説明

コンクリート型枠押さえ金物

【課題】型枠と接する部分の本体の径を小さくするとともに、コンクリートへの雨水の浸入を防ぐコンクリート型枠押さえ金物を提供する。
【解決手段】本体4と、本体4に接続したボルト5とを備えたコンクリート型枠押さえ金物であって、ボルト5は、その先端にボルト5の外径より小径な第1の六角部6と、本体4との接続部に型枠ベニヤの穴の口径よりも小径な第2の六角部13とを備え、本体4に取り外し可能な止水板7を備えたことにより、型枠ベニヤに接する面の本体4の口径を小さくする事が出来る。又、後付の止水板7をコンクリート内部にはめ込む事により、本体4をコンクリートより取り外した時に、止水板7がコンクリート内部に残り、雨水の浸入を防ぐ効果が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート躯体の壁の厚さ調整に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリート型枠押さえ金物はコンクリート打設後、コンクリートから取り外す為に、型枠ベニヤと接する面に溝を設け、六角レンチが入る様、ネジ部の外径より大きい六角部分があり、その部分を回転する事によりコンクリートより本体を取り外している(特許文献1参照)。
【0003】
図10の従来のコンクリート型枠押さえ金物について説明する。同図において、1は本体で単管締め付けボルト2と一体であり、後部に雌ネジ3を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−155623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のコンクリート型枠押さえ金物は、型枠との接する面に溝を設け、溝の中に六角の部分を有する為、型枠と接する部分の口径が大きくなる、又、止水板が無い為、本体取り外し後、雨水などの浸入の恐れがある、という問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解消するものであり、型枠と接する部分の本体の径を小さくするとともに、コンクリートへの雨水の浸入を防ぐコンクリート型枠押さえ金物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、本体と、前記本体に接続したボルトとを備えたコンクリート型枠押さえ金物であって、前記ボルトは、その先端に前記ボルトの外径より小径な小径部と、前記本体との接続部にコンクリート型枠の穴口径よりも小径な角型部とを備え、前記本体に取り外し可能な止水部材を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記小径部を角型形状としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、前記本体の直径を前記本体長さより小径とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、前記本体の前記型枠側に平坦部を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、前記小径部を、前記ボルトの雄ネジ部の半分以上の長さとすることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、前記止水部材に環状部材を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、型枠に接する本体の小口径化が可能となり、止水部材がコンクリート内に残る為、雨水の止水の効果が向上する。
【0014】
請求項2の発明によれば、小径部を工具で回転させることにより、本体をコンクリートから取り外す事が出来る。
【0015】
請求項3の発明によれば、コンクリートから本体を取り除いた後のコンクリート表面の跡を目立たなくして、コンクリート表面の美観を向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、型枠へ流し込まれたコンクリートが本体内部に流れ込むことを防止することが出来る。
【0017】
請求項5の発明によれば、ボルトの型枠への位置決めを容易にして作業性を向上させることが出来る。
【0018】
請求項6の発明によれば、止水部材とコンクリート間の止水性能を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のコンクリート型枠押さえ金物の実施例1の外観を示す斜視図である。
【図2】同上、実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明のコンクリート型枠押さえ金物の実施例2の外観を示す分解斜視図である。
【図4】同上、コンクリート型枠押さえ金物の側面図である。
【図5】同上、図4におけるA−A線断面図である。
【図6】同上、実施形態を示す断面図である。
【図7】同上、型枠ベニヤを取り外した後の断面図である。
【図8】本発明のコンクリート型枠押さえ金物の実施例3における型枠ベニヤを取り外した後の断面図である。
【図9】本発明のコンクリート型枠押さえ金物の実施例4における型枠ベニヤを取り外した後の断面図である。
【図10】従来のコンクリート型枠押さえ金物の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0021】
図1及び図2は本発明の止水板取り付け型六角棒付鉄筋コンクリート型枠押さえ金物の実施例1を示しており、同図において、4は本体である。この本体4には、先端に第1の六角部6を有し、尚かつ本体4との接続部にも第2の六角部13を有する六角付単管締め付けボルト5が軸装され一体化されている。
【0022】
六角付単管締め付けボルト5の後部に雌ネジ部8を有し、後付の断面視略ハット型の止水板7を六角付単管締め付けボルト5の後部外周に嵌合させて本体4に取り付けて使用する。コンクリート打設後、先端の第1の六角部6を左回転する事により、本体4を取り外す事が出来又、先端の第1の六角部6が折れるなどした場合は接続部の第2の六角部13を左回転して本体4を取り外す事が出来る。本体4を取り外した後、止水板7がコンクリート内に残り、止水の効果が向上する。
【0023】
図においては外部側の穴10Aを開けた型枠ベニヤ10に本体4に止水板7を取り付けた六角単管締め付けボルト5を差し込み、雌ネジ部8に両側にネジ溝を有する軸体9の一方をねじ込み、軸体9の反対側の型枠ベニヤ10には、本体4に止水板7を取り付けた止水板取り付け型六角棒付鉄筋コンクリート型枠押さえ金物の雌ネジ部8に軸体9の他方をねじ込み、六角付単管締め付けボルト5を型枠ベニヤ10の穴10Aに差し込み、型枠ベニヤ10の外側に押し座金11を取り付け、単管12を型枠ベニヤ10と押し座金11との間に入れ、押し座金11を両方から締め込み、型枠ベニヤ10と型枠ベニヤ10の間の寸法を固定する。
【0024】
本発明は六角付単管締め付けボルト5の先端に、ボルト5の先端の雄ネジ部14の外径より小口径の第1の六角部6を設け、本体4との接続部に型枠ベニヤ10の穴10Aの口径よりも小さく型枠ベニヤ10の厚さよりも短い第2の六角部13を設ける事により、型枠ベニヤ10と接する部分の本体4の口径(後述するE1)を小さくする事が出来る。又、後付の止水板7をコンクリート内面部分側にはめ込む事により、本体4をコンクリートより取り外した時に、止水板7がコンクリート内部に残り、雨水の浸入を防ぐ効果が向上する。
【0025】
そして、本発明は、本体4と一体の先端の第1の六角部6と、接続部の第2の六角部13を有する六角付単管締め付けボルト5があり、本体4の後ろに取り外し式の止水板7を取り付け、本体4を取り外した場合でも止水板7がコンクリート内部に残り、又、コンクリート型枠ベニヤ10の穴10Aと接した部分のコンクリートの本体4を取り外した跡の穴が小口径となる。
【0026】
上記構造の止水板取り付け型六角棒付鉄筋コンクリート型枠押さえ金物の作用は、次の通りである。すなわち六角付単管締め付けボルト5の先端の雄ネジ部14より小口径の第1の六角部6を設けるとともに、本体4との接合部に、型枠ベニヤ10に六角付単管締め付けボルト5を通す口径よりも小さく、型枠ベニヤ10の厚みよりも短い第2の六角部13が設けられている為、型枠ベニヤ10の穴10Aと接する部分の本体4の口径が小さく出来、先端の第1の六角部6を六角ソケットで左回転することにより、本体4をコンクリートから取り外す事が出来る。又、先端の第1の六角部6が折れた場合は接続部の第2の六角部13を左回転して本体4を取り外す事が出来る。又、本体4と止水板7が一体でないので、止水板7はコンクリートの中に埋め込まれたまま残る構造である。又、内側の本体4には止水板7が後付なので止水板7を取り付けない事も可能であり、六角付単管締め付けボルト5の六角部は先端か接続部のどちらか片方だけでも可能である。
【0027】
ボルト5を型枠ベニヤ10の穴10Aへ挿通させるには、ボルト5先端の小径部である第1の六角部6を型枠ベニヤ10の穴10Aに位置決めし、ボルト5の反対側から型枠ベニヤ10の穴10Aに取付工具(図示せず)の先端を挿通させて、この取付工具の先端を第1の六角部6の側面に当接させたまま、取付工具に沿って型枠ベニヤ10をボルト5に向けて移動させて、ボルト5を型枠ベニヤ10の穴10Aに挿通させる。
【0028】
以上のように本実施例は請求項1に対応しており、本体4と、本体4に接続したボルト5とを備えたコンクリート型枠押さえ金物であって、ボルト5は、その先端にボルト5の外径D2より小径な小径部たる第1の六角部6と、本体4との接続部にコンクリート型枠たる型枠ベニヤ10の穴10Aの口径よりも小径で、型枠ベニヤ10の厚みよりも薄い角型部たる第2の六角部13とを備え、本体4に取り外し可能な止水部材たる止水板7を備えたことにより、型枠ベニヤ10に接する面の本体4の小口径化を可能とするとともに、第2の六角部13を工具で回転させて本体4を取り外す事が出来、又、止水板7を本体4と一体でなく、本体4をコンクリートより取り外した時に、止水板7がコンクリート内部に埋め込まれたまま残る構造としたことにより、コンクリートへの雨水の浸入を防ぐ効果が向上する。
【0029】
また請求項2に対応しており、小径部たる第1の六角部6を六角形状としたことにより、第1の六角部6を六角レンチ等の工具で回転させることにより、本体4をコンクリートから取り外す事が出来る。
【実施例2】
【0030】
図3〜図7は、実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例2において、六角付単管締め付けボルト5は、接続部だけに第2の六角部13を設けたものとし、ボルト5の雄ネジ部14側の先端には六角部のかわりの小径部として断面円形状の丸棒部15を備えている。丸棒部15の外径D1は、雄ネジ部14の外径D2より小口径に形成されており(D1<D2)、また、丸棒部15の長さL1を雄ネジ部14の長さL2とほぼ同等かそれ以上に形成されている(L1≧L2)。
【0031】
ボルト5を型枠ベニヤ10の穴10Aへ挿通させるには、ボルト5先端の小径部である丸棒部15を型枠ベニヤ10の穴10Aに位置決めし、ボルト5の反対側から型枠ベニヤ10の穴10Aに取付工具(図示せず)の先端を挿通させて、この取付工具の先端を丸棒部15の側面に当接させたまま、取付工具に沿って型枠ベニヤ10をボルト5に向けて移動させて、ボルト5を型枠ベニヤ10の穴10Aに挿通させる。
【0032】
本実施例では、丸棒部15を雄ネジ部14の長さL2とほぼ同等かそれ以上の長さL1に形成したことにより、型枠ベニヤ10の穴10Aにボルト5を通す際に使用される前記取付工具との接触面積を増加し、ボルト5の型枠ベニヤ10の穴10Aへの位置決めを容易にして作業性を向上させる。
【0033】
本体4は、合成樹脂等からなる中実の略裁頭円錐形状を有し、型枠ベニヤ10が接する雄ネジ部14側の大径部16に平坦面16Aを形成し、型枠ベニヤ10,10間へのコンクリートCの打設時に本体4内部にコンクリートCが流れ込むことを防止している。
【0034】
また、本体4は大径部16の直径E1を本体4の長さMとほぼ同等かそれより小さく形成するとともに(例えば、E1=約17mm、M=約20mmとし、E1≦M)、雌ネジ部8側の小径部17を直径E2(例えば、E2=約14mm)とし、本体4全体の径を小さく形成し、コンクリート打設後に本体4をコンクリートCから取り除く際に形成される跡穴18の口径を小さくすることで、跡穴18を目立たなくしてコンクリートC表面の美観を向上させる事ができる。
【0035】
また、図7に示すように、跡穴18に装着されるコンクリート製の略裁頭円錐形状の栓体19の側面には、周溝20が形成されており、この周溝20に第1の止水部材としてのゴム製の第1のOリング21が嵌着されており、コンクリートCの跡穴18と栓体19間の止水性の向上を図っている。また、22は栓体19に装着されるゴム製の中空な裁頭円錐状のキャップである。第1のOリング21とともにコンクリートCの跡穴18と栓体19間の止水性の向上を図っている。
【0036】
以上のように本実施例は請求項3に対応しており、本体4の直径E1を本体長さMより小径(E1<M)とすることにより、コンクリートCから本体を取り除いた後のコンクリートC表面の跡穴18を目立たなくして、コンクリートC表面の美観を向上させることができる。
【0037】
また、本実施例は請求項4に対応しており、本体4の型枠ベニヤ10側に平坦部たる平坦面16Aを形成し、型枠ベニヤ10,10間へコンクリートCを流し込む際に、本体4内部にコンクリートCが流れ込むことを防止することができる。
【0038】
さらに、本実施例は請求項5に対応しており、小径部たる丸棒部15を、ボルト5の雄ネジ部14の半分以上の長さとすることにより、ボルト5の型枠ベニヤの穴10Aへの位置決めを容易にして作業性を向上させる。
【0039】
また、本実施例上の効果として、小径部を丸棒部15とすることで、小径部の形成が容易となるとともに、前述のボルト5と型枠ベニヤ10の位置決めの際の取付工具への接触を容易とし、取付工具による案内位置決め作業が容易となる。
【実施例3】
【0040】
図8は、実施例3を示しており、前記実施例1及び実施例2と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例3において、止水板7の外周面に形成された周溝23に、第2の止水部材としてゴム製の第2のOリング24が嵌着されており、コンクリートCと止水板7間の止水性の向上を図るとともに、ゴム製の第2のOリング24のコンクリートCとの化学反応(科学的反応接着)によってコンクリートCとの密着性が高くなり、止水板7とコンクリートC間の止水性能をさらに向上させることができる。
【0041】
以上のように本実施例は請求項6に対応しており、止水板7の外周に環状部材たる第2のOリング24を配置したことにより、止水板7とコンクリートC間の止水性能を向上させることができる。
【実施例4】
【0042】
図9は、実施例4を示しており、前記実施例1〜3と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例4において、第2の止水部材としての第2のOリング24は、水などに接触するとその水分を吸収し膨張する樹脂成分とゴム成分とを混合してなる水膨張ゴム製とし、止水板7の内周面に形成された周溝25に嵌着されており、コンクリートCと止水板7間の止水性の向上を図るとともに、止水板7と軸体9間の止水性を向上させており、さらにゴム製の第2のOリング24のコンクリートCとの化学反応(科学的反応接着)と第2のOリング24の水膨張によってコンクリートCとの密着性が高くなり、止水板7とコンクリートC間の止水性能をさらに向上させることができる。
【0043】
本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、止水板7の形状や、本体4の各寸法(D1,D2,E1,E2,M)についても適宜変更可能である。また、各角型部6,13の形状も六角レンチに対応する六角型に限らず、四角レンチに対応する四角型や、その他の多角型としても構わないものとする。
【符号の説明】
【0044】
4 本体
5 ボルト
6 角型部(小径部)
7 止水板(止水部材)
10 型枠ベニヤ(型枠)
10A 穴
13 角型部
15 丸棒部(小径部)
16A 平坦面(平坦部)
24 第2のOリング(環状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体に接続したボルトとを備えたコンクリート型枠押さえ金物であって、
前記ボルトは、その先端に前記ボルトの外径より小径な小径部と、前記本体との接続部に型枠の穴口径よりも小径な角型部とを備え、前記本体に取り外し可能な止水部材を備えたことを特徴とするコンクリート型枠押さえ金物。
【請求項2】
前記小径部を角型形状としたことを特徴とする請求項1記載のコンクリート型枠押さえ金物。
【請求項3】
前記本体の直径を前記本体長さより小径とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート型枠押さえ金物。
【請求項4】
前記本体の前記型枠側に平坦部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート型枠押さえ金物。
【請求項5】
前記小径部を、前記ボルトの雄ネジ部の半分以上の長さとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンクリート型枠押さえ金物。
【請求項6】
前記止水部材に環状部材を配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンクリート型枠押さえ金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−163108(P2011−163108A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61515(P2010−61515)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(595165726)株式会社内山産業 (17)
【出願人】(509045450)
【出願人】(000152424)株式会社日建設計 (55)
【Fターム(参考)】