZWを処置した。投薬後48時間までの各時点で各動物の耳側静脈から約1 mlの血液を採取した。血漿を調製し、リルゾールの含有量を定量した。
【0089】
リルゾール懸濁液の1回経口投与による血漿曝露は157±46 ng×h/mlの量であり比較的低かった。驚くべきことに、1回の局所塗布によって血漿曝露の2倍以上の363±299 ng×h/mlが得られた。
【0090】
この実験によって、驚くべきことに、リルゾールが局所送達および経皮送達に適当であることが証明される。したがって、リルゾールは死細胞からなる角化表皮層を例外的に首尾よく通り抜け、したがって皮膚に存在する基底ケラチノサイトおよびT細胞は有効量のリルゾールに曝露されるためである。これは、リルゾールを含む局所薬剤は、特に皮膚疾患を治療するための局所塗布に適当である。さらに、このような局所薬剤は、驚くべきことに、どんな浸透促進剤を加えなくても、ALSなど、高い血漿濃度が必要とされる他の疾患の治療および/または予防にも有用である。それによって、取扱いが容易で安全な治療の機会が提供され、経口治療で生じる問題が回避される。
【0091】
DAC Basiscremeで製剤したリルゾールの局所投与により高い血漿曝露がもたらされるという結果が研究によって裏付けられた。該研究では6頭のNZWウサギに連続28日間1日2回、リルゾールクリーム(DAC Basiscreme中1%、2%、または4%(w/w)のリルゾール)の繰返し用量を塗布し、コントロールとして6頭の別のウサギに連続8日間2.5 mg/kg体重で経口治療した。最後の適用日に、48時間までのp.a.の各時点で各動物の耳側方静脈から約1 ml血液を採取した。血漿を調製し、リルゾール含有量を測定した。
【0092】
1%のクリーム(129 ng*h/ml)、2%のクリーム(191 ng*h/ml)、および4%のクリーム(347 ng*h/ml)による局所投与と比較して、再度、経口投与ではリルゾールの血漿曝露(86 ng*h/ml)が明らかに低くなることが判明した。このことにより、上記の結果が確認された(すべての場合で平均値を示す)。
【0093】
さらに、リルゾールクリームの塗布は、非常に許容性があり、皮膚炎が観察されなかったことが注目され、したがって特に局所塗布用にDAC Basiscremeで製剤された場合に優れたリルゾールの適合性が確認された。
【実施例5】
【0094】
リルゾールクリームによる乾癬プラーク試験
十分な径の少なくとも1個の安定した乾癬プラークを有する(18才を超える)24人の患者パネルで、1%、2%および4%(w/w)のリルゾールを含むクリームベースDAC(DACBasiscreme)による、プラセボおよび参照薬をコントロールとし、観察者盲検、ランダム化にて、個体内差を比較する臨床研究(実施例4参照)を実施した。プラセボコントロールとして、クリームベースDAC(DAC Basiscreme)を使用した。陽性参照薬として、Daivonex(登録商標)(カルシポトリオールを含む局所薬剤)を使用した。
【0095】
大型フィンチャンバを使用し、合計11日間100μlの試験用製造物を密封条件で塗布した。最初の製造物の塗布前に、目視得点の基線評価、Chromameterの読取り、および超音波測定を行った。処理最終日、製造物の除去後に目視得点(プラーク減少の目視得点、プラークの減少は治癒を示す)、Chromameter読取り(皮膚色測定、治癒を示す赤みの減少)、および20 MHzの超音波測定(皮膚厚の測定、改善を示す減少)を行った。
【0096】
リルゾールは、プラセボ対照と比較して乾癬重症度の1種または複数のパラメータ(目視得点、皮膚色、皮膚厚)の改善をもたらしたと推定される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】ケラチノサイトの増殖に対するリルゾールの効果を示す図である。Ha Ca Tケラチノサイトを異なる濃度のリルゾール(1μmol/l、10μmol/l、25μmol/l、50μmol/l、100μmol/l、250μmol/l)で処理した。既に1μmol/lのリルゾールで出発し、対照(KBM+10%のFCS)と比較して、増殖の阻害が観察された。さらに、KBM中でしか培養しなかった対照細胞を使用した(KBM)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を治療または予防する薬剤の製造のために、所望の場合には適当なアジュバントおよび添加剤を用いる、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
疾患が、乾癬、アトピー性皮膚炎、光線性角化症;表皮剥離性角化亢進症、恒久性レンズ形角質増加症、毛孔性角化症、魚鱗癬などの角化亢進から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
疾患が、円形脱毛症、全頭脱毛症、近全頭脱毛症、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚紅斑性狼瘡、苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚斑状強皮症、強皮症、尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、逆位乾癬、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触性皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎、接触性皮膚炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕性粘膜類天疱瘡、類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、蕁麻疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ビダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA水疱症、多型日光疹、日光性紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚発疹、薬物発疹、慢性進行性紫斑病、発汗異常性湿疹、湿疹、固定薬物発疹、光アレルギー性皮膚反応、単純性苔癬口囲皮膚炎、移植片対宿主疾患、ざ瘡、異常瘢痕ケロイド、および白斑症からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記薬剤を局所に投与することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記薬剤が、軟膏、ゲル、バンドエイド、乳濁液、ローション、気泡、混合相乳濁系または両親媒性乳濁系(油/水−水/油−混合相)クリーム、リポソーム、トランスフェロソーム、ペースト、または粉末の形態で製剤されていることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記クリームが、DAC(ドイツ薬局方外規格(DAC Basiscreme))クリームベースであることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が、前記薬剤中に全製剤の重量に対して0.01%〜10%のリルゾール、好ましくは0.1%〜8%のリルゾール、より好ましくは1%〜4%のリルゾールの濃度で含まれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が、前記薬剤中に1μmol/l〜100 mmol/lの濃度で含まれることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を低減し、または阻害する、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、ならびに1種または複数の活性成分を含む組成物。
【請求項10】
前記活性成分が、ビタミンD受容体作用薬としてビタミンD誘導体、特にカルシポトリオール;レチノイド受容体(RAR)作用薬としてレチノイド誘導体、特にタザロテン;グルココルチコイド受容体のコルチコステロイド誘導体、特にベタメサゾンおよびコルチゾン;フマル酸;皮膚薄化剤、特にクロベタゾール;TNFα拮抗薬、ジヒドロ葉酸脱水素酵素拮抗薬、特にメトトレキサート;ならびに免疫抑制性物質、たとえば、アンフォテリシン、ブスルファン、コトリモキサゾール、クロランブシル、コロニー刺激因子、シクロホスファミド、フルコナゾール、ガンシクロビル、抗リンパ球免疫グロブリン、通常の免疫グロブリン、メチルプレドニゾロン、オクトレオチド、オキスペンチフィリン、サリドマイド、ゾリモマブアリトキス、クロトリマゾールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、ならびに1種または複数のカルシニューリン拮抗薬を含む組成物。
【請求項12】
前記カルシニューリン拮抗薬が、シクロスポリンA 、シクロスポリンG、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、ジヒドロ−シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンH、シクロスポリンI、ASM-240、ピメクロリムス、タクロリムス、タクロリムスの13−デスメチル誘導体、および/またはタクロリムスの17−エチル誘導体から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を治療または予防する薬剤の製造のために、所望の場合には適当なアジュバントおよび添加剤とともに、請求項7〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
無有意量の皮膚浸透促進剤が、存在することを特徴とする、リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、ならびに局所賦形剤を含む経皮送達用局所薬剤。
【請求項15】
局所賦形剤が、乳濁液、ゲル、軟膏、気泡、バンドエイド、それぞれ乳濁系(油/水−水/油−混合相)である混合相両親媒性クリーム、リポソーム、またはトランスフェロソームからなる群から選択されることを特徴とする経皮送達用局所薬剤。
【請求項16】
前記局所賦形剤が、クリームベースDACであることを特徴とする、請求項14または15に記載の局所薬剤。
【請求項17】
リルゾールまたはその薬理学的に許容される塩が、前記薬剤中に、全製剤の重量に対して0.01%〜10%のリルゾール、好ましくは0.1%〜8%のリルゾール、より好ましくは1%〜4%のリルゾールの濃度で含まれることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか一項に記載の局所薬剤。
【請求項18】
前記薬剤が、さらに、トコフェロールと組み合せたセレギリン、セレゲリン;レボドパ、ブロモクリプチン、ブロモクリプチン、トリヘキシフェニジル、アマンタジン、A型ボツリヌス菌毒素、チザニジン、ダントロレンナトリウム、バクロフェン、ベンゾジアゼピン、好ましくはジアゼパムまたはクロナゼパム、クロニオジン、ガバペンチン、ラモトリギン、シプロヘプタジン、カンナビノイド様化合物、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、フルボキサミン、シタロプラム、エスシタロプラム、セイヨウオトギリソウ、エンラファキシン、ブプロピオン、ネファゾドン、ミルタザピン、トラゾドン;3環系抗うつ剤、好ましくはアミトリプチリン、ノルトリプチリン、デシプラミン、クロミプラミン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、またはイミプラミン;MAO−阻害剤、好ましくはフェネルジンまたはトラニルシプロミン;抗コリン作用剤、好ましくはベンズトロピン、プロサイクリジン、ジフェンヒドラミン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、トピラマート、チアガビン、オキシカルバゼピン、フェニトイン、カルバマゼピン、ホスフェニトイン、ゾニサミド、クロバザム、クロナゼパム、フェノバルビタール、プリミドン、ビガバトリン、バルプロ酸塩、フェルバマート、レベチラセタム、バルビツール酸塩、イミダゾピリジン;抗ヒスタミン、好ましくはドキシラミン;ピペリジン、好ましくはグルテチミドまたはメチプリロン;エスクロルビノール;クロラール誘導体、好ましくはクロラール水和物、ならびにカルバミン酸塩、好ましくはメプロバメートからなる群から選択される化合物を含むことを特徴とする、請求項14〜17のいずれか一項に記載の局所薬剤。
【請求項19】
神経細胞または脳の、疾患および/または損傷の、治療用および/または予防用局所薬剤を調製するためのリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩の使用。
【請求項20】
前記神経細胞または脳の疾患および/または損傷が、パーキンソン病、副腎白質萎縮症、運動障害、脊髄筋萎縮症や乳児性筋萎縮症などの運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症;抗痙攣剤、抗不安剤、または催眠活性剤が必要な病態;統合失調症、睡眠疾患および機能低下、脳血管疾患および圧痛;脊髄性、頭蓋性、または頭蓋脊髄性外傷;放射による傷害、パーキンソン病症候群、神経AIDS、ミトコンドリア性疾患、小脳機能異常;聴覚外傷、特に聴覚障害および耳鳴;痙縮、特に錐体痙縮;大動脈遮断によって誘発された脊髄損傷による減退から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
皮膚疾患、特に乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、全頭脱毛症、近全頭脱毛症、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、皮膚紅斑性狼瘡、苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、斑状強皮症、スクレロデルミア、尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、逆位乾癬、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触性湿疹、刺激性接触性湿疹、接触性湿疹、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕性粘膜類天疱瘡、類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、蕁麻疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ビダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA水疱症、多型日光疹、日光性紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚発疹、薬物発疹、慢性進行性紫斑病、発汗異常性湿疹、湿疹、固定薬物発疹、光アレルギー性皮膚反応、エリオラル単純性苔癬、皮膚炎、「移植片対宿主疾患」、ざ瘡、酒さ、異常瘢痕、ケロイド、および白斑症の治療および/または予防に向けた局所薬剤を調製するためのリルゾールまたはその薬理学的に許容される塩、ならびにクリームベースDACの使用。
【請求項22】
前記疾患が、乾癬またはアトピー性皮膚炎、特に乾癬から選択される、請求項20に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2006−524659(P2006−524659A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505300(P2006−505300)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004478
【国際公開番号】WO2004/096216
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505397933)ビーオフロンテラ バイオサイエンス ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】