説明

コンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル、及びコンクリート床版アスファルト舗装構造

【課題】施工効率が良く、コンクリート床版との接着不良が起こり難く、しかも施工中に作業員や周辺住民の健康上の問題や、引火による火災が起こり難く、そして轍掘れなどが起き難くて耐久性に富むコンクリート床版アスファルト舗装構造を提供することである。
【解決手段】セメントとポリマーと細骨材と無機質繊維とを含有してなるコンクリート床版1のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層2に使用するアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルであって、前記ポリマーはガラス移転点が−19〜0℃のポリマーで、前記ポリマーの割合は、前記セメント100質量部に対して、10〜30質量部であり、前記細骨材の割合は、前記セメント100質量部に対して、100〜400質量部であり、前記無機質繊維の割合は、前記セメント100質量部に対して、0.2〜5質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル、及びコンクリート床版アスファルト舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床版にアスファルト舗装を行う場合、雨水や塩化物の流入・浸透を防ぐ為、コンクリート床版とアスファルト舗装との間に防水材層を設けていることが多い。この防水材層は、接着剤や溶融アスファルトで防水シートを接着することで構成したり、或いは溶融アスファルトを塗布することで構成したり、又は溶剤系の塗布型防水材を塗布することで構成している。
【0003】
ところで、溶融アスファルトを用いる技術は、作業員の火傷や蒸気吸入による作業員の健康上の恐れが有る。更には、コンクリート床版に熱を奪われ、溶融アスファルトの流動性が局所的に悪化し、コンクリート床版とアスファルトとの接着が悪くなる場合が有る。
【0004】
防水シートを用いる技術は、コンクリート床版への貼り付けに接着剤や溶融アスファルトを用いるので、前記の問題点が有る。かつ、広い面積に防水シートを均一に膨れなどが無いようにシートの一部を重ねながら敷き詰める必要があることから、施工効率が悪い。しかも、施工に熟練を要する。又、コンクリート床版に凹凸や段差等が生じている場合には、防水シートは前記凹凸や段差等に追従でき難いと言った問題も有る。
【0005】
溶剤系の塗布型防水材を用いる技術は、含有する有機溶剤による作業員や周辺住民の健康上の問題、又、引火による火災の恐れが考えられる。しかも、硬化収縮等の不具合を起こさずに、1回の塗布によって構成できる防水材層の厚みが薄いことから、複数回の塗布・養生が必要である。従って、施工効率が悪い。
【0006】
又、防水材層の上に基層アスファルトを敷き均し、更にこの基層アスファルト上に表層アスファルト敷き均し舗装していたことから、施工効率が悪い。
【0007】
このような問題点を解決する為、鉄筋コンクリート床版上に、水硬性セメントとガラス転移点が−30〜−20℃の範囲の合成樹脂エマルジョンを主剤とする防水材層が形成されると共に該防水材層内に補強材が埋設され、この表面にゴムアスファルト系エマルジョンのタックコート層を介してアスファルト混合物舗装材が施工されてなる床版防水構造や、鉄筋コンクリート床版上に、水硬性セメントとガラス転移点が−30〜−20℃の範囲の合成樹脂エマルジョンを主剤とする防水材層を1.5〜3kg/mで塗布する工程と、この塗布面に不織布を含浸材として張り付ける工程と、更に前記防水材を0.5〜2kg/m塗布して防水材の全量を少なくとも2kg/mとした防水材層を形成する工程と、前記防水材層上にゴムアスファルト系エマルジョンのタックコート層を0.3〜0.5kg/mを塗布する工程と、アスファルト混合物舗装を常法によって行なう工程とからなる床版防水構造の施工法が提案(特許第2961150号)されている。
【0008】
又、路盤等の基盤上にコンクリート層を形成し、同コンクリート層上にポリマーセメントモルタル層を介してアスファルト舗装層を形成したことを特徴とするアスファルト舗装構造が提案(特許第3188789号)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2961150号
【特許文献2】特許第3188789号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1,2の技術でも満足できるものでは無かった。
すなわち、特許文献1,2に開示の舗装構造のものでは、例えば耐久性が満足できないものであった。
【0011】
従って、本発明が解決しようとする課題は、施工効率が良く、コンクリート床版との接着不良が起こり難く、しかも施工中に作業員や周辺住民の健康上の問題や、引火による火災が起こり難く、そして轍掘れなどが起き難くて耐久性に富むコンクリート床版アスファルト舗装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決する為の検討が鋭意推し進められて行った結果、路盤等の基盤上に設けたコンクリート層上にポリマーセメントモルタル層を設け、このポリマーセメントモルタル層上にアスファルト舗装層を設けた舗装構造であっても、ポリマーセメントモルタル層の内容次第で舗装特性が大きく異なるものであることが判って来た。
【0013】
そして、更なる検討が続行された結果、或る特定のポリマーセメントモルタル層が設けられていた場合には、前記の問題点が解決されていることが判った。
【0014】
斯かる知見を基にして本発明が達成されるに至った。
【0015】
すなわち、前記の課題は、
セメントとポリマーと細骨材と無機質繊維とを含有してなるコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルであって、
前記ポリマーはガラス移転点が−19〜0℃のポリマーであり、
前記ポリマーの割合は、前記セメント100質量部に対して、10〜30質量部であり、
前記細骨材の割合は、前記セメント100質量部に対して、100〜400質量部であり、
前記無機質繊維の割合は、前記セメント100質量部に対して、0.2〜5質量部である
ことを特徴とするコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルによって解決される。
【0016】
特に、セメントとポリマーと細骨材と無機質繊維とを含有してなるコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルであって、
前記ポリマーはガラス移転点が−19〜0℃のポリマーであり、
前記ポリマーの割合が、前記セメント100質量部に対して、10〜30質量部であり、
前記細骨材は、粒径が0.3〜1.2mmの骨材が骨材全体の70質量%以上のものであり、
前記細骨材の割合が、前記セメント100質量部に対して、100〜400質量部であり、
前記無機質繊維は、繊維長が10〜30mmのものであり、
前記無機質繊維の割合が、前記セメント100質量部に対して、0.2〜5質量部である
ことを特徴とするコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルによって解決される。
【0017】
又、800×100×9mmのコンクリートに20mmの厚みのアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを塗り付けて20℃で3時間養生した供試体のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを塗り付けた側に引張応力が掛かるようにして、JIS A 1106附属書1に準じスパンを500mmとして曲げ試験を行い、ポリマーセメントモルタルとの界面におけるコンクリートの歪みが200μとなった時に、ポリマーセメントモルタルとコンクリートとの界面に剥離が起こらず、かつ、ポリマーセメントモルタルにひび割れが発生しておらず、
JASS15M−102「既調合モルタルの品質規格」に規定される吸水試験に準じて測定した吸水量が8g以下で、
静弾性係数が10000〜20000N/mmである
ことを特徴とするコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルによって解決される。
【0018】
又、上記のコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルの層がコンクリート床版の上面に設けられ、
前記アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層の上面にアスファルト組成物層が設けられてなる
ことを特徴とするコンクリート床版アスファルト舗装構造によって解決される。
【発明の効果】
【0019】
セメントとポリマーと細骨材と無機質繊維とを含有してなるアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルであって、前記ポリマーはガラス移転点が−19〜0℃のポリマーであり、前記ポリマーの割合は前記セメント100質量部に対して10〜30質量部であり、前記細骨材の割合は前記セメント100質量部に対して100〜400質量部であり、前記無機質繊維の割合は前記セメント100質量部に対して0.2〜5質量部であるアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルは、JIS A 1106附属書1に準じスパンを500mmとして曲げ試験を行い、ポリマーセメントモルタルとの界面におけるコンクリートの歪みが200μとなった時に、ポリマーセメントモルタルとコンクリートとの界面に剥離が起こらず、かつ、ポリマーセメントモルタルにひび割れが発生しておらず、かつ、JASS15M−102「既調合モルタルの品質規格」に規定される吸水試験に準じて測定した吸水量が8g以下であり、しかも静弾性係数が10000〜20000N/mmであるので、斯かるアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層をコンクリート床版の上面に設け、前記アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層の上面にアスファルト組成物層を設けた舗装構造は、コンクリート床版との接着不良が起こり難く、かつ、轍掘れなどが起き難く、耐久性に富む。しかも、基層アスファルトの代替になり、防水性も備えており、施工効率が良い。更には、施工中に作業員・周辺住民に健康上の問題が引き起こされ難い。又、引火による火災が起こり難い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明になる舗装構造の概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の本発明はコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルである。このモルタルは、800×100×9mmのコンクリートに20mmの厚みのアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを塗り付けて20℃で3時間養生した供試体のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを塗り付けた側に引張応力が掛かるようにして、JIS A 1106附属書1に準じスパンを500mmとして曲げ試験を行い、ポリマーセメントモルタルとの界面におけるコンクリートの歪みが200μとなった時に、ポリマーセメントモルタルとコンクリートとの界面に剥離が起こらず、かつ、ポリマーセメントモルタルにひび割れが発生して無いものである。かつ、JASS15M−102「既調合モルタルの品質規格」に規定される吸水試験に準じて測定した吸水量が8g以下(好ましくは5g以下である。下限値は、理想的には、0gである。)である。更には、静弾性係数が10000〜20000N/mm(12000N/mm以上が好ましい。18000N/mm以下が好ましい。)のものである。尚、この特徴のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルは、セメントとポリマーと細骨材と無機質繊維とを用いて構成される。但し、前記ポリマーはガラス移転点が−19〜0℃(−15℃以上のものが好ましい。−5℃以下のものが好ましい。)のポリマーである。かつ、このポリマーの割合は、セメント100質量部に対して、10〜30質量部(15質量部以上が好ましい。25質量部以下が好ましい。)である。又、細骨材の割合は、セメント100質量部に対して、100〜400質量部(150質量部以上が好ましい。350質量部以下が好ましい。)である。そして、細骨材は、粒径が0.3〜1.2mmの骨材が骨材全体の70質量%以上のものが好ましい。又、無機質繊維の割合は、セメント100質量部に対して、0.2〜5質量部(0.3質量部以上が好ましい。4質量部以下が好ましい。)である。そして、無機質繊維は、繊維長が10〜30mmのものが好ましい。
【0022】
第2の本発明はアスファルト舗装構造である。このアスファルト舗装構造は、コンクリート床版の上面に、上記のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを用いた層(好ましい厚さは20〜150mm、より好ましくは40〜80mmである。)を有する。かつ、上記のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを用いた層の上面にアスファルト組成物層を有する。
【0023】
以下、更に詳しく説明する。
【0024】
本発明において、ひび割れ追従性の試験に際しては、800×100×9mmのコンクリートに20mmの厚みのアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを塗り付け、20℃で3時間養生したものを供試体として用いた。この供試体のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを塗り付けた側に引張応力が掛かるように、JIS A 1106附属書1(参考)に準じスパンを500mmとして曲げ試験を行った。そして、ポリマーセメントモルタルとの界面におけるコンクリートの歪みが200μとなった時に、ポリマーセメントモルタルとコンクリートとの界面に剥離が起こらず、かつ、ポリマーセメントモルタルにひび割れが発生していないポリマーセメントモルタルを用いる。尚、斯かる特徴のものを、以下では、「ひび割れ追従性が200μ以上」と称する。そして、アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルのひび割れ追従性が200μ未満の小さな値のものである場合は、モルタル層がコンクリート床版の変形に追従でき難いものであった。この結果、ポリマーセメントモルタル層にクラックが発生し易いものであった。又、コンクリート床版とポリマーセメントモルタル層との界面が剥離し易いものであった。尚、より好ましくは「ひび割れ追従性が250μ以上」のものであった。
【0025】
アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルの吸水量は小さなものが好ましかった。特に、JASS15M−102「既調合モルタルの品質規格」に規定される吸水試験に準じ測定したときの値(吸水量)が8g以下のものが好ましかった。すなわち、前記値が8gを超えて大きなものであると、防水性が悪くなり、コンクリート床版中の鉄筋が錆びる恐れが高いものであった。尚、より好ましくは、前記吸水量が5g以下のものであった。
【0026】
そして、静弾性係数が10000〜20000N/mm(12000〜18000N/mmのものが一層好ましい。)のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルが好ましいものであった。すなわち、静弾性係数が20000N/mmを越えたものであると、舗装表面に加わる衝撃荷重がコンクリート床版へ伝わり易い。この結果、コンクリート床版が損傷する恐れが高い。又、コンクリート床版とポリマーセメントモルタル層との界面が剥離する恐れも高い。逆に、静弾性係数が10000N/mm未満の小さなものであると、上面のアスファルト組成物層が衝撃加重により変形し易い。この結果、轍掘れが起こり易い。
【0027】
上記特徴のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルは、セメント、骨材、ポリマー、及び水を用いて構成できる。
【0028】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルに用いるセメントは、例えば普通、早強、超早強、中庸熱、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメント等の混合セメント、アルミナセメント、急硬性セメント、超速硬セメント、或いは都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰等の廃棄物を原料として利用したエコセメント等を適宜用いることが出来る。勿論、一種類のセメントであっても良く、二種類以上のセメントを用いることでも良い。尚、コンクリート床版が振動していても、コンクリート床版からアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルが剥離しないで一体化し易いことから、急硬性セメントを用いることが好ましい。急硬性セメントとしては、ポルトランドセメント又はエコセメントから選ばれる一種または二種以上のセメントに、カルシウムアルミネート等の急硬剤(材)を含む急結剤(材)
及び/又はアルミナセメントを添加したもの、「ジェットセメント」や「スーパージェットセメント」等の商品名で市販されている超速硬セメント等が挙げられる。そして、急硬性セメントを用いると、供用中の道路のコンクリート床版に用いる場合とか、工期の短い工事に用いる場合において、短時間で施工完了することからも好ましい。
【0029】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルにはポリマーが用いられる。このポリマーはガラス移転点が−19〜0℃のものであることが大事である。そして、モルタル(或いはセメント又はコンクリート)に添加して使用できることも大事である。このような特徴のものであれば、ポリマーは、ポリマーディスパージョン(ポリマーエマルジョン)型、又は再乳化型粉末樹脂の何れのタイプのものでも良い。ポリマーディスパージョン(ポリマーエマルジョン)型のものとしては、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体やメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体などのゴムラテックス、ポリプロピレン、ポリクロロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン・アクリル共重合体、オールアクリル共重合体、酢酸ビニル・アクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニルビニルバーサテート共重合体、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂等の合成樹脂、アスファルト、ゴムアスファルト及びパラフィン等の瀝青質等のエマルションが挙げられる。これらの中の一種のものでも良く、二種以上のものを併用することも出来る。再乳化型粉末樹脂としては、前記のポリマーディスパージョン(ポリマーエマルション)型の一種または二種以上のものを粉末状にした再乳化型粉末樹脂が挙げられる。ところで、ガラス移転点が−19〜0℃のポリマーを必須の要件としたのは、斯かる要件を満足したポリマーセメントモルタルのひび割れ追従性が高く、耐久性が高かったからである。例えば、ガラス転移点が−19℃未満の低すぎるものを用いた場合は、上面のアスファルト組成物層が衝撃加重により変形し易く、轍が起こり易く、耐久性が劣るものであった。逆に、ガラス転移点が0℃を越えて高すぎるものを用いた場合は、舗装表面に加わる衝撃荷重がコンクリート床版に伝わり易く、コンクリート床版が損傷する恐れが高かった。又、コンクリート床版とポリマーセメントモルタル層との界面が剥離し易いものであった。尚、本発明では、ガラス移転点が−15〜−5℃のポリマーを用いるのが一層好ましいものであった。
【0030】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルにおけるポリマーの配合量は、セメント100質量部に対し、ポリマー固形分換算で10〜30質量部である。すなわち、ポリマーの配合量が10質量部未満の少な過ぎる場合、該モルタルには乾燥によるひび割れが起こり易い。又、下地との接着性が不充分となる。更に、防水性や下地の保護も不充分となる。逆に、30質量部を越えて多すぎる場合、該モルタルが高粘性なものとなる。そして、硬化時間が遅れ、平滑な表面を得るのが難く、施工性が低下する。尚、ポリマーの更に好ましい配合量はポリマー固形分換算で15〜25質量部である。
【0031】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルには細骨材が用いられる。細骨材は、モルタルに使用可能な細骨材であれば良い。格別な限定は無い。例えば、珪砂、石灰石砂、寒水石砂、砕砂、海砂、スラグ細骨材、人工軽量細骨材などを用いることが出来る。
【0032】
上記細骨材の配合量は、セメント100質量部に対して、100〜400質量部である。すなわち、100質量部未満の少な過ぎる場合には、単位体積当たりのセメント量が多くなり、ポリマーセメントモルタルにひび割れが発生し易かった。逆に、400質量部を越えて多すぎる場合には、単位体積当たりのセメント量が少なくなり、圧縮強度及び付着強度が不足した。尚、細骨材の更に好ましい配合量は150〜350質量部である。
【0033】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルに用いる細骨材は、施工性及び耐久性の観点から、粒径が0.3〜1.2mmの骨材が骨材全体の70質量%以上であることが好ましい。ここで、粒径0.3〜1.2mmの細骨材とは、公称呼び寸法(目開きとも言う)0.3mmの篩に留まり、かつ、公称呼び寸法1.2mmの篩を通過する粒径の細骨材を言う。上記粒径の細骨材が骨材全体の70質量%以上であると、充填性(モルタルに振動を加えて流動性を向上させた際の充填性)が向上した。そして、振動を止めた時に形状を保持することから、傾斜面などの施工においても好ましい結果を奏する。尚、目開き0.3mmの篩を通過する細骨材の割合が目開き1.2mmの篩に留まる細骨材の割合より多く、かつ、粒径0.3〜1.2mmの骨材の割合が骨材全体の70質量%未満のものであると、ポリマーセメントモルタルの流動性が悪い。そして、振動を加えた場合でも、平滑な表面を得るのが難しい。又、目開き0.3mmの篩を通過する細骨材の割合が目開き1.2mmの篩に留まる細骨材の割合より少なく(粒径1.2mmより大きい骨材が多い)、かつ、粒径0.3〜1.2mmの細骨材の割合が骨材全体の70質量%未満であると、ポリマーセメントモルタルの材料分離が生じ易かった。その結果、付着力が不足し、ひび割れが生じ易かった。更には、平滑な表面を得るのが難しかった。
【0034】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルには無機質繊維が用いられる。すなわち、無機質繊維を用いることによって、アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルのひび割れ発生が効果的に抑制された。かつ、コンクリート床版が傾斜を付けて設置されていても、アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルが流れてしまわず、コンクリート床版の上面に略一定の厚みで積層することが出来た。ここで、無機質繊維は、その繊維長が10〜30mmのものが好ましい。すなわち、斯かる繊維を用いた場合、アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルのひび割れが特に起こり難かった。かつ、表面が平滑なものとなり易かった。本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルに用いる無機質繊維としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維、金属繊維等が挙げられる。但し、耐久性が高く、ひび割れ発生の抑制効果が高いことから、耐アルカリガラス繊維や炭素繊維が好ましい。
【0035】
無機質繊維の配合量は、セメント100質量部に対して、0.2〜5質量部である。すなわち、0.2質量部より少な過ぎる場合には、耐ひび割れ性、寸法安定性、応力分散性が悪かった。逆に、5質量部を越えて多すぎた場合には、下地との接着力が低下し、かつ、ポリマーセメントモルタルの流動性が低下し、施工性が低下した。尚、無機質繊維の更に好ましい配合量は0.3〜4質量部である。
【0036】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルには、上記セメント、ポリマー、細骨材、及び無機質繊維の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で、モルタルやコンクリートに使用できる粗骨材や混和材料の一種又は二種以上を用いることが出来る。この混和材料としては、例えば高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤、減水剤、流動化剤を含むセメント分散剤、膨張剤(材)、急結剤(材)、急硬剤(材)、収縮低減剤、顔料、撥水剤、防水材、表面硬化剤、保水剤、粘度調整剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、遅延剤、硬化促進剤、潜在性水硬性物質、石炭灰やシリカヒューム等のポゾラン反応性物質等が挙げられる。粗骨材としては、コンクリートで使用可能な粗骨材であれば使用できる。例えば、砕石、川砂利、スラグ粗骨材、人工軽量粗骨材等が挙げられる。
【0037】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルにおいて、ポリマーとして、ポリマーディスパージョン(ポリマーエマルジョン)を用いない場合や、ポリマーディスパージョン(ポリマーエマルジョン)に含まれる水が不足する場合には、本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルに、本発明の効果を実質的に喪失させない範囲で、水を別途添加すると良い。
【0038】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルの製造方法は、特に限定されない。ミキサで混練することによって製造することが出来る。ミキサ混練した場合には、製造したアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルの成分および物性が均一になるので好ましい。使用するミキサとしては、例えばハンドミキサ、グラウトミキサ、強制練りコンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、左官ミキサ等が挙げられる。そして、本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルに含まれる各材料を一度にミキサで混合しても良いし、事前に材料の一部をミキサで混合しても良い。固形の材料は、事前に乾式混合しておく方が、混練時に短時間で均質に混合できるので好ましい。
【0039】
本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルは、コンクリート床版からなる下地の上面に適用され、ポリマーセメントモルタル層が設けられる。本発明のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルからなるポリマーセメントモルタル層の上面に、更にアスファルト組成物層を設けることで、コンクリート床版アスファルト舗装とする。コンクリート床版、ポリマーセメントモルタル層、及びアスファルト組成物層の各界面に、接着力を高める目的や吸水防止等の目的により、ポリマーエマルジョン、接着剤又はアスファルト等を塗布することも考えられる。
【0040】
アスファルト組成物層を形成する材料としては、アスファルトに、砂や砂利等の骨材、石粉やセメント等の鉱物粉末、動植物油、繊維、顔料、ゴムラテックス等の改質用ポリマー等から選ばれる一種又は二種以上を添加・混合したアスファルトモルタル、アスファルトコンクリート、アスファルトマチック等が例示される。
【0041】
本発明のコンクリート床版アスファルト舗装構造は、厚さが40〜400mm(好ましくは100〜300mm)のコンクリート床版の上面に、上記のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルからなる層を設け、厚さが20〜150mm(好ましくは40〜100mm)のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層の上面に厚さが30〜60mm(好ましくは35〜55mm)のアスファルト組成物層を設けたものである。尚、コンクリート床版、アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層、及びアスファルト組成物層の各界面に、接着力を高める目的や吸水防止等の目的により、ポリマーエマルジョン、接着剤又はアスファルト等を塗布することも考えられる。アスファルト組成物層を構成する材料としては、アスファルトに、砂や砂利等の骨材、石粉やセメント等の鉱物粉末、動植物油、繊維、顔料、ゴムラテックス等の改質用ポリマー等から選ばれる一種又は二種以上を添加・混合したアスファルトモルタル、アスファルトコンクリート、アスファルトマチック等が例示される。
【0042】
本発明のコンクリート床版アスファルト舗装構造は上記構成であることから、コンクリート床版の収縮や振動等による歪みが200μとなっても、ポリマーセメントモルタル層にひび割れが入らず、かつ、ポリマーセメントモルタル層の防水性が吸水量5g以下と高いので、路面からコンクリート床版への雨水の供給が遮断される。更に、ポリマーセメントモルタル層の静弾性係数が10000〜20000N/mmであるので、舗装表面に加わる衝撃荷重がコンクリート床版へ伝わるのが和らげられる。この結果、コンクリート床版が損傷する恐れが低く、コンクリート床版とポリマーセメントモルタル層との界面が剥離する恐れが低い。更に、上層のアスファルト組成物層が衝撃加重により変形し難い。そして、轍掘れが起こり難い。すなわち、耐久性が高い。
【0043】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を説明する。
図1は本発明になるコンクリート床版アスファルト舗装構造を示す概略図である。
図1中、1は、厚さが200mmのコンクリート床版である。
2は、コンクリート床版1の上面に設けられた厚さが60mmのアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層である。このアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層2は、上記本発明の内容(特徴)を有するポリマーセメントモルタル層である。
3は、アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層2の上面に設けられた厚さが40mmのアスファルト組成物層である。
【符号の説明】
【0044】
1 コンクリート床版
2 アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層
3 アスファルト組成物層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントとポリマーと細骨材と無機質繊維とを含有してなるコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルであって、
前記ポリマーはガラス移転点が−19〜0℃のポリマーであり、
前記ポリマーの割合は、前記セメント100質量部に対して、10〜30質量部であり、
前記細骨材の割合は、前記セメント100質量部に対して、100〜400質量部であり、
前記無機質繊維の割合は、前記セメント100質量部に対して、0.2〜5質量部である
ことを特徴とするコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル。
【請求項2】
細骨材は、粒径が0.3〜1.2mmの骨材が骨材全体の70質量%以上のものであり、
無機質繊維は、繊維長が10〜30mmのものである
ことを特徴とする請求項1のコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル。
【請求項3】
800×100×9mmのコンクリートに20mmの厚みのアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを塗り付けて20℃で3時間養生した供試体のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルを塗り付けた側に引張応力が掛かるようにして、JIS A 1106附属書1に準じスパンを500mmとして曲げ試験を行い、ポリマーセメントモルタルとの界面におけるコンクリートの歪みが200μとなった時に、ポリマーセメントモルタルとコンクリートとの界面に剥離が起こらず、かつ、ポリマーセメントモルタルにひび割れが発生しておらず、
JASS15M−102「既調合モルタルの品質規格」に規定される吸水試験に準じて測定した吸水量が8g以下で、
静弾性係数が10000〜20000N/mmである
ことを特徴とするコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル。
【請求項4】
請求項1〜請求項3いずれかのコンクリート床版のアスファルト舗装用ポリマーセメントモルタルの層がコンクリート床版の上面に設けられ、
前記アスファルト舗装用ポリマーセメントモルタル層の上面にアスファルト組成物層が設けられてなる
ことを特徴とするコンクリート床版アスファルト舗装構造。


【図1】
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【公開番号】特開2010−185201(P2010−185201A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29385(P2009−29385)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】