説明

コンタクトピン及び電気部品用ソケット

【課題】第1の接触部材を傾けることができると共に、コイルスプリングが噛み込むこともないコンタクトピン及び電気部品用ソケットを提供する。
【解決手段】コンタクトピン17において、ICパッケージに接触される導電材料からなる第1の接触部材18と、第1の接触部材が移動可能に収容される導電材料からなる筒体20と、筒体内に収容され、第1の接触部材をICパッケージ側に付勢するコイルスプリング21とを有し、第1の接触部材は、コイルスプリングの端面21aが当接される端面部18cが、コイルスプリング側に突出する第1面部18dと、第1面部に対してコイルスプリングから離間する側に位置する第2面部18eとを備え、第1の接触部材に筒体内に押し込む方向の外力が作用していない状態では、第1面部に対しコイルスプリングの端面が当接し、第2面部に対しコイルスプリングの端面が離間するように構成されているコンタクトピン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1の電気部品と第2の電気部品とを電気的に接続するコンタクトピン及び、これらコンタクトピンを備え、配線基板上に配設され、半導体装置(以下「ICパッケージ」という)等の電気部品の試験等を行うため、この電気部品を収容する電気部品用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種のコンタクトピンとしては、例えば概略的に示す図6に示すようなものがある。このコンタクトピン1は、図示省略のICパッケージの端子に接触される導電材料からなる第1の接触部材2と、この第1の接触部材2が上下動自在に収容される導電材料からなる筒体3と、この筒体3内に収容され、第1の接触部材2をICパッケージ側に付勢するコイルスプリング4とを有している。この第1の接触部材2は、コイルスプリング4の端面が当接する当接面2aが傾斜して形成されている。
【0003】
このようなコンタクトピン1が図示省略のICソケットに多数配設され、このICソケットが配線基板上に配設された状態で、その第1の接触部材2の上端部にICパッケージの端子である球状端子が接触され、このICパッケージが下方に押される。
【0004】
これにより、コイルスプリング4の付勢力に抗して、第1の接触部材2が下降され、当接面2aが傾斜しているため、この第1の接触部材2が傾くことにより、筒体3に接触されて良好な導通状態とされることとなる。
【0005】
なお、この種のものとしては、例えば特許文献1に記載されたようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−172581号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のものにあっては、図6に示すように、第1の接触部材2が下降して傾くと、コイルスプリング4の部位4aが、第1の接触部材2と筒体3との間に噛み込まれる可能性があり、第1の接触部材2の動作が不良を起こす虞がある。
【0008】
そこで、この発明は、第1の接触部材を傾けて導電性を確保することができると共に、コイルスプリングが第1の接触部材と筒体の内周面との間に噛み込むこともないコンタクトピン及び電気部品用ソケットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を達成するために、この発明は、第1の電気部品と第2の電気部品とを電気的に接続するコンタクトピンにおいて、前記第1の電気部品に接触される導電材料からなる第1の接触部材と、該第1の接触部材が移動可能に収容される導電材料からなる筒体と、該筒体内に収容され、前記第1の接触部材を前記第1の電気部品側に付勢するコイルスプリングとを有し、前記第1の接触部材は、前記コイルスプリングの端面が当接される端面部が、前記コイルスプリング側に突出する第1面部と、該第1面部に対して前記コイルスプリングから離間する側に位置する第2面部とを備え、前記第1の接触部材に前記筒体内に押し込む方向の外力が作用していない状態では、前記第1面部に対し前記コイルスプリングの端面が当接し、前記第2面部に対し前記コイルスプリングの端面が離間するように構成されているコンタクトピンとしたことを特徴とする。
【0010】
他の特徴は、前記筒体の一端側に、前記第1の接触部材が移動可能に収容され、前記筒体の他端側に、前記第2の電気部品に接触される導電材料からなる第2の接触部材が移動可能に収容され、前記第1の接触部材と前記第2の接触部材との間に、前記コイルスプリングが介在し、前記第2の接触部材は、前記コイルスプリングの端面が当接される端面部が、前記コイルスプリング側に突出する第1面部と、該第1面部に対して前記コイルスプリングから離間する側に位置する第2面部とを備え、前記第2の接触部材に前記筒体内に押し込む方向の外力が作用していない状態では、前記第1面部に対し前記コイルスプリングの端面が当接し、前記第2面部に対し前記コイルスプリングの端面が離間するように構成されていることにある。
【0011】
他の特徴は、前記第1面部は、傾斜していることにある。
【0012】
他の特徴は、前記第2の電気部品である配線基板上に配設され、前記第1の電気部品が収容されるソケット本体に、請求項1乃至4の何れか一つに記載のコンタクトピンが複数配設された電気部品用ソケットとしたことにある。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、第1の接触部材の端面部を段差形状に形成することにより、第1の接触部材を傾けて筒体との導通性を向上させることができると共に、コイルスプリングの一部が、第1の接触部材と筒体との間に噛み込むことを防止することができる。
【0014】
他の特徴によれば、第2の接触部材を設け、この第2の接触部材の端面部を段差形状に形成することにより、第2の接触部材を傾けて筒体との導通性を向上させることができると共に、コイルスプリングの一部が、第2の接触部材と筒体との間に噛み込むことを防止することができる。
【0015】
他の特徴によれば、第1面部を傾斜させることにより、各接触部材をより傾け易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に係るICソケットの一部断面図で、配線基板への取付前の状態を示す図である。
【図2】同実施の形態1に係るICソケットの一部断面図で、配線基板への取付後の状態を示す図である。
【図3】同実施の形態1に係るICソケットの一部断面図で、配線基板への取付後でICパッケージを下方へ押圧した状態を示す図である。
【図4】同実施の形態1に係るコンタクトピンの第1の接触部材を下方から見た図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るコンタクトピンの上部側の概略を示す断面図である。
【図6】従来例を示す図5に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0018】
図1乃至図4には、この発明の実施の形態1を示す。
【0019】
まず構成を説明すると、図1中符号11は、「電気部品用ソケット」としてのICソケットで、このICソケット11は、「第2の電気部品」である配線基板P上に配設されるようになっており、「第1の電気部品」であるICパッケージ12等のバーンイン試験等を行うために、このICパッケージ12の「端子」としての球状端子12bとその配線基板Pとの電気的接続を図るものである。
【0020】
このICパッケージ12は、詳細は図示していないが、平面視で方形状のパッケージ本体12aを有し、このパッケージ本体12aの下面に球状端子12bがマトリックス状に複数突出して形成されている(図3参照)。
【0021】
一方、ICソケット11は、図2等に示すように、配線基板P上に固定され、ICパッケージ12が収容されるソケット本体14と、このソケット本体14に開閉自在に設けられ、ICパッケージ12を押圧する図示省略のカバー部材と、このカバー部材の閉状態でロックする図示省略のロック機構とを有している。さらに、このソケット本体14の上側には、ICパッケージ12を載置する図示省略のフローティングプレートが設けられている。
【0022】
より詳しくは、そのソケット本体14は、配線基板P上に固定され、合成樹脂製で絶縁性を有する下プレート15と、この下プレート15の上側に配設された合成樹脂製で絶縁性を有する上プレート16とを有している。
【0023】
これら両プレート15,16の貫通孔15a,16aにより、複数のコンタクトピン17が保持された状態で収容されている。
【0024】
この貫通孔15a,16aは、それぞれ大径部15b,16b及び小径部15c,16cが形成されている。
【0025】
そのコンタクトピン17は、ICパッケージ12に接触される導電材料からなる第1の接触部材18と、配線基板Pに接触される導電材料からなる第2の接触部材19と、その第1の接触部材18が一端側に、第2の接触部材19が他端側に移動可能に収容される導電材料からなる筒体20と、この筒体20内に収容され、第1の接触部材18及び第2の接触部材19の間に介在するコイルスプリング21とを有している。
【0026】
その筒体20は、導電材料にて円筒形状に形成され、両プレート15,16の大径部15b,16b内に収容される径に形成され、両端部20aが縮径されている。
【0027】
このコイルスプリング21により、第1の接触部材18がICパッケージ12側に付勢され、第2の接触部材19が配線基板P側に付勢されるようになっている。
【0028】
その第1の接触部材18は、筒体20内に収容される大径の収容部18aと、この収容部18aから上方に突出し、ICパッケージ12の球状端子12bに接触される上側接触部18bとが一体成形されている。この上側接触部18bは、上プレート16の小径部16cに挿通されて上方に突出し、上端部がいわゆる王冠形状に形成され、この上端部18bに図3に示すように球状端子12bが接触されるようになっている。
【0029】
この第1の接触部材18の収容部18aは、コイルスプリング21の端面21aが当接される端面部18cが段差形状に形成されることにより、この端面部18cには、コイルスプリング21側に突出する第1面部18dと、この第1面部18dに対してコイルスプリング21から離間する側(上方)に位置する第2面部18eとを備えている。その第1面部18dは、図4に示すように、弦で切り取った円の一部の形状を呈している。
【0030】
そして、図1に示すように、第1の接触部材18に筒体20内に押し込む方向の外力が作用していない状態では、第1面部18dに対しコイルスプリング21の端面21aが当接し、第2面部18eに対しコイルスプリング21の端面21aが離間するように(図1中、間隙Cが形成されるように)構成されている。
【0031】
また、その第2の接触部材19は、筒体20内に収容される大径の収容部19aと、この収容部19aから下方に突出し、配線基板Pに接触される下側接触部19bとが一体成形されている。この下側接触部19bは、下プレート15の小径部15cに挿通されて下方に突出し、配線基板Pの図示省略の電極部に接触されるようになっている。
【0032】
この第2の接触部材19の収容部19aは、コイルスプリング21の端面21aが当接される端面部19cが段差形状に形成されることにより、この端面部19cには、コイルスプリング21側に突出する第1面部19dと、この第1面部19dに対してコイルスプリング21から離間する側(下方)に位置する第2面部19eとを備えている。この第1面部19dは、図4に示す第1面部18dと同様に、弦で切り取った円の一部の形状を呈している。
【0033】
そして、図1に示すように、第2の接触部材19に筒体20内に押し込む方向の外力が作用していない状態では、第1面部19dに対しコイルスプリング21の端面21aが当接し、第2面部19eに対しコイルスプリング21の端面21aが離間するように(間隙Cが形成されるように)構成されている。
【0034】
次に、かかるICソケット11の使用方法について説明する。
【0035】
まず、ICソケット11の、配線基板Pへの配設前の状態(例えば、搬送時等)では、図1に示すように、第2の接触部材19がコイルスプリング21により付勢されて、この第2の接触部材19の下側接触部19bが下方に突出している。
【0036】
この状態から、ICソケット11の下プレート15が配線基板P上に載置されて配置されると、図2に示すように、第2の接触部材19の下側接触部19bが配線基板Pに当接して、コイルスプリング21の付勢力に抗して上方に押し上げられる。
【0037】
この状態では、第2の接触部材19の端面部19cが段差形状に形成されているため、第1面部19d側(片側)にコイルスプリング21の付勢力が働くことにより、図2に示すように、第2の接触部材19が斜めに傾く。これにより、この第2の接触部材19が筒体20の内周面に確実に接触することにより、導通性能が確保されることとなる。
【0038】
しかも、その端面部19cが所定の高さの段差形状に形成されているため、コイルスプリング21が、従来と異なり、第2の接触部材19の収容部19aと、筒体20の内周面との間に噛み込まれるようなことがない。従って、この第2の接触部材19の動作の安定性を確保することができる。
【0039】
そして、ICパッケージ12が図示省略のフローティングプレート上に収容された状態で、自動機等により図示省略のスプリングの付勢力により下方に押し下げられると、ICパッケージ12の球状端子12bが第1の接触部材18の上側接触部18bに当接して、第1の接触部材18がコイルスプリング21の付勢力に抗して下方に押し下げられる(図3参照)。
【0040】
この状態では、第1の接触部材18の端面部18cが段差形状に形成されているため、第1面部18d側(片側)にコイルスプリング21の付勢力が働くことにより、図3に示すように、第1の接触部材18が斜めに傾く。これにより、この第1の接触部材18が筒体20の内周面に確実に接触することにより、導通性能が確保されることとなる。
【0041】
しかも、その端面部18cが所定の高さの段差形状に形成されているため、コイルスプリング21が、従来と異なり、第1の接触部材18の収容部18aと、筒体20の内周面との間に噛み込まれるようなことがない。従って、この第1の接触部材18の動作の安定性を確保することができる。
【0042】
これにより、コンタクトピン18の両接触部材18,19が筒体20を介し導通され、このコンタクトピン18を介してICパッケージ12と配線基板Pとが電気的に接続され、ICパッケージ12のバーンイン試験等が良好に行われることとなる。
【0043】
また、このような両接触部材18,19の段差形状の端面部18c,19cは、第1面部18d,19d及び第2面部18e,19eが従来と異なり斜めに形成されていないため、比較的容易に形成できる。
[発明の実施の形態2]
【0044】
図5には、この発明の実施の形態2を示す。
【0045】
この実施の形態2は、第1の接触部材18の第1面部18dが傾斜している。
【0046】
このようなものにあっては、第1面部18dが傾斜しているため、コイルスプリング21の付勢力により、この第1の接触部材18が一層傾き易くなり、導通性を確保することができる。
【0047】
他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
なお、上記実施の形態では、この発明のコンタクトピン17をICソケット11に適用したが、これに限らず、他の装置にも適用することができる。また、「電気部品用ソケット」としてICソケット11に、この発明を適用したが、これに限らず、他の装置にも適用できることは勿論である。また、上記実施の形態では、第1の接触部材18及び第2の接触部材19の両方が設けられているが、少なくとも一方のみ設けられているものでも良いし、又、第1の接触部材18及び第2の接触部材19の両方に、第1面部18d,19d及び第2面部18e,19eが形成されているが、何れか一方のみに設けることもできる。
【符号の説明】
【0049】
11 ICソケット(電気部品用ソケット)
12 ICパッケージ(第1の電気部品)
12b 球状端子
14 ソケット本体
17 コンタクトピン
18 第1の接触部材
18c 端面部
18d 第1面部
18e 第2面部
19 第1の接触部材
19c 端面部
19d 第1面部
19e 第2面部
20 筒体
21 コイルスプリング
P 配線基板(第2の電気部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気部品と第2の電気部品とを電気的に接続するコンタクトピンにおいて、
前記第1の電気部品に接触される導電材料からなる第1の接触部材と、
該第1の接触部材が移動可能に収容される導電材料からなる筒体と、
該筒体内に収容され、前記第1の接触部材を前記第1の電気部品側に付勢するコイルスプリングとを有し、
前記第1の接触部材は、前記コイルスプリングの端面が当接される端面部が、前記コイルスプリング側に突出する第1面部と、該第1面部に対して前記コイルスプリングから離間する側に位置する第2面部とを備え、
前記第1の接触部材に前記筒体内に押し込む方向の外力が作用していない状態では、前記第1面部に対し前記コイルスプリングの端面が当接し、前記第2面部に対し前記コイルスプリングの端面が離間するように構成されていることを特徴とするコンタクトピン。
【請求項2】
前記筒体の一端側に、前記第1の接触部材が移動可能に収容され、前記筒体の他端側に、前記第2の電気部品に接触される導電材料からなる第2の接触部材が移動可能に収容され、前記第1の接触部材と前記第2の接触部材との間に、前記コイルスプリングが介在し、
前記第2の接触部材は、前記コイルスプリングの端面が当接される端面部が、前記コイルスプリング側に突出する第1面部と、該第1面部に対して前記コイルスプリングから離間する側に位置する第2面部とを備え、
前記第1の接触部材に前記筒体内に押し込む方向の外力が作用していない状態では、前記第1面部に対し前記コイルスプリングの端面が当接し、前記第2面部に対し前記コイルスプリングの端面が離間するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトピン。
【請求項3】
前記第1面部は、傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンタクトピン。
【請求項4】
前記第2の電気部品である配線基板上に配設され、前記第1の電気部品が収容されるソケット本体に、請求項1乃至3の何れか一つに記載のコンタクトピンが複数配設されたことを特徴とする電気部品用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204283(P2012−204283A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70128(P2011−70128)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】