説明

コピープロテクト方法、コンテンツ再生装置およびICチップ

【課題】コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツの不正コピーを未然に防止する方法であって、従来よりも一層コピープロテクト機能を増強させたコピープロテクト方法を提供する。
【解決手段】コンテンツ記録媒体10に、元々チップID13が記録されているICチップ12を付加する。このICチップ内にはIDメモリ14を有し、このIDメモリに、コンテンツ11を一意に特定するコンテンツID15と前記チップIDとを秘密鍵17にて共に暗号化した暗号化ID13′,15′を格納しておく。コンテンツ再生装置200では、先ずICチップ22内のチップID23を読み出すと共に、IDメモリ24内の暗号化ID23′,25′も読み出してさらに所定の鍵27で復号化し、これらのIDが全て正しく元通り再現されたときに限り、該コンテンツの再生を許可するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ記録媒体が不正にコピーされることを防止するためのコピープロテクト方法に関し、さらに該コピープロテクト方法に適合するコンテンツ再生装置、さらにまた該プロテクト方法の実施に供されるICチップに関する。
【背景技術】
【0002】
映画、音楽あるいはソフトウェア等の種々コンテンツを記録するためのコンテンツ記録媒体は、種々の形態をもって市場に多数提供されている。例えば代表的にはDVDやCD等、あるいはメモリカード等である。
【0003】
これらのコンテンツ記録媒体が不正に使用されたりあるいは不正にコピーされたりすることを防止するためのいわゆるコピープロテクト手法は、これまでに種々提案されてきており、また広く実用にも供されている。その一例としては、下記の〔特許文献1〕や〔特許文献2〕がある。
【0004】
〔特許文献1〕の発明によれば、パソコンでアプリケーションを実行する際に、パソコン外部のUSBメモリの書き換え不可能な領域に記録されたID等をアプリケーションが読み取り、ID等が正しければアプリケーションを実行するようにしている。
【0005】
また〔特許文献2〕の発明によれば、録画操作のとき、(1)配布装置において、媒体からIDと公開鍵Kpを読み取り、IDと共通鍵Kwを公開鍵Kpで暗号化し媒体に記録し、(2)配布するコンテンツは共通鍵Kwで暗号化して媒体へ格納する。一方、再生操作のときは、(1)端末装置(再生装置)は媒体から、暗号化されていないIDと暗号化されたIDと共通鍵Kwを読み取り、(2)端末装置は、端末装置に保持している秘密鍵Ksで、暗号化されたIDと共通鍵Kwを復号し、(3)端末装置は、復号したIDと、媒体から読み取った暗号化されていないIDを比較し、一致することを確認し、(4)暗号化されたコンテンツを、復号して得たKwにより復号する。
【0006】
【特許文献1】特開2003−288128号公報
【特許文献2】特開平11−250571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の典型的なコピープロテクト方法においては、「秘密鍵」が、市場に大量に流通する再生装置の中に含まれている。このため、その秘密鍵がその再生装置から盗み出された場合には、コンテンツ記録媒体に含まれる共通鍵が解読可能となり、また、公開鍵もその媒体に含まれることから、容易にコンテンツの海賊版が作成できてしまう。すなわちコピープロテクト機能が弱い。
【0008】
したがって本発明は、従来に比してより一層プロテクション機能を増強させたコピープロテクション方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
さらにまた、そのコピープロテクション方法に適合するコンテンツ再生装置およびICチップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で開示するコピープロテクト方法は、「コンテンツ記録媒体の製造時」における第1の方法ステップと、「コンテンツの再生時」における第2の方法ステップとに分けられる。
【0011】
上記第1の方法ステップは、(a)ICチップを一意に特定するチップIDを読み出すステップと、(b)コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを一意に特定するコンテンツIDを生成するステップと、(c)これらのIDを暗号化するステップと、(d)該ステップ(c)による暗号化チップIDおよび暗号化コンテンツIDを、上記のICチップ内に記録するステップと、(e)これらの暗号化IDを格納した上記のICチップを、コンテンツ記録媒体に付加するステップと、からなる。
【0012】
一方上記第2の方法ステップは、(f)チップIDを第1の鍵で暗号化した暗号化チップIDと、コンテンツを一意に特定するコンテンツIDを上記の第1の鍵で暗号化した暗号化コンテンツIDと、を格納するICチップが付加されたコンテンツ記録媒体を、コンテンツ再生装置にセットするステップと、(g)上記のチップIDと暗号化チップIDと暗号化コンテンツIDと、を読み出すステップと、(h)読み出したこれらの暗号化IDを、第2の鍵でそれぞれ復号化するステップと、(i)復号化して再生されたチップIDおよびコンテンツIDと、上記のステップ(g)で読み出されたチップIDおよび上記コンテンツから改めて生成されたコンテンツIDと、の一致/不一致をそれぞれ検出するステップと、(j)その検出により一致とされたときにのみコンテンツ再生装置でのコンテンツの再生を許可するステップと、からなる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示するコピープロテクト方法によれば、ハードウェアチップであるICチップを媒介として、コンテンツ記録媒体の不正コピーを防止する。このICチップ内には、他に同一のものが2つと存在しないチップIDが元々記録されているので、これをコピープロテクトとして利用する。しかも特定の製造者のみが知る秘密鍵によってこれを暗号化した暗号化チップIDを用いる。さらに加えて、このICチップ内には、このICチップが付加されるコンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを一意に表すコンテンツIDも格納される。これもまた上記の秘密鍵によって暗号化される。
【0014】
かくして、コンテンツ再生装置において暗号化チップIDおよび暗号化コンテンツIDとをそれぞれ復号化したIDおよび、元々のチップIDが、このコンテンツ再生装置においてそれぞれ「正しく元通り再現」できたときに限り、当該コンテンツの再生が許可されるようにする。
【0015】
したがって、悪意の第三者により、コンテンツ(暗号化されているかいないかに拘らず)のコピーがされたとしても、その不正コピーのコンテンツは、最終的に、上記した「正しい再現」ができない限り、再生不可能である。このことから、悪意の第三者がコンテンツそのもののコピーに成功しても、結局はそのコンテンツの再生ができないので、不正なコピーを未然に防ぐことができる。ここで用いるICチップ少なくともメモリが内蔵されていれば十分であって、CPU等の高機能部分は必要としないから、安価であり、かつ小型でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本明細書により開示する第1の方法ステップを図解的に表す図であり、
図2は本明細書により開示する第2の方法ステップを図解的に表す図である。なお、上述のとおり、上記第1の方法ステップは「コンテンツ記録媒体の製造時」に相当し、一方、上記第2の方法ステップは「コンテンツの再生時」に相当する。
【0017】
まず図1の製造側100を参照すると、右端のブロック10が、コピープロテクトの対象となるコンテンツ記録媒体(以下、単に記録媒体とも称す)を表す。この記録媒体10には、本図の左端に示す「コンテンツ」11が焼き付けられる(矢印A)。このコンテンツ11は、例えば映画であり音楽であり、あるいはソフトウェアであってもよい。なお、このコンテンツ11は暗号化してもしてなくてもどちらでも良く、どちらであっても本発明のコピープロテクト機能には影響しない。
【0018】
本発明において注目すべき部分は、本図の右端に示すブロック12であり、これが前述したICチップである。このICチップ12には元々、同じものが2つとないチップID(個別識別番号)13が記録されている。またこのICチップ13内には、IDメモリ14が設けられる。
【0019】
本発明によるコピープロテクト方法の第1段階は、チップIDとコンテンツIDの各情報を揃えることである。これを概念的にID情報16として示す。ID情報16内のチップIDは、図の矢印Bで示すように、ICチップ12から読み出したチップID13である。一方、該ID情報16内のコンテンツIDは、次のようにして用意される。
【0020】
まず前述のコンテンツ11に対し所定の演算処理を行って(矢印C参照)、コンテンツID15を得る。この所定の演算処理の一例としてはハッシュ関数による演算があり、この演算により「ハッシュ値」を得る。このハッシュ関数によると、例えば5GBのコンテンツ11を一意に特定する、例えば128Bのハッシュ値(コンテンツID)が得られる。かくして得られたコンテンツID15を、上記ID情報16の1つとしてエントリーする。
【0021】
続く第2段階では、ID情報16を暗号化する(矢印E参照)。この暗号化は秘密鍵17により行われ、暗号化ID情報16′を得る。この場合、この秘密鍵17は特定の製造者(例えばICチップ製造者)といった一部の者しか知ることができず、きわめて機密性が高い。
【0022】
ここに、暗号化チップID13′と暗号化コンテンツID15′とからなる暗号化ID情報16′が得られる。そしてさらにICチップ12内の上記IDメモリ14にそのID情報16′が格納される。
【0023】
このようにして加工されたICチップ12は、対応する唯一のコンテンツ記録媒体10に付加され、さらにユーザによる購買のために市場に流通することになる。
【0024】
市場においてユーザに購入された、ICチップ付きのコンテンツ記録媒体は、例えばユーザ宅内のコンテンツ再生装置(プレーヤ)にセットされる。もしこのICチップ付きの記録媒体が不正に製造されたものであれば(海賊版)、その再生は不可となる。これは上記の第2の方法ステップにより可能となる。
【0025】
ここで図2を参照して第2の方法ステップを図解的に説明する。本図において上記のコンテンツ再生装置(以下、単に再生装置とも称す)は、参照番号200で示される。まず第1段階では、再生装置200にセットされたコンテンツ記録媒体20から、コンテンツ21を読み出す(矢印G)。またこの記録媒体20に付加されているICチップ22からチップID23と、このICチップ22内のIDメモリ24に格納された暗号化チップID23′と、暗号化コンテンツID25′とを読み出し、暗号化ID情報26′を再生する(矢印H)。
【0026】
次に第2段階では、前述した矢印Gにより再生した上記のコンテンツ21に対し、上述した所定の演算処理(図1の矢印C)と全く同一の演算処理を施して、コンテンツID25を生成する(図2の矢印C)。
【0027】
さらに第3段階では、暗号化ID情報26′をなす暗号化チップID23′と暗号化コンテンツID25′とを、公開鍵27により復号化する(図2の矢印I)。ここに、復号化されたID情報26″を得、復号化チップID23″と復号化コンテンツID25″、すなわち元のチップIDと元のコンテンツIDを再現する。
【0028】
最後の第4段階では、上記のとおり再現された各IDの一致/不一致を、第1比較部31と第2比較部32とにより、検出する。第1比較部31では、再現した「チップID23″」と、ICチップ22から読み出した「チップID23」とを比較し、両者の一致(OK)または不一致(NG)を判定する。
【0029】
これと並行して、第2比較部32では、再現した「コンテンツID25″」と、上述のハッシュ関数により演算された「コンテンツID25」とを比較し、両者の一致(OK)または不一致(NG)を判定する。
【0030】
ここに、当該コンテンツ記録媒体20が不正コピーによるものか否かが判明する。上記の比較(31,32)の結果が、双方共一致(OK)であればそれの媒体20は真正品(すなわち媒体10)であり、再生装置200においては、当該コンテンツの再生が可能となる。逆に、上記の比較(31,32)の結果において、少なくとも一方が不一致(NG)ならばそれは不正コピー品であり、再生装置200においては、当該コンテンツを再生することができない。結局、悪意の第三者は、不正コピー品を作製してもそれは、究極、再生不能であって商品とはならないから、始めからそのような不正コピーをすることを計画しないであろう。
【0031】
このような不正コピーの防止例としては次の(a)および(b)が考えられる。すなわち、
(a)図1の右端に示す、ICチップ12を付加したコンテンツ記録媒体10が市場に提供される。このICチップ12を第三者が媒体10から取り外し、他の記録媒体に不正に付加したとする。
【0032】
このような記録媒体を再生装置200にセットしたとする。そうすると、ICチップ12はそのまま使用されているから、両IDは当然一致し、第1比較部31はパスする。ところが、両コンテンツは異なるから、ハッシュ値(コンテンツID)が合わず、第2比較部32での判定をパス(OK)することができず、結局、再生不能となる。
【0033】
(b)同一のコンテンツを有する不正にコピーされた他の記録媒体(海賊版)に、第三者が類似のICチップを付加した不正コピー品を作製したとする。そうすると、その類似のICチップのチップIDと、IDメモリ24から再現したチップIDとは、必ず不一致(同一のチップIDは2つとない)となり、第1比較部31でNGとなり再生不能である。ICチップ12のチップIDを知り得たとしても、秘密鍵17は知り得ないので、本来の暗号化チップID13′を作ることはできないし、また真正品と同一のコンテンツIDも作ることができない。
【0034】
ここで上述したICチップ12について要約すると、このICチップは、コンテンツ記録媒体10に付加可能で、かつ、書き換え不能に一意に設定されたチップID13が元々記録されているICチップであって、コンテンツ11を特定するコンテンツID15を暗号化した暗号化コンテンツID15′と、チップID13を暗号化した暗号化チップID13′とを格納する書込み読出し可能なIDメモリ14を内蔵するものである。
【0035】
そしてそのコンテンツID15は、コンテンツ11をなすNバイトのデジタルデータを、所定の関数により演算して得た、n(n<<N)バイトの演算値から生成される。この所定の関数は、例えばハッシュ関数であり、その演算値は該ハッシュ関数によるハッシュ値である。
【0036】
さらに、コンテンツID15とチップID13とを共に第1の鍵(17)により暗号化してそれぞれ、暗号化コンテンツID15′と暗号化チップID13′とを生成するようにする。ここにその第1の鍵は、コンテンツ記録媒体10に記録されたコンテンツ11を再生する際に、暗号化コンテンツID15′および暗号化チップID13′を復号化するために用いる第2の鍵(27)と、相互に対をなすものである。この場合、第1の鍵(17)は、当該ICチップ12の製造者のみが秘密裏に保有する秘密鍵17であり、また第2の鍵(27)は、コンテンツ記録媒体10に記録されたコンテンツ11を再生するコンテンツ再生装置200の各々に公開して付与される公開鍵27である。
【0037】
かかるICチップ12は、コンテンツ記録媒体10の製造者とは異なる製造者により製造されることが望ましい。ICチップ12の秘密性をより一層強固にするためである。このようなICチップ12を付加したコンテンツ記録媒体10は、新規なものである。なお、このICチップ12は、例えば接着又は埋め込み等によりコンテンツ記録媒体12に付加することができる。
【0038】
次に図2において概念を示したコンテンツ再生装置200の具体例について説明する。
【0039】
図3はコンテンツ再生装置200の具体例を示す図である。本図において、コンテンツ再生装置200は、まず第1読出し機能部41と第2読出し機能部42とを有する。これら機能部は、
(i)コンテンツ11を一意に特定するために該コンテンツ11をもとに所定の処理により得たコンテンツID15と、一意に設定されて書き換え不能にICチップ12に元々記録されているチップID13とをそれぞれ、第1の鍵(17)により暗号化した暗号化コンテンツID15′と暗号化チップID13′とをIDメモリ24に格納してコンテンツ記録媒体20に付加されるICチップ22から、暗号化コンテンツID25′および暗号化チップID23′を読み出す第1読出し機能部41、および
(ii)該ICチップ22自体に内蔵されるチップID23を読み出す第2読出し機能部42、
である。なお、上記(i)において、コンテンツID15とチップID13とをそれぞれ第1の鍵により暗号化する、すなわちこれらIDを別々に暗号化する、としているが、これに限らず、該コンテンツID15とチップID13とを合わせて1つのIDデータとしてから一度に暗号化するようにしてもよい。
【0040】
さらには復号化機能部43を有する。この機能部は、読み出した暗号化コンテンツID25′および暗号化チップID23′を、第1の鍵(17)と相互に対をなす第2の鍵(27)により復号化し、元のコンテンツID25″およびチップID23″を再生する復号化機能部43である。
【0041】
一方、コンテンツ記録媒体20に記録されたコンテンツ21を、前述した所定の処理と同一の処理により得たコンテンツID25を生成するコンテンツID生成機能部44も有している。
【0042】
そして最終段には、復号化機能部43からの復号データ(CH,CO)と、第2読出し機能部42およびコンテンツID生成機能部44からの各出力データ(CH,CO)とが一致したときのみ、コンテンツ21の再生を許可する再生許可機能部45が備えられる。この再生許可機能部45は、復号化機能部43からの復号化チップID(CH)と、第2読出し機能部42からのチップID(CH)との一致/不一致を検出するチップID比較部51と、復号化機能部43からの復号化コンテンツID(CO)と、コンテンツID生成機能部44からのコンテンツID(CO)との一致/不一致を検出するコンテンツID比較部52と、からなる。
【0043】
これら両比較部51,52からの比較結果が共に一致していれば(OK)、第1のゲート(AND相当)53を介し、第2のゲート(スイッチ相当)54をONにし、真正な記録媒体20のコンテンツ21(すなわち元の記録媒体10のコンテンツ11)を、映画/音楽等の再生ユニット(図示せず)に転送する。
【0044】
なお前述したように、コンテンツID15は、コンテンツ11をなすNバイトのデジタルデータを、所定の関数により演算して得た、n(n<<N)バイトの演算値であり、またその所定の関数は、ハッシュ関数であって、その演算値は該ハッシュ関数によるハッシュ値である。
【0045】
既述の図1および図2には、前述した第1の方法ステップ(製造側時)と第2の方法ステップ(再生時)とを概念的に表したので、これらの方法ステップを具体的なフローチャートにより表すと次のようになる。
【0046】
図4は製造側100での方法ステップを表すフローチャートであり、また
図5は再生装置200側での方法ステップを表すフローチャートである。まず図4を参照する。
【0047】
本図において、
ステップS11:ICチップ12内に元々記録されて該ICチップを一意に特定するチップID13を読み出す。
ステップS12:コンテンツ記録媒体10に記録されたコンテンツ11を一意に特定するコンテンツID15を生成する。
ステップS13:チップID13およびコンテンツID15を暗号化する。
ステップS14:暗号化された暗号化チップID13′および暗号化コンテンツID15′を、ICチップ12内に記録する。
ステップS15:暗号化チップID13′および暗号化コンテンツID15′を格納したICチップ12を、コンテンツ記録媒体10に付加する。
かくして製造された、ICチップ付きコンテンツ記録媒体10が市場に供給される。
【0048】
次に図5を参照すると、
ステップS21:一意に設定されて書き換え不能にICチップに元々記録されているチップID13を第1の鍵(17)で暗号化した暗号化チップID13′と、コンテンツ記録媒体10に記録されたコンテンツ11を一意に特定するべく所定の処理により生成されたコンテンツID15を第1の鍵(17)で暗号化した暗号化コンテンツID15′と、を格納する当該ICチップ22が付加されたコンテンツ記録媒体20を、コンテンツ再生装置200にセットする。
ステップS22:ICチップ22内の、チップID23と暗号化チップID23′と暗号化コンテンツID25′と、を読み出す。
ステップS23:読み出した暗号化チップID23′および暗号化コンテンツID25′を、第1の鍵(17)と相互に対をなす第2の鍵(27)でそれぞれ復号化する。
ステップS24:復号化して再生されたチップID23″およびコンテンツID25″と、読み出されたチップID23および前記の所定の処理と同一の処理により生成されたコンテンツID25と、の一致/不一致をそれぞれ検出する。
ステップS25:前記の検出により一致とされたときにのみコンテンツ再生装置200でのコンテンツ21の再生を許可する。このコンテンツ21は、真正の記録媒体10内のコンテンツ11と全く同一のものである。
【0049】
以上述べたコピープロテクト方法の新規な点をまとめると、次の(1)〜(4)に示すとおりである。
【0050】
(1)コンテンツ記録媒体に、コンテンツに対応したコンテンツIDをハードウェア(チップ)で実装し、複製を困難にする点。
【0051】
(2)コンテンツに依存するコンテンツIDを使用し、ICチップが他のコンテンツには使用(流用)できなくする点。
【0052】
(3)許可された製造者(秘密鍵を持っている製造者)だけが媒体を製造できる環境のもとで、コンテンツIDやチップIDを暗号化して、ICチップに書き込む点。
【0053】
(4)製造されたコンテンツ記録媒体のセキュリティ管理を向上させるために、コンテンツ情報を含むICチップと、コンテンツ本体を含む記録媒体とを別々に生産できる点。
【0054】
またその効果を列記すると、次の(a)〜(d)に示すとおりである。
【0055】
(a)記録媒体にソフトウェアを入れて販売する際に本発明のコピープロテクト方法を用いることで、不正な媒体の複製を防ぎ、そのソフトウェアが真正であることを証明できる。つまり、真正の媒体から、真正のICチップを取り外し、別の媒体に付加し、改ざんしたソフトウェアを媒体に入れたとしても、ICチップ内のコンテンツIDを参照することで、ソフトウェアが改ざんしたものであることが容易に判明する。
【0056】
(b)コンテンツIDを書き込んだICチップをある製造者が製造し、複数の媒体製造業者へ配布することで、コンテンツの製造数や、ある記録媒体がどこの媒体製造業者で作られたか、などのコンテンツ管理における利便性が向上する。つまり、ICチップ製造業者と記録媒体製造業者とを別々に分けることで、コンテンツ管理がより厳密になる。もし、単一の業者にICチップへのコンテンツID書き込みと記録媒体の製造とを任せたとすると、焼かれたチップの製造数が外部から分かりにくくなり、不正をよりし易くさせることになるためである。
【0057】
(c)ハードウェアチップであるチップIDはコピーできない。また、暗号化されたコンテンツIDは改ざんできない。このため、コンテンツだけを他の記録媒体へコピーしても、そのコンテンツを再生することはできず、違法コピーを防ぐことができる。
【0058】
(d)コンテンツが暗号化されていると否とに拘らず、そのコンテンツだけを他の媒体へコピーして配布したとしても、チップIDを確認しないようにした海賊版プレーヤも一緒に提供しない限り、海賊版の媒体を受け取ったユーザは、当該不正コンテンツの再生ができない。同じ海賊版の媒体を作るためには、製造者しか知らない秘密鍵を盗み出し、かつ、何も書き込まれていないICチップを入手することが必要である。しかし、これは事実上困難である。
【0059】
上述した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
【0060】
(付記1)
コンテンツ記録媒体に付加可能で、かつ、書き換え不能に一意に設定されたチップIDが元々記録されているICチップであって、
前記コンテンツを特定するコンテンツIDを暗号化した暗号化コンテンツIDと、前記チップIDを暗号化した暗号化チップIDとを格納する書込み読出し可能なIDメモリを内蔵するICチップ。
【0061】
(付記2)
前記コンテンツIDは、前記コンテンツをなすNバイトのデジタルデータを、所定の関数により演算して得た、n(n<<N)バイトの演算値である付記1に記載のICチップ。
【0062】
(付記3)
前記所定の関数は、ハッシュ関数であり、前記演算値は該ハッシュ関数によるハッシュ値である付記2に記載のICチップ。
【0063】
(付記4)
前記コンテンツIDと前記チップIDとを共に第1の鍵により暗号化してそれぞれ、前記暗号化コンテンツIDと前記暗号化チップIDとを生成する付記1に記載のICチップ。
【0064】
(付記5)
前記第1の鍵は、前記コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを再生する際に、前記暗号化コンテンツIDおよび暗号化チップIDを復号化するために用いる第2の鍵と、相互に対をなす付記4に記載のICチップ。
【0065】
(付記6)
前記第1の鍵は、当該ICチップの製造者のみが秘密裏に保有する秘密鍵であり、
前記第2の鍵は、前記コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを再生するコンテンツ再生装置の各々に公開して付与される公開鍵である付記5に記載のICチップ。
【0066】
(付記7)
前記ICチップは、前記コンテンツ記録媒体の製造者とは異なる製造者により製造される付記6に記載のICチップ。
【0067】
(付記8)
付記1に記載のICチップを付加したコンテンツ記録媒体。
【0068】
(付記9)
付記8において、前記ICチップを、接着又は埋め込みにより前記コンテンツ記録媒体に付加すること。
【0069】
(付記10)
コンテンツを一意に特定するために該コンテンツをもとに所定の処理により得たコンテンツIDと、一意に設定されて書き換え不能にICチップに元々記録されているチップIDとをそれぞれ、第1の鍵により暗号化した暗号化コンテンツIDと暗号化チップIDとをIDメモリに格納してコンテンツ記録媒体に付加される前記ICチップから、前記暗号化コンテンツIDおよび暗号化チップIDを読み出す第1読出し機能部および前記ICチップ自体に内蔵される前記チップIDを読み出す第2読出し機能部と、
読み出した前記暗号化コンテンツIDおよび暗号化チップIDを、前記第1の鍵と相互に対をなす第2の鍵により復号化し、元の前記コンテンツIDおよびチップIDを再生する復号化機能部と、
前記コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを、前記所定の処理と同一の処理により得たコンテンツIDを生成するコンテンツID生成機能部と、を有し、
前記復号化機能部からの復号データと、前記第2読出し機能部およびコンテンツID生成機能部からの各出力データとが一致したときのみ、前記コンテンツの再生を許可する再生許可機能部と、
を備えるコンテンツ再生装置。
【0070】
(付記11)
前記コンテンツIDは、前記コンテンツをなすNバイトのデジタルデータを、所定の関数により演算して得た、n(n<<N)バイトの演算値である付記10に記載のコンテンツ再生装置。
【0071】
(付記12)
前記所定の関数は、ハッシュ関数であり、前記演算値は該ハッシュ関数によるハッシュ値である付記11に記載のコンテンツ再生装置。
【0072】
(付記13)
前記再生許可機能部は、
前記復号化機能部からの復号化チップIDと、前記第2読出し機能部からのチップIDとの一致/不一致を検出するチップID比較部と、
前記復号化機能部からの復号化コンテンツIDと、前記コンテンツID生成機能部からのコンテンツIDとの一致/不一致を検出するコンテンツID比較部と、
からなる付記11に記載のコンテンツ再生装置。
【0073】
(付記14)
ICチップ内に元々記録されて該ICチップを一意に特定するチップIDを読み出すステップと、
コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを一意に特定するコンテンツIDを生成するステップと、
前記チップIDおよび前記コンテンツIDを暗号化するステップと、
暗号化された暗号化チップIDおよび暗号化コンテンツIDを、前記ICチップ内に記録するステップと、
前記暗号化チップIDおよび暗号化コンテンツIDを格納した前記ICチップを、前記コンテンツ記録媒体に付加するステップと、
を有するコピープロテクト方法。
【0074】
(付記15)
一意に設定されて書き換え不能にICチップに元々記録されているチップIDを第1の鍵で暗号化した暗号化チップIDと、コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを一意に特定するべく所定の処理により生成されたコンテンツIDを前記第1の鍵で暗号化した暗号化コンテンツIDと、を格納する当該ICチップが付加されたコンテンツ記録媒体を、コンテンツ再生装置にセットするステップと、
前記ICチップ内の、前記チップIDと前記暗号化チップIDと前記暗号化コンテンツIDと、を読み出すステップと、
読み出した前記暗号化チップIDおよび暗号化コンテンツIDを、前記第1の鍵と相互に対をなす第2の鍵でそれぞれ復号化するステップと、
復号化して再生された前記チップIDおよびコンテンツIDと、前記の読み出されたチップIDおよび前記所定の処理と同一の処理により生成された前記コンテンツIDと、の一致/不一致をそれぞれ検出するステップと、
前記の検出により一致とされたときにのみ前記コンテンツ再生装置での前記コンテンツの再生を許可するステップと、
を有するコピープロテクト方法。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本明細書により開示する第1の方法ステップを図解的に表す図である。
【図2】本明細書により開示する第2の方法ステップを図解的に表す図である。
【図3】コンテンツ再生装置200の具体例を示す図である。
【図4】製造側100での方法ステップを表すフローチャートである。
【図5】コンテンツ再生装置200側での方法ステップを表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
10,20 コンテンツ記録媒体
11,21 コンテンツ
12,22 ICチップ
13,23 チップID
13′,23′ 暗号化チップID
14,24 IDメモリ
15,25 コンテンツID
15′,25 暗号化コンテンツID
16,26 ID情報
16′,26′ 暗号化ID情報
17 秘密鍵
23″ 復号化チップID
25″ 復号化コンテンツID
26″ 復号化ID情報
27 公開鍵
31 第1比較部
32 第2比較部
41 第1読出し機能部
42 第2読出し機能部
43 復号化機能部
44 コンテンツID生成機能部
45 再生許可機能部
100 製造側
200 コンテンツ再生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツ記録媒体に付加可能で、かつ、書き換え不能に一意に設定されたチップIDが元々記録されているICチップであって、
前記コンテンツを特定するコンテンツIDを暗号化した暗号化コンテンツIDと、前記チップIDを暗号化した暗号化チップIDとを格納する書込み読出し可能なIDメモリを内蔵するICチップ。
【請求項2】
前記コンテンツIDは、前記コンテンツをなすNバイトのデジタルデータを、所定の関数により演算して得た、n(n<<N)バイトの演算値である請求項1に記載のICチップ。
【請求項3】
前記コンテンツIDと前記チップIDとを共に第1の鍵により暗号化してそれぞれ、前記暗号化コンテンツIDと前記暗号化チップIDとを生成する請求項1に記載のICチップ。
【請求項4】
前記第1の鍵は、前記コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを再生する際に、前記暗号化コンテンツIDおよび暗号化チップIDを復号化するために用いる第2の鍵と、相互に対をなす請求項3に記載のICチップ。
【請求項5】
請求項1に記載のコピープロテクトICチップを付加したコンテンツ記録媒体。
【請求項6】
コンテンツを一意に特定するために該コンテンツをもとに所定の処理により得たコンテンツIDと、一意に設定されて書き換え不能にICチップに元々記録されているチップIDとをそれぞれ、第1の鍵により暗号化した暗号化コンテンツIDと暗号化チップIDとをIDメモリに格納してコンテンツ記録媒体に付加される前記ICチップから、前記暗号化コンテンツIDおよび暗号化チップIDを読み出す第1読出し機能部および前記ICチップ自体に内蔵される前記チップIDを読み出す第2読出し機能部と、
読み出した前記暗号化コンテンツIDおよび暗号化チップIDを、前記第1の鍵と相互に対をなす第2の鍵により復号化し、元の前記コンテンツIDおよびチップIDを再生する復号化機能部と、
前記コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを、前記所定の処理と同一の処理により得たコンテンツIDを生成するコンテンツID生成機能部と、を有し、
前記復号化機能部からの復号データと、前記第2読出し機能部およびコンテンツID生成機能部からの各出力データとが一致したときのみ、前記コンテンツの再生を許可する再生許可機能部と、
を備えるコンテンツ再生装置。
【請求項7】
ICチップ内に元々記録されて該ICチップを一意に特定するチップIDを読み出すステップと、
コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを一意に特定するコンテンツIDを生成するステップと、
前記チップIDおよび前記コンテンツIDを暗号化するステップと、
暗号化された暗号化チップIDおよび暗号化コンテンツIDを、前記ICチップ内に記録するステップと、
前記暗号化チップIDおよび暗号化コンテンツIDを格納した前記ICチップを、前記コンテンツ記録媒体に付加するステップと、
を有するコピープロテクト方法。
【請求項8】
一意に設定されて書き換え不能にICチップに元々記録されているチップIDを第1の鍵で暗号化した暗号化チップIDと、コンテンツ記録媒体に記録されたコンテンツを一意に特定するべく所定の処理により生成されたコンテンツIDを前記第1の鍵で暗号化した暗号化コンテンツIDと、を格納する当該ICチップが付加されたコンテンツ記録媒体を、コンテンツ再生装置にセットするステップと、
前記ICチップ内の、前記チップIDと前記暗号化チップIDと前記暗号化コンテンツIDと、を読み出すステップと、
読み出した前記暗号化チップIDおよび暗号化コンテンツIDを、前記第1の鍵と相互に対をなす第2の鍵でそれぞれ復号化するステップと、
復号化して再生された前記チップIDおよびコンテンツIDと、前記の読み出されたチップIDおよび前記所定の処理と同一の処理により生成された前記コンテンツIDと、の一致/不一致をそれぞれ検出するステップと、
前記の検出により一致とされたときにのみ前記コンテンツ再生装置での前記コンテンツの再生を許可するステップと、
を有するコピープロテクト方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−223766(P2009−223766A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69508(P2008−69508)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】