説明

コラ−ゲン産生促進剤

【課題】シワ形成の予防又は改善、抗老化用に好適な、新規なコラ−ゲン産生促進作用を有する成分、並びに、当該成分を含有する皮膚外用剤の提供。
【解決手段】カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスやバラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油成分からなる、新規なコラ−ゲン産生促進作用を有する成分、並びに、当該成分を含有する皮膚外用剤。更に、トリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を含有することにより、シワ形成の予防・改善効果が増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワ形成の予防又は改善用、抗老化用に好適な、皮膚外用剤に関し、詳しくは、コラ−ゲン産生促進剤を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シワ、たるみ等の皮膚老化現象は、生まれながらに規定されている遺伝的因子に、加齢、生活習慣、ストレス、活性酸素等の内的環境要因、更には、紫外線暴露や乾燥等の外的環境要因が複雑に絡み合うことにより、顕在化する皮膚老化症状である。この様な皮膚症状の悪化は、見た目にも判り易い皮膚外観の質的な低下であるため、自身の肌を健全に保つことに関心の高い中高年齢者には、大きな問題として認識されている。
【0003】
近年、シワ、たるみ等の皮膚老化現象発現メカニズムに関する研究が盛んに行われている。特に、皮膚を構成する主要な成分であるヒアルロン酸、セラミド、コラ−ゲン等の成分変化及び皮膚構造に及ぼす影響が盛んに研究され(例えば、非特許文献1を参照)、シワ、たるみの形成機序が明らかにされている。皮膚、血管、腱、歯等のほとんどの組織に存在する繊維状の蛋白質であり、身体を構成する蛋白質の約30%を占めるコラ−ゲンに対する注目は高く、全コラ−ゲンの40%が存在する皮膚においては、コラ−ゲンは、線維芽細胞により産生された後、分泌され、他の糖蛋白質と共に細胞間を埋める細胞外マトリックスを形成することにより、細胞保護や細胞間接着等の重要な生理的機能を果たしている。また、皮膚に存在するコラ−ゲン量は、加齢と共に減少することが知られ、これにより、皮膚の菲薄化、更には、シワ、たるみ等の皮膚老化現象が生じる。さらに、組織が損傷された場合などには、線維芽細胞におけるコラ−ゲン産生が促進され、炎症や創傷治癒過程における重要な役割を担っている。このため、コラ−ゲン産生促進作用を有する成分には、シワ、たるみ等の皮膚老化現象を予防又は改善するのみならず、創傷治癒に対する治療薬などとしても大きな期待が寄せられている。
【0004】
この様な皮膚中のコラ−ゲン量を増加させる素材開発に関する研究は、現在も盛んに行われている。特に、コラ−ゲン産生促進作用を有することが知られるレチノイン酸(ビタミンA酸)は、米国においては、該成分を含有した皮膚外用剤が、シワ治療薬として使用されている。しかしながら、日本においては、レチノイン酸は、肌に塗布した際に炎症や角層剥離、刺激感等の副作用が存するために、医師の指導がない限り一般的には使用出来ない。また、その他のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分としては、アスパラガス、アマチャ等の植物抽出物よりなるコラ−ゲン産生促進剤(例えば、特許文献1を参照)、加水分解タンニンを有効成分とするコラ−ゲン産生促進剤(例えば、特許文献2を参照)等が知られている。さらに、減少したコラ−ゲンを直接補うためにコラ−ゲン自身を化粧料等に配合し使用することもなされている。しかしながら、前述の通り、皮膚中のコラ−ゲン量を増加させる成分に関しては、安定性又は安全性に課題を有するものもあり、更には、十分な有効性が得られないこともあり、皮膚中のコラ−ゲン量を増加させる新たな素材が切望されている。
【0005】
一方、フランキンセンス及びバラは、化粧料原料としては一般的なものである。例えば、フランキンセンスより得られる植物抽出物に付いては、肌荒れや皮膚炎症、皮膚バリア機能低下の予防・改善に有効な作用(例えば、特許文献3を参照)が存すること、熱温体補完作用(例えば、特許文献4を参照)が存すること、デトックス作用(例えば、特許文献5を参照)が存することが知られている。また、バラより得られる植物抽出物に付いては、紫外線遮断効果(例えば、特許文献6を参照)、メイラ−ド反応阻害作用(例えば、特許文献7を参照)などが知られている。また、植物抽出物とは一線を画することもある植物より得られる成分には、植物精油が存する。植物精油は、植物に含まれる揮発性の芳香物質を含む有機化合物よりなり、水に溶け難く、アルコ−ル・油脂等に溶解し易い親油性・脂溶性の成分である。また、揮発成分を含む精油の製造方法は、一般的な植物抽出物等の製造方法とは異なる水蒸気蒸留法、油脂吸着法、溶剤抽出法、圧搾法等の製造方法により製造されるため、精油及び植物抽出物に含まれる有効成分、並びに、薬効は同じ植物を基源としても異なることが少なくない。特に、植物抽出物において、減圧濃縮過程を経る製造方法には、精油成分は含まれ難いし、水溶性抽出物にも含まれ難い。また、コラ−ゲン産生促進作用を有する植物精油としては、シソ科タイム、スイカズラ科エルダ−、カンラン科カンラン属エレミより水蒸気蒸留により得られる精油(例えば、特許文献8を参照)が知られている。しかしながら、カンラン科ボスウェリア属に属する植物及び/又はバラ科バラ属に属する植物より選ばれる植物を水蒸気蒸留して得られる精油にコラ−ゲン産生促進作用が存することは全く知られていなかった。この様な天然物より得られる精油は、高い安全性を有すると共に、コラ−ゲン産生促進剤として高い効果が期待される。さらに、前記の植物精油を組み合わせて皮膚外用剤に配合することにより、シワ形成に対する予防又は治療効果が増強されることは全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−298723号公報
【特許文献2】特開2008−074747号公報
【特許文献3】特開2007−119432号公報
【特許文献4】特表2004−535383号公報
【特許文献5】特表2005−501851号公報
【特許文献6】特開2008−273894号公報
【特許文献7】特開2006−273811号公報
【特許文献8】特開2006−232740号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】老化防止、美白、保湿化粧料の開発技術、CMCテクニカルライブラリ−、鈴木正人 監修
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況において為されたものであり、シワ形成の予防又は改善、抗老化用に好適な、新規なコラ−ゲン産生促進作用を有する成分、並びに、当該成分を含有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この様な実情に鑑みて、本発明者等は、シワ形成の予防又は改善、抗老化用に好適な成分を求め、鋭意努力を重ねた結果、カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスやバラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油成分からなる、新規なコラ−ゲン産生促進作用を有する成分が、優れたシワ予防又は改善、抗老化作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下に示す通りである。
<1> カンラン科ボスウェリア属に属する植物より得られる植物エッセンス、バラ科バラ属に属する植物より得られるエッセンスから選択される1種又は2種以上よりなることを特徴とする、コラ−ゲン産生促進剤。
<2> 前記カンラン科ボスウェリア属に属する植物の樹皮(乳香)を水蒸気蒸留し得られるエッセンスであることを特徴とする、<1>に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
<3> 前記カンラン科ボスウェリア属に属する植物が、カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
<4> 前記バラ科バラ属に属する植物が、バラ科バラ属ダマスクロ−ズであることを特徴とする、<1>〜<3>の何れか一項に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
<5> 前記のエッセンスは、精油成分であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
<6> 前記コラ−ゲン産生促進作用が、プロコラ−ゲン産生促進作用であることを特徴とする、<1>〜<5>の何れか一項に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
<7> <1>〜<6>に記載のコラ−ゲン産生促進剤を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<8> 前記のコラ−ゲン産生促進剤を皮膚外用剤全量に対し0.000001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、<7>に記載の皮膚外用剤。
<9> 更に、トリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする、<7>又は<8>に記載の皮膚外用剤。
<10> 前記トリテルペン酸が、ウルソ−ル酸、ベツリン酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<7>〜<9>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<11> 前記トリテルペン酸誘導体が、ウルソ−ル酸ベンジル及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<7>〜<10>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<12> 前記トリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を、皮膚外用剤全量に対し0.0001質量%〜5質量%含有することを特徴とする、<7>〜<11>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<13> シワ形成の予防又は改善用、抗老化用であることを特徴とする、<7>〜<12>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<14> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<7>〜<13>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<15> 更に、皮膚外用剤に好適な成分を含有することを特徴とする、<7>〜<14>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<16> バラ科バラ属の植物又はカンラン科ボスウェリア属に属する植物より、精油を得、当該精油の存在下、正常ヒト真皮ファイブロブラストを培養し、培地中のプロコラ−ゲン量を定量し、プロコラ−ゲン産生の増加を確認した精油を集めることを特徴とする、コラ−ゲン産生促進剤の製造方法。
<17> コラ−ゲン産生促進のための皮膚外用剤へのバラ科バラ属の植物又はカンラン科ボスウェリア属に属する植物の精油の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シワ形成の予防又は改善、抗老化用に好適な、新規なコラ−ゲン産生促進剤、並びに、当該成分を含有する皮膚外用剤を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の植物精油のプロコラ−ゲン産生促進作用評価の結果を示した図である。
【図2】本発明の植物精油のプロコラ−ゲン産生促進作用評価の結果を示した図である。
【図3】本発明の植物精油混合物のプロコラ−ゲン産生促進作用評価の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の皮膚外用剤の必須成分であるコラ−ゲン産生促進剤>
本発明の皮膚外用剤は、カンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られるエッセンスから選択される1種又は2種以上よりなるコラ−ゲン産生促進剤を含有することを特徴とする。ここで、前記のエッセンスとしては、溶剤による抽出物、当該抽出物の溶媒除去物、これらの分画精製物、精油成分などが好適に例示出来、特に、精油成分が好ましい。また、当該エッセンスを作製するのに好適な植物部位としては、例えば、根部、樹皮、木幹、葉、蕾、花、果実などが例示でき、花又は蕾が特に好ましく例示できる。精油成分としては、水蒸気蒸留で得られるものや、ノルマルヘキサンで抽出され、ノルマルヘキサンを溜去した成分などが好適に例示できる。皮膚中に存在する細胞外マトリックスの構成成分であるコラ−ゲンは、線維芽細胞において合成・分泌されたプロコラ−ゲンが、凝集、架橋等の過程を経ることにより成熟コラ−ゲンとなる。皮膚中のコラ−ゲン量は、加齢と共に減少するため、皮膚中のコラ−ゲン量、又は、その前駆体であるプロコラ−ゲン量を増加させることは、シワ、たるみなどの皮膚老化現象の予防又は改善に有効である。
【0013】
本発明のコラ−ゲン産生促進剤は、カンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られるエッセンス、好ましくは、植物精油よりなるコラ−ゲン産生促進作用を有する成分であれば特段の限定なく適応することが出来る。また、本発明のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分には、コラ−ゲン合成促進作用によりコラ−ゲン産生促進効果を発揮する成分に加え、分解抑制により皮膚中のコラ−ゲン量を増加させる成分も包含される。さらに、前記のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分の内、より好ましいものとしては、コラ−ゲンの前駆体であるプロコラ−ゲンの産生促進作用を有する成分が好適に例示出来、さらに好ましくは、線維芽細胞におけるプロコラ−ゲン産生促進作用を有する成分が好適に例示出来る。前記のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分に関し、具体例を挙げれば、後述する実施例に記載の「コラ−ゲン産生促進作用評価」においてプロコラ−ゲン産生量を増加させる成分が好ましい。前記のコラ−ゲン産生促進作用評価において、(プロ)コラ−ゲン産生促進作用を有する成分とは、コントロ−ル群に比較し、プロコラ−ゲン産生量が増加している成分、より好ましくは、コントロ−ル群に比較し、コラ−ゲン産生量が1.3倍以上増加している成分、さらに好ましくは、統計的な有意差を持ってコラ−ゲン産生量が増加している成分が好適に例示出来る。また、本発明のコラ−ゲン産生促進作用を有するカンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られる植物精油は、単独で使用する場合にも優れた(プロ)コラ−ゲン産生促進作用を発揮するが、2種以上を混合した場合には、その作用は相加又は相乗的な効果を発揮する。さらに、前記のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分と共に、シワ改善作用又は抗老化作用を有するトリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を皮膚外用剤に含有させることにより、優れたシワ形成の予防又は改善作用を発揮する。この様に、本発明のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分を含有する皮膚外用剤は、シワ形成、たるみ等の皮膚老化現象の予防又は改善に好適である。また、シミ、くすみなどの色素沈着の予防又は改善に対しても有用である。
【0014】
本発明のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分としては、カンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られるエッセンス、より好ましくは、油が好適に例示出来、かかる成分を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。本発明の「植物精油」とは、具体的には、植物由来の素材を、水蒸気蒸留法、油脂吸着法、溶剤抽出法、圧搾法等の製造方法、ノルマルヘキサン等の非極性溶媒を用いた薬剤抽出又は圧搾などにより得られる、特有の芳香を有する揮発成分を含む留出物の非水溶性分又はその画分成分等の総称を意味する。通常、精油は、多種類の化合物の混合物であり、モノテルペン、セスキテルペンなどの炭化水素化合物類、アルコ−ル化合物類、酸化合物類、カルボニル化合物類、フェノ−ル化合物類、ラクトン化合物類、エステル化合物類から構成され、一般に、水に不溶で、アルコ−ルなどに可溶である。前記の植物より得られる精油を製造するために使用される植物部位としては、植物体の全部、又は、花、葉、木部、果皮、樹皮、根、種などの一部であれば特段の限定なく適応することが出来、特に好ましくは、カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスの樹木より分泌される樹脂、バラ科バラ属ダマスクロ−ズの花弁より得られる精油が好適に例示出来る。本発明で使用する精油は、カンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より後記の製造方法に従い得られる精油を用いることも出来るし、S&Dアロマ会社等より市販されている市販品、又は、日本薬局法記載のバラ科バラ属に属する植物より得られる精油を用いてもよい。精油を皮膚外用剤に含有させることは、処方自由度が大きくなる点で好ましい。また、植物精油は、その含有成分が季節ごとに変化する場合が存するのでカンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られる精油成分に付いて、後記実施例に示す方法に従いコラ−ゲン産生促進作用を評価し、明確にこの様な作用が認められた場合にのみ、当該精油を皮膚外用剤に含有せしめることが、その効果の安定性を保証する点で好ましい。
【0015】
カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスは、中東を原産地とする常緑高木であり、中国、エチオピア、イラン、レバノン、アラブ地域等の広い地域に生息する。また、カンラン科ボスウェリア属に属する樹木より分泌される樹脂のことを乳香(フランキンセンス、オリバナム)と呼ぶ。乳香は、香又は香水等に利用する香料として利用されており、免疫向上作用、抗炎症作用等が知られている。また、乳香(フランキンセンス)より得られる精油には、主にα−ピネン等のピネン(pinene)類、ボスウェリア酸(boswellic acid)(例えば、H.G.M. Edward, et al., SpectroChimica Acta Part A53, 2393−2401(1997)を参照)、オリバノ−ルセン(olbanoresene)、ボスウェリディニック酸(boswellidinic acid)(例えば、Gerald Culioli et al.,Phytochemistry, 62, 537−541(2003))等の親油性成分が含まれている。バラは、バラ科バラ属に属する植物の総称を指し、潅木、低木又は木本性のつる植物であり、チベット周辺、中国、ミャンマ−等を原産地とし、日本においても本州、九州、四国等の広い地域で栽培されている。バラは、観賞用に用いられることが多いが、ダマスクロ−ズの花弁より得られる「ロ−ズオイル」は、香水の原料に利用される。ロ−ズオイルに含有される成分としては、l−シトロネロ−ル、フェネチルアルコ−ルの他、ゲラニオ−ル、ネロ−ル、リナロ−ル、フェルネソ−ル、ロ−ズオキサイト、ダマセノン、ダマスコン、ヨノン、ステアロブテン、メチルオイゲノ−ル等が含有される。
【0016】
本発明のカンラン科ボスウェリア属フランキンセンス及びバラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油は、乳香(フランキンセンス)、又は、ダマスクロ−ズの花弁を水蒸気蒸留し、精油成分を水相から分離し、精油を得た。また、前記植物より得られる植物精油は、前述の通り、市販の植物精油を購入し、利用することも可能である。
【0017】
本発明のコラ−ゲン産生促進剤の皮膚外用剤における好ましい含有量は、0.000001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.00005質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.00001質量%〜3質量%である。これは、あまり濃すぎると効果が頭打ちになる場合があり、少なすぎると有効濃度とならない場合があるからである。また、かかる成分は、コラ−ゲン産生促進作用、取り分け、コラ−ゲンの前駆体のプロコラ−ゲン産生促進作用に優れ、高い安全性及び安定性を有するため、化粧料、医薬部外品等への使用が好ましい。
【0018】
また、本発明のコラ−ゲン産生促進剤は、かかる成分を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。特に、本発明のコラ−ゲン産生促進剤を2種類以上組み合わせて使用することにより、相加又は相乗的なコラ−ゲン産生促進作用を発揮する。本発明のコラ−ゲン産生促進剤の組み合わせの内、特に好ましい組み合わせとしては、カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスとバラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油の組み合わせが好適に例示出来、前記成分の好ましい混合比率としては、100:1〜1:100、より好ましくは、80:1〜1:80、さらに好ましくは、60:1〜1:60の混合比率が好適に例示出来る。かかる植物精油の混合物は、相加又は相乗的な(プロ)コラ−ゲン産生促進作用が存するため、皮膚外用剤に含有させた場合には、優れたシワ形成に対する予防又は改善作用、抗老化作用が期待出来る。
【0019】
本発明のカンラン科ボスウェリア属フランキンセンスとバラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油より選択される1種又は2種以上よりなるコラ−ゲン産生促進剤は、他のコラ−ゲン産生促進作用を有する植物精油と共に皮膚外用剤に配合することによりコラ−ゲン産生促進作用の更なる効果向上、並びに、シワ形成に対する予防又は改善作用、抗老化作用の向上が期待出来る。この様なコラ−ゲン産生促進作用を有する成分としては、シソ科タイム、スイカズラ科エルダ−、カンラン科カンラン属エレミ、サンダルウッドオイル、ユ−カリオイル、パチリオイル、サンダルウッドオイル、ベチバ−オイル、グアイヤックウッドオイル、ベイオイル、クロ−ブオイル、カモミルオイル、ジンジャ−オイル、クミンオイル、ペッパ−オイル、ロ−ズマリ−オイル、ヒノキオイル、ヒバオイル、ピメントベリ−レジノイド及びミルラレジノイド等が好適に例示出来る。
【0020】
<本発明のトリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩>
本発明の皮膚外用剤は、カンラン科ボスウェリア属に属する植物より得られる植物精油、バラ科バラ属に属する植物より得られる精油から選択される1種又は2種以上よりなるコラ−ゲン産生促進剤を含有することを特徴とする。また、本発明のコラ−ゲン産生促進剤と共に、シワ形成に対する予防又は改善作用を有するトリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を皮膚外用剤に含有させることにより、優れたシワ形成に対する予防又は改善作用を発揮する。本発明のトリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、真皮コラ−ゲン線維束再構築作用などのコラ−ゲン線維束の崩壊又は構造上の乱れを予防又は改善することにより、シワ形成の予防又は改善作用を発揮するため、前記のコラ−ゲン産生促進剤と異なる作用機序を有し、皮膚外用剤に共に配合した場合には、相加又は相乗的な効果を発揮する。本発明のトリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩としては、ウルソ−ル酸、オレアノ−ル酸、ベツリン酸などのトリテルペン酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に加え、トリテルペン酸素の炭素数1〜20の脂肪族炭化水素エステル及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、トリテルペン酸の芳香族基により置換されている炭素数1〜4の炭化水素エステル及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、これらの内、好ましいものとしては、ウルソ−ル酸及び/又はその薬理学的に許容される塩、ウルソ−ル酸ベンジルエステル及び/又はその薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記のトリテルペン酸エステルは、相当するトリテルペン酸を水素化ナトリウムにて処理することによりナトリウム塩を形成した後、ハロゲン化炭化水素を加え反応させることにより得ることが出来る。反応温度及び時間は、室温乃至は還流条件下、1〜12時間反応を行えばよい。
【0021】
前記のトリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容させる塩は、そのまま使用することも出来るが、薬理学的に許容される酸又は塩基と共に処理し塩の形に変換し、塩として使用することも可能である。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属、トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、アンモニウム塩、モノエタノ−ルアミン塩、ピペリジン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩などが好適に例示出来る。また、前記のトリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、単純な化学物質、又は、当該化合物を含有する植物由来の抽出物等の形態が好適に例示出来る。ここで、植物由来の抽出物とは、植物抽出物自体、植物抽出物を分画、精製した分画、植物抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
【0022】
前記のトリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、本発明のコラ−ゲン産生促進剤と共に働き、シワ形成に対する予防又は改善作用を増強させる効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.0001質量%〜15質量%、より好ましくは、0.001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.01質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0023】
<本発明の皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、カンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られる精油から選択される1種又は2種以上よりなるコラ−ゲン産生促進剤を含有することを特徴とする。かかる成分は、加齢等の要因により減少した皮膚中のコラ−ゲン量を増加させる作用、取り分け、コラ−ゲンの前駆体であるプロコラ−ゲン産生量を増加させる作用に優れる。さらに、当該成分を皮膚外用剤に含有させることにより、優れたシワ予防又は改善作用、抗老化作用を発揮する。本発明のコラ−ゲン産生促進剤は、カンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られる植物精油よりなるコラ−ゲン産生促進作用を有する成分であれば特段の限定なく適応することが出来る。本発明のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分とは、コラ−ゲン産生促進作用を有する成分であれば特段の限定なく適応することが出来るが、好ましくは、皮膚中におけるコラ−ゲン量を増加させる作用を有するものが好適に例示出来、さらに好ましくは、プロコラ−ゲン産生促進作用を有する成分が好適に例示出来る。前記のコラ−ゲン産生促進作用を有する成分に関し、具体例を挙げれば、後記実施例に記載の「コラ−ゲン産生促進作用評価」においてプロコラ−ゲン産生量を増加させる成分が好ましい。
【0024】
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤としては、通常皮膚に外用で投与されるものであれば特段の限定なく適応することができ、医薬部外品を含有する化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これらの中で特に好ましいものは、化粧料である。これは化粧料においては、真皮到達性が望まれて、且つ、該真皮到達が為されにくい有効成分が多いためである。かかる化粧料としては、例えば、化粧料などのロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗顔化粧料、クレンジング化粧料等が好ましく例示できる。更にその剤形としては、化粧料の領域で知られているものであれば特段の限定はなく、ロ−ション製剤、水中油乳化製剤、油中水乳化製剤、複合エマルション乳化製剤等に好ましく例示できる。
【0025】
本発明の皮膚外用剤は、シワ予防又は改善、抗老化用の皮膚外用剤として好適である。かかる効果を奏するためには、前記のカンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られる精油より選択される1種又は2種以上よりなるコラ−ゲン産生促進剤を、皮膚外用剤全量に対し総量で0.000001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.000005質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.00001質量%〜3質量%含有されることが好ましい。また、本発明の皮膚外用剤においては、前記カンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られる植物精油より選択される1種又は2種以上よりなるコラ−ゲン産生促進作用を確認した上で含有させることが好ましい。コラ−ゲン産生促進作用を評価する方法としては、後記の実施例に記載の「コラ−ゲン産生促進作用評価」が好適に例示出来、当該評価系において、「コラ−ゲン産生促進作用を有する成分」とは、コントロ−ル群に比較し、コラ−ゲン産生量が増加している成分、より好ましくは、コラ−ゲン産生量が1.3倍以上増加している成分、さらに好ましくは、統計的な有意差を持ってコラ−ゲン産生量が増加している成分を意味する。これは、コラ−ゲン産生促進作用が低い植物精油を配合した場合には、期待されるシワ予防又は改善作用、抗老化作用が発揮されないためである。また、本発明の皮膚外用剤は、前記のコラ−ゲン産生促進作用を有する植物精油を唯1種含有させることも出来るし、2種以上を混合し含有させることも出来る。前記の植物精油より選択された2種以上を皮膚外用剤に含有させる場合の混合比率としては、カンラン科ボスウェリア属に属する植物精油に対するバラ科バラ属に属する植物より得られる植物精油の比率が、100:1〜1:100、より好ましくは、80:1〜1:80、さらに好ましくは、60:1〜1:60が好適に例示出来る。
【0026】
本発明の皮膚外用剤においては、前記必須成分以外に、通常化粧料や皮膚外用医薬で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコ−ル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコ−ン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコ−ル、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ジグリセリン、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル、1,2−オクタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;キサンタンガム、アラビアガム、マルメロ抽出物、クィーンシードガムなどの天然増粘剤;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコ−ル類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0027】
これらの必須成分、任意成分を常法に従って処理し、ロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗浄料などに加工することにより、本発明の皮膚外用剤は製造できる。皮膚に適応させることの出来る剤型であれば、いずれの剤型でも可能であるが、有効成分が皮膚に浸透して効果を発揮することから、皮膚への馴染みの良い、ロ−ション、乳液、クリ−ム、エッセンスなどの剤型がより好ましい。
【0028】
尚、本発明のカンラン科ボスウェリア属に属する植物又はバラ科バラ属に属する植物より得られる精油を含有する皮膚外用剤としては、一般的に広く使用される、化粧料や医薬部外品に適用するのが好ましい。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で適用されるものであれば特段の限定はなく応用でき、例えば、医薬部外品を含む化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これは本発明の植物精油及び植物精油を含有した皮膚外用剤の安全性が高いため、連続的に使用することが可能であるためである。
【0029】
以下に、本発明について、実施例を挙げて更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0030】
<試験例1: 本発明のコラ−ゲン産生促進剤のプロコラ−ゲン産生促進作用評価1>
前述した方法により製造された本発明のコラ−ゲン産生促進剤であるカンラン科ボスウェリア属フランキンセンスより得られる植物精油、並びに、バラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油に付いて、以下の手順に従いプロコラ−ゲン産生促進作用評価を実施した。即ち、正常ヒト真皮ファイブロブラスト(ccd-1113sk、ATCC)を24 well plateに2.5×10(cell/well)播種し、10% FBS/DMEM(FBS:株式会社ハナ・ネスコバイオ製、DMEM:株式会社シグマアルドリッチ社製)で3日間培養した。培養後、ジメチルスルホキシド(コントロ−ル、DMSO、シグマアルドリッチ社製)又はジメチルスルホキシドにより溶解された被験物質(0.0001質量%又は0.00001質量%ロ−ズ精油、0.00001質量%フランキンセンス精油)を添加した。48時間培養後、無血清DMEMに培地を交換し、2時間後に培養上清を回収し、培地中のプロコラ−ゲン量をPIP EIA KIT(タカラバイオ株式会社)を用いて測定した。尚、被験物質投与によるプロコラ−ゲン産生促進作用は、ジメチルスルホキシド(コントロ−ル)添加によるプロコラ−ゲン産生量を100%とした場合に、コントロ−ルに対する被験物質添加により増加したプロコラ−ゲン産生量の割合(%)として表示した。結果を図1及び図2に示す。
【0031】
図1及び図2の結果より、本発明のコラ−ゲン産生促進剤である、カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスより得られる植物精油、並びに、バラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油は、優れたプロコラ−ゲン産生促進作用を有することが判った。また、その作用には、濃度依存性が認められた。
【実施例2】
【0032】
<試験例2: 本発明のコラ−ゲン産生促進剤のプロコラ−ゲン産生促進作用評価2>
本発明のコラ−ゲン産生促進剤であるカンラン科ボスウェリア属フランキンセンスより得られる植物精油及びバラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油の混合物に付いて、プロコラ−ゲン産生促進作用を評価した。被験物質として使用したカンラン科ボスウェリア属フランキンセンスより得られる植物精油及びバラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油のジメチルスルホキシド溶液は、被験物質全量に対し0.000016質量%の植物精油を含有し、両成分の混合割合は、61:1(カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスより得られる植物精油:バラ科バラ属ダマスクロ−ズ)であった。前記の被験物質を用い、実施例1に記載の方法に従い、プロコラ−ゲン産生促進作用を評価した。尚、被験物質投与によるプロコラ−ゲン産生促進作用は、ジメチルスルホキシド(コントロ−ル)添加によるプロコラ−ゲン産生量を100%とした場合に、コントロ−ルに対する被験物質添加により増加したプロコラ−ゲン産生量の割合(%)として表示した。結果を図3に示す。
【0033】
図3の結果より、本発明のコラ−ゲン産生促進剤である、カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスより得られる植物精油及びバラ科バラ属ダマスクロ−ズより得られる植物精油は、優れたプロコラ−ゲン産生促進作用を有することが判った。
【実施例3】
【0034】
<製造例1: 本発明のコラ−ゲン産生促進剤を含有する皮膚外用剤の製造方法1>
表1及び表2に記載の処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料(クリ−ム)を作製した。即ち、イ及びハの成分をそれぞれ80に加温し、イの中にロを加えて溶解させ、混練りしてゲルを形成させ、これに攪拌下徐々にハを加えて乳化し、攪拌冷却し、これにニを加え中和した後、ホを加え攪拌し、本発明の皮膚外用剤である、クリ−ム剤形の化粧料(化粧料1及び化粧料2)を作製した。また、表1の処方成分中、「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」を「水」に置換した比較例1を作製した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【実施例4】
【0037】
<製造例2: 本発明のコラ−ゲン産生促進剤を含有する皮膚外用剤の製造方法2>
表3及び表4に記載の処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料(美容液)を作製した。即ち、イ及びロの成分よりなる化粧料(美容液、化粧料3及び化粧料4)を作製した。また、表3の処方成分中、「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」を「水」に置換した比較例2を作製した。
【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【実施例5】
【0040】
<試験例3: 本発明の皮膚外用剤のシワ改善作用評価1>
実施例3に記載の方法に従い製造した化粧料1及び2、比較例1に付いて、以下の方法に従いシワ改善作用を評価した。シワ改善効果を調べた。即ち、目尻のシワが気になるパネラ−24名(女性、年齢層40〜60歳)を8名ずつ3群に分け、1群には化粧料1を、1群には化粧料2を渡し、1群には、比較例1を渡し、1日朝晩2回、連日8週間使用してもらい、試験の前後の目尻のレプリカの比較からシワ改善効果を調べた。レプリカは、光を透過させない白色のものを用い、これに皮膚表面形態を写しとり、このレプリカを実体顕微鏡の標本台に固定し、45度の角度で光を照射し、レプリカを回転させて、皮溝の陰影が強く観察される方向の陰影画像(1×1cm2)を画像解析装置に取り込んだ。この画像はシワの凹凸に従って、シワの深いところは輝度が低く、シワのないところは輝度が高く、陰影を形成する。陰影画像における輝度の分布を求め、輝度のメジアン値を境に、メジアン値以上の輝度の輝点は最大輝度に、メジアン値未満の輝度の輝点は輝度0に変換して、二値化を行い、陰影部分(輝度0の部分)の面積率を求めた。(試験前の陰影の面積率−試験後の陰影の面積率)/(試験前の陰影の面積率)×100でシワ改善度(%)を求めた。結果を各群8名の平均値±標準偏差として表5に示す。これより本発明の皮膚外用剤はシワ改善効果に優れることがわかる。これは、本発明の皮膚外用剤に含有されるコラ−ゲン産生促進剤の作用によるものである。
【0041】
【表5】

【実施例6】
【0042】
<試験例4: 本発明の皮膚外用剤のシワ改善作用評価2>
実施例4に記載の方法により製造した化粧料3及び化粧料4、比較例2に関し、実施例5に記載の方法に従いシワ改善作用評価を実施した。結果を表6に示す。表6の結果より、化粧料3及び化粧料4は、シワ改善効果に優れることが判る。これは、本発明の皮膚外用剤に含有されるコラ−ゲン産生促進作剤の作用によるものである。
【0043】
【表6】

【実施例7】
【0044】
<製造例3: 本発明のコラ−ゲン産生促進剤を含有する皮膚外用剤の製造方法2>
実施例3に記載の処方成分中、「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」の濃度を表7に記載の濃度に変更した化粧料を作製した。尚、本発明のコラ−ゲン産生促進剤の濃度変更により生じた重量%を増減させることにより調整した。
【0045】
【表7】

【実施例8】
【0046】
<試験例4: 本発明の皮膚外用剤のシワ改善作用評価2>
実施例7に記載の方法に従い製造した化粧料5〜8に関し、実施例5に記載の方法に従いシワ改善作用を評価した。結果を表8に示す。表8の結果より、本発明の皮膚外用剤は、優れたコラ−ゲン産生促進作用を有することが判った。これは、本発明の皮膚外用剤に含有されるコラ−ゲン産生促進剤の作用によるものである。
【0047】
【表8】

【実施例9】
【0048】
<製造例4: 本発明のコラ−ゲン産生促進剤を含有する皮膚外用剤の製造方法3>
実施例3の表3に記載の「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」を、表9に記載「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」に変更した化粧料9〜11を作製した。
【0049】
【表9】

【実施例10】
【0050】
<試験例5: 本発明の皮膚外用剤のシワ改善作用評価3>
実施例9に記載の方法に従い製造した化粧料9〜11に関し、実施例5に記載の方法に従いシワ改善作用を評価した。結果を表10に示す。表10の結果より、本発明のコラ−ゲン産生促進剤は、優れたシワ改善作用を有することが判った。化粧料9〜11において観察される優れたシワ改善作用は、本発明の皮膚外用剤に含有されるコラ−ゲン産生促進剤の相乗効果によると考えられる。
【0051】
【表10】

【実施例11】
【0052】
<製造例5: 本発明のコラ−ゲン産生促進剤を含有する皮膚外用剤の製造方法4>
表11及び表12に記載の処方成分を有する化粧料12〜15を、実施例3に記載の方法に従い製造した。即ち、イ、ロの成分を80℃に加温し、イの中にハを加えて溶解させ、混練りしてゲルを形成させ、これに撹拌下徐々にロを加えて乳化し、撹拌冷却して、本発明の皮膚外用剤である、油中水乳化剤形の化粧料12〜15を得た。また、表11における「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」を「水」に置換した比較例3、「本発明のトリテルペン酸、その誘導体」を「水」に置換した比較例4、「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」及び「本発明のトリテルペン酸、その誘導体」を共に「水」に置換した比較例5を作製した。
【0053】
【表11】

【0054】
【表12】

【実施例12】
【0055】
<試験例6: 本発明の皮膚外用剤のシワ改善作用評価4>
実施例11に記載の方法に従い製造した化粧料12〜15、比較例3〜5に関し、実施例5に記載の方法に従いシワ改善作用を評価した。結果を表13に示す。表13の結果より、「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」及び「本発明のトリテルペン酸、その誘導体」を含有する皮膚外用剤は、優れたコラ−ゲン産生促進作用を有することが判った。これは、本発明の皮膚外用剤に含有される「本発明のコラ−ゲン産生促進剤」及び「本発明のトリテルペン酸、その誘導体」を共に含有させることによる相乗効果によるものと考えられる。
【0056】
【表13】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、シワ形成の予防又は改善用の化粧料等に応用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンラン科ボスウェリア属に属する植物より得られる植物エッセンス、バラ科バラ属に属する植物より得られるエッセンスから選択される1種又は2種以上よりなることを特徴とする、コラ−ゲン産生促進剤。
【請求項2】
前記カンラン科ボスウェリア属に属する植物の樹皮(乳香)を水蒸気蒸留し得られるエッセンスであることを特徴とする、請求項1に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
【請求項3】
前記カンラン科ボスウェリア属に属する植物が、カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
【請求項4】
前記バラ科バラ属に属する植物が、バラ科バラ属ダマスクロ−ズであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
【請求項5】
前記のエッセンスは、精油成分であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
【請求項6】
前記コラ−ゲン産生促進作用が、プロコラ−ゲン産生促進作用であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のコラ−ゲン産生促進剤。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のコラ−ゲン産生促進剤を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項8】
前記のコラ−ゲン産生促進剤を皮膚外用剤全量に対し0.000001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、請求項7に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
更に、トリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
前記トリテルペン酸が、ウルソ−ル酸、ベツリン酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項7〜9の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
前記トリテルペン酸誘導体が、ウルソ−ル酸ベンジル及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項7〜10の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
前記トリテルペン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を、皮膚外用剤全量に対し0.0001質量%〜5質量%含有することを特徴とする、請求項7〜11の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項13】
シワ形成の予防又は改善用、抗老化用であることを特徴とする、請求項7〜12の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項14】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項7〜13の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項15】
更に、皮膚外用剤に好適な成分を含有することを特徴とする、請求項7〜14の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項16】
バラ科バラ属の植物又はカンラン科ボスウェリア属に属する植物より、精油を得、当該精油の存在下、正常ヒト真皮ファイブロブラストを培養し、培地中のプロコラ−ゲン量を定量し、プロコラ−ゲン産生の増加を確認した精油を集めることを特徴とする、コラ−ゲン産生促進剤の製造方法。
【請求項17】
コラ−ゲン産生促進のための皮膚外用剤へのバラ科バラ属の植物又はカンラン科ボスウェリア属に属する植物の精油の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−236156(P2011−236156A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108909(P2010−108909)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】