説明

コネクタ

【課題】コネクタの平型電線に対する抜け止め機能を向上する。
【解決手段】コネクタ1は抜止部材30を有している。抜止部材30は、基部31からそれぞれ延伸しFPC100が間に挿入可能な前上ビーム32と前下ビーム33とを有している。また、コネクタ1は、前上ビーム32が前下ビーム33側に傾くように抜止部材30を弾性変形させるアクチュエータ20を備えている。前上ビーム32は、当該前上ビーム32が傾いたときに、前上ビーム32と前下ビーム33との間に挿入されたFPC100を前下ビーム33に押さえ付ける押圧部32aを有している。前下ビーム33には、FPC100の切り欠き100aに引っ掛かる係合部33aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)などの平型電線が挿入可能なコネクタに関し、特に、平型電線がコネクタから抜けるのを抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FPCやFFCなどの平型電線が挿入可能なコネクタが利用されている。このようなコネクタには、挿入された平型電線がコネクタから抜けるのを防止するための抜止部材を有するものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1のコネクタでは、抜止部材は、基部から前方に延伸し平型電線の上方に位置するビームを有している。この抜止部材は、ビームが基部を支点として下方に傾くように弾性変形可能に形成されている。ビームは、コネクタに設けられたアクチュエータが操作されることによって下方に傾き、ビームの先端に形成された凸部が平型電線に形成された孔に嵌る。これによって、平型電線の抜けが抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005ー78908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、平型電線が強く引っ張られた時には、その力はビームに作用する。抜止部材は、ビームが基部を支点として動くように弾性変形可能に形成されており、ビームに強い力が作用した場合には、ビームが上方に動いてしまい、ビームによる平型電線との引っ掛かりが解消される可能性があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、平型電線に対する抜け止め機能を向上できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るコネクタは、平型電線が挿入可能なコネクタであって、基部と、前記基部からそれぞれ延伸し平型電線が間に挿入可能な上ビームと下ビームとを有する抜止部材と、前記上ビームが前記基部を支点として前記下ビーム側に傾くように前記抜止部材を弾性変形させるアクチュエータとを備える。前記上ビームは、当該上ビームが傾いたときに、前記上ビームと前記下ビームとの間に挿入された前記平型電線を前記下ビームに押さえ付ける押圧部を有している。また、前記下ビームには、前記上ビームと前記下ビームとの間に挿入された前記平型電線の被係合部に引っ掛かる係合部が形成されている。
【0007】
本発明では、平型電線には下ビームが引っ掛かっている。そのため、平型電線が引っ張られた場合、その力の多くは下ビームに作用し、基部を支点として動くことのできる上ビームに作用する力は抑えられる。その結果、平型電線に強い力が作用した場合でも、平型電線との引っ掛かりが維持され易くなり、コネクタの抜け止め機能を向上できる。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記下ビームには、前記コネクタが配置される回路基板に固定される固定部が形成されてもよい。この態様によれば、平型電線に引っ掛かっている下ビームの動きが規制されるので、コネクタの抜け止め機能をさらに向上できる。
【0009】
また、本発明の他の態様では、前記係合部は、前記下ビームから上方に突出する凸部であり、前記上ビームと前記下ビームとの間に挿入された前記平型電線の被係合部に嵌るように形成されてもよい。この態様によれば、簡単な形状で平型電線を抜け止めできる。
【0010】
また、この態様では、前記押圧部は、前記係合部より前記基部寄りに位置してもよい。こうすることによって、押圧部は、平型電線の、被係合部より先端側の位置を押圧することとなる。その結果、さらにコネクタの抜け止め機能を向上できる。
【0011】
また、本発明の他の態様では、前記抜止部材は、前記基部から前記上ビームとは反対方向に延伸する被押圧ビームを有し、前記アクチュエータは、回転することによって下方から前記被押圧ビームを押し上げるカム部を有してもよい。この態様によれば、端子の後部をアクチュエータによって押し上げるタイプのコネクタにおいて、その抜け止め機能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【図2】上記コネクタの正面図である。
【図3】図2に示すIII−III線での断面図であり、同図では上記コネクタが有する抜止部材が示されている。
【図4】図3と同じ位置での断面を示し、同図ではアクチュエータが後側に倒れることによって弾性変形した抜止部材が示されている。
【図5】上記アクチュエータの斜視図である。
【図6】図2に示すVI−VI線での断面図であり、同図では上記コネクタが有する前接続端子が示されている。
【図7】図2に示すVII−VII線での断面図であり、同図では上記コネクタが有する後接続端子が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態の例であるコネクタ1の斜視図であり、図2はコネクタ1の正面図である。図3は、図2に示すIII−III線での断面図であり、同図ではコネクタ1が有する抜止部材30が示されている。図4は、図3と同じ位置での断面を示し、同図ではアクチュエータ20が後側に倒れることによって弾性変形した抜止部材30が示されている。図5は、アクチュエータ20の斜視図である。図6は、図2に示すVI−VI線での断面図であり、同図ではコネクタ1が有する前接続端子40が示されている。図7は図2に示すVII−VII線での断面図であり、同図ではコネクタ1が有する後接続端子50が示されている。
【0014】
コネクタ1は、FPCやFFCなどの平型電線が挿入可能に構成され、挿入された平型電線を回路基板に電気的に接続するためのコネクタである。この例では、平型電線の例としてFPC100が示されている。図1又は図2に示すように、コネクタ1は、FPC100の導体部(不図示)と接触する複数の前接続端子40と複数の後接続端子50とを有している。前接続端子40と後接続端子50は、FPC100の幅方向(左右方向(X1−X2の示す方向))に、交互に並んでいる。
【0015】
また、コネクタ1は、FPC100がコネクタ1から抜けるのを抑える、すなわち、FPC100が挿入方向と反対方向(Y1の示す方向(前方))に移動するのを抑える抜止部材30を有している。抜止部材30は、前接続端子40と後接続端子50とともに、FPC100の幅方向に並んでいる。コネクタ1は2つの抜止部材30を有し、これらは前接続端子40と後接続端子50とに対して左右方向の外側に位置している。特に、この例では、抜止部材30と、当該抜止部材30に対して最も近い位置にある前接続端子40との距離は、互いに隣接する前接続端子40と後接続端子50との距離より大きくなっている。抜止部材30と、前接続端子40と、後接続端子50は、金属によって一体的に形成されている。例えば、抜止部材30と、前接続端子40と、後接続端子50は板金の打ち抜き加工によって形成される。
【0016】
コネクタ1は樹脂などの絶縁体によって形成されたハウジング11を有している。ハウジング11は前方に向かって開口しており、FPC100は前方からハウジング11に挿入される。図3、図6又は図7に示すように、ハウジング11の内側には、前後方向(Y1−Y2方向)に伸びる複数の溝13,14,15が形成されている。抜止部材30と、前接続端子40と、後接続端子50は、それぞれ溝13,14,15に嵌められ、ハウジング11によって保持されている。
【0017】
図3に示すように、抜止部材30は、基部31から前方に伸び、間にFPC100が挿入可能な前上ビーム32と前下ビーム33とを有している。FPC100が挿入された状態では、前上ビーム32はFPC100の上に位置し、前下ビーム33はFPC100の下に位置する(図4参照)。また、抜止部材30は、基部31から前上ビーム32とは反対方向(後方)に伸びる被押圧ビーム34を有している。前上ビーム32と被押圧ビーム34は、前後方向に伸びるとともに途中の位置が基部31によって支持された棒状を呈している。また、抜止部材30は、基部31から前下ビーム33とは反対方向に伸びる後下ビーム35を有している。前下ビーム33と後下ビーム35も、前後方向に伸びる棒状を呈している。
【0018】
図3又は図4に示すように、抜止部材30は、前上ビーム32が前下ビーム33側に傾くように弾性変形可能に構成されている。すなわち、抜止部材30は、前上ビーム32が基部31を支点として下方に動くように弾性変形可能となっている。コネクタ1には、抜止部材30を弾性変形させるアクチュエータ20が設けられている。この例では、コネクタ1は所謂バックロックタイプのコネクタであり、アクチュエータ20は、コネクタ1の後部に配置され、後方に倒れるように回転することによって抜止部材30を弾性変形させる。
【0019】
アクチュエータ20は、樹脂によって成形された、左右方向に長い略直方体状の部材である。アクチュエータ20には、被押圧ビーム34の後部が嵌る孔24aが形成されている。また、アクチュエータ20は、被押圧ビーム34と後下ビーム35との間に配置されるカム部21と、操作部22とを有している。操作部22は、アクチュエータ20が後方に倒れる前の状態では被押圧ビーム34の上方に位置している。操作部22が、作業者によって、後方且つ斜め下方(図3に示すD1の示す方向)に押されることによって、アクチュエータ20は後に倒れるように回転する。カム部21はアクチュエータ20の回転に伴って、被押圧ビーム34と後下ビーム35との間で回転する。カム部21は、その断面が被押圧ビーム34と後下ビーム35との距離より長くなるように形成されている。そのため、カム部21は、被押圧ビーム34と後下ビーム35との間で回転すると、被押圧ビーム34を押し上げる(図4参照)。被押圧ビーム34と前上ビーム32は、それらの間に位置する基部31によって支持されている。そのため、被押圧ビーム34が押し上げられると、前上ビーム32は基部31を支点として下方に傾く。
【0020】
なお、図5に示すように、アクチュエータ20の側面には、左右方向に突出する凸部23が形成されている。一方、ハウジング11は、後方に伸びるとともに、アクチュエータ20の側面と向き合う横壁部16を有している(図1参照)。凸部23は、ハウジング11の横壁部16によって回転可能に支持され、アクチュエータ20は凸部23を支点として後方に倒れる。
【0021】
FPC100の左右の縁には、切り欠き(被係合部)100aが形成されている(図1参照)。図3又は図4に示すように、前下ビーム33には、挿入されたFPC100の切り欠き100aに引っ掛かる係合部33aが形成されている。係合部33aは上方に突出する凸部であり、FPC100の挿入状態では切り欠き100aに嵌る。
【0022】
前下ビーム33は、その上面に概ね水平な支持面33bを有している。係合部33aは前下ビーム33の途中の位置に形成され、支持面33bは係合部33aより基部31寄り、すなわちコネクタ1の奥側に位置している。そのため、FPC100の切り欠き100aより先端側は、この支持面33b上に配置される。なお、この例では支持面33bは水平に形成されていたが、支持面33bは傾斜していてもよい。例えば、係合部33a寄りの位置が、コネクタ1の奥側の位置より低くなるように、支持面33bは傾斜してもよい。こうすることによって、FPC100がさらに抜け難くなる。
【0023】
また、係合部33aは、予め規定された正規の位置までFPC100が挿入された時に、切り欠き100aに嵌るように形成されている。すなわち、FPC100の導体部(不図示)が、後述する前接続端子40の接触部43aと後接続端子50の接触部53aとに対する適切な位置に到来したときに、係合部33aは切り欠き100aに嵌る。
【0024】
図3に示すように、係合部33aは、その断面が略三角形状になるように形成されており、係合部33aの上面は、後方且つ斜め上方に直線的に伸びる前傾斜面33cを有している。FPC100の挿入時には、FPC100の先端は前傾斜面33cに案内されることによって係合部33aを乗り越える。
【0025】
また、係合部33aは、係合部33aの頂部33eから係合部33aの後側に垂下する後面33dを有している。後面33dは後方を向いており、切り欠き100aの縁はこの後面33dに当る。これによって、FPC100の前方への移動が規制される。なお、後面33dの中途部は、鉛直方向に伸びており、すなわち真っ直ぐ後方を向いている。そのため、FPC100に、当該FPC100を引き抜こうとする力が作用した場合に、切り欠き100aの縁が係合部33aを乗り越えにくくなっている。また、この後面33dの中途部の高さは、支持面33bと概ね等しくなっている。さらに、支持面33bと後面33dとの間には、凹部が形成されている。なお、係合部33aは鉤状に形成されてもよい。例えば、後面33dの上部はFPC100の挿入方向に傾斜していてもよい。これによって、FPC100の切り欠き100aの縁が、さらに係合部33aを乗り越えにくくなる。
【0026】
図3に示すように、抜止部材30は、前下ビーム33の先端に固定部36を有している。固定部36は、ハウジング11から露出する位置に設けられ、コネクタ1が載置される回路基板に半田によって取り付けられる。詳細には、固定部36は、ハウジング11の底板部12の前縁より前に位置し、固定部36の下縁36aの位置は、底板部12の下面より低くなっている。そして、固定部36の下縁36aが回路基板に取り付けられる。これによって、FPC100に外力が作用した場合であっても、前下ビーム33が動くことが抑制されている。
【0027】
また、後下ビーム35はハウジング11に固定されている。詳細には、ハウジング11の内部には、被押圧ビーム34と、基部31と、後下ビーム35とによって囲まれるストッパ11bが設けられている。後下ビーム35の上面には爪部35aが形成されており、爪部35aはストッパ11bに引っ掛かっている。なお、抜止部材30は、前方からハウジング11の溝13に圧入され、爪部35aはストッパ11bに引っ掛かる。これによって、抜止部材30のハウジング11に対する移動が規制される。
【0028】
また、前下ビーム33と後下ビーム35は、ハウジング11の底板部12上に配置されている。すなわち、前下ビーム33と後下ビーム35は、それらの下面が底板部12に接するように配置されている。これによって、FPC100に外力が作用した場合であっても、前下ビーム33が動くことが抑制されている。
【0029】
前上ビーム32は前方に行くにしたがって徐々に細くなるように形成され、その途中の位置に押圧部32aを有している。図4に示すように、この押圧部32aは、抜止部材30の弾性変形によって前上ビーム32が前下ビーム33側に傾いたときに、FPC100を前下ビーム33に押さえ付ける。この例では、押圧部32aは、前上ビーム32の途中の位置から下方に突出する凸部である。前上ビーム32が前下ビーム33側に傾いたときに、押圧部32aの頂部32cがFPC100を前下ビーム33に押さえ付ける。
【0030】
図3に示すように、押圧部32aの位置は、係合部33aの位置に対して後方にずれている。すなわち、押圧部32aは、係合部33aより基部31寄りに位置し、基部31から押圧部32aまでの距離は、基部31から係合部33aまでの距離より小さくなっている。また、この例では、押圧部32aは前下ビーム33の支持面33bの上方に位置し、FPC100が挿入されたときには、押圧部32aは切り欠き100aより先端側を支持面33bに押さえ付ける。なお、押圧部32aも、係合部33aと同様に、その断面が略三角形状を呈するように形成されており、押圧部32aの下面は、後方且つ斜め下方に伸びる前傾斜面32bを有している。
【0031】
図3に示すように、押圧部32aの頂部32cの位置は、係合部33aの頂部33eの位置より高くなっている。特にこの例では、頂部32cの高さと頂部33eの高さとの差は、FPC100の厚さと概ね等しくなっている。これによって、小さな力でFPC100を抜止部材30に挿入できる。なお、頂部32cの高さと頂部33eの高さの差は、FPC100の厚さより大きくてもよい。これによって、さらに小さな力でFPC100を抜止部材30に挿入できる。また、頂部32cの高さと頂部33eの高さとの差は、FPC100の厚さより小さくてもよい。これによって、FPC100の挿入時に、FPC100がコネクタ1に一時的に保持され得る。
【0032】
上述したように、コネクタ1は前接続端子40と後接続端子50とを備えている。図6に示すように、前接続端子40は、基部41から前方に延伸し、間にFPC100が挿入可能な前上ビーム42と前下ビーム43とを有している。抜止部材30の前上ビーム32及び前下ビーム33と同様に、FPC100が挿入された状態では、前上ビーム42はFPC100の上方に位置し、前下ビーム43はFPC100の下方に位置する。また、前接続端子40は、基部41から前上ビーム42とは反対方向(後方)に伸びる被押圧ビーム44を有している。前上ビーム42と被押圧ビーム44は、前後方向に伸びるとともに途中の位置が基部41によって支持された棒状を呈している。また、前接続端子40は、基部41から前下ビーム43と反対方向に伸びる後下ビーム45を有している。
【0033】
さらに、前接続端子40は、前下ビーム43の先端に接続部46を有している。接続部46は、ハウジング11の底板部12の前縁より前に位置し、接続部46の下縁46aの位置は、底板部12の下面より低くなっている。そして、接続部46の下縁46aが、コネクタ1が載置される回路基板の導体部に半田によって取り付けられる。
【0034】
ハウジング11の内部には、被押圧ビーム44と、基部41と、後下ビーム45とによって囲まれるストッパ11cが設けられている。後下ビーム45の上面には爪部45aが形成されている。爪部45aはストッパ11cに引っ掛かっている。なお、前接続端子40は、抜止部材30と同様に、ハウジング11の溝14に前方から圧入され、爪部45aはストッパ11cに引っ掛かる。このようにして、前接続端子40は、ハウジング11に固定されている。
【0035】
アクチュエータ20には孔24bが形成されており、被押圧ビーム44の後部はこの孔24aに嵌っている。また、上述したカム部21は左右方向に延伸しており(図5参照)、図6に示すように、カム部21は被押圧ビーム44と後下ビーム45との間にも設けられている。
【0036】
前接続端子40も、抜止部材30と同様に、アクチュエータ20の回転に伴って前上ビーム42が前下ビーム43側に傾くように弾性変形可能となっている。詳細には、アクチュエータ20が後に倒れるように回転すると、カム部21は被押圧ビーム44と後下ビーム45との間で回転し、被押圧ビーム44を押し上げる。その結果、前上ビーム32は基部41を支点として下方に傾く。
【0037】
前上ビーム42の途中の位置には、下方に突出する押圧部42aが形成されている。また、前下ビーム43の途中の位置には、上方に突出する接触部43aが形成されている。押圧部42aと接触部43aは上下方向で互いに向き合っている。前上ビーム32が基部41を支点として下方に傾いたときには、押圧部42aは、FPC100を接触部43aに押し付ける。FPC100の下面には導体部(不図示)が形成されている。そのため、押圧部42aがFPC100を押さえ付けることによって、FPC100の導体部と接触部43aとが安定的に接触する。なお、FPC100の導体部は、当該FPC100の上面に形成されていてもよい。この場合、図6に示す押圧部42aがFPC100の導体部に接触する。
【0038】
また、この例では、前後方向における押圧部42aと接触部43aの位置は、抜止部材30の押圧部32aの位置に一致している。そのため、抜止部材30の押圧部32aは、押圧部42aとともに、FPC100の導体部を接触部43aに押さえ付ける機能を果たしている。
【0039】
図7に示すように、後接続端子50も、前接続端子40と同様に、基部51から前方に延伸し、間にFPC100が挿入可能な前上ビーム52と前下ビーム53とを有している。また、後接続端子50は、基部51から前上ビーム52とは反対方向(後方)に伸びる被押圧ビーム54を有している。前上ビーム52と被押圧ビーム54は、前後方向に伸びるとともに途中の位置が基部51によって支持された棒状を呈している。また、後接続端子50は、基部51から前下ビーム53と反対方向に伸びる後下ビーム55を有している。
【0040】
さらに、後接続端子50は、後下ビーム55の先端(後端)に接続部56を有している。接続部56は、ハウジング11の底板部12の後縁より後に位置し、接続部56の下縁56aの位置は、底板部12の下面より低くなっている。接続部56の下縁56aは、コネクタ1が載置される回路基板上の導体部に半田によって取り付けられる。
【0041】
また、基部51の上方には、上方に突出する爪部51aが形成されている。爪部51aはハウジング11の上板部17に引っ掛かっており、後接続端子50はハウジング11に固定されている。なお、後接続端子50は、抜止部材30や前接続端子40とは反対に、後方からハウジング11に圧入される。
【0042】
アクチュエータ20には孔24cが形成されており、被押圧ビーム54の後部はこの孔24cに嵌っている。また、上述したカム部21は、被押圧ビーム54と後下ビーム55との間にも設けられている。そして、後接続端子50も、抜止部材30及び前接続端子40と同様に、アクチュエータ20の回転に伴って前上ビーム52が前下ビーム53側に傾くように弾性変形可能となっている。詳細には、アクチュエータ20が後に倒れるように回転すると、カム部21は被押圧ビーム54と後下ビーム55との間で回転し、被押圧ビーム54を押し上げる。その結果、前上ビーム52は基部51を支点として下方に傾く。なお、後下ビーム55にはストッパ55aが形成されている。このストッパ55aはカム部21の後において上方に突出し、カム部21の後方への移動を規制している。そのため、カム部21は、ストッパ55aによって後方への移動が規制された状態で回転する。
【0043】
前上ビーム52の先端には下方に突出する押圧部52aが形成され、前下ビーム53の先端には上方に突出する接触部53aが形成されている。押圧部52aと接触部53aは上下方向で互いに向き合っている。前上ビーム52が基部51を支点として下方に傾いたときには、押圧部52aは、FPC100を接触部53aに押し付ける。その結果、接触部53aは、FPC100の下面に形成された導体部(不図示)に安定的に接触する。なお、上述したように、FPC100の導体部は、当該FPC100の上面に形成されていてもよい。この場合、図7に示す押圧部52aがFPC100の導体部に接触する。
【0044】
また、この例では、前後方向における押圧部52aと接触部53aの位置は、抜止部材30の係合部33aの位置より前方に位置している。すなわち、押圧部52aと接触部53aは、係合部33aを挟んで、前接続端子40の押圧部42aと接触部43aとは反対側に位置している。このように、前後方向における押圧部52aと接触部53aの位置が、係合部33aの位置より前方に位置することによって、FPC100を上方に引き上げる力が作用した場合であっても、FPC100の切り欠き100aが上方にずれることが抑えられ、係合部33aによる引っ掛かりが維持され易くなっている。
【0045】
以上説明したように、コネクタ1では、抜止部材30の前下ビーム33には、前上ビーム32と前下ビーム33との間に挿入されたFPC100の切り欠き100aに引っ掛かる係合部33aが形成されている。また、前上ビーム32は、前上ビーム32が傾いたときに、前上ビーム32と前下ビーム33との間に挿入されたFPC100を前下ビーム33に押さえ付ける押圧部32aを有している。このようなコネクタ1によれば、FPC100を引っ張る強い力が作用した場合であっても、その力の多くは前下ビーム33に作用し、基部31を支点として動くことのできる前上ビーム32に作用する力は抑えられる。その結果、FPC100に強い力が作用した場合でも、FPC100との引っ掛かりが維持され易くなり、コネクタの抜け止め機能を向上できる。また、コネクタ1によれば、アクチュエータ20を後方に倒す前であっても、FPC100を前下ビーム33の係合部33aに引っ掛けることができるので、FPC100の接続作業の作業性を向上できる。また、押圧部32aは切り欠き100aに嵌るのではなくFPC100の表面に押さえ付けられている。そのため、動くビームの先端が切り欠きに嵌ることによってFPCを抜け止めする従来のコネクタに比べて、動くビーム(ここでは前上ビーム32)の可動範囲を小さくできる。特に、この例では、前上ビーム32の可動範囲を、前接続端子40の前上ビーム42の可動範囲と、後接続端子50の前上ビーム52の可動範囲とに等しくできるので、コネクタの構造を簡単化できる。
【0046】
なお、本発明は、以上説明したコネクタ1に限られず、種々の変更が可能である。例えば、以上の説明では、コネクタ1は、所謂バックロックタイプのコネクタであり、アクチュエータ20のカム部21は、前接続端子40、後接続端子50及び抜止部材30の後側(すなわち被押圧ビーム34,44,54)を押し上げていた。しかしながら、本発明は、前上ビーム32,42,52の上に配置されたカム部によって、前上ビーム32,42,52を押し下げる、所謂フロントロックタイプのコネクタに適用されてもよい。
【0047】
また、以上の説明では、FPC100には、前下ビーム33の係合部33aが引っ掛かる被係合部として、切り欠き100aが形成されていた。しかしながら、被係合部は、FPC100の縁に形成された孔や凹部でもよい。すなわち、FPC100を貫通する孔や、FPC100の下面に形成された凹部でもよい。この場合、係合部33aは孔や凹部に嵌る。また、被係合部はFPC100の縁から左右方向に突出する凸部でもよい。この場合、凸部は支持面33b上に配置される。そして、凸部は押圧部32aによって支持面33bに押さえ付けられ、凸部の縁は係合部33aに引っ掛かる。
【0048】
また、以上の説明では、前後方向における押圧部32aの位置は、係合部33aより後であった。しかしながら、押圧部32aは係合部33aより前に位置してもよい。
【0049】
また、以上の説明では、抜止部材30は、被押圧ビーム34に向き合う後下ビーム35を有し、当該後下ビーム35がカム部21を支持していた。しかしながら、この後下ビーム35は抜止部材30に設けられていなくてもよい。この場合、カム部21はハウジング11の底板部12によって支持されてもよい。
【0050】
また、以上の説明では、前下ビーム33の先端に、回路基板に固定される固定部36が設けられていた。しかしながら、この固定部36は後下ビーム35の後端に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 コネクタ、11 ハウジング、11b ストッパ、11c ストッパ、12 底板部、13,14,15 溝、16 横壁部、17 上板部、20 アクチュエータ、21 カム部、22 操作部、23 凸部、24a,24b,24c 孔、30 抜止部材、31 基部、32 前上ビーム、32a 押圧部、32b 前傾斜面、32c 頂部、33 前下ビーム、33a 係合部、33b 支持面、33c 前傾斜面、33d 後面、33e 頂部、34 被押圧ビーム、35 後下ビーム、35a 爪部、36 固定部、36a 下縁、40 前接続端子、41 基部、42 前上ビーム、42a 押圧部、43 前下ビーム、43a 接触部、44 被押圧ビーム、45 後下ビーム、45a 爪部、46 接続部、46a 下縁、50 後接続端子、51 基部、51a 爪部、52 前上ビーム、52a 押圧部、53 前下ビーム、53a 接触部、54 被押圧ビーム、55 後下ビーム、55a ストッパ、56 接続部、56a 下縁、100 FPC(平型電線)、100a 切り欠き(被係合部)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平型電線が挿入可能なコネクタであって、
基部と、前記基部からそれぞれ延伸し平型電線が間に挿入可能な上ビームと下ビームとを有する抜止部材と、
前記上ビームが前記基部を支点として前記下ビーム側に傾くように前記抜止部材を弾性変形させるアクチュエータと、を備え、
前記上ビームは、当該上ビームが傾いたときに、前記上ビームと前記下ビームとの間に挿入された前記平型電線を前記下ビームに押さえ付ける押圧部を有し、
前記下ビームには、前記上ビームと前記下ビームとの間に挿入された前記平型電線の被係合部に引っ掛かる係合部が形成されている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記下ビームには、前記コネクタが配置される回路基板に固定される固定部が形成されている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記係合部は、前記下ビームから上方に突出する凸部であり、前記上ビームと前記下ビームとの間に挿入された前記平型電線の被係合部に嵌るように形成されている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタにおいて、
前記押圧部は、前記係合部より前記基部寄りに位置している、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記抜止部材は、前記基部から前記上ビームとは反対方向に延伸する被押圧ビームを有し、
前記アクチュエータは、回転することによって下方から前記被押圧ビームを押し上げるカム部を有する、
ことを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−23236(P2011−23236A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167930(P2009−167930)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】