説明

コア付きブラシレスモータ及びディスク駆動装置

【課題】モータベースの撓みを抑制してディスク上でのヘッドのオフトラックを防止する。
【解決手段】ディスクDの半径方向に移動自在なヘッド34により情報信号の記録又は再生を行うディスクを回転可能に搭載するためのコア付きブラシレスモータ10において、ティース部13bを円環状コア部13aからコイル駆動相数の整数倍の数量だけ複数放射状に突出させたステータコア13の各ティース部13bにモータ駆動用コイル14を巻回させる際に、モータベース11上にティース部に巻回したコイル14を侵入させるコイル逃げ孔11b1をティース部の数量に対してコイル駆動相数×N(Nは自然数)だけ削減した個数形成し、且つ、コイル逃げ孔が形成されていない部位と対応するティース部へのモータ駆動用コイルの巻線数を、コイル逃げ孔が形成されている部位と対応するティース部へのモータ駆動用コイルの巻線数よりも少なく設定するか又はゼロに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクや光ディスクなどのディスクを回転駆動するためのコア付きブラシレスモータ及びこのコア付きブラシレスモータを取り付けたディスク駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コア付きブラシレスモータは、固定側となるステータと、このステータに対して回転側となるロータとで構成されており、具体的には、モータ軸と、モータ軸に回転可能に支持された回転体と、回転体の周面に沿って固着されてこの回転体と一体に回転するモータ駆動用円環状磁石と、モータ駆動用円環状磁石に対して僅かな隙間を隔てて対向し且つ複数のモータ駆動用コイルを巻回させたステータコアと、モータ軸を回転可能に支持するか又は固定して支持し、且つ、ステータコアを取り付けるモータベースとを備えている。
【0003】
そして、この種のコア付きブラシレスモータは、電子機器の回転駆動源として多用されているが、この種のコア付きブラシレスモータをディスク駆動装置に適用して、ロータ側の回転体にハードディスクや光ディスクなどのディスクを取り付けて、コア付きブラシレスモータ及びディスク駆動装置に対して薄型化を図る場合に、ロータ側の回転体の周面に沿って固着させたモータ駆動用円環状磁石と僅かな隙間を隔てて対向して複数のティース部を円環状コア部から放射状に突出させたステータコアをモータベース上に取り付け、且つ、複数のティース部に巻かれた複数のモータ駆動用コイルの各一部をモータベースに穿設した複数のコイル逃げ孔内に侵入させたものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−38115号公報
【特許文献2】特開2006−196139号公報
【0004】
ここで、上記した特許文献1(特開平5−38115号公報)に開示されたスピンドルモータについて、ここでの図示を省略して、特許文献1を参照して簡略に説明すると、このスピンドルモータは、モータベース(ベースプレート)の略中心部に突出形成した円筒部に一端部が内嵌された軸部材と、この軸部材に軸受けを介して回転自在に枢支されるハブと、ハブの外周面に固着させたロータマグネットと、ロータマグネットと対向してモータベースに取り付けられたステータコアと、ステータコアに巻かれた複数のモータ駆動用コイルとを備えて構成した際に、モータベース上に円周方向に沿って所定ピッチにて複数のコイル逃げ孔(窓部)を開設すると共に、ステータコアに巻かれた複数のモータ駆動用コイルの一部をこれに対応する各コイル逃げ孔内に侵入させることで、モータベースの肉厚寸法を薄くすることなく、コイル逃げ孔内にモータ駆動用コイルの一部が侵入した分だけ、スピンドルモータの軸方向長さを薄型化できる旨が記載されている。
【0005】
また、上記した特許文献2(特開2006−196139号公報)に開示されたディスク駆動装置について、ここでの図示を省略して、特許文献2を参照して簡略に説明すると、このディスク駆動装置は、モータベースと、モータベースの略中央部に配設された円筒状の軸受保持部と、軸受保持部の内部に保持された軸受部と、軸受保持部の周囲に配設されたステータコアと、軸受部に軸支された回転軸と、回転軸に固定されたターンテーブルと、ターンテーブルの外周部に配設された環状のロータヨークと、ロータヨークの内側にステータコアに対向して配設された環状のマグネットと、ターンテーブルのモータベースに対向する面と反対側の面の中央部に配設されたディスク保持部とを備えて構成した際に、ステータコアに巻かれた複数のモータ駆動用コイルの各一部が侵入される複数のコイル逃げ孔(開口部)をモータベース上に形成することで、コイル逃げ孔内にモータ駆動用コイルの一部が侵入した分だけ、モータベースを軽量化して装置全体を軽量化できると共に、装置全体として薄型化が可能になる旨が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1,2に記載された技術的思想を適用した従来のコア付きブラシレスモータ及びこの従来のコア付きブラシレスモータを取り付けたディスク駆動装置について、図5〜図7を用いて簡略に説明する。
【0007】
図5は従来のコア付きブラシレスモータを説明するために、図6中のO−X2線に沿って断面した縦断面図、
図6は従来のコア付きブラシレスモータを取り付けた従来のディスク駆動装置の底面図、
図7は従来のコア付きブラシレスモータおいて、モータ軸に略直交したヘッドの移動軌跡方向に加速度を加えたときにモータベースが変形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【0008】
図5及び図6に示した如く、従来のコア付きブラシレスモータ100は、ディスク駆動用として薄型に構成されている。
【0009】
そして、従来のコア付きブラシレスモータ100は、従来のディスク駆動装置120の外観を構成する略箱状の筐体121内に後述する磁気ヘッド124の移動軌跡に対応して予め位置決めして取り付けられており、且つ、このコア付きブラシレスモータ100にディスクDが回転自在に搭載されている。
【0010】
この際、ディスクDとしてハードディスクを適用した場合には、筐体121内に設けたアーム支持軸122に揺動自在に支持されたアーム123の先端に固着された磁気ヘッド124がハードディスクの半径方向に移動し、ハードディスクに対して磁気ヘッド124により情報信号の記録又は再生が行われている。
【0011】
ここで、図5に示したように、従来のコア付きブラシレスモータ100は、固定側となるステータSと、ステータS側に対して回転側となるロータRとにより構成されている。
【0012】
まず、上記した従来のコア付きブラシレスモータ100において、固定側となるステータS側では、モータベース101が電気亜鉛メッキ鋼板などを用いてこの中心部位に上方に突出した円環部101aと、円環部101aの外周に連接して下方に向かって凹カップ状に引込ませた凹カップ部101bと、この凹カップ部101bよりも外周側で上方に突出させた円形状鍔部101cとで鍔付き凹カップ状に形成されている。
【0013】
この際、図5及び図6に示したように、モータベース101の凹カップ部101b上には複数のコイル逃げ孔101b1が円周方向に沿って放射状に略等間隔で矩形状に貫通して穿設されており、後述するモータ駆動用コイル104のコイル駆動相数が例えば3相で9スロットの場合に9個のコイル逃げ孔101b1が穿設されている。
【0014】
この際、9個のコイル逃げ孔101b1のうちで一のコイル逃げ孔101b1がモータベース101上でモータ軸108の中心Oを通り且つ磁気ヘッド124側に設定したO−X2線上に穿設されているものとすると、このO−X2線上に穿設された一のコイル逃げ孔101b1は磁気ヘッド124の移動軌跡の方向に略沿っているものである。
【0015】
また、モータベース101の中心部位に形成した円環部101a内には、円環状の軸受け部材102が嵌着されており、この軸受け部材102の内面にヘリングボーン形状などを用いた流体動圧溝102a,102bが軸方向の上下に分かれて形成されている。
【0016】
また、モータベース101の凹カップ部101b内の外周側には、珪素鋼板などを積層したステータコア103が固着されており、このステータコア103は円環状コア部103aが外周側に形成され、且つ、この円環状コア部103aから円周を等分して9個のティース部103bが内周側に向かって放射状に形成されている。
【0017】
また、ステータコア103に形成した9個のティース部103bにモータ駆動用コイル104がそれぞれ巻かれており、且つ、9個のモータ駆動用コイル104の各一部がモータベース101の凹カップ部101b上に形成した9個のコイル逃げ孔101b1内に侵入することで薄型化が図られている。
【0018】
次に、上記した回転側のロータR側では、アルミ材からなる回転体(以下、ロータ用ハブと記す)107の中心部位に穿設した中心孔107a内にステンレス製のモータ軸108が一体的に固着されて、このモータ軸108がステータS側の軸受け部材102の流体動圧溝102a,102bに回転自在に嵌合していると共に、モータ軸108の下端部にスラスト荷重を受けるステータS側のスラストプレート105とこのスラストプレート105を補強する補強板106とが取り付けられている。
【0019】
また、ロータ用ハブ107の裏面側の中心部に凹状に形成した裏面中心凹部107b内に、ステータS側に設けた軸受け部材102の上方部位が臨んでいる。
【0020】
また、ロータ用ハブ107の外周は、下方に小径部107cが形成され、且つ、小径部107cより上方に大径部107dが形成されていると共に、大径部107dより上方に中径部107eが形成されている。
【0021】
そして、ロータ用ハブ17の小径部17cの外周面にモータ駆動用円環状磁石109が固着され、且つ、このモータ駆動用円環状磁石109に対してステータコア103に形成した9個のティース部103bが僅かな隙間を隔てて対向している。
【0022】
また、ロータ用ハブ107の大径部107d上に下層のディスクDが搭載され、この下層のディスクD上にロータ用ハブ107の中径部107eに嵌め込んだ円環状スペーサ110を介して上層のディスクDが搭載されており、且つ、上層のディスクD上をクランパ111で押さえ、更に、このクランパ111をネジ112によりモータ軸108に固定している。
【0023】
そして、上記のように構成した従来のコア付きブラシレスモータ100を動作させて、ロータ用ハブ107に搭載したディスクDに対して筐体111内のアーム支持軸122に揺動自在に支持された磁気ヘッド124により情報信号の記録又は再生を行うにあたって、図5に示したように、従来のコア付きブラシレスモータ100に対して外部からの衝撃や振動が加えられない場合には、ディスクD上で磁気ヘッド124を所定のトラックにオントラックすることができる。
【0024】
しかしながら、図7に示したように、従来のコア付きブラシレスモータ100に対して外部からの衝撃や振動が加えられて、モータ軸108に対して略直交して磁気ヘッド124の移動軌跡に略沿う方向の加速度FAが付与されると、前述したように、モータベース101の凹カップ部101b上に穿設された複数のコイル逃げ孔101b1のうちで一のコイル逃げ孔101b1が磁気ヘッド124の移動軌跡と略同じ方向(O−X2線方向)に向かって穿設されているために、上記した加速度FAによってモータベース101上で磁気ヘッド124の移動軌跡に略沿う方向に撓みが発生し、これによりディスクDと磁気ヘッド124との相対位置関係にずれが生じるので、ディスクD上で磁気ヘッド124が所定のトラックからずれてオフトラックが生じてしまうために、情報信号の記録又は再生を良好に行うことができなくなるなどの問題が生じている。
【0025】
そこで、コア付きブラシレスモータ及びこのコア付きブラシレスモータを取り付けたディスク駆動装置に対して薄型化を図るために、ステータコアに巻かれた複数のモータ駆動用コイルの一部をこれに対応する各コイル逃げ孔内に侵入させる際に、モータ軸に対して略直してヘッドの移動軌跡に略沿う方向の加速度が付与されても、モータベースに撓みが生じることなく、ディスク上でヘッドが所定のトラックからずれてオフトラックが生じることがないコア付きブラシレスモータ及びこのコア付きブラシレスモータを取り付けたディスク駆動装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、ディスクの半径方向に移動自在なヘッドにより情報信号の記録又は再生を行う前記ディスクを回転可能に搭載するためのコア付きブラシレスモータにおいて、
モータ軸と、
前記モータ軸に回転可能に支持され、前記ディスクを搭載するための回転体と、
前記回転体の周面に沿って固着されて、この回転体と一体に回転するモータ駆動用円環状磁石と、
前記モータ駆動用円環状磁石に対して僅かな隙間を隔てて対向し且つモータ駆動用コイルを巻回させるためのティース部を円環状コア部からコイル駆動相数の整数倍の数量だけ複数放射状に突出させたステータコアと、
前記モータ軸を回転可能に支持するか又は固定して支持し、且つ、前記ステータコアを取り付けると共に、前記ティース部に巻回した前記モータ駆動用コイルを侵入させるコイル逃げ孔を前記ティース部の数量に対して前記コイル駆動相数×N(但し、Nは1以上の自然数)だけ削減した個数形成したモータベースとを備え、
前記コイル逃げ孔が形成されていない部位と対応する前記ティース部への前記モータ駆動用コイルの巻線数を、前記コイル逃げ孔が形成されている部位と対応する前記ティース部への前記モータ駆動用コイルの巻線数よりも少なく設定するか又はゼロに設定したことを特徴とするコア付きブラシレスモータである。
【0027】
また、第2の発明は、上記した第1の発明のコア付きブラシレスモータにおいて、
前記コイル逃げ孔は、前記モータベース上で前記モータ軸と直交し且つこのモータ軸の中心を通って前記ヘッドの移動軌跡と略同じ方向に位置する一の線上、及び/又は、前記一の線を挟んだ両側近傍に形成しないことを特徴とするコア付きブラシレスモータである。
【0028】
更に、第3の発明は、第1又は第2の発明のコア付きブラシレスモータを内部に取り付ける筐体と、
前記コア付きブラシレスモータの前記回転体上に搭載された前記ディスクに対して情報信号の記録又は再生を行うヘッドとを備えたことを特徴とするディスク駆動装置である。
【発明の効果】
【0029】
上記した第1,第2の発明のコア付きブラシレスモータによると、ディスクの半径方向に移動自在なヘッドにより情報信号の記録又は再生を行うディスクを回転可能に搭載するためのコア付きブラシレスモータにおいて、とくに、ティース部を円環状コア部からコイル駆動相数の整数倍の数量だけ複数放射状に突出させたステータコアの各ティース部にモータ駆動用コイルをそれぞれ巻回させる際に、モータベース上にティース部に巻回したモータ駆動用コイルを侵入させるコイル逃げ孔をティース部の数量に対してコイル駆動相数×N(但し、Nは1以上の自然数)だけ削減した個数形成し、且つ、コイル逃げ孔が形成されていない部位と対応するティース部へのモータ駆動用コイルの巻線数を、コイル逃げ孔が形成されている部位と対応するティース部へのモータ駆動用コイルの巻線数よりも少なく設定するか又はゼロに設定しているので、この結果、コア付きブラシレスモータに対して外部からの衝撃や振動が加えられて、モータ軸に対して略直交してヘッドの移動軌跡に略沿う方向の加速度が付与されても、コイル逃げ孔が形成されていない分だけモータベースの剛性が高まるので、これによりモータベースに撓みが発生しないためにディスクとヘッドとの相対位置関係にずれが生じることがなくなり、ディスク上でヘッドを所定のトラックに確実にオントラックさせることができる。この際、コイル逃げ孔は、モータベース上でヘッドの移動軌跡と略同じ方向に位置する一の線上、及び/又は、一の線を挟んだ両側近傍にコイル逃げ孔が形成されていないので、モータベースに撓みが発生せず、信頼性の良いコア付きブラシレスモータを提供できる。
【0030】
また、上記した第3の発明のディスク駆動装置によると、とくに、第1又は第2の発明のコア付きブラシレスモータを筐体内に取り付けているので、上記した第1,第2の発明と同様な効果が得られるので、ディスク上でヘッドにより情報信号の記録又は再生を良好且つ確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明に係るコア付きブラシレスモータ及びディスク駆動装置の一実施例について、図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0032】
図1は本発明に係るコア付きブラシレスモータを説明するために、図3中のO−X1線に沿って断面した縦断面図、
図2は本発明に係るコア付きブラシレスモータを説明するために、図3中のO−Y1線及びO−Y2線に沿って断面した縦断面図、
図3(a)は本発明に係るコア付きブラシレスモータを取り付けた本発明に係るディスク駆動装置の底面図を示し、(b)はコイル逃げ孔近傍を拡大して示した図である。
【0033】
図1〜図3に示した如く、本発明に係るコア付きブラシレスモータ10は、ディスク駆動用としてコイル駆動相数が例えば3相で9スロットとして薄型に構成されている。
【0034】
そして、本発明に係るコア付きブラシレスモータ10は、本発明に係るディスク駆動装置30の外観を構成する略箱状の筐体31内に後述する磁気ヘッド34の移動軌跡に対応して予め位置決めして取り付けられており、且つ、このコア付きブラシレスモータ10にディスクDが回転自在に搭載されている。
【0035】
この際、ディスクDとしてハードディスクを適用した場合には、筐体31内に設けたアーム支持軸32に揺動自在に支持されたアーム33の先端に固着された磁気ヘッド34がハードディスクの半径方向に移動し、ハードディスクに対して磁気ヘッド34により情報信号の記録又は再生が行われている。
【0036】
尚、ディスクDとして光ディスクを適用した場合には、筐体31内に不図示の光学ヘッドを光ディスクの半径方向に直線移動自在に設ければ良いものである。
【0037】
ここで、図1及び図2に示したように、本発明に係るコア付きブラシレスモータ10は、固定側となるステータSと、ステータS側に対して回転側となるロータRとにより構成されている。
【0038】
まず、上記した本発明に係るコア付きブラシレスモータ10において、固定側となるステータS側では、モータベース11が電気亜鉛メッキ鋼板などを用いてこの中心部位に上方に突出した円環部11aと、円環部11aの外周に連接して下方に向かって凹カップ状に引込ませた凹カップ部11bと、この凹カップ部11bよりも外周側で上方に突出させた円形状鍔部11cとで鍔付き凹カップ状に形成されている。
【0039】
この際、図1及び図3(a)に示したように、モータベース11の凹カップ部11b上でモータ軸18の中心Oを通るX1−O−X2線上にはコイル逃げ孔が形成されてなく、このX1−O−X2線上は磁気ヘッド34の移動軌跡の方向に略沿って設定されていると共に、X1−O−X2線を挟んだ両側近傍にもコイル逃げ孔が形成されていない。
【0040】
一方、図2及び図3(a),(b)に示したように、モータベース11の凹カップ部11b上でモータ軸18の中心Oを通るX1−O−X2線を挟んだ両側にそれぞれ3個(合計6個)のコイル逃げ孔11b1が円周方向に沿って矩形状に貫通して穿設されている。
【0041】
図1及び図2に戻り、モータベース11の中心部位に形成した円環部11a内には、円環状の軸受け部材12が嵌着されており、この軸受け部材12の内面にヘリングボーン形状などを用いた流体動圧溝12a,12bが軸方向の上下に分かれて形成されている。
【0042】
また、モータベース11の凹カップ部11b内の外周側には、珪素鋼板などを積層したステータコア13が固着されており、このステータコア13は円環状コア部13aが外周側に形成され、且つ、コイル駆動相数が3相で9スロットの場合には円環状コア部13aから円周を9等分して9個のティース部13bが内周側に向かって放射状に形成されている。
【0043】
この際、ステータコア13のティース部13bの数量は、一般的に後述する複数のモータ駆動用コイル14を駆動するコイル駆動相数の整数倍に設定されているので、コイル駆動相数が3相であれば、ティース部13bの数量が6個又は9個もしくは12個となるがこの実施例では9スロットと対応してティース部13bの数量が9個である。
【0044】
また、9個のティース部13bのうちで一のティース部13bは、モータベース11上でモータ軸18の中心Oを通り且つ磁気ヘッド34とは反対側に設定したO−X1線に沿って配置されており、この一のティース部13bを基準として他の8個のティース部13bが円周に沿って40°間隔で配置されているので、モータベース11上でモータ軸18の中心Oを通り且つ磁気ヘッド34側に設定したO−X2線上にはティース部13bが配置されないことになる。
【0045】
また、ステータコア13に巻かれる複数のモータ駆動用コイル14は、コイル駆動相数が3相で9スロットの場合に、一般的に、U相用の3個のコイルU1,U2,U3と、V相用の3個のコイルV1,V2,V3と、W相用の3個のコイルW1,W2,W3とで合計9個のコイルとなるが、この実施例では図3に示したように各相(U相,V相,W相)のうちで例えばコイルU1,V1,W1に対して他のコイルU2,U3,V2,V3,W2,W3よりも巻線数をそれぞれ略同量減らすか、もしくは、コイルU1,V1,W1の巻線数をそれぞれゼロに設定しており、このように各相(U相,V相,W相)から巻線数を略同量削減又はゼロに設定することで、トルクリップルが悪化しないようになっている。
【0046】
そして、図3(a)に示したように、巻線数を削減またはゼロに設定したコイルW1をO−X1線に沿って配置した一のティース部13bに巻回させ、且つ、巻線数を削減またはゼロに設定したコイルU1,V1をO−X2線を挟んだ両側近傍に±20°対称に離れて配置した各ティース部13bに巻回させているので、コイルW1,U1,V1に対してモータベース11の凹カップ部11b上にコイル逃げ孔を穿設する必要がなくなり、これにより磁気ヘッド34の移動軌跡と略同じ方向となるモータベース11の凹カップ部11bのX1−O−X2線上及びこのX1−O−X2線を挟んだ両側近傍にコイル逃げ孔が形成されていないことになる。
【0047】
一方、図3(a),(b)に示したように、モータベース11上でモータ軸18の中心Oを通るX1−O−X2線を挟んだ一方側にはコイルW1,U1,V1よりも巻線数の多いコイルU3,V3,W2が各ティース部13bに巻回した状態で配置され、且つ、X1−O−X2線を挟んだ他方側にもコイルW1,U1,V1よりも巻線数の多いコイルV2,U2,W3が各ティース部13bに巻回した状態で配置され、これらのコイルU3,V3,W2,V2,U2,W3はモータベース11の凹カップ部11b上に形成した合計6個のコイル逃げ孔11b1内に侵入しているので、コア付きブラシレスモータ10及びディスク駆動装置30に対して薄型化が可能になっている。
【0048】
上記に伴って、モータベース11の凹カップ部11b上に形成されるコイル逃げ孔11b1の個数は、下記の式1で表すことができる。
【0049】
[数1]
コイル逃げ孔の個数={ティース部の数量−(コイル駆動相数×N)} …式1
但し、Nは1以上の自然数である。
【0050】
即ち、この実施例のようにコイル駆動相数が3相で9スロットの場合に、上記した式1に、ティース部の数量=9,コイル駆動相数=3,N=1として代入すれば、コイル逃げ孔11b1が6個だけ穿設されることになり、ティース部13bの数量に対してコイル逃げ孔11b1がコイル駆動相数×N(但し、Nは1以上の自然数)だけ削減した個数だけモータベース11の凹カップ部11b上に形成されることになる。
【0051】
次に、上記した本発明に係るコア付きブラシレスモータ10において、回転側のロータR側では、アルミ材からなる回転体(以下、ロータ用ハブと記す)17の中心部位に穿設した中心孔17a内にステンレス製のモータ軸18が一体的に固着されて、このモータ軸18がステータS側の軸受け部材12の流体動圧溝12a,12bに回転自在に嵌合していると共に、モータ軸18の下端部にスラスト荷重を受けるステータS側のスラストプレート15とこのスラストプレート15を補強する補強板16とが取り付けられている。
【0052】
また、ロータ用ハブ17の裏面側の中心部に凹状に形成した裏面中心凹部17b内に、ステータS側に設けた軸受け部材12の上方部位が臨んでいる。
【0053】
また、ロータ用ハブ17の外周は、下方に小径部17cが形成され、且つ、小径部17cより上方に大径部17dが形成されていると共に、大径部17dより上方に中径部17eが形成されている。
【0054】
そして、ロータ用ハブ17の小径部17cの外周面にモータ駆動用円環状磁石19が固着され、且つ、このモータ駆動用円環状磁石19に対してステータコア13に形成した9個のティース部13bが僅かな隙間を隔てて対向している。
【0055】
また、ロータ用ハブ17の大径部17d上に下層のディスクDが搭載され、この下層のディスクD上にロータ用ハブ17の中径部17eに嵌め込んだ円環状スペーサ20を介して上層のディスクDが搭載されており、且つ、上層のディスクD上をクランパ21で押さえ、更に、このクランパ21をネジ22によりモータ軸18に固定している。
【0056】
そして、上記のように構成した本発明のコア付きブラシレスモータ10を動作させて、ロータ用ハブ17に搭載したディスクDに対して筐体31内のアーム支持軸32に揺動自在に支持された磁気ヘッド34により情報信号の記録又は再生を行う際に、本発明に係るコア付きブラシレスモータ10に対して外部からの衝撃や振動が加えられて、図1及び図3(a)に示したように、モータ軸18に対して略直交して磁気ヘッド34の移動軌跡に略沿う方向の加速度FA又はFA’が付与されても、モータベース11の凹カップ部11bのX1−O−X2線上及びこのX1−O−X2線を挟んだ両側近傍にコイル逃げ孔が形成されていないのでモータベース11の剛性が高まり、これによりモータベース11に撓みが発生しないためにディスクDと磁気ヘッド34との相対位置関係にずれが生じることがなくなり、ディスクD上で磁気ヘッド34を所定のトラックに確実にオントラックさせることができ、信頼性の良いコア付きブラシレスモータ10を提供できる。
【0057】
ここで、先に図5及び図6に示した従来例のようにステータコアのティース部の数量と同数のコイル逃げ孔を形成した場合と、図1〜図3に示した実施例のようにステータコアのティース部の数量よりも削減した数量でコイル逃げ孔を形成した場合とに対して、モータ軸21と略直交して磁気ヘッド34の移動軌跡に略沿う方向に沿って仮に特定の値の加速度FAをそれぞれ加えて、ディスクD上で同一半径位置におけるヘッドオフトラック量OFFTR(図7)をシミュレーションした結果は、
従来例の場合:ヘッドオフトラック量OFFTR=0.72μm、
実施例の場合:ヘッドオフトラック量OFFTR=0.60μm、
となり、従来例に比べて実施例の方が約17%改善されているので、ディスクD上で磁気ヘッド34により情報信号の記録又は再生を良好且つ確実に行うことが可能となる。
【0058】
次に、上記した実施例ではコイル駆動相数が3相で9スロットの場合について説明したが、これに限ることなく、コイル駆動相数及びスロット数はどのような組み合わせでも良く、本発明を一部変形させた変形例としてコイル駆動相数が例えば2層で8スロットの場合について図4(a),(b)を用いて簡略に説明する。
【0059】
図4は本発明を一部変形させた2相8スロットの場合を摸式的に示した図であり、(a)は比較例を示し、(b)は本発明の変形例を示した図である。
【0060】
図4(a)に示した比較例では、コイル駆動相数が2層で8スロットの場合の一般的な状態を示しており、この場合には8個のステータコア13のティース部13bにU相用のコイルU1〜U4とV相用のコイルV1〜V4とからなる8個のモータ駆動用コイル14がU相,V相交互に巻回されており、これら8個のモータ駆動用コイル14が侵入するための8個のコイル逃げ孔11b1がモータベース11の凹カップ部11b上に略等間隔に穿接されている。
【0061】
この際、モータベース11の凹カップ部11b上で磁気ヘッド34の移動軌跡の方向となるX1−O−X2線上にコイル逃げ孔が穿設されていないが、X1−O−X2線を挟んだ両側近傍に位置する合計で4個のコイルU1,V1,U3,V3が侵入する4個のコイル逃げ孔11b1によってモータベース11が撓んでしまう。
【0062】
そこで、図4(b)に示した本発明の変形例では、コイル駆動相数が2層で8スロットの場合に、モータベース11の凹カップ部11b上で磁気ヘッド34の移動軌跡の方向となるX1−O−X2線上にコイル逃げ孔が穿設されていないと共に、X1−O−X2線を挟んだ両側近傍に位置する合計で4個のコイルU1,V1,U3,V3に対して巻線数を他のコイルよりも削減またはゼロに設定することで、これら4個のコイルU1,V1,U3,V3に対応する部位でX1−O−X2線を挟んだ両側近傍にコイル逃げ孔を穿設する必要がなくなり、これによりモータベース11の撓みを抑制することが可能になる。
【0063】
従って、図4(b)に示した本発明の変形例のようにコイル駆動相数が2相で8スロットの場合に、モータベース11の凹カップ部11b上に形成されるコイル逃げ孔11b1の個数は、先に示した式1に、ティース部の数量=8,コイル駆動相数=2,N=2として代入すれば、コイル逃げ孔11b1が4個だけ穿設されることになり、ティース部13bの数量に対してコイル逃げ孔11b1がコイル駆動相数×N(但し、Nは1以上の自然数)だけ削減した個数だけモータベース11の凹カップ部11b上に形成されることになる。
【0064】
尚、上記した実施例のコア付きブラシレスモータ10のモータ軸18は、ロータ用ハブ17と一体に回転する軸回転タイプのものについて説明したが、ここでの図示を省略するものの、ステータベース上にモータ軸を固定支持してこのモータ軸にロータ用ハブを回転自在に支持させる軸固定タイプのものであってももちろんよい。
【0065】
尚、上述した実施例では、モータ駆動用磁石19がステータコア13の内側にあるインナーロータ型のコア付きブラシレスモータ10について説明しているが、これに限ることなく、モータ駆動用磁石がステータコアの外側にあるアウターロータ型のコア付きブラシレスモータ(図示せず)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るコア付きブラシレスモータを説明するために、図3中のO−X1線に沿って断面した縦断面図である。
【図2】本発明に係るコア付きブラシレスモータを説明するために、図3中のO−Y1線及びO−Y2線に沿って断面した縦断面図である。
【図3】(a)は本発明に係るコア付きブラシレスモータを取り付けた本発明に係るディスク駆動装置の底面図を示し、(b)はコイル逃げ孔近傍を拡大して示した図である。
【図4】本発明を一部変形させた2相8スロットの場合を摸式的に示した図であり、(a)は比較例を示し、(b)は本発明の変形例を示した図である。
【図5】従来のコア付きブラシレスモータを説明するために、図6中のO−X2線に沿って断面した縦断面図である。
【図6】従来のコア付きブラシレスモータを取り付けた従来のディスク駆動装置の底面図である。
【図7】従来のコア付きブラシレスモータおいて、モータ軸に略直交したヘッドの移動軌跡方向に加速度を加えたときにモータベースが変形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10…コア付きブラシレスモータ、
11…モータベース、11a…円環部、11b…凹カップ部、
11b1…コイル逃げ孔、11c…円形状鍔部、
12…軸受け部材、12a,12b…流体動圧溝、
13…ステータコア、13a…円環状コア部、13b…ティース部、
14…モータ駆動用コイル、
15…スラストプレート、16…補強板、
17…回転体(ロータ用ハブ)、17a…中心孔、17b…裏面中心凹部、
17c…小径部、17d…大径部、17e…中径部、
18…モータ軸、19…モータ駆動用円環状磁石、
20…円環状スペーサ、21…クランパ、22…ネジ、
30…ディスク駆動装置、
31…筐体、32…アーム支持軸、33…アーム、34…ヘッド(磁気ヘッド)、
D…ディスク、R…ロータ、S…ステータ、
U1,U2,U3…U相用コイル、V1,V2,V3…V相用コイル、
W1,W2,W3…W相用コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの半径方向に移動自在なヘッドにより情報信号の記録又は再生を行う前記ディスクを回転可能に搭載するためのコア付きブラシレスモータにおいて、
モータ軸と、
前記モータ軸に回転可能に支持され、前記ディスクを搭載するための回転体と、
前記回転体の周面に沿って固着されて、この回転体と一体に回転するモータ駆動用円環状磁石と、
前記モータ駆動用円環状磁石に対して僅かな隙間を隔てて対向し且つモータ駆動用コイルを巻回させるためのティース部を円環状コア部からコイル駆動相数の整数倍の数量だけ複数放射状に突出させたステータコアと、
前記モータ軸を回転可能に支持するか又は固定して支持し、且つ、前記ステータコアを取り付けると共に、前記ティース部に巻回した前記モータ駆動用コイルを侵入させるコイル逃げ孔を前記ティース部の数量に対して前記コイル駆動相数×N(但し、Nは1以上の自然数)だけ削減した個数形成したモータベースとを備え、
前記コイル逃げ孔が形成されていない部位と対応する前記ティース部への前記モータ駆動用コイルの巻線数を、前記コイル逃げ孔が形成されている部位と対応する前記ティース部への前記モータ駆動用コイルの巻線数よりも少なく設定するか又はゼロに設定したことを特徴とするコア付きブラシレスモータ。
【請求項2】
前記コイル逃げ孔は、前記モータベース上で前記モータ軸と直交し且つこのモータ軸の中心を通って前記ヘッドの移動軌跡と略同じ方向に位置する一の線上、及び/又は、前記一の線を挟んだ両側近傍に形成しないことを特徴とする請求項1記載のコア付きブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコア付きブラシレスモータを内部に取り付ける筐体と、
前記コア付きブラシレスモータの前記回転体上に搭載された前記ディスクに対して情報信号の記録又は再生を行うヘッドとを備えたことを特徴とするディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−225635(P2009−225635A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70113(P2008−70113)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(508100033)アルファナ テクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】