説明

ケーブルおよびその製造方法

ケーブル、およびケーブルのための方法。ケーブルの実施形態が、たとえば、架空送電線として有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般に、複合体(金属マトリックス複合体(MMC)を含む)が知られている。複合体は、典型的には、微粒子、ウイスカー、または繊維(たとえば、短いまたは長い短繊維)で強化されたマトリックスを含む。金属マトリックス複合体の例としては、アルミニウムマトリックス複合ワイヤ(たとえば、アルミニウムマトリックスに埋込まれた炭化ケイ素繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、または多結晶アルファアルミナ繊維)、チタンマトリックス複合テープ(たとえば、チタンマトリックスに埋込まれた炭化ケイ素繊維)、および銅マトリックス複合テープ(たとえば、銅マトリックスに埋込まれた炭化ケイ素繊維またはホウ素繊維)が挙げられる。ポリマーマトリックス複合体の例としては、エポキシ樹脂マトリック内の炭素繊維または黒鉛繊維、ポリエステル樹脂内のガラス繊維またはアラミド繊維、ならびにエポキシ樹脂内の炭素繊維およびガラス繊維が挙げられる。
【0002】
複合ワイヤ(たとえば、金属マトリックス複合ワイヤ)の1つの使用は、裸架空送電ケーブル内の強化部材としての使用である。ケーブルに対する1つの典型的な必要は、既存の伝送インフラストラクチャの電力伝達容量を増加させる必要によって駆り立てられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
架空送電用途のためのケーブルの望ましい性能要件としては、耐腐食性、環境耐久性(たとえば、UVおよび湿気)、高温における強度の損失に対する耐性、耐クリープ性、ならびに比較的高い弾性率、低密度、低熱膨張係数、高導電性、および高強度が挙げられる。アルミニウムマトリックス複合ワイヤを含む架空送電ケーブルが知られているが、いくつかの用途の場合、たとえば、より望ましい弛み特性が引続き望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、
熱膨張係数を有する長手方向のコアと、
合せてコアの熱膨張係数より大きい熱膨張係数を有する複数のワイヤであって、複数のワイヤが、アルミニウムワイヤ、銅ワイヤ、アルミニウム合金ワイヤ、または銅合金ワイヤの少なくとも1つを含み、ワイヤが、コアの周りに撚り合される、複数のワイヤとを
含むケーブルであって、
ケーブルが0MPa未満(いくつかの実施形態において、−5MPa、−10MPa、−15MPa、−20MPa、−25MPa、−30MPa、−35MPa、−40MPa、−45MPaまで、またはさらには−50MPaまで、いくつかの実施形態において、0未満から−50MPa、0から−40MPa、0から−30MPa、0から−25MPa、0から−20MPa、またはさらには、0から−10MPaの範囲内)の応力パラメータを有する、ケーブルを提供する。いくつかの実施形態において、複数のワイヤは、少なくとも90MPa、またはさらには少なくとも100MPaの引張破断強度を有する(ASTM B557/B557M(1999)に従って計算された。
【0005】
別の態様において、本発明は、本発明によるケーブルを製造する方法であって、
複数のワイヤを長手方向のコアの周りに撚り合せる工程であって、複数のワイヤが、アルミニウムワイヤ、銅ワイヤ、アルミニウム合金ワイヤ、または銅合金ワイヤの少なくとも1つを含み、コア、予備的な撚り合されたケーブルを提供する工程と、
予備的な撚り合されたケーブルを閉じダイ(closing die)にかけて、ケーブルを提供する工程であって、閉じダイが内径を有し、ケーブルが外径を有し、ダイ内径がケーブル外径の1.00から1.02倍の範囲内である工程とを含む方法を提供する。
【0006】
ここで使用されるように、次の用語を、ここで特に明記しない限り、示されているように定義する。
【0007】
「セラミック」は、ガラス、結晶セラミック、ガラス−セラミック、およびそれらの組合せを意味する。
【0008】
「連続繊維」は、平均繊維直径と比較されると比較的無限である長さを有する繊維を意味する。典型的には、これは、繊維が、少なくとも1×105(いくつかの実施形態において、少なくとも1×106、またはさらには少なくとも1×107)のアスペクト比(すなわち、繊維の長さと繊維の平均直径との比)を有することを意味する。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。
【0009】
「形状記憶合金」は、マルテンサイト変態を経る金属合金を指し、金属合金は、変態温度より低い温度双晶化機構によって変形可能であり、そのような変形は、変態温度より高い温度に加熱すると双晶構造が元の相に戻るときに可逆性である。
【0010】
本発明によるケーブルは、たとえば送電ケーブルとして有用である。典型的には、本発明によるケーブルは、向上された弛み特性(すなわち、低減された弛み)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、ケーブル、およびケーブルを製造する方法に関する。本発明による例示的なケーブル10の断面図が、図1に示されている。ケーブル10は、コア12と、撚り合された丸いワイヤ14の2つの層とを含み、コア12は、ワイヤ16(示されているように、金属マトリックス複合ワイヤ)を含む。
【0012】
本発明による別の例示的なケーブル20の断面図が、図2に示されている。ケーブル20は、コア22と、撚り合されたワイヤ24の3つの層とを含み、コア22は、ワイヤ26(示されているように、金属マトリックス複合ワイヤ)を含む。
【0013】
本発明による別の例示的なケーブル30の断面図が、図3に示されている。ケーブル30は、コア32と、撚り合された台形ワイヤ34とを含み、コア32は、ワイヤ36(示されているように、金属マトリックス複合ワイヤ)を含む。
【0014】
本発明による別の例示的なケーブル40の断面図が、図4に示されている。ケーブル40は、コア42と、撚り合されたワイヤ44とを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、コアは、少なくとも、約−75℃から約450℃の温度範囲にわたって、約5.5ppm/℃から約7.5ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。
【0016】
コアを構成する材料の例としては、アラミド、セラミック、ホウ素、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、黒鉛、炭素、チタン、タングステン、および/または形状記憶合金が挙げられる。いくつかの実施形態において、材料は繊維(典型的には連続繊維)の形態である。いくつかの実施形態において、アラミドを含むコアは、少なくとも、約20℃から約200℃の温度範囲にわたって、約−6ppm/℃から約0ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、セラミックを含むコアは、少なくとも、約20℃から約600℃の温度範囲にわたって、約3ppm/℃から約12ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、ホウ素を含むコアは、少なくとも、約20℃から約600℃の温度範囲にわたって、約4ppm/℃から約6ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)を含むコアは、少なくとも、約20℃から約600℃の温度範囲にわたって、約−6ppm/℃から約0ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、黒鉛を含むコアは、少なくとも、約20℃から約600℃の温度範囲にわたって、約−2ppm/℃から約2ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、炭素を含むコアは、少なくとも、約20℃から約600℃の温度範囲にわたって、約−2ppm/℃から約2ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、チタンを含むコアは、少なくとも、約20℃から約800℃の温度範囲にわたって、約10ppm/℃から約20ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、タングステンを含むコアは、少なくとも、約20℃から約1000℃の温度範囲にわたって、約8ppm/℃から約18ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、形状記憶合金を含むコアは、少なくとも、約20℃から約1000℃の温度範囲にわたって、約8ppm/℃から約25ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、ガラスを含むコアは、少なくとも、約20℃から約600℃の温度範囲にわたって、約4ppm/℃から約10ppm/℃の範囲内の長手方向の熱膨張係数を有する。
【0017】
コアの繊維の例としては、アラミド繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維、黒鉛繊維、炭素繊維、チタン繊維、タングステン繊維、および/または形状記憶合金繊維が挙げられる。
【0018】
例示的なホウ素繊維が、たとえば、マサチューセッツ州ローウェルのテキストロン・スペシャルティ・ファイバーズ・インコーポレイテッド(Textron Specialty Fibers, Inc. of Lowell, MA)から市販されている。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続ホウ素繊維は、約80マイクロメートルから約200マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。より典型的には、平均繊維直径は、150マイクロメートル以下、最も典型的には、95マイクロメートルから145マイクロメートルの範囲内である。いくつかの実施形態において、ホウ素繊維は、少なくとも3GPa、およびまたはさらには少なくとも3.5GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、ホウ素繊維は、約350GPaから約450GPaの範囲内、またはさらには約350GPaから約400GPaの範囲内のモジュラスを有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、セラミック繊維は、少なくとも1.5GPa、2GPa、3GPa、4GPa、5GPa、6GPa、およびまたはさらには少なくとも6.5GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、セラミック繊維は、140GPaから約500GPaの範囲内、またはさらには140GPaから約450GPaの範囲内のモジュラスを有する。
【0020】
例示的な炭素繊維が、たとえば、ジョージア州アルファレッタのアモコ・ケミカルズ(Amoco Chemicals of Alpharetta, GA)によって、商品名「ソーネル・カーボン(THORNEL CARBON)」で、2000、4000、5,000、および12,000の繊維のトウで、コネチカット州スタンフォードのヘクセル・コーポレーション(Hexcel Corporation of Stamford, CT)、カリフォルニア州サクラメントのグラフィル・インコーポレイテッド(Grafil, Inc. of Sacramento, CA)(三菱レイヨン(Mitsubishi Rayon Co.)の子会社)から、商品名「パイロフィル(PYROFIL)」で、日本、東京の東レ(Toray)、商品名「トレカ(TORAYCA)」で、東邦レーヨン株式会社(Toho Rayon of Japan, Ltd.)、商品名「ベスファイト(BESFIGHT)」で、ミズーリ州セントルイスのゾルテック・コーポレーション(Zoltek Corporation of St. Louis, MO)、商品名「パネックス(PANEX)」および「パイロン(PYRON)」で、ならびにニュージャージー州ワイコフのインコ・スペシャル・プロダクツ(Inco Special Products of Wyckoff, NJ)(ニッケルコーティング炭素繊維)、商品名「12K20」および「12K50」で、販売されている。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続炭素繊維は、約4マイクロメートルから約12マイクロメートル、約4.5マイクロメートルから約12マイクロメートル、またはさらには約5マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、少なくとも1.4GPa、少なくとも2.1GPa、少なくとも3.5GPa、またはさらには少なくとも5.5GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、150GPaを超えて450GPa以下、またはさらには400GPa以下のモジュラスを有する。
【0021】
例示的な黒鉛繊維が、たとえば、ジョージア州アルファレッタのBPアモコ(BP Amoco of Alpharetta, GA)によって、商品名「T−300」で、1000、3000、および6000の繊維のトウで、販売されている。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続黒鉛繊維は、約4マイクロメートルから約12マイクロメートル、約4.5マイクロメートルから約12マイクロメートル、またはさらには約5マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、黒鉛繊維は、1.5GPa、2GPa、3GPa、またはさらには少なくとも4GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、黒鉛繊維は、約200GPaから約1200GPa、またはさらには約200GPaから約1000GPaの範囲内のモジュラスを有する。
【0022】
例示的なチタン繊維が、たとえば、ネバダ州ヘンダーソンのタイメット(TIMET, Henderson, NV)から入手可能である。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続チタン繊維は、50マイクロメートルから約250マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、チタン繊維は、少なくとも0.7GPa、1GPa、1.5GPa、2GPa、またはさらには少なくとも2.1GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、セラミック繊維は、約85GPaから約100GPa、またはさらには約85から約95GPaの範囲内のモジュラスを有する。
【0023】
例示的なタングステン繊維が、たとえば、カリフォルニア州グローバービーチのカリフォルニア・ファイン・ワイヤ・カンパニー(California Fine Wire Company, Grover Beach, CA)から入手可能である。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続タングステン繊維は、約100マイクロメートルから約500マイクロメートル約150マイクロメートルから約500マイクロメートル、またはさらには約200マイクロメートルから約400マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、タングステン繊維は、少なくとも0.7GPa、1GPa、1.5GPa、2GPa、またはさらには少なくとも2.3GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、タングステン繊維は、400GPaを超えて約420GPa以下、またはさらには415GPa以下のモジュラスを有する。
【0024】
例示的な形状記憶合金繊維が、たとえば、ペンシルバニア州ウェストホワイトランドのジョンソン・マッセイ(Johnson Matthey, West Whiteland, PA)から入手可能である。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続形状記憶合金繊維は、約50マイクロメートルから約400マイクロメートル、約50から約350マイクロメートル、またはさらには約100マイクロメートルから300マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、形状記憶合金繊維は、少なくとも0.5GPa、およびまたはさらには少なくとも1GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、形状記憶合金繊維は、約20GPaから約100GPa、またはさらには約20GPAから約90GPaの範囲内のモジュラスを有する。
【0025】
例示的なアラミド繊維が、たとえば、デラウェア州ウィルミントンのデュポン(DuPont, Wilmington, DE)から、商品名「ケブラー(KEVLAR)」で入手可能である。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続アラミド繊維は、約10マイクロメートルから約15マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、アラミド繊維は、少なくとも2.5GPa、3GPa、3.5GPa、4GPa、またはさらには少なくとも4.5GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、アラミド繊維は、約80GPaから約200GPa、またはさらには約80GPaから約180GPaの範囲内のモジュラスを有する。
【0026】
例示的なポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維が、たとえば、日本、大阪の東洋紡(Toyobo Co.)から、商品名「ザイロン(ZYLON)」で入手可能である。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維は、約8マイクロメートルから約15マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維は、少なくとも3GPa、4GPa、5GPa、6GPa、またはさらには少なくとも7GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維は、約150GPaから約300GPa、またはさらには約150GPaから約275GPaの範囲内のモジュラスを有する。
【0027】
セラミック繊維の例としては、金属酸化物(たとえば、アルミナ)繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの繊維のいずれかの組合せが挙げられる。典型的には、セラミック酸化物繊維は、結晶セラミック、および/または結晶セラミックおよびガラスの混合物(すなわち、繊維が、結晶セラミック相およびガラス相の両方を含有することができる)である。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続結晶セラミック繊維は、約5マイクロメートルから約50マイクロメートル、約5マイクロメートルから約25マイクロメートル、約8マイクロメートルから約25マイクロメートル、またはさらには約8マイクロメートルから約20マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、結晶セラミック繊維は、少なくとも1.4GPa、少なくとも1.7GPa、少なくとも2.1GPa、およびまたはさらには少なくとも2.8GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、結晶セラミック繊維は、70GPaを超えて約1000GPa以下、またはさらには420GPa以下のモジュラスを有する。
【0028】
モノフィラメントセラミック繊維の例としては、炭化ケイ素繊維が挙げられる。典型的には、炭化ケイ素モノフィラメント繊維は、結晶性、および/または結晶セラミックおよびガラスの混合物(すなわち、繊維が、結晶セラミック相およびガラス相の両方を含有することができる)である。典型的には、そのような繊維は、少なくとも50メートルのオーダの長さを有し、キロメートル以上のオーダの長さを有することさえできる。典型的には、連続炭化ケイ素モノフィラメント繊維は、約100マイクロメートルから約250マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、結晶セラミック繊維は、少なくとも2.8GPa、少なくとも3.5GPa、少なくとも4.2GPa、およびまたはさらには少なくとも6GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、結晶セラミック繊維は、250GPaを超えて約500GPa以下、またはさらには430GPa以下のモジュラスを有する。
【0029】
さらに、例示的なガラス繊維が、たとえば、ニューヨーク州コーニングのコーニング・グラス(Corning Glass, Corning NY)から入手可能である。典型的には、連続ガラス繊維は、約3マイクロメートルから約19マイクロメートルの範囲内の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、少なくとも3GPa、4GPa、およびまたはさらには少なくとも5GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、約60GPaから95GPa、または約60GPaから約90GPaの範囲内のモジュラスを有する。
【0030】
いくつかの実施形態において、セラミック繊維および炭素繊維はトウ形態である。トウは、繊維技術において知られており、ロービング状形態で集められた複数の(個別の)繊維(典型的には少なくとも100の繊維、より典型的には少なくとも400の繊維)を指す。いくつかの実施形態において、トウは、1トウあたり少なくとも780の個別の繊維を含み、いくつかの場合、1トウあたり少なくとも2600の個別の繊維を含む。セラミック繊維のトウは、300メートル、500メートル、750メートル、1000メートル、1500メートル、1750メートル、およびより長いものを含むさまざまな長さで入手可能である。繊維は、円形または楕円形である断面形状を有することができる。炭素繊維のいくつかの実施形態において、トウは、1トウあたり、少なくとも2,000 5,000 12,000、またはさらには少なくとも50,000の個別の繊維を含む。
【0031】
アルミナ繊維が、たとえば、米国特許第4,954,462号明細書(ウッド(Wood)ら)および米国特許第5,185,29号明細書(ウッド(Wood)ら)に記載されている。いくつかの実施形態において、アルミナ繊維は、多結晶アルファアルミナ繊維であり、理論酸化物基準で、アルミナ繊維の総重量を基準にして、99重量パーセントを超えるAl23と、0.2〜0.5重量パーセントのSiO2とを含む。別の態様において、いくつかの望ましい多結晶アルファアルミナ繊維は、1マイクロメートル未満(またはさらには、いくつかの実施形態において、0.5マイクロメートル未満)の平均粒度を有するアルファアルミナを含む。別の態様において、いくつかの実施形態において、多結晶アルファアルミナ繊維は、少なくとも1.6GPa(いくつかの実施形態において、少なくとも2.1GPa、またはさらには、少なくとも2.8GPa)の平均引張強度を有する。例示的なアルファアルミナ繊維が、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company, St. Paul, MN)によって、商品名「ネクステル(NEXTEL)610」で販売されている。
【0032】
アルミノシリケート繊維が、たとえば、米国特許第4,047,965号明細書(カルスト(Karst)ら)に記載されている。例示的なアルミノシリケート繊維が、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーによって、商品名「ネクステル440」、「ネクステル550」、および「ネクステル720」で販売されている。
【0033】
アルミノボロシリケート繊維が、たとえば、米国特許第3,795,524号明細書(ソウマン(Sowman)ら)に記載されている。例示的なアルミノボロシリケート繊維が、3Mカンパニーによって、商品名「ネクステル312」で販売されている。
【0034】
窒化ホウ素繊維を、たとえば、米国特許第3,429,722号明細書(エコノミー(Economy))および米国特許第5,780,154号明細書(オカノ(Okano)ら)に記載されているように製造することができる。
【0035】
例示的な炭化ケイ素繊維が、たとえば、カリフォルニア州サンディエゴのCOIセラミックス(COI Ceramics of San Diego, CA)によって、商品名「ニカロン(NICALON)」で、500の繊維のトウで、日本の宇部興産(Ube Industries)から、商品名「ティラノ(TYRANNO)」で、およびミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング(Dow Corning of Midland, MI)から、商品名「シルラミック(SYLRAMIC)」で販売されている。
【0036】
例示的な炭化ケイ素モノフィラメント繊維が、たとえば、マサチューセッツ州ローウェルのテキストロン・スペシャルティ・マテリアルズ(Textron Specialty Materials of Lowell, MA)によって、商品名「SCS−9」、「SCS−6」、および「ウルラ(Ulra)−SCS」で、ならびにバージニア州ゲインズビルのアトランティック・リサーチ・コーポレーション(Atlantic Research Corporation, of Gainesville, VA)から、商品名「トリマーク(Trimarc)」で販売されている。
【0037】
市販の繊維は、典型的には、潤滑性をもたらすために、かつ取扱いの間繊維ストランドを保護するために、製造の間繊維に加えられる有機サイジング材料を含む。また、サイジングは、ポリマー複合コアワイヤを製造するために、ポリマーでの引抜成形の間の取扱いを助けることができる。サイジングは、たとえば、サイジングを繊維から溶解除去または燃焼除去することによって除去することができる。典型的には、金属マトリックス複合ワイヤを形成する前に、サイジングを除去することが望ましい。
【0038】
繊維は、たとえば、繊維の湿潤性を向上させるために、繊維と溶融金属マトリックス材料との間の反応を低減または防止するために、コーティングを使用することができる。そのようなコーティング、およびそのようなコーティングを提供するための技術は、繊維および複合技術において知られている。
【0039】
いくつかの実施形態において、コア内の繊維の数の少なくとも85%(いくつかの実施形態において、少なくとも90%、またはさらには少なくとも95%)が連続している。
【0040】
複合コアおよびワイヤの例示的なマトリックス材料としては、ポリマー(たとえば、エポキシ、エステル、ビニルエステル、ポリイミド、ポリエステル、シアン酸エステル、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、および熱可塑性樹脂)および金属(たとえば、高純度(たとえば、99.95%を超える)元素アルミニウム、または純アルミニウムの、銅などの他の元素との合金)が挙げられる。典型的には、金属マトリックス材料は、たとえば、繊維外部上に保護コーティングを提供する必要をなくすために、マトリックス材料が繊維と著しく化学的に反応しない(すなわち、繊維材料に対して比較的化学的に不活性である)ように選択される。例示的な金属マトリックス材料としては、アルミニウム、亜鉛、スズ、マグネシウム、およびそれらの合金(たとえば、アルミニウムおよび銅の合金)が挙げられる。いくつかの実施形態において、マトリックス材料としては、望ましくは、アルミニウムおよびその合金が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態において、金属マトリックスは、少なくとも98重量パーセントのアルミニウム、少なくとも99重量パーセントのアルミニウム、99.9重量パーセントを超えるアルミニウム、またはさらには99.95重量パーセントを超えるアルミニウム含む。例示的なアルミニウムおよび銅のアルミニウム合金は、少なくとも98重量パーセントのAlと、2重量パーセントまでのCuとを含む。いくつかの実施形態において、有用な合金は、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、および/または8000系アルミニウム合金(アルミニウム協会(Aluminum Association)の名称)である。より高い純度の金属が、より高い引張強度のワイヤを製造するのに望ましい傾向があるが、金属のより純粋でない形態も有用である。
【0042】
適切な金属が市販されている。たとえば、アルミニウムが、ペンシルバニア州ピッツバーグのアルコア(Alcoa of Pittsburgh, PA)から、商品名「スーパー・ピュア・アルミニウム(SUPER PURE ALUMINUM);99.99%Al」で入手可能である。アルミニウム合金(たとえば、Al−2重量%のCu(0.03重量%の不純物))を、たとえば、ニューヨーク州ニューヨークのベルモント・メタルズ(Belmont Metals, New York, NY)から得ることができる。亜鉛およびスズが、たとえば、ミネソタ州セントポールのメタル・サービシズ(Metal Services, St. Paul, MN)(「純亜鉛」;99.999%の純度および「純スズ」;99.95%の純度)から入手可能である。たとえば、マグネシウムが、英国マンチェスターのマグネシウム・エレクトロン(Magnesium Elektron, Manchester, England)から、商品名「ピュア(PURE)」で入手可能である。マグネシウム合金(たとえば、WE43A、EZ33A、AZ81A、およびZE41A)を、たとえば、コロラド州デンバーのタイメット(TIMET, Denver, CO)から得ることができる。
【0043】
複合コアおよびワイヤは、典型的には、繊維およびマトリックス材料の組合された体積全体を基準にして、少なくとも15体積パーセント(いくつかの実施形態において、少なくとも20、25、30、35、40、45、またはさらには50体積パーセント)の繊維を含む。より典型的には、複合コアおよびワイヤは、繊維およびマトリックス材料の組合された体積全体を基準にして、40から75(いくつかの実施形態において、45から70)体積パーセントの範囲内の繊維を含む。
【0044】
典型的には、コアの平均直径は、約1mmから約15mmの範囲内である。いくつかの実施形態において、望ましいコアの平均直径は、少なくとも1mm、少なくとも2mm、またはさらには約3mmまでである。典型的には、複合ワイヤの平均直径は、約1mmから12mm、1mmから10mm、1から8mm、またはさらには1mmから4mmの範囲内である。いくつかの実施形態において、望ましい複合ワイヤの平均直径は、少なくとも1mm、少なくとも1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、またはさらには少なくとも12mmである。
【0045】
複合コアおよびワイヤを、当該技術において知られている技術を用いて製造することができる。連続金属マトリックス複合ワイヤを、たとえば、連続金属マトリックス浸透プロセスによって製造することができる。1つの適切なプロセスが、たとえば、米国特許第6,485,796号明細書(カーペンター(Carpenter)ら)に記載されている。ポリマーと、繊維とを含むワイヤを、当該技術において知られている引抜成形プロセスによって製造することができる。
【0046】
連続金属マトリックスワイヤを製造するための例示的な装置60の概略図が、図6に示されている。連続繊維のトウ61が、供給スプール62から供給され、平行にされて円形束にされ、繊維については、チューブ炉63を通過させる間ヒートクリーニングされる。次に、繊維のトウ61は、真空チャンバ64内で排気され、金属マトリックス材料の溶融物65(また、「溶融金属」とここで呼ばれる)を収容するるつぼ67に入る。繊維のトウは、ケータプラー(caterpuller)70によって供給スプール62から引かれる。超音波プローブ66が、溶融物65を繊維のトウ61内に浸透させるのを助けるために、溶融物65中に繊維の近傍に位置決めされる。ワイヤ71の溶融金属は、出口ダイ68を通って、るつぼ67を出た後、冷却し凝固するが、いくらかの冷却が、ワイヤ71がるつぼ67を完全に出る前に発生することができる。ワイヤ71の冷却は、ワイヤ71に衝突する、冷却デバイス69を通って送出される気体または液体の流れによって向上される。ワイヤ71は、スプール72上に集められる。
【0047】
上で説明されたように、繊維をヒートクリーニングすることは、サイジング、吸着水、および繊維の表面上に存在することがある他の不堅牢(fugitive)材料または揮発性材料の量を除去または低減するのを助ける。典型的には、繊維の表面上の炭素分が22%の面積部分より小さくなるまで、繊維をヒートクリーニングすることが望ましい。典型的には、チューブ炉63の温度は、少なくとも300℃、より典型的には少なくとも1000℃であり、繊維は、チューブ炉63内に少なくとも数秒間温度で存在するが、特定の温度および時間は、たとえば、使用されている特定の繊維のクリーニングの必要によることができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、繊維のトウ61は、溶融物67に入る前に排気され、というのは、そのような排気を用いることが、乾燥繊維を有する局所化領域(すなわち、マトリックスの浸透のない繊維領域)などの欠陥の形成を低減するかなくす傾向があることが観察されたからである。典型的には、繊維61の2つが、いくつかの実施形態において、20トル以下、10トル以下、1トル以下、またはさらには0.7トル以下の真空中で排気される。
【0049】
例示的な適切な真空システム64が、繊維のトウの束61の直径と一致するサイズの入口チューブを有する。入口チューブは、たとえば、ステンレス鋼チューブまたはアルミナチューブであることができ、典型的には、長さが少なくとも約20〜30cmである。適切な真空チャンバ64が、典型的には、約2〜20cmの範囲内の直径と、約5〜100cmの範囲内の長さとを有する。真空ポンプの容量は、いくつかの実施形態において、少なくとも約0.2〜1立方メートル/分である。排気された繊維のトウ61は、金属浴に貫入する真空システム64上のチューブを通して、溶融物65に挿入される(すなわち、排気された繊維のトウの束61は、溶融物65に導入されるとき真空下である)が、溶融物65は、典型的には大気圧である。出口チューブの内径は、繊維のトウの束61の直径と本質的に一致する。出口チューブの一部が溶融金属中に浸漬される。いくつかの実施形態において、チューブの約0.5〜5cmが溶融金属中に浸漬される。チューブは、溶融金属材料中で安定しているように選択される。典型的には適切であるチューブの例としては、窒化ケイ素チューブおよびアルミナチューブが挙げられる。
【0050】
溶融金属65の、繊維のトウの束61内への浸透は、典型的には、超音波の使用によって向上される。たとえば、振動ホーン66が、繊維のトウの束61に密に近接するように、溶融金属65中に位置決めされる。
【0051】
いくつかの実施形態において、ホーン66は、駆動されて、約19.5〜20.5kHzの範囲内、および約0.13〜0.38mm(0.005〜0.015in)の空気の振幅で振動する。さらに、いくつかの実施形態において、ホーンは、チタン導波管に接続され、これは、超音波トランスデューサ(たとえば、コネチカット州ダンベリーのソニックス&マテリアルズ(Sonics & Materials, Danbury, CT)から入手可能)に接続される。
【0052】
いくつかの実施形態において、繊維のトウの束61は、ホーン先端の約2.5mm以内(いくつかの実施形態において、約1.5mm以内)である。ホーン先端は、いくつかの実施形態において、ニオブ、または、95重量%Nb−5重量%Moおよび91重量%Nb−9重量%Moなどのニオブの合金から製造され、たとえば、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh, PA)のPMTIから得ることができる。合金は、たとえば、長さ12.7cm(5in.)および直径2.5cm(1in.)の円筒に作ることができる。円筒は、その長さを変更することによって、所望の振動周波数(たとえば、約19.5〜20.5kHz)に調整することができる。金属マトリックス複合物品を製造するための超音波の使用に関する付加的な詳細については、たとえば、米国特許第4,649,060号明細書(イシカワ(Ishikawa)ら)、米国特許第4,779,563号明細書(イシカワ(Ishikawa)ら)、および米国特許第4,877,643号明細書(イシカワ(Ishikawa)ら)、米国特許第6,180,232号明細書(マカラック(McCullough)ら)、米国特許第6,245,425号明細書(マカラック(McCullough)ら)、米国特許第6,336,495号明細書(マカラック(McCullough)ら)、米国特許第6,329,056号明細書(デベ(Deve)ら)、米国特許第6,344,270号明細書(マカラック(McCullough)ら)、米国特許第6,447,927号明細書(マカラック(McCullough)ら)、米国特許第6,460,597号明細書(マカラック(McCullough)ら)、米国特許第6,485,796号明細書(カーペンター(Carpenter)ら)、および米国特許第6,544,645号明細書(マカラック(McCullough)ら);2000年7月14日に出願された米国特許出願第09/616,741号明細書;ならびに2002年1月24日に公開された国際公開第02/06550号パンフレットを参照されたい。
【0053】
典型的には、溶融金属65は脱気される(たとえば、浸透の間および/または前、溶融金属65に溶解した気体(たとえば、アルミニウム中の水素)の量を低減する。溶融金属65を脱気するための技術は、金属処理技術において周知である。溶融物65を脱気することは、ワイヤの気体多孔性を低減する傾向がある。溶融アルミニウムの場合、溶融物65の水素濃度は、いくつかの実施形態において、約0.2cm3未満、約0.15cm3未満、またはさらには約0.1cm3未満/アルミニウム100グラムである。
【0054】
出口ダイ68は、所望のワイヤ直径を提供するように構成される。典型的には、その長さに沿って、均一に丸いワイヤを有することが望ましい。たとえば、58体積パーセントのアルミナ繊維を含有するアルミニウム複合ワイヤのための窒化ケイ素出口ダイの直径は、ワイヤ71の直径と同じである。いくつかの実施形態において、出口ダイ68は、望ましくは、窒化ケイ素から製造されるが、他の材料も有用であることができる。当該技術において出口ダイとして使用されている他の材料としては、従来のアルミナが挙げられる。しかし、窒化ケイ素出口ダイが、従来のアルミナダイより著しく少なく摩耗し、したがって、特にワイヤの長い長さにわたって、ワイヤの所望の直径および形状を提供するのにより有用であることが、出願人によって見出された。
【0055】
典型的には、ワイヤ71を、冷却デバイス69を通して送出された液体(たとえば、水)または気体(たとえば、窒素、アルゴン、または空気)と接触させることによって、ワイヤ71は、出口ダイ68を出た後、冷却される。そのような冷却は、望ましい丸さ特徴および均一性特徴、ならびに空隙がないことを提供するのを助ける。ワイヤ71はスプール72上に集められる。
【0056】
金属間相、乾燥繊維、たとえば収縮または内部気体(たとえば、水素または水蒸気)空隙の結果としての多孔性などの、金属マトリックス複合ワイヤ内の欠陥の存在が、減少された特性、たとえばワイヤ強度などをもたらすことがあることが知られている。したがって、そのような特徴の存在を低減するか最小にすることが望ましい。
【0057】
ワイヤから構成されるコアについて、いくつかの実施形態において、たとえば、テープオーバラップ(tape overwrap)で、接着剤でまたは接着剤なしで、またはバインダーで、ワイヤをともに保持することが望ましい(たとえば、米国特許第6,559,385 B1号明細書(ジョンソン(Johnson)ら)を参照のこと)。たとえば、テープが巻付けられたコアを有する、本発明による別の例示的なケーブル50の断面図が、図5に示されている。ケーブル50は、コア52と、撚り合されたワイヤ54の2つの層とを含み、コア52は、テープ55が巻付けられたワイヤ56(示されているように、複合ワイヤ)を含む。たとえば、コアは、当該技術において知られている技術を用いて、ワイヤの第1の層を中心ワイヤの周りに撚り合せる(たとえば、螺旋状に巻く)ことによって製造することができる。典型的には、螺旋状に撚り合されたコアが、わずか7の個別のワイヤから50以上のワイヤを含む傾向がある。撚り合せ設備が当該技術において知られている(たとえば、イタリア、ベルガモのコルティノビス・スパ(Cortinovis, Spa, of Bergamo, Italy)、およびニュージャージー州パターソンのワトソン・マシナリー・インターナショナル(Watson Machinery International, Patterson, NJ)から入手可能なような遊星歯車式ケーブル撚り合せ機)。ともに螺旋状に巻かれる前、個別のワイヤは、別個のボビン上に提供され、次に、これらは、撚り合せ設備のいくつかのモータ駆動キャリッジ内に配置される。典型的には、完成された撚り合されたケーブルの層ごとに1つのキャリッジがある。各層のワイヤは、各キャリッジの出口で一緒にされ、第1の中心ワイヤの上に、または前の層の上に配列される。ケーブル撚り合せプロセスの間、中心ワイヤ、または1つ以上の付加的な層が周りに巻かれる中間の未完成の撚り合されたケーブルは、さまざまなキャリッジの中心を通して引かれ、各キャリッジは、1つの層を撚り合されたケーブルに加える。1つの層として加えられるべき個別のワイヤは、モータ駆動キャリッジによってケーブルの中心軸の周りに回転される間、それらのそれぞれのボビンから同時に引かれる。これは、所望の層ごとに順次行われる。結果は、螺旋状に撚り合されたコアである。たとえばテープを、結果として生じる撚り合されたコアに付与することができ、撚り合されたワイヤをともに保持するのを助ける。テープを付与するための1つの例示的な機械が、ワトソン・マシン・インターナショナル(Watson Machine International)から市販されている(たとえば、モデル300コンセントリック・テーピング・ヘッド(Concentric Taping Head))。例示的なテープとしては、金属箔テープ(たとえば、アルミニウム箔テープ(たとえば、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから、商品名「フォイル/ガラス・クロス・テープ(Foil/Glass Cloth Tape)363」で入手可能))、ポリエステル支持テープ、およびガラス強化バッキングを有するテープが挙げられる。いくつかの実施形態において、テープは、0.05mmから0.13mm(0.002から0.005インチ)の範囲内の厚さを有する。
【0058】
いくつかの実施形態において、テープは、各連続ラップが、間隙なしで、かつ重なりなしで、前のラップに接するように巻付けられる。いくつかの実施形態において、たとえば、テープは、連続ラップが、各ラップの間の間隙を残すように隔置されるように巻付けることができる。
【0059】
コア、複合ワイヤ、ケーブルなどは、少なくとも100メートル、少なくとも200メートル、少なくとも300メートル、少なくとも400メートル、少なくとも500メートル、少なくとも600メートル、少なくとも700メートル、少なくとも800メートル、またはさらには少なくとも900メートルの長さを有する。
【0060】
本発明によるケーブルを提供するためにコアの周りに撚り合せるためのワイヤは、当該技術において知られている。アルミニウムワイヤが、たとえば、カナダ、ウェイバーンのネクサンズ(Nexans, Weyburn, Canada)、またはジョージア州キャロルトンのサウスワイヤ・カンパニー(Southwire Company, Carrolton, GA)から、商品名「1350−H19アルミニウム(ALUMINUM)」および「1350−H0アルミニウム」で市販されている。典型的には、アルミニウムワイヤは、少なくとも、約20℃から約50℃の温度範囲にわたって、約20ppm/℃から約25ppm/℃の範囲内の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態において、アルミニウムワイヤ(たとえば、「1350−H19アルミニウム」)は、引張破断強度、少なくとも138MPa(20ksi)、少なくとも158MPa(23ksi)、少なくとも172MPa(25ksi)、または少なくとも186MPa(27ksi)、または少なくとも200MPa(29ksi.)を有する。いくつかの実施形態において、アルミニウムワイヤ(たとえば、「1350−H0アルミニウム」)は、41MPa(6ksi)を超えて97MPa(14ksi)以下、またはさらには83MPa(12ksi)以下の引張破断強度を有する。アルミニウム合金ワイヤが、たとえば、日本、大阪の住友電気工業(Sumitomo Electric Industries)から商品名「ZTAL」」で、またはジョージア州キャロルトンのサウスワイヤ・カンパニーから、商品名「6201」で市販されている。いくつかの実施形態において、アルミニウム合金ワイヤは、少なくとも、約20℃から約500℃の温度範囲にわたって、約20ppm/℃から約25ppm/℃の範囲内の熱膨張係数を有する。銅ワイヤが、たとえば、ジョージア州キャロルトンのサウスワイヤ・カンパニーから市販されている。典型的には、銅ワイヤは、少なくとも、約20℃から約800℃の温度範囲にわたって、約12ppm/℃から約18ppm/℃の範囲内の熱膨張係数を有する。銅合金(たとえばCu−Si−X、Cu−Al−X、Cu−Sn−X、Cu−Cdなどの銅ブロンズ;ここで、X=Fe、Mn、Zn、Sn、およびまたはSi;たとえば、ジョージア州キャロルトンのサウスワイヤ・カンパニーから市販されている;たとえば、ノースカロライナ州リサーチトライアングルパークのOMGアメリカズ・コーポレーション(OMG Americas Corporation, Research Triangle Park, NC)から、名称「グリドコップ(GLIDCOP)」で入手可能な酸化物分散強化銅)ワイヤ。いくつかの実施形態において、銅合金ワイヤは、少なくとも、約20℃から約800℃の温度範囲にわたって、約10ppm/℃から約25pmm/℃の範囲内の熱膨張係数を有する。ワイヤは、多様形状(たとえば、円形、楕円形、および台形)のいずれかであることができる。
【0061】
一般に、本発明によるケーブルを、コアの上でワイヤを撚り合せることによって製造することができる。コアは、たとえば、1つのワイヤ、または撚り合された(たとえば、螺旋状に巻かれたワイヤを含むことができる。いくつかの実施形態において、たとえば、7、19、または37のワイヤ。本発明によるケーブルを製造するための例示的な装置80が、図7、図7A、および図7Bに示されている。コア材料のスプール81が、従来の遊星歯車式撚り合せ機械80のヘッドに設けられ、スプール81は、自由に回転することができ、張力を制動システムによって加えることができ、張力を、0〜91kg(0〜200lb.)の範囲内で、繰出しの間コアに加えることができる。コア90は、ボビンキャリッジ82、83を通して、閉じダイ84、85を通して、キャプスタンホイール86の周りにかけられ、巻取りスプール87に取付けられる。
【0062】
外側撚り合せ層の付与前、個別のワイヤが、別個のボビン88上に提供され、これらは、撚り合せ設備のいくつかのモータ駆動キャリッジ82、83内に配置される。いくつかの実施形態において、ボビン88からワイヤ89A、89Bを引くのに必要な張力の範囲は、典型的には4.5〜22.7kg(10〜50lb.)である。典型的には、完成された撚り合されたケーブルの層ごとに1つのキャリッジがある。各層のワイヤは、各キャリッジの出口で閉じダイ84、85で一緒にされ、中心ワイヤの上に、または前の層の上に配列される。層は、外側層がZ撚り(right hand lay)をもたらすように両方向に螺旋状に撚り合される。ケーブル撚り合せプロセスの間、中心ワイヤ、または1つ以上の付加的な層が周りに巻かれる中間の未完成の撚り合されたケーブルは、さまざまなキャリッジの中心を通して引かれ、各キャリッジは、1つの層を撚り合されたケーブルに加える。1つの層として加えられるべき個別のワイヤは、モータ駆動キャリッジによってケーブルの中心軸の周りに回転される間、それらのそれぞれのボビンから同時に引かれる。これは、所望の層ごとに順次行われる。結果は、形状の損失もほどけることもなく好都合に切断し取扱うことができる、螺旋状に撚り合されたケーブル91である。
【0063】
撚り合されたケーブルを取扱うこの能力は、望ましい特徴である。理論に縛られることを望まないが、ケーブルは、その螺旋状に撚り合された配列を維持し、というのは、製造の間、金属ワイヤが、ワイヤ材料の降伏応力を超えるが最終応力または破壊応力より低い、曲げ応力を含む応力を受けるからである。この応力は、ワイヤが、前の層または中心ワイヤの比較的小さい半径の周りに螺旋状に巻かれるときに与えられる。付加的な応力が閉じダイ84、85で与えられ、これらは、製造の間、半径方向の剪断力をケーブルに加える。したがって、ワイヤは、塑性変形し、それらの螺旋状に撚り合された形状を維持する。
【0064】
コア材料、および所与の層のワイヤは、閉じダイによって密接に接触される。図7Aおよび図7Bを参照すると、閉じダイ84A、85Aは、典型的には、巻かれている層のワイヤ上の変形応力を最小にするようなサイズである。閉じダイの内径は、外部層直径のサイズに合される。層のワイヤ上の応力を最小にするために、閉じダイは、ケーブルの外径に対して、0〜2.0%大きい範囲内であるようなサイズである。(すなわち、ダイ内径は、ケーブル外径の1.00から1.02倍の範囲内である)。
【0065】
図7Aおよび図7Bに示された例示的な閉じダイは、円筒であり、たとえば、ボルトまたは他の適切な付属品を使用して、所定位置に保持される。ダイは、たとえば、硬化工具鋼から製造することができる。
【0066】
結果として生じるケーブルは、望ましい場合、他の撚り合せステーションを通過し、最終的に、ケーブル損傷を回避するために、十分な直径の巻取りスプール87上に巻くことができる。いくつかの実施形態において、ケーブルのくせを取るための当該技術において知られている技術が望ましいであろう。たとえば、完成されたケーブルは、ローラから構成されるくせ取り機デバイスを通過させることができる(各ローラは、たとえば、10〜15cm(4〜6インチ)、2つのバンク内に線状に配列され、たとえば、各バンク内に5〜9のローラがある。ローラの2つのバンクの間の距離は、ローラが、ケーブルに衝突するだけか、ケーブルの激しい曲げを引起すように変えることができる。ローラの2つのバンクは、ケーブルの両側に位置決めされ、一方のバンク内のローラが、他方のバンク内の対向するローラによって作られた空間と一致する。したがって、2つのバンクを互いにずらすことができる。ケーブルがくせ取りデバイスを通過するとき、ケーブルは、ローラの上で前後に曲がり、導体内のストランドが同じ長さまで伸張することを可能にし、それにより、弛んだストランドを低減するかなくす。
【0067】
いくつかの実施形態において、周囲温度(たとえば、22℃)より高い高温(たとえば、少なくとも25℃、50℃、75℃、100℃、125℃、150℃、200℃、250℃、300℃、400℃、またはさらには、いくつかの実施形態において、少なくとも500℃)でコアを提供することが望ましいであろう。たとえば、スプールに巻かれたコア(たとえば、金属(たとえば、鋼)上のコアをオーブン内で数時間加熱することによって、コアを所望の温度にすることができる。加熱されたスプールに巻かれたコアは、撚り合せ機械の繰出しスプール(たとえば、図7の繰出しスプール81を参照のこと)上に配置される。望ましくは、高温におけるスプールは、撚り合せプロセス中であり、コアは、依然として、所望の温度またはその近くである(典型的には約2時間以内)。さらに、ケーブルの外側層を形成する繰出しスプール上のワイヤが周囲温度であることが望ましいであろう。すなわち、いくつかの実施形態において、撚り合せプロセスの間、コアとワイヤとの間の温度差に、外側層を形成させることが望ましいであろう。
【0068】
いくつかの実施形態において、少なくとも100kg、200kg、500kg、1000kg、またはさらには少なくとも5000kgのコア張力で撚り合せを行うことが望ましいであろう。
【0069】
本発明によるケーブルのいくつかの実施形態において、たとえば、テープオーバラップで、接着剤でまたは接着剤なしで、またはバインダーで、コアの周りに撚り合されたワイヤをともに保持することが望ましい。たとえば、別の例示的な断面図が、ワイヤコア116を有するコア112と、撚り合されたワイヤ114の2つの層とを含み、ケーブル110は、テープ118が巻付けられる。撚り合されたワイヤをともに保持するのを助けるために、たとえばテープを、結果として生じる撚り合されたケーブルに付与することができる。いくつかの実施形態において、ケーブルは、従来のテーピング設備を使用して、接着テープが巻付けられる。テープを付与するための1つの例示的な機械が、ワトソン・マシン・インターナショナルから市販されている(たとえば、モデル300コンセントリック・テーピング・ヘッド)。例示的なテープとしては、金属箔テープ(たとえば、アルミニウム箔テープ(たとえば、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから、商品名「フォイル/ガラス・クロス・テープ363」で入手可能))、ポリエステル支持テープ、およびガラス強化バッキングを有するテープが挙げられる。いくつかの実施形態において、テープは、0.05mmから0.13mm(0.002から0.005インチ)の範囲内の厚さを有する。
【0070】
いくつかの実施形態において、テープは、各連続ラップが前のラップに重なるように巻付けられる。いくつかの実施形態において、テープは、各連続ラップが、間隙なしで、かつ重なりなしで、前のラップに接するように巻付けられる。いくつかの実施形態において、たとえば、テープは、連続ラップが、各ラップの間の間隙を残すように隔置されるように巻付けることができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、ケーブルは、撚り合せプロセスの間ケーブルが張力下である間巻付けられる。たとえば図7を参照すると、テーピング設備が最終閉じダイ85とキャプスタン86との間に配置される。
【0072】
弛みを測定するための方法
ある長さの導体を、長さ30〜300メートルに選択し、従来のエポキシ取付物で終端させ、層が、製造されたままの状態と同じ相対位置を実質的に維持することを確実にする。外側ワイヤは、エポキシ取付物を通して、他方の側から延在させ、次に、従来のターミナルコネクタを使用するAC電源への接続を考慮するように再構成する。エポキシ取付物を、張力を保持するためのターンバックルに接続されたアルミニウムスペルターソケット内に注ぐ。1つの側で、ロードセルをターンバックルに接続し、次に、両端で、ターンバックルをプリングアイに取付ける。アイを、張力下のときのシステムの端部撓みを最小にするのに十分大きい、大きいコンクリート柱に接続した。テストのため、張力を、導体定格破断強度の10から30パーセント範囲内の値に引く。温度は、導体の長さに沿った3つの位置で(総(プリングアイからプリングアイ)スパンの距離の1/4、1/2、および3/4で)、9の熱電対を使用して測定する。各位置において、3つの熱電対を、導体内の3つの異なった半径方向の位置、すなわち、外側ワイヤストランド間、内側ワイヤストランド間、および外側コアワイヤに隣接して(すなわち、接触する)位置決めする。弛み値は、導体の長さに沿った3つの位置で(スパンの距離の1/4、1/2、および3/4で)、プルワイヤポテンショメータ(カリフォルニア州パームデールのスペースエージ・コントロール・インコーポレイテッド(SpaceAge Control, Inc, Palmdale, CA)から入手可能)を使用して測定する。これらは、3つの位置の垂直移動を測定するように位置決めする。AC電流を導体に与えて、温度を所望の値に上昇させる。導体の温度は、室温(約20℃(68°F))から約240℃(464°F)に60〜120℃/分(140〜248°F/分)の範囲内の速度で上昇させる。熱電対のすべての最も高い温度を対照として用いる。
【0073】
導体の弛み値(弛み合計)は、室温(約20℃(68°F))から約240℃(464°F)まで1度間隔でさまざまな温度で、次の式を用いて計算する。
【数1】

式中、
弛み1/2=導体のスパンの距離の1/2で測定された弛み
弛み1/4=導体のスパンの距離の1/4で測定された弛み
弛み3/4=導体のスパンの距離の3/4で測定された弛み
【0074】
有効「内側スパン」長さは、1/4の位置と3/4の位置との間の水平距離である。これは、弛みを計算するために用いられるスパン長さである。
【0075】
応力パラメータの導出
測定された弛みおよび温度データを、弛み対温度のグラフとしてプロットする。計算された曲線を、サウスカロライナ州グリーンビルのアルコア・フジクラ・リミテッド(Alcoa Fujikura Ltd., Greenville, SC)から商品名「サグ10(SAG10)」(バージョン3.0 アップデート3.9.7)でソフトウェアプログラムで入手可能なアルコア・サグ10(Alcoa Sag10)グラフィック方法を用いて、測定されたデータに適合させる。応力パラメータは、「組込みアルミニウム応力」と呼ばれる「サグ10」の適合パラメータであり、これは、アルミニウム以外の材料が使用される(たとえば、アルミニウム合金)場合、他のパラメータに適合するように変更することができ、かつ、予測されたグラフ上のニーポイントの位置、およびまた高温ポストニーポイント領域の弛みの量を調整する。応力パラメータ理論の説明が、アルコア・サグ10ユーザズマニュアル(Users Manual)(バージョン2.0):ACSRのアルミニウムの圧縮応力の理論(Theory of Compressive Stress in Aluminum of ACSR)に提供されている。次の導体パラメータが、サグ10ソフトウェア(Sag10 Software)へのエントリに必要である;面積、直径、単位長さあたりの重量、および定格破断強度。次のラインローディング条件が、サグ10ソフトウェアへのエントリに必要である;スパン長さ、室温(20〜25℃)における初期張力。次のパラメータが、圧縮応力計算を行うために、サグ10ソフトウェアへのエントリに必要である;組込みワイヤ応力、ワイヤ面積(総面積の一部として)、導体内のワイヤ層の数、導体内のワイヤストランドの数、コアストランドの数、各ワイヤ層の撚り込み率(stranding lay ratios)。応力−歪み係数が、表(下記表1を参照のこと)として、「サグ10」ソフトウェアへの入力に必要である。
【0076】
【表1】

【0077】
応力歪み曲線多項式の定義
最初の5の数字A0〜A4は、初期ワイヤ曲線×面積比を表す4次多項式の係数であり、
【数2】

AFはワイヤの最終モジュラスであり、
【数3】

式中、εは、%単位の導体伸びであり、σは、psi単位の応力であり、
B0〜B4は、ワイヤの最終10年クリープ曲線×面積比を表す4次多項式の係数であり、
【数4】

Cα(Al)は、ワイヤの熱膨張の係数である。
C0〜C4は、複合コアのみの、初期曲線×面積比を表す4次多項式の係数である。
CFは、複合コアの最終モジュラスであり、
D0〜D4は、複合コアの最終10年クリープ曲線×面積比を表す4次多項式の係数であり、
α(コア)は、複合コアの熱膨張の係数である。
【0078】
計算されたデータおよび測定されたデータを適合させる際に、最良適合は、(i)曲線が高温(140〜240℃)で一致するように応力パラメータの値を変えることによって、計算された曲線を測定されたデータに一致させ、(ii)測定された曲線の変曲点(ニーポイント)は、計算された曲線と厳密に一致し、(iii)初期の計算された弛みは、初期の測定された弛みと一致する必要がある(すなわち、24℃(75°F)における初期張力は1432kgであり、12.5cm(5インチ)の弛みを生じさせる。)。測定されたデータへの最良適合を得るための応力パラメータの値は、こうして得られる。この結果は、ケーブルの「応力パラメータ」である。
【0079】
本発明によるケーブルを、架空送電ケーブルを含むさまざまな用途で使用することができる。
【0080】
本発明の利点および実施形態を、次の実施例によって、さらに例示するが、これらの実施例に記載された特定の材料およびそれらの量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定するように解釈されるべきではない。部およびパーセンテージはすべて、特に明記しない限り、重量による。
【実施例】
【0081】
例示的な実施例
例示的な実施例のケーブルのワイヤを次のように準備した。ワイヤを、図6に示された装置60を使用して製造した。10,000デニールのアルファアルミナ繊維(セントポールの3Mカンパニーによって、商品名「ネクステル610」で販売された)の11(11)のトウが、供給スプール62から供給され、平行にされて円形束にされ、305cm/分(120in./分)で1100℃に加熱された長さ1.5m(5ft.)のアルミナチューブ63を通過させることによってヒートクリーニングされた。次に、繊維のヒートクリーニングされた繊維61は、真空チャンバ64内で排気され、金属アルミニウム(99.99%Al)マトリックス材料(ペンシルバニア州ピッツバーグのベック・アルミニウム・カンパニー(Beck Aluminum Co., Pittsburgh, PA)から得られた)の溶融物(溶融金属)65を収容するるつぼ67に入った。繊維は、ケータプラー70によって供給スプール62から引かれた。超音波プローブ66が、溶融物65を繊維のトウ61内に浸透させるのを助けるために、溶融物65中に繊維の近傍に位置決めされた。ワイヤ71の溶融金属は、出口ダイ68を通って、るつぼ67を出た後、冷却し凝固したが、いくらかの冷却が、ワイヤ71がるつぼ67を完全に出る前におそらく発生した。さらに、ワイヤ71の冷却は、ワイヤ71に衝突した、冷却デバイス69を通って送出された窒素気体の流れによって向上された。ワイヤ71は、スプール72上に集められた。
【0082】
繊維61は、溶融物67に入る前に排気された。真空チャンバ内の圧力は約20トルであった。真空システム64は、繊維の束61の直径と一致するサイズの、長さ25cmのアルミナ入口チューブを有した。真空チャンバ64は、長さ21cm、直径10cmであった。真空ポンプの容量は0.37m3/分であった。排気された繊維61は、金属浴に貫入した真空システム64上のチューブを通して、溶融物65に挿入された(すなわち、排気された繊維61は、溶融物54に導入されるとき真空下であった)。出口チューブの内径は、繊維束61の直径と一致した。出口チューブの一部が、溶融金属中に5cmの深さまで浸漬された。
【0083】
溶融金属65の、繊維61内への浸透は、繊維61に密に近接するように溶融金属65中に位置決めされた振動ホーン66の使用によって向上された。ホーン66は、駆動されて、19.7kHz、および0.18mm(0.007in.)の空気の振幅で振動した。ホーンは、チタン導波管に接続され、これは、超音波トランスデューサ(コネチカット州ダンベリーのソニックス&マテリアルズから得られた)に接続された。
【0084】
繊維61は、ホーン先端の2.5mm以内であった。ホーン先端は、組成91重量%Nb−9重量%Moのニオブ合金(ペンシルバニア州ピッツバーグのPMTIから得られた)から製造された。合金は、長さ12.7cm(5in.)および直径2.5cm(1in.)の円筒に作られた。円筒は、その長さを変更することによって、19.7kHzの所望の振動周波数に調整された。
【0085】
溶融金属65は、浸透前に脱気された(たとえば、溶融金属に溶解した気体(たとえば、水素)の量を低減する)。イリノイ州シカゴのブルムンド・ファウンドリ・インコーポレイテッド(Brummund Foundry Inc, Chicago, IL)から入手可能な携帯用回転脱気ユニットが使用された。使用された気体はアルゴンであり、アルゴン流量は1分あたり1050リットルであり、速度は、1分あたり50リットルに設定されたモータへの空気流量によって提供され、持続時間は60分であった。
【0086】
窒化ケイ素出口ダイ68は、所望のワイヤ直径を提供するように構成された。出口ダイの内径は2.67mm(0.105in.)であった。
【0087】
撚り合されたコアは、カナダ、モントリオールのワイヤ・ロープ・カンパニー(Wire Rope Company in Montreal, Canada)における撚り合せ設備上で撚り合された。ケーブルは、中心の1つのワイヤと、Z撚りでの第1の層の6のワイヤとを有した。ともに螺旋状に巻かれる前、個別のワイヤが、別個のボビン上に提供され、これらは、次に、撚り合せ設備のモータ駆動キャリッジ内に配置された。キャリッジは、完成された撚り合されたケーブルの層のための6のボビンを保持した。層のワイヤは、キャリッジの出口で一緒にされ、中心ワイヤの上に配列された。ケーブル撚り合せプロセスの間、中心ワイヤは、キャリッジの中心を通して引かれ、キャリッジは、1つの層を撚り合されたケーブルに加えた。1つの層として加えられた個別のワイヤは、モータ駆動キャリッジによってケーブルの中心軸の周りに回転される間、それらのそれぞれのボビンから同時に引かれた。結果は、螺旋状に撚り合されたコアであった。
【0088】
撚り合されたコアは、従来のテーピング設備(ニュージャージー州パターソンのワトソン・マシン・インターナショナル(Watson Machine International, Paterson, NJ)からのモデル300コンセントリック・テーピング・ヘッド(Concentric Taping Head))を使用して、接着テープが巻付けられた。テープバッキングは、ガラス繊維を有するアルミニウム箔テープであり、感圧シリコーン接着剤を有した(ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから、商品名「フォイル/ガラス・クロス・テープ363」で得られた)。テープ18の総厚さは.18mm(0.0072インチ)であった。テープは幅1.90cm(0.75インチ)であった。
【0089】
完成されたコアの平均直径は8.23mm(0.324インチ)であり、撚り合された層の撚り長さは54.1cm(21.3インチ)であった。
【0090】
第1の台形アルミニウム合金ワイヤは、アルミニウム/ジルコニウムロッドから準備された(9.53mm(0.375インチ)の直径;ラミフィルN・V(Lamifil N.V.)(ベルギー、ヘミクセム(Hemiksem, Belguim)、商品名「ZTAL」で)から得られ、153.95MPa(22,183psi)の引張強度、13.3%の伸び、および60.4%のIACSの導電性を有した。第2の台形ワイヤは、132.32MPa(19,191psi))の引張強度、10.4%の伸び、および60.5%のIACSの導電性を有するアルミニウム/ジルコニウムロッド(9.53mm(0.375インチ)の直径;「ZTAL」)から準備された。ロッドは、室温で、当該技術において知られているように5の中間ダイを使用して、最後に台形形成ダイを使用してドローダウンされた。ドローダイは、炭化タングステンから製造された。炭化タングステンダイのジオメトリは、60°の入口角度、16〜18°の低減角度、ダイ直径の30%のベアリング長さ(a bearing length 30% of the die diameter)、および60°のバックレリーフ角度(back relief angle)を有した。ダイ表面は高度に研磨された。ダイは、ドローオイルを使用して潤滑され冷却された。ドローシステムは、1ダイあたり1分あたり60〜100リットルの範囲内に設定された速度でオイルを送出し、温度は40〜50℃の範囲内に設定された。最後の形成ダイは、高度に研磨された加工表面を有する2つの水平硬化鋼(60RC硬度)形成ロールを含んだ。ロール溝の設計は、必要な台形プロファイルに基いた。ロールは、ドローボックスと外側ドローブロックとの間に配置されたローリングスタンド上に設置された。最終形成ロール低減は、ワイヤの面積を約23.5%低減した。面積低減の量は、金属をロール溝のコーナ内に移動させ、形成ロール間の空間を適切に充填するのに十分であった。形成ロールは、台形ワイヤのキャップが、ドローブロックおよびボビンドラムの表面に面するように整列され設置された。形成後、ワイヤプロファイルは、テンプレートを使用してチェックされ確認された。
【0091】
次に、このワイヤはボビン上に巻かれた。結果として生じるワイヤのさまざまな特性は、下記表2に記載されている。台形形状の「有効直径」は、台形形状の断面積と同じ面積を有する円の直径を指す。撚り合せ設備内に装填された20のボビンがあり(第1の内側層を撚り合せるための第1のワイヤの8)、第2の外側層を撚り合せるための第2のワイヤの12)、ワイヤは、テストのためにこれらのサブセットからとられ、これらは「サンプルボビン」であった。
【0092】
【表2】

【0093】
ケーブルが、従来の遊星歯車式撚り合せ機械、ならびに比較例について上で説明されたコアおよび(内側および外側)ワイヤを使用して、SK、ウェイバーンのネクサンズ(Nexans, Weyburn, SK)によって製造された。ケーブルを製造するための装置80の概略図が、図7、図7A、および図7Bに示されている。
【0094】
コアのスプール81が、従来の遊星歯車式撚り合せ機械80のヘッドに設けられ、スプール81は、自由に回転することができ、張力を制動システムによって加えることができた。繰出しの間コアに加えられた張力は45kg(100lb.)であった。コアは室温(約23℃(73°F))で入力された。コアは、ボビンキャリッジ82、83の中心を通して、閉じダイ84、85を通して、キャプスタンホイール86の周りにかけられ、従来の巻取り(152cm(60in.)の直径)スプール87に取付けられた。
【0095】
外側撚り合せ層の付与前、個別のワイヤが、別個のボビン88上に提供され、これらは、撚り合せ設備のいくつかのモータ駆動キャリッジ82、83内に配置された。ボビン88からワイヤ89を引くのに必要な張力の範囲は、11〜14kg(25〜30lb.)の範囲内であるように設定された。撚り合せステーションは、キャリッジと、閉じダイとからなる。各撚り合せステーションにおいて、各層のワイヤ89は、各キャリッジの出口で、それぞれ、閉じダイ84、85で一緒にされ、それぞれ、中心ワイヤの上に、または前の層の上に配列された。したがって、コアは、2つの撚り合せステーションを通過した。第1のステーションにおいて、8のワイヤを、コアの上でS撚り(left lay)で撚り合せた。第2のステーションにおいて、12のワイヤを、前の層の上でZ撚り(right lay)で撚り合せた。
【0096】
コア材料、および所与の層のワイヤは、適用できるような閉じダイ84、85によって接触された。閉じダイは、円筒(図7Aおよび図7Bを参照のこと)であり、ボルトを使用して所定位置に保持された。ダイは、硬化工具鋼から製造され、完全に閉じることができた。
【0097】
完成されたケーブルは、キャプスタンホイール86を通過され、最終的に、(91cmの直径(36インチ))巻取りスプール87上に巻かれた。完成されたケーブルは、各バンク内に7のローラで、2つのバンク内に線状に配列されたローラ(各ローラは12.5cm(5インチ)である)から構成されたくせ取り機デバイスを通過された。ローラの2つのバンクの間の距離は、ローラがケーブルに衝突するだけであるように設定された。ローラの2つのバンクは、ケーブルの両側に位置決めされ、一方のバンク内のローラが、他方のバンク内の対向するローラによって作られた空間と一致した。したがって、2つのバンクは互いにずれた。ケーブルがくせ取りデバイスを通過するとき、ケーブルは、ローラの上で前後に曲がり、導体内のストランドが同じ長さまで伸張することを可能にし、それにより、弛んだストランドをなくした。
【0098】
内側層は、15.4mm(0.608in.)の外側層直径、353kg/km(237lb./kft.)の単位長さあたり質量で、20.3cm(8in.)のS撚り(left hand lay)で、8の台形ワイヤからなった。内側層のための閉じブロック(硬化工具鋼から製造された;60Rc硬度)は、15.4mm(0.608in.)の内径に設定された。したがって、閉じブロックは、ケーブル直径とちょうど同じ直径に設定された。
【0099】
外側層は、22.9mm(0.9015in.)の外側層直径、507.6kg/km(341.2lb./kft)の単位長さあたり質量で、25.9cm(10.2in.)のZ撚りで、12の台形ワイヤからなった。アルミニウム合金ワイヤの単位長さあたり総質量は928.8kg/km(624.3lb./kft.)であり、コアの単位長さあたり総質量は136.4kg/km(91.7lb./kft.)であり、単位長さあたり総導体質量は1065kg/km716.0lb./kft.)であった。外側層のための閉じブロック(硬化工具鋼から製造された;60Rc硬度)は、22.9mm(0.9015in.)の内径に設定された。したがって、閉じブロックは、最終ケーブル直径とちょうど同じ直径に設定された。
【0100】
内側ワイヤおよび外側ワイヤ張力(繰出しボビンとしての)は、ハンドヘルドフォースゲージ(入手可能な、イリノイ州シカゴのマクマスター−カード(McMaster−Card, Chicago, IL))を使用して測定され、13.5〜15kg(29〜33lb.)の範囲内であるように設定され、コア繰出し張力は、ブレーキによって、ボビンと同じ測定方法を用いて、約90kg(198lb.)に設定された。さらに、くせ取り機は使用されず、ケーブルはスプールに巻かれなかったが、まっすぐに走り、フロア上に広がる(lay out)に任された。コアは室温(約23℃(73°F))で入力された。
【0101】
撚り合せ機械は、15m/分(49ft/分)で動作され、従来のキャプスタンホイール、標準くせ取りデバイス、および従来の直径152cm(60in.)の巻取りスプールを使用して駆動された。
【0102】
結果として生じる導体を、次の「切断端部テスト方法」を用いてテストした。テストされるべき導体のセクションをフロア上にまっすぐに広げ、長さ3.1〜4.6m(10〜15ft.)のサブセクションを両端で締付けた。次に、導体を切断して、依然として両端で締付けられたセクションを隔離した。次に、1つの締付けを解除し、層移動は観察されなかった。次に、導体のセクションを、層の、互いに対する移動について検査した。各層の移動を、定規を使用して測定して、コアに対する移動の量を定めた。外側アルミニウム層は複合コアに対して引っ込み、コアをゼロ基準位置とみなし、内側アルミニウム層は0.16in.(4mm)引っ込み、外側層は0.31in.(8mm)引っ込んだ。
【0103】
例示的な実施例のケーブルを、また、カナダ、オンタリオ州トロントのキネクトリックス・インコーポレイテッド(Kinectrics, Inc. Toronto, Ontario, Canada)によって、次の「弛みテスト方法I」を用いて、評価した。ある長さの導体を従来のエポキシ取付物で終端させ、層が、製造されたままの状態と同じ相対位置を実質的に維持することを確実にし、ただし、アルミニウム/ジルコニウムワイヤを、エポキシ取付物を通して、他方の側から延在させ、次に、従来のターミナルコネクタを使用するAC電源への接続を考慮するように再構成した。エポキシ取付物を、張力を保持するためのターンバックルに接続されたアルミニウムスペルターソケット内に注いだ。1つの側で、ロードセルをターンバックルに接続し(5000キログラム(kg)のキャパシティ)、次に、両端で、ターンバックルをプリングアイに取付けた。アイを、張力下のときのシステムの端部撓みを最小にするのに十分大きい、大きいコンクリート柱に接続した。テストのため、張力を、導体定格破断強度の20%に引いた。したがって、2082kg(4590lb)をケーブルに加えた。温度は、導体の長さに沿った3つの位置で(総(プリングアイからプリングアイ)スパンの距離の1/4、1/2、および3/4で)、9の熱電対(各位置に3つ;コネチカット州スタンフォードのオメガ・コーポレーション(Omega Corporation, Stamford, CT)から入手可能なJタイプ)を使用して測定した。各位置において、3つの熱電対を、導体内の3つの異なった半径方向の位置、すなわち、外側アルミニウムストランド間、内側アルミニウムストランド間、および外側コアワイヤに隣接して(すなわち、接触する)位置決めした。弛み値は、導体の長さに沿った3つの位置で(スパンの距離の1/4、1/2、および3/4で)、プルワイヤポテンショメータ(カリフォルニア州パームデールのスペースエージ・コントロール・インコーポレイテッドから入手可能)を使用して測定した。これらは、3つの位置の垂直移動を測定するように位置決めした。AC電流を導体に与えて、温度を所望の値に上昇させた。導体の温度は、室温(約20℃(68°F))から約240℃(464°F)に60〜120℃/分(140〜248°F/分)の範囲内の速度で上昇させた。熱電対のすべての最も高い温度を対照として用いた。240℃(464°F)を達成するために、約1200ampが必要であった。
【0104】
導体の弛み値(弛み合計)は、さまざまな温度で、次の式を用いて計算した。
【数5】

式中、
弛み1/2=導体のスパンの距離の1/2で測定された弛み
弛み1/4=導体のスパンの距離の1/4で測定された弛み
弛み3/4=導体のスパンの距離の3/4で測定された弛み
【0105】
表3(下記)は、固定入力テストパラメータを要約する。
【0106】
【表3】

【0107】
結果として生じる弛みおよび温度データ(例示的な実施例の「結果として生じるデータ」)をプロットし、次に、計算された曲線を、サウスカロライナ州グリーンビルのアルコア・フジクラ・リミテッドから商品名「サグ10」(バージョン3.0 アップデート3.9.7)でソフトウェアプログラムで入手可能なアルコア・サグ10グラフィック方法を用いて適合させた。応力パラメータは、「組込みアルミニウム応力」と呼ばれる「サグ10」の適合パラメータであり、これは、予測されたグラフ上のニーポイントの位置、およびまた高温ポストニーポイント領域の弛みの量を調整した。応力パラメータ理論の説明が、アルコア・サグ10ユーザズマニュアル(バージョン2.0):ACSRのアルミニウムの圧縮応力の理論に提供された。示された表4〜7(下記)のような675kcmilのケーブルの導体パラメータをサグ10ソフトウェアに入力した。最良適合は、(i)曲線が高温(140〜240℃)で一致するように応力パラメータの値を変えることによって、計算された曲線を「結果として生じるデータ」に一致させ、(ii)「結果として生じるデータ」曲線の変曲点(ニーポイント)は、計算された曲線と厳密に一致し、(iii)初期の計算された弛みは、初期の「結果として生じるデータ」弛みと一致する必要があった(すなわち、22℃(72°F)における初期張力は2082kgであり、27.7cm(10.9インチ)の弛みを生じさせる。)。この実施例の場合、応力パラメータの3.5MPa(500psi)の値が、「結果として生じるデータ」への最良適合を提供した。図8は、サグ10によって計算された弛み(線82)、および測定された弛み(プロットされたデータ83)を示す。
【0108】
次の導体データを「サグ10」ソフトウェアに入力した。
【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
【表6】

【0112】
【表7】

【0113】
応力歪み曲線多項式の定義
最初の5の数字A0〜A4は、初期アルミニウム曲線×面積比を表す4次多項式の係数であり、
【数6】

AFはアルミニウムの最終モジュラスであり、
【数7】

式中、εは、%単位の導体伸びであり、σは、psi単位の応力であり、
B0〜B4は、アルミニウムの最終10年クリープ曲線×面積比を表す4次多項式の係数であり、
【数8】

Cα(Al)は、アルミニウムの熱膨張の係数である。
C0〜C4は、複合コアのみの、初期曲線×面積比を表す4次多項式の係数である。
CFは、複合コアの最終モジュラスであり、
D0〜D4は、複合コアの最終10年クリープ曲線×面積比を表す4次多項式の係数であり、
α(コア)は、複合コアの熱膨張の係数である。
【0114】
予測(Prophetic)実施例1
ケーブルを、撚り合せプロセスへの次の変更を伴って、例示的な実施例1で説明されたように製造する。図7を参照すると、第2のキャプスタン86Aが繰出しリール81とキャリッジ82との間に加えられる。約−3.5MPa(−500psi)の応力パラメータを有するケーブルを製造するために、第2のキャプスタン86Aとキャリッジ82との間の張力を、キャプスタンの張力制御機構を使用して、240kg(530lb.)に設定する。
【0115】
ケーブルは、従来のテーピング設備(ニュージャージー州パターソンのワトソン・マシン・インターナショナルからのモデル300コンセントリック・テーピング・ヘッド)を使用して、接着テープで巻付ける。再び図7を参照すると、テーピング設備95が最終閉じダイ85とキャプスタン86との間に配置される。テープバッキングは、ガラス繊維を有するアルミニウム箔テープであり、感圧シリコーン接着剤を有する(ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから、商品名「フォイル/ガラス・クロス・テープ363」で入手可能)。テープ18の総厚さは0.18mm(0.0072インチ)である。テープは幅1.90cm(0.75インチ)である。
【0116】
予測実施例2
ケーブルを、撚り合せプロセスへの次の変更を伴って、予測実施例1で説明されたように製造する。約−34MPa(−5000psi)の応力パラメータを有するケーブルを製造するために、第2のキャプスタン86Aとキャリッジ82との間の張力を、キャプスタンの張力制御機構を使用して、1202kg(2650lb.)に設定する。
【0117】
予測実施例3
ケーブルを、撚り合せプロセスへの次の変更を伴って、例示的な実施例1で説明されたように製造する。コアを鋼スプール上に提供し、オーブン内に8時間配置して、コア温度が、撚り合せ設備の周りの周囲空気温度より44℃高い温度に達することを確実にする(たとえば、周囲温度が24℃であった場合、コアは68℃のオーブン内の温度に達する)。次に、スプールを取外し、撚り合せ機械80の繰出しスプール81(すべての特徴が示された図7を参照のこと)上に配置し、撚り合せ作業の開始において、コアが依然として高温であることを再び確実にする(スプールが大きいので、コアは迅速に熱を放たないが、撚り合せ作業は、スプールが炉から取外された約2時間以内に行わなければならない)。さらに、ケーブル上の外側層を形成する繰出しスプール上のワイヤは、周囲温度(たとえば、24℃)でなければならない。このプロセスは、−3.5MPa(−500psi)の応力パラメータを有するケーブルを提供する。
【0118】
予測実施例4
ケーブルを、撚り合せプロセスへの次の変更を伴って、予測実施例3で説明されたように製造する。撚り合せ作業の開始におけるコアの温度は、周囲空気温度より131℃高い。したがって、24℃の周囲温度の場合、コアは155℃である。このプロセスは、−17MPa(−2500psi)の応力パラメータを有するケーブルを提供する。
【0119】
予測実施例5
ケーブルを、撚り合せプロセスへの次の変更を伴って、予測実施例3で説明されたように製造する。撚り合せ作業の開始におけるコアの温度は、周囲空気温度より239℃高い。したがって、24℃の周囲温度の場合、コアは263℃である。このプロセスは、−34MPa(−5000psi)の応力パラメータを有するケーブルを提供する。
【0120】
予測実施例1〜5の弛みの計算、および例示的な実施例との比較
例示的な実施例で説明されたアルコア・サグ10グラフィック方法モデルを用いて、予測実施例1および2で説明されたケーブルの弛み対温度挙動を予測する。例示的な実施例のサグ10モデルおよび方法を用いて、弛み曲線を生成した。導体パラメータは、表8〜11に示されており、サグ10ソフトウェアに入力した。圧縮応力パラメータの値は、−3.5MPa(−500psi)および−34MPa(−5000psi)であった。図9は、例示的な実施例、ならびに予測実施例1、2、3、および5の弛み対温度曲線を示す。例示的な実施例の測定されたデータは、プロットされたデータ93として示されており、例示的な実施例の計算された曲線は、線98として示されている。−3.5MPa(−500psi)の応力パラメータを用いた予測実施例1および3の計算された曲線は、線94として示されている。−34MPa(−5000psi)の応力パラメータを用いた予測実施例2および5の計算された曲線は、線96として示されている。
【0121】
次の導体データを「サグ10」ソフトウェアに入力した。
【0122】
【表8】

【0123】
【表9】

【0124】
【表10】

【0125】
【表11】

【0126】
比較例1
鋼強化ケーブルの70メートル(230フィート)サンプル(「鋼強化ACSRケーブル(Steel Reinforced ACSR Cable)(3/0 ACSR 6/1 PIGEON」が、イリノイ州ノースシカゴ、ナンバー・ワン・ケーブル・プレイスのキング・ワイヤ・インコーポレイテッド(King Wire Inc, Number One Cable Place, North Chicago, IL)から得られた)。サンプルは下記表12の仕様を有した。
【0127】
【表12】

【0128】
実施例1
比較例1のケーブルの45.7cm(18インチ)の長さを、負のアルミニウムプレストレスを得るために次の態様順序で修正した。アルミニウムワイヤを、両側の7.6cm(3インチ)から取外し、中心コアワイヤを露出したままにした。中心コアワイヤの端部の約2.5cm(1インチ)を、1cmあたり13のねじ山(1インチあたり32ねじ山)で、#10ダイを使用してねじ切りした。スペーサを加えて、ねじ切りされたセクションとサンプル上のアルミニウムワイヤとの間の間隙を充填した。1cmあたり13ねじ山(1インチあたり32ねじ山)を有する#10カップリングナットを、スペーサとぴったり合うように、ねじ切りされた鋼コアワイヤ上に締付けた。サンプルを、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから商品名「スコッチ(SCOTCH)898」で入手可能な幅2.5cm(1インチ)の繊維強化パッケージングテープできつく手で巻付けた。テープをその幅の約1/4だけ重ねた。一方のカップリングナットを万力で固定して保持し、他方のナットを、トルクレンチを使用して、0.29キログラムフォース−メートル(kilogram force−meter)(25インチ−ポンド)のトルクに締付けた。鋼の張力かけの完了時のテープ付ケーブルの直径は、13.7mm cm(0.54インチ)であることを測定した。アルミニウムワイヤは、中心コアワイヤの周りにきつく巻付けられたままであった。アルミニウムワイヤの緩みは観察されなかった。アルミニウムワイヤと中心コアワイヤとの間に間隙は観察されなかった。アルミニウムワイヤは、バードケージ化する(birdcage)ことも、中心コアワイヤから離れて広がることもなかった。
【0129】
アルミニウムに生じた圧縮応力を計算するために、鋼コアワイヤの張力を、クローネ・ソケット・スクリュ・セレクタ(Krone Socket Screw Selector)(コネチカット州ウェストハートフォードのホロ−クローム・カンパニー(Holo−Krome Company, West Hartford, CT)から入手可能)のデータを用いて、トルク値から計算した。#10スクリュの場合、1.4キログラム−フォースメートル(120インチ−ポンド)のトルクが、ねじ切りされた鋼ワイヤの1270(2800lb.)の引張荷重を生じさせる。0.29キログラムフォース−メートル(25インチ−lb.)への締付けによって鋼コアワイヤに生じた引張荷重は、264kg(583lb.;25/120*2800lb)であることを計算する。鋼の引張荷重は、アルミニウムの同等の圧縮荷重と等しくかつ反対であると考えられる。したがって、アルミニウムは、−264kg(−583lb.)の圧縮荷重を経験することを計算する。これから、アルミニウムの圧縮応力は、−30.5MPa(−4425psi;583lb./1317in2)であることを計算する。
【0130】
比較例1および実施例1の弛みの計算
表13〜15を参照し、実施例1で説明されたようなケーブルの計算された弛み対温度特徴を、比較例1で説明されたようなケーブルの計算された弛み対温度特徴と比較した。例示的な実施例1で先に説明されたアルコア・サグ10ソフトウェアモデルを用いて、17.2MPa(2500psi)の正の応力パラメータ値を用いる比較例1のケーブルの弛み対温度挙動を定めた。同様に、アルコア・サグ10ソフトウェアモデルを用いて、−30.5(−4425psi)のアルミニウムプレストレスを有した実施例1のある長さのケーブルの弛み対温度挙動を定めた。実施例1の同じ65.5m(215ft.)のスパン長さパラメータを用いて、弛み対温度曲線を生成した。モデルケーブルの初期張力は、破断強度の20%であった。図10の線101は、比較例のケーブルの+17.2MPa(+2500psi)の値について計算された曲線を示す。図10の線103は、実施例1のケーブルの−30.5MPa(−4425psi)の値について計算された曲線を示す。
【0131】
次の導体データを「サグ10」ソフトウェアに入力した。
【0132】
【表13】

【0133】
【表14】

【0134】
【表15】

【0135】
本発明のさまざまな変更および改変が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかになるであろう。また、本発明は、ここに記載された例示的な実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1−5】本発明によるケーブルの例示的な実施形態の概略断面図である。
【図6】本発明による、繊維に溶融金属を浸透させるために使用される例示的な超音波浸透装置の概略図である。
【図7】本発明によるケーブルを製造するために使用される例示的な撚り合せ装置の概略図である。
【図7A−7B】本発明によるケーブルを製造するために使用される例示的な撚り合せ装置の概略図である。
【図8】例示的な実施例のケーブル弛みデータのプロットである。
【図9】例示的な実施例および予測実施例1のケーブル弛みデータのプロットである。
【図10】比較例および実施例1のケーブル弛みデータのプロットである。
【図11】本発明によるケーブルの例示的な実施形態の概略断面図である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張係数を有する長手方向のコアと、
合せて前記コアの熱膨張係数より大きい熱膨張係数を有する複数のワイヤであって、前記複数のワイヤが、アルミニウムワイヤ、銅ワイヤ、アルミニウム合金ワイヤ、または銅合金ワイヤの少なくとも1つを含み、前記複数のワイヤが、前記コアの周りに撚り合される、複数のワイヤとを
含むケーブルであって、
前記ケーブルが0MPa未満の応力パラメータを有する、ケーブル。
【請求項2】
前記コアが金属を含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記金属が、鋼、チタン、タングステン、または形状記憶合金の少なくとも1つである、請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記コアが結晶セラミックを含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項5】
前記コアが、結晶セラミックの連続繊維を含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項6】
前記コアが、金属マトリックス内の結晶セラミックの連続繊維を含む金属マトリックス複合体を含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項7】
前記コアが、金属マトリックス内の結晶セラミックの連続繊維を含む金属マトリックス複合ワイヤを含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項8】
前記金属マトリックスが、選択され、前記マトリックスの総重量を基準にして、少なくとも98重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項7に記載のケーブル。
【請求項9】
前記結晶セラミックが、それぞれの繊維の総金属酸化物含量を基準にして少なくとも99重量%のAl23を含む多結晶アルファアルミナベースの繊維である、請求項8に記載のケーブル。
【請求項10】
前記結晶セラミックが、それぞれの繊維の総金属酸化物含量を基準にして少なくとも99重量%のAl23を含む多結晶アルファアルミナベースの繊維である、請求項7に記載のケーブル。
【請求項11】
前記金属マトリックス複合ワイヤが、前記それぞれの金属マトリックス複合ワイヤの総体積を基準にして、40から70体積パーセントの範囲内の前記繊維を含む、請求項10に記載のケーブル。
【請求項12】
前記ケーブルが、−50MPaまでの応力パラメータを有する、請求項10に記載のケーブル。
【請求項13】
前記ケーブルが、0未満から−50MPaの範囲内の応力パラメータを有する、請求項10に記載のケーブル。
【請求項14】
前記コアが、ポリマーマトリックス内の、アラミド、セラミック、ホウ素、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、黒鉛、炭素、チタン、タングステン、または形状記憶合金の少なくとも1つの連続繊維を含む複合体を含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項15】
前記コアが、ポリマーマトリックス内の連続セラミックを含む複合体を含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項16】
前記ワイヤおよび前記コアが、連続しており、長さが少なくとも150メートルである、請求項1に記載のケーブル。
【請求項17】
前記コアが、1mmから12mmの直径を有するワイヤを含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項18】
前記コアが、1mmから4mmの直径を有するワイヤを含む、請求項1に記載のケーブル。
【請求項19】
前記コアのワイヤが、10から150の撚り係数を有するように螺旋状に撚り合される、請求項18に記載のケーブル。
【請求項20】
前記ワイヤが、形状が台形である、請求項1に記載のケーブル。
【請求項21】
前記ワイヤが、10から150の撚り係数を有するように螺旋状に撚り合される、請求項1に記載のケーブル。
【請求項22】
ケーブルを製造する方法であって、
複数のワイヤを長手方向のコアの周りに撚り合せる工程であって、前記複数のワイヤが、アルミニウムワイヤ、銅ワイヤ、アルミニウム合金ワイヤ、または銅合金ワイヤの少なくとも1つを含み、前記コア、予備的な撚り合されたケーブルを提供する工程と、
前記予備的な撚り合されたケーブルを閉じダイにかけて、請求項1に記載のケーブルを提供する工程であって、前記閉じダイが内径を有し、前記ケーブルが外径を有し、前記ダイ内径が前記ケーブル外径の1.00から1.02倍の範囲内である工程とを含む方法。
【請求項23】
前記方法が周囲温度で行われ、前記撚り合せの間、前記コアが、前記周囲温度より少なくとも50℃高い温度である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が周囲温度で行われ、前記撚り合せの間、前記コアが、前記周囲温度より少なくとも100℃高い温度である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が周囲温度で行われ、前記撚り合せの間、前記コアが、前記周囲温度より少なくとも150℃高い温度である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が周囲温度で行われ、前記撚り合せの間、前記コアが、前記周囲温度より少なくとも200℃高い温度である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が周囲温度で行われ、前記撚り合せの間、前記コアが、前記周囲温度より少なくとも250℃高い温度である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記撚り合せが、少なくとも100kgのコア張力で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記撚り合せが、少なくとも200kgのコア張力で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記撚り合せが、少なくとも500kgのコア張力で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記撚り合せが、少なくとも1000kgのコア張力で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記撚り合せが、少なくとも5000kgのコア張力で行われる、請求項22に記載の方法。

【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−502814(P2008−502814A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516474(P2007−516474)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/013008
【国際公開番号】WO2006/006996
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】