コイル内蔵基板
【課題】 平面コイル導体層で発生した熱に起因して搭載されるICが誤動作することなく、高電流を流すことができるコイル内蔵基板を提供すること。
【解決手段】 配線層6が形成された一対の絶縁層1・1および一対の絶縁層1・1に挟持されたフェライト磁性体層2からなる基板と、フェライト磁性体層2内に形成された平面コイル導体3とを具備し、平面視で平面コイル導体3の内側の領域に、フェライト磁性体層2から基板の主面にかけてフェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通する伝熱用貫通導体4が形成され、基板の主面に伝熱用貫通導体4が接続された放熱用導体層5が形成されているコイル内蔵基板である。平面コイル導体3において発生した熱を伝熱用貫通導体4を介して放熱用導体層5から外部へ放熱することができるので、搭載したIC等の電子部品がコイルから発生する熱により誤動作してしまうことを防止することができる。
【解決手段】 配線層6が形成された一対の絶縁層1・1および一対の絶縁層1・1に挟持されたフェライト磁性体層2からなる基板と、フェライト磁性体層2内に形成された平面コイル導体3とを具備し、平面視で平面コイル導体3の内側の領域に、フェライト磁性体層2から基板の主面にかけてフェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通する伝熱用貫通導体4が形成され、基板の主面に伝熱用貫通導体4が接続された放熱用導体層5が形成されているコイル内蔵基板である。平面コイル導体3において発生した熱を伝熱用貫通導体4を介して放熱用導体層5から外部へ放熱することができるので、搭載したIC等の電子部品がコイルから発生する熱により誤動作してしまうことを防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル導体が埋設されたフェライト磁性体層が絶縁層の内部に設けられたコイル内蔵基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機をはじめとする移動体通信機器等の電子機器には多数の電子装置が組み込まれており、電子機器の小型化が急激に進んでいるのに伴い各種電子装置も小型化や薄型化が要求されている。各種電子装置の小型化・薄型化の一例としては、従来は比較的大型のチップコイルやチップコンデンサを基板に搭載して形成されていたLCフィルタに、ガラスセラミックスからなる絶縁層が積層されたセラミック基板の内部にコイル導体を形成したコイル内蔵基板が用いられている。
【0003】
しかしながら、携帯電話機に用いられるDC−DCコンバータ用途のような比較的高いインダクタンスを必要とする電子装置では、磁性を持たないセラミック基板内にコイルを形成しているため、100nH程度の比較的大きなインダクタンスを得るためにはコイル導体の巻き数を多くしなければならず、小型化や薄型化を効果的に達成することができないという不具合があった。
【0004】
そこで、近年では、セラミック基板の内部に高透磁率を有するフェライト磁性体層を形成し、このフェライト磁性体層にコイル導体を埋設することにより、コイルの巻き数を多くすることなくインダクタンスが100nHを超えるコイルを内蔵させ、高インダクタンスのコイル内蔵基板とすることが行なわれている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【0005】
このようなコイル内蔵基板は、例えば、図13に断面図で示すように、配線層16が形成された一対の絶縁層11・11と、絶縁層11・11に挟まれて積層されるとともに内部に平面コイル導体13が埋設されたフェライト磁性体層12とによって構成されている。配線層16や平面コイル導体13には、抵抗による電気的なロスを抑えるために低抵抗のCuやAgなどの低抵抗金属を用いる必要があり、このような低抵抗金属は比較的低融点であることから、絶縁層11としてガラスセラミックスを用い、フェライト磁性体層12として低温焼成が可能なNi−Zn系フェライトを用いて同時焼成することによって製造されている。そして、配線層16には、コイル内蔵基板を外部基板に接続するための電極パッドからIC搭載用電極間に生じるインダクタンス成分を削減し、搭載するICの電源ノイズを削減させるための大面積の接地導体層が形成されている。この接地導体層は、絶縁層11とフェライト磁性体層12との間に生じる、焼成収縮挙動の差や熱膨張係数の差に起因する応力を緩和して、絶縁層11とフェライト磁性体層12との接合をより強固にするために、絶縁層11とフェライト磁性体層12との間に形成されることが行なわれている。
【特許文献1】特開平6−20839号公報
【特許文献2】特開平6−21264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年DC−DCコンバータが電源を供給するICなどは低電圧で動作するようになってきており、これに伴ってDC−DCコンバータに流れる電流が年々高くなってきている。このためDC−DCコンバータ用途のコイル内蔵基板においては、平面コイル導体に低抵抗金属を用いても熱が発生しやすくなっており、この熱の影響によってICが誤動作をしてしまうというおそれが高まってきている。この不具合を防止するためには、平面コイル導体のライン幅を大きくすることによってさらに抵抗を低くすることが考えられるが、これは小型化や薄型化の要求に反することになる。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、高周波で高インダクタンス値が得られる、例えば、小型で低背のDC−DCコンバータ用途のコイル内蔵基板において、平面コイル導体で発生した熱に起因してICが誤動作することなく、高電流を流すことができるコイル内蔵基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコイル内蔵基板は、配線層が形成された一対の絶縁層および該一対の絶縁層に挟持されたフェライト磁性体層からなる基板と、前記フェライト磁性体層内に形成された平面コイル導体とを具備するコイル内蔵基板であって、平面視で前記平面コイル導体の内側の領域に、前記フェライト磁性体層から前記基板の主面にかけて前記フェライト磁性体層および前記絶縁層を貫通する伝熱用貫通導体が形成され、前記基板の前記主面に前記伝熱用貫通導体が接続された放熱用導体層が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、複数の前記伝熱用貫通導体が、前記平面コイル導体の内側に沿って配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記フェライト磁性体層に、前記伝熱用貫通導体に接続されるとともに平面視で前記平面コイル導体と重なる伝熱用導体層が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記平面コイル導体は、間に前記フェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、前記伝熱用導体層が、上下に位置する前記平面コイル導体間に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記伝熱用導体層が、前記平面コイル導体と前記絶縁層との間に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記伝熱用貫通導体が、前記平面コイル導体の内側に沿った管状部を有することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記伝熱用貫通導体は、その横断面積が前記フェライト磁性体層側より前記基板の主面側の方が大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコイル内蔵基板によれば、平面視で平面コイル導体の内側の領域に、フェライト磁性体層から基板の主面にかけてフェライト磁性体層および絶縁層を貫通する伝熱用貫通導体が形成され、基板の主面に伝熱用貫通導体が接続された放熱用導体層が形成されていることから、平面コイル導体において発生した熱を伝熱用貫通導体を介して放熱用導体層から外部へ放熱することができる。その結果、搭載したICなどの電子部品がコイルから発生する熱によって誤動作してしまうことを防止することができる。
【0016】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、複数の前記伝熱用貫通導体を、前記平面コイル導体の内側に沿って配置した場合には、平面コイル導体の内側の領域において、伝熱用貫通導体が、平面コイル導体の周りに発生した磁束が平面コイル導体の内側の領域を通過するのを妨げることがないので、インダクタンスを低下させることなく平面コイル導体において発生した熱を伝熱用貫通導体を介して放熱用導体層から外部へ放熱することができる。
【0017】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、フェライト磁性体層に、伝熱用貫通導体に接続されるとともに平面視で平面コイル導体と重なる伝熱用導体層を形成した場合には、平面コイル導体において発生した熱は、面積が広く熱を受け取りやすい伝熱用導体層へその多くが伝わった後に、伝熱用導体層が接続された伝熱用貫通導体を介して放熱用導体層へ伝えられ、放熱用導体層が形成されたコイル内蔵基板の主面から外部へ放熱することができる。したがって、平面コイル導体において発生した熱をより効率よく伝熱用貫通導体および放熱用導体層へ伝えることができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0018】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、平面コイル導体が間にフェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、伝熱用導体層を上下に位置する平面コイル導体間に形成した場合には、平面コイル導体から発生した熱は、伝熱用導体層が形成されたコイル内蔵基板の厚み方向における内部に誘導された後に、伝熱用貫通導体を介して放熱用導体層へ伝えられ、コイル内蔵基板の主面から外部へ放熱することができる。したがって、絶縁層の方向すなわちICなどの電子部品が搭載されたコイル内蔵基板の主面方向への伝熱を抑制することができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0019】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、伝熱用導体層を平面コイル導体と絶縁層との間に形成した場合には、平面コイル導体から絶縁層への伝熱経路の途中に伝熱用導体層が配置されることから、平面コイル導体で発生した熱が絶縁層へ伝わる前に確実に伝熱用導体層から伝熱用貫通導体および放熱用導体層へ伝熱され、また、上下の平面コイル導体間の伝熱用導体層に加えて平面コイル導体と絶縁層との間に形成した場合には、伝熱用貫通導体および放熱用導体層へ伝熱するための径路が大きくなることとなるので、搭載したICなどの電子部品がコイルから発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。
【0020】
さらに、平面コイル導体からノイズが放射されたとしても、伝熱用導体層が平面コイル導体と配線層が形成された絶縁層との間において平面視で平面コイル導体と重なるように配置されていることから、伝熱用導体層がシールド層として機能してノイズを吸収することとなるので、放射されたノイズによる配線層への影響が抑えられ、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。
【0021】
また、また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、伝熱用貫通導体が、平面コイル導体の内側に沿った管状部を有する場合には、面積の広い管状部がより効率よく平面コイル導体において発生した熱を受け取ることができ、より効率よく伝熱用貫通導体へ熱を伝えることができるので、搭載したICなどの電子部品がコイルから発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。
【0022】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、伝熱用貫通導体の横断面積がフェライト磁性体層側より基板の主面側の方が大きい場合には、伝熱用貫通導体中におけるフェライト磁性体層側から基板の主面側へ向かう伝熱の熱抵抗がより小さいものとなるので、伝熱用貫通導体に伝わった熱は、より効率よく基板の主面側へと向かい放熱用導体層へと伝えられ、放熱用導体層を介してより効率よく外部へ放熱される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のコイル内蔵基板(以下、基板ともいう。)を、添付図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。図1は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図1(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図(図1(b)をB−B’線で切断した縦断面図)、図1(b)は図1(a)をA−A’線で切断した断面図(横断面図)である。これらの図において、1は絶縁層、2はフェライト磁性体層、3は平面コイル導体、4は伝熱用貫通導体、5は放熱用導体層、6は配線層である。
【0024】
図1に示す例においては、配線層6として、絶縁層1の外表面にはIC等の半導体チップやチップ部品が搭載される搭載用電極6bおよび外部電気回路と電気的に接続される電極パッド6dが形成され、絶縁層1の内部には内部配線層6aが形成されている。そして、内部配線層6a,搭載用電極6b,電極パッド6dおよび平面コイル導体3は、貫通導体6cを介して互いに接続されている。
【0025】
本発明のコイル内蔵基板は、配線層6が形成された一対の絶縁層1・1およびこの一対の絶縁層1・1に挟持されたフェライト磁性体層2からなる基板と、フェライト磁性体層2内に形成された平面コイル導体3とを具備するコイル内蔵基板であって、平面視で平面コイル導体3の内側の領域に、フェライト磁性体層2から基板の主面にかけてフェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通する伝熱用貫通導体4が形成され、基板の主面に伝熱用貫通導体4が接続された放熱用導体層5が形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
本発明のコイル内蔵基板によれば、このような構成により、平面コイル導体3において発生した熱は伝熱用貫通導体4を介して放熱用導体層5から外部へ放熱することができる。その結果、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことを防止することができる。
【0027】
このとき、伝熱用貫通導体4は、図1に示すように、平面コイル導体3の周りに発生した磁束が、平面コイル導体3の内側の領域を通過するための領域を設けるように間隔を設けて配置される。
【0028】
また、伝熱用貫通導体4と平面コイル導体3との距離はできるだけ近い方が平面コイル導体3の内側に領域における磁束の通過領域を狭めないので好ましいが、両者の間の電気的絶縁性を考慮すると、具体的には、伝熱用貫通導体4と平面コイル導体3との距離は50μm程度以上であることが好ましい。
【0029】
また、図2に図1と同様に示すように、上記構成において、複数の伝熱用貫通導体4が平面コイル導体3の内側に沿って配置されていることが好ましい。この構成により、平面コイル導体3の内側の領域において、伝熱用貫通導体4が、平面コイル導体3の周りに発生した磁束が平面コイル導体3の内側の領域を通過するのを妨げることがないので、インダクタンスを低下させることなく平面コイル導体3において発生した熱を伝熱用貫通導体4を介して放熱用導体層5から外部へ放熱することができる。
【0030】
この場合においても、伝熱用貫通導体4は磁束が通過できるような間隔を設けて配置される。この間隔は、平面コイル導体3の寸法、平面コイル導体3に流れる電流の周波数や電流値、あるいはフェライト磁性体層2の透磁率により異なるが、例えば、フェライト磁性体層2の透磁率が500の場合は0.1mm以上とすればよい。
【0031】
本発明のコイル内蔵基板を作製する場合に、矩形状のコイル内蔵基板を縦横に複数列配置して、いわゆる多数個取り配線基板の形態にして多数のコイル内蔵基板を効率よく容易に作製しようとする場合は、平面コイル導体3は平面視で最外周がフェライト磁性体層2の形状(基板の外形)に沿った矩形状で形成されるのが好ましい。このようにすることで、コイル内蔵基板の外寸を変えずに平面コイル導体3の長さを最大限長く形成することができるため、平面コイル導体3の長さに比例するインダクタンス値を大きいものとすることができる。
【0032】
このように平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、伝熱用貫通導体4は平面コイル導体3の内側の領域における角部に配置されることが好ましい。角部における磁束密度は他の領域に比較して粗となるので、この部分に形成された伝熱用貫通導体4によって磁束の通過領域を減少させることの影響は小さくてすむ。また、平面コイル導体3の内側の領域において角部の温度が高くなりやすいので、より効率よく放熱することができる。
【0033】
また、このようなことから、図2に示すように、角部に配置される伝熱用貫通導体4の横断面積を他の部分よりも大きいものとすると、インダクタンスを低下させることなくより効率よく放熱することができるので好ましい。
【0034】
伝熱用貫通導体4の横断面形状は、図面に示したような円形だけでなく、三角形や四角形またはそれ以上の多角形および楕円形状等であってもよく、特に制限はない。複数の伝熱用貫通導体4を平面コイル導体3の内側に沿って配置する場合は、伝熱用貫通導体4の横断面形状を、平面コイル導体3の内側の領域の中心に向かって細長い形状、例えば長方形や楕円形にするのが好ましい。このような形状とすることにより、伝熱用貫通導体4の間隔を狭めて磁束の通過を妨げることなく、横断面積を大きくして効率よく放熱することができる。
【0035】
本発明のコイル内蔵基板は、例えば図3,図5および図6に図1と同様の断面図で示すように、伝熱用貫通導体4が、平面コイル導体3の内側に沿った管状部4aを有することが好ましい。管状部4aが平面コイル導体3において発生した熱をより効率よく受け取り、より効率よく伝熱用貫通導体4へ熱を伝えることができるので、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。
【0036】
管状部4aは、フェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通する伝熱用貫通導体4を横方向に互いに接続するように形成され、平面視で管状となった部分である。図6に示すように1つのフェライト磁性体層2上に形成して完全な管状としてもよいが、図3および図5に示すようにフェライト磁性体層2を貫通して厚みを厚くして形成してもよく、その場合には完全な管状でなくてもよい。フェライト磁性体層2を貫通して厚みを厚くすると板状になり、平面コイル導体3で発生した熱を受ける面積がより大きくなるので、より効率よく伝熱用貫通導体4へ熱を伝えることができる。この場合、図3(a)および図5(a)に示すように、上下の平面コイル導体3・3の間において管状となるようにすると、磁束の通過を妨げることがないのでよい。
【0037】
また、平面コイル導体3に近い位置に伝熱用貫通導体4の管状部4aが形成されるので、上下の平面コイル導体3・3のそれぞれにおいて最内周の導体周りに沿った磁束が発生しにくく、上下の平面コイル導体3・3の最外周から最内周(管状部4aの内側)にかけて、平面コイル導体3の全体の周囲に磁束が発生することとなり、平面コイル導体3の内周と外周との間に磁束が集中することにより生じる磁束の部分飽和を抑制し、重畳特性の低下を抑制することができる。
【0038】
図4は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図4(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図(図4(b)をB−B’線で切断した縦断面図)、図4(b)は図4(a)をA‐A’線で切断した断面図(横断面図)である。これらの図において、7は伝熱用導体層である。
【0039】
図4に示すように、上記構成において、フェライト磁性体層2に、伝熱用貫通導体4に接続されるとともに平面視で平面コイル導体3と重なる伝熱用導体層7が形成されていることが好ましい。平面コイル導体3において発生した熱は、面積が広く熱を受け取りやすい伝熱用導体層7へとその多くが伝わった後に、伝熱用導体層7が接続された伝熱用貫通導体4を介して放熱用導体層5へ伝えられ、放熱用導体層5が形成されたコイル内蔵基板の主面から外部へ放熱することができる。したがって、絶縁層1の方向すなわちICなどの電子部品が搭載されたコイル内蔵基板の主面方向への伝熱を抑制することができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0040】
平面コイル導体3は、1層で構成してもよいが、図1(a)に示すように上下に複数設けると、大きなインダクタンスを得るためのコイルの巻き数を確保しつつ平面方向の大きさを小型にすることができるので好ましい。
【0041】
伝熱用導体層7は、図4に示すように、平面コイル導体3が、間にフェライト磁性体層2を介して上下に複数設けられる場合は、上下に位置する平面コイル導体3間に形成されていることが好ましい。
【0042】
このような構成とした場合には、平面コイル導体3から発生した熱は、伝熱用導体層7が形成されたコイル内蔵基板の厚み方向における内部に誘導された後に、放熱用導体層5が形成されたコイル内蔵基板の主面から基板の外部へと放熱することができる。したがって、絶縁層1の方向すなわちICなどの電子部品が搭載されたコイル内蔵基板の主面方向への伝熱を抑制することができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0043】
伝熱用導体層7は、上下に位置する平面コイル導体3・3間に形成される場合は、平面コイル導体3の周囲に発生する磁束が通過する領域を設ける必要があるので、平面視で平面コイル導体3の中心および平面コイル導体3の外周部には伝熱用導体層7を設けない領域が必要となる。
【0044】
伝熱用導体層7は、上下に位置する平面コイル導体3・3間に形成される場合は、図4(b)に示すように、少なくともその一部が平面視で平面コイル導体3と重なるとともに伝熱用貫通導体4に接続されていればよいが、図5(b)に示すように、平面コイル導体3の形成領域の全域に平面視で重なるような形状に設けることが好ましい。このような形状にすることにより、平面コイル導体3で発生した熱を効率よく受け取って外部へ放出することができるとともに、磁束の通過領域を確保することができるので内蔵コイルの特性の低下を抑えることができる。また、上下に複数設けられた平面コイル導体間3に発生する漏れ磁束をシールドすることができるので、磁束の乱れを抑えることができ、電流を負荷した際の磁気飽和が起きにくくなり、高い重畳特性を得ることができる。
【0045】
このような形状の伝熱用導体層7は、平面コイル導体3の形成領域より、平面視で内側および外側に平面コイル導体3から伝熱用導体層7までの距離程度拡がった形状とするのが好ましい。平面コイル導体3からの熱は平面コイル導体3から伝熱用導体層7への方向に対して45°拡がった範囲で伝熱量の9割以上が伝わるので、このような形状とすれば、平面コイル導体3から伝熱用導体層7の方向への熱のほとんどが伝熱用導体層7へ伝わることとなる。
【0046】
伝熱用導体層7が上下に位置する平面コイル導体3間に形成される場合は、伝熱用導体層7と平面コイル導体3との距離は、平面コイル導体3からの発熱をより効率よく放熱させるために、また、平面コイル導体3の導体間に発生する漏れ磁束をより効果的にシールドするためにはできるだけ小さい方がよい。具体例には、上下の平面コイル導体3間の絶縁性を考慮すると、伝熱用導体層7と平面コイル導体3との距離は15μm程度が好ましい。
【0047】
また、伝熱用導体層7が、図6に図1と同様に示すように平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されている場合には、平面コイル導体3から絶縁層1への伝熱経路の途中に伝熱用導体層7が配置されることから、平面コイル導体3で発生した熱が絶縁層1へ伝わる前に確実に伝熱用導体層7へ伝わるので好ましい。
【0048】
伝熱用導体層7が平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されている場合には、伝熱用導体層7と平面コイル導体3との距離は、平面コイル導体3の周囲に発生する磁束の量に応じて設定され、発生した磁束が通過できるような距離(フェライト磁性体層2の厚み)が必要である。同様の理由で、伝熱用導体層7が平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されない場合においても、平面コイル導体3と絶縁層1との間には同程度の厚みのフェライト磁性体層2が形成される。この距離は、平面コイル導体3の寸法、平面コイル導体3に流れる電流の周波数や電流値、あるいはフェライト磁性体層2の透磁率により異なるが、例えば、フェライト磁性体層2の透磁率が500の場合は0.1mm以上とすればよい。
【0049】
また、図7に図1と同様に示すように上下の平面コイル導体3・3間の伝熱用導体層7に加えて平面コイル導体3と絶縁層1との間にも伝熱用導体層7を形成した場合には、放熱用導体層5へ伝熱するための径路が大きくなるので、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3で発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。
【0050】
さらに、伝熱用導体層7が平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されている場合には、平面コイル導体3からノイズが放射されたとしても、伝熱用導体層7が平面コイル導体3と配線層6が形成された絶縁層1との間において平面視で平面コイル導体3と重なるように配置されていることから、伝熱用導体層7がシールド層として機能してノイズを吸収することとなるので、放射されたノイズによる配線層6への影響が抑えられ、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。
【0051】
平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成される伝熱用導体層7は、図6および図7に示すような、いわゆるベタ層として全面にわたる形状で形成されるのが好ましい。これにより平面コイル導体3から絶縁層1への伝熱経路の全てを覆うように伝熱用導体層7が形成され、またシールド用導体層としても、ノイズの発生源である平面コイル導体3を覆うことになる。
【0052】
また、このような構成において、平面コイル導体3と絶縁層1・1との間に形成された伝熱用導体層7が、接地導体層を兼ねていることが好ましい。この場合には、伝熱用導体層7(接地導体層)がノイズを吸収した後、ノイズにより発生した電位が接地導体層に流れる電流とともに外部へ放出されるので、平面コイル導体3から放射されたノイズをシールドする効果がより大きくなり、放射されたノイズによる配線層6への影響がより抑えられ、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。そして、1つの層で接地導体層と伝熱用導体層7との機能を有することから、これらを別々に2層形成する場合に比較して、搭載されるICをより安定して動作させることが可能な、より薄型のコイル内蔵基板を得ることができる。
【0053】
このように、搭載したICなどの電子部品への熱の影響や、電子部品が搭載される配線層6へのノイズの影響を防止するようにするためであるので、ICなどの電子部品の搭載される主面側の絶縁層1と平面コイル導体3との間に形成されるのが好ましい。基板の両主面に電子部品が搭載される場合は、両方の平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成される。電子部品が搭載されるのが一方主面側のみである場合でも、放熱の効率を向上させるために両方に形成してもよいことはいうまでもない。
【0054】
平面コイル導体3と一対の絶縁層1・1の少なくとも一方との間に形成された伝熱用導体層7が接地導体層を兼ねている場合は、さらに図8に示すように、伝熱用導体層7(接地導体層)の平面視で平面コイル導体3と重なる部分に開口部7aを設けるのが好ましい。これにより、接地導体層7の平面コイル導体3に対向する部分の面積が小さくなり、平面コイル導体3と接地導体層7との間の容量が小さくなるので、基板の厚みを厚くすることなく、コイルのインダクタンスとキャパシタンスによって生じる共振周波数を高くすることができる。その結果として、より高い周波数においても高インダクタンス値を得ることができるので、内蔵コイルをより小さくすることができ、小型のコイル内蔵基板を得ることができる。
【0055】
伝熱用導体層7に設ける開口部7aは、平面コイル導体3と重なる部分が全て開口した平面コイル導体3に沿った形状としてもよいが、図9に示すように分割されて複数形成されていることが好ましい。開口部7aが分割されて複数形成されている、すなわち複数の開口部7aが間隔をあけて配置されていることから、この開口部7a・7a間が、電流が接地導体層7内を平面コイル導体3に沿って形成された開口部7aと交差する方向に流れるための経路となるので、開口部7aによる電源インダクタンスの上昇やそれに伴う電源ノイズの増大が抑えられ、コイル内蔵基板に搭載されるICを高周波で安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることできる。
【0056】
このような開口部7aにするためには、開口部7aの大きさは平面コイル導体3より一回り大きいものがよく、積層の位置ずれを考慮すると、平面コイル導体3の幅に対して0.1mm程度大きい幅のものとすればよい。また、複数の開口部7a・7a間の間隔は、電源インダクタンスの上昇やそれに伴う電源ノイズの増大が抑えられるような電流経路とするには、0.1mm以上の幅があればよい。開口部7aの面積は要求される共振周波数に応じて決定すればよい。また、形状も特に限定されるものではなく、図9に示す例のような四角形以外の多角形や円形等の形状でもよい。
【0057】
また、平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、平面コイル導体3の角部に特に電界が集中することによって起きるノイズを抑えるために、図9に示すように、平面コイル導体3の角部とは重ならないような開口部7aとするのが好ましい。
【0058】
また、平面コイル導体3の角部を、曲線状に曲がっている形状、または、複数の屈曲部を有する形状とすると、平面コイル導体3に対向する接地導体層の面積が小さくなり、平面コイル導体3と接地導体層との間のキャパシタンスが小さくなることで、より高周波までインダクタンス値が得られ、また、角部が電流の集中しにくい形状となることで電界の集中が低減し、ノイズ放射そのものを削減することができるので好ましい。
【0059】
伝熱用導体層7が接地導体層を兼ねない場合は、図9に図1と同様の断面図で示すように、接地導体層6eを別に設けてもよいことはいうまでもない。この場合は、平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成された伝熱用導体層7により、接地導体層6eと平面コイル導体3との間の電磁気的結合が妨げられるので、接地導体層6eの平面コイル導体3と重なる部分に開口部4aを設けなくても平面コイル導体3と接地導体層4との間の容量が小さくなるので、基板の厚みを厚くすることなく、内蔵コイルのインダクタンスとキャパシタンスによって生じる共振周波数を高くすることができる。なお、接地導体層6eは、図1〜図7では省略されているが、図1〜図3に示すように伝熱用導体層7が形成されない場合や、図4〜図5に示すように伝熱用導体層7が平面コイル導体3・3の間に形成される場合や、図6〜図7に示すような形態で伝熱用導体層7が接地導体層を兼ねない場合においても必要に応じて形成されるものである。
【0060】
また、図10〜図12に図1と同様の断面図で示すように、上記構成において、伝熱用貫通導体4はその横断面積がフェライト磁性体層2側より基板の主面側(図10〜図12に示す例では基板の下面側)の方が大きいことが好ましい。この構成により、伝熱用貫通導体4中におけるフェライト磁性体層2側から基板の主面側へ向かう伝熱の熱抵抗がより小さいものとなるので、伝熱用貫通導体4に伝わった熱は、より効率よく基板の主面側へと向かい放熱用導体層5へと伝えられ、放熱用導体層5を介してより効率よく外部へ放熱される。
【0061】
伝熱用貫通導体4の横断面積は、図10および図11に示す例のように、段階的に大きくなっているものであってもよく、図12に示す例のように、段差なしにフェライト磁性体層2から基板の主面にかけて連続的に徐々に大きくなるものであってもよい。段階的に大きくなる場合は、図10に示す例のような1段だけではなく図11に示す例のような複数段であってもよいし、また連続的に大きくなる場合は、長さ当りで大きくなる割合は一定でなくてもよい。いずれの場合も、基板の主面側で横断面積を大きくすることでより効率よく基板の主面側に伝熱させることができるが、上述したように、伝熱方向に対して45°拡がった範囲で伝熱量の9割以上が伝わるので、基板の主面にかけて最大でも45°拡がるような形状とすればよい。また、伝熱用貫通導体4の横断面積は、フェライト磁性体層2から基板の主面にかけてのどの位置から大きくなってもよいが、磁束の通過をできるだけ良好なものとしてインダクタンスの低下を抑えるためには、図11および図12に示す例におけるように、絶縁層1内において大きくなるのが好ましい。
【0062】
また、伝熱用貫通導体4の横断面積は、より効率よく基板の主面側に伝熱させるために、絶縁層1内の配線層6に接続されない範囲においてできるだけ大きくすればよい。その結果として、横断面積が大きくなった部分を1つにまとめた形状、例えばフェライト磁性体層2内に形成された複数の伝熱用貫通導体4が絶縁層1内に形成された1つの横断面積の大きい伝熱用貫通導体4に接続された形状としてもよい。この場合、フェライト磁性体層2内に形成された全ての伝熱用貫通導体4を絶縁層1内に形成された1つの横断面積の大きい伝熱用貫通導体4に接続してもよいし、絶縁層1内の配線層6の配置を考慮して形成した、例えば2つ〜3つの横断面積の大きい伝熱用貫通導体4に接続してもよい
放熱用導体層5は、図1〜図12に示すように、基板の主面に伝熱用貫通導体4に接続されて形成される。その大きさは特に制限されるものではく基板の主面(下面)の一部だけでなく、例えば図9に示すように、基板の主面(下面)に形成された電極パッド6d等に接続しないように基板の主面(下面)全体にかけて形成してもよい。
【0063】
また、放熱用導体層5は、基板の主面上の電子部品の搭載位置から十分な距離があり、伝熱用貫通導体4および放熱用導体層5から電子部品へ熱が伝わることがない場合には、電子部品が搭載される側の主面上に形成してもよい。また、基板に搭載される電子部品の発熱が平面コイル導体3の発熱より大きく、温度が高くなるような場合には、電子部品を搭載する搭載用電極6bと伝熱用貫通導体4,伝熱用導体層7または放熱用導体層5のいずれかとを接続したり、または電子部品を基板の両主面に形成した放熱用導体層5の一方に搭載したりしてもよい。
【0064】
また、放熱用導体層5は、その厚みを配線層6や平面コイル導体3に比較して厚くすることで、より放熱性を向上させることができる。例えば、配線層6や平面コイル導体3の厚みが通常10μm程度で形成されるのに対して、より厚くして20μm以上の厚みにするとよい。
【0065】
さらに、放熱用導体層5は、その表面粗さを搭載用電極6bや電極パッド6dに比較して大きくすることで、表面積を大きくして放熱性を向上させることができる。例えば、搭載用電極6bや電極パッド6dの表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が通常1〜5μm程度であるのに対して、20μm程度以上の表面粗さに、またはそれ以上のレベルの凹凸のある形状にするとよい。
【0066】
絶縁層1は、その表面や内部に形成される配線層6や絶縁層1に挟持されて形成されるフェライト磁性体層2および平面コイル導体3とともに800〜1000℃の温度で同時焼成された絶縁体粉末の焼結体から成るものであり、配線層6のインダクタンスが高くなることを抑制するという観点からは、非磁性フェライトやガラスセラミックス等の非磁性絶縁体から成るものが好ましい。絶縁層1は、絶縁体粉末および有機バインダーを主成分とする絶縁層1用グリーンシートを製作し、この絶縁層1用グリーンシートを必要な配線展開ができるだけの枚数積層した後、800〜1000℃の温度で焼成することにより作製される。
【0067】
絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、Zn系フェライトやCu系フェライトを用いればよい。中でも、X−Fe2O4(XはCu,Zn)として示される正スピネル構造の固溶体であるCu−Zn系フェライトが好適である。
【0068】
Cu−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFe2O3を50〜70質量%,CuOを5〜20質量%,ZnOを20〜35質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm3以上の高密度焼成が可能であり、かつ、焼成後の非磁性フェライト層は低温度域でも非磁性であるので好ましい。Fe2O3はフェライトの主成分であり、その割合が50質量%未満であると磁性が発生する傾向があり、70質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液相を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することができる。このことからその割合が5質量%未満であると、配線層6と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向があり、20質量%より多いとキュリー温度が上がり、低温領域で磁性が発生する傾向がある。ZnOは非磁性フェライトを非磁性にするために重要な要素であり、その割合が20質量%未満であると焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向があり、35質量%より多いと磁性が発生する傾向がある。
【0069】
また、絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、非磁性フェライトの粉末に軟化点の低いガラスを加えて低温焼成したものであってもよい。このときのガラスとしては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1及びM2は同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1及びM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M32O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M32O系(但し、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができ、ガラスの軟化点が600℃以下であることがフェライトの焼結を阻害しないうえで望ましい。
【0070】
絶縁層1がガラスセラミックスから成る場合は、絶縁体粉末は上記のようなガラスの粉末とフィラー粉末との混合物の焼結体から成り、フィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
【0071】
配線層6は、Cu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものであり、絶縁層1用グリーンシートに配線層6用導体ペーストを印刷することにより配線パターンを形成しておき、絶縁層1用グリーンシートと同時焼成することにより形成される。
【0072】
フェライト磁性体層2は、強磁性フェライトであるNi−Zn系フェライト,Mn−Zn系フェライト,Mg−Zn系フェライト,Ni−Co系フェライト等の磁性フェライト粉末の焼結体であるが、X−Fe2O4(XはCu,Ni,Zn)として示される逆スピネル構造の固溶体であるNi−Zn系フェライトが高周波帯域で十分に高い透磁率を得るのに好ましい。
【0073】
Ni−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFe2O3を63〜73質量%,CuOを5〜10質量%,NiOを5〜12質量%,ZnOを10〜23質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm3以上の高密度焼成が可能であり、かつ高周波帯域で十分に高い透磁率を得ることができるので好ましい。Fe2O3はフェライトの主成分であり、その割合が63質量%未満であると十分な透磁率が得られない傾向があり、73質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液層を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することができる。このことから、その割合が5質量%未満であると、配線層6や平面コイル導体3と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向があり、10質量%より多いと、磁気特性の低いCuFe2O4の割合が多くなるため磁気特性を損ないやすくなる傾向がある。NiOはフェライト磁性体層2の高周波域における透磁率を確保するために含有させる。NiFe2O4は高周波域まで共振による透磁率の減衰を起こさず、高周波域での透磁率を比較的高い値に維持することができるが、初期透磁率は低いという特性をもつため、5質量%未満であると10MHz乃至それ以上の高周波域での透磁率が低下する傾向があり、12質量%より多いと初期透磁率が低下する傾向にある。ZnOはフェライト磁性体層2の透磁率向上のために重要な要素であり、フェライト組成のうち10質量%未満であると透磁率が低くなり、逆に23質量%より多くても磁気特性が悪くなる傾向がある。
【0074】
フェライト磁性体層2は、絶縁層1に用いられる絶縁層用グリーンシートと同様の手法で形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシートを用いることで作製される。
【0075】
平面コイル導体3は、配線層6と同様に金属粉末の焼結体であるメタライズ金属層からなるものであり、フェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体3用導体ペーストを印刷することによりコイルパターンを形成し、さらにその上にフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層して同時焼成することにより、フェライト磁性体層2に埋設されて形成される。平面コイル導体3が上下に複数重ねて形成される場合は、コイルパターンおよび貫通導体パターンが形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシートを複数積層した上にさらにフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層すればよい。
【0076】
平面コイル導体3の作製に用いられる金属粉末は、配線層6と同様のCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末を用いる。これにより、平面コイル導体3の電気抵抗が小さくなり、平面コイル導体3の発熱そのものを抑えることができる。
【0077】
絶縁層1用グリーンシートまたはフェライト磁性体層2用グリーンシートは、絶縁体粉末または磁性フェライト粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤や可塑剤等を混合してスラリーを得て、これからドクターブレード法,圧延法,カレンダーロール法,押し出し成形法等によってシート状に塗布し、乾燥して成形することにより作製される。
【0078】
絶縁層1用グリーンシートに用いられる絶縁体粉末は、絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、Fe2O3とCuOやZnOの粉体を所定の割合で混合して仮焼したものを粉砕し、原料粉末とすることができる。
【0079】
フェライト磁性体層2用グリーンシートに用いられる強磁性フェライト粉末は、Fe2O3とCuO,ZnO,またはNiOとを予め仮焼することにより作製されたフェライト粉末であり、平均粒径が0.1μm〜0.9μmの範囲で均一であり、粒形状は球形状に近いものが望ましい。これは、平均粒径が0.1μmより小さいと、フェライト磁性体層2用グリーンシートの製作においてフェライト粉末の均一な分散が困難であり、平均粒径が0.9μmより大きいとフェライト磁性体層2用グリーンシートの焼結温度が高くなりやすくなるからである。また、粒径が均一で球状に近いことにより均一な焼結状態を得ることができる。例えばフェライト粉末で部分的に小さい粒径が存在した場合は、その部分のみ結晶粒の成長が低下し、焼結後に得られるフェライト磁性体層2の透磁率が安定しにくい傾向がある。
【0080】
有機バインダーは、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
【0081】
グリーンシートの有機溶剤は、絶縁体粉末やフェライト粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類,アルコール類の有機溶媒や水等が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。
【0082】
グリーンシートを作製するためのスラリーは絶縁体粉末やフェライト粉末100質量部に対して有機バインダーを5〜20質量部、有機溶剤を15〜50質量部加え、ボールミル等の混合手段により混合することにより3〜100cpsの粘度となるように調製される。
【0083】
配線層6の内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンは、絶縁層1用グリーンシートの表面に配線層6用導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成される。貫通導体6cとなる配線パターンは、内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンの形成に先立って絶縁層1用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成し、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって配線層6用導体ペーストを充填することで形成される。
【0084】
平面コイル導体3となるコイルパターンも同様に、フェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体3用導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成され、フェライト磁性体層2内の貫通導体となる配線パターンも上記貫通導体6cとなる配線パターンと同様にして形成される。平面コイル導体3用導体ペーストは配線層6用導体ペーストと同じものを用いればよい。
【0085】
平面コイル導体3となるコイルパターンは、要求されるインダクタンス値やサイズにもよるが、上記のように印刷により形成する場合は線幅および隣接する外周と内周の導体間距離が0.1mm程度以上であれば容易に形成できる。できるだけ小さい面積でコイルの巻き数を多くするためには、線幅を0.1〜1mm程度にし、導体間距離を0.1〜0.2mm程度にすればよい。
【0086】
配線層6用導体ペーストおよび平面コイル導体3用導体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで作製される。
【0087】
導体ペーストの有機バインダーは、従来より導体ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダーがより好ましい。
【0088】
導体ペーストの有機溶剤は、上記した金属粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等が使用可能である。
【0089】
配線層6の内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンを形成するための配線層6用導体ペーストや平面コイル導体3用導体ペーストは、金属導体粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜15質量部、有機溶剤を10〜30質量部加えて混練することにより、印刷により導体ペーストの滲みやかすれ等の不具合が発生せず良好に所定形状のパターン形成ができる程度の粘度となるようにすることが望ましい。
【0090】
貫通導体6cとなる配線パターンを形成するための導体ペーストは、溶剤量や有機バインダー量により、内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンを形成するための配線層6用導体ペーストや平面コイル導体3用導体ペーストに対して比較的流動性の低いペースト状に調整し、貫通孔への充填を容易にし、かつ加温硬化するようにするとよい。また、焼結挙動の調整のために金属導体粉末にガラスやセラミックスの粉末を加えた無機成分としてもよい。
【0091】
絶縁層1を非磁性フェライトで形成する場合には、搭載用電極6bや電極パッド6dのような絶縁層1の外表面に形成される配線層6を形成するための配線層6用導体ペーストには、ZnO,CuO,MgO,CoO,NiO,MnO,FeO等の2価の金属酸化物の粉末を添加することが望ましい。2価の金属酸化物を添加することで、外表面の配線層6を非磁性フェライトを主成分とする絶縁層1に強固に接合させることができる。
【0092】
コイルパターンが形成されたものを含む所定枚数のフェライト磁性体層2用グリーンシートの上下にそれぞれ配線パターンが形成された所定枚数の絶縁層1用グリーンシートを配置して積層体を作製し、この積層体を焼成することによりコイル内蔵基板は作製される。
【0093】
伝熱用貫通導体4は、表層の配線パターンおよび放熱用導体層5となる放熱用導体層パターンの形成に先立って絶縁層1用グリーンシートおよびフェライト磁性体層2用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成しておき、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって貫通導体6c用の導体ペーストを充填し、これらと同時焼成することで形成される。貫通導体6cと伝熱用貫通導体4とが同一の層に形成される場合は、同時に貫通孔の形成およびペーストの充填を行なえばよい。
【0094】
図10および図11に示す例のように伝熱用貫通導体4の横断面積をフェライト磁性体層2側より基板の主面側の方を大きくするには、主面側のグリーンシートに形成する貫通孔を大きいものにすればよい。また、図12に示す例のように伝熱用貫通導体4の横断面積を段差なしにフェライト磁性体層2から基板の主面にかけて徐々に大きい形状とする場合は、上下で径の異なる、例えばテーパ状等の内壁面が傾斜した貫通孔を形成すればよく、グリーンシートを打抜く金型のクリアランスを大きめにしたり、レーザの出力等を調節したりすることで可能である。
【0095】
伝熱用貫通導体4の管状部4aは、図6に示すような、フェライト磁性体層2や絶縁層1を貫通しない形状の場合は、フェライト磁性体層2用グリーンシートやフェライト磁性体層2用グリーンシートに伝熱用貫通導体4となるパターンを形成した後に、その露出した部分と重なるようにフェライト磁性体層2用グリーンシートやフェライト磁性体層2用グリーンシート上に、配線層6のパターンと同様にして管状のパターンを形成すればよい。また、図3および図5に示すような、フェライト磁性体層2や絶縁層1を貫通する形状の場合は、伝熱用貫通導体4の形成時に同様にして同時に形成すればよい。管状部4aを完全な管状とするとグリーンシートに貫通孔を形成することができないので、図3および図5に示すような複数に分割した形状とすればよく、分割の数や形状については特に制限されるものではない。
【0096】
放熱用導体層5および伝熱用導体層7は、配線層6と同様にCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものである。伝熱用導体層7は、内部配線層6a等の形成に用いる配線層6用導体ペーストを、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等により絶縁層1用グリーンシートまたはフェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に所定パターン形状に塗布し、これらとともに同時焼成されて形成される。放熱用導体層5は、搭載用電極6bや電極パッド6dのような絶縁層1の外表面に形成される配線層6用導体ペーストと同様の導体ペーストを、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等により絶縁層1用グリーンシート上に所定パターン形状に塗布し、これらとともに同時焼成されて形成される。搭載用電極6bや電極パッド6dの形成と同時に行なえばよい。
【0097】
放熱用導体層5の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を配線層6(搭載用電極6bや電極パッド6d)より大きくするには、導体ペーストに用いる金属粉末に粒径の大きいものを用いて形成すればよい。例えば、配線層6,平面コイル導体3または伝熱用導体層7の形成に用いる導体ペーストに5μm程度の金属粉末を用いるのに対して、放熱用導体層5の形成に用いる導体ペーストには10μm程度以上の金属粉末を用いればよい。
【0098】
また、放熱用導体層5の表面を凹凸のある形状とするには、例えば導体ペーストを塗布した後に型を押し付けるなどして、溝の列あるいは多数の点状の凸部または凹部といった形状の凹凸を形成すればよい。
【0099】
積層体を作製する方法は、積み重ねた絶縁層1用グリーンシートとフェライト磁性体層2用グリーンシートとに熱と圧力とを加えて熱圧着する方法や、有機バインダー,可塑剤,溶剤等からなる密着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。積層の際の加熱加圧の条件は、用いる有機バインダー等の種類や量により異なるが、概ね30〜100℃および2〜20MPaである。
【0100】
積層体の焼成は、300〜600℃の温度で脱バインダーした後、800〜1000℃の温度で焼成することにより行なわれる。焼成雰囲気としては、平面コイル導体3やその他の配線がAg等の酸化しにくい材料から成る場合は大気中にて行なわれ、Cu等の酸化しやすい材料から成る場合は、窒素雰囲気が用いられ、脱バインダーしやすいように加湿したものを用いる。
【0101】
焼成後のコイル内蔵基板の表面に形成された搭載用電極6b,電極パッド6dおよび放熱用導体層5には、半導体チップやチップ部品、または外部電気回路との半田等による接合を強固なものにするために、その表面にニッケル層および金層をめっき法により順次被着するとよい。
【実施例】
【0102】
本実施例1では、本発明のコイル内蔵基板として、図7に示すような、平面コイル導体3の内周に沿って、平面コイル導体3の内側の領域の角部およびその間に計8本の伝熱用貫通導体4を、また、上下に位置する2つの平面コイル導体3・3間および基板の下側の絶縁層1とフェライト磁性体層2との間に伝熱用導体層7を、そして、基板の下面に放熱用導体層5を設けた構造に、上下の絶縁層1にそれぞれ接地導体層6eを加えたコイル内蔵基板を作製し、基板の上面に形成した配線層6の表面温度を測定した。以下に詳細に説明する。
【0103】
まず、Fe2O3粉末630gとCuO粉末80gとZnO粉末290gとを、純水4000cm3とともにジルコニアボールを使用した7000cm3のボールミルにて24時間かけて混合した後、乾燥した混合粉末をジルコニアるつぼに入れて大気中730℃で1時間加熱することにより、非磁性フェライト仮焼粉末を作製した。作製した非磁性フェライト仮焼粉末100質量部に対し、バインダーとしてブチラール樹脂を10質量部、有機溶剤としてIPA(イソプロピルアルコール)を45質量部添加し、上記と同様のボールミル法により混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ100μmの非磁性フェライトからなる絶縁層用グリーンシートを成型した。
【0104】
この絶縁層用グリーンシートに金型による打ち抜き加工によって、貫通導体6c用の直径150μmの貫通孔および伝熱用貫通導体4用の直径240μmの貫通孔を形成した。この貫通孔に貫通導体ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥した。貫通導体ペーストとしては、Ag粉末100質量部と、焼結助剤としてのガラス粉末10質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール2質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
【0105】
次に、この絶縁層用グリーンシートに導体ペーストをスクリーン印刷法により2mm四方のサイズで20μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥して温度測定用の表層配線層パターンおよび平面コイル導体3に外部から通電するための通電用表層配線層パターンを形成した。また、接地導体層6eとなる配線層パターンおよび絶縁層1とフェライト磁性体層2との間の伝熱用導体層7となるパターンも別の絶縁層用グリーンシートに同様にして形成した。
【0106】
導体ペーストとしては、金属粉末としてAg粉末100質量部に金属酸化物としてCuO粉末10質量部を加えた原料100質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール2質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
【0107】
次に、Fe2O3粉末700gとCuO粉末60gとNiO粉末60gとZnO粉末180gとを用いて、非磁性フェライト仮焼粉末と同様の作製方法で強磁性フェライト仮焼粉末を作製した。作製した磁性フェライト仮焼粉末100質量部に対し、バインダーとしてブチラール樹脂を10質量部、有機溶剤としてIPAを45質量部添加し、上記と同様のボールミル法により混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ100μmのフェライト磁性体層用グリーンシートを成型した。
【0108】
このフェライト磁性体層用グリーンシートに、金型による打ち抜き加工によって貫通導体6c用の直径150μmの貫通孔および伝熱用貫通導体4用の直径240μmの貫通孔を形成した。この貫通孔に、貫通導体ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥して貫通導体となる貫通導体組成物を形成した。貫通導体ペーストとしては、上記と同じものを用いた。
【0109】
続いて、フェライト磁性体層用グリーンシート2枚にそれぞれ導体ペーストをスクリーン印刷法によって30μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥し、3ターン(3巻き)の平面コイル導体パターンを形成した。導体ペーストとしては、Ag粉末100質量部に、アクリル樹脂10質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール1質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
【0110】
また、別のフェライト磁性体層体用グリーンシート1枚には、平面コイル導体パターンと同じ導体ペーストをスクリーン印刷法によって30μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥し、伝熱用導体層パターンを形成した。上下の平面コイル導体パターンを接続するための貫通導体6cとは接続されないように直径250μmの開口部を設けたパターンとした。
【0111】
次に、下から順に平面コイル導体パターンを形成したフェライト磁性体層用グリーンシート、伝熱用導体層パターンを形成したフェライト磁性体層用グリーンシート、平面コイル導体パターンを形成したフェライト磁性体層用グリーンシート、貫通導体パターンのみ形成したフェライト磁性体層用グリーンシートを重ね、さらにその上下にそれぞれ4枚の絶縁層用グリーンシートを積み重ねて、5MPaの圧力と50℃の温度で加熱圧着して絶縁層用グリーンシートが表層に位置する積層体を作製した。
【0112】
次に、積層体を12mm角に切断した後、大気中で500℃、3時間の条件で加熱して有機分を除去した後、大気中で900℃、1時間の条件で焼成して、コイル内蔵基板を作製した。コイル内蔵基板は、フェライト磁性体層2が一対の絶縁層1・1で挟持され、フェライト磁性体層2内においては平面コイル導体3が上下に重なって形成され、上下それぞれの平面コイル導体3・3の一方の端部同士が貫通導体6cにより接続され、上方の平面コイル導体3の他方の端部は上方の接地導体層6eとは電気的に接続されずに上方の接地導体層6eを貫通する貫通導体6cにより通電用表層配線層に接続され、下方の平面コイル導体3の他方の端部は下方の接地導体層6eに接続され、下方の接地導体層6eは貫通導体により別の通電用表層配線層に接続された構造とした。コイル内蔵基板は、外形サイズが10mm角で厚みが0.8mmであり、平面コイル導体3は、導体厚みが0.02mm,導体幅が0.3mm,矩形の最外周が6mm角,隣接する外周と内周の導体間距離が0.15mmであった。伝熱用導体層7は、導体厚みが0.02mmで、外寸6.3mm角のほぼ中央部に3.0mm角の開口を有する形状であり、伝熱用貫通導体4は、最内周の平面コイル導体3から0.1mm離間した位置に直径0.2mmのものが伝熱用導体層7に接続されて配置され、放熱用導体層5は、導体厚みが0.03mmで、外寸6mm角のものが伝熱用貫通導体4に接続されて基板下面の中央部に配置されたものであった。
【0113】
このコイル内蔵基板の外表面に形成された配線層6および放熱用導体層5上には、無電界めっき法を用いてNiめっき皮膜およびAuめっき皮膜を順次形成した。
【比較例】
【0114】
本発明の実施例1との比較のために、従来構成として実施例1の試料に対して図10に示すような、伝熱用貫通導体4,放熱用導体層5,および伝熱用導体層7を有さないものとした以外は、実施例1と同様にしてコイル内蔵基板を作製した。
【0115】
実施例1および比較例のコイル内蔵基板は、それぞれセラミック基板上に半田を用いて実装した。また、実施例1のコイル内蔵基板は、放熱導体5とセラミック基板上の接続導体とも半田で接合した。
【0116】
そして、セラミック基板上に実装した状態で平面コイル導体3に電気的に接続された基板の表面の通電用表層配線層にプローブを当て、直流電源装置(菊水電子工業製「PMC18−3A」)により平面コイル導体3に5Vで1Aの電流を10秒間通電した後に、基板表面の温度測定用の表層配線層上の温度を測定した。温度の測定は、非接触式の放射温度計(キーエンス製「FT−H10」)を用いて測定した。
【0117】
その結果、実施例1の基板の表層配線層上の温度は39℃であったのに対して、比較例の基板の表層配線層上の温度は80℃であった。これにより、比較例に対して実施例1のコイル内蔵基板は、平面コイル導体3に発生した熱を基板の主面から放熱することのできるコイル内蔵基板であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図2】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図3】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図4】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図5】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図6】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図7】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図8】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図9】本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図10】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図11】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図12】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図13】従来のコイル内蔵基板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1・・・絶縁層
2・・・フェライト磁性体層
3・・・平面コイル導体
4・・・伝熱用貫通導体
5・・・放熱用導体層
6・・・配線層
7・・・伝熱用導体層
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル導体が埋設されたフェライト磁性体層が絶縁層の内部に設けられたコイル内蔵基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機をはじめとする移動体通信機器等の電子機器には多数の電子装置が組み込まれており、電子機器の小型化が急激に進んでいるのに伴い各種電子装置も小型化や薄型化が要求されている。各種電子装置の小型化・薄型化の一例としては、従来は比較的大型のチップコイルやチップコンデンサを基板に搭載して形成されていたLCフィルタに、ガラスセラミックスからなる絶縁層が積層されたセラミック基板の内部にコイル導体を形成したコイル内蔵基板が用いられている。
【0003】
しかしながら、携帯電話機に用いられるDC−DCコンバータ用途のような比較的高いインダクタンスを必要とする電子装置では、磁性を持たないセラミック基板内にコイルを形成しているため、100nH程度の比較的大きなインダクタンスを得るためにはコイル導体の巻き数を多くしなければならず、小型化や薄型化を効果的に達成することができないという不具合があった。
【0004】
そこで、近年では、セラミック基板の内部に高透磁率を有するフェライト磁性体層を形成し、このフェライト磁性体層にコイル導体を埋設することにより、コイルの巻き数を多くすることなくインダクタンスが100nHを超えるコイルを内蔵させ、高インダクタンスのコイル内蔵基板とすることが行なわれている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【0005】
このようなコイル内蔵基板は、例えば、図13に断面図で示すように、配線層16が形成された一対の絶縁層11・11と、絶縁層11・11に挟まれて積層されるとともに内部に平面コイル導体13が埋設されたフェライト磁性体層12とによって構成されている。配線層16や平面コイル導体13には、抵抗による電気的なロスを抑えるために低抵抗のCuやAgなどの低抵抗金属を用いる必要があり、このような低抵抗金属は比較的低融点であることから、絶縁層11としてガラスセラミックスを用い、フェライト磁性体層12として低温焼成が可能なNi−Zn系フェライトを用いて同時焼成することによって製造されている。そして、配線層16には、コイル内蔵基板を外部基板に接続するための電極パッドからIC搭載用電極間に生じるインダクタンス成分を削減し、搭載するICの電源ノイズを削減させるための大面積の接地導体層が形成されている。この接地導体層は、絶縁層11とフェライト磁性体層12との間に生じる、焼成収縮挙動の差や熱膨張係数の差に起因する応力を緩和して、絶縁層11とフェライト磁性体層12との接合をより強固にするために、絶縁層11とフェライト磁性体層12との間に形成されることが行なわれている。
【特許文献1】特開平6−20839号公報
【特許文献2】特開平6−21264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年DC−DCコンバータが電源を供給するICなどは低電圧で動作するようになってきており、これに伴ってDC−DCコンバータに流れる電流が年々高くなってきている。このためDC−DCコンバータ用途のコイル内蔵基板においては、平面コイル導体に低抵抗金属を用いても熱が発生しやすくなっており、この熱の影響によってICが誤動作をしてしまうというおそれが高まってきている。この不具合を防止するためには、平面コイル導体のライン幅を大きくすることによってさらに抵抗を低くすることが考えられるが、これは小型化や薄型化の要求に反することになる。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、高周波で高インダクタンス値が得られる、例えば、小型で低背のDC−DCコンバータ用途のコイル内蔵基板において、平面コイル導体で発生した熱に起因してICが誤動作することなく、高電流を流すことができるコイル内蔵基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコイル内蔵基板は、配線層が形成された一対の絶縁層および該一対の絶縁層に挟持されたフェライト磁性体層からなる基板と、前記フェライト磁性体層内に形成された平面コイル導体とを具備するコイル内蔵基板であって、平面視で前記平面コイル導体の内側の領域に、前記フェライト磁性体層から前記基板の主面にかけて前記フェライト磁性体層および前記絶縁層を貫通する伝熱用貫通導体が形成され、前記基板の前記主面に前記伝熱用貫通導体が接続された放熱用導体層が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、複数の前記伝熱用貫通導体が、前記平面コイル導体の内側に沿って配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記フェライト磁性体層に、前記伝熱用貫通導体に接続されるとともに平面視で前記平面コイル導体と重なる伝熱用導体層が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記平面コイル導体は、間に前記フェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、前記伝熱用導体層が、上下に位置する前記平面コイル導体間に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記伝熱用導体層が、前記平面コイル導体と前記絶縁層との間に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記伝熱用貫通導体が、前記平面コイル導体の内側に沿った管状部を有することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記伝熱用貫通導体は、その横断面積が前記フェライト磁性体層側より前記基板の主面側の方が大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコイル内蔵基板によれば、平面視で平面コイル導体の内側の領域に、フェライト磁性体層から基板の主面にかけてフェライト磁性体層および絶縁層を貫通する伝熱用貫通導体が形成され、基板の主面に伝熱用貫通導体が接続された放熱用導体層が形成されていることから、平面コイル導体において発生した熱を伝熱用貫通導体を介して放熱用導体層から外部へ放熱することができる。その結果、搭載したICなどの電子部品がコイルから発生する熱によって誤動作してしまうことを防止することができる。
【0016】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、複数の前記伝熱用貫通導体を、前記平面コイル導体の内側に沿って配置した場合には、平面コイル導体の内側の領域において、伝熱用貫通導体が、平面コイル導体の周りに発生した磁束が平面コイル導体の内側の領域を通過するのを妨げることがないので、インダクタンスを低下させることなく平面コイル導体において発生した熱を伝熱用貫通導体を介して放熱用導体層から外部へ放熱することができる。
【0017】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、フェライト磁性体層に、伝熱用貫通導体に接続されるとともに平面視で平面コイル導体と重なる伝熱用導体層を形成した場合には、平面コイル導体において発生した熱は、面積が広く熱を受け取りやすい伝熱用導体層へその多くが伝わった後に、伝熱用導体層が接続された伝熱用貫通導体を介して放熱用導体層へ伝えられ、放熱用導体層が形成されたコイル内蔵基板の主面から外部へ放熱することができる。したがって、平面コイル導体において発生した熱をより効率よく伝熱用貫通導体および放熱用導体層へ伝えることができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0018】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、平面コイル導体が間にフェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、伝熱用導体層を上下に位置する平面コイル導体間に形成した場合には、平面コイル導体から発生した熱は、伝熱用導体層が形成されたコイル内蔵基板の厚み方向における内部に誘導された後に、伝熱用貫通導体を介して放熱用導体層へ伝えられ、コイル内蔵基板の主面から外部へ放熱することができる。したがって、絶縁層の方向すなわちICなどの電子部品が搭載されたコイル内蔵基板の主面方向への伝熱を抑制することができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0019】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、伝熱用導体層を平面コイル導体と絶縁層との間に形成した場合には、平面コイル導体から絶縁層への伝熱経路の途中に伝熱用導体層が配置されることから、平面コイル導体で発生した熱が絶縁層へ伝わる前に確実に伝熱用導体層から伝熱用貫通導体および放熱用導体層へ伝熱され、また、上下の平面コイル導体間の伝熱用導体層に加えて平面コイル導体と絶縁層との間に形成した場合には、伝熱用貫通導体および放熱用導体層へ伝熱するための径路が大きくなることとなるので、搭載したICなどの電子部品がコイルから発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。
【0020】
さらに、平面コイル導体からノイズが放射されたとしても、伝熱用導体層が平面コイル導体と配線層が形成された絶縁層との間において平面視で平面コイル導体と重なるように配置されていることから、伝熱用導体層がシールド層として機能してノイズを吸収することとなるので、放射されたノイズによる配線層への影響が抑えられ、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。
【0021】
また、また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、伝熱用貫通導体が、平面コイル導体の内側に沿った管状部を有する場合には、面積の広い管状部がより効率よく平面コイル導体において発生した熱を受け取ることができ、より効率よく伝熱用貫通導体へ熱を伝えることができるので、搭載したICなどの電子部品がコイルから発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。
【0022】
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、伝熱用貫通導体の横断面積がフェライト磁性体層側より基板の主面側の方が大きい場合には、伝熱用貫通導体中におけるフェライト磁性体層側から基板の主面側へ向かう伝熱の熱抵抗がより小さいものとなるので、伝熱用貫通導体に伝わった熱は、より効率よく基板の主面側へと向かい放熱用導体層へと伝えられ、放熱用導体層を介してより効率よく外部へ放熱される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のコイル内蔵基板(以下、基板ともいう。)を、添付図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。図1は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図1(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図(図1(b)をB−B’線で切断した縦断面図)、図1(b)は図1(a)をA−A’線で切断した断面図(横断面図)である。これらの図において、1は絶縁層、2はフェライト磁性体層、3は平面コイル導体、4は伝熱用貫通導体、5は放熱用導体層、6は配線層である。
【0024】
図1に示す例においては、配線層6として、絶縁層1の外表面にはIC等の半導体チップやチップ部品が搭載される搭載用電極6bおよび外部電気回路と電気的に接続される電極パッド6dが形成され、絶縁層1の内部には内部配線層6aが形成されている。そして、内部配線層6a,搭載用電極6b,電極パッド6dおよび平面コイル導体3は、貫通導体6cを介して互いに接続されている。
【0025】
本発明のコイル内蔵基板は、配線層6が形成された一対の絶縁層1・1およびこの一対の絶縁層1・1に挟持されたフェライト磁性体層2からなる基板と、フェライト磁性体層2内に形成された平面コイル導体3とを具備するコイル内蔵基板であって、平面視で平面コイル導体3の内側の領域に、フェライト磁性体層2から基板の主面にかけてフェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通する伝熱用貫通導体4が形成され、基板の主面に伝熱用貫通導体4が接続された放熱用導体層5が形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
本発明のコイル内蔵基板によれば、このような構成により、平面コイル導体3において発生した熱は伝熱用貫通導体4を介して放熱用導体層5から外部へ放熱することができる。その結果、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことを防止することができる。
【0027】
このとき、伝熱用貫通導体4は、図1に示すように、平面コイル導体3の周りに発生した磁束が、平面コイル導体3の内側の領域を通過するための領域を設けるように間隔を設けて配置される。
【0028】
また、伝熱用貫通導体4と平面コイル導体3との距離はできるだけ近い方が平面コイル導体3の内側に領域における磁束の通過領域を狭めないので好ましいが、両者の間の電気的絶縁性を考慮すると、具体的には、伝熱用貫通導体4と平面コイル導体3との距離は50μm程度以上であることが好ましい。
【0029】
また、図2に図1と同様に示すように、上記構成において、複数の伝熱用貫通導体4が平面コイル導体3の内側に沿って配置されていることが好ましい。この構成により、平面コイル導体3の内側の領域において、伝熱用貫通導体4が、平面コイル導体3の周りに発生した磁束が平面コイル導体3の内側の領域を通過するのを妨げることがないので、インダクタンスを低下させることなく平面コイル導体3において発生した熱を伝熱用貫通導体4を介して放熱用導体層5から外部へ放熱することができる。
【0030】
この場合においても、伝熱用貫通導体4は磁束が通過できるような間隔を設けて配置される。この間隔は、平面コイル導体3の寸法、平面コイル導体3に流れる電流の周波数や電流値、あるいはフェライト磁性体層2の透磁率により異なるが、例えば、フェライト磁性体層2の透磁率が500の場合は0.1mm以上とすればよい。
【0031】
本発明のコイル内蔵基板を作製する場合に、矩形状のコイル内蔵基板を縦横に複数列配置して、いわゆる多数個取り配線基板の形態にして多数のコイル内蔵基板を効率よく容易に作製しようとする場合は、平面コイル導体3は平面視で最外周がフェライト磁性体層2の形状(基板の外形)に沿った矩形状で形成されるのが好ましい。このようにすることで、コイル内蔵基板の外寸を変えずに平面コイル導体3の長さを最大限長く形成することができるため、平面コイル導体3の長さに比例するインダクタンス値を大きいものとすることができる。
【0032】
このように平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、伝熱用貫通導体4は平面コイル導体3の内側の領域における角部に配置されることが好ましい。角部における磁束密度は他の領域に比較して粗となるので、この部分に形成された伝熱用貫通導体4によって磁束の通過領域を減少させることの影響は小さくてすむ。また、平面コイル導体3の内側の領域において角部の温度が高くなりやすいので、より効率よく放熱することができる。
【0033】
また、このようなことから、図2に示すように、角部に配置される伝熱用貫通導体4の横断面積を他の部分よりも大きいものとすると、インダクタンスを低下させることなくより効率よく放熱することができるので好ましい。
【0034】
伝熱用貫通導体4の横断面形状は、図面に示したような円形だけでなく、三角形や四角形またはそれ以上の多角形および楕円形状等であってもよく、特に制限はない。複数の伝熱用貫通導体4を平面コイル導体3の内側に沿って配置する場合は、伝熱用貫通導体4の横断面形状を、平面コイル導体3の内側の領域の中心に向かって細長い形状、例えば長方形や楕円形にするのが好ましい。このような形状とすることにより、伝熱用貫通導体4の間隔を狭めて磁束の通過を妨げることなく、横断面積を大きくして効率よく放熱することができる。
【0035】
本発明のコイル内蔵基板は、例えば図3,図5および図6に図1と同様の断面図で示すように、伝熱用貫通導体4が、平面コイル導体3の内側に沿った管状部4aを有することが好ましい。管状部4aが平面コイル導体3において発生した熱をより効率よく受け取り、より効率よく伝熱用貫通導体4へ熱を伝えることができるので、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。
【0036】
管状部4aは、フェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通する伝熱用貫通導体4を横方向に互いに接続するように形成され、平面視で管状となった部分である。図6に示すように1つのフェライト磁性体層2上に形成して完全な管状としてもよいが、図3および図5に示すようにフェライト磁性体層2を貫通して厚みを厚くして形成してもよく、その場合には完全な管状でなくてもよい。フェライト磁性体層2を貫通して厚みを厚くすると板状になり、平面コイル導体3で発生した熱を受ける面積がより大きくなるので、より効率よく伝熱用貫通導体4へ熱を伝えることができる。この場合、図3(a)および図5(a)に示すように、上下の平面コイル導体3・3の間において管状となるようにすると、磁束の通過を妨げることがないのでよい。
【0037】
また、平面コイル導体3に近い位置に伝熱用貫通導体4の管状部4aが形成されるので、上下の平面コイル導体3・3のそれぞれにおいて最内周の導体周りに沿った磁束が発生しにくく、上下の平面コイル導体3・3の最外周から最内周(管状部4aの内側)にかけて、平面コイル導体3の全体の周囲に磁束が発生することとなり、平面コイル導体3の内周と外周との間に磁束が集中することにより生じる磁束の部分飽和を抑制し、重畳特性の低下を抑制することができる。
【0038】
図4は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図4(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図(図4(b)をB−B’線で切断した縦断面図)、図4(b)は図4(a)をA‐A’線で切断した断面図(横断面図)である。これらの図において、7は伝熱用導体層である。
【0039】
図4に示すように、上記構成において、フェライト磁性体層2に、伝熱用貫通導体4に接続されるとともに平面視で平面コイル導体3と重なる伝熱用導体層7が形成されていることが好ましい。平面コイル導体3において発生した熱は、面積が広く熱を受け取りやすい伝熱用導体層7へとその多くが伝わった後に、伝熱用導体層7が接続された伝熱用貫通導体4を介して放熱用導体層5へ伝えられ、放熱用導体層5が形成されたコイル内蔵基板の主面から外部へ放熱することができる。したがって、絶縁層1の方向すなわちICなどの電子部品が搭載されたコイル内蔵基板の主面方向への伝熱を抑制することができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0040】
平面コイル導体3は、1層で構成してもよいが、図1(a)に示すように上下に複数設けると、大きなインダクタンスを得るためのコイルの巻き数を確保しつつ平面方向の大きさを小型にすることができるので好ましい。
【0041】
伝熱用導体層7は、図4に示すように、平面コイル導体3が、間にフェライト磁性体層2を介して上下に複数設けられる場合は、上下に位置する平面コイル導体3間に形成されていることが好ましい。
【0042】
このような構成とした場合には、平面コイル導体3から発生した熱は、伝熱用導体層7が形成されたコイル内蔵基板の厚み方向における内部に誘導された後に、放熱用導体層5が形成されたコイル内蔵基板の主面から基板の外部へと放熱することができる。したがって、絶縁層1の方向すなわちICなどの電子部品が搭載されたコイル内蔵基板の主面方向への伝熱を抑制することができるため、コイル内蔵基板に搭載されたICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0043】
伝熱用導体層7は、上下に位置する平面コイル導体3・3間に形成される場合は、平面コイル導体3の周囲に発生する磁束が通過する領域を設ける必要があるので、平面視で平面コイル導体3の中心および平面コイル導体3の外周部には伝熱用導体層7を設けない領域が必要となる。
【0044】
伝熱用導体層7は、上下に位置する平面コイル導体3・3間に形成される場合は、図4(b)に示すように、少なくともその一部が平面視で平面コイル導体3と重なるとともに伝熱用貫通導体4に接続されていればよいが、図5(b)に示すように、平面コイル導体3の形成領域の全域に平面視で重なるような形状に設けることが好ましい。このような形状にすることにより、平面コイル導体3で発生した熱を効率よく受け取って外部へ放出することができるとともに、磁束の通過領域を確保することができるので内蔵コイルの特性の低下を抑えることができる。また、上下に複数設けられた平面コイル導体間3に発生する漏れ磁束をシールドすることができるので、磁束の乱れを抑えることができ、電流を負荷した際の磁気飽和が起きにくくなり、高い重畳特性を得ることができる。
【0045】
このような形状の伝熱用導体層7は、平面コイル導体3の形成領域より、平面視で内側および外側に平面コイル導体3から伝熱用導体層7までの距離程度拡がった形状とするのが好ましい。平面コイル導体3からの熱は平面コイル導体3から伝熱用導体層7への方向に対して45°拡がった範囲で伝熱量の9割以上が伝わるので、このような形状とすれば、平面コイル導体3から伝熱用導体層7の方向への熱のほとんどが伝熱用導体層7へ伝わることとなる。
【0046】
伝熱用導体層7が上下に位置する平面コイル導体3間に形成される場合は、伝熱用導体層7と平面コイル導体3との距離は、平面コイル導体3からの発熱をより効率よく放熱させるために、また、平面コイル導体3の導体間に発生する漏れ磁束をより効果的にシールドするためにはできるだけ小さい方がよい。具体例には、上下の平面コイル導体3間の絶縁性を考慮すると、伝熱用導体層7と平面コイル導体3との距離は15μm程度が好ましい。
【0047】
また、伝熱用導体層7が、図6に図1と同様に示すように平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されている場合には、平面コイル導体3から絶縁層1への伝熱経路の途中に伝熱用導体層7が配置されることから、平面コイル導体3で発生した熱が絶縁層1へ伝わる前に確実に伝熱用導体層7へ伝わるので好ましい。
【0048】
伝熱用導体層7が平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されている場合には、伝熱用導体層7と平面コイル導体3との距離は、平面コイル導体3の周囲に発生する磁束の量に応じて設定され、発生した磁束が通過できるような距離(フェライト磁性体層2の厚み)が必要である。同様の理由で、伝熱用導体層7が平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されない場合においても、平面コイル導体3と絶縁層1との間には同程度の厚みのフェライト磁性体層2が形成される。この距離は、平面コイル導体3の寸法、平面コイル導体3に流れる電流の周波数や電流値、あるいはフェライト磁性体層2の透磁率により異なるが、例えば、フェライト磁性体層2の透磁率が500の場合は0.1mm以上とすればよい。
【0049】
また、図7に図1と同様に示すように上下の平面コイル導体3・3間の伝熱用導体層7に加えて平面コイル導体3と絶縁層1との間にも伝熱用導体層7を形成した場合には、放熱用導体層5へ伝熱するための径路が大きくなるので、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3で発生する熱によって誤動作してしまうことをより一層防止することができる。
【0050】
さらに、伝熱用導体層7が平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成されている場合には、平面コイル導体3からノイズが放射されたとしても、伝熱用導体層7が平面コイル導体3と配線層6が形成された絶縁層1との間において平面視で平面コイル導体3と重なるように配置されていることから、伝熱用導体層7がシールド層として機能してノイズを吸収することとなるので、放射されたノイズによる配線層6への影響が抑えられ、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。
【0051】
平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成される伝熱用導体層7は、図6および図7に示すような、いわゆるベタ層として全面にわたる形状で形成されるのが好ましい。これにより平面コイル導体3から絶縁層1への伝熱経路の全てを覆うように伝熱用導体層7が形成され、またシールド用導体層としても、ノイズの発生源である平面コイル導体3を覆うことになる。
【0052】
また、このような構成において、平面コイル導体3と絶縁層1・1との間に形成された伝熱用導体層7が、接地導体層を兼ねていることが好ましい。この場合には、伝熱用導体層7(接地導体層)がノイズを吸収した後、ノイズにより発生した電位が接地導体層に流れる電流とともに外部へ放出されるので、平面コイル導体3から放射されたノイズをシールドする効果がより大きくなり、放射されたノイズによる配線層6への影響がより抑えられ、搭載されるICをより安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることができる。そして、1つの層で接地導体層と伝熱用導体層7との機能を有することから、これらを別々に2層形成する場合に比較して、搭載されるICをより安定して動作させることが可能な、より薄型のコイル内蔵基板を得ることができる。
【0053】
このように、搭載したICなどの電子部品への熱の影響や、電子部品が搭載される配線層6へのノイズの影響を防止するようにするためであるので、ICなどの電子部品の搭載される主面側の絶縁層1と平面コイル導体3との間に形成されるのが好ましい。基板の両主面に電子部品が搭載される場合は、両方の平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成される。電子部品が搭載されるのが一方主面側のみである場合でも、放熱の効率を向上させるために両方に形成してもよいことはいうまでもない。
【0054】
平面コイル導体3と一対の絶縁層1・1の少なくとも一方との間に形成された伝熱用導体層7が接地導体層を兼ねている場合は、さらに図8に示すように、伝熱用導体層7(接地導体層)の平面視で平面コイル導体3と重なる部分に開口部7aを設けるのが好ましい。これにより、接地導体層7の平面コイル導体3に対向する部分の面積が小さくなり、平面コイル導体3と接地導体層7との間の容量が小さくなるので、基板の厚みを厚くすることなく、コイルのインダクタンスとキャパシタンスによって生じる共振周波数を高くすることができる。その結果として、より高い周波数においても高インダクタンス値を得ることができるので、内蔵コイルをより小さくすることができ、小型のコイル内蔵基板を得ることができる。
【0055】
伝熱用導体層7に設ける開口部7aは、平面コイル導体3と重なる部分が全て開口した平面コイル導体3に沿った形状としてもよいが、図9に示すように分割されて複数形成されていることが好ましい。開口部7aが分割されて複数形成されている、すなわち複数の開口部7aが間隔をあけて配置されていることから、この開口部7a・7a間が、電流が接地導体層7内を平面コイル導体3に沿って形成された開口部7aと交差する方向に流れるための経路となるので、開口部7aによる電源インダクタンスの上昇やそれに伴う電源ノイズの増大が抑えられ、コイル内蔵基板に搭載されるICを高周波で安定して動作させることが可能なコイル内蔵基板を得ることできる。
【0056】
このような開口部7aにするためには、開口部7aの大きさは平面コイル導体3より一回り大きいものがよく、積層の位置ずれを考慮すると、平面コイル導体3の幅に対して0.1mm程度大きい幅のものとすればよい。また、複数の開口部7a・7a間の間隔は、電源インダクタンスの上昇やそれに伴う電源ノイズの増大が抑えられるような電流経路とするには、0.1mm以上の幅があればよい。開口部7aの面積は要求される共振周波数に応じて決定すればよい。また、形状も特に限定されるものではなく、図9に示す例のような四角形以外の多角形や円形等の形状でもよい。
【0057】
また、平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、平面コイル導体3の角部に特に電界が集中することによって起きるノイズを抑えるために、図9に示すように、平面コイル導体3の角部とは重ならないような開口部7aとするのが好ましい。
【0058】
また、平面コイル導体3の角部を、曲線状に曲がっている形状、または、複数の屈曲部を有する形状とすると、平面コイル導体3に対向する接地導体層の面積が小さくなり、平面コイル導体3と接地導体層との間のキャパシタンスが小さくなることで、より高周波までインダクタンス値が得られ、また、角部が電流の集中しにくい形状となることで電界の集中が低減し、ノイズ放射そのものを削減することができるので好ましい。
【0059】
伝熱用導体層7が接地導体層を兼ねない場合は、図9に図1と同様の断面図で示すように、接地導体層6eを別に設けてもよいことはいうまでもない。この場合は、平面コイル導体3と絶縁層1との間に形成された伝熱用導体層7により、接地導体層6eと平面コイル導体3との間の電磁気的結合が妨げられるので、接地導体層6eの平面コイル導体3と重なる部分に開口部4aを設けなくても平面コイル導体3と接地導体層4との間の容量が小さくなるので、基板の厚みを厚くすることなく、内蔵コイルのインダクタンスとキャパシタンスによって生じる共振周波数を高くすることができる。なお、接地導体層6eは、図1〜図7では省略されているが、図1〜図3に示すように伝熱用導体層7が形成されない場合や、図4〜図5に示すように伝熱用導体層7が平面コイル導体3・3の間に形成される場合や、図6〜図7に示すような形態で伝熱用導体層7が接地導体層を兼ねない場合においても必要に応じて形成されるものである。
【0060】
また、図10〜図12に図1と同様の断面図で示すように、上記構成において、伝熱用貫通導体4はその横断面積がフェライト磁性体層2側より基板の主面側(図10〜図12に示す例では基板の下面側)の方が大きいことが好ましい。この構成により、伝熱用貫通導体4中におけるフェライト磁性体層2側から基板の主面側へ向かう伝熱の熱抵抗がより小さいものとなるので、伝熱用貫通導体4に伝わった熱は、より効率よく基板の主面側へと向かい放熱用導体層5へと伝えられ、放熱用導体層5を介してより効率よく外部へ放熱される。
【0061】
伝熱用貫通導体4の横断面積は、図10および図11に示す例のように、段階的に大きくなっているものであってもよく、図12に示す例のように、段差なしにフェライト磁性体層2から基板の主面にかけて連続的に徐々に大きくなるものであってもよい。段階的に大きくなる場合は、図10に示す例のような1段だけではなく図11に示す例のような複数段であってもよいし、また連続的に大きくなる場合は、長さ当りで大きくなる割合は一定でなくてもよい。いずれの場合も、基板の主面側で横断面積を大きくすることでより効率よく基板の主面側に伝熱させることができるが、上述したように、伝熱方向に対して45°拡がった範囲で伝熱量の9割以上が伝わるので、基板の主面にかけて最大でも45°拡がるような形状とすればよい。また、伝熱用貫通導体4の横断面積は、フェライト磁性体層2から基板の主面にかけてのどの位置から大きくなってもよいが、磁束の通過をできるだけ良好なものとしてインダクタンスの低下を抑えるためには、図11および図12に示す例におけるように、絶縁層1内において大きくなるのが好ましい。
【0062】
また、伝熱用貫通導体4の横断面積は、より効率よく基板の主面側に伝熱させるために、絶縁層1内の配線層6に接続されない範囲においてできるだけ大きくすればよい。その結果として、横断面積が大きくなった部分を1つにまとめた形状、例えばフェライト磁性体層2内に形成された複数の伝熱用貫通導体4が絶縁層1内に形成された1つの横断面積の大きい伝熱用貫通導体4に接続された形状としてもよい。この場合、フェライト磁性体層2内に形成された全ての伝熱用貫通導体4を絶縁層1内に形成された1つの横断面積の大きい伝熱用貫通導体4に接続してもよいし、絶縁層1内の配線層6の配置を考慮して形成した、例えば2つ〜3つの横断面積の大きい伝熱用貫通導体4に接続してもよい
放熱用導体層5は、図1〜図12に示すように、基板の主面に伝熱用貫通導体4に接続されて形成される。その大きさは特に制限されるものではく基板の主面(下面)の一部だけでなく、例えば図9に示すように、基板の主面(下面)に形成された電極パッド6d等に接続しないように基板の主面(下面)全体にかけて形成してもよい。
【0063】
また、放熱用導体層5は、基板の主面上の電子部品の搭載位置から十分な距離があり、伝熱用貫通導体4および放熱用導体層5から電子部品へ熱が伝わることがない場合には、電子部品が搭載される側の主面上に形成してもよい。また、基板に搭載される電子部品の発熱が平面コイル導体3の発熱より大きく、温度が高くなるような場合には、電子部品を搭載する搭載用電極6bと伝熱用貫通導体4,伝熱用導体層7または放熱用導体層5のいずれかとを接続したり、または電子部品を基板の両主面に形成した放熱用導体層5の一方に搭載したりしてもよい。
【0064】
また、放熱用導体層5は、その厚みを配線層6や平面コイル導体3に比較して厚くすることで、より放熱性を向上させることができる。例えば、配線層6や平面コイル導体3の厚みが通常10μm程度で形成されるのに対して、より厚くして20μm以上の厚みにするとよい。
【0065】
さらに、放熱用導体層5は、その表面粗さを搭載用電極6bや電極パッド6dに比較して大きくすることで、表面積を大きくして放熱性を向上させることができる。例えば、搭載用電極6bや電極パッド6dの表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が通常1〜5μm程度であるのに対して、20μm程度以上の表面粗さに、またはそれ以上のレベルの凹凸のある形状にするとよい。
【0066】
絶縁層1は、その表面や内部に形成される配線層6や絶縁層1に挟持されて形成されるフェライト磁性体層2および平面コイル導体3とともに800〜1000℃の温度で同時焼成された絶縁体粉末の焼結体から成るものであり、配線層6のインダクタンスが高くなることを抑制するという観点からは、非磁性フェライトやガラスセラミックス等の非磁性絶縁体から成るものが好ましい。絶縁層1は、絶縁体粉末および有機バインダーを主成分とする絶縁層1用グリーンシートを製作し、この絶縁層1用グリーンシートを必要な配線展開ができるだけの枚数積層した後、800〜1000℃の温度で焼成することにより作製される。
【0067】
絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、Zn系フェライトやCu系フェライトを用いればよい。中でも、X−Fe2O4(XはCu,Zn)として示される正スピネル構造の固溶体であるCu−Zn系フェライトが好適である。
【0068】
Cu−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFe2O3を50〜70質量%,CuOを5〜20質量%,ZnOを20〜35質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm3以上の高密度焼成が可能であり、かつ、焼成後の非磁性フェライト層は低温度域でも非磁性であるので好ましい。Fe2O3はフェライトの主成分であり、その割合が50質量%未満であると磁性が発生する傾向があり、70質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液相を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することができる。このことからその割合が5質量%未満であると、配線層6と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向があり、20質量%より多いとキュリー温度が上がり、低温領域で磁性が発生する傾向がある。ZnOは非磁性フェライトを非磁性にするために重要な要素であり、その割合が20質量%未満であると焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向があり、35質量%より多いと磁性が発生する傾向がある。
【0069】
また、絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、非磁性フェライトの粉末に軟化点の低いガラスを加えて低温焼成したものであってもよい。このときのガラスとしては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1及びM2は同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1及びM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M32O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M32O系(但し、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができ、ガラスの軟化点が600℃以下であることがフェライトの焼結を阻害しないうえで望ましい。
【0070】
絶縁層1がガラスセラミックスから成る場合は、絶縁体粉末は上記のようなガラスの粉末とフィラー粉末との混合物の焼結体から成り、フィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
【0071】
配線層6は、Cu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものであり、絶縁層1用グリーンシートに配線層6用導体ペーストを印刷することにより配線パターンを形成しておき、絶縁層1用グリーンシートと同時焼成することにより形成される。
【0072】
フェライト磁性体層2は、強磁性フェライトであるNi−Zn系フェライト,Mn−Zn系フェライト,Mg−Zn系フェライト,Ni−Co系フェライト等の磁性フェライト粉末の焼結体であるが、X−Fe2O4(XはCu,Ni,Zn)として示される逆スピネル構造の固溶体であるNi−Zn系フェライトが高周波帯域で十分に高い透磁率を得るのに好ましい。
【0073】
Ni−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFe2O3を63〜73質量%,CuOを5〜10質量%,NiOを5〜12質量%,ZnOを10〜23質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm3以上の高密度焼成が可能であり、かつ高周波帯域で十分に高い透磁率を得ることができるので好ましい。Fe2O3はフェライトの主成分であり、その割合が63質量%未満であると十分な透磁率が得られない傾向があり、73質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液層を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することができる。このことから、その割合が5質量%未満であると、配線層6や平面コイル導体3と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向があり、10質量%より多いと、磁気特性の低いCuFe2O4の割合が多くなるため磁気特性を損ないやすくなる傾向がある。NiOはフェライト磁性体層2の高周波域における透磁率を確保するために含有させる。NiFe2O4は高周波域まで共振による透磁率の減衰を起こさず、高周波域での透磁率を比較的高い値に維持することができるが、初期透磁率は低いという特性をもつため、5質量%未満であると10MHz乃至それ以上の高周波域での透磁率が低下する傾向があり、12質量%より多いと初期透磁率が低下する傾向にある。ZnOはフェライト磁性体層2の透磁率向上のために重要な要素であり、フェライト組成のうち10質量%未満であると透磁率が低くなり、逆に23質量%より多くても磁気特性が悪くなる傾向がある。
【0074】
フェライト磁性体層2は、絶縁層1に用いられる絶縁層用グリーンシートと同様の手法で形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシートを用いることで作製される。
【0075】
平面コイル導体3は、配線層6と同様に金属粉末の焼結体であるメタライズ金属層からなるものであり、フェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体3用導体ペーストを印刷することによりコイルパターンを形成し、さらにその上にフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層して同時焼成することにより、フェライト磁性体層2に埋設されて形成される。平面コイル導体3が上下に複数重ねて形成される場合は、コイルパターンおよび貫通導体パターンが形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシートを複数積層した上にさらにフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層すればよい。
【0076】
平面コイル導体3の作製に用いられる金属粉末は、配線層6と同様のCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末を用いる。これにより、平面コイル導体3の電気抵抗が小さくなり、平面コイル導体3の発熱そのものを抑えることができる。
【0077】
絶縁層1用グリーンシートまたはフェライト磁性体層2用グリーンシートは、絶縁体粉末または磁性フェライト粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤や可塑剤等を混合してスラリーを得て、これからドクターブレード法,圧延法,カレンダーロール法,押し出し成形法等によってシート状に塗布し、乾燥して成形することにより作製される。
【0078】
絶縁層1用グリーンシートに用いられる絶縁体粉末は、絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、Fe2O3とCuOやZnOの粉体を所定の割合で混合して仮焼したものを粉砕し、原料粉末とすることができる。
【0079】
フェライト磁性体層2用グリーンシートに用いられる強磁性フェライト粉末は、Fe2O3とCuO,ZnO,またはNiOとを予め仮焼することにより作製されたフェライト粉末であり、平均粒径が0.1μm〜0.9μmの範囲で均一であり、粒形状は球形状に近いものが望ましい。これは、平均粒径が0.1μmより小さいと、フェライト磁性体層2用グリーンシートの製作においてフェライト粉末の均一な分散が困難であり、平均粒径が0.9μmより大きいとフェライト磁性体層2用グリーンシートの焼結温度が高くなりやすくなるからである。また、粒径が均一で球状に近いことにより均一な焼結状態を得ることができる。例えばフェライト粉末で部分的に小さい粒径が存在した場合は、その部分のみ結晶粒の成長が低下し、焼結後に得られるフェライト磁性体層2の透磁率が安定しにくい傾向がある。
【0080】
有機バインダーは、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
【0081】
グリーンシートの有機溶剤は、絶縁体粉末やフェライト粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類,アルコール類の有機溶媒や水等が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。
【0082】
グリーンシートを作製するためのスラリーは絶縁体粉末やフェライト粉末100質量部に対して有機バインダーを5〜20質量部、有機溶剤を15〜50質量部加え、ボールミル等の混合手段により混合することにより3〜100cpsの粘度となるように調製される。
【0083】
配線層6の内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンは、絶縁層1用グリーンシートの表面に配線層6用導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成される。貫通導体6cとなる配線パターンは、内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンの形成に先立って絶縁層1用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成し、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって配線層6用導体ペーストを充填することで形成される。
【0084】
平面コイル導体3となるコイルパターンも同様に、フェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体3用導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成され、フェライト磁性体層2内の貫通導体となる配線パターンも上記貫通導体6cとなる配線パターンと同様にして形成される。平面コイル導体3用導体ペーストは配線層6用導体ペーストと同じものを用いればよい。
【0085】
平面コイル導体3となるコイルパターンは、要求されるインダクタンス値やサイズにもよるが、上記のように印刷により形成する場合は線幅および隣接する外周と内周の導体間距離が0.1mm程度以上であれば容易に形成できる。できるだけ小さい面積でコイルの巻き数を多くするためには、線幅を0.1〜1mm程度にし、導体間距離を0.1〜0.2mm程度にすればよい。
【0086】
配線層6用導体ペーストおよび平面コイル導体3用導体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで作製される。
【0087】
導体ペーストの有機バインダーは、従来より導体ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダーがより好ましい。
【0088】
導体ペーストの有機溶剤は、上記した金属粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等が使用可能である。
【0089】
配線層6の内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンを形成するための配線層6用導体ペーストや平面コイル導体3用導体ペーストは、金属導体粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜15質量部、有機溶剤を10〜30質量部加えて混練することにより、印刷により導体ペーストの滲みやかすれ等の不具合が発生せず良好に所定形状のパターン形成ができる程度の粘度となるようにすることが望ましい。
【0090】
貫通導体6cとなる配線パターンを形成するための導体ペーストは、溶剤量や有機バインダー量により、内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンを形成するための配線層6用導体ペーストや平面コイル導体3用導体ペーストに対して比較的流動性の低いペースト状に調整し、貫通孔への充填を容易にし、かつ加温硬化するようにするとよい。また、焼結挙動の調整のために金属導体粉末にガラスやセラミックスの粉末を加えた無機成分としてもよい。
【0091】
絶縁層1を非磁性フェライトで形成する場合には、搭載用電極6bや電極パッド6dのような絶縁層1の外表面に形成される配線層6を形成するための配線層6用導体ペーストには、ZnO,CuO,MgO,CoO,NiO,MnO,FeO等の2価の金属酸化物の粉末を添加することが望ましい。2価の金属酸化物を添加することで、外表面の配線層6を非磁性フェライトを主成分とする絶縁層1に強固に接合させることができる。
【0092】
コイルパターンが形成されたものを含む所定枚数のフェライト磁性体層2用グリーンシートの上下にそれぞれ配線パターンが形成された所定枚数の絶縁層1用グリーンシートを配置して積層体を作製し、この積層体を焼成することによりコイル内蔵基板は作製される。
【0093】
伝熱用貫通導体4は、表層の配線パターンおよび放熱用導体層5となる放熱用導体層パターンの形成に先立って絶縁層1用グリーンシートおよびフェライト磁性体層2用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成しておき、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって貫通導体6c用の導体ペーストを充填し、これらと同時焼成することで形成される。貫通導体6cと伝熱用貫通導体4とが同一の層に形成される場合は、同時に貫通孔の形成およびペーストの充填を行なえばよい。
【0094】
図10および図11に示す例のように伝熱用貫通導体4の横断面積をフェライト磁性体層2側より基板の主面側の方を大きくするには、主面側のグリーンシートに形成する貫通孔を大きいものにすればよい。また、図12に示す例のように伝熱用貫通導体4の横断面積を段差なしにフェライト磁性体層2から基板の主面にかけて徐々に大きい形状とする場合は、上下で径の異なる、例えばテーパ状等の内壁面が傾斜した貫通孔を形成すればよく、グリーンシートを打抜く金型のクリアランスを大きめにしたり、レーザの出力等を調節したりすることで可能である。
【0095】
伝熱用貫通導体4の管状部4aは、図6に示すような、フェライト磁性体層2や絶縁層1を貫通しない形状の場合は、フェライト磁性体層2用グリーンシートやフェライト磁性体層2用グリーンシートに伝熱用貫通導体4となるパターンを形成した後に、その露出した部分と重なるようにフェライト磁性体層2用グリーンシートやフェライト磁性体層2用グリーンシート上に、配線層6のパターンと同様にして管状のパターンを形成すればよい。また、図3および図5に示すような、フェライト磁性体層2や絶縁層1を貫通する形状の場合は、伝熱用貫通導体4の形成時に同様にして同時に形成すればよい。管状部4aを完全な管状とするとグリーンシートに貫通孔を形成することができないので、図3および図5に示すような複数に分割した形状とすればよく、分割の数や形状については特に制限されるものではない。
【0096】
放熱用導体層5および伝熱用導体層7は、配線層6と同様にCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものである。伝熱用導体層7は、内部配線層6a等の形成に用いる配線層6用導体ペーストを、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等により絶縁層1用グリーンシートまたはフェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に所定パターン形状に塗布し、これらとともに同時焼成されて形成される。放熱用導体層5は、搭載用電極6bや電極パッド6dのような絶縁層1の外表面に形成される配線層6用導体ペーストと同様の導体ペーストを、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等により絶縁層1用グリーンシート上に所定パターン形状に塗布し、これらとともに同時焼成されて形成される。搭載用電極6bや電極パッド6dの形成と同時に行なえばよい。
【0097】
放熱用導体層5の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を配線層6(搭載用電極6bや電極パッド6d)より大きくするには、導体ペーストに用いる金属粉末に粒径の大きいものを用いて形成すればよい。例えば、配線層6,平面コイル導体3または伝熱用導体層7の形成に用いる導体ペーストに5μm程度の金属粉末を用いるのに対して、放熱用導体層5の形成に用いる導体ペーストには10μm程度以上の金属粉末を用いればよい。
【0098】
また、放熱用導体層5の表面を凹凸のある形状とするには、例えば導体ペーストを塗布した後に型を押し付けるなどして、溝の列あるいは多数の点状の凸部または凹部といった形状の凹凸を形成すればよい。
【0099】
積層体を作製する方法は、積み重ねた絶縁層1用グリーンシートとフェライト磁性体層2用グリーンシートとに熱と圧力とを加えて熱圧着する方法や、有機バインダー,可塑剤,溶剤等からなる密着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。積層の際の加熱加圧の条件は、用いる有機バインダー等の種類や量により異なるが、概ね30〜100℃および2〜20MPaである。
【0100】
積層体の焼成は、300〜600℃の温度で脱バインダーした後、800〜1000℃の温度で焼成することにより行なわれる。焼成雰囲気としては、平面コイル導体3やその他の配線がAg等の酸化しにくい材料から成る場合は大気中にて行なわれ、Cu等の酸化しやすい材料から成る場合は、窒素雰囲気が用いられ、脱バインダーしやすいように加湿したものを用いる。
【0101】
焼成後のコイル内蔵基板の表面に形成された搭載用電極6b,電極パッド6dおよび放熱用導体層5には、半導体チップやチップ部品、または外部電気回路との半田等による接合を強固なものにするために、その表面にニッケル層および金層をめっき法により順次被着するとよい。
【実施例】
【0102】
本実施例1では、本発明のコイル内蔵基板として、図7に示すような、平面コイル導体3の内周に沿って、平面コイル導体3の内側の領域の角部およびその間に計8本の伝熱用貫通導体4を、また、上下に位置する2つの平面コイル導体3・3間および基板の下側の絶縁層1とフェライト磁性体層2との間に伝熱用導体層7を、そして、基板の下面に放熱用導体層5を設けた構造に、上下の絶縁層1にそれぞれ接地導体層6eを加えたコイル内蔵基板を作製し、基板の上面に形成した配線層6の表面温度を測定した。以下に詳細に説明する。
【0103】
まず、Fe2O3粉末630gとCuO粉末80gとZnO粉末290gとを、純水4000cm3とともにジルコニアボールを使用した7000cm3のボールミルにて24時間かけて混合した後、乾燥した混合粉末をジルコニアるつぼに入れて大気中730℃で1時間加熱することにより、非磁性フェライト仮焼粉末を作製した。作製した非磁性フェライト仮焼粉末100質量部に対し、バインダーとしてブチラール樹脂を10質量部、有機溶剤としてIPA(イソプロピルアルコール)を45質量部添加し、上記と同様のボールミル法により混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ100μmの非磁性フェライトからなる絶縁層用グリーンシートを成型した。
【0104】
この絶縁層用グリーンシートに金型による打ち抜き加工によって、貫通導体6c用の直径150μmの貫通孔および伝熱用貫通導体4用の直径240μmの貫通孔を形成した。この貫通孔に貫通導体ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥した。貫通導体ペーストとしては、Ag粉末100質量部と、焼結助剤としてのガラス粉末10質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール2質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
【0105】
次に、この絶縁層用グリーンシートに導体ペーストをスクリーン印刷法により2mm四方のサイズで20μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥して温度測定用の表層配線層パターンおよび平面コイル導体3に外部から通電するための通電用表層配線層パターンを形成した。また、接地導体層6eとなる配線層パターンおよび絶縁層1とフェライト磁性体層2との間の伝熱用導体層7となるパターンも別の絶縁層用グリーンシートに同様にして形成した。
【0106】
導体ペーストとしては、金属粉末としてAg粉末100質量部に金属酸化物としてCuO粉末10質量部を加えた原料100質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール2質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
【0107】
次に、Fe2O3粉末700gとCuO粉末60gとNiO粉末60gとZnO粉末180gとを用いて、非磁性フェライト仮焼粉末と同様の作製方法で強磁性フェライト仮焼粉末を作製した。作製した磁性フェライト仮焼粉末100質量部に対し、バインダーとしてブチラール樹脂を10質量部、有機溶剤としてIPAを45質量部添加し、上記と同様のボールミル法により混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ100μmのフェライト磁性体層用グリーンシートを成型した。
【0108】
このフェライト磁性体層用グリーンシートに、金型による打ち抜き加工によって貫通導体6c用の直径150μmの貫通孔および伝熱用貫通導体4用の直径240μmの貫通孔を形成した。この貫通孔に、貫通導体ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥して貫通導体となる貫通導体組成物を形成した。貫通導体ペーストとしては、上記と同じものを用いた。
【0109】
続いて、フェライト磁性体層用グリーンシート2枚にそれぞれ導体ペーストをスクリーン印刷法によって30μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥し、3ターン(3巻き)の平面コイル導体パターンを形成した。導体ペーストとしては、Ag粉末100質量部に、アクリル樹脂10質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール1質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
【0110】
また、別のフェライト磁性体層体用グリーンシート1枚には、平面コイル導体パターンと同じ導体ペーストをスクリーン印刷法によって30μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥し、伝熱用導体層パターンを形成した。上下の平面コイル導体パターンを接続するための貫通導体6cとは接続されないように直径250μmの開口部を設けたパターンとした。
【0111】
次に、下から順に平面コイル導体パターンを形成したフェライト磁性体層用グリーンシート、伝熱用導体層パターンを形成したフェライト磁性体層用グリーンシート、平面コイル導体パターンを形成したフェライト磁性体層用グリーンシート、貫通導体パターンのみ形成したフェライト磁性体層用グリーンシートを重ね、さらにその上下にそれぞれ4枚の絶縁層用グリーンシートを積み重ねて、5MPaの圧力と50℃の温度で加熱圧着して絶縁層用グリーンシートが表層に位置する積層体を作製した。
【0112】
次に、積層体を12mm角に切断した後、大気中で500℃、3時間の条件で加熱して有機分を除去した後、大気中で900℃、1時間の条件で焼成して、コイル内蔵基板を作製した。コイル内蔵基板は、フェライト磁性体層2が一対の絶縁層1・1で挟持され、フェライト磁性体層2内においては平面コイル導体3が上下に重なって形成され、上下それぞれの平面コイル導体3・3の一方の端部同士が貫通導体6cにより接続され、上方の平面コイル導体3の他方の端部は上方の接地導体層6eとは電気的に接続されずに上方の接地導体層6eを貫通する貫通導体6cにより通電用表層配線層に接続され、下方の平面コイル導体3の他方の端部は下方の接地導体層6eに接続され、下方の接地導体層6eは貫通導体により別の通電用表層配線層に接続された構造とした。コイル内蔵基板は、外形サイズが10mm角で厚みが0.8mmであり、平面コイル導体3は、導体厚みが0.02mm,導体幅が0.3mm,矩形の最外周が6mm角,隣接する外周と内周の導体間距離が0.15mmであった。伝熱用導体層7は、導体厚みが0.02mmで、外寸6.3mm角のほぼ中央部に3.0mm角の開口を有する形状であり、伝熱用貫通導体4は、最内周の平面コイル導体3から0.1mm離間した位置に直径0.2mmのものが伝熱用導体層7に接続されて配置され、放熱用導体層5は、導体厚みが0.03mmで、外寸6mm角のものが伝熱用貫通導体4に接続されて基板下面の中央部に配置されたものであった。
【0113】
このコイル内蔵基板の外表面に形成された配線層6および放熱用導体層5上には、無電界めっき法を用いてNiめっき皮膜およびAuめっき皮膜を順次形成した。
【比較例】
【0114】
本発明の実施例1との比較のために、従来構成として実施例1の試料に対して図10に示すような、伝熱用貫通導体4,放熱用導体層5,および伝熱用導体層7を有さないものとした以外は、実施例1と同様にしてコイル内蔵基板を作製した。
【0115】
実施例1および比較例のコイル内蔵基板は、それぞれセラミック基板上に半田を用いて実装した。また、実施例1のコイル内蔵基板は、放熱導体5とセラミック基板上の接続導体とも半田で接合した。
【0116】
そして、セラミック基板上に実装した状態で平面コイル導体3に電気的に接続された基板の表面の通電用表層配線層にプローブを当て、直流電源装置(菊水電子工業製「PMC18−3A」)により平面コイル導体3に5Vで1Aの電流を10秒間通電した後に、基板表面の温度測定用の表層配線層上の温度を測定した。温度の測定は、非接触式の放射温度計(キーエンス製「FT−H10」)を用いて測定した。
【0117】
その結果、実施例1の基板の表層配線層上の温度は39℃であったのに対して、比較例の基板の表層配線層上の温度は80℃であった。これにより、比較例に対して実施例1のコイル内蔵基板は、平面コイル導体3に発生した熱を基板の主面から放熱することのできるコイル内蔵基板であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図2】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図3】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図4】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図5】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図6】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図7】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図8】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図9】本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図10】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図11】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図12】(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A’線で切断した横断面図である。
【図13】従来のコイル内蔵基板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1・・・絶縁層
2・・・フェライト磁性体層
3・・・平面コイル導体
4・・・伝熱用貫通導体
5・・・放熱用導体層
6・・・配線層
7・・・伝熱用導体層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線層が形成された一対の絶縁層および該一対の絶縁層に挟持されたフェライト磁性体層からなる基板と、前記フェライト磁性体層内に形成された平面コイル導体とを具備するコイル内蔵基板であって、平面視で前記平面コイル導体の内側の領域に、前記フェライト磁性体層から前記基板の主面にかけて前記フェライト磁性体層および前記絶縁層を貫通する伝熱用貫通導体が形成され、前記基板の前記主面に前記伝熱用貫通導体が接続された放熱用導体層が形成されていることを特徴とするコイル内蔵基板。
【請求項2】
複数の前記伝熱用貫通導体が、前記平面コイル導体の内側に沿って配置されていることを特徴とする請求項1記載のコイル内蔵基板。
【請求項3】
前記フェライト磁性体層に、前記伝熱用貫通導体に接続されるとともに平面視で前記平面コイル導体と重なる伝熱用導体層が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のコイル内蔵基板。
【請求項4】
前記平面コイル導体は、間に前記フェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、前記伝熱用導体層が、上下に位置する前記平面コイル導体間に形成されていることを特徴とする請求項3記載のコイル内蔵基板。
【請求項5】
前記伝熱用導体層が、前記平面コイル導体と前記絶縁層との間に形成されていることを特徴とする請求項3または4記載のコイル内蔵基板。
【請求項6】
前記伝熱用貫通導体が、前記平面コイル導体の内側に沿った管状部を有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のコイル内蔵基板。
【請求項7】
前記伝熱用貫通導体は、その横断面積が前記フェライト磁性体層側より前記基板の主面側の方が大きいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコイル内蔵基板。
【請求項1】
配線層が形成された一対の絶縁層および該一対の絶縁層に挟持されたフェライト磁性体層からなる基板と、前記フェライト磁性体層内に形成された平面コイル導体とを具備するコイル内蔵基板であって、平面視で前記平面コイル導体の内側の領域に、前記フェライト磁性体層から前記基板の主面にかけて前記フェライト磁性体層および前記絶縁層を貫通する伝熱用貫通導体が形成され、前記基板の前記主面に前記伝熱用貫通導体が接続された放熱用導体層が形成されていることを特徴とするコイル内蔵基板。
【請求項2】
複数の前記伝熱用貫通導体が、前記平面コイル導体の内側に沿って配置されていることを特徴とする請求項1記載のコイル内蔵基板。
【請求項3】
前記フェライト磁性体層に、前記伝熱用貫通導体に接続されるとともに平面視で前記平面コイル導体と重なる伝熱用導体層が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のコイル内蔵基板。
【請求項4】
前記平面コイル導体は、間に前記フェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、前記伝熱用導体層が、上下に位置する前記平面コイル導体間に形成されていることを特徴とする請求項3記載のコイル内蔵基板。
【請求項5】
前記伝熱用導体層が、前記平面コイル導体と前記絶縁層との間に形成されていることを特徴とする請求項3または4記載のコイル内蔵基板。
【請求項6】
前記伝熱用貫通導体が、前記平面コイル導体の内側に沿った管状部を有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のコイル内蔵基板。
【請求項7】
前記伝熱用貫通導体は、その横断面積が前記フェライト磁性体層側より前記基板の主面側の方が大きいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコイル内蔵基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−177516(P2008−177516A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104934(P2007−104934)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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