説明

コイルの搬送方法

【課題】コイル生産ラインで生産されたコイルを自動クレーンにより製品置場へ効率的に搬送でき、かつ製品置場の効率的な運用も図ることができるコイルの搬送方法を提供する。
【解決手段】コイル20を自動クレーン1により製品置場3へ搬送する搬送方法において、コイル生産ライン4の現在の状態とその後の生産計画から生産ピッチを予測し、前記自動クレーン1の命令の優先順および搬送先の選択を動的に変化させるようにクレーン1の命令の割付を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル生産ラインで生産されたコイルを自動クレーンにより製品置場へ効率的に搬送でき、かつ製品置場の効率的な運用も図ることができるコイルの搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製鉄工場内のコイル生産ライン出側においては生産したコイルをクレーンにより製品置場へ搬送するのが普通である。このようなクレーンの自動化においては、コイルの効率的な搬送を目的として、たとえば、特許文献1にあるように、複数台のクレーン群を効率的に制御する方法や、特許文献2にあるように、置き場面積の有効利用を図る配置方法など種々の提案がされている。
【0003】
一方、ラインから払い出される製品は、その種別などによってそれぞれ生産ピッチが異なっており、特に生産ピッチが速い場合において、生産ピッチに追いつくために移動距離の短いライン近辺に集中してコイルを置くことが多くなる。このとき、計画的に置場を使用しなければ、例えば、小コイルが連続した場合に、小コイルを近辺に集中的に置いてしまうと、後から大径(広幅)コイルを連続して受け入れる際に、小さなスペースが多数空いていても、大径コイルには使えない置場が増えてしまい、この結果、置場使用率が低下してしまうという問題点があった。
【0004】
また、通常はコイル毎に次工程が決まっているが、置場の中で次工程供給ポイントから遠い位置に格納してあると、置場から払い出す際に搬送距離が長くなり、サイクルタイムを阻害するという問題点や、複数台クレーンが稼働する置場には、払出搬送の際にも他のクレーンとの干渉が発生してしまうという問題点もあった。
【0005】
また、ラインからの受入の際に、ライン高稼動時には、まずは近くの置場に格納しておき、後から置場合わせの配替搬送を実施する考えでいたのが、実際には置場合わせの配替えを実施する暇がなく、結果として置場の使い方がいびつになり、空き置場があるにもかかわらずサイズの大きいコイルが受け入れられなくなる場合が生じるという問題点もあった。
【0006】
更には、従来は高稼動か否かの判定をコンベアの在荷センサーの状態だけで判断していたため、ただ単にコンベア上に溜まっているだけなのか、本当に高ピッチで受け入れなければいけない状態なのかの区別がつかず、本当は余裕がある場合であるにもかかわらずライン近辺の置場ばかりを使用してしまい、最終的に置場満杯の判断に至る場合があるという問題点もあった。
【特許文献1】特開平10−203780号公報
【特許文献2】特開平7−172762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題点を解決して、製鉄工場内のコイル生産ライン出側から払い出されたコイルを受け取り、次いでそれを置場に格納する際に、従来のように在荷センサーの状態だけで判断することなく、コイルサイズ、次工程、ライン状態などから、最適な置場を選択することにより、置場使用率、置場からの払出の際の自動クレーンの搬送サイクルタイム短縮、複数クレーン稼動に至っては、クレーン間の干渉を軽減するなど、総合的な観点で効率的な置場運用ができるコイルの搬送方法を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明のコイルの搬送方法は、コイル生産ラインで生産されてコンベアに払い出されたコイルを自動クレーンにより製品置場へ搬送するコイルの搬送方法において、コイル生産ラインの現在の状態とその後の生産計画から生産ピッチを予測し、前記自動クレーンの命令の優先順および搬送先の選択を動的に変化させるようにクレーンの命令の割付を行うことを特徴とするものである。
【0009】
また生産ピッチを、コイル長さ/通板速度より求めることが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0010】
また全ての製品置場について、コイルの外径、巾、次工程との関係から評価値を求めておき、これらの評価値の総和が閾値以下でかつ最小値の評価値の置場をコイルの搬送先として選択することが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0011】
また、自動クレーンが同一置場内において複数台稼働している場合は、いずれの自動クレーンを選択するかにつき動的に変化させるようにクレーンの命令の割付を行うことが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコイルの搬送方法では、コイル生産ラインの現在の状態とその後の生産計画から生産ピッチを予測し、前記自動クレーンの命令の優先順および搬送先の選択を動的に変化させるようにクレーンの命令の割付を行うので、従来のようなコンベアの在荷センサーの状態だけの判断と比較して、総合的な観点からより効率的な置場運用ができることとなる。
【0013】
請求項2に係る発明では、生産ピッチを、コイル長さ/通板速度より求めるので、正確に割り出すことができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、全ての製品置場について、コイルの外径、巾、次工程との関係から評価値を求めておき、これらの評価値の総和が閾値以下でかつ最小値の評価値の置場をコイルの搬送先として選択するので、効率的な置場運用ができることとなる。
【0015】
請求項4に係る発明では、自動クレーンが同一置場内において複数台稼働している場合は、いずれの自動クレーンを選択するかにつき動的に変化させるようにクレーンの命令の割付を行うので、クレーン間の干渉を確実に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1に、本発明の自動クレーンによるコイルの搬送のための装置の概略図を示す。図1において、20はコイルであり、1はコイル20を搬送する自動クレーン、2はコンベア、3は製品置場、4は例えば圧延ラインのようなコイル生産ラインである。このコイル生産ライン4で生産されたコイルは、コンベア2に払い出された後、コンベア2上より自動クレーン1によって製品置場3に搬送される。
【0017】
また、このラインの制御機器として、クレーン管理用計算機5、ライン制御用計算機6、クレーン制御用コントローラ7、生産管理システム8を有しており、クレーン管理用計算機5はライン制御用計算機6および生産管理システム8に接続されており、また、このクレーン管理用計算機5にはクレーン制御用コントローラ7が接続されている。
また、例えば製品番号、製品サイズ、次工程などの自動搬送のために必要な情報は、生産管理システム8、又はライン制御用計算機6からクレーン管理用計算機5に送信され、一方、自動クレーン1、コンベア2、製品置場3などの現場の状態は、クレーン制御用コントローラ7よりクレーン管理用計算機5に送信されるよう構成されている。
【0018】
そして、クレーン管理用計算機5では、現場の状態から実行できる命令を選定し、その中から命令の優先順に基づいて実行すべき命令を決定するよう構成されている。
即ち、本発明では、ラインの現在の状態とその後の生産計画から生産ピッチを予測し、前記自動クレーンの命令の優先順および搬送先の選択を動的に変化させるようにしてクレーンの命令の割付を行う点に特徴を有している。
また、従来のように在荷センサーの状態だけで判断せず、コイルサイズ、次工程、ライン状態などから、最適な置場を選択することにより、置場使用率を向上させて、総合的な観点で効率的な置場運用ができることとなる。
【0019】
以下に、本発明に係るコイルの搬送方法につき説明する。
コイル生産ラインの稼働状況をより正確に把握するため、ライン制御用計算機より現在製造中のコイルと、それ以降のコイル製造予定に関して、その種別、サイズなどから生産ピッチを予測し、コンベアから製品を受け入れるピッチを短期的に予測することによって、予めクレーンの搬送優先順を変更しておき、ラインの高稼動状態に対応させる。
この際、長期的な予測では計算負荷が高く、かつ突発の生産計画変更などに対応できなくなってしまうため、状態変化ごとに短期予測の再計算を実行し動的に変化させるようにした。即ち、3〜10個程度先までの短期的な予測として、突然の生産状況変化にも対応できるよう、リアルタイムに予測することとした。
なお、本発明でいう自動クレーンの命令を動的に変化させるとは、3〜10個程度先までの短期的な生産ピッチの予測を行い、突然の生産状況変化に対応させることを意味するものである。
これによって、特にコイル生産ライン及び次工程が共に高稼動でクレーンのハンドリングそのものが物理的に追いつかない様な状況を除いて、ライン休止をほぼゼロに抑えることが可能となった。
【0020】
生産ピッチ(圧延ピッチ)は、論理コイル通板所要時間(秒)として求めることができ、具体的には、コイル長さ(m)/通板速度(mpm×60)より求めることができる。この場合、コイル通板所要時間は、ミルゾーンを先頭に上流側に、例えば10個先までの分を予測する。
また通板速度は、鋼種別にグループ分けしたテーブルに基準速度としてデータ化して記憶されており、このテーブルより読み取る。
なお、出側においてコイルの合成が予定されている場合は、コイル数が1本減るという情報を追加し、またコイルの分割が予定されている場合は、コイル数が1本増えるという情報を追加する。
【0021】
また本発明では、自動クレーンへの命令割付の際に搬送先の置場情報を評価値を用いて評価し、該評価値に従って最適な置場が搬送先として選択されるようになっている。即ち、全ての置場について、コイルの外径、巾、次工程との関係などから評価値を求めておき、これらの評価値の総和が閾値以下でかつ最小値の評価値の置場をコイルの搬送先として選択するよう構成されている。
【0022】
以下に、評価値の決定の具体例につき説明する。
(1)コイルの巾、外径のデータは生産管理システム8またはライン制御用計算機6からクレーン管理用計算機5に送信されているので、このデータを基に隣接コイル(即ち、既に格納されているコイル)との干渉の有無をチェックし、評価値:J0とする。例えば、干渉しない場合は、J0=0、干渉する場合は搬送不可であるので、J0=Aとして重みをつける。
【0023】
(2)コイルの外径データを、評価値:J1とする。
コイルが大径か小径か、また置場が奇数行か偶数行かによって、例えば0、Bの重みをつける。
【0024】
(3)コイルの巾データを、評価値:J2とする。
コイル巾が広いか狭いか、また置場が奇数列か偶数列かによって、例えば0、Cの重みをつける。
この(2)、(3)の評価値は、置場へのコイルの置き姿を、なるべく・大小交互となるように設定して、より効率的な置場の活用を図るものである。
【0025】
(4)コイルの次工程のデータを、評価値:J3とする。
次工程がメッキ工程であれば、J3=列番号×D−Eで求め、メッキ工程以外であれば、J3=F−列番号×Gとして求める。
図2に示すように、コイル生産ライン10と台車12間には、右から左に向けて例えばH番からI番の列番が割り当ててあり、次工程がメッキ工程であれば、列番号が小さい方を優先し、それ以外であれば、列番号が大きい方を優先するように評価値が決められる。なお、図中11はメッキラインである。
【0026】
(5)クレーンの干渉データを、評価値:J4とする。
複数台のクレーンがあって、それらが干渉範囲外であれば、J4=0、渉範囲内であれば搬送不可として、J4=Kとして重みをつける。
【0027】
最後に、このようにして得られた各評価値の総和(J)を求める。
J=J0+J1+J2+J3+J4
そして、この評価値の総和が閾値以下でかつ最小値の評価値の置場をコイルの搬送先として選択し、この情報をクレーン制御用コントローラ7へ送る。また、全ての置場について評価値の総和が閾値以上である場合は、別のエリヤから搬送先の選択を行うこととなる。なお、ここではJ0〜J4について説明したが、更に他の条件についても評価値を求めることができる。
【0028】
また、自動クレーンが同一置場内において複数台稼働している場合は、いずれの自動クレーンを選択するかにつき動的に変化させるようにクレーンの命令の割付を行うことが好ましい。
【0029】
本発明のコイルの搬送方法により、コイルを製品置場に搬送した結果を、図3のクレーン運転日数(日)と置場内滞留個数(個)との関係を示すグラフで示す。この結果、圧延ピッチの予測を取り入れた本発明方法によると、10日経過しても製品置場が飽和状態になることはなかったことが確認された。
一方、在荷センサーの状態だけで判断する従来方法の場合は、2日経過した時点で置場が飽和状態になってしまい、効率的な置場の運用をすることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のコイルの搬送のための装置を示す概略図である。
【図2】本発明の製品置場を示す説明図である。
【図3】クレーン運転日数(日)と置場内滞留個数(個)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
1 自動クレーン
2 コンベア
3 製品置場
4 コイル生産ライン
5 クレーン管理用計算機
6 ライン制御用計算機
7 クレーン制御用コントローラ
8 生産管理システム
10 コイル生産ライン
11 メッキライン
12 台車
20 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル生産ラインで生産されてコンベアに払い出されたコイルを自動クレーンにより製品置場へ搬送するコイルの搬送方法において、コイル生産ラインの現在の状態とその後の生産計画から生産ピッチを予測し、前記自動クレーンの命令の優先順および搬送先の選択を動的に変化させるようにクレーンの命令の割付を行うことを特徴とするコイルの搬送方法。
【請求項2】
生産ピッチを、コイル長さ/通板速度より求める請求項1に記載のコイルの搬送方法。
【請求項3】
全ての製品置場について、コイルの外径、巾、次工程との関係から評価値を求めておき、これらの評価値の総和が閾値以下でかつ最小値の評価値の置場をコイルの搬送先として選択する請求項1に記載のコイルの搬送方法。
【請求項4】
自動クレーンが同一置場内において複数台稼働している場合は、いずれの自動クレーンを選択するかにつき動的に変化させるようにクレーンの命令の割付を行う請求項1に記載のコイルの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−161305(P2009−161305A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241(P2008−241)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】