説明

コネクタ

【課題】コネクタの薄型化を実現しつつ、ハウジング内へのカード状接続対象物の異常な挿抜時におけるコンタクトの座屈を防止できるコネクタを提供する。
【解決手段】本発明のコネクタ10は、ハウジング15と複数本のコンタクト16とを具え、前記ハウジング15の底面部11は、コンタクト16を保持する保持バー18を有し、保持バー18からハウジング15の内方かつ上方に向かって延びる全ての前記コンタクト16の先端側部分に対応するハウジング底面部11の領域に凹部20を設け、該凹部20内に、各コンタクト16の接触部に対応する位置に貫通孔21を設けた上面部22と、前記各コンタクト16を、上面部22と共に収容するための区画スペースを形成する仕切り壁24と、前記凹部20内の、保持バー18側に位置する両幅内端部26に、回動可能に連結される連結端部とを有するコンタクト座屈防止用プレート19を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、底面部および両側壁部をもつ、絶縁材料からなるハウジングと、該ハウジングの底面部に保持され、弾性材料からなる複数本のコンタクトとを具え、該コンタクトが、例えば、ICカードやメモリカードのようなカード状接続対象物をハウジングの所定位置まで挿入した状態で、カード状接続対象物に設けた接触子と接触する位置に接触部を有するコネクタに関するものであって、特に、コネクタの薄型化を実現しつつ、ハウジング内へのカード状接続対象物の異常な挿抜時におけるコンタクトの座屈を有効に防止する。
【背景技術】
【0002】
ICカードやメモリカードのようなカード状接続対象物との接続に用いられるコネクタ100としては、例えば、図1および図2に示すように、底面部101、両側壁部102、103および後壁部104をもち、絶縁材料からなるハウジング105と、該ハウジング105の底面部101に保持される複数本のコンタクト106とを具え、該コンタクト106が、カード状接続対象物をハウジング105の所定位置まで挿入した状態で、カード状接続対象物に設けた接触子と接触する位置に接触部107を有し、ハウジング105の底面部101は、コンタクト106を、所定の間隔をおいて横並び配列状態で保持する保持バー108を有するコネクタが知られている。
【0003】
このようなコネクタ100は、コンタクト106がばね弾性材料で構成され、保持バー108からハウジング105の内方かつ上方に向かって延びるコンタクト106の先端側部分109が、自由端として露出した状態で配列されているため、カード状接続対象物の挿入状態には、コンタクト106の先端側部分109が下方に押圧される一方、カード状接続対象物の抜去後には、コンタクト106の先端側部分109は、ばね弾性の復元力により、上方に移動して元の高さ位置に戻る。
【0004】
しかしながら、このようなコネクタ100は、ハウジングの両側壁間に設けたスロット110に、カード状接続対象物を強引にこじいれたり、強引に引き抜いたり足りするような異常な使用状態では、コンタクト106が、過度に下方に押圧されて弾性域を超えて塑性域で変形する場合があり、この場合には、コンタクト106が座屈して元の位置に復元できず、良好な接続が得られないおそれがあった。
【0005】
コンタクトの座屈を防止する手段としては、例えば特許文献1に記載されている先行技術1のように、コンタクトのバネ部を、保持部の一端からクリップ状(断面U字状)に曲げられた形状にして、十分な弾性力を付与する方法が挙げられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の先行技術1の方法では、コンタクトの形状からして、コンタクトの外形を大きく採る必要があり、これは、コネクタ全体が厚くなるという問題がある。
【特許文献1】特開2003−297460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、所定形状のコンタクト座屈防止用プレートを配設することにより、コネクタの薄型化を実現しつつ、ハウジング内へのカード状接続対象物の異常な挿抜時におけるコンタクトの座屈を有効に防止することができるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明に従うコネクタは、底面部および両側壁部をもち、絶縁材料からなるハウジングと、該ハウジングの底面部に保持され、弾性材料からなる複数本のコンタクトとを具え、前記ハウジングの底面部は、コンタクトを、所定の間隔をおいて横並び配列状態で保持する保持バーを有し、前記コンタクトが、カード状接続対象物をハウジングの所定位置まで挿入した状態で、カード状接続対象物に設けた接触子と接触する位置に接触部を有するコネクタにおいて、前記保持バーからハウジング内方かつ上方に向かって延びる全ての前記コンタクトの先端側部分に対応するハウジング底面部の領域に、四角形状の凹部を設け、該凹部内に、各コンタクトの接触部に対応する位置に貫通孔を設けた上面部と、前記各コンタクトを、上面部と共に収容するための区画スペースを形成する仕切り壁と、前記凹部の、保持バー側に位置する両幅内端部に、回動可能に連結される連結端部とを有するコンタクト座屈防止用プレートを設けることにある。
【0009】
前記プレートの連結端部は、プレートの両幅端部からそれぞれ突出し、凹部の両幅内端部に設けた第1切欠き穴内で回転可能に連結される第1突起ピンを有することが好ましい。
【0010】
前記凹部は、底面部を貫通する孔として形成されることが好ましい。
【0011】
コンタクトの接触部は、カード状接続対象物をハウジングの所定位置まで挿入した状態で、前記プレートの上面部の表面位置と同じ高さ位置かまたはそれより上方の高さ位置にあることが好ましい。
【0012】
前記プレートの自由端部側の両幅端部からそれぞれ突出する第2突起ピンを設け、凹部の両幅内端部に、前記第2突起ピンの上方への移動を制限する第2切欠き穴をそれぞれ設けることが好ましい。
【0013】
前記凹部の、前記プレートの少なくとも両幅端側に位置する仕切り壁に対応する下方位置に、プレートの自由端部の下方への移動を制限するストッパーを設けることが好ましい。
【0014】
前記プレートの上面部の、保持バーから近い側に位置する長端縁の、少なくとも両側部分、および/または、前記プレートの上面部の、保持バーから遠い側に位置する長端縁の、少なくとも両側部分に、曲率を設けることがより好適である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、所定形状のコンタクト座屈防止用プレートを配設することにより、コネクタの薄型化を実現しつつ、ハウジング内へのカード状接続対象物の異常な挿抜時におけるコンタクトの座屈を有効に防止することができるコネクタの提供が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、この発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら以下で説明する。
【0017】
図3および図4は、この発明に従う代表的なコネクタを示したものであって、図3がコネクタを上方前方から眺めたときの斜視図、図4がコネクタを下方前方から眺めたときの斜視図である。また、図5および図6は、図3のコネクタを構成するコンタクト座屈防止用プレートを示したものであって、図5が前記プレートを連結端部側上方から眺めたときの斜視図、図6が前記プレートを連結端部側下方から眺めたときの斜視図である。さらに、図7は、ハウジング内にカード状接続対象物が正常な挿入位置に挿入されるまでのコンタクト座屈防止用プレートの動作状態を説明するための図である。
【0018】
図に示すコネクタ10は、底面部11、両側壁部12、13および後壁部14をもち、絶縁材料からなるハウジング15と、該ハウジング15の底面部11に保持される複数本のコンタクト16とを具え、該コンタクト16が、カード状接続対象物Cをハウジング15の所定位置まで挿入した状態(図7(e)参照)で、カード状接続対象物Cの下面に設けた接触子と接触する位置に接触部17を有し、ハウジング15の底面部11は、コンタクト16を、所定の間隔をおいて横並び配列状態で保持する保持バー18を有する。なお、図では、保持バー18は、ハウジング15と一体的に設けてあるが、別体として設けることもできる。
【0019】
そして、この発明の構成上の主な特徴は、所定形状のコンタクト座屈防止用プレート19を配設することにあり、より具体的には、前記保持バー18からハウジング15の内方かつ上方に向かって延びる全コンタクト16の先端側部分に対応するハウジング底面部11の領域に、四角形状の凹部20を設け、該凹部20内に、各コンタクト16の接触部17に対応する位置に貫通孔21を設けた上面部22と、前記各コンタクト16を、上面部22と共に収容するための区画スペース23を形成する仕切り壁24と、前記凹部20の、保持バー18側に位置する両幅内端部25,26に、回動可能に連結される連結端部27とを有するコンタクト座屈防止用プレート19を設けることにあり、この構成を採用することにより、コネクタの薄型化を実現しつつ、ハウジング内へのカード状接続対象物の異常な挿抜時におけるコンタクトの座屈を有効に防止することができる。
【0020】
また、プレート19の連結端部27は、プレート19の両幅端部28,29からそれぞれ突出し、凹部20の両幅内端部25、26に設けた第1切欠き穴30a、30b内で回転可能に連結される第1突起ピン31a、31bを有する。なお、第1切欠き穴30a、30bおよび第1突起ピン31a、31bの形状は、プレート19が連結端部27で回動可能に連結されるような構成であればよく、特に限定はされない。
【0021】
前記凹部20は、図3および図4に示すように、ハウジング15の底面部11を貫通する孔として形成することが、コネクタの小型化(薄厚化)の点で好ましい。
【0022】
コンタクト16の接触部17は、カード状接続対象物Cをハウジング15の所定位置(図7(e))まで挿入した状態で、前記プレート19の上面部22の表面位置と同じ高さ位置かまたはそれより上方の高さ位置にあることが、コンタクト16の接触部17が、カード状接続対象物Cの接触子との良好な接触圧を得る上で好ましい。
【0023】
前記プレート19の自由端部31側の両幅端部32a、32bからそれぞれ突出する第2突起ピン33a、33bを設け、凹部20の両幅内端部25、26に、前記第2突起ピン33a、33bの上方への移動を制限する第2切欠き穴34,34をそれぞれ設けることが好ましく、これにより、プレートの脱落を防止することができる。
【0024】
前記凹部20の、前記プレート19の少なくとも両幅端32a、32b側に位置する仕切り壁、図4では、プレート19の両幅端32a、32b側に位置する仕切り壁24a、24bに対応する下方位置に、プレート19の自由端部31の下方への移動を制限するストッパー35、35を設けることが好ましく、これによりコンタクトの先端部分が過度に下方に押圧されて座屈するのを有効に防止することができる。
【0025】
加えて、前記プレート19の上面部22の、保持バー11から近い側に位置する長端縁36の、少なくとも両側部分36a、36b、図5では前記長端縁36の全長にわたって、曲率を設けることがプレートの動作の点で好ましい。かかる曲率は、例えば曲率半径にして、0.1〜0.5mmの範囲で施されるのが好適である。
【0026】
さらに、プレート19の上面部22の、保持バー11から遠い側に位置する長端縁37の、少なくとも両側部分37a、37b、図5では前記長端縁37の全長にわたって、曲率を設けることがカードの抜却時の引掛り防止の点で好ましい。かかる曲率は、例えば曲率半径にして、0.5〜1mmの範囲で施されるのが好適である。
【0027】
また、図3および図4では、コネクタの強度アップ及びコネクタの薄型化のため、ハウジングの両側壁12、13と係合する側壁部分38、39をもち、ハウジング15の上面部全体を覆うように配置されるカバー40を設けている
【0028】
次に、本発明のコネクタ10のハウジング15内に、カード状接続対象物Cが正常な挿入位置に挿入されるまでのコンタクト座屈防止用プレート19の動作状態を図7を用いて説明する。
【0029】
前記コネクタ10のハウジング15内に、カード状接続対象物Cを挿入する前は、プレート19は、この区画スペースに収容した各コンタクト16の先端側部分のばね弾性力により、凹部20の、保持バー18側に連結された連結端部を軸として、プレート19が回動して、プレートの自由端部側が、ハウジングの底面部の表面よりも上方に位置する(図7(a))。このとき、前記プレートに設けた第2突起ピンと、凹部の両幅内端部に設けた第2切欠き穴とにより、プレートの自由端部側を、適正な位置に設定することができる。
【0030】
次に、前記コネクタ10のハウジング15内に、カード状接続対象物Cを挿入の初期段階では、図7(b)に示すように、カード状接続対象物Cは、コンタクトと直接接触はせず、プレートの上面部とだけ接触する。このため、全コンタクトに対しては、均一な押圧力が作用することになる。
【0031】
その後、さらにカード状接続対象物Cを挿入していくと、プレートの上面部が押圧されて下方に移動するのに伴い、上面部に設けた貫通孔から、コンタクトの、接触部が相対的に上方に出現する(図7(c))。この場合も、カード状接続対象物Cによる押圧力の大部分は、プレートに作用しているため、個別のコンタクトに集中することはない。
【0032】
次いで、図7(d)に示すようにカード状接続対象物Cをさらに挿入していくと、カード状接続対象物Cが、コンタクトの接触部を直接押圧するようになり、その後、カード状接続対象物Cの下面がコンタクトの接触部上を移動していく。
【0033】
そして、カード状接続対象物Cが正常な挿入位置に挿入されると、コンタクトの接触部が、カード状接続対象物の下面に設けた接触子と適度な接触圧により接触することができる。このとき、過度の押圧力の作用によるコンタクトの座屈をより一層防止するには、プレートの仕切り壁と、凹部に設けたストッパーとを設けておくことが好ましい。
【0034】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明によれば、所定形状のコンタクト座屈防止用プレートを配設することにより、コネクタの薄型化を実現しつつ、ハウジング内へのカード状接続対象物の異常な挿抜時におけるコンタクトの座屈を有効に防止することができるコネクタの提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来のコネクタを上方前方から眺めたときの斜視図である。
【図2】図1のコネクタを下方前方から眺めたときの斜視図である。
【図3】この発明に従う代表的なコネクタを上方前方から眺めたときの斜視図である。
【図4】図3のコネクタを下方前方から眺めたときの斜視図である。
【図5】図3のコネクタを構成するコンタクト座屈防止用プレートを連結端部側上方から眺めたときの斜視図である。
【図6】図3のコネクタを構成するコンタクト座屈防止用プレートを連結端部側下方から眺めたときの斜視図である。
【図7】ハウジング内にカード状接続対象物が正常な挿入位置に挿入されるまでのコンタクト座屈防止用プレートの動作状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
10 コネクタ
11 底面部
12、13 両側壁部
14 後壁部
15 ハウジング
16 コンタクト
17 接触部
18 保持バー
19 コンタクト座屈防止用プレート
20 凹部
21 貫通孔
22 上面部
23 区画スペース
24 仕切り壁
25、26 凹部の両幅内端部
27 連結端部
28,29 プレートの両幅端部
30a、30b 第1切り欠き穴
31a、31b 第1突起ピン
32a、32b プレートの両幅端部
33a、33b 第2突起ピン
34 第2切欠き穴
35 ストッパー
36、37 プレートの上面部の長端縁
40 カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部および両側壁部をもち、絶縁材料からなるハウジングと、
該ハウジングの底面部に保持され、弾性材料からなる複数本のコンタクトと
を具え、
前記ハウジングの底面部は、コンタクトを、所定の間隔をおいて横並び配列状態で保持する保持バーを有し、
前記コンタクトが、カード状接続対象物をハウジングの所定位置まで挿入した状態で、カード状接続対象物に設けた接触子と接触する位置に接触部を有するコネクタにおいて、
前記保持バーからハウジング内方かつ上方に向かって延びる全ての前記コンタクトの先端側部分に対応するハウジング底面部の領域に、四角形状の凹部を設け、
該凹部内に、
各コンタクトの接触部に対応する位置に貫通孔を設けた上面部と、
前記各コンタクトを、上面部と共に収容するための区画スペースを形成する仕切り壁と、
前記凹部の、保持バー側に位置する両幅内端部に、回動可能に連結される連結端部と
を有するコンタクト座屈防止用プレートを設けることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記プレートの連結端部は、プレートの両幅端部からそれぞれ突出し、凹部の両幅内端部に設けた第1切欠き穴内で回転可能に連結される第1突起ピンを有する請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記凹部は、底面部を貫通する孔として形成される請求項1または2記載のコネクタ。
【請求項4】
コンタクトの接触部は、カード状接続対象物をハウジングの所定位置まで挿入した状態で、前記プレートの上面部の表面位置と同じ高さ位置かまたはそれより上方の高さ位置にある請求項1、2または3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記プレートの自由端部側の両幅端部からそれぞれ突出する第2突起ピンを設け、凹部の両幅内端部に、前記第2突起ピンの上方への移動を制限する第2切欠き穴をそれぞれ設ける請求項1〜4のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項6】
前記凹部の、前記プレートの少なくとも両幅端側に位置する仕切り壁に対応する下方位置に、プレートの自由端部の下方への移動を制限するストッパーを設ける請求項1〜5のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項7】
前記プレートの上面部の、保持バーから近い側に位置する長端縁の、少なくとも両側部分に、曲率を設ける請求項1〜6のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項8】
前記プレートの上面部の、保持バーから遠い側に位置する長端縁の、少なくとも両側部分に、曲率を設ける請求項1〜7のいずれか1項記載のコネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−234406(P2007−234406A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54843(P2006−54843)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000208835)第一電子工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】