コンクリート造架構およびプレキャストコンクリート部材
【課題】揚重機の選定等の仮設工事の効率化を図るとともに、構築作業の効率化を図ることが可能なコンクリート造架構を提供すること。
【解決手段】下階および上階のそれぞれにおいて横方向に間隔をあけて並設された複数の壁付構造体A,A,…と、横方向に隣り合う壁付構造体A,Aを繋ぐ梁構造体Bとを備えるコンクリート造架構であって、壁付構造体Aは、耐震壁1と、耐震壁1の上側に形成された梁2と、耐震壁1の両側に形成された一対の柱3,3と、梁2の両側に形成されたパネルゾーン4,4とを有し、かつ、少なくとも耐震壁1および梁2がプレキャスト化されており、梁構造体Bは、その少なくとも一部がプレキャスト化されていることを特徴とする。
【解決手段】下階および上階のそれぞれにおいて横方向に間隔をあけて並設された複数の壁付構造体A,A,…と、横方向に隣り合う壁付構造体A,Aを繋ぐ梁構造体Bとを備えるコンクリート造架構であって、壁付構造体Aは、耐震壁1と、耐震壁1の上側に形成された梁2と、耐震壁1の両側に形成された一対の柱3,3と、梁2の両側に形成されたパネルゾーン4,4とを有し、かつ、少なくとも耐震壁1および梁2がプレキャスト化されており、梁構造体Bは、その少なくとも一部がプレキャスト化されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート造架構およびプレキャストコンクリート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート部材を利用してコンクリート造架構を構築する技術が特許文献1,2に開示されている。特許文献1のプレキャストコンクリート部材は、耐震壁の上下に梁を一体化するとともに、耐震壁の左右に柱を一体化したものである。また、特許文献2のプレキャストコンクリート部材は、田の字状を呈するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭50−25729号公報
【特許文献2】特開2010−59646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、複数のプレキャストコンクリート部材を立面視千鳥状(市松状)に配置する形態が開示されているものの、具体的な接合構造や施工方法は不明である。
【0005】
特許文献2の技術では、プレキャストコンクリート部材を縦横に隙間無く配置する必要があるので、プレキャストコンクリート部材を建て込む際に、隣接する他のプレキャストコンクリート部材に接触する虞があり、欠けやひび割れが懸念される。また、プレキャストコンクリート部材同士の目違いを防止するための取付精度管理も大変である。特に躯体と外装を兼用した場合などにおいては、高い取付精度が要求されるため、建て込み作業に多大な手間暇を要する場合もある。
【0006】
このような観点から、本発明は、プレキャストコンクリート部材を利用したコンクリート造架構であって、構築作業の効率化を図ることが可能なコンクリート造架構を提供することを課題とし、さらには、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能なプレキャストコンクリート部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリート造架構は、下階および上階のそれぞれにおいて横方向に間隔をあけて並設された複数の壁付構造体と、横方向に隣り合う前記壁付構造体同士を繋ぐ梁構造体と、を備えるコンクリート造架構であって、前記壁付構造体は、耐震壁と、前記耐震壁の上側に形成された梁と、前記耐震壁の両側に形成された一対の柱と、前記梁の両側に形成されたパネルゾーンとを有し、かつ、少なくとも前記耐震壁の一部および前記梁の一部がプレキャスト化されており、前記梁構造体は、その少なくとも一部がプレキャスト化されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るコンクリート造架構によれば、横方向に隣り合う壁付構造体同士の間に間隔を設けているので、縦横に隙間無く配置する場合に比べて、壁付構造体の素となるプレキャストコンクリート部材をスムーズに建て込むことが可能となる。
【0009】
なお、例えば、大型の揚重機械を使用できない場合や揚重機械の作業半径が大きい場合(重量物を吊持できないような場合)には、壁付構造体の耐震壁および梁部だけをプレキャスト化してプレキャスト化率を低くすればよく、大型の揚重機械を使用できる場合や揚重機械の作業半径が小さい場合には、耐震壁および梁に加えて柱やパネルゾーンをプレキャスト化してプレキャスト化率を高めればよい。プレキャスト化率を調整すれば、揚重機械の選定作業や配置計画等が容易になり、ひいては、仮設工事の効率化を図ることができる。
【0010】
梁構造体は、その躯体部分の全部をプレキャスト化してもよいし、躯体部分の一部をプレキャスト化し、残部を場所打ちコンクリートとしてもよい。また、梁構造体の躯体部分の全部を現場打ちコンクリートとし、梁構造体の表層部をプレキャスト化してもよい。なお、プレキャスト化された表層部は、残存型枠や仕上げ材として利用すればよい。
【0011】
本発明に係るコンクリート造架構においては、下階の前記壁付構造体同士を繋ぐ前記梁構造体のうちのプレキャスト化された部分に、上階用の前記壁付構造体の前記耐震壁を載置するとよい。このようにすると、複数の耐震壁が立面視千鳥状(市松状)に配置されるようになるので、前記壁付構造体および前記梁構造体が建物の外装を兼ねている場合には、斬新なファサードを形成することができる。
【0012】
前記パネルゾーンを場所打ちコンクリートによって形成する場合には、前記梁構造体の梁主筋と前記梁の梁主筋との継手位置を前記パネルゾーンに設けるとよい。このようにすると、場所打ちコンクリートを打設する必要のある鉄筋継手用の空間を別途確保する必要がなくなるので、壁付構造体あるいは梁構造体のプレキャスト化率を高めることが可能となる。なお、前記梁構造体の梁主筋と前記梁の梁主筋を鉄筋継手で連結せずに、パネルゾーンに定着してもよい。
【0013】
なお、建物の階数を増加する改築が予定されている場合には、建物の屋上部分に、パラペットを兼ねる屋上構造体を配置するとよい。パラペットを非構造体とすると、増築時にパラペットを撤去あるいは補強する作業が必要になるが、屋上構造体をパラペットとしておけば、供用中の建物の屋上部分において大規模な解体作業等を行わずとも、増築用の壁等を継ぎ足すことができるので、効率良く建物を増築することが可能となる。
【0014】
前記壁付構造体および前記梁構造体が建物の外装を兼ねている場合には、壁付構造体同士の間に形成された空間に、所謂サッシレス窓を設けるとよい。サッシレス窓であれば、窓を構成する部材が窓ガラス、シールおよび若干の金物(例えば、押し縁等)だけとなるので、部材点数を少なくすることが可能となり、ひいては、工期短縮および工費削減を図ることが可能となる。また、前記空間に、非構造材である外装材(軽量気泡コンクリート板や押出成形セメント板など)を取り付けてもよい。なお、前記空間の開口幅が小さい場合には、下地横架材を省略し、前記壁付構造体および前記梁構造体に直に外装材を取り付けることが好ましい。
【0015】
本発明に係る第一のプレキャストコンクリート部材は、耐震壁用の壁PCa部と、前記壁PCa部の上側に一体成形された梁PCa部と、前記壁PCa部の両側に一体成形された一対の柱PCa部と、前記梁PCa部の両側に一体成形された一対のパネルゾーン用残存型枠と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る第二のプレキャストコンクリート部材は、耐震壁用の壁PCa部と、前記壁PCa部の上側に一体に形成された梁PCa部と、前記壁PCa部の両側に一体成形された一対の柱用残存型枠と、前記壁PCa部の両側に配置された一対の柱用鉄筋籠と、前記梁PCa部の両側に一体成形された一対のパネルゾーン用残存型枠と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るプレキャストコンクリート部材によれば、耐震壁に加えて、耐震壁の上側に配置される梁がプレキャスト化されており、さらには、パネルゾーン用残存型枠が付設されているので、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能となる。
【0018】
本発明に係る第三のプレキャストコンクリート部材は、耐震壁用の壁PCa部と、前記壁PCa部の上側に先組みされた梁主筋と、前記壁PCa部の両側に先組みされた柱主筋と、を有することを特徴とする。このプレキャストコンクリート部材によれば、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るコンクリート造架構によれば、構築作業の効率化を図ることが可能となる。
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材によれば、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るコンクリート造架構の正面図である。
【図2】(a)は図1のX1−X1線断面図、(b)は図1のX2−X2線断面図、(c)は図1のY1−Y1線断面図である。
【図3】壁付構造体用のプレキャストコンクリート部材を背面側から見たときの斜視図である。
【図4】壁付構造体用のプレキャストコンクリート部材の配筋図であって、(a)は背面図、(b)は(a)のY2−Y2線断面図、(c)は(a)のY3−Y3線断面図である。
【図5】(a)は梁構造体用のプレキャストコンクリート部材を背面側から見たときの斜視図である。(b)〜(d)は梁構造体用のプレキャストコンクリート部材の配筋図であって、(b)は背面図、(c)は(b)のY4−Y4線断面図、(d)は(b)のX3−X3線断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るコンクリート造架構の構築手順を示す平面図である。
【図7】図6に続く手順を示す背面図である。
【図8】(a)〜(c)は図7に続く手順を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は図8に続く手順を示す断面図である。
【図10】図9に続く手順を示す背面図である。
【図11】図10に続く手順を示す背面図である。
【図12】(a)〜(c)は、屋上構造体を示す断面図である。
【図13】壁付構造体用のプレキャストコンクリート部材の変形例を背面側から見たときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係るコンクリート造架構は、多層階建ての建物に適用されるものであり、図1に示すように、下階および上階のそれぞれにおいて横方向に間隔をあけて並設された複数の壁付構造体A,A,…と、横方向に隣り合う壁付構造体A,Aを繋ぐ梁構造体B,B,…と、を備えている。本実施形態のコンクリート造架構は、建物の外周に形成されており、かつ、建物の外装(外壁)を兼ねている。
【0022】
コンクリート造架構が適用される建物の用途に制限はないが、大きな窓開口を必要としないIT・通信施設(データセンターなど)や工場等の生産施設・倉庫等に好適である。なお、以下の説明においては、屋外側の側面を「正面」、屋内側の側面を「背面」と称する。
【0023】
壁付構造体A,A,…は、正面視した際に市松模様状のファサードとなるよう、千鳥状に配置されている。横方向に隣り合う壁付構造体A,Aの間には、窓開口となる空間Vが設けられている。上階の壁付構造体Aは、下階の壁付構造体Aの斜め上方に配置されていて、下階の梁構造体Bを跨いでいる。
【0024】
壁付構造体Aは、耐震壁1と、耐震壁1の上側に形成された梁2と、耐震壁1の両側に形成された一対の柱3,3と、梁2の両側に形成された一対のパネルゾーン4,4とを備えている。なお、図1中の破線は、各部の境界を示す仮想線である。壁付構造体Aは、鉄筋コンクリート構造であり、本実施形態では、図2中のハッチングを付した部分がプレキャスト化されている。
【0025】
なお、図2において、ドット模様を付した部分は、場所打ちコンクリートにて形成された部分である。また、図2中の破線は、各部の境界を示す仮想線である。
【0026】
耐震壁1は、図2の(a)に示すように、所謂フルプレキャストであり、その躯体部分の全部がプレキャスト化されている。耐震壁1の幅寸法は、壁付構造体Aの幅寸法の1/3〜1/2に設定されている。
【0027】
耐震壁1には壁縦筋1aと壁横筋1bとが配筋されている。壁縦筋1aおよび壁横筋1bは、耐震壁1の正面側および背面側のそれぞれにおいて格子状に組み合わされている。壁横筋1bは、横方向に沿って配筋されていて、壁横筋1bの両端部は、柱3,3のコンクリートに定着されている。壁縦筋1aは、上下方向に沿って配筋されている。図2の(c)に示すように、壁縦筋1aの上端部(定着部)は、L字状に折り曲げられており、梁2のコンクリートに定着されている。壁縦筋1aの下端部は、L字状の定着筋1cに連結されている。定着筋1cは、鉄筋をL字状に折り曲げて形成したものであり、鉄筋継手用のスリーブ1dを介して壁縦筋1aの下端部と連結されている。
【0028】
梁2は、所謂ハーフプレキャストであり、その躯体部分の一部がプレキャスト化されている。梁2は、耐震壁1の壁厚よりも大きな梁幅を有し、耐震壁1から張り出している。なお、梁2は、壁内梁(梁幅が耐震壁1の壁厚と同じ)としてもよい。本実施形態では、梁2の躯体部分のうち、耐震壁1の直上に位置する部分をプレキャストコンクリートにて形成し、耐震壁1の背面よりも室内側に張り出した部分を場所打ちコンクリートにて形成している。なお、図示は省略するが、梁2には、床スラブや小梁が接続される。
【0029】
梁2には、上下二段に並設された複数の梁主筋2a,2a…と、これらを取り囲むスターラップ(図2では図示略)とが配筋されている。図2の(b)に示すように、梁主筋2aは、横方向に沿って配筋されていて、梁主筋2aの両端部は、パネルゾーン4,4に延出している。
【0030】
柱3は、図2の(a)に示すように、フルプレキャストであり、その躯体部分の全部がプレキャスト化されている。柱3の断面形状は、矩形を呈しており、柱3の正面は、耐震壁1の正面と面一になっている。本実施形態では、柱3の幅寸法を、耐震壁1の幅寸法の1/2以上、1以下とし、柱3の奥行き寸法を、耐震壁3の奥行き(厚さ)寸法と同じにしている。なお、本実施形態では、柱3を壁内柱(柱の奥行き寸法が耐震壁1の壁厚と同じ)としたが、柱3の奥行き寸法を耐震壁1の壁厚よりも大きくしても差し支えない。
【0031】
柱3には、柱主筋3aとフープ筋(図2では図示略)とが配筋されている。柱主筋3aは、上下方向に沿って配筋されている。
【0032】
パネルゾーン4は、図2の(b)に示すように、その躯体部分(梁主筋2a,5aと柱主筋3aが配筋された部分)の全部が場所打ちコンクリートからなり、正面側の表層部のみが残存型枠A4としてプレキャスト化されている。なお、図示は省略するが、パネルゾーン4には、床スラブや大梁が接続される。
【0033】
梁構造体Bは、図1に示すように、横方向に隣り合う壁付構造体A,Aの梁2,2の間に配置されている。壁付構造体Aの梁2と梁構造体Bとを交互に連ねることにより、境界梁(外周梁)となる。
【0034】
梁構造体Bは、図2の(b)に示すように、所謂ハーフプレキャストであり、その躯体部分の一部がプレキャスト化されている。梁構造体Bは、図2の(c)に示すように、耐震壁1の壁厚よりも大きな梁幅を有し、耐震壁1から張り出している。なお、図示は省略するが、梁構造体Bの梁幅を耐震壁1の壁厚と同じにしてもよい。本実施形態では、梁構造体Bの躯体部分のうち、耐震壁1の直下に位置する部分をプレキャストコンクリートにて形成し、耐震壁1の背面よりも室内側に張り出した部分を場所打ちコンクリートにて形成している。なお、図示は省略するが、梁構造体Bには、床スラブや小梁が接続される。
【0035】
梁構造体Bには、梁主筋5aのほか、スターラップやトラス筋(図2では図示略)が配筋されている。梁主筋5aは、図2の(a)に示すように、横方向に沿って配筋されている。梁主筋5aの両端部は、パネルゾーン4,4に延出していて、パネルゾーン4,4内において梁2の梁主筋2aと連結されている。
【0036】
なお、本実施形態では、機械式継手であるスリーブ2dを介して梁主筋2a,5aを連結しているが、継手形式を限定する趣旨ではない。機械式継手に代えて、重ね継手、ガス圧接継手、溶接継手などを用いても勿論差し支えない。また、梁主筋2a,5aを連結せず、各々をパネルゾーン4に定着してもよい。梁主筋2a,5aを連結しない場合には、梁主筋2a,5aの端部に定着金物を装着するか、あるいは、梁主筋2a,5aの端部を折り曲げて定着長を大きくすることが好ましい。
【0037】
壁付構造体Aは、図3および図4に示すプレキャストコンクリート部材A’(以下「第一プレキャスト部材A’」という。)を利用して形成し、梁構造体Bは、図5に示すプレキャストコンクリート部材B’(以下「第二プレキャスト部材B’」という。)を利用して形成する。
【0038】
第一プレキャスト部材A’は、壁PCa部A1と、梁PCa部A2と、一対の柱PCa部A3,A3と、一対のパネルゾーン用残存型枠A4,A4とを備えている。壁PCa部A1、梁PCa部A2、柱PCa部A3,A3およびパネルゾーン用残存型枠A4,A4は、一体成形されている。第一プレキャスト部材A’の正面側のコンクリート面は、外装面(化粧面)となる。
【0039】
壁PCa部A1は、耐震壁1(図1,2参照)となる部分である。図4の(a)および(b)に示すように、壁PCa部A1には、壁縦筋1aおよび壁横筋1bが配筋されている。また、壁PCa部A1の下端部には、鉄筋継手用のスリーブ1dが埋設されており、さらには、スリーブ1dに至る充填孔および空気抜き孔が形成されている。壁縦筋1aの下端部は、スリーブ1dに接続されている。壁縦筋1aの上端部(定着部)は、梁PCa部A2内で折れ曲がり、梁PCa部A2の背面から突出している。
【0040】
梁PCa部A2は、梁2(図1,2参照)の躯体部分の一部となる部分であり、壁PCa部A1の上側に形成されている。梁PCa部A2には、梁主筋2aおよびスターラップ2bに加えて、壁縦筋1aの上端部(定着部)、トラス筋4a(図4の(b)参照)などが配筋されている。
【0041】
図4の(b)に示すように、梁PCa部A2の正面側(図4の(b)においては左側)のコンクリート面は、壁PCa部A1の正面側のコンクリート面よりも僅かに突出している。梁PCa部A2の背面側(図4の(b)においては右側)のコンクリート面は、壁PCa部A1の背面側のコンクリート面と面一になっている。図3にも示すように、梁PCa部A2の背面側のコンクリート面からは、壁縦筋1aの定着部とスターラップ2bとが突出している。また、梁PCa部A2のコンクリート端面からは、梁主筋2aが突出している。
【0042】
梁PCa部A2のコンクリート上面には、窓嵌め溝2eが形成されている。窓嵌め溝2eには、図示せぬ窓ガラスの下縁部が嵌め込まれる。
【0043】
柱PCa部A3は、柱3(図1,2参照)となる部分であり、壁PCa部A1の両側に形成されている。柱PCa部A3には、図4の(a)および(c)に示すように、柱主筋3aおよびフープ筋3bが配筋されている。また、柱PCa部A3の下端部には、鉄筋継手用のスリーブ3dが埋設されており、さらには、スリーブ3dに至る充填孔および空気抜き孔が形成されている。スリーブ3dには、柱主筋3aの下端部は接続されている。図3にも示すように、柱PCa部A3のコンクリート上端面からは、柱主筋3aが突出している。柱主筋3aの上端部は、パネルゾーン用残存型枠A4の上端面よりも上方にまで延出している(図4の(c)参照)。なお、柱主筋3aの上端部は、上階の第一プレキャスト部材A’のスリーブ3dに挿入される。
【0044】
柱PCa部A3のコンクリート側面には、図3に示すように、窓嵌め溝3eが形成されている。窓嵌め溝3eには、図示せぬ窓ガラスの側縁部が嵌め込まれる。
【0045】
パネルゾーン用残存型枠A4は、パネルゾーン4(図1,2参照)に場所打ちコンクリートを打設する際の型枠として利用され、コンクリート硬化後においてはそのまま残置される。パネルゾーン用残存型枠A4の正面側のコンクリート面は、外装面(化粧面)となる。本実施形態のパネルゾーン用残存型枠A4は、板状を呈していて、梁PCa部A2の両側に形成されている。パネルゾーン用残存型枠A4の一方の側縁部は、梁PCa部A2の正面側のコンクリート表層部に繋がっており、パネルゾーン用残存型枠A4の下縁部は、柱PCa部A3の正面側のコンクリート表層部に繋がっている。図4の(c)に示すように、パネルゾーン用残存型枠A4には、トラス筋4aが配筋されている。トラス筋4aの一部は、パネルゾーン用残存型枠A4の背面側のコンクリート面から突出している。トラス筋4aは、左右のパネルゾーン4,4で共通であり、トラス筋4aの中央部は、梁2の正面側の表層部に埋設されている(図4の(b)参照)。
【0046】
図5に示す第二プレキャスト部材B’は、梁構造体Bの躯体部分の一部となる部分である。第二プレキャスト部材B’には、梁主筋5aおよびスターラップ5bに加えて、トラス筋5c(図5の(c)および(d)参照)、定着筋1cなどが配筋されている。スターラップ5bは、複数の梁主筋5a,5a…を取り囲むように配筋されている。図5の(c)および(d)に示すように、トラス筋5cは、梁構造体Bの正面側の表層部に配筋されている。
【0047】
第二プレキャスト部材B’の背面側のコンクリート面からは、定着筋1cの水平部とスターラップ5bとが突出しており、第二プレキャスト部材B’の上面からは、定着筋1cの鉛直部が突出している。また、第二プレキャスト部材B’のコンクリート端面からは、梁主筋5aが突出している。
【0048】
第二プレキャスト部材B’の下面には、図5の(a)および(b)に示すように、窓嵌め溝5eが形成されている。窓嵌め溝5eには、図示せぬ窓ガラスの上縁部が嵌め込まれる。
【0049】
次に、本実施形態に係るコンクリート造架構の構築方法を説明する。なお、以下に示す建物は、広い室内空間を確保できる片コアタイプの建物である。
図6に示すように、まず、コア部分Eを除く建物の外周に沿って複数の第一プレキャスト部材A’,A’,…を設置する。第一プレキャスト部材A’,A’,…は、横方向に間隔をあけて並設する。
【0050】
続いて、図7に示すように、横方向に隣り合う第一プレキャスト部材A’,A’の間に、第二プレキャスト部材B’を設置し、パネルゾーン用残存型枠A4の前方で梁主筋2a,5aを突き合わせ、スリーブ2dを介して連結する。図7中の符号Jは、梁主筋2a,5aの継手位置を示すものである。なお、第二プレキャスト部材B’は、図示せぬ支保工で仮支持する。
【0051】
続いて、図8の(a)〜(c)に示すように、梁PCa部A2に隣接する領域、パネルゾーン用残存型枠A4の前方の領域(パネルゾーン4となる領域)および第二プレキャスト部材B’に隣接する領域に、型枠K1〜K3を配置する。その後、梁PCa部A2の正面側のコンクリート面と型枠K1で囲まれた領域、パネルゾーン用残存型枠A4と型枠K2とで囲まれた領域および第二プレキャスト部材B’の正面側のコンクリート面と型枠K3とで囲まれた領域に場所打ちコンクリートを打設する。なお、場所打ちコンクリート内に埋設される梁主筋は、第一プレキャスト部材A’および第二プレキャスト部材B’に予め取り付けておく「先組み」としてもよいし、現場で配筋してもよい。
【0052】
而して場所打ちコンクリートを養生すると、図9の(a)〜(c)に示すように、下階の壁付構造体Aおよび梁構造体Bのうちの場所打ちコンクリート部分(梁2の躯体部分の一部,パネルゾーン4の躯体部分(残存型枠を除く部分)、梁構造体Bの躯体部分の一部)が形成され、下階の壁付構造体Aおよび梁構造体Bが完成する。なお、壁付構造体Aおよび梁構造体Bに接続される床スラブや小梁・大梁(図示略)を場所打ちコンクリートにて形成する場合には、図8の工程においてコンクリート打設を行えばよい。
【0053】
下階の壁付構造体A,A,…および梁構造体B,B,…が形成されたら、図10に示すように、下階の壁付構造体A,A,…および梁構造体B,B,…の上に、上階の第一プレキャスト部材A’,A’,…を設置する。上階の第一プレキャスト部材A’,A’,…も、横方向に間隔をあけて並設するが、正面視した際に市松模様状のファサードとなるよう、各第一プレキャスト部材A’は、下階の空間Vを跨ぐように配置する。
【0054】
より具体的には、下階の梁構造体Bのうちのプレキャスト化された部分(=第二プレキャスト部材B’)に、上階の第一プレキャスト部材A’の壁PCa部A1を載置し、下階の梁構造体Bの左側に位置する壁付構造体Aの上に、左側の柱PCa部A3を位置させ、下階の梁構造体Bの右側に位置する壁付構造体Aの上に、右側の柱PCa部A3を位置させる。
【0055】
上階の第一プレキャスト部材A’を設置する際には、下階の梁構造体Bから突出する定着筋1cを壁PCa部A1のスリーブ1d(図2参照)に挿入し、かつ、下階の壁付構造体Aのパネルゾーン4から突出する柱主筋3aを柱PCa部A3のスリーブ3d(図2参照)に挿入する。
【0056】
その後、下階の梁構造体Bと上階の壁PCa部A1との間およびスリーブ1d(図2参照)の内部をグラウト等の充填材で満たすと、下階の梁構造体Bと上階の壁PCa部A1とが構造的に一体となり、下階の壁付構造体Aのパネルゾーン4と上階の柱PCa部A3との間およびスリーブ3d(図2参照)の内部をグラウト等の充填材で満たすと、下階の壁付構造体Aと上階の柱PCa部A3とが構造的に一体となる。
【0057】
次に、上階において横方向に隣り合う第一プレキャスト部材A’,A’の間に、第二プレキャスト部材B’を設置し、梁主筋2a,5aを連結する(図7参照)。その後、図8の場合と同じように型枠を設置し、場所打ちコンクリートを打設すると、図11に示すように、上階の壁付構造体Aおよび梁構造体Bが形成される。
【0058】
上記のような手順を適宜繰り返すと、多層階建の建物に対応したコンクリート造架構が得られる。
【0059】
なお、図示は省略するが、壁付構造体A,Aの間の空間Vには、サッシレス窓を形成する。サッシレス窓用の窓ガラスは、壁付構造体用PCa部材A’の窓嵌め溝2e,3e(図3参照)および梁構造体用PCa部材B’の窓嵌め溝5e(図5参照)に嵌め込む。サッシレス窓であれば、窓を構成する部材が窓ガラス、シールおよび若干の金物(例えば、押し縁等)だけとなるので、部材点数を少なくすることが可能となり、ひいては、工期短縮および工費削減を図ることが可能となる。
【0060】
また、図示は省略するが、空間Vに、非構造材である外装材(軽量気泡コンクリート板や押出成形セメント板など)を取り付けてもよい。なお、下地横架材は省略し、壁付構造体Aおよび梁構造体Bに直に外装材を取り付ける。
【0061】
増築が予定されている場合には、図12に示すように、建物の屋上部分に、パラペットを兼ねる屋上構造体Cを設ける。屋上構造体Cは、鉄筋コンクリート構造であり、増築階の耐震壁および柱の一部として機能し得るよう、柱主筋3a、壁縦筋、壁横筋(図示略)などが配筋されている。屋上構造体Cの壁縦筋の下端部は、壁付構造体Aまたは梁構造体B(図視略)に定着されており、屋上構造体Cの柱主筋3aは、壁付構造体Aの柱主筋と連結されている。
【0062】
図12の(a)および(b)に示すように、屋上構造体Cの柱主筋3aや壁縦筋(図示略)は、屋上構造体Cの上面から突出させておくとよい。柱主筋3aおよび壁縦筋は、一本ずつキャップ6aで覆うか(図12の(a)参照)、あるいは、外周方向に連続するカバー6bで覆うとよい(図12の(b)参照)。ちなみに、図示のカバー6bは、笠木を兼ねている。また、図12の(c)に示すように、屋上構造体Cに鉄筋継手用のスリーブ6cを埋設しておいてもよい。スリーブ6cは、例えば、笠木を兼ねるカバー6dで覆うとよい。
【0063】
以上説明した本実施形態に係るコンクリート造架構によれば、横方向に隣り合う壁付構造体A,Aの間に間隔を設けているので、縦横に隙間無く配置する場合に比べて、壁付構造体Aの素となる第一プレキャスト部材A’をスムーズに建て込むことが可能となる。
【0064】
また、本実施形態に係るコンクリート造架構においては、梁構造体Bのうちのプレキャスト化された部分(すなわち、第二プレキャスト部材B’)に、上階用の壁付構造体Aの耐震壁1(第一プレキャスト部材A’の壁PCa部A1)を載置しているので(図1参照)、複数の耐震壁1,1,…が立面視千鳥状(市松状)に配置されるようになり、その結果、斬新なファサードを形成することができる。
【0065】
また、本実施形態では、耐震壁1の幅寸法を壁付構造体Aの幅寸法の1/3〜1/2に設定し、柱3,3間の離隔距離を小さくしたので、梁2および梁構造体Bに作用する曲げモーメントが小さくなり、ひいては、梁主筋2a,5aの鉄筋量を削減すること可能となり、あるいは、梁2および梁構造体Bのスリム化を図ることが可能となる。
【0066】
また、本実施形態では、パネルゾーン4を場所打ちコンクリートによって形成し、梁2の梁主筋2aと梁構造体Bの梁主筋5aとの継手位置Jをパネルゾーン4に設けているので(図7参照)、鉄筋継手用の空間を別途確保する必要がない。パネルゾーンを鉄筋継手用の空間として利用すれば、場所打ちコンクリートの打設範囲が狭まるので、壁付構造体Aあるいは梁構造体Bのプレキャスト化率を高めることが可能となる。
【0067】
また、建物の屋上部分に、パラペットを兼ねる屋上構造体Cを配置しているので(図12参照)、供用中の建物の屋上部分において大規模な解体作業等を行わずとも、増築用の壁等を継ぎ足すことができ、ひいては、効率良く建物を増築することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、壁付構造体Aのうち、耐震壁1の全部、梁2の一部および柱3の全部をプレキャスト化し、さらに、パネルゾーン用残存型枠A4までプレキャスト化したので、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能となる。
【0069】
なお、例えば、大型の揚重機械を使用できない場合や揚重機械の作業半径が大きい場合(重量物を吊持できないような場合)には、図13に示す第一プレキャスト部材D’を使0用し、壁付構造体のプレキャスト化率を低くすればよい。
【0070】
第一プレキャスト部材D’は、図1に示す柱3およびパネルゾーン4を場所打ちコンクリートにて形成する場合に使用されるプレキャスト部材であり、耐震壁用の壁PCa部D1と、壁PCa部D1の上側に形成された梁PCa部D2と、壁PCa部D1の両側に形成された柱用残存型枠D3と、梁PCa部D2の両側に形成されたパネルゾーン用残存型枠D4と、壁PCa部D1の両側に配置された一対の柱用鉄筋籠D5,D5とを備えている。壁PCa部D1、梁PCa部D2、柱用残存型枠D3およびパネルゾーン用残存型枠D4は、一体成形されている。
【0071】
壁PCa部D1、梁PCa部D2およびパネルゾーン用残存型枠D4の構成は、それぞれ、前記した壁PCa部A1、梁PCa部A2およびパネルゾーン用残存型枠A4の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0072】
柱用残存型枠D3は、柱3(図1参照)に場所打ちコンクリートを打設する際の型枠として利用され、コンクリート硬化後もそのまま残置される。柱用残存型枠D3のコンクリート面は、外装面(化粧面)となる。本実施形態の柱用残存型枠D3は、板状を呈していて、壁PCa部D1の両側に形成されている。柱用残存型枠D3の一方の側縁部は、壁PCa部D1の正面側のコンクリート表層部に繋がっており、柱用残存型枠D3の上縁部は、パネルゾーン用残存型枠D4の下縁部に繋がっている。柱用残存型枠D3の内側のコンクリート面からは、図示は省略するが、トラス筋の一部が突出している。なお、トラス筋に代えて、定着筋やアンカー用インサート等を用いてもよい。
【0073】
柱用鉄筋籠D5は、柱3の柱主筋3a,3a,…およびフープ筋3b,3b,…を予め組み立てたものである。柱用鉄筋籠D5は、柱用残存型枠D3から突出したトラス筋(図示略)に取り付けられている。壁PCa部D1の両側に柱主筋3aを先組みしておけば、現場での配筋作業が容易になる。
【0074】
プレキャスト化率の高い第一プレキャスト部材A’(図3参照)だけでなく、プレキャスト化率の低い第一プレキャスト部材D’を使用すれば、揚重機械の選定作業や配置計画等が容易になり、ひいては、仮設工事の効率化を図ることができる。
【0075】
なお、図示は省略するが、耐震壁1の躯体部分の一部をプレキャスト化し、残部を場所打ちコンクリートとしてもよいし、耐震壁1の表層部のみをプレキャスト化し、耐震壁1の躯体部分の全部を現場打ちコンクリートとしてもよい。
【0076】
プレキャスト化率を低下させるためには、柱用残存型枠D3やパネルゾーン用残存型枠D4を省略すればよい。柱用残存型枠D3を省略した場合であっても、柱主筋3aは、壁横筋などを利用して壁PCa部D1の両側に先組みしておくことが好ましい。また、梁2の表層部のみをプレキャスト化し、梁2の躯体部分の全部を現場打ちコンクリートとするか、あるいは、梁2の全部を場所打ちコンクリートとすることでも、プレキャスト化率を下げることができる。なお、梁主筋2aは、壁縦筋などを利用して壁PCa部D1の上側に先組みしておくことが好ましい。
【0077】
なお、前記した実施形態では、梁構造体Bの一部をプレキャスト化し、残部を場所打ちコンクリートで形成したが、梁構造体Bの全部をプレキャスト化してもよい。また、前記した実施形態では、梁構造体Bの躯体部分をプレキャスト化した場合を例示したが、梁構造体の躯体部分の全部を場所打ちコンクリートとし、残存型枠のみをプレキャスト化してもよい。
【符号の説明】
【0078】
A 壁付構造体
1 耐震壁
2 梁
2a 梁主筋
3 柱
4 パネルゾーン
A’ 第一プレキャスト部材(プレキャストコンクリート部材)
A1 壁PCa部
A2 梁PCa部
A3 柱PCa部
A4 パネルゾーン用残存型枠
B 梁構造体
5a 梁主筋
B’ 第二プレキャスト部材
J 継手位置
V 空間
【0079】
D’ 第一プレキャスト部材(プレキャストコンクリート部材)
D1 壁PCa部
D2 梁PCa部
D3 柱用残存型枠
D4 パネルゾーン用残存型枠
D5 柱用鉄筋籠
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート造架構およびプレキャストコンクリート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート部材を利用してコンクリート造架構を構築する技術が特許文献1,2に開示されている。特許文献1のプレキャストコンクリート部材は、耐震壁の上下に梁を一体化するとともに、耐震壁の左右に柱を一体化したものである。また、特許文献2のプレキャストコンクリート部材は、田の字状を呈するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭50−25729号公報
【特許文献2】特開2010−59646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、複数のプレキャストコンクリート部材を立面視千鳥状(市松状)に配置する形態が開示されているものの、具体的な接合構造や施工方法は不明である。
【0005】
特許文献2の技術では、プレキャストコンクリート部材を縦横に隙間無く配置する必要があるので、プレキャストコンクリート部材を建て込む際に、隣接する他のプレキャストコンクリート部材に接触する虞があり、欠けやひび割れが懸念される。また、プレキャストコンクリート部材同士の目違いを防止するための取付精度管理も大変である。特に躯体と外装を兼用した場合などにおいては、高い取付精度が要求されるため、建て込み作業に多大な手間暇を要する場合もある。
【0006】
このような観点から、本発明は、プレキャストコンクリート部材を利用したコンクリート造架構であって、構築作業の効率化を図ることが可能なコンクリート造架構を提供することを課題とし、さらには、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能なプレキャストコンクリート部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリート造架構は、下階および上階のそれぞれにおいて横方向に間隔をあけて並設された複数の壁付構造体と、横方向に隣り合う前記壁付構造体同士を繋ぐ梁構造体と、を備えるコンクリート造架構であって、前記壁付構造体は、耐震壁と、前記耐震壁の上側に形成された梁と、前記耐震壁の両側に形成された一対の柱と、前記梁の両側に形成されたパネルゾーンとを有し、かつ、少なくとも前記耐震壁の一部および前記梁の一部がプレキャスト化されており、前記梁構造体は、その少なくとも一部がプレキャスト化されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るコンクリート造架構によれば、横方向に隣り合う壁付構造体同士の間に間隔を設けているので、縦横に隙間無く配置する場合に比べて、壁付構造体の素となるプレキャストコンクリート部材をスムーズに建て込むことが可能となる。
【0009】
なお、例えば、大型の揚重機械を使用できない場合や揚重機械の作業半径が大きい場合(重量物を吊持できないような場合)には、壁付構造体の耐震壁および梁部だけをプレキャスト化してプレキャスト化率を低くすればよく、大型の揚重機械を使用できる場合や揚重機械の作業半径が小さい場合には、耐震壁および梁に加えて柱やパネルゾーンをプレキャスト化してプレキャスト化率を高めればよい。プレキャスト化率を調整すれば、揚重機械の選定作業や配置計画等が容易になり、ひいては、仮設工事の効率化を図ることができる。
【0010】
梁構造体は、その躯体部分の全部をプレキャスト化してもよいし、躯体部分の一部をプレキャスト化し、残部を場所打ちコンクリートとしてもよい。また、梁構造体の躯体部分の全部を現場打ちコンクリートとし、梁構造体の表層部をプレキャスト化してもよい。なお、プレキャスト化された表層部は、残存型枠や仕上げ材として利用すればよい。
【0011】
本発明に係るコンクリート造架構においては、下階の前記壁付構造体同士を繋ぐ前記梁構造体のうちのプレキャスト化された部分に、上階用の前記壁付構造体の前記耐震壁を載置するとよい。このようにすると、複数の耐震壁が立面視千鳥状(市松状)に配置されるようになるので、前記壁付構造体および前記梁構造体が建物の外装を兼ねている場合には、斬新なファサードを形成することができる。
【0012】
前記パネルゾーンを場所打ちコンクリートによって形成する場合には、前記梁構造体の梁主筋と前記梁の梁主筋との継手位置を前記パネルゾーンに設けるとよい。このようにすると、場所打ちコンクリートを打設する必要のある鉄筋継手用の空間を別途確保する必要がなくなるので、壁付構造体あるいは梁構造体のプレキャスト化率を高めることが可能となる。なお、前記梁構造体の梁主筋と前記梁の梁主筋を鉄筋継手で連結せずに、パネルゾーンに定着してもよい。
【0013】
なお、建物の階数を増加する改築が予定されている場合には、建物の屋上部分に、パラペットを兼ねる屋上構造体を配置するとよい。パラペットを非構造体とすると、増築時にパラペットを撤去あるいは補強する作業が必要になるが、屋上構造体をパラペットとしておけば、供用中の建物の屋上部分において大規模な解体作業等を行わずとも、増築用の壁等を継ぎ足すことができるので、効率良く建物を増築することが可能となる。
【0014】
前記壁付構造体および前記梁構造体が建物の外装を兼ねている場合には、壁付構造体同士の間に形成された空間に、所謂サッシレス窓を設けるとよい。サッシレス窓であれば、窓を構成する部材が窓ガラス、シールおよび若干の金物(例えば、押し縁等)だけとなるので、部材点数を少なくすることが可能となり、ひいては、工期短縮および工費削減を図ることが可能となる。また、前記空間に、非構造材である外装材(軽量気泡コンクリート板や押出成形セメント板など)を取り付けてもよい。なお、前記空間の開口幅が小さい場合には、下地横架材を省略し、前記壁付構造体および前記梁構造体に直に外装材を取り付けることが好ましい。
【0015】
本発明に係る第一のプレキャストコンクリート部材は、耐震壁用の壁PCa部と、前記壁PCa部の上側に一体成形された梁PCa部と、前記壁PCa部の両側に一体成形された一対の柱PCa部と、前記梁PCa部の両側に一体成形された一対のパネルゾーン用残存型枠と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る第二のプレキャストコンクリート部材は、耐震壁用の壁PCa部と、前記壁PCa部の上側に一体に形成された梁PCa部と、前記壁PCa部の両側に一体成形された一対の柱用残存型枠と、前記壁PCa部の両側に配置された一対の柱用鉄筋籠と、前記梁PCa部の両側に一体成形された一対のパネルゾーン用残存型枠と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るプレキャストコンクリート部材によれば、耐震壁に加えて、耐震壁の上側に配置される梁がプレキャスト化されており、さらには、パネルゾーン用残存型枠が付設されているので、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能となる。
【0018】
本発明に係る第三のプレキャストコンクリート部材は、耐震壁用の壁PCa部と、前記壁PCa部の上側に先組みされた梁主筋と、前記壁PCa部の両側に先組みされた柱主筋と、を有することを特徴とする。このプレキャストコンクリート部材によれば、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るコンクリート造架構によれば、構築作業の効率化を図ることが可能となる。
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材によれば、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るコンクリート造架構の正面図である。
【図2】(a)は図1のX1−X1線断面図、(b)は図1のX2−X2線断面図、(c)は図1のY1−Y1線断面図である。
【図3】壁付構造体用のプレキャストコンクリート部材を背面側から見たときの斜視図である。
【図4】壁付構造体用のプレキャストコンクリート部材の配筋図であって、(a)は背面図、(b)は(a)のY2−Y2線断面図、(c)は(a)のY3−Y3線断面図である。
【図5】(a)は梁構造体用のプレキャストコンクリート部材を背面側から見たときの斜視図である。(b)〜(d)は梁構造体用のプレキャストコンクリート部材の配筋図であって、(b)は背面図、(c)は(b)のY4−Y4線断面図、(d)は(b)のX3−X3線断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るコンクリート造架構の構築手順を示す平面図である。
【図7】図6に続く手順を示す背面図である。
【図8】(a)〜(c)は図7に続く手順を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は図8に続く手順を示す断面図である。
【図10】図9に続く手順を示す背面図である。
【図11】図10に続く手順を示す背面図である。
【図12】(a)〜(c)は、屋上構造体を示す断面図である。
【図13】壁付構造体用のプレキャストコンクリート部材の変形例を背面側から見たときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係るコンクリート造架構は、多層階建ての建物に適用されるものであり、図1に示すように、下階および上階のそれぞれにおいて横方向に間隔をあけて並設された複数の壁付構造体A,A,…と、横方向に隣り合う壁付構造体A,Aを繋ぐ梁構造体B,B,…と、を備えている。本実施形態のコンクリート造架構は、建物の外周に形成されており、かつ、建物の外装(外壁)を兼ねている。
【0022】
コンクリート造架構が適用される建物の用途に制限はないが、大きな窓開口を必要としないIT・通信施設(データセンターなど)や工場等の生産施設・倉庫等に好適である。なお、以下の説明においては、屋外側の側面を「正面」、屋内側の側面を「背面」と称する。
【0023】
壁付構造体A,A,…は、正面視した際に市松模様状のファサードとなるよう、千鳥状に配置されている。横方向に隣り合う壁付構造体A,Aの間には、窓開口となる空間Vが設けられている。上階の壁付構造体Aは、下階の壁付構造体Aの斜め上方に配置されていて、下階の梁構造体Bを跨いでいる。
【0024】
壁付構造体Aは、耐震壁1と、耐震壁1の上側に形成された梁2と、耐震壁1の両側に形成された一対の柱3,3と、梁2の両側に形成された一対のパネルゾーン4,4とを備えている。なお、図1中の破線は、各部の境界を示す仮想線である。壁付構造体Aは、鉄筋コンクリート構造であり、本実施形態では、図2中のハッチングを付した部分がプレキャスト化されている。
【0025】
なお、図2において、ドット模様を付した部分は、場所打ちコンクリートにて形成された部分である。また、図2中の破線は、各部の境界を示す仮想線である。
【0026】
耐震壁1は、図2の(a)に示すように、所謂フルプレキャストであり、その躯体部分の全部がプレキャスト化されている。耐震壁1の幅寸法は、壁付構造体Aの幅寸法の1/3〜1/2に設定されている。
【0027】
耐震壁1には壁縦筋1aと壁横筋1bとが配筋されている。壁縦筋1aおよび壁横筋1bは、耐震壁1の正面側および背面側のそれぞれにおいて格子状に組み合わされている。壁横筋1bは、横方向に沿って配筋されていて、壁横筋1bの両端部は、柱3,3のコンクリートに定着されている。壁縦筋1aは、上下方向に沿って配筋されている。図2の(c)に示すように、壁縦筋1aの上端部(定着部)は、L字状に折り曲げられており、梁2のコンクリートに定着されている。壁縦筋1aの下端部は、L字状の定着筋1cに連結されている。定着筋1cは、鉄筋をL字状に折り曲げて形成したものであり、鉄筋継手用のスリーブ1dを介して壁縦筋1aの下端部と連結されている。
【0028】
梁2は、所謂ハーフプレキャストであり、その躯体部分の一部がプレキャスト化されている。梁2は、耐震壁1の壁厚よりも大きな梁幅を有し、耐震壁1から張り出している。なお、梁2は、壁内梁(梁幅が耐震壁1の壁厚と同じ)としてもよい。本実施形態では、梁2の躯体部分のうち、耐震壁1の直上に位置する部分をプレキャストコンクリートにて形成し、耐震壁1の背面よりも室内側に張り出した部分を場所打ちコンクリートにて形成している。なお、図示は省略するが、梁2には、床スラブや小梁が接続される。
【0029】
梁2には、上下二段に並設された複数の梁主筋2a,2a…と、これらを取り囲むスターラップ(図2では図示略)とが配筋されている。図2の(b)に示すように、梁主筋2aは、横方向に沿って配筋されていて、梁主筋2aの両端部は、パネルゾーン4,4に延出している。
【0030】
柱3は、図2の(a)に示すように、フルプレキャストであり、その躯体部分の全部がプレキャスト化されている。柱3の断面形状は、矩形を呈しており、柱3の正面は、耐震壁1の正面と面一になっている。本実施形態では、柱3の幅寸法を、耐震壁1の幅寸法の1/2以上、1以下とし、柱3の奥行き寸法を、耐震壁3の奥行き(厚さ)寸法と同じにしている。なお、本実施形態では、柱3を壁内柱(柱の奥行き寸法が耐震壁1の壁厚と同じ)としたが、柱3の奥行き寸法を耐震壁1の壁厚よりも大きくしても差し支えない。
【0031】
柱3には、柱主筋3aとフープ筋(図2では図示略)とが配筋されている。柱主筋3aは、上下方向に沿って配筋されている。
【0032】
パネルゾーン4は、図2の(b)に示すように、その躯体部分(梁主筋2a,5aと柱主筋3aが配筋された部分)の全部が場所打ちコンクリートからなり、正面側の表層部のみが残存型枠A4としてプレキャスト化されている。なお、図示は省略するが、パネルゾーン4には、床スラブや大梁が接続される。
【0033】
梁構造体Bは、図1に示すように、横方向に隣り合う壁付構造体A,Aの梁2,2の間に配置されている。壁付構造体Aの梁2と梁構造体Bとを交互に連ねることにより、境界梁(外周梁)となる。
【0034】
梁構造体Bは、図2の(b)に示すように、所謂ハーフプレキャストであり、その躯体部分の一部がプレキャスト化されている。梁構造体Bは、図2の(c)に示すように、耐震壁1の壁厚よりも大きな梁幅を有し、耐震壁1から張り出している。なお、図示は省略するが、梁構造体Bの梁幅を耐震壁1の壁厚と同じにしてもよい。本実施形態では、梁構造体Bの躯体部分のうち、耐震壁1の直下に位置する部分をプレキャストコンクリートにて形成し、耐震壁1の背面よりも室内側に張り出した部分を場所打ちコンクリートにて形成している。なお、図示は省略するが、梁構造体Bには、床スラブや小梁が接続される。
【0035】
梁構造体Bには、梁主筋5aのほか、スターラップやトラス筋(図2では図示略)が配筋されている。梁主筋5aは、図2の(a)に示すように、横方向に沿って配筋されている。梁主筋5aの両端部は、パネルゾーン4,4に延出していて、パネルゾーン4,4内において梁2の梁主筋2aと連結されている。
【0036】
なお、本実施形態では、機械式継手であるスリーブ2dを介して梁主筋2a,5aを連結しているが、継手形式を限定する趣旨ではない。機械式継手に代えて、重ね継手、ガス圧接継手、溶接継手などを用いても勿論差し支えない。また、梁主筋2a,5aを連結せず、各々をパネルゾーン4に定着してもよい。梁主筋2a,5aを連結しない場合には、梁主筋2a,5aの端部に定着金物を装着するか、あるいは、梁主筋2a,5aの端部を折り曲げて定着長を大きくすることが好ましい。
【0037】
壁付構造体Aは、図3および図4に示すプレキャストコンクリート部材A’(以下「第一プレキャスト部材A’」という。)を利用して形成し、梁構造体Bは、図5に示すプレキャストコンクリート部材B’(以下「第二プレキャスト部材B’」という。)を利用して形成する。
【0038】
第一プレキャスト部材A’は、壁PCa部A1と、梁PCa部A2と、一対の柱PCa部A3,A3と、一対のパネルゾーン用残存型枠A4,A4とを備えている。壁PCa部A1、梁PCa部A2、柱PCa部A3,A3およびパネルゾーン用残存型枠A4,A4は、一体成形されている。第一プレキャスト部材A’の正面側のコンクリート面は、外装面(化粧面)となる。
【0039】
壁PCa部A1は、耐震壁1(図1,2参照)となる部分である。図4の(a)および(b)に示すように、壁PCa部A1には、壁縦筋1aおよび壁横筋1bが配筋されている。また、壁PCa部A1の下端部には、鉄筋継手用のスリーブ1dが埋設されており、さらには、スリーブ1dに至る充填孔および空気抜き孔が形成されている。壁縦筋1aの下端部は、スリーブ1dに接続されている。壁縦筋1aの上端部(定着部)は、梁PCa部A2内で折れ曲がり、梁PCa部A2の背面から突出している。
【0040】
梁PCa部A2は、梁2(図1,2参照)の躯体部分の一部となる部分であり、壁PCa部A1の上側に形成されている。梁PCa部A2には、梁主筋2aおよびスターラップ2bに加えて、壁縦筋1aの上端部(定着部)、トラス筋4a(図4の(b)参照)などが配筋されている。
【0041】
図4の(b)に示すように、梁PCa部A2の正面側(図4の(b)においては左側)のコンクリート面は、壁PCa部A1の正面側のコンクリート面よりも僅かに突出している。梁PCa部A2の背面側(図4の(b)においては右側)のコンクリート面は、壁PCa部A1の背面側のコンクリート面と面一になっている。図3にも示すように、梁PCa部A2の背面側のコンクリート面からは、壁縦筋1aの定着部とスターラップ2bとが突出している。また、梁PCa部A2のコンクリート端面からは、梁主筋2aが突出している。
【0042】
梁PCa部A2のコンクリート上面には、窓嵌め溝2eが形成されている。窓嵌め溝2eには、図示せぬ窓ガラスの下縁部が嵌め込まれる。
【0043】
柱PCa部A3は、柱3(図1,2参照)となる部分であり、壁PCa部A1の両側に形成されている。柱PCa部A3には、図4の(a)および(c)に示すように、柱主筋3aおよびフープ筋3bが配筋されている。また、柱PCa部A3の下端部には、鉄筋継手用のスリーブ3dが埋設されており、さらには、スリーブ3dに至る充填孔および空気抜き孔が形成されている。スリーブ3dには、柱主筋3aの下端部は接続されている。図3にも示すように、柱PCa部A3のコンクリート上端面からは、柱主筋3aが突出している。柱主筋3aの上端部は、パネルゾーン用残存型枠A4の上端面よりも上方にまで延出している(図4の(c)参照)。なお、柱主筋3aの上端部は、上階の第一プレキャスト部材A’のスリーブ3dに挿入される。
【0044】
柱PCa部A3のコンクリート側面には、図3に示すように、窓嵌め溝3eが形成されている。窓嵌め溝3eには、図示せぬ窓ガラスの側縁部が嵌め込まれる。
【0045】
パネルゾーン用残存型枠A4は、パネルゾーン4(図1,2参照)に場所打ちコンクリートを打設する際の型枠として利用され、コンクリート硬化後においてはそのまま残置される。パネルゾーン用残存型枠A4の正面側のコンクリート面は、外装面(化粧面)となる。本実施形態のパネルゾーン用残存型枠A4は、板状を呈していて、梁PCa部A2の両側に形成されている。パネルゾーン用残存型枠A4の一方の側縁部は、梁PCa部A2の正面側のコンクリート表層部に繋がっており、パネルゾーン用残存型枠A4の下縁部は、柱PCa部A3の正面側のコンクリート表層部に繋がっている。図4の(c)に示すように、パネルゾーン用残存型枠A4には、トラス筋4aが配筋されている。トラス筋4aの一部は、パネルゾーン用残存型枠A4の背面側のコンクリート面から突出している。トラス筋4aは、左右のパネルゾーン4,4で共通であり、トラス筋4aの中央部は、梁2の正面側の表層部に埋設されている(図4の(b)参照)。
【0046】
図5に示す第二プレキャスト部材B’は、梁構造体Bの躯体部分の一部となる部分である。第二プレキャスト部材B’には、梁主筋5aおよびスターラップ5bに加えて、トラス筋5c(図5の(c)および(d)参照)、定着筋1cなどが配筋されている。スターラップ5bは、複数の梁主筋5a,5a…を取り囲むように配筋されている。図5の(c)および(d)に示すように、トラス筋5cは、梁構造体Bの正面側の表層部に配筋されている。
【0047】
第二プレキャスト部材B’の背面側のコンクリート面からは、定着筋1cの水平部とスターラップ5bとが突出しており、第二プレキャスト部材B’の上面からは、定着筋1cの鉛直部が突出している。また、第二プレキャスト部材B’のコンクリート端面からは、梁主筋5aが突出している。
【0048】
第二プレキャスト部材B’の下面には、図5の(a)および(b)に示すように、窓嵌め溝5eが形成されている。窓嵌め溝5eには、図示せぬ窓ガラスの上縁部が嵌め込まれる。
【0049】
次に、本実施形態に係るコンクリート造架構の構築方法を説明する。なお、以下に示す建物は、広い室内空間を確保できる片コアタイプの建物である。
図6に示すように、まず、コア部分Eを除く建物の外周に沿って複数の第一プレキャスト部材A’,A’,…を設置する。第一プレキャスト部材A’,A’,…は、横方向に間隔をあけて並設する。
【0050】
続いて、図7に示すように、横方向に隣り合う第一プレキャスト部材A’,A’の間に、第二プレキャスト部材B’を設置し、パネルゾーン用残存型枠A4の前方で梁主筋2a,5aを突き合わせ、スリーブ2dを介して連結する。図7中の符号Jは、梁主筋2a,5aの継手位置を示すものである。なお、第二プレキャスト部材B’は、図示せぬ支保工で仮支持する。
【0051】
続いて、図8の(a)〜(c)に示すように、梁PCa部A2に隣接する領域、パネルゾーン用残存型枠A4の前方の領域(パネルゾーン4となる領域)および第二プレキャスト部材B’に隣接する領域に、型枠K1〜K3を配置する。その後、梁PCa部A2の正面側のコンクリート面と型枠K1で囲まれた領域、パネルゾーン用残存型枠A4と型枠K2とで囲まれた領域および第二プレキャスト部材B’の正面側のコンクリート面と型枠K3とで囲まれた領域に場所打ちコンクリートを打設する。なお、場所打ちコンクリート内に埋設される梁主筋は、第一プレキャスト部材A’および第二プレキャスト部材B’に予め取り付けておく「先組み」としてもよいし、現場で配筋してもよい。
【0052】
而して場所打ちコンクリートを養生すると、図9の(a)〜(c)に示すように、下階の壁付構造体Aおよび梁構造体Bのうちの場所打ちコンクリート部分(梁2の躯体部分の一部,パネルゾーン4の躯体部分(残存型枠を除く部分)、梁構造体Bの躯体部分の一部)が形成され、下階の壁付構造体Aおよび梁構造体Bが完成する。なお、壁付構造体Aおよび梁構造体Bに接続される床スラブや小梁・大梁(図示略)を場所打ちコンクリートにて形成する場合には、図8の工程においてコンクリート打設を行えばよい。
【0053】
下階の壁付構造体A,A,…および梁構造体B,B,…が形成されたら、図10に示すように、下階の壁付構造体A,A,…および梁構造体B,B,…の上に、上階の第一プレキャスト部材A’,A’,…を設置する。上階の第一プレキャスト部材A’,A’,…も、横方向に間隔をあけて並設するが、正面視した際に市松模様状のファサードとなるよう、各第一プレキャスト部材A’は、下階の空間Vを跨ぐように配置する。
【0054】
より具体的には、下階の梁構造体Bのうちのプレキャスト化された部分(=第二プレキャスト部材B’)に、上階の第一プレキャスト部材A’の壁PCa部A1を載置し、下階の梁構造体Bの左側に位置する壁付構造体Aの上に、左側の柱PCa部A3を位置させ、下階の梁構造体Bの右側に位置する壁付構造体Aの上に、右側の柱PCa部A3を位置させる。
【0055】
上階の第一プレキャスト部材A’を設置する際には、下階の梁構造体Bから突出する定着筋1cを壁PCa部A1のスリーブ1d(図2参照)に挿入し、かつ、下階の壁付構造体Aのパネルゾーン4から突出する柱主筋3aを柱PCa部A3のスリーブ3d(図2参照)に挿入する。
【0056】
その後、下階の梁構造体Bと上階の壁PCa部A1との間およびスリーブ1d(図2参照)の内部をグラウト等の充填材で満たすと、下階の梁構造体Bと上階の壁PCa部A1とが構造的に一体となり、下階の壁付構造体Aのパネルゾーン4と上階の柱PCa部A3との間およびスリーブ3d(図2参照)の内部をグラウト等の充填材で満たすと、下階の壁付構造体Aと上階の柱PCa部A3とが構造的に一体となる。
【0057】
次に、上階において横方向に隣り合う第一プレキャスト部材A’,A’の間に、第二プレキャスト部材B’を設置し、梁主筋2a,5aを連結する(図7参照)。その後、図8の場合と同じように型枠を設置し、場所打ちコンクリートを打設すると、図11に示すように、上階の壁付構造体Aおよび梁構造体Bが形成される。
【0058】
上記のような手順を適宜繰り返すと、多層階建の建物に対応したコンクリート造架構が得られる。
【0059】
なお、図示は省略するが、壁付構造体A,Aの間の空間Vには、サッシレス窓を形成する。サッシレス窓用の窓ガラスは、壁付構造体用PCa部材A’の窓嵌め溝2e,3e(図3参照)および梁構造体用PCa部材B’の窓嵌め溝5e(図5参照)に嵌め込む。サッシレス窓であれば、窓を構成する部材が窓ガラス、シールおよび若干の金物(例えば、押し縁等)だけとなるので、部材点数を少なくすることが可能となり、ひいては、工期短縮および工費削減を図ることが可能となる。
【0060】
また、図示は省略するが、空間Vに、非構造材である外装材(軽量気泡コンクリート板や押出成形セメント板など)を取り付けてもよい。なお、下地横架材は省略し、壁付構造体Aおよび梁構造体Bに直に外装材を取り付ける。
【0061】
増築が予定されている場合には、図12に示すように、建物の屋上部分に、パラペットを兼ねる屋上構造体Cを設ける。屋上構造体Cは、鉄筋コンクリート構造であり、増築階の耐震壁および柱の一部として機能し得るよう、柱主筋3a、壁縦筋、壁横筋(図示略)などが配筋されている。屋上構造体Cの壁縦筋の下端部は、壁付構造体Aまたは梁構造体B(図視略)に定着されており、屋上構造体Cの柱主筋3aは、壁付構造体Aの柱主筋と連結されている。
【0062】
図12の(a)および(b)に示すように、屋上構造体Cの柱主筋3aや壁縦筋(図示略)は、屋上構造体Cの上面から突出させておくとよい。柱主筋3aおよび壁縦筋は、一本ずつキャップ6aで覆うか(図12の(a)参照)、あるいは、外周方向に連続するカバー6bで覆うとよい(図12の(b)参照)。ちなみに、図示のカバー6bは、笠木を兼ねている。また、図12の(c)に示すように、屋上構造体Cに鉄筋継手用のスリーブ6cを埋設しておいてもよい。スリーブ6cは、例えば、笠木を兼ねるカバー6dで覆うとよい。
【0063】
以上説明した本実施形態に係るコンクリート造架構によれば、横方向に隣り合う壁付構造体A,Aの間に間隔を設けているので、縦横に隙間無く配置する場合に比べて、壁付構造体Aの素となる第一プレキャスト部材A’をスムーズに建て込むことが可能となる。
【0064】
また、本実施形態に係るコンクリート造架構においては、梁構造体Bのうちのプレキャスト化された部分(すなわち、第二プレキャスト部材B’)に、上階用の壁付構造体Aの耐震壁1(第一プレキャスト部材A’の壁PCa部A1)を載置しているので(図1参照)、複数の耐震壁1,1,…が立面視千鳥状(市松状)に配置されるようになり、その結果、斬新なファサードを形成することができる。
【0065】
また、本実施形態では、耐震壁1の幅寸法を壁付構造体Aの幅寸法の1/3〜1/2に設定し、柱3,3間の離隔距離を小さくしたので、梁2および梁構造体Bに作用する曲げモーメントが小さくなり、ひいては、梁主筋2a,5aの鉄筋量を削減すること可能となり、あるいは、梁2および梁構造体Bのスリム化を図ることが可能となる。
【0066】
また、本実施形態では、パネルゾーン4を場所打ちコンクリートによって形成し、梁2の梁主筋2aと梁構造体Bの梁主筋5aとの継手位置Jをパネルゾーン4に設けているので(図7参照)、鉄筋継手用の空間を別途確保する必要がない。パネルゾーンを鉄筋継手用の空間として利用すれば、場所打ちコンクリートの打設範囲が狭まるので、壁付構造体Aあるいは梁構造体Bのプレキャスト化率を高めることが可能となる。
【0067】
また、建物の屋上部分に、パラペットを兼ねる屋上構造体Cを配置しているので(図12参照)、供用中の建物の屋上部分において大規模な解体作業等を行わずとも、増築用の壁等を継ぎ足すことができ、ひいては、効率良く建物を増築することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、壁付構造体Aのうち、耐震壁1の全部、梁2の一部および柱3の全部をプレキャスト化し、さらに、パネルゾーン用残存型枠A4までプレキャスト化したので、コンクリート造架構を効率良く構築することが可能となる。
【0069】
なお、例えば、大型の揚重機械を使用できない場合や揚重機械の作業半径が大きい場合(重量物を吊持できないような場合)には、図13に示す第一プレキャスト部材D’を使0用し、壁付構造体のプレキャスト化率を低くすればよい。
【0070】
第一プレキャスト部材D’は、図1に示す柱3およびパネルゾーン4を場所打ちコンクリートにて形成する場合に使用されるプレキャスト部材であり、耐震壁用の壁PCa部D1と、壁PCa部D1の上側に形成された梁PCa部D2と、壁PCa部D1の両側に形成された柱用残存型枠D3と、梁PCa部D2の両側に形成されたパネルゾーン用残存型枠D4と、壁PCa部D1の両側に配置された一対の柱用鉄筋籠D5,D5とを備えている。壁PCa部D1、梁PCa部D2、柱用残存型枠D3およびパネルゾーン用残存型枠D4は、一体成形されている。
【0071】
壁PCa部D1、梁PCa部D2およびパネルゾーン用残存型枠D4の構成は、それぞれ、前記した壁PCa部A1、梁PCa部A2およびパネルゾーン用残存型枠A4の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0072】
柱用残存型枠D3は、柱3(図1参照)に場所打ちコンクリートを打設する際の型枠として利用され、コンクリート硬化後もそのまま残置される。柱用残存型枠D3のコンクリート面は、外装面(化粧面)となる。本実施形態の柱用残存型枠D3は、板状を呈していて、壁PCa部D1の両側に形成されている。柱用残存型枠D3の一方の側縁部は、壁PCa部D1の正面側のコンクリート表層部に繋がっており、柱用残存型枠D3の上縁部は、パネルゾーン用残存型枠D4の下縁部に繋がっている。柱用残存型枠D3の内側のコンクリート面からは、図示は省略するが、トラス筋の一部が突出している。なお、トラス筋に代えて、定着筋やアンカー用インサート等を用いてもよい。
【0073】
柱用鉄筋籠D5は、柱3の柱主筋3a,3a,…およびフープ筋3b,3b,…を予め組み立てたものである。柱用鉄筋籠D5は、柱用残存型枠D3から突出したトラス筋(図示略)に取り付けられている。壁PCa部D1の両側に柱主筋3aを先組みしておけば、現場での配筋作業が容易になる。
【0074】
プレキャスト化率の高い第一プレキャスト部材A’(図3参照)だけでなく、プレキャスト化率の低い第一プレキャスト部材D’を使用すれば、揚重機械の選定作業や配置計画等が容易になり、ひいては、仮設工事の効率化を図ることができる。
【0075】
なお、図示は省略するが、耐震壁1の躯体部分の一部をプレキャスト化し、残部を場所打ちコンクリートとしてもよいし、耐震壁1の表層部のみをプレキャスト化し、耐震壁1の躯体部分の全部を現場打ちコンクリートとしてもよい。
【0076】
プレキャスト化率を低下させるためには、柱用残存型枠D3やパネルゾーン用残存型枠D4を省略すればよい。柱用残存型枠D3を省略した場合であっても、柱主筋3aは、壁横筋などを利用して壁PCa部D1の両側に先組みしておくことが好ましい。また、梁2の表層部のみをプレキャスト化し、梁2の躯体部分の全部を現場打ちコンクリートとするか、あるいは、梁2の全部を場所打ちコンクリートとすることでも、プレキャスト化率を下げることができる。なお、梁主筋2aは、壁縦筋などを利用して壁PCa部D1の上側に先組みしておくことが好ましい。
【0077】
なお、前記した実施形態では、梁構造体Bの一部をプレキャスト化し、残部を場所打ちコンクリートで形成したが、梁構造体Bの全部をプレキャスト化してもよい。また、前記した実施形態では、梁構造体Bの躯体部分をプレキャスト化した場合を例示したが、梁構造体の躯体部分の全部を場所打ちコンクリートとし、残存型枠のみをプレキャスト化してもよい。
【符号の説明】
【0078】
A 壁付構造体
1 耐震壁
2 梁
2a 梁主筋
3 柱
4 パネルゾーン
A’ 第一プレキャスト部材(プレキャストコンクリート部材)
A1 壁PCa部
A2 梁PCa部
A3 柱PCa部
A4 パネルゾーン用残存型枠
B 梁構造体
5a 梁主筋
B’ 第二プレキャスト部材
J 継手位置
V 空間
【0079】
D’ 第一プレキャスト部材(プレキャストコンクリート部材)
D1 壁PCa部
D2 梁PCa部
D3 柱用残存型枠
D4 パネルゾーン用残存型枠
D5 柱用鉄筋籠
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階および上階のそれぞれにおいて横方向に間隔をあけて並設された複数の壁付構造体と、
横方向に隣り合う前記壁付構造体同士を繋ぐ梁構造体と、を備えるコンクリート造架構であって、
前記壁付構造体は、耐震壁と、前記耐震壁の上側に形成された梁と、前記耐震壁の両側に形成された一対の柱と、前記梁の両側に形成されたパネルゾーンとを有し、かつ、少なくとも前記耐震壁の一部および前記梁の一部がプレキャスト化されており、
前記梁構造体は、その少なくとも一部がプレキャスト化されている、ことを特徴とするコンクリート造架構。
【請求項2】
下階の前記壁付構造体同士を繋ぐ前記梁構造体のうちのプレキャスト化された部分に、上階の前記壁付構造体の前記耐震壁が載置されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート造架構。
【請求項3】
前記パネルゾーンが、場所打ちコンクリートによって形成されており、
前記梁構造体の梁主筋が、前記パネルゾーンに定着されている、または、前記梁構造体の梁主筋と前記梁の梁主筋との継手位置が、前記パネルゾーンに設けられている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート造架構。
【請求項4】
前記壁付構造体および前記梁構造体が、建物の外装を兼ねていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコンクリート造架構。
【請求項5】
建物の屋上部分に、パラペットを兼ねる屋上構造体が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のコンクリート造架構。
【請求項6】
耐震壁用の壁PCa部と、
前記壁PCa部の上側に一体成形された梁PCa部と、
前記壁PCa部の両側に一体成形された一対の柱PCa部と、
前記梁PCa部の両側に一体成形された一対のパネルゾーン用残存型枠と、を有することを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項7】
耐震壁用の壁PCa部と、
前記壁PCa部の上側に一体成形された梁PCa部と、
前記壁PCa部の両側に一体成形された一対の柱用残存型枠と、
前記壁PCa部の両側に配置された一対の柱用鉄筋籠と、
前記梁PCa部の両側に一体成形された一対のパネルゾーン用残存型枠と、を有することを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項8】
耐震壁用の壁PCa部と、
前記壁PCa部の上側に先組みされた梁主筋と、
前記壁PCa部の両側に先組みされた柱主筋と、を有することを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項1】
下階および上階のそれぞれにおいて横方向に間隔をあけて並設された複数の壁付構造体と、
横方向に隣り合う前記壁付構造体同士を繋ぐ梁構造体と、を備えるコンクリート造架構であって、
前記壁付構造体は、耐震壁と、前記耐震壁の上側に形成された梁と、前記耐震壁の両側に形成された一対の柱と、前記梁の両側に形成されたパネルゾーンとを有し、かつ、少なくとも前記耐震壁の一部および前記梁の一部がプレキャスト化されており、
前記梁構造体は、その少なくとも一部がプレキャスト化されている、ことを特徴とするコンクリート造架構。
【請求項2】
下階の前記壁付構造体同士を繋ぐ前記梁構造体のうちのプレキャスト化された部分に、上階の前記壁付構造体の前記耐震壁が載置されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート造架構。
【請求項3】
前記パネルゾーンが、場所打ちコンクリートによって形成されており、
前記梁構造体の梁主筋が、前記パネルゾーンに定着されている、または、前記梁構造体の梁主筋と前記梁の梁主筋との継手位置が、前記パネルゾーンに設けられている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート造架構。
【請求項4】
前記壁付構造体および前記梁構造体が、建物の外装を兼ねていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコンクリート造架構。
【請求項5】
建物の屋上部分に、パラペットを兼ねる屋上構造体が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のコンクリート造架構。
【請求項6】
耐震壁用の壁PCa部と、
前記壁PCa部の上側に一体成形された梁PCa部と、
前記壁PCa部の両側に一体成形された一対の柱PCa部と、
前記梁PCa部の両側に一体成形された一対のパネルゾーン用残存型枠と、を有することを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項7】
耐震壁用の壁PCa部と、
前記壁PCa部の上側に一体成形された梁PCa部と、
前記壁PCa部の両側に一体成形された一対の柱用残存型枠と、
前記壁PCa部の両側に配置された一対の柱用鉄筋籠と、
前記梁PCa部の両側に一体成形された一対のパネルゾーン用残存型枠と、を有することを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項8】
耐震壁用の壁PCa部と、
前記壁PCa部の上側に先組みされた梁主筋と、
前記壁PCa部の両側に先組みされた柱主筋と、を有することを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−14990(P2013−14990A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150111(P2011−150111)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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