説明

コンクリート壁の構築方法、コンクリート壁、及び打ち込み型枠

【課題】施工が容易であるとともに、高い構築精度が得られるコンクリート壁の構築方法を提供する。
【解決手段】構築対象箇所に複数の型枠パネル部材12を配置し、複数の型枠パネル部材12を支持手段15によって支持することにより打ち込み型枠11を設置する工程と、構築対象箇所に複数の型枠パネル部材22を配置し、複数の型枠パネル部材22を支持手段15によって支持することにより着脱型枠21を設置する工程と、打ち込み型枠11と着脱型枠21との間に間隔保持手段31を配置することにより両型枠11、21間を所定の間隔に保持する工程と、両型枠11、21間にコンクリート36を打設する工程と、コンクリート36の硬化後に打ち込み型枠11及び着脱型枠21の支持手段15を解体し、打ち込み型枠11を残置させ着脱型枠21を取り外す工程とを備える。打ち込み型枠11の各型枠パネル部材12は、少なくとも2枚の内装ボード13を重合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁の構築方法、コンクリート壁、及び打ち込み型枠に関し、特に、建物等のコンクリート構造物の壁の構築に有効なコンクリート壁の構築方法、コンクリート壁、及び打ち込み型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等のコンクリート構造物の壁を構築する構築方法の一例として、壁の構築対象箇所の一方の面及び他方の面に構築対象箇所に沿ってそれぞれ型枠を配置し、両型枠間にセパレータを配置して両型枠間を所定の間隔に保持し、両型枠間にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に両型枠を解体して取り外すことにより、コンクリート壁を構築する方法が知られている。
【0003】
このような構築方法にあっては、コンクリート壁の構築後に、コンクリート壁の一方の面の型枠及び他方の面の型枠の両方を解体して取り外さなければならないため、型枠の解体作業に非常に手間がかかる。また、セパレータの端部がコンクリート壁の表面から突出した状態で構築されるため、構築後にその突出している部分を切断する必要があり、その作業に手間がかかる。
【0004】
さらに、型枠にベニヤ板を使用し、複数枚のベニヤ板を構築対象箇所に沿って横並びに配置し、複数枚のベニヤ板の外面側に木製のバタを配置し、バタと各ベニヤ板との間に釘を打ち込んで固着させているため、固着状態によっては隣接するベニヤ板間に隙間や段差が形成されることがあり、この隙間や段差によって構築後のコンクリート壁の両面に凹部、凸部、段差等が形成され、構築後にコンクリート壁の両面を補修する作業が必要になる。
【0005】
一方、上記のような問題に対処するため、コンクリート壁の構築対象箇所の一方の面及び他方の面の両型枠に打ち込み型枠を使用し、構築後に打ち込み型枠を内装ボードとして残置させる方法も考えられる。このような方法にあっては、コンクリート壁の構築後に両型枠を解体して取り外す必要がないので、型枠の解体作業に要する手間を削減することができる。しかし、コンクリート壁の両面が両型枠で被覆された状態となるため、構築後に建築基準法に定める「コンクリート打設面の検査と補修」ができなくなる問題がある。
【特許文献1】特開平7−288673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、コンクリート壁の構築後の型枠の解体作業に要する手間を削減することができ、構築後にセパレータの端部を切断する作業が不要であり、さらに、構築後にコンクリート壁の両面を補修する必要がなく、さらに、構築後に建築基準法に定める「コンクリート打設面の検査と補修」が可能なコンクリート壁の構築方法、コンクリート壁、及び打ち込み型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、コンクリート壁の構築方法であって、コンクリート壁の構築対象箇所の一方の面に沿って複数の型枠パネル部材を配置し、該複数の型枠パネル部材を支持手段によって支持することにより、前記構築対象箇所に複数の型枠パネル部材からなる打ち込み型枠を設置する打ち込み型枠設置工程と、前記コンクリート壁の構築対象箇所の他方の面に沿って複数の型枠パネル部材を配置し、該複数の型枠パネル部材を支持手段によって支持することにより、前記構築対象箇所に複数の型枠パネル部材からなる着脱型枠を設置する着脱型枠設置工程と、前記打ち込み型枠と前記着脱型枠との間に間隔保持手段を配置することにより、前記打ち込み型枠と前記着脱型枠との間を所定の間隔に保持する間隔保持工程と、前記打ち込み型枠と前記着脱型枠との間にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリートの硬化後に、前記打ち込み型枠及び前記着脱型枠の支持手段を解体し、前記打ち込み型枠を残置させ、前記着脱型枠を取り外す型枠解体工程とを備え、前記打ち込み型枠の各型枠パネル部材は、少なくとも2枚の内装ボードを重合してなることを特徴とする。
【0008】
本発明によるコンクリート壁の構築方法によれば、打ち込み型枠設置工程によりコンクリート壁の構築対象箇所の一方の面又は他方の面に打ち込み型枠を設置し、着脱型枠設置工程によりコンクリート壁の構築対象箇所の他方の面又は一方の面に着脱型枠を設置し、間隔保持工程により打ち込み型枠と着脱型枠との間を所定の間隔に保持し、コンクリート打設工程により打ち込み型枠と着脱型枠との間にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に型枠解体工程により支持手段を解体し、打ち込み型枠を残置させ、着脱型枠を取り外すことにより、構築対象箇所にコンクリート壁を成形することができる。
この場合、構築後に着脱型枠のみを取り外せばよいので、型枠の解体作業に要する手間を削減することができる。また、コンクリート壁の片面のみに打ち込み型枠を残置させることになるので、構築後のコンクリート壁に対して「コンクリート打設面の検査と補修」を行うことが可能になる。さらに、打ち込み型枠の各型枠パネル部材は、少なくとも2枚の内装ボードを重合して構成されているので、コンクリートの打設にも十分に耐え得ることができ、コンクリート打設の際に破損等するようなことがない。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のコンクリート壁の構築方法であって、前記打ち込み型枠の各型枠パネル部材の各内装ボードは、繊維強化ボードからなることを特徴とする。
【0010】
本発明によるコンクリート壁の構築方法によれば、打ち込み型枠の各型枠パネル部材の各内装ボードは、繊維強化ボードから構成されているので、コンクリートの打設に十分に耐え得る強度を有することになり、コンクリートの打設の際に破損等するのを防止できる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のコンクリート壁の構築方法であって、前記着脱型枠の各型枠パネル部材は、板状のせき板と、該せき板の両縁部に一体に設けられる連結部とからなり、隣接する型枠パネル部材の連結部間が連結手段によって一体に連結されるとともに、複数の型枠パネル部材のせき板が前記支持手段によって一体に連結されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によるコンクリート壁の構築方法によれば、複数の型枠パネル部材の隣接する型枠パネル部材の連結部間が連結手段によって一体に連結されるとともに、複数の型枠パネル部材のせき板が支持手段によって一体に連結されることで、複数の型枠パネル部材が一体化されて着脱型枠が構成され、この着脱型枠のせき板によってコンクリート壁の他方の面又は一方の面が成形されることになる。この場合、隣接する型枠パネル部材の連結部間が連結手段によって一体に連結されているので、隣接する型枠パネル部材間に隙間や段差が形成されるようなことはなく、構築後のコンクリート壁の表面に凹部、凸部、段差等が形成されるようなことはない。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1から3の何れかに記載のコンクリート壁の構築方法であって、前記間隔保持手段は、前記打ち込み型枠と前記着脱型枠との内面間に配置されるセパレータ部材と、該セパレータ部材の両端部に一体に設けられるとともに、前記打ち込み型枠の内面及び前記着脱型枠の内面に当接するストッパー部材と、前記打ち込み型枠及び前記着脱型枠の外面側から前記打ち込み型枠及び前記着脱型枠を貫通して前記セパレータ部材の両端部に螺着され、前記セパレータ部材を前記打ち込み型枠及び前記着脱型枠に一体に連結する締結部材とを備えてなることを特徴とする。
【0014】
本発明によるコンクリート壁の構築方法によれば、打ち込み型枠と着脱型枠との内面間にセパレータ部材を配置し、セパレータ部材の両端部のストッパー部材を打ち込み型枠及び着脱型枠の内面に当接させ、打ち込み型枠及び着脱型枠の外面側から打ち込み型枠及び着脱型枠を貫通してセパレータ部材の両端部に締結部材を螺着させることで、セパレータ部材が打ち込み型枠及び着脱型枠に一体に連結され、打ち込み型枠と着脱型枠との間が所定の間隔に保持される。また、セパレータ部材は打ち込み型枠と着脱型枠との内面間に位置しているので、構築後にセパレータ部材の両端部がコンクリート壁の両面から突出するようなことはなく、セパレータ部材の両端部を切断する作業が不要となる。
【0015】
請求項5に係るコンクリート壁は、請求項1から4の構築方法によって構築されることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、コンクリート壁の内面又は外面に残置される打ち込み型枠であって、少なくとも2枚の内装ボードを重合してなる型枠パネル部材からなることを特徴とする。
【0017】
本発明による打ち込み型枠によれば、打ち込み型枠は、少なくとも2枚の内装ボードを重合してなる型枠パネル部材から構成されているので、コンクリート打設の際に十分な強度が得られることになり、コンクリートの打設の際に破損等するのを防止できることになる。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の打ち込み型枠であって、前記内装ボードは、繊維強化ボードからなることを特徴とする。
【0019】
本発明による打ち込み型枠によれば、打ち込み型枠の型枠パネル部材は、繊維強化ボードからなる内装ボードを少なくと2枚重合して構成されているので、コンクリート打設の際に十分な強度が得られることになり、コンクリートの打設の際に破損等するのを防止できることになる。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明のコンクリート壁の構築方法、コンクリート壁、及び打ち込み型枠によれば、構築後に、コンクリート壁の一方の面又は他方の面の着脱型枠のみを解体して取り外せばよいので、構築後の型枠の解体作業に要する手間を削減することができる。また、着脱型枠の隣接する型枠パネル部材の連結部間が連結手段によって一体に連結されることになるので、隣接する型枠パネル部材間に隙間や段差が形成されるようなことはなく、構築後のコンクリート壁の一方の面又は他方の面に凹部、凸部、段差等が形成されるようなことはなく、構築後にコンクリート壁の両面の補修作業が不要となる。さらに、間隔保持手段のセパレータ部材は、打ち込み型枠と着脱型枠との内面間に両端部が位置しているので、構築後のコンクリート壁の表面からセパレータ部材の両端部が突出するようなことはなく、セパレータ部材の両端部の切断作業が不要となる。さらに、打ち込み型枠の型枠パネル部材は、少なくとも2枚の内装ボードを重合して構成され、しかも内装ボードには繊維強化ボードが用いられているので、コンクリート打設の際に十分な強度が得られることになり、コンクリート打設の際に破損等するのを防止できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図8には、本発明によるコンクリート壁の構築方法、コンクリート壁、及び打ち込み型枠の一実施の形態が示されていて、図1〜図3は型枠の設置手順を示す説明図、図4は打ち込み型枠の部分拡大断面図、図5は締結部材を示す説明図、図6は間隔保持手段を示す説明図、図7はコンクリート打設後の状態を示す説明図、図8は構築完了後の状態を示す説明図である。
【0022】
すなわち、本実施の形態によるコンクリート壁の構築方法は、建物等のコンクリート構造物の外壁、内壁等のコンクリート壁1に有効なものであって、コンクリート壁1の構築対象箇所の一方の面又は他方の面に打ち込み型枠11を設置する打ち込み型枠設置工程と、構築対象箇所の他方の面又は一方の面に着脱型枠21を設置する着脱型枠設置工程と、打ち込み型枠11と着脱型枠21との間に間隔保持手段31を配置し、両型枠11、21間を所定の間隔に保持する間隔保持工程と、打ち込み型枠11と着脱型枠21との間にコンクリート36を打設するコンクリート打設工程と、コンクリート36の硬化後に型枠21を解体して取り外す型枠解体工程とを備えている。
【0023】
打ち込み型枠設置工程は、図1に示すように、コンクリート壁1の構築対象箇所の一方の面又は他方の面に、構築対象箇所に沿って縦横に複数の型枠パネル部材12を配置するとともに、これらの複数の型枠パネル部材12の外面側に支持手段15を配置して、支持手段15によって複数の型枠パネル部材12を支持することにより、構築対象箇所の一方の面又は他方の面に複数の型枠パネル部材12からなる打ち込み型枠11を設置する工程であって、この打ち込み型枠11によりコンクリート壁1の一方の面1a又は他方の面1b(図8参照)が成形される。打ち込み型枠11は、コンクリート壁1の構築後にコンクリート壁1の一方の面1a又は他方の面1b上に残置される。
【0024】
打ち込み型枠11の各型枠パネル部材12は、矩形板状の内装ボード13を少なくとも2枚重合し、両内装ボード13間を接着剤で一体に接合して構成したものであって、構築対象箇所に複数の型枠パネル部材12を縦横に配置し、この状態で隣接する内装ボード13間に隙間が形成されないように、かつ隣接する内装ボード13の板面が面一となるように、複数の型枠パネル部材12を支持手段15によって支持する。各型枠パネル部材12の内装ボード13には、内装ボード13の内外面間を貫通する貫通孔13aが複数箇所に設けられ、この貫通孔13aを利用して各型枠パネル部材12の内装ボード13と後述する支持手段15のバタ16とが一体に連結される。
【0025】
本実施の形態においては、図4に示すように、内装ボード13にセメント系の繊維強化ボードを使用している。繊維強化ボードは、グラスファイバー、カーボンファイバー等の強化繊維13cとセメントモルタル13bとを交互に積層して構成したものであって、本実施の形態においては、2枚の繊維強化ボードを重合している。なお、繊維強化ボードは、上記のものに限らず、木質系の繊維強化ボード等、他の種類の繊維強化ボードを使用してもよい。要は、コンクリート打設工程において、打ち込み型枠11と着脱型枠21との間にコンクリート36を打設した際に破損等しない強度を有するものであればよい。
【0026】
支持手段15は、複数の型枠パネル部材12の内装ボード13の外面に縦横に配置されるC形鋼等の鋼材からなる複数のバタ16と、各バタ16と複数の型枠パネル部材12の内装ボード13とを一体に連結する締結部材17とから構成される。
【0027】
締結部材17は、図1及び図5に示すように、棒状をなすものであって、一端部に円板状のフランジ部17aが一体に設けられ、フランジ部17aの図中右側の部分に雄ねじ部17bが設けられ、フランジ部17aの図中左側の部分に雌ねじ部17cが設けられている。
【0028】
締結部材17によりバタ16と型枠パネル部材12の内装ボード13とを連結するには、締結部材17の雌ねじ部17cを内装ボード13の各貫通孔13a内を挿通させ、フランジ部17aを内装ボード13の外面に当接させ、内装ボード13の内面側に突出させた雌ねじ部17cに後述する間隔保持手段31のセパレータ部材32の雄ねじ部32aを螺合させて締め付ける。そして、この状態で雄ねじ部17bを内装ボード13の外面側に配置した各バタ16の貫通孔16a内を挿通させて各バタ16から外方に突出させ、その突出させた雄ねじ部17bの部分にワッシャ18を介してナット19を螺合させて締め付ける。
【0029】
そして、このような作業を各型枠パネル部材12の内装ボード13に対して行うことにより、複数の型枠パネル部材12の内装ボード13と複数のバタ16とを一体に連結することができ、コンクリート壁1の構築対象箇所の一方の面又は他方の面に複数の型枠パネル部材12からなる板状の打ち込み型枠11を設置することができる。
【0030】
着脱型枠設置工程は、図2に示すように、コンクリート壁1の構築対象箇所の他方の面又は一方の面に、構築対象箇所に沿って縦横に複数の型枠パネル部材22を配置し、複数の型枠パネル部材22の外側に支持手段15を配置し、支持手段15によって複数の型枠パネル部材22を支持することにより、構築対象箇所の他方の面又は一方の面に複数の型枠パネル部材22からなる着脱型枠21を設置する工程であって、この着脱型枠21によりコンクリート壁1の他方の面1b又は一方の面1a(図8参照)が成形される。着脱型枠21は、コンクリート内壁1の成形完了後に解体して取り外す。
【0031】
着脱型枠21の各型枠パネル部材22は、矩形板状のせき板23と、せき板23の外面側の両縁部に一体に設けられる連結部24とから構成されるものであって、複数の型枠パネル部材22を縦横に配置し、この状態で隣接するせき板23間に隙間が形成されないように、かつ隣接するせき板23の板面が面一となるように、複数の型枠パネル部材22を支持手段15によって支持する。各型枠パネル部材22のせき板23には、せき板23の内外面間を貫通する貫通孔23aが複数箇所に設けられ、各貫通孔23aを利用して各型枠パネル部材22のせき板23と支持手段15のバタ16とが一体に連結される。
【0032】
各型枠パネル部材22の各連結部24は、せき板23の外面から垂直に立ち上がる側板部24bと、側板部24bの先端から直角に屈曲されるせき板23と略平行をなす上板部24aとからなるものであって、側板部24bには連結手段(図示せず)を取り付けるための貫通孔(図示せず)が複数箇所に設けられる。隣接する型枠パネル部材22の連結部24の側板部24b同士を密着させ、両側板部24bの貫通孔間に連結手段(図示せず)を取り付けることで、隣接する型枠パネル部材22が一体に連結される。
【0033】
連結手段としては、例えば、特開平8−13792号公報に開示されている連結クリップ、連結ボルト等を利用することができる。但し、これに限定することなく、隣接する型枠パネル部材22の連結部24の側板部24b間を一体に連結可能な機能を有するものであればよい。
【0034】
各型枠パネル部材22のせき板23及び連結部24は、繊維強化プラスチックを材料として一体に成形される。繊維強化プラスチックとしては、熱硬化性プラスチックを繊維で強化したもの、熱可塑性プラスチックを繊維で強化したものを使用できる。強化繊維には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等を使用できる。本実施の形態においては、せき板23及び連結部24の厚みを約5mmに設定している。型枠パネル部材22としては、例えば、特開平8−13792号公報に開示されているコンクリート成形用型枠材を利用することができる。
【0035】
支持手段15は、打ち込み型枠11の型枠パネル部材12を支持する支持手段15と同様の構成を有するものであって、着脱型枠21の複数の型枠パネル部材22の連結部24の上板部24aの上部に縦横に配置されるC形鋼等の鋼材からなる複数のバタ16と、各バタ16と複数の型枠パネル部材22のせき板23とを連結する締結部材17とから構成されている。
【0036】
締結部材17によりバタ16と型枠パネル部材22のせき板23とを一体に連結するには、締結部材17の雌ねじ部17cをせき板23の各貫通孔23a内を挿通させ、フランジ部17aをせき板23の外面に当接させ、せき板23の内面側に突出させた雌ねじ部17cに後述する間隔保持手段31のセパレータ部材32の雄ねじ部32aを螺合させて締め付ける。そして、この状態で雄ねじ部17bを連結部24の上板部24aの上部に配置した各バタ16の貫通孔16a内を挿通させて各バタ16から外方に突出させ、その突出させた雄ねじ部17bの部分にワッシャ18を介してナット19を螺合させて締め付ける。
【0037】
そして、このような作業を各型枠パネル部材22のせき板23に対して行うことにより、複数の型枠パネル部材22のせき板23と複数のバタ16とが一体に連結され、コンクリート壁1の構築対象箇所の他方の面又は一方の面に複数の型枠パネル部材22からなる着脱型枠21が設置される。
【0038】
間隔保持工程は、図3に示すように、間隔保持手段31によって打ち込み型枠11と着脱型枠21との間を所定の間隔に保持し、両型枠11、21間に所定容積の成形空所35を形成する工程であって、打ち込み型枠11と着脱型枠21との間を所定の間隔に保持する間隔保持手段31を使用する。
【0039】
間隔保持手段31は、図3及び図6に示すように、打ち込み型枠11の型枠パネル部材12の内装ボード13と着脱型枠21の型枠パネル部材22のせき板23との間に配置されるとともに、両端部に雄ねじ部32aが一体に設けられるセパレータ部材32と、セパレータ部材32の両端部に一体に設けられる円錐台形状のストッパー部材33とから構成されている。
【0040】
間隔保持手段31のセパレータ部材32を打ち込み型枠11と着脱型枠21との間に配置し、両ストッパー部材33、33を打ち込み型枠11の型枠パネル部材12の内装ボード13の内面及び着脱型枠21の型枠パネル部材22のせき板23の内面にそれぞれ当接させ、この状態で打ち込み型枠11の内装ボード13及び着脱型枠21のせき板23の外面側から貫通孔13a、23aを介してセパレータ部材32の両端部の雄ねじ部32aに締結部材17の雌ねじ部17bを螺合させて締め付けることで、打ち込み型枠11と着脱型枠21との間が所定の間隔に保持され、両型枠11、21間に所定容積の成形空所35が形成される。
【0041】
打ち込み型枠工程、着脱型枠工程、及び間隔保持工程は、それらの順に行ってもよいし、打ち込み型枠工程及び着脱型枠工程の完了後に間隔保持工程を行ってもよいし、打ち込み型枠設置工程及び着脱型枠設置工程と間隔保持工程とを同時に行ってもよい。
【0042】
コンクリート打設工程は、図7に示すように、打ち込み型枠11と着脱型枠21との間の成形空所35内にコンクリート36を打設する工程であって、このコンクリート打設工程を経ることにより、打ち込み型枠11と着脱型枠21との間の成形空所35に合致した形状のコンクリート内壁1が成形される。
【0043】
型枠解体工程は、図8に示すように、コンクリート36の硬化後に打ち込み型枠11の支持手段15及び着脱型枠21の支持手段15及び連結手段を解体して取り外し、打ち込み型枠11の各型枠パネル部材12を残置させ、着脱型枠21の各型枠パネル部材22を取り外す工程であって、この型枠解体工程を経ることによりコンクリート壁1の一方の面1a又は他方の面1b(本実施の形態においては他方の面1b)が露出される。
【0044】
このようにして、コンクリート壁1の一方の面1a又は他方の面1bに打ち込み型枠11の型枠パネル部材12が残置し、他方の面1b又は一方の面1aが露出した状態のコンクリート壁1が構築されることになる。
なお、間隔保持手段31のセパレータ部材32の棒状の部分及びストッパー部材33はコンクリート36内に埋設されているが、ストッパー部材33の両端部の雄ねじ部32aはストッパー部材33内で露出した状態となっているので、その部分にキャップ40を被せるか、あるいはストッパー部材33内にモルタルを充填すればよい。
【0045】
上記のように構成した本実施の形態によるコンクリート壁の構築方法、コンクリート壁、及び打ち込み型枠にあっては、コンクリート壁1の構築後に打ち込み型枠11を残置させ、着脱型枠21のみを解体して取り外すように構成したので、構築後の型枠の解体作業に要する手間を削減することができる。
【0046】
また、打ち込み型枠11の各型枠パネル部材12は、繊維強化ボードからなる2枚の内装ボード13を重合して構成されているので、十分な強度が得られることになり、コンクリート36の打設によって隣接する型枠パネル部材12間に隙間や段差が形成されるようなことはなく、また、着脱型枠21の隣接する型枠パネル部材22は連結部24間が連結手段によって一体に連結されているので、それらの間にも隙間や段差が形成されるようなことはない。さらに、打ち込み型枠11の内装ボード13がコンクリートの打設によって破損等することもない。従って、構築後のコンクリート壁1の一方の面1a及び他方の面1bに凹部、凸部、段差等が形成されるようなことはないので、構築後のコンクリート壁1の表面の補修作業が不要となる。
【0047】
さらに、間隔保持手段31のセパレータ部材32は、両端部が打ち込み型枠11と着脱型枠21との内面間に位置しているので、構築後にセパレータ部材32の両端部がコンクリート壁1の表面から突出するようなことはなく、構築後にセパレータ部材32の両端部を切断する作業が不要となる。
【0048】
さらに、コンクリート壁1の一方の面1a又は他方の面1bの一方に打ち込み型枠11の型枠パネル部材12が残置され、一方の面1a又は他方の面1bの他方は露出した状態となっているので、構築後に建築基準法に定める「コンクリート打設面の検査と補修」を行うことが可能となる。
【0049】
なお、前記の説明においては、本実施の形態によるコンクリート壁の成形方法、コンクリート壁、及び打ち込み型枠を建物等のコンクリート構造物の内壁又は外壁に適用した場合について説明したが、他のコンクリート構造物の内壁又は外壁に適用してもよいのは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によるコンクリート壁の成形方法の手順を示した説明図であって、打ち込み型枠の設置工程を示した説明図である。
【図2】着脱型枠の設置工程を示した説明図である。
【図3】間隔保持工程を示した説明図である。
【図4】打ち込み型枠の内装ボードの部分拡大断面図である。
【図5】支持手段の締結部材の全体を示した説明図である。
【図6】間隔保持手段の全体を示した説明図である。
【図7】コンクリート打設工程を示した説明図である。
【図8】型枠解体工程を示した説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 コンクリート壁、1a 一方の面、1b 他方の面、
11 打ち込み型枠、12 型枠パネル部材、13 内装ボード、
13a 貫通孔、13b モルタルコンクリート、13c 強化繊維、
15 支持手段、16 バタ、16a 貫通孔、
17 締結部材、17a フランジ部、17b 雄ねじ部、17c 雌ねじ部、
18 ワッシャ、19 ナット、21 着脱型枠、22 型枠パネル部材、
23 せき板、23a 貫通孔、24 連結部、24a 上板部、24b 側板部、
31 間隔保持手段、32 セパレータ部材、32a 雄ねじ部、
33 ストッパー部材、35 成形空所、36 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁の構築方法であって、
コンクリート壁の構築対象箇所の一方の面に沿って複数の型枠パネル部材を配置し、該複数の型枠パネル部材を支持手段によって支持することにより、前記構築対象箇所に複数の型枠パネル部材からなる打ち込み型枠を設置する打ち込み型枠設置工程と、
前記コンクリート壁の構築対象箇所の他方の面に沿って複数の型枠パネル部材を配置し、該複数の型枠パネル部材を支持手段によって支持することにより、前記構築対象箇所に複数の型枠パネル部材からなる着脱型枠を設置する着脱型枠設置工程と、
前記打ち込み型枠と前記着脱型枠との間に間隔保持手段を配置することにより、前記打ち込み型枠と前記着脱型枠との間を所定の間隔に保持する間隔保持工程と、
前記打ち込み型枠と前記着脱型枠との間にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
コンクリートの硬化後に、前記打ち込み型枠及び前記着脱型枠の支持手段を解体し、前記打ち込み型枠を残置させ、前記着脱型枠を取り外す型枠解体工程とを備え、
前記打ち込み型枠の各型枠パネル部材は、少なくとも2枚の内装ボードを重合してなることを特徴とするコンクリート壁の構築方法。
【請求項2】
前記打ち込み型枠の各型枠パネル部材の各内装ボードは、繊維強化ボードからなることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート壁の構築方法。
【請求項3】
前記着脱型枠の各型枠パネル部材は、板状のせき板と、該せき板の両縁部に一体に設けられる連結部とからなり、隣接する型枠パネル部材の連結部間が連結手段によって一体に連結されるとともに、複数の型枠パネル部材のせき板が前記支持手段によって一体に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート壁の構築方法。
【請求項4】
前記間隔保持手段は、前記打ち込み型枠と前記着脱型枠との内面間に配置されるセパレータ部材と、該セパレータ部材の両端部に一体に設けられるとともに、前記打ち込み型枠の内面及び前記着脱型枠の内面に当接するストッパー部材と、前記打ち込み型枠及び前記着脱型枠の外面側から前記打ち込み型枠及び前記着脱型枠を貫通して前記セパレータ部材の両端部に螺着され、前記セパレータ部材を前記打ち込み型枠及び前記着脱型枠に一体に連結する締結部材とを備えてなることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のコンクリート壁の構築方法。
【請求項5】
請求項1から4の構築方法によって構築されることを特徴とするコンクリート壁。
【請求項6】
コンクリート壁の内面又は外面に残置される打ち込み型枠であって、
少なくとも2枚の内装ボードを重合してなる型枠パネル部材からなることを特徴とする打ち込み型枠。
【請求項7】
前記内装ボードは、繊維強化ボードからなることを特徴とする請求項6に記載の打ち込み型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−223278(P2008−223278A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60753(P2007−60753)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(594088444)
【Fターム(参考)】