説明

コアの採取方法

【課題】 二重管構造のサンプラーを用いてコアを採取するに際し、少量の掘進用水でスライムを確実に排出しながら良質のコアを円滑且つ能率的に採取する。
【解決手段】 掘削ビットとしてダイヤモンド粉末と金属粉末を混合して焼結したインプリグネイテッド型ビットを用い、ボーリング装置としてボーリングロッドとその駆動源の出力軸を同一回転軸上に配置できる構造のものを用い、ボーリングロッドの回転速度を地質が土砂の場合は300rpm、地質が硬岩の場合は1400rpmに設定し、掘進用水として増粘剤を80〜120mL/100Lの割合で混合したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管構造のサンプラーを用いたコアの採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先端に掘削ビットを備えた回転自在の外管とコアを収容する非回転の内管で構成された二重管構造のサンプラーをボーリングロッドの先端に取り付け、ボーリングロッドを回転させて掘進方向へ荷重しながら掘削ビットで地盤を掘削し、掘削と並行して掘進用水をボーリングロッド内及び外管と内管の間を通じて送水して切羽へ吐出し、スライムを外管と孔壁の間を通じて掘進用水で排出させながらコアを内管へ収容するコアの採取方法が公知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来技術ではボーリングロッドの回転速度が100rpmと低速で大きな荷重をかけながら掘削するから、粒径の大きいスライムが生じるとともに掘削時の衝撃も大きいものとなる。したがって、スライムを排出するために多量の掘進用水が必要になるとともに衝撃がコアや削孔に伝わり、コアの欠損や流出及び孔壁の崩落等を生じさせて掘進能率やコア採取率を低下させていた。
【特許文献1】特開平8−4468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、少量の掘進用水でスライムを確実に排出しながら良質のコアを円滑且つ能率的に採取できるコアの採取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 先端に掘削ビットを備えた回転自在の外管とコアを収容する非回転の内管で構成された二重管構造のサンプラーをボーリングロッドの先端に取り付け、ボーリングロッドを回転させて掘進方向へ荷重しながら掘削ビットで地盤を掘削し、掘削と並行して掘進用水をボーリングロッド内及び外管と内管の間を通じて送水して切羽へ吐出し、スライムを外管と孔壁の間を通じて掘進用水で排出させながらコアを内管へ収容するようにしたコアの採取方法において、掘削ビットとしてダイヤモンド粉末と金属粉末を混合して焼結したインプリグネイテッド型ビットを用い、ボーリングロッドの回転速度を地質が土砂の場合に300〜800rpmに設定し、掘進用水として増粘剤を100〜120mL/100Lの割合で混合したものを用いたことを特徴とする、コアの採取方法
2) 先端に掘削ビットを備えた回転自在の外管とコアを収容する非回転の内管で構成された二重管構造のサンプラーをボーリングロッドの先端に取り付け、ボーリングロッドを回転させて掘進方向へ荷重しながら掘削ビットで地盤を掘削し、掘削と並行して掘進用水をボーリングロッド内及び外管と内管の間を通じて送水して切羽へ吐出し、スライムを外管と孔壁の間を通じて掘進用水で排出させながらコアを内管へ収容するようにしたコアの採取方法において、掘削ビットとしてダイヤモンド粉末と金属粉末を混合して焼結したインプリグネイテッド型ビットを用い、ボーリングロッドの回転速度を地質が硬岩の場合に800〜3000rpmに設定し、掘進用水として増粘剤を80〜100mL/100Lの割合で混合したものを用いたことを特徴とする、コアの採取方法
3) ボーリング装置として、ボーリングロッドとその駆動源の出力軸を同一回転軸上に配置できる構造のものを用いた、前記1)又は2)記載のコアの採取方法
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ボーリングロッドを従来技術と比較して3〜30倍と高速回転させて掘削するから、必要な荷重が約1/10に低減され、掘削時の衝撃を大幅に抑制してコア採取率が向上する。また、低荷重高速回転によりスライムの粒径が小さくなるから、スライムの排出に必要な掘進用水の送水量も増粘化で大幅に低減され、孔壁の崩落やコアの欠損・流出を防止して良質のコアを円滑且つ能率良く採取できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、増粘剤を80〜120mL/100Lの割合で混合する。80mL以下であるとスライムの排出が十分で無く、外管と孔壁の間にスライムが詰まるという問題があり、120mL以上だとスライムの排出速度が遅く、掘進能率が低下するという問題がある。増粘剤としてはアクリルポリマーなど市販されている一般的なものが使用できる。ボーリング装置としてボーリングロッドとその駆動源の出力軸を同一回転軸上に配置できる構造のものを用いると、掘削深さが深くてもボーリングロッドが歪曲され難く、先端のサンプラーの振動を抑制してコアの品質を維持できる。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は実施例のボーリング装置の説明図、図2は実施例のボーリング装置の拡大説明図、図3は実施例の掘進用水の流れを示す説明図である。図中、1はロッドホルダー、1aはペダル、2はベース、2aはウインチ台、2bはジャッキ、3は昇降用フレーム、3aはラック、4は電動コアドリル、4aは加圧用レバー、4bは回転部、5はボーリングロッド、5aは分割ロッド、6はサンプラー、6aは掘削ビット、6bは外管、6cは内管、6dは流路、7はウインチ、7aは巻取部、8はやぐら、9は滑車、10はワイヤー、11は発電機、12はアンカー、13はホース、Cはコア、Gは地盤、Gaはスライム、Hは削孔、Haは切羽、Hbは孔壁、Wは掘進用水である。
【0009】
本実施例のボーリング装置は、図1に示すようにロッドホルダー1を備えたベース2上に垂直の昇降用フレーム3を脱着自在に取り付け、昇降用フレーム3に下降用の加圧用レバー4aを備えた下向きの電動コアドリル4を昇降自在且つ脱着自在に取り付け、電動コアドリル4の回転部4bにボーリングロッド5をロッドホルダー1を通じて脱着自在に連結し、ボーリングロッド5の先端にサンプラー6を取り付けている。
【0010】
ロッドホルダー1はペダル1aを取り付けて操作性を向上している。ベース2にはその上面の水平レベルを調節するジャッキ2bを四脚に備えており、掘進時に半力不足でずれないようにアンカー12で地盤Gに固定されている。昇降用フレーム3にはラック3aが刻設されており、加圧用レバー4aの回転で電動コアドリル4の図示しないギヤがラック3aと歯合しながら昇降用フレーム3に沿って昇降できるようにしている。
【0011】
電動コアドリル4は300/800/1400rpmの切替式で、回転部4bに外部から供給した掘進用水Wをボーリングロッド5内に給水するホース13を接続している。ボーリングロッド5は複数の分割ロッド5aを掘進深さに応じて連結している。やぐら8は分割可能な三脚パイプで、その頂上部から吊下した滑車9にウインチ7の巻取部7aからのワイヤー10を巻架し、サンプラー6の引き上げ時に用いられる。
【0012】
サンプラー6は、ダイヤモンド粉末と金属粉末を混合して焼結したインプリグネイテッド型の掘削ビット6aと、回転自在の外管6bと、コアCを収容する非回転の内管6cとで構成され、外管6bと内管6cの間には、ボーリングロッド5内を通じて供給した掘進用水Wを送水するための流路6dが形成されている。外管6bの後端はボーリングロッド5の先端と直結している。掘進用水Wはアクリルポリマーからなる増粘剤を100mL/100Lの割合で混合している。
【0013】
本実施例では、発電機11で給電しながら電動コアドリル4を駆動させてボーリングロッド5を回転させ、加圧用レバー4aを下降操作してサンプラー6を地中に圧入するとともに、ホース13及びボーリングロッド5を通じて掘進用水Wを給水し、掘削ビット6aで地盤Gを掘削しながら掘進用水Wを流路6dを通じて切羽Haへ吐出する。ボーリングロッド5の回転速度は、地質が土砂の場合は300rpmに、地質が硬岩の場合は1400rpmに切り替える。
【0014】
図3に示すように、吐出した掘進用水Wは掘削ビット6aを冷却するとともに外管6bの外方へ流れ、スライムGaはその掘進用水Wの流れで外管6bと孔壁Hbの間に運搬されて上昇しながら排出される。孔壁Hbは掘進用水Wの粘性で崩落が防止される。掘進用水Wの一部は内管6cの内側にも流れ、内管6cとコアCの間に適度な粘性の皮膜水が形成されてコアCの挿入を円滑にする。掘進用水Wの吐出速度は粘性で緩和され、内管6c内のコアの流出を防止する。
【0015】
スライムGaの粒径は高速回転による掘削で0.1mm以下の微粉状となり、スライムGaの排出に必要な掘進用水Wの送水量が増粘化で大幅に低減される。従来技術では孔径を67mmとした場合、粒径0.1mm以下のスライムを排出するのに理論上およそ12L/minの送水量が必要であるが、本実施例では2〜7L/minで十分であった。また、従来技術では孔径67mmで100rpmとした場合、50〜450kgの荷重が必要であったが、本実施例では5〜15kgで従来技術と同等の掘進能率を確保できた。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のコアの採取方法は、垂直方向のコア採取に最も効果を発揮するが、掘削角度には制限されず、様々な地質のコア採取に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例のボーリング装置の説明図である。
【図2】実施例のボーリング装置の拡大説明図である。
【図3】実施例の掘進用水の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ロッドホルダー
1a ペダル
2 ベース
2a ウインチ台
2b ジャッキ
3 昇降用フレーム
3a ラック
4 電動コアドリル
4a 加圧用レバー
4b 回転部
5 ボーリングロッド
5a 分割ロッド
6 サンプラー
6a 掘削ビット
6b 外管
6c 内管
6d 流路
7 ウインチ
7a 巻取部
8 やぐら
9 滑車
10 ワイヤー
11 発電機
12 アンカー
13 ホース
C コア
G 地盤
Ga スライム
H 削孔
Ha 切羽
Hb 孔壁
W 掘進用水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削ビットを備えた回転自在の外管とコアを収容する非回転の内管で構成された二重管構造のサンプラーをボーリングロッドの先端に取り付け、ボーリングロッドを回転させて掘進方向へ荷重しながら掘削ビットで地盤を掘削し、掘削と並行して掘進用水をボーリングロッド内及び外管と内管の間を通じて送水して切羽へ吐出し、スライムを外管と孔壁の間を通じて掘進用水で排出させながらコアを内管へ収容するようにしたコアの採取方法において、掘削ビットとしてダイヤモンド粉末と金属粉末を混合して焼結したインプリグネイテッド型ビットを用い、ボーリングロッドの回転速度を地質が土砂の場合に300〜800rpmに設定し、掘進用水として増粘剤を100〜120mL/100Lの割合で混合したものを用いたことを特徴とする、コアの採取方法。
【請求項2】
先端に掘削ビットを備えた回転自在の外管とコアを収容する非回転の内管で構成された二重管構造のサンプラーをボーリングロッドの先端に取り付け、ボーリングロッドを回転させて掘進方向へ荷重しながら掘削ビットで地盤を掘削し、掘削と並行して掘進用水をボーリングロッド内及び外管と内管の間を通じて送水して切羽へ吐出し、スライムを外管と孔壁の間を通じて掘進用水で排出させながらコアを内管へ収容するようにしたコアの採取方法において、掘削ビットとしてダイヤモンド粉末と金属粉末を混合して焼結したインプリグネイテッド型ビットを用い、ボーリングロッドの回転速度を地質が硬岩の場合に800〜3000rpmに設定し、掘進用水として増粘剤を80〜100mL/100Lの割合で混合したものを用いたことを特徴とする、コアの採取方法。
【請求項3】
ボーリング装置として、ボーリングロッドとその駆動源の出力軸を同一回転軸上に配置できる構造のものを用いた、請求項1又は2記載のコアの採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−248553(P2008−248553A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90695(P2007−90695)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(501410779)九州電技開発株式会社 (8)
【Fターム(参考)】