説明

コンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材およびその製造方法

【課題】高い電気絶縁性を有する電気絶縁材料製被覆層により電気絶縁被覆されたコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】コンクリートに埋め込め配置される丸鋼,異型棒鋼などの導電性のコンクリート用補強材を電気絶縁材料により被覆して電気絶縁材料製被覆層13を形成し、かつその電気絶縁材料製被覆層13の表面を粗面とする。前記の製造方法によって製造されたコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材33とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物に使用する丸鋼、および異型棒鋼などのコンクリート用補強材の表面に電気絶縁材料を施したコンクリート用補強材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物において、コンクリート中に補強用として埋め込んで使用する丸鋼、および異型棒鋼などのコンクリート用補強材は、電気絶縁処理を施していないものをそのまま使用している。
しかしながら、バラストレス軌道用のコンクリート製軌道スラブまたはコンクリート製枕木あるいはコンクリート製路床、コンクリート製床版、コンクリート製ガードパネルなどの鉄道用コンクリート構造物におけるコンクリート内に配置される、電気絶縁処理を施していない丸鋼、および異型棒鋼などの複数の金属補強材(非絶縁金属補強材)の交差させるようにして、平面的に格子状等のループ状に配置させると、そのループ状部が磁場の中に配置されると、そのループ状部と、コンクリート構造物上に設置されているレールに流される電気信号との間に、電磁誘導が発生し、電気信号の伝達を障害することがある。
さらに具体的に説明すると、非絶縁金属補強材が交差するようにしてループ状に配置されて、ループ状の電気的な回路が形成され、これが磁場の中に配置されると、電流が流れるようになり、レールに流される電気信号との間に、電磁誘導が発生し、電気信号の伝達を障害することがある。
この対策として、補強材の表面にエポキシ樹脂粉末の静電塗装を施したもの、例えばエポキシ樹脂塗装鉄筋が使用されている。しかしながら、このようなエポキシ樹脂塗装鉄筋は、1mあたり数個のピンホールがあり、電気絶縁性が完全とは言えず、さらに、エポキシ樹脂塗装鉄筋を曲げ加工する時、曲げられた部分に塗装されたエポキシ樹脂は、その変形性、引張強度および鉄筋との接着強度など特性により、裂傷または剥離が発生することがあり、電気絶縁性が低下することがあった。
なお、コンクリート内に埋め込み配置される異形鉄筋の防錆のみを目的として、鉄筋に熱可塑性樹脂を被覆することは知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、前記文献には、コンクリート内に配置された場合に、電気的に閉回路が形成されないようにする技術ではない(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−348670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のように、コンクリートに埋め込み配置される補強材について電気的に絶縁するためには、絶縁材料を被覆すればよいが、絶縁材料にピンホールがあると絶縁性能を発揮することができない。そしてコンクリート用補強材としてはコンクリートとの付着力の確保が絶対である。そのためには、ある程度の絶縁材料による被覆層の薄さと、被覆層外面の凸凹が必要になる。ただし、被覆層を薄くしすぎると、絶縁材料を被覆した鉄筋等のコンクリート用補強材の組立てまたはコンクリート打設中に被覆層に傷が付き、絶縁性能の低下につながる。
本発明は、丸鋼、および異型棒鋼などのコンクリートに埋め込み配置されて使用されるコンクリート補強材の表面に高い電気絶縁性を有する電気絶縁材料製被覆層を形成することができるようにし、また、形成された電気絶縁層に絶縁性の低下につながるピンホールを生じないようにし、また、絶縁層被覆補強材の曲げ加工時に、被覆層の裂傷または剥離が発生しなく、高い電気絶縁性を保持することができる、電気絶縁被覆されたコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法においては、コンクリートに埋め込め配置される丸鋼,異型棒鋼などの導電性のコンクリート用補強材を電気絶縁材料により被覆して電気絶縁材料製被覆層を形成し、かつその電気絶縁材料製被覆層の表面を粗面とすることを特徴とする。
第2発明では、第1発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法において、前記の電気絶縁材料が、ポリアミド樹脂、ポリエンチレ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂を代表とする熱可塑性樹脂のいずれかであることを特徴とする。
第3発明では、第1発明または第2発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法において、前記の電気絶縁材料を、予め溶融状態まで加熱された後に前記のコンクリート用補強材の表面に被覆することを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかのコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法において、前記のコンクリート用補強材の表面に被覆された電気絶縁材料製被覆層の表面に、螺旋状の溝を形成することを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかのコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法において、前記電気絶縁材料製被覆層の表面にサンドブラスターで研磨剤を吹き付けて粗面とすることを特徴とする。
第6発明では、第1発明〜第5発明のいずれかの製造方法によって製造されたコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材である。
【発明の効果】
【0005】
第1発明によると、コンクリートに埋め込め配置される丸鋼,異型棒鋼などの導電性のコンクリート用補強材を電気絶縁材料により被覆して電気絶縁材料製被覆層を形成し、かつその電気絶縁材料製被覆層の表面を粗面とするので、電気絶縁性があり、しかもコンクリートとの付着力が高い被覆されたコンクリート用補強材を容易に製造することができる。
第2発明によると、電気絶縁材料が、ポリアミド樹脂、ポリエンチレ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂を代表とする熱可塑性樹脂のいずれかであるので、強度が高い電気絶縁材料製被覆層を形成することができ、コンクリート用補強材の曲げ加工等においても、前記被覆層が剥離する恐れの少ないコンクリート用補強材を製造することができる。しかも前記被覆層にピンホールが生じる恐れのないコンクリート用補強材とすることができる。
第3発明によると、前記の電気絶縁材料を、予め溶融状態まで加熱された後に前記のコンクリート用補強材の表面に被覆するので、棒状のコンクリート用補強材あるいは板状のコンクリート用補強材であるかに、かかわらず、容易に電気絶縁材料製被覆層を形成することができる。
第4発明によると、前記のコンクリート用補強材の表面に被覆された電気絶縁材料製被覆層の表面に、螺旋状の溝を形成するので、コンクリートとの付着係止効果の大きい電気絶縁被覆されたコンクリート用補強材を容易に製造することができる。
第5発明によると、前記電気絶縁材料製被覆層の表面にサンドブラスターで研磨剤を吹き付けて粗面とするので、簡単な手段により、電気絶縁材料製被覆層の表面を、粗面とすることができ、コンクリートとの付着を確実に図ることができる絶縁被覆されたコンクリート用補強材を容易に製造することができる効果が得られる。
第6発明によると、電気絶縁性があり、しかもコンクリートとの付着力が高い絶縁被覆された安価なコンクリート用補強材であり、このような絶縁被覆されたコンクリート用補強材を単独で使用したり、または、非絶縁金属補強材と交差するように埋め込み配置して使用した場合に、コンクリート用補強材相互が交差するように配置されて矩形等のループ状部が形成されても、電気的な閉回路が形成されることはない。そのため、鉄道用のコンクリート構造物に埋め込み配置する場合に、電気的な閉ループを形成させないための部材として利用することができる。そのため、このような電気絶縁材料製の被覆層により被覆されたコンクリート補強材を単独で使用したり、または、非絶縁金属補強材と交差するように埋め込み配置して使用すると、レールに流される電気信号との間に、電磁誘導が発生する恐れを排除することができ、そのため、電気信号の伝達を障害する恐れを排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明のコンクリート用補強材の表面に電気絶縁材料を被覆する実施形態に基づいて、さらに詳しく説明する。
【0007】
図1(a)は本発明の製造方法により製造されたコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材を示す一部縦断正面図、(b)は(a)の横断平面図である。図2は本発明の他の形態のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材を示す一部縦断正面図である。図3(a)は図1(b)のA−A線断面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す図である。
図4(a)は、本発明のコンクリート用補強材として使用する異形棒鋼からなるコンクリート埋め込み用補強材を示す正面図、(b)は(a)の底面図、(c)は(a)の側面図である。図5は本発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法を説明するために説明図である。図6は、図5において使用するダイス部分を取り出して示す縦断正面図である。図7は、本発明の方法により電気絶縁被覆をした異形棒鋼からなるコンクリート埋め込み用絶縁被覆鋼材のコンクリートとの付着力を試験した結果を示すグラフである。
【0008】
図4(a)に示すように、正面視で、異形棒鋼1からなるコンクリート用補強材本体1aの表面に凸状部分11がその軸線方向と交差するように斜め方向に間隔を隔てて形成され、また同図(a)(b)に示すように軸線方向に対称的にリブ12が突出形成されている。前記のリブ12間に渡って凸状部分11aは形成され、前記の正面側の凸状部分11aに対して背面側の凸状部分11bは、図1(b)あるいは図4(b)に示すように、底面視で、傾斜方向が対称に異なるように形成され、前記の正面側の凸状部分11aと、背面側の凸状部分11bは、異形棒鋼1の棒長手方向で、半螺旋状に設けられている。
【0009】
前記のような異形棒鋼1の外周面に、溶融状態のポリアミド樹脂等からなる電気絶縁材料が押出成形されて被覆層13が形成されている。
【0010】
また、前記の被覆層13の外周面には、軸方向に螺旋状に伸びる、ヒレ状の凸部14aと凹部14bが交互に形成されている。螺旋状の形態は、軸方向で一様でもよく、軸方向で螺旋の方向が交互にことなる螺旋状であってもよい。螺旋状の形態としては、ヒレ状の凸部14aと凹部14bとが、他の形態の螺旋状であってもよい。
【0011】
前記のように、異型棒鋼1に電気絶縁材料が被覆されて、電気絶縁材料からなる被覆層13が形成されて、本発明の一形態である電気絶縁被覆の異形棒鋼33が構成されている。また、図2および図3に示すように、前記の電気絶縁被覆の異形棒鋼33における被覆層13の表面には、さらに、周方向にヒレ状の凸部14aと凹部14bが交互に、部材軸方向に連続して形成されているのが好ましい。さらに、被覆層13の表面に形成されているヒレ状の凸部14aと凹部14bは、螺旋状で異形棒鋼1の軸方向に対して交差角度αの角度で交差することにより、コンクリートとの付着効率が良くなる。前記の交差角度αは0°〜80°であり、交差角度αが、90°に近づくように大きくなるほど、異形棒鋼1とコンクリートとの付着強度(特に、前記の従来例の場合に比べて、異形棒鋼1の軸方向について付着強度)が高い。
なお、図中、2a、2bは、異形棒鋼1における隣り合う凸状部分11a間の溝2a、凸状部分11b間の溝2bである。
【0012】
次に、本発明のコンクリート埋め込み用電気絶縁被覆補強材の一形態として、電気絶縁被覆の異形棒鋼33の製造方法について、図5を参照しながら説明する。
【0013】
まず、短尺の異形棒鋼1を繰出し装置22に乗せて、複数本の短尺の異形棒鋼1を直列に連続して送り出しが出来るようにされている。前記の繰出し装置22では、例えば、5m程度の異形棒鋼1を、適宜、切断可能なジョイントにより連結し、送り出し装置23により連続して送り出すようにされている。
次に、サンドブラスター24により、異形棒鋼1の表面の酸化皮膜を除去し、電気絶縁材料からなる被覆層13が、接着しやすいよう表面処理を行う。
送り出された前記異形棒鋼1は、接着剤塗布装置25で接着剤を塗布し、ポリエチレン樹脂あるいはポリアミド樹脂等の電気絶縁材料を加熱装置26により200℃程度に加熱して溶融した後、押出成形機27のクロスヘッド28に導入される。このときの加熱温度は、異形棒鋼1に塗布される接着剤によって決まる温度であり、被覆層13の接着力を左右する要因となる。
【0014】
次に、前記の被覆層13の外表面に、複数の凸部14aおよび凹部14bを交互に形成される工程について、図5を参照しながら説明すると、前記の押出成形機27では、ポリエチレン樹脂またはポリアミド樹脂等からなる電気絶縁材料を200℃程度で加熱溶融して、異形棒鋼1の表面に絶縁用の被覆層13を連続して形成させる。この被覆層13の厚さは、0.2mm〜0.4mmが好適である。被覆層13における凹部14bの部分での厚みは、少なくとも0.1mmとするのがよい。前記のポリエチレン樹脂またはポリアミド樹脂等からなる電気絶縁材料を使用して被覆層13を形成するメリットは、絶縁性能を確保しながら、コンクリートとの付着が確実で、異形棒鋼1の折り曲げ加工しても、傷が付きにくい利点がある。
【0015】
前記の被覆層13を形成するために、クロスヘッド28に設けられる成形ダイス29の一形態としては、図6に示すように、環状のダイス29の本体の内側に、周方向に交互に凸凹加工を施して、円弧状の凸部15aとヒレ状の凹部15bとを環状ダイスの内側周方向に交互に形成してなる凹凸部15が部材軸方向に連続して形成されている。
また、環状のダイス29は、端部にスプロケット3が固定されており、環状のダイス29の基端部は、図5(b)に示すように、クロスヘッド28側に回転可能に支承されている。環状のダイス29のスプロケット3と、押し出し成形機27の本体側に設置された駆動モータ4における駆動スプロケット5とは、チェーン9等が巻き掛けられている。前記環状のダイス29を、回転または回動させることにより、部材長手方向の外面に螺旋状溝を有する被覆層13を形成することができる。
【0016】
前記の凹凸部15により外表面が成形される被覆層13は、前記の凸凹部14におけるヒレ状の凸部14a間の溝、すなわち、凹部14bの形状、深さおよび被覆鋼材の軸方向との傾斜角度によってコンクリートとの付着強度を調整することができる。前記凹部14bの断面形状としては、半円状溝、矩形状溝、V字状溝でもよく、凹部の深さは0.1mm〜0.15mmでよく、異形棒鋼1の中心軸との傾斜角度αは0°から80°であってもよい。
【0017】
前記のような成形ダイス29から射出された溶融状態の電気絶縁性樹脂により、異形棒鋼1の外側に被覆層13が形成される。前記の被覆層13の外周面は、ヒレ状の凹凸加工が施されて押出され、図3(a)(b)に示すように、被覆層13の外周面に、被覆層13の長手方向に連続したヒレ状の凸部14aと凹部14bとが、周方向に交互に、被覆層13の軸線方向に連続して形成された状態で、被覆されて複数本の異形棒鋼1が連続した被覆異形棒鋼1a(図5参照)となる。なお異形棒鋼1における凸状部分11が断面円弧状である場合には、図2(b)に示すように被覆層13は形成される。
【0018】
前記のように成形ダイス29から射出される被覆層13により被覆された連続した異形棒鋼1a、すなわち、連続した電気絶縁被覆異形棒鋼1aは、その後、冷却装置30で冷却され、その後、前記電気絶縁被覆した異形棒鋼1aは、切断機11によって前記ジョイントによる連結部を被覆層13の外側から切断し、被覆層13で被覆された5m程度の電気絶縁被覆の異形棒鋼33とされ、完成品架台32上へと送られる。
【0019】
異形棒鋼1をこのようにして電気絶縁材料により被覆するようにして製造された電気絶縁被覆の異形棒鋼33は、前記の被覆層13が被覆されていることにより、被覆層13の表面に、部材長手方向に連続したヒレ状の凸部14aと凹部14bを交互に備えた凸凹部14が形成され、この凸凹部14により、コンクリートとの付着力向上を図ることができる。なお、凸状部分11間の溝部2a、2bは、被覆層13が被覆されていることにより、若干滑らかになるが、前記の凸凹部14による付着力向上の効果が大きい。
【0020】
コンクリートに対する電気絶縁被覆の異形棒鋼33の付着力をさらに向上させる必要がある場合には、前記被覆層13の表面にサンドブラスター(図示を省略した)にて研磨剤を吹き付けて粗面化すればよい。
したがって、異形棒鋼1等の補強材に被覆される電気絶縁材料の表面に、サンドブラスターにて研磨剤を吹き付けて粗面化すればよい。
被覆層13の硬化した外表面を、直接、研磨して粗面としてもよく、半溶融状態の被覆層13に、研磨剤を吹き付けて、付着させて、粗面化を図るような形態でもよい。
これらの場合の研磨剤としては、粒度が46番(350〜420μ)のセラミック系のものを使用すると、強度が大きいので良い。
前記の被覆層13の硬化した外表面を、直接、研磨して粗面とする場合、その粗面の凹凸の深さは10μm〜30μm程度であればよく、10μmを下回ると、付着効果が低くなる恐れがあるので、好ましくない。また、被覆層13の硬化した外表面が平坦である場合には、30μm以上あってもよいが、少なくとも、前記の厚さを保持するようにする。
このようにサンドブラスターにより研磨剤を吹き付ける場合は、前記のようなヒレ状の凸部14aを有する被覆層13以外にも、被覆層13の外表面に凹凸部を備えていない被覆層13の外表面に吹き付けて、研磨した粗面とするようにしてもよい。
【0021】
なお、この実施形態は、異形棒鋼の例を示したが、他のコンクリート用補強材においても実施例と同様に適用することが出来る。
【0022】
図7は、本発明の電気絶縁被覆の異形棒鋼33におけるコンクリートとの付着強度を確認するためのコンクリート引抜試験の結果を示したグラフである。
前記のコンクリート引抜試験は、社団法人 土木学会の「エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いる鉄筋コンクリートの設計施工指針」の中の規格で、エポキシ樹脂塗装鉄筋の付着強度試験方法(社団法人土木学会基準JSCE-E516―2003年)、を参考にして試験した。
この規格では、被覆エポキシ樹脂塗装鉄筋の最大付着応力度が、無塗装異型棒鋼の85%以上でなければならないと規定されている。
図9に示すとおり、本発明の製造方法により製造された電気絶縁被覆の異形棒鋼33における最大付着応力度は、無被覆異型棒鋼の95%を超えており、高い付着生を有していることが確認された。なお、符号16はコンクリートである。
【0023】
また、塩水噴霧試験(JSCE-E518―2003年)では、平均発錆率が0.5%以下である旨規定されているが、本発明の電気絶縁被覆の異形棒鋼33の耐食性について、前記試験方法により試験した結果、平均発錆率が0.5%以下であった。したがって、本発明の製造方法により製造された電気絶縁被覆の異形棒鋼33は、前記の規定を満足させる高い耐食性のあることが確認された。
また、前記被覆層13について、ピンホールが検出されるか否かについて、ピンホール検査(エポキシ樹脂塗装鉄筋の品質規格として土木学会基準JSCE-E512―2003年)に準拠して検査した結果、同基準では、5個/m以下であるが、本発明の場合は、ピンホールは検出されなかった。したがって、本発明の製造方法により製造された電気絶縁被覆の異形棒鋼33は、前記の規定を満足させる高い絶縁性のあることが確認された。
【0024】
(実施形態2)
次に、前記の製造方法によって製造された電気絶縁被覆された異形棒鋼33を、軌道スラブに使用した形態を図8を参照しながら説明する。なお、図8は、異形棒鋼を使用した本発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆鋼材を埋め込み配置した軌道スラブを示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0025】
図示の実施形態のコンクリート軌道スラブ6は、図8に示すように、長さ5m、幅2m、厚さ0.19mの鉄筋コンクリート板である。コンクリート軌道スラブ6に中心軸から対称に2本のレール7,8が設置される。なお、図中17は、埋め込み栓(雌ねじ部材)である。
【0026】
車両の荷重を耐えるために、図示を省略するが、一般的に、無被覆異型棒鋼が、コンクリート用補強材として軌道スラブに埋め込み配置されている。しかし、レールに約2000Hzの高周波数信号が通ると、縦方向異型棒鋼と横方向異型棒鋼で形成されたループ状の回路に誘導電流が発生し、電気信号の伝達を障害することがある。
このような障害を解消するために、この第2実施形態では、図8および図9に示すように、コンクリート軌道スラブ6内に埋め込み配置される全ての異型棒鋼、または縦方向に埋め込み配置されるすべての異型棒鋼、または横方向に埋め込み配置されるすべての異型棒鋼だけに、電気絶縁被覆の異型棒鋼33を使用して埋め込み配置した形態を示している。
【0027】
なお、図9は、コンクリート軌道スラブ6に異形棒鋼を使用した本発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材33の配置形態を示すものであって、(a)は平面図、(b)は縦断正面図である。図中符号16はコンクリートである。
【0028】
このように電気絶縁被覆の異型棒鋼33を配置することにより、縦方向または横方向の少なくとの一方に、電気絶縁被覆の異型棒鋼33が埋め込み配置されるため、無被覆の異型棒鋼相互が直接接触することはなく、ループ状の電気的な回路が形成しないことにより、誘導電流が発生しく、電気信号の伝達に対する障害はなくなる。
【0029】
本発明の電気絶縁被覆の異型棒鋼33を埋め込み配置したコンクリート軌道スラブ6を含む下記(1)〜(3)のコンクリート軌道スラブ6について、レールに通る高周波電気信号に及ぼすコンクリート用補強材の影響を調べるために、周波数2000Hzの測定装置(図示を省略した)により、各コンクリート軌道スラブ6に設置されている2本のレール7,8の間のインダクタンス(L)およびインピーダンス(R)を測定し、これら測定値と、コンクリート軌道スラブ6上の絶縁板の上に設置されている2本のレール7,8間の測定値LとRとの相対偏差量を下記表1に示す。
(1)コンクリート軌道スラブの縦方向および横方向(スラブ幅方向)の両方とも無被覆の異形棒鋼1としたコンクリート軌道スラブ(図10参照)。
(2)コンクリート軌道スラブの縦方向は無被覆の異形棒鋼1とし、縦方向はピンホールを生じている従来のエポキシ樹脂粉体塗装とした被覆異形棒鋼18を埋め込み配置したコンクリート軌道スラブ(図11参照)。
(3)コンクリート軌道スラブの横方向は無被覆の異形棒鋼1とし、縦方向は本発明の電気絶縁性被覆層13からなる被覆異形棒鋼を埋め込み配置したコンクリート軌道スラブ。
【0030】
【表1】

【0031】
また、本発明において被覆層13を形成する電気絶縁材料としては、熱可塑性樹脂がよく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエンチレ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂を代表とする熱可塑性樹脂のいずれかを使用し、溶融状態の樹脂を異形棒鋼1に押出成形により被覆した電気絶縁被覆の異形棒鋼33を使用した場合、前記表1と同様な性能を発揮する。したがって、前記以外の公知の熱可塑性樹脂により熱可塑性樹脂被覆層13を形成するようにしてもよい。
【0032】
前記表1より、コンクリート軌道スラブ6に、電気絶縁被覆の異型棒鋼33を用いた場合、普通の無被覆異型棒鋼およびエポキシ樹脂塗装鉄筋に比べ、相対インダクタンス偏差量は大きくなり、相対インピーダンス偏差量は小さくなる。即ち、本発明の電気絶縁被覆の異型棒鋼33を用いることにより、コンクリート軌道スラブ6のレール7,8に通っている高周波電気信号に対する障害は少なくなることが分かった。
【0033】
このような本発明の電気絶縁材料を被覆したコンクリート補強材、すなわち、丸鋼および異型棒鋼などのコンクリートに埋め込み配置されて使用され、電気絶縁材料を被覆したコンクリート補強材では、その表面に高い電気絶縁性を有する電気絶縁材料製被覆層を備えており、また、電気絶縁被覆層に絶縁性の低下につながるピンホールが生じる恐れがなく、また、絶縁層被覆補強材の曲げ加工時に、被覆層の裂傷または剥離が発生する恐れがなく、高い電気絶縁性を保持することができる。
【0034】
前記コンクリート製軌道スラブのように、本発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法によって製造された被覆されたコンクリート用補強材を、無被覆鉄筋などの無被覆補強材に代えて、コンクリート構造物に埋め込み配置すると、電気的な絶縁性が高いので、コンクリート構造物に電気誘導および磁気誘導の発生による電気信号の伝達障害を防止することができる。
【0035】
本発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法によって製造された被覆されたコンクリート用補強材を、無被覆鉄筋などの無被覆補強材に代えて、コンクリート構造物に埋め込み配置することにより、コンクリート用補強材の腐食を抑制することが可能になる。
【0036】
前記実施形態の場合には、異形棒鋼1に電気絶縁材料を被覆する場合を説明したが、本発明を実施する場合、異形棒鋼1以外にも、鉄筋または異形鉄筋あるいは鋼板等の補強材を被覆するようにしてもよい。棒状補強材を被覆する場合には、前記実施形態のような押出し被覆手段を採用すればよく、板状補強材を被覆する場合には、板状補強材を型内に配置して溶融状態の熱可塑性樹脂を充填・固化させるようにしてもよい。
【0037】
前記実施形態では、コンクリート製軌道スラブについて、図示して説明したが、本発明を実施する場合、軌道側部に設置される側壁あるいはコンクリート製枕木、等レール近傍に設置されるコンクリート製ガードパネルに埋め込み配置される補強用の鋼材として、前記実施形態と同様に熱可塑性樹脂被覆鋼材を使用するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は本発明の製造方法により製造されたコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の一例を示す一部縦断正面図、(b)は(a)の横断平面図である。
【図2】(a)は図1(a)の正面図、(b)は本発明の他の形態のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材を示す一部縦断正面図である。
【図3】(a)は図1(b)のA−A線断面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す図で、(c)は図1(a)のB−B線断面図である。
【図4】(a)は本発明のコンクリート用補強材として使用する異形棒鋼からなるコンクリート埋め込み用補強材を示す正面図、(b)は(a)の底面図、(c)は(b)のC−C線断面図である。
【図5】(a)は本発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法を説明するために説明図、(b)は被覆層の外周面に螺旋状の溝を形成する場合の装置の形態を示す図である。
【図6】図5において使用するダイス部分を取り出して示す縦断正面図である。
【図7】本発明の方法により電気絶縁被覆をした異形棒鋼からなるコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材のコンクリートとの付着力を試験した結果を示すグラフである。
【図8】異形棒鋼を使用した本発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材を埋め込み配置した軌道スラブを示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図9】軌道スラブに異形棒鋼を埋め込み配置した本発明のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の配置形態を示すものであって、(a)は平面図、(b)は縦断正面図である。
【図10】軌道スラブに異形棒鋼を埋め込み配置した従来のコンクリート埋め込み用補強材の配置形態を示すものであって、(a)は平面図、(b)は縦断正面図である。
【図11】軌道スラブにエポキシ樹脂静電粉末塗装した異形棒鋼を埋め込み配置した従来のコンクリート埋め込み用補強材の配置形態を示すものであって、(a)は平面図、(b)は縦断正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 異形棒鋼
1a コンクリート用補強材本体
2a 溝
2b 溝
3 従動スプロケット
4 駆動モータ
5 駆動スプロケット
6 コンクリート軌道スラブ
7 レール
8 レール
9 チェーン
11a 凸状部分
11b 凸状部分
12 リブ
13 被覆層
14 ヒレ状の凹凸部
14a ヒレ状の凸部
14b 凹部
15 凹凸部
16 コンクリート
17 埋め込み栓
22 繰出し装置
23 送り出し装置
24 サンドブラスター
25 接着剤塗布装置
26 加熱装置
27 押出成形機
28 クロスヘッド
29 成形ダイス
30 冷却装置
31 切断機
32 完成品架台
33 電気絶縁被覆の異形棒鋼
34 普通の異型棒鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートに埋め込め配置される丸鋼,異型棒鋼などの導電性のコンクリート用補強材を電気絶縁材料により被覆して電気絶縁材料製被覆層を形成し、かつその電気絶縁材料製被覆層の表面を粗面とすることを特徴とするコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法。
【請求項2】
前記の電気絶縁材料が、ポリアミド樹脂、ポリエンチレ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂を代表とする熱可塑性樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法。
【請求項3】
前記の電気絶縁材料を、予め溶融状態まで加熱された後に前記のコンクリート用補強材の表面に被覆することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法。
【請求項4】
前記のコンクリート用補強材の表面に被覆された電気絶縁材料製被覆層の表面に、螺旋状の溝を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法。
【請求項5】
前記電気絶縁材料製被覆層の表面にサンドブラスターで研磨剤を吹き付けて粗面とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって製造されたコンクリート埋め込み用絶縁被覆補強材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−235674(P2009−235674A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79218(P2008−79218)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【出願人】(390021119)ヒエン電工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】