説明

コンクリート構造物

【課題】止水効果が低下することなく確実に止水でき、かつ特殊な止水治具を用いることなく容易に施工できるコンクリート構造物を提供する。
【解決手段】プレストレストコンクリートによって形成した複数の壁体本体12を土地部13と空間部14との境界面に沿って連続的に配列する。壁体本体12は、隣接し合う側面の土地部13側および空間部14側に間隔をおいてそれぞれグラウト溝15a,15bを備えている。また、これらのグラウト溝15a,15b間には止水材溝16を備え、この止水材溝16にはゲル化止水材19を備えている。また、空間部14側のグラウト溝15bに袋グラウト17を設ける。さらに、グラウト溝15aを注入通路として、少なくとも袋グラウト17より土地部13側の壁体本体12間の隙間に隙間グラウト材18を充填する。これら、袋グラウト17と隙間グラウト材18とゲル化止水材19とが設けられたことにより確実に止水できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば河川や池の護岸、調整池、道路の土留め等のために設置されるコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、例えば河川や池の護岸、調整池、道路の土留め等のために設置されるコンクリート構造物1を示し、遠心力プレストレストコンクリート(以下、このコンクリートをPCという)製の複数の壁体本体2が地中に列柱状に打ち込まれ連続的に配置されて形成される。
【0003】
この壁体本体2には、隣接し合う側面に断面形状が略半円状のグラウト溝3が設けられている。このグラウト溝3および隣接する壁体本体2間の隙間に隙間グラウト材4が充填され、凝結することにより、この隙間グラウト材4が壁体本体2の側面に付着し、例えば河川や池の護岸、調整池、道路の土留め等ができる。
【0004】
しかしながら、このようなコンクリート構造物1では、例えばコンクリート構造物1の片側の掘削作業や地震等により、コンクリート構造物1が変形し易い。また、壁体本体2はPC製であり表面が平滑な面であるので、壁体本体2と隙間グラウト材4との付着力が弱く、コンクリート構造物1の変形によって壁体本体2と隙間グラウト材4との付着が切れて隙間が形成される。この隙間の形成によりコンクリート構造物1の止水効果が低下して水が漏出するおそれがある。特に、地下水位の高い場所や河川および池等では、水圧が高いので水が漏出し易い。
【0005】
一方、水膨張ゴムを有し、壁体本体の側面に形成されたグラウト溝内に取付けられることにより上記隙間での漏水を止水する止水治具がある。この止水治具は、水膨張ゴムを有するので、例えば地下水等の水がグラウト溝に浸水してきた場合であっても、水によって水膨張ゴムが膨張し、止水治具がグラウト溝内に密着して止水する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−155038号公報(第3−6頁、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の止水治具による止水方法では、特殊な形状の止水治具を製造する必要があり、また、コンクリート構造物の壁体本体の寸法に合わせて製造する必要があるので、止水治具の製造に手数やコストがかかってしまう問題がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、止水効果が低下することなく確実に止水でき、かつ特殊な止水治具を用いることなく容易に施工できるコンクリート構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、プレストレストコンクリートによって形成され土地部と空間部との境界面に沿って隙間を介し連続的に配列された複数の壁体本体と、これらの壁体本体の隣接し合う側面の土地部側および空間部側に間隔をおいてそれぞれ形成されたグラウト溝と、前記空間部側のグラウト溝に設けられ、袋体にグラウト材が充填された袋グラウトと、前記袋グラウトより土地部側に位置する前記壁体本体間の隙間に前記土地部側のグラウト溝から充填された隙間グラウト材と、前記壁体本体の側面と前記隙間グラウト材との間に設けられ、水分との接触によりゲル化するゲル化止水材とを具備したコンクリート構造物である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、プレストレストコンクリートによって形成され土地部と空間部との境界面に沿って隙間を介し連続的に配列された複数の壁体本体と、これらの壁体本体の隣接し合う側面の少なくとも空間部側に形成されたグラウト溝と、このグラウト溝に設けられ、袋体にグラウト材が充填された袋グラウトと、この袋グラウトより土地部側に位置する壁体本体間の隙間に設けられ、水分との接触により膨潤化する膨潤化止水材とを具備したコンクリート構造物である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、コンクリート構造物を形成する壁体本体の側面に袋グラウトとゲル化止水材と隙間グラウト材とが設けられたことにより、隣接し合う壁体本体間の隙間を閉塞して確実に止水できる。
【0011】
特に、例えば前記コンクリート構造物の変形等により、前記壁体本体の側面と前記袋グラウトおよび前記隙間グラウト材との付着が切れて隙間が形成された場合であっても、前記壁体本体の側面と前記隙間グラウト材との間に設けられた前記ゲル化止水材が水分との接触によりゲル化して非通水状態の防水体となるので、前記コンクリート構造物の止水効果は低下せず、確実に止水できる。
【0012】
また、前記ゲル化止水材は、他の構造物の止水に使用されるものを用いることが可能であるので、特殊な止水治具を用いることなく容易に施工できる。
【0013】
さらに、予め前記ゲル化止水材が設けられた隣接し合う壁体本体間の隙間に前記隙間グラウト材を充填させるので、どのような寸法の壁体本体であっても容易に対応できる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、コンクリート構造物を形成する壁体本体の側面に袋グラウトと膨潤化止水材とが設けられたことにより、隣接し合う壁体本体間の隙間を閉塞して確実に止水できる。
【0015】
特に、前記コンクリート構造物が、例えば掘削作業や地震等により変形した場合であっても、膨潤化した膨潤化止水材は弾性体であるので、前記膨潤化止水材も対応するように変形し、前記コンクリート構造物の止水効果が低下することなく、確実に止水できる。
【0016】
また、前記膨潤化止水材は、他の構造物の止水に使用されるものを用いることが可能であるので、特殊な止水治具を用いることなく、容易に施工できる。
【0017】
さらに、膨潤化止水材の増減により、どのような寸法の壁体本体であっても容易に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図1を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、コンクリート構造物としての止水壁体11の断面図であり、止水壁体11は、複数の壁体本体12が、例えば河川や池の護岸、調整池、道路の土留め等において、岸辺や地面側の土地部13と河川や池や路面側の空間部14との境界面に沿って連続的に配列されて形成される。
【0020】
壁体本体12は、遠心力プレストレストコンクリート(以下、このコンクリートをPCという)により柱状に形成されたものであり、壁体本体12の隣接し合う側面の土地部13側および空間部14側に間隔をおいてそれぞれ断面が略半円状のグラウト溝15a,15bが軸方向に沿って形成されている。
【0021】
さらに、壁体本体12の隣接し合い相互に対向する面であって、土地部13側のグラウト溝15aと空間部14側のグラウト溝15bとの間には、断面形状が略半円状の止水材溝16が設けられている。
【0022】
そして、空間部14側のグラウト溝15bには、袋体に、例えばセメントやモルタル等のグラウト材が充填された袋グラウト17が設けられている。
【0023】
また、袋グラウト17が設けられた空間部14側のグラウト溝15bより土地部13側の隣接し合う壁体本体12間の隙間および土地部13側のグラウト溝15aにわたって、例えばセメントやモルタル等の隙間グラウト材18が土地部側のグラウト溝15aから充填されている。なお、隙間グラウト材18は、土地部13側のグラウト溝15aから注入することにより、図1のように、隣接し合う壁体本体12間の隙間を経て袋グラウト17まで充填されるとともに、土地部13側へ染み出るように充填される。
【0024】
さらに、止水材溝16に、例えば地下水等の水分との接触によりゲル化するゲル化止水材19が設けられ、ゲル化止水材19が壁体本体12の側面と隙間グラウト材18との間に配置されている。
【0025】
ゲル化止水材19は、ベントナイトを主成分とするものであり、水分子との接触によりゲル化し、このようにゲル化したゲル化止水材19は、非通水状態に変化し、防水体となるので、壁体本体12と隙間グラウト材18との付着が切れて隙間が形成された場合であっても、ゲル化止水材19が目詰まりを起こすように作用して水の浸入を防止できる。
【0026】
また、ベントナイトは、無機の粘土鉱物であるので安全であり、半永久的に使用できる。
【0027】
このゲル化止水材19として、例えばメッシュ状のチューブにベントナイト顆粒が充填されたベントタイト(登録商標)が知られており、このベントタイト(登録商標)を用いると、施工性が良好であり、確実に止水できるので好ましい。
【0028】
さらに、ゲル化止水材19は、他の構造物の止水に使用されるものを、そのまま用いても、止水壁体11用に改良して用いてもよい。
【0029】
なお、グラウト溝15a,15bおよび止水材溝16は、断面が略半円状の形状に形成されることにより、袋グラウト17や隙間グラウト材18およびゲル化止水材19を設け易いので好ましいが、この形状には限定されない。
【0030】
また、止水材溝16が形成されたことにより、ゲル化止水材19を壁体本体12の側面と隙間グラウト材18との間に配置させ易く、ゲル化止水材19を確実に位置決めできるので好ましいが、この構成には限定されず、止水材溝16を形成しない構成としてもよい。
【0031】
次に、上記第1の実施の形態の作用および効果を説明する。
【0032】
止水壁体11の施工に際しては、まず、例えば河川や池、道路等において、土地部13と空間部14との境界予定面に沿って、例えばオーガ等を用いて壁体本体12設置用の複数の穴を掘削しながら、これらの穴それぞれに、止水材溝16に予めゲル化止水材19が設けられた複数の壁体本体12を挿入して連続的に配置する。
【0033】
また、隣接し合う壁体本体12の側面の空間部14側のグラウト溝15bに袋グラウト17を設け、さらに、袋グラウト17より土地部13側の隣接し合う壁体本体12間の隙間にグラウト溝15aを注入通路として隙間グラウト材18を充填する。
【0034】
そして、袋グラウト17に充填されたグラウト材が水分で凝結し、袋グラウト17より土地部13側の壁体本体12間の隙間に充填された隙間グラウト材18が水分で凝結することにより、壁体本体12間の隙間が閉塞されて、例えば、水や地下水等を確実に止水できる。
【0035】
なお、空間部14側のグラウト溝15bに袋グラウト17が設けられることにより、空間部14側への隙間グラウト材18の流出を防止できる。
【0036】
壁体本体12の側面と隙間グラウト材18との間にゲル化止水材19が設けられたことにより、例えば、壁体本体12より空間部14側の掘削作業により土地部13側からの土圧で止水壁体11が空間部14側へ変形したり、地震等が発生して各壁体本体12が振動したりすることにより、壁体本体12の側面と隙間グラウト材18との付着が切れて隙間が形成された場合であっても、ゲル化止水材19が隙間から入り込む水分と接触してゲル化し、非通水状態に変化して防水体となって目詰まりを起こすように作用する。
【0037】
したがって、例えば、止水壁体11の変形等により、隣接し合う壁体本体12間に隙間が形成された場合であっても、ゲル化止水材19によって止水壁体11の止水効果は低下せず、確実に止水できる。
【0038】
また、ゲル化止水材19は、他の構造物の止水に使用されるものを用いることが可能であるので、止水壁体11用の特殊な止水治具を用いることなく、容易に施工できる。
【0039】
さらに、予めゲル化止水材19が設けられた隣接し合う壁体本体12間で空間部14側のグラウト溝15bに設けられた袋グラウト17より土地部13側の隙間に隙間グラウト材18が充填されるので、どのような寸法の壁体本体12であっても、隙間グラウト材18の増減により容易に対応でき、同一の袋グラウト17、隙間グラウト材18、ゲル化止水材19を用いることができる。
【0040】
次に、第2の実施の形態について図2を参照して説明する。なお、上記の実施の形態と同一の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図2は、止水壁体11の断面図であり、止水壁体11は、複数の壁体本体12が連続的に配置されて形成されている。
【0042】
壁体本体12の隣接し合う側面の空間部14側にはグラウト溝15bが形成され、このグラウト溝15bに袋グラウト17が設けられ、この袋グラウト17より土地部13側の隣接し合う壁体本体12間には、例えば地下水等の水分と接触することにより膨潤化する膨潤化止水材20が貼付して設けられている。
【0043】
膨潤化止水材20は、例えば合成樹脂等を主成分とするもので、水分と接触することにより、水分を吸収して膨潤化するので、隣接し合う壁体本体12間の隙間を閉塞できる。
【0044】
止水壁体11の施工に際しては、まず、例えば河川や池の護岸、調整池、道路の土留め等において、土地部13と空間部14との境界予定面に沿って、例えばオーガ等により壁体本体12設置用の複数の穴を連続的に掘削する。これらの穴それぞれに、壁体本体12の隣接し合う側面で空間部14側のグラウト溝15bより土地部13側の平面部に膨潤化止水材20が貼付された壁体本体12を挿入して連続的に配置する。
【0045】
そして、グラウト溝15bに袋グラウト17を設け、袋グラウト17のグラウト材が凝結し、膨潤化止水材20が、例えば地下水等の水を吸収して膨潤化することにより、隣接し合う壁体本体12間の隙間が閉塞でき、確実に止水できる。
【0046】
なお、膨潤化止水材20は、乾燥状態で隣接し合う壁体本体12両方の側面に接触するように設けられることにより、確実に隙間を閉塞できるので好ましい。
【0047】
水分を吸収して膨潤化した膨潤化止水材20は、弾性体であるので、例えば止水壁体11の空間部14側の掘削作業や地震等によって、止水壁体11が変形した場合であっても、膨潤化止水材20は止水壁体11の変形に対応するように変形して、隣接し合う壁体本体12間を閉塞した状態を維持できる。
【0048】
したがって、止水壁体11が変形した場合であっても、膨潤化止水材20によって止水壁体11の止水効果が低下することなく、確実に止水できる。
【0049】
また、膨潤化止水材20は、他の構造物の止水に使用されるものを用いることが可能であるので、止水壁体11用の特殊な止水治具を用いることなく、容易に施工できる。
【0050】
さらに、施工に関しても、膨潤化止水材20の貼付箇所は、壁体本体12の隣接し合う側面の袋グラウト17が設けられた空間部14側のグラウト溝15bより土地部13側の平面部であれば限定されず、施工性が良好である。
【0051】
また、どのような寸法の壁体本体12であっても、膨潤化止水材20を増減させるだけで容易に対応できる。
【0052】
なお、図2に示されるように、壁体本体12の隣接し合う側面に、膨潤化止水材20が2段に設けられることにより、確実に止水できるので好ましいが、この構成には限定されない。
【0053】
また、この実施の形態では、壁体本体12の隣接し合う側面の空間部14側のグラウト溝15bのみが形成されているが、この構成に限定されず、土地部13側および空間部14側にグラウト溝15a,15bを形成してもよい。
【0054】
さらに、膨潤化止水材20として、例えばケミカシート(登録商標)を用いると、施工性が良好であり、確実に隙間を閉塞できるので好ましい。
【0055】
なお、膨潤化止水材20は、他の構造物の止水に使用されるものを、そのままを用いても、止水壁体11用に改良して用いてもよい。
【0056】
次に、第3の実施の形態について図3を参照して説明する。なお、上記の実施の形態と同一の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図3は、止水壁体11の断面図であり、止水壁体11は、複数の壁体本体12が連続的に配列されて形成される。
【0058】
壁体本体12の隣接し合う側面の土地部13側および空間部14側には、間隔をおいてそれぞれ断面が半円状のグラウト溝15a,15bが設けられており、これらのグラウト溝15a,15bのうちの空間部13側のグラウト溝15bには、袋グラウト17が設けられている。
【0059】
また、壁体本体12の側面であり、土地部13側および空間部14側のグラウト溝15a,15b間の平面部には、膨潤化止水材20が貼付して設けられており、さらに、この膨潤化止水材20より土地部13側の隣接し合う壁体本体12間の隙間には隙間グラウト材18が充填されている。
【0060】
なお、隙間グラウト材18は、土地部13側のグラウト溝15aから注入されることにより、図3に示されるように、隣接し合う壁体本体12間から土地部13側へ染み出るように充填される。
【0061】
止水壁体11の施工に際しては、まず、例えば河川や池の護岸、調整池、道路の土留め等において、土地部13と空間部14との境界予定面に、例えばオーガ等によって壁体本体12設置用の複数の穴を連続的に掘削する。これらの穴それぞれに、壁体本体12の隣接し合う側面の土地部13側のグラウト溝15aと空間部14側のグラウト溝15bとの間の平面部に膨潤化止水材20が貼付された複数の壁体本体12を挿入して連続的に配置する。
【0062】
さらに、グラウト溝15bに、袋グラウト17を設け、グラウト溝15aを注入通路として膨潤化止水材20より土地部13側の隙間に隙間グラウト材18を充填する。
【0063】
そして、袋グラウト17のグラウト材が凝結し、袋グラウト17より土地部13側に充填された隙間グラウト材18が凝結することにより、隣接し合う壁体本体12間の隙間が閉塞されて止水でき、さらに、膨潤化止水材20が例えば地下水等の水を吸収して膨潤化することにより止水効果が向上する。
【0064】
また、膨潤化止水材20より土地部13側の隙間に隙間グラウト材18が充填されたことにより、土地部13の土圧が膨潤化止水材20に作用して膨潤化止水材の取付状態に影響を与え、例えば膨潤化止水材のずれ等が発生するおそれを防止するので、止水壁体11の止水効果の低下を防止できる。
【0065】
次に、第4の実施の形態について図4を参照して説明する。なお、上記の実施の形態と同一の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0066】
図4は、止水壁体11の断面図であり、止水壁体11は、複数の壁体本体12が連続的に配列されて形成される。
【0067】
壁体本体12の隣接し合う側面の土地部13側および空間部14側には、間隔をおいてそれぞれ断面が半円状のグラウト溝15a,15bが設けられており、これらのグラウト溝15a,15bには、袋グラウト17が設けられている。
【0068】
また、壁体本体12の側面であり、土地部13側および空間部14側のグラウト溝15a,15b間の平面部には、膨潤化止水材20が貼付して設けられている。
【0069】
止水壁体11の施工に際しては、まず、例えば河川や池の護岸、調整池、道路の土留め等において、土地部13と空間部14との境界予定面に、例えばオーガ等によって壁体本体12設置用の複数の穴を連続的に掘削する。これらの穴それぞれに、壁体本体12の隣接し合う側面の土地部13側のグラウト溝15aと空間部14側のグラウト溝15bとの間の平面部に膨潤化止水材20が貼付された複数の壁体本体12を挿入して連続的に配置する。
【0070】
さらに、土地部13側および空間部14側のグラウト溝15a,15bに、袋グラウト17を設ける。
【0071】
そして、袋グラウト17のグラウト材が凝結し、膨潤化止水材20が例えば地下水等の水を吸収して膨潤化することにより、隣接し合う壁体本体12間の隙間が閉塞されて止水できる。
【0072】
また、グラウト溝15a,15bの両方に袋グラウト17が設けられたことにより、隙間グラウト材を充填させる必要がないので施工が容易であり、さらに、土地部13側、空間部14側への隙間グラウト材の流出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態のコンクリート構造物を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態のコンクリート構造物を示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態のコンクリート構造物を示す断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態のコンクリート構造物を示す断面図である。
【図5】従来のコンクリート構造物を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
11 コンクリート構造物としての止水壁体
12 壁体本体
13 土地部
14 空間部
15a グラウト溝
15b グラウト溝
17 袋グラウト
18 隙間グラウト材
19 ゲル化止水材
20 膨潤化止水材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレストレストコンクリートによって形成され土地部と空間部との境界面に沿って隙間を介し連続的に配列された複数の壁体本体と、
これらの壁体本体の隣接し合う側面の土地部側および空間部側に間隔をおいてそれぞれ形成されたグラウト溝と、
前記空間部側のグラウト溝に設けられ、袋体にグラウト材が充填された袋グラウトと、
前記袋グラウトより土地部側に位置する前記壁体本体間の隙間に前記土地部側のグラウト溝から充填された隙間グラウト材と、
前記壁体本体の側面と前記隙間グラウト材との間に設けられ、水分との接触によりゲル化するゲル化止水材と
を具備したことを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
プレストレストコンクリートによって形成され土地部と空間部との境界面に沿って隙間を介し連続的に配列された複数の壁体本体と、
これらの壁体本体の隣接し合う側面の少なくとも空間部側に形成されたグラウト溝と、
このグラウト溝に設けられ、袋体にグラウト材が充填された袋グラウトと、
この袋グラウトより土地部側に位置する壁体本体間の隙間に設けられ、水分との接触により膨潤化する膨潤化止水材と
を具備したことを特徴とするコンクリート構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−52204(P2009−52204A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217341(P2007−217341)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000228660)日本コンクリート工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】