説明

コア−シェル金属ナノ粒子を形成する方法

【課題】導電回路を印刷するための導電性インキなどのインキを容易にかつ経済的に製造する方法を提供する。
【解決手段】第一の金属物質のコアおよび第二の金属物質のシェルを含む2種金属からなるコア−シェル金属ナノ粒子を形成させる方法であって、前記第一の金属物質の溶液中の金属イオンを紫外線等の光照射により還元し、金属ナノ粒子コアを光化学的に製造する工程と、同様の方法により、前記コアの周りに前記第二の金属物質のシェルを形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、たとえばインキ用途において使用することが可能な、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を光化学的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/126,581号明細書(2008年5月23日出願、ミシェル クレティエン(Michelle Chretien)ら)の中には、インキを形成させる方法が開示されており、それには、安定化された金属ナノ粒子を光化学的に製造する工程およびインキの中へそのナノ粒子を配合する工程が含まれる。
【0003】
例えば、薄膜トランジスタ(TFT)電極、集積回路のための導電線、トレース、パッドおよび連系線、ならびに無線ICタグ(RFID)技術のような、印刷電子機能は、積極的に研究されている領域である。電子機能を直接印刷することが可能となれば、多くの応用可能性を有する無数の低コストでフレキシブルな電子材料への門戸が開かれる。
【0004】
電子的な導電機能を印刷するため一般的に使用される物質としては、金属物質が挙げられる。特に、ナノ微粒子金属物質が印刷電子用途に広く使用されているが、その理由は、それらが、より良い製品を与える優れた特徴を有しているからである。金属ナノ粒子とは、サブミクロンサイズの範囲の直径を有する粒子である。ナノ粒子金属は、バルクや原子種とは異なったユニークな性質を有している。金属ナノ粒子の特徴は、その表面原子の反応性が高く、導電性が高く、そして光学的な性質がユニークであることである。たとえば、ナノ粒子は、バルク金属よりも顕著に低い融点と、バルク金属の焼結温度よりも低い焼結温度を有している。金属ナノ粒子がユニークな性質を有している理由は、それらが独特の電子構造を有しており、またそれらが極端に大きな表面積を有していて、表面電子の割合が高いためである。
【0005】
金属ナノ粒子は、結晶質物質であっても、あるいは非晶質物質であってもよい。それらは、純金属たとえば銀、金、銅などからできていても、金属の混合物たとえば合金からできていても、あるいは、1種または複数の金属たとえば銅のコアが、1種または複数のその他の金属たとえば金もしくは銀のシェルによって覆われていてもよい。ニッケルが導電性インキとして使用されることは極めて希であったが、その理由は、その導電率が低いためである(銅または銀の導電率の約1/4)。金および銀は良好な導電率を与えるが、それらは比較的に高価である。さらに、金および銀はアニーリングのためには高い温度を必要とするが、このことは、紙やプラスチック基材の上に印刷するには大問題である。銅は、低価格(銀の価格の約1パーセント)で、良好な導電率を与える。残念ながら、銅は酸化されやすく、その酸化物は非導電性である。従来からの銅をベースとしたナノ粒子インキは不安定であって、自然発生的な非導電性のCuOまたはCuOへの酸化を防止するために、その調製およびアニーリングの際には雰囲気を非活性にしたり、減圧したりする必要がある。銅ポリマー厚膜インキは何年も前から入手可能となっていて、特別な用途、たとえばはんだ付け適性が必要とされるような場合に使用することができる。興味あるまた別な攻め方は、銀と銅の両方の利点を組み合わせることである。銀めっきした銅粒子は市販されており、いくつかの市販のインキにおいて使用されている。粒子の物質の本体として、より安価な導電性金属(銅)を使用しながらも、粒子間の接触では、銀めっきが銀の利点を与えている。しかしながら、先にも説明したように、銀は比較的に高価であり、めっき法を用いてコア−シェル構造を得ようとするのは、経済性にすぐれているとは言えない。したがって、電子機能を印刷するのに適したインキを製造するための、信頼性が高く、経済性に優れた方法が必要とされている。
【0006】
例えば、特許文献1(Shimら)には、銅のコアと、銅の酸化を防止するためにそのコアを包み込む貴金属の薄層とを含む金属ナノ粒子が記載されている。その文献には、銅の含量が高いため、およびそのような金属ナノ粒子が薄層としてたとえば銀のような高導電率を有する金属を含んでいるために、そのような金属ナノ粒子は経済的効果が高いとの記述がある。その文献では、金属ナノ粒子は銅よりも良好な導電率を有する配線を形成させることが可能であるとも記述しているが、銀の移行が起きるかもしれないということに関してはほとんど無視されている。
【0007】
金属ナノ粒子インキを作り出すための従来からの方法では、いくつかの問題点が存在している。電子機能を印刷するのに適するインキの中に組み入れるための金属ナノ粒子を調製することで必要とされるのは、大気条件下で安定であること、粒径が小さいこと、経済性にすぐれていること、および生産性が高いことである。しかしながら、金および銀のナノ粒子を製造するための方法は、かなりコスト的に高い。それに加えて、銅を使用する場合には、ほとんどの方法では、その銅粒子の酸化を避けるために、減圧/不活性雰囲気を必要とする。減圧/不活性雰囲気を必要としないと記述されている方法では、それによって形成される粒子があまりにも大きくて、低温(<200℃)ではアニールすることが不可能であるという限界を有している。従って、高いアニーリング温度が必要となり、そのために、紙およびプラスチック基材の上への印刷が禁じられる可能性がある。別な面では、それらの方法では、生産性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0212562A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、これらの要求に適合し、より容易にかつ経済的に製造および使用することが可能であるインキを製造する方法が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述のそれぞれの適切な成分およびプロセス態様は、本発明の開示においてその実施態様のために選択することができる。
【0011】
本発明の開示は、第一の金属物質のコアと第二の金属物質のシェルとを有する2種金属からなるコア−シェル金属ナノ粒子を形成させる方法を提供するが、ここで、その2種金属からなるコア−シェル金属ナノ粒子は、その第一の金属物質の金属ナノ粒子コアを光化学的に製造する工程、およびそのコアの周りにその第二の金属物質のシェルを形成させる工程によって製造される。そのシェルは、たとえば、コアの溶液または懸濁液にシェル形成性前駆体物質を添加して、そのコアの周りにシェルを光化学的に形成させる方法によって形成させるか、あるいは、第二の金属物質の金属ナノ粒子を別途に光化学的に製造する方法によって形成させることができるが、ここで、その第二の金属物質の金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子コアよりも平均粒径が小さく、その第二の金属物質の金属ナノ粒子と、金属ナノ粒子コアとを混合して、第二の金属物質の金属ナノ粒子で、金属ナノ粒子コアの周りのシェルを形成させるようにする。
【0012】
本発明の開示はさらに、そのような2種金属からなるコア−シェル金属ナノ粒子を使用してインキ組成物を形成させる方法も提供する。そのインキは、たとえば、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を光化学的に製造し、そのナノ粒子をインキの中に配合することによって形成させてもよい。そのインキは基材の上に印刷することができる。その印刷されたインキはアニールすることができる。
【0013】
本発明の開示はいくつもの利点を有している。その金属ナノ粒子を含むインキは、従来のアニーリング温度よりも低い温度でアニールすることができる。したがって、そのインキは、紙およびプラスチック基材を含め、広く各種の基材の上に印刷することができる。その方法は高速であって、そのため、大量のナノ粒子を、迅速に、数秒〜数分間の間で製造することができる。さらにこの方法は、用途が広い。各種の金属物質および各種のサイズのコアおよびシェルを使用することができるので、ナノ粒子を調節することによって、アニーリングをさせたときに、コアは固体を維持しながらも、シェルが連続の導電経路を形成して、それによってたとえば、より安価な銅ナノ粒子のコアを使用しながらも貴金属のより良好な導電経路を得ることが可能となる。したがって、この方法は、白金、金または銀のような高価な金属をバルクの形で使用するよりも、2種金属からなるナノ粒子を合成する、より安価な代替え物を提供する。それらのナノ粒子のサイズおよび/または濃度は、この方法のパラメータの一つまたは複数を変化させることによって容易に調節することが可能であるが、そのようなパラメータとしてはたとえば、照射時間、照射強度、使用する金属対イオン、および/または金属もしくは光重合開始剤の濃度などが挙げられる。最後に、この方法は、強烈な還元剤を必要とせず、水を用いて室温で実施することが可能であるので、生態学的にも優しいものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書および後に続く特許請求項において、たとえば「a」、「an」および「the」のような単数形には複数形もまた含まれる(内容的に明らかに別な状況を示している場合は除く)。
【0015】
一般的には、本発明の開示は、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を形成させる方法、およびそのような2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を含むインキを形成させるための方法を提供する。一般的には、そのインキは、基材の上に印刷することが可能であり、またアニールすることも可能である。以下において、その方法についてさらに詳しく記述する。
【0016】
いくつかの実施態様においては、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子は、まず、第一の金属物質の金属ナノ粒子(本明細書においては「コア」と呼ぶ)を光化学的な方法によって製造する。次いで、そのコアの上に第二の金属物質を析出させることによって、コアの周りにシェルを形成させる。シェルは、たとえば、そのコアの溶液または懸濁液にシェル形成性前駆体物質を添加してからそのコアの周りにシェルを光化学的に形成させる方法か、あるいは、別途により小さなサイズの第二の金属物質の金属ナノ粒子を光化学的に製造し、その第二の金属物質の金属ナノ粒子と金属ナノ粒子コアとを混合して、金属ナノ粒子コアの周りにその第二の金属物質の金属ナノ粒子がシェルを形成するようにする方法によって形成させることができる。いくつかの実施態様においては、その第一の金属物質と第二の金属物質とが異なっているが、それらが同一であてもよい。
【0017】
2種金属からなるコア−シェルナノ粒子のためのコア粒子として好適な金属ナノ粒子は、一般的に、各種適切な媒体、たとえば水溶液または金属塩を溶解させるその他の溶媒中で、還元剤を用いて1種または複数の金属イオンを還元させることによって製造すればよい。いくつかの実施態様においては、その溶液、たとえば水溶液を脱気してもよい。たとえば、形成されるナノ粒子が、容易に酸化されてその粒子が非導電性となってしまうようなサイズ(平均粒子直径)であったり金属物質であったりするような場合には、脱気した溶液を使用するのが特に望ましい。
【0018】
金属イオンは、金属塩として提供される。金属塩として提供される好適な金属イオンとしては、銅、アルミニウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、クロム、鉛、カドミウム、コバルト、ニッケル、金、銀、白金、スズ、パラジウム、インジウム、鉄、タングステン、モリブデン、ルテニウム、ビスマス、その他適切な金属イオン、およびそれらの混合物のイオンが挙げられる。たとえば、金属塩は、金属硫酸塩、金属ハライド(たとえば金属クロリドもしくは金属ブロミド)、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属亜硝酸塩、金属酸化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属シュウ酸塩、金属ピラゾリルボレート、金属アジド、金属フルオロボレート、金属カルボン酸塩、金属ハロゲンカルボン酸塩、金属ヒドロキシカルボン酸塩、金属アミノカルボン酸塩、金属の芳香族ならびにニトロおよび/またはフルオロ置換芳香族カルボン酸塩、金属ベータジケトネート、金属スルホン酸塩、金属アセチルアセトネートなどの形態で与えることができる。本明細書で使用するとき、第一の「金属物質」を形成すると記述されるときは、そのコアは明らかに、単一の元素金属たとえば銅とすることもできるし、あるいは2種以上の異なった金属の混合物または合金とすることもできることを示している。
【0019】
一つの実施態様においては、その金属イオンが銅(II)イオンとして提供される。その銅(II)イオンは、たとえば、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、または酢酸銅などの金属塩の中に組み入れることができる。その他の金属やその他の金属塩もまた使用できることは言うまでもない。
【0020】
還元剤としては、光化学的に発生させた1種または複数のラジカルを使用するのがよい。それらのラジカルが1種または複数の金属カチオン(M、M2+など、ここでMは適切な金属を表す)と反応して、非保護の金属Mナノ粒子を生成する。適切な還元剤としては、たとえばラジカルが挙げられる。適切なラジカルの例としては、たとえば、ケチルもしくはα−アミノラジカル、または必要とされる酸化還元電位および反応にとって十分な寿命を有する各種その他のラジカル種が挙げられる。本発明の開示に従って使用されるラジカルは、商業的に入手可能な供給源も含めて、各種の公知の供給源から得ることができる。一つの実施態様においては、そのラジカルが、α−ヒドロキシまたはα−アミノケトンをノーリッシュ・タイプI(Norrish Type I)開裂させることによって得られる。そのようなラジカル源は、たとえば、チバ(Ciba)から市販されている光重合開始剤のイルガキュア(IRGACURE)(登録商標)184、127、2959、369、379などとして、市場で入手可能である。また別な実施態様においては、ラジカルは、ノーリッシュ・タイプII(Norrish Type II)光開始プロセスによって作られるが、その場合、光励起されたケトン(たとえば、ベンゾフェノン)がプロトン供与分子(たとえば、イソプロパノール)からプロトンを引き抜いて、二つのケチルラジカルを生成する。
【0021】
実施態様においては、たとえば金属ナノ粒子と還元剤の水溶液を、約5秒間〜約90秒間、たとえば約10〜約45秒間または約15〜約30秒間照射させる。その照射強度は、約0.001W/cm〜約10W/cm、たとえば約0.05W/cm〜約5W/cm、または約0.1W/cm〜約1W/cmである。照射源は一般的には、当業者に公知の照射源たとえば、UVまたは可視照射によってよい。それによって、未コーティングの金属ナノ粒子が合成されることになる。
【0022】
その製造された金属ナノ粒子コアがナノメートルのサイズ範囲にあるのが望ましい。たとえば、いくつかの実施態様においては、その金属ナノ粒子コアが、約1〜約1000nm、たとえば約50〜約500nm、または約100〜約200nm、または約2〜約20nmの平均粒径または直径を有している。本明細書においては、「平均」粒径は、典型的には、d50として表され、粒径分布のちょうど50パーセントにあたる中央粒径の値として定義されるが、ここで、その分布における粒子の50%がd50粒径値よりも大きく、その分布における粒子の残りの50%がd50値よりも小さい。平均粒径は、粒径を推測するための光散乱技術、たとえば動的光散乱法を使用する方法によって測定することができる。「粒子直径」という用語は、透過型電子顕微鏡法によって得られる粒子の画像から誘導されるその顔料粒子の長さを指している。
【0023】
形成されるナノ粒子コアのサイズは、照射時間および強度の変更、金属の対イオン、金属イオンおよび/または光重合開始剤の濃度の変更、あるいはその他の手段によって、調節することができる。
【0024】
その金属ナノ粒子コアはいかなる形状であってもよい。金属ナノ粒子コアの形状の例を挙げれば、針状、顆粒状、粒状、球状、非晶形状などがあるがこれらに限定される訳ではない。
【0025】
その未コーティングの金属ナノ粒子コアが調製されたら、それを、その中でそれらが形成された溶液たとえば水溶液の中に懸濁させるのがよい。さらに、所望または必要に応じて、その未コーティングの金属ナノ粒子コアを安定化させてもよいが、ただし、安定化によってその粒子の最終的な性質に変化がもたらされる可能性もあるので、安定化は避ける方が望ましい。
【0026】
コア粒子を形成させた後に、そのコアの上にシェルを形成させて、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を得る。シェルを形成させるために使用可能な方法は各種存在し得るが、それについては、以下において説明する。
【0027】
シェルを形成する第二の金属物質は、所望の性質、たとえば導電率などを与える各種好適な金属であってよい。したがって、好適な第二の金属物質としては、銅、アルミニウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、クロム、鉛、カドミウム、コバルト、ニッケル、金、銀、白金、スズ、パラジウム、インジウム、鉄、タングステン、モリブデン、ルテニウム、ビスマス、その他適切な元素金属、およびそれらの混合物などが挙げられる。本明細書で使用するとき、シェルが第二の「金属物質」から形成されると記述されるときは、そのシェルは明らかに、単一の元素金属たとえば金、銀、白金などとすることもできるし、あるいは2種以上の異なった金属の混合物または合金とすることもできることを示している。
【0028】
いくつかの実施態様においては、その第一の金属と第二の金属が異なっている。たとえば、それらの実施態様においては、安価なことから銅をコア物質として使用することが可能であり、それに対して、高い導電率の性質を有することから貴金属をシェル物質として使用することが可能である。そのような組合せとすることによって、低コストで、望ましい性質を有するコア−シェルナノ粒子を製造することが可能となる。
【0029】
コア粒子の上にシェルを形成させるための一つの方法は、形成されたコア粒子の上にインサイチュで、光化学的にシェルを形成させる方法である。このことは、コア粒子溶液の中でコア粒子の形成を繰り返すことによって達成することができるが、それには、追加の反応剤を添加して、還元剤を用いた1種または複数の追加の金属イオンの還元を行わせる。この方法においては、形成されたコア粒子が、第二の金属物質の層を析出させるためのシードとして機能するので、その結果、2種金属からなるコア−シェル粒子が形成されることになる。
【0030】
この方法においては、上述の金属物質はいずれも、上記の金属イオン、還元剤などを使用することによって得ることができる。この方法のいくつかの実施態様においては、金属ナノ粒子コア、第二の金属物質前駆体、および還元剤の水溶液を、先に述べたようにして再び照射する。その結果、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子が合成される。そのシェルの厚みは、約1〜約1000nm、たとえば約50〜約500nm、または約100〜約200nm、または約2〜約20nmの範囲であってよい。
【0031】
コア粒子そのものと同様にして、形成されるナノ粒子のシェルの厚みは、照射時間および強度の変更、金属の対イオン、金属イオンおよび/または光重合開始剤の濃度の変更、あるいはその他の手段によって、調節することができる。
【0032】
コア粒子の上にシェルを形成させるためのまた別な方法は、第二の金属のより小さい金属ナノ粒子の溶液または懸濁液を別途に調製し、そのより小さい金属ナノ粒子の溶液または懸濁液と金属ナノ粒子とを混合する方法である。この混合によって、そのより小さい金属ナノ粒子が、より大きなナノ粒子コアの周りにコーティングまたはシェルを形成することになる。
【0033】
いくつかの実施態様においては、その第二の金属のより小さい金属ナノ粒子の溶液または懸濁液は、先にコア粒子を製造するところで述べたのと同じ方法で、光化学的に粒子を製造することによって、別途に調製することができる。言うまでもないことであるが、その反応剤および条件を選択して、所望のより小さい粒径を得るようにする。この方法においては、上述の金属物質はいずれも、上記の金属イオン、還元剤などを使用することによって得ることができる。いくつかの実施態様においては、その小さな粒子は、約100nm未満、または10nm未満の平均粒径を有している。さらなる実施態様においては、その小さな粒子が、約1nm〜約50nm、または約1nm〜約10nm、または約1nm〜約5nmの平均粒径を有している。
【0034】
その混合工程においては、大きい金属ナノ粒子コアと、より小さい金属ナノ粒子シェル粒子とを、各種所望の比率で混合して、所望のシェル厚みを得ることができる。たとえば、約9重量部の大きい金属ナノ粒子コア対約1重量部のより小さい金属ナノ粒子シェル粒子から、約1重量部の大きい金属ナノ粒子コア対約1重量部のより小さい金属ナノ粒子シェル粒子までの混合比とすることができる。また別な実施態様においては、シェルをさらに厚くすることも可能であって、たとえば、約1重量部の大きい金属ナノ粒子コア対約1重量部のより小さい金属ナノ粒子シェル粒子から、約1重量部の大きい金属ナノ粒子コア対約5重量部のより小さい金属ナノ粒子シェル粒子までの混合比とする。言うまでもないことであるが、たとえば、異なった金属密度としたりするために、この範囲から外れた比率を使用することが可能であることも明らかであろう。
【0035】
製造された最終的な2種金属からなるコア−シェルナノ粒子が、ナノメートルのサイズ範囲に入っているのが望ましい。たとえば、いくつかの実施態様においては、その2種金属からなるコア−シェルナノ粒子が、約1〜約1000nm、たとえば約50〜約500nm、または約100〜約200nm、または約2〜約20nmの平均粒径または直径を有している。本明細書においては、「平均」粒径は、典型的には、d50として表され、粒径分布のちょうど50パーセントにあたる中央粒径の値として定義されるが、ここで、その分布における粒子の50%がd50粒径値よりも大きく、その分布における粒子の残りの50%がd50値よりも小さい。平均粒径は、粒径を推測するための光散乱技術、たとえば動的光散乱法を使用する方法によって測定することができる。「粒子直径」という用語は、透過型電子顕微鏡法によって得られる粒子の画像から誘導されるその顔料粒子の長さを指している。
【0036】
したがって、シェル層を形成させるための方法を変化させることによって、そのシェルの物理的性質を調節することが可能である。そのシェル層に、たとえば、形成されたナノ粒子コアの水性媒体中における第二の光化学的合成の上述の第一の方法を使用することによる、第二の金属物質の薄い連続層が含まれていてもよいし、あるいはそのシェル層に、比較的大きいナノ粒子コアと比較的小さいナノ粒子シェル粒子の予め形成させておいた溶液または懸濁液を混合する、上述の第二の方法を使用することによる、ナノ粒子コアを被覆する個別のより小さい粒子の層が含まれていてもよい。コア粒子が比較的小さく、たとえば平均粒子直径が約100nm未満または約50nm未満であるような場合、それらの設計法のいずれかまたは両方によって、シェルがコア粒子を酸化から保護することが可能となる。
【0037】
そのナノ粒子コアとシェルの実際のサイズと、相対的なサイズが、その2種金属からなるコア−シェルナノ粒子をアニールさせる方法に影響してくる。たとえば、ナノ粒子のサイズが大きくなるにつれて、焼結時間が長くそして温度が高くなることもまた公知である。その2種金属からなるコア−シェルナノ粒子が、比較的小さな直径のコアと比較的薄いシェルとを含んでいる場合には、その2種金属からなるコア−シェルナノ粒子全体をアニールして、それらのコアとシェルの金属物質の実質的に混合物または合金である導電線を得ることができる。しかしながら、その2種金属からなるコア−シェルナノ粒子が、比較的大きい直径のコアと比較的薄いシェルとを含んでいる実施態様においては、そのシェル層がアニーリングを受けるのに対してそのナノ粒子コアはそのまま残っている可能性があり、その結果、シェルの金属物質の連結またはマトリックスによって相互に連結されたナノ粒子コアを含む導電線が得られる。したがって、コアのサイズとシェルの厚み、さらにはその構成金属物質を調節することによって、所望のレベルの導電率、焼結温度および時間、コストなどに適合させることが可能である。
【0038】
形成された2種金属からなるコア−シェルナノ粒子は、より低い温度で粒子をアニールさせて導電構造を形成することが望まれるような、広く各種の用途に使用することができる。たとえば、その2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を、基材の上に印刷し、次いでアニールさせることが可能な、インキの中の配合のために適切なビヒクル中に分散させることができる。
【0039】
一旦調製した後で、その2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を水溶液中に懸濁させてもよいし、あるいはそれらが形成された溶液または懸濁液の中にそれらを保持しておくことも可能である。2種金属からなるコア−シェルナノ粒子が、それらが形成された媒体の中に保持されるような実施態様においては、そのナノ粒子を、インキ組成物の中に容易に配合することができる。
【0040】
特定の目的のための希望または必要があれば、形成された2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を、各種公知の手段を用いて官能化させてもよい。それに加えて、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子をさらに、または別な方法で安定化させてもよい。そのナノ粒子を含む水溶液に安定化分子を直接添加することによって、粒子の安定化を達成してもよい。別な方法として、安定化分子を含む有機溶媒の中にナノ粒子を抽出することもできる。たとえば、銅コーティングされたナノ粒子を、置換ジチオカーボネートを用いて安定化させてもよい。また別な例においては、銀コーティングされたナノ粒子を、有機酸またはアミン、たとえばオレイン酸またはオレイルアミンを用いて安定化させてもよい。また別な例においては、アルキルチオールでキャップした金でコーティングされたナノ粒子を使用することも可能である。本発明の開示に従って使用するのに好適なその他の安定剤としては、一般的には有機安定剤が挙げられるが、それに限定される訳ではない。「有機安定剤」における「有機」という用語は、(1個または複数の)炭素原子が存在していることを意味しているが、有機安定剤には1個または複数の非金属ヘテロ原子たとえば、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、ハロゲンなどが含まれていてもよい。その他の有機安定剤としては、たとえば、チオールおよびその誘導体、−OC(=S)SH(キサントゲン酸)、ジチオカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、アルキルキサントゲン酸エステル、エーテルアルコールベースのキサントゲン酸エステル、アミン、およびその他の有機界面活性剤などが挙げられる。有機安定剤は、チオールたとえば、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、およびドデカンチオール;ジチオールたとえば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、および1,4−ブタンジチオール;またはチオールとジチオールとの混合物、からなる群より選択するのがよい。有機安定剤は、キサントゲン酸、たとえば、O−メチルキサントゲン酸エステル、O−エチルキサントゲン酸エステル、O−プロピルキサントゲン酸、O−ブチルキサントゲン酸、O−ペンチルキサントゲン酸、O−ヘキシルキサントゲン酸、O−ヘプチルキサントゲン酸、O−オクチルキサントゲン酸、O−ノニルキサントゲン酸、O−デシルキサントゲン酸、O−ウンデシルキサントゲン酸、O−ドデシルキサントゲン酸、およびそれらの組合せからなる群より選択するのがよい。
【0041】
この2種金属からなるコア−シェルナノ粒子は、インキ、たとえば、通常のペン、マーカー、液状インクジェットインキ組成物などにおいて使用されるインキの中に配合することができる。たとえば、この金属ナノ粒子は、溶媒系の液状インキ、さらには水性インキも含めて、各種のインキビヒクルの中に配合することができる。
【0042】
本発明の開示によるインキ組成物には、一般的に、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子と、インキビヒクルたとえば単一のキャリア溶媒または2種以上のキャリア溶媒の混合物とが含まれる。
【0043】
一般的には、好適な溶媒またはキャリア媒体は、極性であっても非極性であってもよい。本発明の開示において有用な溶媒としては、アミン、アミド、アルコール、テルペンアルコール、エステル、水、ケトン、エーテル、芳香族化合物、置換芳香族化合物、テルペン、精油、アルデヒド、アルケン、不飽和炭化水素、飽和炭化水素、鉱酸、有機酸および塩基などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。その他の好適な溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールブチルエーテル、エタノールアミンおよびN−メチルピロリドン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン、ケトン、ベンゼン、クロロトルエン、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドン、Aジメチルアセトアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、およびプロピレングリコールなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0044】
溶媒は高融点溶媒、たとえば少なくとも約30℃、かつ約100℃以下の融点を有するものとすることができる。加熱されたインクジェットヘッドを使用して、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子のインキ組成物を、流動性のある状態で付着させ、それによって基材に接触すると溶媒が固化するようにする。それに続けての加工が、他の手段によってその溶媒を除去し、次いで、その物質を最終的な製品へと転換させ、それにより解像度を保持する。好適な溶媒としては、ワックス、高分子量脂肪酸、アルコール、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。別な方法として、その2種金属からなるコア−シェルナノ粒子のインキ組成物が室温で液状であってもよいが、その場合は、基材を、その組成物の凝固点よりも低い温度に保つ。
【0045】
溶媒が低融点溶媒であってもよい。その前駆体組成物が、基材の上で乾燥するまでは液体として残っていなければならないような場合には、低融点が必要となる。好適な低融点溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド(融点=約−20℃)である。
【0046】
さらに、その溶媒が低蒸気圧溶媒であってもよい。低蒸気圧ということは、インクジェットヘッド、シリンジまたはその他の部品の中での蒸発が、たとえば閉塞などのトラブルを招くような場合には、その組成物の可使時間を延長させるのに有利である。この目的のために好適な溶媒としては、テルピネオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン、およびトリ(エチレングリコール)ジメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0047】
その溶媒を、高蒸気圧溶媒、たとえば少なくとも約1kPaの蒸気圧を有するものとすることも可能である。高蒸気圧であるということによって、乾燥によってその溶媒を急速に除去することが可能となる。高蒸気圧溶媒としては、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、エタノール、メタノール、2−ブタノン、および水などが挙げられる。
【0048】
インキを配合するためには、約0.5〜約95重量%の2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を、たとえば約1〜約50重量%または約5〜約25重量%または約10〜約20重量%のインキビヒクルの中に分散させるのがよい。一つの実施態様においては、約20重量%である。いくつかの実施態様においては、導電率が、約10倍〜約35倍、または約15倍〜約20倍に改良される。
【0049】
インキの粘度は、約1センチポワズ〜約100センチポワズ、たとえば約10センチポワズ〜約75センチポワズ、または約20センチポワズ〜約50センチポワズ、または約5センチポワズ〜約12センチポワズとするのがよい。本明細書においては、粘度は25℃で測定する。
【0050】
インキ組成物にはさらに、単一のキャリア物質、または2種以上のキャリア物質の混合物が含まれる。キャリア物質は、具体的なインキ組成物のタイプに応じて、変化させることができる。たとえば、水性インクジェット用インキ組成物では、適切なキャリア物質として、水、または水と1種または複数の他の溶媒との混合物を使用することができる。その他のインクジェット用インキ組成物では、水の存在下または非存在下に、キャリア物質として1種または複数の有機溶媒を使用することができる。
【0051】
インキ組成物の中には、各種所望の、または有効な着色剤を使用できるが、顔料、染料、顔料と染料との混合物、顔料の混合物、染料の混合物などが挙げられる。2種金属からなるコア−シェルナノ粒子はさらに、いくつかの実施態様においては、インキ組成物に対して着色剤的な性質のいくぶんか、または全部を付与する。本発明の開示によるインキは、ナノ粒子をインキの中に配合する工程の間に着色剤を添加することによって、着色インキとして製造してもよい。
【0052】
本発明の開示によるインキにおいて使用するのに好適な着色剤としては、以下のようなものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、ウルトラマリン、ニグロシン染料、アニリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ローダミン6Cレーキ、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、マラカイトグリーン、ハンザイエローG、マラカイトグリーンヘキサレート、オイルブラック、アゾオイルブラック、ローズベンガル、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、サリチル酸およびサリチル酸誘導体の三級アンモニウム塩、金属塩、ならびにそれらの混合物。着色剤の例としては、たとえば、ファストイエローG、ハンザブリリアントイエロー5GX、ジスアゾイエローAAA、ナフトールレッドHFG、レーキレッドC、ベンズイミダゾロンカルミンHF3C、ジオキサジンバイオレット、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ベンズイミダゾロンブラウンHFR、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化チタン、テトラジンレーキ、ローダミン6Gレーキ、メチルバイオレットレーキ、ベーシック6Gレーキ、ブリリアントグリーンレーキ、ニグロシンなどが挙げられる。
【0053】
使用されるイエロー着色剤の例としては、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、およびキノリンイエロー;マゼンタ着色剤の例としては、ローダミン6Gレーキ、ウォッチングレッド、ローズベンガル、およびローダミンB;ならびにシアン着色剤の例としては、フタロシアニンブルー、メチレンブルー、ビクトリアブルー、アニリンブルー、群青などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0054】
着色剤の量は広い範囲で変化させることが可能であるが、たとえば約3〜約20重量パーセントであり、複数の着色剤を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本発明の開示によるインキにはさらに、1種または複数の添加剤が、それらの既知の用途のために、含まれていてもよい。たとえば、好適な添加剤としては、流動化剤たとえばコロイダルシリカ;潤滑剤たとえば脂肪酸の金属塩;ワックス、界面活性剤、シリカ;スペーシング剤;乾燥剤;分散剤;保湿剤;架橋剤;安定剤;増粘剤;ゲル化剤;脱泡剤;および光重合のための重合開始剤などが挙げられる。しかしながら、追加の添加剤は、アニーリング工程で除去されないと、導電機能における導電率を低下させる可能性があることには、注意しなければならない。
【0056】
画像密度を向上させ、読み取りヘッドに対するオフセットと画像汚れを効果的に防止するために、1種または複数のワックスをインキに添加してもよい。ワックスは、インキ組成物の全重量を基準にして、たとえば約0.1〜約10重量パーセントの量、または約1〜約6重量パーセントの量で存在させることができる。好適なワックスとしては、ポリオレフィンワックス、たとえば低分子量のポリエチレン、ポリプロピレン、それらのコポリマー、およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。その他の例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フルオロカーボン系ワックス(テフロン(TEFLON)(登録商標))、またはフィッシャー−トロプシュ(Fischer−Tropsch)ワックスなどが挙げられるが、その他のワックスを使用することも可能である。ワックスは、たとえば、読み取りヘッドに対するオフセットや画像汚れを防止するのに役立つ。
【0057】
場合によっては、インキ組成物に抗酸化剤がさらに含まれていてもよい。インキ組成物の任意成分である抗酸化剤は、画像が酸化されることを防止し、インキ調製プロセスの加熱工程の際にインキの成分が酸化されることを防止する。好適な抗酸化剤の具体例としては、ナウガード(NAUGUARD)(登録商標)系列の抗酸化剤たとえば、ナウガード(NAUGUARD)(登録商標)445、ナウガード(NAUGUARD)(登録商標)524、ナウガード(NAUGUARD)(登録商標)76、およびナウガード(NAUGUARD)(登録商標)512(コネチカット州・オックスフォード(Oxford,Conn.)のユニロイヤル・ケミカル・カンパニー(Uniroyal Chemical Company)から市販)、イルガノックス(IRGANOX)(登録商標)系列の抗酸化剤たとえば、イルガノックス(IRGANOX)(登録商標)1010(チバ・ガイギー(Ciba Geigy)から市販)などが挙げられる。任意成分の抗酸化剤を存在させる場合には、それをインキ中に各種所望または有効な量、たとえばインキの少なくとも約0.01〜約20重量パーセント、たとえばインキの約0.1〜約5重量パーセント、またはインキの約1〜約3重量パーセントの量で存在させることができるが、その量がこれらの範囲の外であってもよい。
【0058】
場合によっては、インキ組成物に粘度調整剤がさらに含まれていてもよい。好適な粘度調整剤の例としては、脂肪族ケトンたとえばステアロンなどが挙げられる。任意成分の粘度調整剤を存在させる場合には、それをインキ中に各種所望または有効な量、たとえばインキの約0.1〜約99重量パーセント、たとえばインキの約1〜約30重量パーセント、またはインキの約10〜約15重量パーセントの量で存在させることができるが、その量がこれらの範囲の外であってもよい。
【0059】
インキに対するその他の任意の添加剤としては以下のようなものが挙げられる:清澄剤たとえばユニオン・キャンプ(UNION CAMP)(登録商標)X37−523−235(ユニオン・キャンプ(Union Camp)から市販);粘着付与剤たとえば、フォーラル(FORAL)(登録商標)85(水素化アビエチン(ロジン)酸のグリセロールエステル)(ハーキュレス(Hercules)から市販)、フォーラル(FORAL)(登録商標)105(ヒドロアビエチン(ロジン)酸のペンタエリスリトールエステル)(ハーキュレス(Hercules)から市販)、セロリン(CELLOLYN)(登録商標)21(フタル酸のヒドロアビエチン(ロジン)アルコールエステル)(ハーキュレス(Hercules)から市販)、アラカワ(ARAKAWA)(登録商標)KE−311レジン(水素化アビエチン(ロジン)酸のトリグリセリド)(荒川化学工業(株)(Arakawa Chemical Industries,Ltd.)から市販);合成ポリテルペン樹脂たとえば、ネブタック(NEVTAC)(登録商標)2300、ネブタック(NEVTAC)(登録商標)100、およびネブタック(NEVTAC)(登録商標)80(ネビル・ケミカル・カンパニー(Neville Chemial Company)から市販)、ウィングタック(WINGTACK)(登録商標)86(変性合成ポリテルペン樹脂)(グッドイヤー(Goodyear)から市販)など;粘着剤たとえば、バーサミド(VERSAMID)(登録商標)757、759、または744(ヘンケル(Henkel)から市販);可塑剤たとえば、ユニプレックス(UNIPLEX)(登録商標)250(ユニプレックス(Uniplex)から市販)、サンティサイザー(SANTICIZER)(登録商標)の商品名でモンサント(Monsanto)から市販されているフタル酸エステル可塑剤、たとえばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸アルキルベンジル(サンティサイザー(SANTICIZER)(登録商標)278)、リン酸トリフェニル(モンサント(Monsanto)から市販)、KP−140(登録商標)(リン酸トリブトキシエチル)(FMC・コーポレーション(FMC Corporation)から市販)、モルフレックス(MORFLEX)(登録商標)150(フタル酸ジシクロヘキシル)(モルフレックス・ケミカル・カンパニー・インコーポレーテッド(Morflex Chemical Company Inc.)から市販)、トリメリット酸トリオクチル(イーストマン・コダック・カンパニー(Eastman Kodak Co.)から市販)など。そのような添加剤は、それらの用途に合わせて慣用される量で含まれていてよい。
【0060】
本発明の開示によるインキにおいて使用しうるノニオン性界面活性剤の例としては、以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールなど、およびそれらの混合物。ノニオン性界面活性剤の好適な濃度は、たとえば約0.01〜約10重量パーセントであるが、いくつかの実施態様においては約0.1〜約5重量パーセントの量である。
【0061】
好適なカチオン性界面活性剤の例としては、以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、C12、C15、C17−トリメチルアンモニウムブロミド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハライド塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリドなど、およびそれらの混合物。界面活性剤の好適な量は、たとえば約0.1〜約10重量パーセントの量が選択できるが、いくつかの実施態様においては約0.2〜約5重量パーセントの量である。特定の界面活性剤またはそれらの組合せ、さらにはそれぞれの使用量の選択は、当業者の技術範囲内である。いくつかの実施態様においては、界面活性剤が光化学的に生成される還元ラジカル源として作用して、金属ナノ粒子の形成に与ることもできる。
【0062】
さらに、脂肪酸、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーなどをインキに添加して、感光体部材を保護したり、現像性を劣化させることなく高品質を有するトナー画像を得たりすることもできる。
【0063】
本発明に開示のインキ組成物は、各種所望の、または好適な方法によって調製することができる。液状インキ組成物の場合においては、それらのインキ成分を撹拌しながら互いに混合するだけで均質な組成物を得ることも可能ではあるが、組成物を形成させるために、所望または必要であれば、加熱を使用することもまた可能である。インキ組成物を製造するためのその他の方法も当業者には公知であり、本発明の開示に基づけば自明であろう。
【0064】
本発明の開示によるインキはたとえば、水性インキ、油性インキ、溶媒系インキなどであってよい。
【0065】
インキは、上述の成分をブレンドし、その混合物を混練しながら溶融し、得られた物質を粒状化させる、各種公知の方法によって製造してもよい。さらに、重合法によってそれを製造してもよいが、それには、バインダのためのモノマーを他の成分とブレンドし、その混合物を重合させることを含む。
【0066】
本発明の開示によるインキは一般的には、適切な基材の上に印刷してもよいが、そのような基材としては、紙、ガラスアート紙、ボンド紙、板紙、クラフト紙、厚紙、半合成紙もしくはプラスチックシートたとえばポリエステルもしくはポリエチレンシートなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。それら各種の基材は、それらの自然な状態、たとえば未コーティング紙で使用することもできるし、あるいは、変化させた形態、たとえばコーティングまたは処理した紙または厚紙、印刷した紙または厚紙などで使用することもできる。
【0067】
本発明に開示のインキを基材の上に印刷するには、各種好適な印刷方法を使用することができる。たとえば、適切な方法としては、ロール−トゥ−ロール・ハイボリュームアナログ印刷方法、たとえば、グラビア、輪転グラビア、フレキソ印刷、リソグラフィ、エッチング、スクリーン印刷などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。さらには、サーモグラフィ、電子写真、エレクトログラフィ、レーザー誘導転写、インクジェット印刷、またはそれらの組合せを使用してもよい。レーザー誘導転写デジタル印刷方法を使用する場合には、そのような方法の例は、染料昇華、アブレーション、溶融転写、または膜転写である。そのインキはさらに、熱転写プリンタ、ホットメルトプリンタおよび通常の書き込み装置で使用してもよい。一つの具体的な実施態様においては、その使用方法は、インクジェット印刷である。
【0068】
適切な基材の上にインキを印刷してから、インキ中の2種金属からなるコア−シェルナノ粒子の基材に対するアニーリングを、当業者公知の適切な手段により実施することができる。一般的には、少なくとも部分的には、2種金属からなるコア−シェルナノ粒子中にシェルが存在しているために、そのアニーリングをより低温で、かつ短時間で実施することができる。このことによって、従来からの金属アニーリング手順で要求される時間および温度にはこの方法以外では耐えられなかったような、紙のような基材の上にそれらのインキを適切に使用することが可能となる。たとえば、そのアニーリングは、約200℃未満の温度で約30分間、または約150℃未満の温度で約10分間、または約120℃未満の温度で約10分間かけることで実施することができる。印刷およびアニーリング工程は一般的には、周囲雰囲気中で実施される。一般的に「周囲雰囲気」とは、不活性ガスの存在を必要としない、通常の大気雰囲気を指している。さらに、印刷およびアニーリング工程は、同時に実施しても、順次に実施してもよい。
【0069】
場合によっては、印刷工程の後に、さらなる加工工程たとえば、オーバーコーティング、乾燥および洗浄のいずれかを、単独または組み合わせて実施してもよい。
【0070】
印刷工程が完了した後の、その任意工程のオーバーコーティング工程には、各種適切なオーバーコーティングを適用してよい。たとえば、適切なオーバーコーティングを適用して、その印刷された金属配線を被覆し保護して、たとえば摩耗、化学的攻撃などから保護することができる。そのような適用をする場合には、そのオーバーコーティングは各種所望の厚み、乳白度、透明度などであってよい。
【0071】
さらに、基材の上にインキを沈降、析出させた後に、任意工程の乾燥工程を実施してもよい。いくつかの実施態様においては、80℃で約5分間かけてインキを乾燥させる。
【0072】
本発明の開示は、多くの応用可能性を提供する。本明細書に開示の印刷プロセスを使用して、電子的および電気的回路系を製造することが可能で、たとえば電子部品を電気的に相互接続することができる。さらに、本明細書に開示の印刷プロセスを使用して電気部品を印刷することも可能であるが、そのようなものとしては、抵抗器、コンデンサー、誘導器、RFIDタグ、薄膜トランジスタ電極、さらには電気回路などが挙げられる。さらに、本明細書に開示の印刷プロセスを使用して、フレキシブルな基材の上にマイクロ波ストリップ線路構造を直接印刷して、マイクロ波集積回路(MIC)およびマイクロ波アンテナを形成させることも可能である。本発明の開示に従ったプロセスを用いて各種のタイプのアンテナ、たとえば、HFコイル、UHF扇形アンテナおよび繊維を印刷することも可能であることには注目すべきである。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
0.33mMのCu(IまたはII)塩、Cu(NO、および1.0mMのイルガキュア(Irgacure)2959(α−ヒドロキシケトン光重合開始剤)を含む石英キュベットを、Arを用いて5分間脱気させる。その溶液を、フュージョン・UV・ライトハンマー(Fusion UV Lighthammer)6露光ユニット(典型的出力:UVB:1.8W/cm;UVA:1.9W/cm)を使用して、15秒間照射すると、230nmの平均粒子直径を有するCuコア粒子が形成される。
【0075】
コア粒子のこの懸濁液に、HAuClおよびイルガキュア(Irgacure)2959を含む水溶液を、それぞれの最終濃度が0.33mMおよび約1mMとなるような量で添加する。この新しい溶液に、フュージョン・UV・ライトハンマー(Fusion UV Lighthammer)6露光ユニットを使用して再度15〜90秒間照射して、金の金属の層を析出させるためのシードとして懸濁状態の銅のコア粒子を機能させて、2種金属からなるコア−シェル粒子を生成させる。得られたCu/Agコア−シェル粒子を、TEMにより確認する。それらの粒子を集め、インクジェット印刷に適した溶媒の中に再懸濁させる。
【0076】
0.33mMのCu(IまたはII)塩および1.0mMのイルガキュア(Irgacure)2959(α−ヒドロキシケトン光重合開始剤)を含む石英キュベットを、フュージョン・UV・ライトハンマー(Fusion UV Lighthammer)6露光ユニット(典型的出力:UVB:1.8W/cm;UVA:1.9W/cm)を使用して、10〜60秒間照射して、Cuコア粒子を形成させる。0.33mMのHAuClおよび1.0mMのイルガキュア(Irgacure)2959(α−ヒドロキシケトン光重合開始剤)を含む別の石英キュベットを、フュージョン・UV・ライトハンマー(Fusion UV Lighthammer)6露光ユニットを使用して、10〜90秒間照射して、より小さなサイズの金の粒子を形成させる。遠心分離よってそれらの粒子を集め、キシレン中で共に再懸濁させて、コア対シェルが約9:1の比率になるようにする。その粒子は、金の粒子の層で囲まれた銅のコアを有する2種金属からなるコア−シェルナノ粒子を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属物質のコアおよび第二の金属物質のシェルを含む2種金属からなるコア−シェル金属ナノ粒子を形成する方法であって、
前記第一の金属物質の金属ナノ粒子コアを光化学的に製造する工程と、
前記コアの周りに前記第二の金属物質のシェルを形成させる工程と、
を含むことを特徴とするコア−シェル金属ナノ粒子を形成する方法。
【請求項2】
インキを形成する方法であって、
請求項1に記載の方法によって、2種金属からなるコア−シェル金属ナノ粒子を形成させる工程と、
前記2種金属からなるコア−シェル金属ナノ粒子をインキの中に配合する工程と、
を含むことを特徴とするインキを形成する方法。

【公開番号】特開2009−293126(P2009−293126A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128749(P2009−128749)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】