説明

コネクタ付きケーブル

【課題】コネクタ付きケーブルにおいて、コネクタに対するケーブルの十分な引張強度や、コネクタに対するブーツの十分な保持強度を確保することができる技術を提供する。
【解決手段】コネクタ付きケーブル1は、ケーブル6にコネクタを取り付けた形態であり、コネクタのハウジング2は、2つのケース部材2a,2bにより構成されている。ケーブル6の根元部分は樹脂製のブーツ8で覆われており、ブーツ8の開口周縁にはフランジ8aが形成されている。ブーツ8の内側には金属製のストップリング10が配置されており、ストップリング10は筒形状をなす本体に伝送線6aを挿通させるとともに、その外側に抗張力繊維7と外皮6bとを被せた状態でかしめリング12により締め付けられている。ストップリング10の開口周縁にもフランジ10aが形成されており、フランジ10aはフランジ8aと重ね合わされた状態で溝2c,2d内に差し込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ付きケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線(メタル線)と光ファイバとを収容した光電気複合ケーブルの両端に例えば、HDMI(High Definition Multimedia Interface:登録商標)規格や、USB(Universal Serial Bus)規格等に準拠したコネクタを取り付けたコネクタ付きケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来のコネクタ付きケーブルにおいて、光電気複合ケーブルの末端部分はコネクタのハウジングに固定され、光電気複合ケーブル内の電線と光ファイバは、ハウジング内に格納されている光電変換モジュールと接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−237640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コネクタ付きケーブルは、取り扱いの際に、コネクタと光電気複合ケーブルとの間に引っ張り力が加わることが想定される。したがって、コネクタのハウジングと光電気複合ケーブルの末端部分との接続部分は、十分な引張強度でがたつきなくしっかりと固定されていることが要求される。
【0005】
また、一般に、コネクタと光電気複合ケーブルとの接続部分には、曲げに対して光ファイバを保護するために、ブーツを設けることが行われる。ブーツの部分が把持されて引っ張られることも想定されるため、ブーツもコネクタのハウジングに対して、十分な保持強度で固定されていることが望ましい。
【0006】
そこで本発明は、コネクタ付きケーブルにおいて、コネクタに対するケーブルの十分な引張強度や、コネクタに対するブーツの十分な保持強度を確保することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明のコネクタ付きケーブルは、伝送線を外皮で被覆したケーブルの末端部分にコネクタが取り付けられたコネクタ付きケーブルであって、筒状に形成され、内部にケーブルの末端部分で外皮から引き出された伝送線が挿通されるとともに外面に外皮を被せた状態で保持する本体と、ケーブルの末端側に位置する本体の一端に形成された第1のフランジとからなる金属製の保持部材と、保持部材を含めたケーブルの末端部分の外周を覆い、かつ、ケーブルの末端側に位置する一端に第1のフランジと互いに重なり合う第2のフランジが形成された樹脂製の外装部材と、ケーブルの末端部分で外皮から引き出された伝送線を内部に収容する状態に組み合わされ、かつ、この組み合わせ状態で第1のフランジ及び第2のフランジを重ね合わせ方向に圧着しながら保持する2つのケース部材とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコネクタ付きケーブルによれば、コネクタに対するケーブルの十分な引張強度や、コネクタに対するブーツの十分な保持強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コネクタ付きケーブルの構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】ケーブルに取り付けられたブーツ及び上記のストップリングの形状を概略的に示す斜視図である。
【図3】ストップリングの形状を示す斜視図である。
【図4】図2中に示すIV−IV線に沿うケーブル、ブーツ及びストップリングの断面図である。
【図5】一方のケース部材の外観を概略的に示す斜視図である。
【図6】他方のケース部材の外観を概略的に示す斜視図である。
【図7】図1中に示すVII―VII線に沿うコネクタ付きケーブルの縦断面図である。
【図8】ブーツのフランジ及びストップリングのフランジの取り付け部分を拡大して示す断面図である。
【図9】第2実施形態における一方のケース部材の外観を概略的に示す斜視図である。
【図10】図9中に示すケース部材の突条部周辺を拡大して示す斜視図である。
【図11】第2実施形態における他方のケース部材の外観を概略的に示す斜視図である。
【図12】図11中に示すケース部材の突条部周辺を拡大して示す斜視図である。
【図13】第2実施形態におけるフランジの取り付け部分を拡大して示す断面図である。
【図14】第3実施形態におけるフランジの取り付け部分を拡大して示す断面図である。
【図15】第4実施形態におけるケース部材の外観を概略的に示す斜視図である。
【図16】図15中に示すケース部材の開口周辺を拡大して示す斜視図である。
【図17】第4実施形態におけるフランジの取り付け部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態のコネクタ付きケーブル1の構成を概略的に示す斜視図である。このコネクタ付きケーブル1は、例えばHDMI(High Definition Multimedia Interface:登録商標)規格や、USB(Universal Serial Bus)規格等に準拠したコネクタを、光信号及び電気信号を複合的に伝送する光電気複合ケーブルの末端部分に取り付けた形態である。ここでは一例として、HDMI(登録商標)規格に準拠したコネクタ付きケーブルを用いてその構成を説明する。
【0011】
上記のようにコネクタ付きケーブル1は、光電気複合ケーブル(以下、単に「ケーブル」)6の末端部分にコネクタ(参照符号なし)が取り付けられた形態である。コネクタはハウジング2及びプラグ4(接続端子)を備えており、このうちハウジング2内にケーブル6の末端部分が引き込まれている。プラグ4は、例えば上記のHDMI規格に準拠したデジタルAV(Audio/Visual)機器やPC(Personal Computer)等の外部機器に備えられたレセプタクルに差し込まれる。またここでは図示していないが、ケーブル6のもう片方の末端部分にも同様のコネクタが取り付けられている。
【0012】
コネクタのハウジング2は、2つ割状のケース部材2a,2bを1つに組み合わせて構成されている。2つのケース部材2a,2bは、それぞれ例えば樹脂製や金属製の素材で形成されており、これらケース部材2a,2bは互いに開口面を向き合わせた状態で箱形状に組み立てられている。またハウジング2内には、電気信号を光信号に変換し、又は、これとは逆に光信号を電気信号に変換する光電変換モジュール(図1には示されていない)が設置されている。ケーブル6やプラグ4は、それぞれハウジング2内で光電変換モジュールに接続されている。
【0013】
ケーブル6は、光ファイバ及び電線(いずれも図示していない)を束にした状態で、これらを外皮により被覆した構造を有する。ケーブル6には、例えば抗張力部材としての抗張力繊維が長手方向に内挿されている。ハウジング2内で光ファイバ及び電線は、ケーブル6の外皮(被覆)から引き出された状態で上記の光電変換モジュールにそれぞれ接続されている。
【0014】
またケーブル6には、ハウジング2から露出した根元の部分に樹脂製のブーツ8が装着されている。ブーツ8は、ハウジング2の一端面(後端面)からケーブル6の長手方向に沿ってある程度の長さを円筒形状に延びた後、そこから終端までの部分が先細形状に形成されている。ここでは図示していないが、ブーツ8の先細形状の部分にはコルゲート(蛇腹、襞等の)加工が施されていてもよい。
【0015】
また図1には示されていないが、ブーツ8の円筒形状をなす胴体部分の内部には、例えば金属製のストップリングが配置されている。コネクタ付きケーブル1において、ケーブル6はストップリングを介してコネクタのハウジング2に固定されている。以下、ブーツ8及びストップリングの構成について、図2,図3を用いて説明する。
【0016】
図2は、ケーブル6に取り付けられたブーツ8及びストップリング10の形状を概略的に示す斜視図である。また図3は、ストップリング10の形状を示す斜視図である。
【0017】
ブーツ8には、上記の胴体部分の周面に連なる開口周縁、つまりケーブル6の末端側に位置する一端にフランジ8a(第2のフランジとしての構成)が形成されている。またストップリング10にも、その円筒状をなす本体の周面に連なる開口周縁、つまりケーブル6の末端側に位置する一端にフランジ10a(第1のフランジとしての構成)が形成されている。フランジ8a及びフランジ10aは、ともに鍔型をなしており、ストップリング10のフランジ10aは、ブーツ8のフランジ8aの前端面に重なり合うようにして配置されている。なおストップリング10は、フランジ10aに連なる本体の略全体がブーツ8に覆われている。
【0018】
図3中に二点鎖線で示されるように、ストップリング10の内部には、ケーブル6の末端部分で外皮6bから引き出された伝送線6aが挿通されており、ストップリング10の外側には、外皮6bが被せられている。なお伝送線6aは、光ファイバ及び電線であり、これらを概略的に示したものである(これ以降も同様)。また、ケーブル6内には、抗張力繊維が伝送線6aに沿って配置されている。ここでは図示されていないが、ストップリング10はその本体の外側に抗張力繊維と外皮6bとが被せられた状態で、さらにかしめリングにより締め付けられる。これにより、抗張力繊維と外皮6bとをストップリング10に対して確実に固定し、ケーブル6の引張強度を確保することができる。
【0019】
上記のフランジ8a,10aは、互いに重ね合わされた状態で、ハウジング2のケース部材2a,2bに設けられた溝(ここでは図示しない)に差し込まれる。
【0020】
図4は、図2中に示すIV−IV線に沿うケーブル6、ブーツ8及びストップリング10の断面図である。上記のようにケーブル6は、その末端部分で引き出された伝送線6aがストップリング10内に挿通されており、この状態で伝送線6aはハウジング2の内部に引き込まれる。またブーツ8とストップリング10との間には、上記のかしめリング12が配置されている。ここではかしめリング12が締め付け加工前の状態で示されているが、かしめリング12はストップリング10に対して周囲から締め付け加工されて塑性変形し、抗張力繊維7と外皮6bとをストップリング10に対して強固に押し付ける(いわゆる「かしめ」)。
【0021】
図5は、一方のケース部材2aの外観を概略的に示す斜視図である。また図6は、他方のケース部材2bの外観を概略的に示す斜視図である。なお、図5中に示すケース部材2aは、図1の状態からケース部材2aの天地を反転させた状態で示されている。
【0022】
図5中に示すケース部材2aの一端に位置する側壁には、厚み方向に凹型をなした溝2cが形成されている。ケース部材2aの側壁には、ケーブル6の長手方向でみて溝2cの両側に半円状の開口2e,2gが形成されている。
【0023】
一方、図6中に示すケース部材2bもケース部材2aと同様に、ケース部材2bの一端に位置する側壁に凹型をなした溝2dが形成されている。また、ケース部材2bの側壁には、ケーブル6の長手方向でみて溝2dの両側に半円状の開口2f,2hが形成されている。
【0024】
溝2c,2d内には、ケース部材2a,2bの組み合わせ状態で、2つのフランジ8a,10aが重ね合わせられた状態で差し込まれる。またこれら溝2c,2d及び開口2e,2f,2g,2hは、ケース部材2a,2bを組み立てたときに、互いに対向して配置され、この状態で、開口2e,2g及び開口2f,2hは円径状の開口を構成する。
【0025】
図7は、図1中に示すVII―VII線に沿うコネクタ付きケーブル1の縦断面図である。また、図8は、図7に示される断面中、ブーツ8のフランジ8a及びストップリング10のフランジ10aの取り付け部分を拡大して示す断面図である。
【0026】
ケース部材2a,2bの組み合わせ状態で、開口2e,2fはハウジング2の一側端に面しており、これらが構成する開口内にはブーツ8及びストップリング10を含むケーブル6の末端部分が挿通されている。また開口2g,2hはハウジング2の内方に位置しており、これらが構成する開口内には伝送線6aが挿通されている。
【0027】
ハウジング2内には、上記の光電変換モジュール30が配置されており、この光電変換モジュール30に対して光ファイバ及び電線がそれぞれ接続されるものとなっている。光電変換モジュール30は、例えばベースとなる回路基板に光導波路や光電変換素子、フレキシブル(FPC)基板、FPCコネクタ等(いずれも符号省略)が実装された構成である。
【0028】
また、図7,図8では2つのフランジ8a,10aが離れた状態で示されているが、実際の取付状態で2つのフランジ8a,10aは溝2c,2d内で一対の壁面の間に挟み込まれ、この状態で互いに重ね合わせ方向に圧着されている。
【0029】
第1実施形態において、溝2c,2dの幅寸法(図8中符号W)は、フランジ8a,10aを重ね合わせたときの厚み寸法と等しいか、若しくは、この厚み寸法よりも若干小さい(例えば、0.1mm程度)ことが好ましい。溝2c,2dの幅寸法Wをフランジ8a,10aの厚み寸法より等しくするか、若しくは、小さくすることで、例えば、組み立て工程で最初にフランジ8a,10aを溝2dに差し込む場合、樹脂製のフランジ8aは、溝2dの側面に接触した際の圧力で若干変形しながら溝2dの底面近くまで差し込まれる。一方、金属製のフランジ10aは、フランジ8aが変形することで、溝2dの側面を削ることなく底面近くまで差し込まれる。また、組み立て工程の最後にケース部材2aを組み合わせるときも、上記と同様に、フランジ8aが変形しながら溝2cに差し込まれる。
【0030】
このように、樹脂製のフランジ8a及び金属製のフランジ10aを重ね合わせた状態で溝2c,2dに収容することで、ハウジング2に対するケーブル6の引張強度を十分に確保することができる。
【0031】
また、フランジ8a及びフランジ10aは、溝2c,2dに隙間無く収容されるため、コネクタは、ケーブル2の末端部分(特にストップリング10)をがたつかせることなくハウジング2に固定することができる。さらに、本実施形態において、ストップリング10のフランジ10aは、ブーツ8のフランジ8aとともに、溝2c,2dの内部へ隙間無く差し込まれている。このため、ブーツ8自体もコネクタのハウジング2に固定されているため、コネクタのハウジング2に対するブーツ8の保持強度を十分に確保することができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態のコネクタ付きケーブル1について説明する。図9は、第2実施形態における一方のケース部材2aの外観を概略的に示す斜視図である。なお、図9中に示すケース部材2aは、図5に示すケース部材2aと同様に、図1の状態からケース部材2aの天地を反転させた状態で示されている。
【0033】
第2実施形態において、ケース部材2aに設けられた溝2cの側壁のうち、開口2gが形成された壁面に突条部2iが設けられている。突条部2iは、開口2gの両脇に配置されている。
【0034】
図10は、図9中に示すケース部材2aの突条部2i周辺を拡大して示す斜視図である。なお、ここでは、図9中に示すX−X線に沿って溝2cをケース部材2aの幅方向に破断し、突条部2iの形状を強調して示している。
【0035】
ケース部材2aの溝2cには、上記のように開口2gが形成された一側面において、開口2gの両脇に突条部2iが設けられている。突条部2iは、フランジ8a,10aの差し込み方向で上りとなる傾斜(上り勾配)を有している。このため、突条部2iは溝2cの底面に向かって拡がった略円錐形状をなしている。なお、溝2cの壁面に対する突条部2iの傾斜部分の最大の高さ(突出寸法)は、例えば0.1mm程度であることが好ましい。
【0036】
図11は、第2実施形態における他方のケース部材2bの外観を概略的に示す斜視図である。
【0037】
ケース部材2bもケース部材2aと同様に、溝2dには、開口2hが形成された壁面に突条部2jが設けられている。突条部2jは、開口2hの両脇に配置されている。
【0038】
また、図9に示すケース部材2a,及び図11に示すケース部材2bは、いずれも組み合わせ方向に対向する面が開口しており、これら開口を突き合わせた状態で1つに組み合わせると、中空の箱型状に形成される。
【0039】
図12は、図11中に示すケース部材2bの突条部2j周辺を拡大して示す斜視図である。なお、ここでは、図11中に示すXII−XII線に沿って溝2dをケース部材2bの幅方向に破断し、突条部2jの形状を強調して示している。
【0040】
ケース部材2bの溝2dには、開口2hが形成された一側面において開口2hの両脇に突条部2jが形成されている。突条部2jは、図10中に示す突条部2iと同様に、フランジ8a,10aの差し込み方向でみて上りとなる傾斜を有しており、溝2dの底面に向かって広がった略円錐形状をなしている。また、溝2dの壁面に対する突条部2jの傾斜部分の最大の高さ(突出寸法)も、突条部2iと同様、例えば0.1mm程度であることが好ましい。
【0041】
図13は、第2実施形態におけるフランジ8a,10aの取り付け部分を拡大して示す断面図である。ここでは主に、ブーツ8及びストップリング10のフランジ8a,10aがケース部材2a,2bの溝2c,2dに差し込まれている部分を拡大して示している。
【0042】
溝2c,2dの幅寸法(符号省略)は、フランジ8a,10aを重ね合わせたときの厚み寸法と等しいか、若しくは、フランジ8a,10aの厚み寸法よりも若干大きい(例えば、突条部の突出寸法である0.1mmより小さい程度)。
【0043】
一般的に、コネクタ付きケーブル1の製造工程では、土台となる一方のケース部材(例えばケース部材2b)の溝2dにブーツ8及びストップリング10のフランジ8a,10aを差し込んだ後、他方のケース部材(例えばケース部材2a)を組み合わせる作業が行われている。
【0044】
このような組み立て作業において、ケース部材2bの溝2dにフランジ8a,10aを重ね合わせた状態で差し込む場合、金属製のフランジ10aは、突条部2jの傾斜に沿ってスライドしながら溝2dの底面に向かって移動する。一方、樹脂製のフランジ8aは、溝2dの壁面に接触すると若干変形しながら底面に向かって移動し、最終的にフランジ8a,10aは溝2d内に差し込まれる。
次に、他方のケース部材2aをケース部材2bに被せる際、上記と同様にケース部材2dに固定されたフランジ10aは、溝2cの突条部2iの傾斜に沿ってスライドしながら底面(場合により天面)に向かって移動する。また、樹脂製のフランジ8aも同様に、溝2dの壁面に接触しながら底面(場合により天面)に向かって移動する。
【0045】
このように、第2実施形態では、金属製のフランジ10aが接触する溝2c,2dの壁面に傾斜した突条部2i,2jを設けることで、フランジ8a,10aを滑らかに溝2c,2dに差し込むことができる。このため、効率的にコネクタ付きケーブル1の組み立てを行うことができる。
【0046】
また、第2実施形態では、溝2c,2dの幅寸法を、フランジ8a,10aを重ね合わせたときの厚さ寸法よりも若干大きく(具体的には、突条部2i,2jの最大突出寸法よりも小さい程度まで)できる。よって、フランジ8a,10aをケース部材2bの溝2d、ケース部材2aの溝2cに差し込む作業が容易となる。
【0047】
また、突条部2i,2jの傾斜の最大高さ(突出寸法)分だけ、突条部2i,2jと壁面の間の幅寸法は狭くなるが、第1実施形態と同様に、樹脂製のフランジ8aが変形しながら差し込まれるため、フランジ8a,10aを溝2c,2d内に隙間無く差し込むことができる。このとき、フランジ8a,10aは、溝2c,2d内でがたつくこと無く収容される。このため、ケーブル6を安定した状態でコネクタに固定することができる。
【0048】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態のコネクタ付きケーブル1について説明する。図14は、第3実施形態におけるフランジ8a,10aの取り付け部分を拡大して示す断面図である。第3実施形態では、ケース部材2aの溝20の幅寸法(図中符号W1)がフランジ8a,10aの厚み寸法よりも0.1mm程度大きい。また、溝20の壁面に形成された突条部20aの最大高さ(突出寸法t1)は0.2mm程度に形成されている。なお、ケース部材2bの溝2d及び突条部2jの形状は、第2実施形態と同様である。また、溝2dの幅寸法(図中符号W2)はフランジ8a,10aの厚み寸法と同じか、または若干大きい。
【0049】
溝20に形成された突条部20aは、ケース部材2bの突条部2jよりも、壁面に対する傾斜角が大きく、それだけ最大高さ(突出寸法t1)が突条部2jの最大高さ(突出寸法t2)より大きく形成されている。これにより、コネクタ付きケーブル1の組み立て過程で、ケース部材2bの溝2dにフランジ8a,10aを差し込む作業は比較的容易になる(圧入の抵抗が小さい)一方で、その後にケース部材2aを被せる際は、突条部20aの傾斜角を大きくした分、フランジ10aは、より強く圧入した状態で溝20内に差し込まれる。それでも、溝20の幅寸法W1はフランジ8a,10aの厚みよりも広いため、樹脂製のフランジ8aが溝20の壁面で極端に削られながら差し込まれることはない。
【0050】
このように、第3実施形態では、溝20の幅を広げてケース部材2a,2bに対するフランジ8a,10aの差し込みをさらに容易にするとともに、溝20の幅を広げた分を考慮した突条部20aを形成して、フランジ8a,10aを隙間無く溝20に差し込むことができる。
【0051】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態のコネクタ付きケーブル1について説明する。図15は、第4実施形態におけるケース部材2aの外観を概略的に示す斜視図である。なお、図15では、一例として、第3実施形態で示したケース部材2aを用いて説明することとする。また、組み立て過程で土台となるケース部材2bは、第1〜3実施形態と同様の形態を用いるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
ケース部材2aにおいて、溝20内の一方(ケース部材2aの一側端側)の壁面に略半円状の開口20bが形成されている。また、開口20bの周縁の一部に傾斜面(面取部としての構成)が形成されている。
【0053】
図16は、図15中に示すケース部材2aの開口20b周辺を拡大して示す斜視図である。なお、図16では、図15中に示すXVI―XVI線に沿ってケース部材2aを破断し、さらにケース部材2aの開口2g側からみた開口20bを概略的に示している。
【0054】
ケース部材2aの開口20bは、溝20の壁面からこれに連なる開口20bの周縁を斜めに面取りして形成された傾斜面21を有している。傾斜面21は、例えば溝20の壁面に対して45度傾斜している。
【0055】
図17は、第4実施形態におけるフランジ8a,10aの取り付け部分を拡大して示す断面図である。
【0056】
開口20bに形成された傾斜面21は、例えば溝20の壁面に対して45度傾斜しており、フランジ8a,10aを溝20内に差し込むときの幅がフランジ8a,10aの厚みよりも広く、また、フランジ10aは、開口20bの周縁に引っ掛かることなく、傾斜面21に沿って滑らかに溝20内に進入することができる。
【0057】
一方、図17中に示すように、溝20,2dの幅寸法(符号省略)は、第3実施形態と同様にフランジ8a,10aの厚み寸法より若干大きい。このため、フランジ8a,10aは、差し込みの開始時には、溝20の壁面に極端に圧迫されることなく進入することができる。また、溝20の底面側において、フランジ10aが突条部20aの傾斜に沿ってスライドするとともに、フランジ8aは、溝20の壁面に圧迫された状態で底面に向かって差し込まれる。
【0058】
このように、第4実施形態では、ケース部材2aの開口20bに対してその周縁に傾斜面21を形成することで、フランジ8a,10aをより簡単にケース部材2aの溝20内に差し込むことができる。
【0059】
本発明は、上述した第1〜4実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、第1〜3実施形態においても、ケース部材2aの開口に対して、その周縁に傾斜面21が形成されていてもよい。
【0060】
また第1〜4実施形態では、光信号及び電気信号を複合的に伝送するコネクタ付きケーブル1を用いてケーブルをハウジングに固定する手法を説明したが、例えば、光信号のみを伝送するコネクタ付きケーブルや、電気信号のみを伝送するコネクタ付きケーブルにも本発明による手法を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 コネクタ付きケーブル
2 ハウジング
2c,2d 溝
2e,2f,2g,2h 開口
6 ケーブル
8 ブーツ(外装部材)
8a フランジ(第2のフランジ)
10 ストップリング(保持部材)
10a フランジ(第1のフランジ)
20 溝
20a 突条部
20b 開口
21 傾斜面(面取部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線を外皮で被覆したケーブルの末端部分にコネクタが取り付けられたコネクタ付きケーブルであって、
筒状に形成され、内部に前記ケーブルの末端部分で前記外皮から引き出された前記伝送線が挿通されるとともに外面に前記外皮を被せた状態で保持する本体と、前記ケーブルの末端側に位置する前記本体の一端に形成された第1のフランジとからなる金属製の保持部材と、
前記保持部材を含めた前記ケーブルの末端部分の外周を覆い、かつ、前記ケーブルの末端側に位置する一端に前記第1のフランジと互いに重なり合う第2のフランジが形成された樹脂製の外装部材と、
前記ケーブルの末端部分で前記外皮から引き出された前記伝送線を内部に収容する状態に組み合わされ、かつ、この組み合わせ状態で前記第1のフランジ及び前記第2のフランジを重ね合わせ方向に圧着しながら保持する2つのケース部材と
を備えたコネクタ付きケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記2つのケース部材は、
互いの組み合わせ方向に前記第1のフランジ及び前記第2のフランジを差し込み可能であり、かつ、前記第1のフランジ及び前記第2のフランジの重ね合わせ方向で対向する一対の壁面を有した溝
を有するコネクタ付きケーブル。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記2つのケース部材は、
前記溝内で前記一対の壁面のいずれか一方に突出して形成され、前記溝内への前記第1のフランジ及び前記第2のフランジの差し込み方向に上り傾斜が設けられた突条部
をさらに有するコネクタ付きケーブル。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記2つのケース部材の一方は、
前記溝内で前記第1のフランジ及び前記第2のフランジの重ね合わせ方向でみた前記突条部の最大の突出寸法が他方の前記ケース部材の前記溝内に形成された前記突条部の最大の突出寸法より大きいことを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記2つのケース部材の一方は、
前記溝の前記一対の壁面間にわたる幅寸法が前記第1のフランジ及び前記第2のフランジを重ね合わせた厚み寸法より大きく、
前記2つのケース部材の他方は、
前記溝の前記一対の壁面間にわたる幅寸法が前記第1のフランジ及び前記第2のフランジを重ね合わせた厚み寸法と同等又はそれ以上であることを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記2つのケース部材の少なくとも一方は、
互いの組み合わせ面に位置する前記溝の開口縁に沿って形成され、前記突条部が形成された一方の前記壁面と対向する他方の前記壁面との間隔を部分的に拡張する面取部が形成されていることを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項7】
請求項2から6のいずれかに記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記2つのケース部材は、
前記第1のフランジ及び前記第2のフランジを前記溝内に差し込んだとき、前記第1のフランジが接触する一方の前記壁面に前記突条部が形成されていることを特徴とするコネクタ付きケーブル。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記保持部材は、
外面に前記外皮が被せられた状態でその周囲を締め付けるかしめ部材をさらに含む、
コネクタ付きケーブル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のコネクタ付きケーブルにおいて、
前記ケーブルは、
前記伝送線に光ファイバ及び電線を用いることで光信号及び電気信号を伝送し、
前記コネクタは、
前記光信号及び電気信号を相互に変換する光電変換モジュールを有することを特徴とするコネクタ付きケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−199188(P2012−199188A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63919(P2011−63919)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】