説明

コンテクスト装置およびプログラム

【課題】ネットワークに散在する様々なコンテクスト情報を有効に活用し、それらのコンテクスト情報に応じた適切なサービスを提供する。
【解決手段】コンテクスト装置は、受信するイベント情報に基づくコンテクスト情報が定められた処理実行条件を満たす場合に、処理実行条件に予め対応付けられたサービス処理を実行し、コンテクスト情報と実行されたサービス処理の実行結果とに基づいて、新たなコンテクスト情報を生成し、他のコンテクスト装置に新たなコンテクスト情報を含むイベント情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定められる処理実行条件の比較対象となるイベント情報をそれぞれ受信する複数のコンテクスト装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、世の中に存在する各種コンピュータ、デバイス、家電、自動車などあらゆる物に基づいた情報ネットワークを形成して、人の生活を支援するユビキタス社会を推進する様々な研究が行われている。このようなユビキタス社会においては、センサやカメラ、携帯電話端末などが感知する実世界における状況(コンテクスト)と、SIPネットワーク、WEB通信ネットワークなどの仮想世界における状況(コンテクスト)との双方の世界のコンテクストをリアルタイムに的確に捉え、それらコンテクストに応じた最適なサービス処理が実行されることで、より快適で安全なユビキタス社会におけるサービス提供が可能となる。
【0003】
このようなコンテクストを的確に把握するためのコンテクストアウェアなサービスを実行する機構として、例えば特許文献1には、センサやデータベース等の各種データに対応するコンテクスト情報を生成し、生成したコンテクスト情報の変化に基づくサービス処理を行うサービスアプリケーションに、必要とされる精度に応じたコンテクスト情報を送信する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2001−216315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコンテクストアウェアなサービスの実行機構は、コンテクストの情報源となるセンサやデータベース等に基づいたコンテクスト情報を、そのコンテクスト情報に基づいたサービス処理を行うサービスアプリケーションが直接的に取得するものであった。すなわち、従来のコンテクストアウェアなサービスは、サービスアプリケーション対コンテクスト情報源の2階層の構成となっており、また、サービスアプリケーションは自己のサービスに必要な全てのコンテクスト情報源を予め特定しておく必要があり、個別の閉じたサービス環境では利用できても、ユビキタスに広がったネットワークに散在する様々なコンテクスト情報源やサービスアプリケーションを有機的に結び付けるものではなかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、ユビキタスに広がったネットワークに散在する様々なコンテクスト情報を有効に活用し、それらのコンテクスト情報に応じた適切なサービスを提供することを可能にするコンテクスト装置、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、予め定められる処理実行条件の比較対象となるイベント情報をそれぞれ受信する複数のコンテクスト装置であって、予め定められる処理実行条件と、受信するイベント情報に基づくコンテクスト情報とを比較して、コンテクスト情報が、処理実行条件を満たすか否かを判定するコンテクスト認識部と、コンテクスト認識部によって、コンテクスト情報が、処理実行条件を満たすと判定された場合に、処理実行条件に予め対応付けられたサービス処理を実行する実行部と、コンテクスト情報と、実行部により実行されたサービス処理の実行結果とに基づいて、新たなコンテクスト情報を生成し、新たなコンテクスト情報を比較対象とする処理実行条件を有する他のコンテクスト装置に、新たなコンテクスト情報を含むイベント情報を送信するコンテクスト伝播部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上述のイベント情報は、イベント情報の強度を示すイベント強度を含み、処理実行条件は、定められたイベント強度の閾値を含み、コンテクスト伝播部は、イベント情報に含まれるイベント強度を、定められた比率で減衰し、減衰したイベント強度が、処理実行条件に含まれるイベント強度の閾値を超える場合に、新たなコンテクスト情報を含むイベント情報を送信することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述の予め定められる処理実行条件は、定められた複数のイベント情報に基づくコンテクスト情報と比較されることを含み、コンテクスト認識部は、定められた複数のイベント情報の全てを受信していない場合に、受信していないイベント情報を取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、予め定められる処理実行条件の比較対象となるイベント情報をそれぞれ受信する複数のコンテクスト装置のコンピュータに、コンテクスト認識部が、予め定められる処理実行条件と、受信するイベント情報に基づくコンテクスト情報とを比較して、コンテクスト情報が、処理実行条件を満たすか否かを判定するステップと、実行部が、コンテクスト認識部によって、コンテクスト情報が、処理実行条件を満たすと判定された場合に、処理実行条件に予め対応付けられたサービス処理を実行するステップと、コンテクスト伝播部が、コンテクスト情報と、実行部により実行されたサービス処理の実行結果とに基づいて、新たなコンテクスト情報を生成し、新たなコンテクスト情報を比較対象とする処理実行条件を有する他のコンテクスト装置に、新たなコンテクスト情報を含むイベント情報を送信するステップとを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、コンテクスト装置は、受信するイベント情報に基づくコンテクスト情報が定められた処理実行条件を満たす場合に、処理実行条件に予め対応付けられたサービス処理を実行し、コンテクスト情報と実行されたサービス処理の実行結果とに基づいて、新たなコンテクスト情報を生成し、他のコンテクスト装置に新たなコンテクスト情報を含むイベント情報を送信するようにしたので、特定のイベント情報に基づいて、直接的に関係付けられていない複数のコンテクスト装置が、連携したサービス処理を実行することが可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、イベント情報は、イベント情報の強度を示すイベント強度を含み、処理実行条件は、定められたイベント強度の閾値を含み、コンテクスト伝播部は、イベント情報に含まれるイベント強度を定められた比率で減衰し、減衰したイベント強度が処理実行条件に含まれるイベント強度の閾値を超える場合に、新たなコンテクスト情報を含むイベント情報を送信するようにしたので、定められた比率で減衰するイベント強度に従って、そのイベントを他のコンテクスト装置に送信するか否かを制御することが可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、予め定められる処理実行条件は、定められた複数のイベント情報に基づくコンテクスト情報と比較されることを含み、定められた複数のイベント情報の全てを受信していない場合に、受信していないイベント情報を取得するようにしたので、複数のイベント情報が処理実行条件として定められる場合に、定められる全てのイベント情報を取得することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるコンテクスト装置100を用いたコンテクストアウェアシステムの概念を示す図である。
図1の(b)に示されるように、本実施形態によるコンテクストアウェアシステムでは、それぞれが他のコンテクスト装置100と接続された複数のコンテクスト装置100(コンテクスト装置100−1〜コンテクスト装置100−13)によって、コンテクスト伝播網200が形成される。コンテクスト伝播網200には、イベント情報を送信する複数のコンテクスト端末300(携帯電話端末300−1、カメラ300−2、センサ300−3、携帯電話端末300−4、ロボット300−5、携帯電話端末300−6等)が接続される。これらのコンテクスト端末300は、自身のコンテクストの変化に従って、自身を監視する定められたコンテクスト装置100にイベント情報を送信することでイベントを通知する。
【0014】
また、コンテクスト伝播網200は、複数のネットワーク400(SIPネットワーク400−1、WEB通信ネットワーク400−2、SIPネットワーク400−3、WEB通信ネットワーク400−4等)に接続されており、コンテクスト伝播網200には、これらのネットワーク400のいずれかからイベント情報が送信されるようにしても良い。このように、コンテクスト伝播網200に接続されたコンテクスト端末300やネットワーク400からコンテクスト伝播網200にイベント情報が送信されると、送信されたイベント情報が波のように減衰しつつコンテクスト伝播網200内に広がり、イベント情報を受信した各コンテクスト装置100が自身のコンテクスト情報を変化させ、対応するサービス処理を行うことで、様々なコンテクスト情報を有効に活用するコンテクストアウェアなサービスが提供される。
【0015】
本実施形態では、コンテクスト伝播網200は、いわゆるPublish/Subscribeモデル(出版/購読型モデル)を採用したIPネットワークによって形成されることとする。Publish/Subscribeモデルは、ソフトウェア開発におけるデザインパターンの一種であるObserverパターンに準ずるモデルであり、出版側と購読側の結合度が低いため動的なネットワークの形成に有効である。Publish/Subscribeネットワークでは、Publisher(出版側)が情報を生成して出版し、ネットワークに公開する。一方、Subscriber(購読側)は、予め情報の配信を受けるPublisherを定めておき、定められたPublisherが出版する情報のみを受信するように制御される。
【0016】
このようにして、互いに動作していないと通信が成立しない一般的な密結合のクライアント/サーバモデルに比べて、Publish/Subscribeネットワークでは、PublisherとSubscriberは、互いの存在を知る必要がなく、互いの状態に関わらず稼動することが可能であるため、疎結合でスケーラビリティの良いネットワークの形成が可能である。
本実施形態では、各コンテクスト装置100は、他のコンテクスト装置100、コンテクスト端末300、ネットワーク400のうち、定められた装置、端末をSubscribe(購読)し、Subscribe先から送信されるイベント情報を受信する。
【0017】
図1の(a)に示されるように、コンテクスト装置100を構成するサービス実行装置110は、自装置内でのみ参照可能なローカル変数とは別に、他の装置から参照可能なグローバル変数を出力し、グローバル変数は、コンテクストを示すコンテクスト情報として他の装置に公開されPublish(出版)される。また、サービス実行装置110は、他の装置から送信されるイベント情報を取得し、取得したイベント情報に基づいて内部状態を変更すると、定められたサービスの起動、制御を行う。
【0018】
図2は、本実施形態におけるコンテクスト伝播網200を構成する複数のコンテクスト装置100の構成例を示すブロック図である。本実施形態におけるコンテクスト装置100は、イベント伝播装置130(イベント伝播装置130−1、イベント伝播装置130−2、イベント伝播装置130−3、・・・)と、コンテクスト管理装置120(コンテクスト管理装置120−1、コンテクスト管理装置120−2、コンテクスト管理装置120−3、・・・)と、サービス実行装置110(サービス実行装置110−1、サービス実行装置110−2、サービス実行装置110−3、サービス実行装置110−4、サービス実行装置110−5、サービス実行装置110−6、サービス実行装置110−7、・・・)とを備えている。
【0019】
このように、本実施形態では、コンテクスト装置100は、コンテクスト管理装置120とイベント伝播装置130とが、それぞれ複数のサービス実行装置110を束ねることによって構成され、また、ハードウェア筐体としては、コンテクスト管理装置120とイベント伝播装置130とが同一のハードウェア筐体であることとし、このハードウェア筐体とサービス実行装置110とはN:1の関係であることとするが、コンテクスト装置100の構成はこのような構成に限るものではなく、本システムの実施者は、本システムの規模、接続されたコンテクスト端末300やネットワーク400の数、ユーザ数、保守体制、実施者の既存のハードウェア資源などを考慮して、各装置や各装置が備える各機能部を柔軟に構成することができる。
【0020】
イベント伝播装置130は、ユビキタスプラットフォーム、センサネットワーク、ウェブネットワーク、SIPネットワークなどの外界とのゲートウェイを介して接続された複数のコンテクスト端末300(RFID300−7、センサ300−8、RFID300−9、センサ300−10)やネットワーク400(WEB通信ネットワーク400−4、SIPネットワーク400−4、その他のネットワーク400−4)から送信されるイベント情報を受信し、他のイベント伝播装置130に伝播させる。
【0021】
コンテクスト管理装置120は、イベント伝播装置130に入出力されるイベント情報から、予め自身がSubscribeすると定められたイベント情報を取得し、また自身がPublishするイベント情報をイベント伝播装置130に出力する。サービス実行装置110は、コンテクスト管理装置120が取得したイベント情報のコンテクストに基づいたサービス処理を実行する。
【0022】
以下、本実施形態において、このようなコンテクスト伝播網200によるコンテクストアウェアシステムとして、アパート内のユーザの部屋に設置された複数のコンテクスト端末300から送信されるイベント情報がコンテクスト伝播網200を伝播するシステムを例に説明する。図3は、ユーザAのアパートに設置され、火事を検知したコンテクスト端末300がイベント情報を送信し、コンテクスト伝播網200を伝播して対応するコンテクスト端末300に通知されるコンテクストアウェアシステムを示している。
【0023】
図3に示されるコンテクストアウェアシステムは、複数のコンテクスト装置100(コンテクスト装置100−14〜コンテクスト装置100−18)から構成されるコンテクスト伝播網200と、このコンテクスト伝播網200に接続された複数のコンテクスト端末(カメラ300−11、煙センサ300−12、携帯電話端末300−13、携帯電話端末300−14、携帯電話端末300−15、コンソール300−16、コンソール300−17)とから構成される。
【0024】
カメラ300−11と煙センサ300−12とは、アパートの一室であるユーザAの部屋に設置されたコンテクスト端末300である。カメラ300−11は、自身が撮像する映像に、煙が撮像されている可能性があることを検出すると、火事が発生した可能性があることを示すイベント情報を生成し、送信する。煙センサ300−12は、煙を感知すると、煙を感知したことを示すイベント情報を生成し、送信する。
【0025】
コンテクスト装置100−14は、カメラ300−11のカメラ画像状態を監視する。コンテクスト装置100−14は、カメラ300−11のコンテクストをSubscribeし、カメラ300−11から煙異常を検出すると、煙異常を検出したことを示すイベント情報を生成し、Publishする。
コンテクスト装置100−15は、煙センサ300−12のセンサ状態を監視する。コンテクスト装置100−15は、煙センサ300−12のコンテクストをSubscribeし、煙センサ300−12が煙を感知して発報中であることを感知すると、煙異常を検出したことを示すイベント情報を生成し、Publishする。
【0026】
コンテクスト装置100−16は、コンテクスト装置100−14とコンテクスト装置100−15との、ユーザAの部屋の状態をSubscribeする。コンテクスト装置100−16は、コンテクスト装置100−14から煙異常を示すイベント情報を受信し、かつコンテクスト装置100−15から発報中を示すイベント情報を受信すると、予め定められたユーザAの携帯電話端末300−13に、例えば、異常があったことを通知するメールを送信し、また、火災を感知したことを示すイベント情報を生成し、Publishする。
【0027】
一方、コンテクスト装置100−17は、ユーザAの部屋の隣部屋であるユーザBの部屋の状態をSubscribeする。コンテクスト装置100−17は、ユーザBの部屋に設置されたコンテクスト端末から異常があったことを示すイベント情報を受信すると、予め定められたユーザBが契約するセキュリティ会社のコンソール300−16に、異常があったことを通知し、また、火災を感知したことを示すイベント情報を生成し、Publishする。
【0028】
コンテクスト装置100−18は、ユーザAの部屋の状態と、ユーザBの部屋の状態とを含むアパートの状態をSubscribeする。コンテクスト装置100−18は、コンテクスト装置100−16およびコンテクスト装置100−17から、火災を感知したことを示すイベント情報を受信すると、予め定められたユーザBの携帯電話端末300−14と、アパートの大家の携帯電話端末300−15と、アパートの大家が契約しているセキュリティ会社のコンソール300−17とに、異常があったことを通知する。
【0029】
図4は、コンテクスト装置100の詳細な構成を示すブロック図である。コンテクスト装置100は、サービス実行装置110と、コンテクスト管理装置120と、イベント伝播装置130とを備えている。
イベント伝播装置130は、カメラ300−11や煙センサ300−12等のコンテクスト端末300からのイベント通知に基づくイベント情報を伝播するコンピュータ装置である。図5の(a)は、イベント伝播装置130が伝播するイベント情報の項目例を示す図である。イベント情報には、そのイベントの出力元を識別する情報(例えば、IPネットワークにおいて予め付与されたURIであるイベント元URI)と、そのイベント元でのイベント発生の強度を数値で示すイベント強度との情報が含まれる。イベント強度は、例えば、カメラ300−11が撮像する映像から煙異常が検出された際に、その煙異常の確度に応じたカメラ異常強度が数値として算出された情報である。
【0030】
コンテクスト管理装置120は、コンテクスト記憶部121と、コンテクスト受信部122と、コンテクスト送信部123とを備えるコンピュータ装置であり、イベント伝播装置130を介して、他のコンテクスト装置100とイベント情報の送受信を行う。
コンテクスト記憶部121には、コンテクスト管理装置120のコンテクストを示すコンテクスト情報が記憶され、また、他のコンテクスト装置100やコンテクスト端末から受信したイベント情報が一時的に記憶される。本実施形態において、コンテクスト情報は、数値で表され、他の装置から参照可能なグローバル変数である。コンテクスト記憶部121に記憶されるコンテクスト情報は、イベント伝播装置130からイベント情報を受信したコンテクスト受信部122や、コンテクスト受信部122が受信したイベント情報に基づいてサービス処理を行った実行部111などによって値が更新され記憶される。
【0031】
コンテクスト受信部122は、予めSubscribeすると定められた他のコンテクスト装置100からPublishされるイベント情報、またはコンテクスト端末300からPublishされるイベント情報を受信する。コンテクスト受信部122は、例えば、Subscribeすると予め定められた他のコンテクスト端末や装置に、イベント伝播装置130を介して定期的にアクセスし、イベント情報が送信されたか否かを判定する。コンテクスト受信部122は、Subscribe先からイベント情報が出版されていた場合には、出版されたイベント情報を受信し、受信したイベント情報を、コンテクスト記憶部121に記憶させる。
コンテクスト送信部123は、コンテクスト装置100のコンテクスト伝播部114が新たなイベント情報を生成すると、生成されたイベント情報を、イベント伝播装置130に送信し、Publishする。
【0032】
サービス実行装置110は、コンテクスト管理装置120がイベント伝播装置130から受信したイベント情報に応じて、コンテクストの認識処理、実行処理、伝播処理を行うコンピュータ装置であり、実行部111と、コンテクスト認識部113と、コンテクスト伝播部114と、監視コンテクスト定義記憶部112と、コンテクスト実行フロー記憶部115とを備えている。
【0033】
監視コンテクスト定義記憶部112には、サービス実行装置110の実行部111がサービス処理を行う原因となるイベント情報のコンテクストが定義された情報である監視コンテクスト定義情報が記憶される。監視コンテクスト情報は、コンテクスト認識部113によって読み出され、コンテクスト管理装置120のコンテクスト記憶部121に記憶されたイベント情報と比較される。図5の(b)は、監視コンテクスト定義の項目例を示す図である。監視コンテクスト定義には、コンテクストURIに対応付けて、コンテクスト感度と、コンテクスト記述と、イベント減衰比と、最小発信強度との情報が記憶される。図6の(a)、(b)、(c)、(d)には、コンテクスト装置100−14、コンテクスト装置100−15、コンテクスト装置100−16、コンテクスト装置100−18のそれぞれが備える監視コンテクスト定義記憶部112に記憶された監視コンテクスト定義が示されている。
【0034】
ここで、コンテクストURIは、比較されるイベント情報の発信元(イベント元URI)に対応する。例えば、コンテクスト認識部113によって、このコンテクストURIと、コンテクスト記憶部121に記憶されたイベント情報に含まれるイベント元URIとが一致するか否かが判定される。コンテクスト感度は、対応するコンテクストURIをイベント元とするイベント情報のイベント強度に対応する。例えば、図6の(c)に示された監視コンテクスト定義である火災感知コンテクスト定義によれば、ユーザAの部屋状態監視についての火災感知感度は、「0.5」とされる。
【0035】
コンテクスト記述は、コンテクスト記憶部121に記憶されたイベント情報に含まれるイベント強度に基づいて、自身のサービス実行装置110におけるイベント確度を算出する手順が含まれる情報である。例えば、図6の(c)に示された監視コンテクスト定義である火災感知コンテクスト定義によれば、火災発生確度の値は、コンテクスト装置100−14から送信されるイベント情報に含まれる煙異常強度の値と、コンテクスト装置100−15から送信されるイベント情報に含まれる発報中強度の値とを足して、2で割った値が、火災発生確度として算出されることが示されている(火災発生確度=(煙異常確強度+発報中強度)/2)。
【0036】
コンテクスト認識部113は、コンテクスト管理装置120がSubscribe先から取得したイベント情報に基づいて、コンテクストの変化を認識する認識処理を行う。コンテクストの認識処理では、コンテクスト認識部113は、コンテクスト管理装置120がイベント伝播装置130から受信してコンテクスト記憶部121に記憶させたイベント情報を読み出し、また、監視コンテクスト定義記憶部112に記憶された監視コンテクスト定義を読み出し、読み出したイベント情報と、監視コンテクスト定義とを比較する。
【0037】
ここで、コンテクスト認識部113は、コンテクスト記憶部121に記憶されたイベント情報に含まれるイベント元URIが含まれるコンテクストURIに対応付けられた監視コンテクスト定義を、監視コンテクスト定義記憶部112から読み出す。コンテクスト認識部113は、読み出した監視コンテクスト定義に含まれるコンテクスト記述に示される手順に基づいて、イベント確度を算出する。そして、算出したイベント確度と、読み出した管理コンテクスト定義に含まれるコンテクスト感度とを比較する。そして、コンテクスト認識部113は、算出したイベント確度が、コンテクスト感度より小さい場合には、処理を終了する。一方、算出したイベント確度が、コンテクスト感度より大きい場合には、実行部111に、そのコンテクストに定められた処理の実行要求を送信する。ここで、コンテクスト認識部113が算出したイベント確度は、サービス実行装置110のコンテクスト情報として、コンテクスト記憶部121に記憶させる。
【0038】
コンテクスト実行フロー記憶部115には、コンテクスト記憶部121に記憶されたイベント情報に対応するサービス処理の実行フローを示す情報が記憶される。例えば、カメラ300−11を監視するコンテクスト装置100−14と、煙センサ300−12を監視するコンテクスト装置100−15とから受信するイベント情報に基づいて、コンテクスト認識部113から、実行要求が送信された場合には、コンテクスト実行フローとして、ユーザAの携帯電話端末300−13に火災感知を通知する処理を行うことの実行フローが示される情報が、コンテクスト実行フロー記憶部115に記憶されている。
【0039】
実行部111は、コンテクスト認識部113から送信される実行要求に基づいて、サービス処理を実行する。ここで、実行部111は、コンテクスト認識部113からサービス処理の実行要求を受信すると、コンテクスト実行フロー記憶部115に記憶されたコンテクスト実行フローを読み出し、読み出したコンテクスト実行フローに基づいて、サービス処理を行う。実行部111は、コンテクスト認識部113から送信される実行要求に基づいて、例えば、ユーザAの携帯電話端末300−13に火災感知を通知する処理を行う。
【0040】
コンテクスト伝播部114は、実行部111がサービス処理の実行を完了すると、監視コンテクスト定義記憶部112に記憶された監視コンテクスト定義に含まれるコンテクスト記述に基づいて、イベント確度を算出し、算出したイベント確度と、監視コンテクスト定義に含まれるイベント減衰比を乗じた値を、新たなイベント強度として算出する。そして、コンテクスト伝播部114は、算出した新たなイベント強度が、コンテクスト記述に含まれる最小発信強度の値よりも小さい場合には、処理を終了する。一方、算出した新たなイベント強度が、コンテクスト記述に含まれる最小発信強度の値よりも大きい場合には、算出した新たなイベント強度をイベント強度として含むイベント情報を生成し、コンテクスト管理装置120を介して、自身をSubscribeする他のコンテクスト装置100にPublishする。このようにして、コンテクスト装置100は、コンテクスト伝播網200上のイベント情報の伝播を減衰させることができる。ここで、コンテクスト伝播部114は、算出した新たなイベント強度を、コンテクスト記憶部121に、コンテクスト情報として記憶させるようにしても良い。
【0041】
ここで、図7を参照して、実行部111の状態遷移モデルを説明する。図7の(a)は処理スタートを示し、サービスの初期化処理を行う。図7の(b)は、認識したコンテクスト情報に対応するサービス処理を選択することを示す。図7の(c)は、サービス処理の実行を示す。また、ここで、新たなコンテクスト情報を生成する処理を行う。図7の(d)は、処理の終了を表し、処理終了中にコンテクスト情報を生成している。
【0042】
<動作例>
次に、図8を参照して、サービス実行装置110の動作例を説明する。
コンテクスト認識部113は、コンテクスト管理装置120からイベントが通知されるのを待機する(ステップS1)。そして、コンテクスト認識部113が、コンテクスト管理装置120からイベントが通知され送信されるイベント情報を受信すると、監視コンテクスト定義記憶部112から、受信したイベント情報に対応する監視コンテクスト定義を読み出し、受信したイベント情報に含まれるイベント強度と、読み出した監視コンテクスト定義に含まれるコンテクスト感度とを比較する(ステップS2)。コンテクスト認識部113が、イベント情報に含まれるイベント強度が監視コンテクスト定義に含まれるコンテクスト感度より小さいと判定すると(ステップS2−NO)、ステップS1に戻り、イベントの通知を待機する。
【0043】
一方、ステップS2で、コンテクスト認識部113が、イベント情報に含まれるイベント強度が監視コンテクスト定義に含まれるコンテクスト感度より大きいと判定すると(ステップS2−YES)、実行部111にサービス実行要求を送信する。実行部111は、コンテクスト認識部113から送信されたサービス実行要求を受信すると、サービス実行要求に対応するコンテクスト実行フローを、コンテクスト実行フロー記憶部115から読み出し、読み出したコンテクスト実行フローに基づいて処理を実行する(ステップS3)。
【0044】
そして、実行部111はサービス処理が完了すると、コンテクスト伝播部114に、サービス完了通知を送信する。コンテクスト伝播部114は、サービス完了通知を受信すると、サービス処理の元となったイベント情報に含まれるイベント強度と、監視コンテクスト定義記憶部112に記憶された監視コンテクスト定義に含まれるイベント減衰比との積を、新たなイベント強度として算出する(ステップS4)。コンテクスト伝播部114は、算出した新たなイベント強度と、監視コンテクスト定義記憶部112に記憶された監視コンテクスト定義に含まれる最小発信強度とを比較する(ステップS5)。コンテクスト伝播部114が、算出した新たなイベント強度が、最小発信強度より小さいと判定すれば(ステップS5−NO)、ステップS1に戻り(ステップS5−NO)、コンテクスト認識部113がイベント通知の待機をする。一方、ステップS5で、コンテクスト伝播部114が、新たなイベント強度が最小発信強度より大きいと判定すれば(ステップS5−YES)、新たなイベント強度をイベント強度として含むイベント情報を、コンテクスト送信部123を介してイベント伝播装置130に発信する(ステップS6)。
【0045】
なお、コンテクスト装置100は、自身の監視コンテクスト定義記憶部112に記憶された監視コンテクスト定義に含まれるコンテクスト記述によってイベント確度を算出する際、複数のイベント強度がパラメータとして必要であるが、その複数のパラメータが含まれる全てのイベント情報がコンテクスト記憶部121に記憶されていない場合には、必要な他のパラメータが含まれるイベント情報の取得要求を行うようにしても良い。
【0046】
例えば、図6の(c)に示したように、ユーザAの部屋状態のコンテクストを監視するコンテクスト装置100−16が、ユーザAの部屋状態の火災発生確度を算出するには、コンテクスト装置100−14から送信される煙異常についてのイベント情報と、コンテクスト装置100−15から送信される発報中であることを示すイベント情報との双方がパラメータとして必要である。しかしながら、カメラ300−11か煙センサ300−12かのいずれかが誤動作した場合や、コンテクスト装置100−14がカメラ300−11から情報を取得する時間間隔と、コンテクスト装置100−15が煙センサ300−12から情報と取得する時間間隔とが異なるような場合、コンテクスト装置100−16が、煙異常についてのイベント情報か発報中であることを示すイベント情報かのいずれかしか受信しておらず、コンテクスト管理装置120のコンテクスト記憶部121にいずれかのイベント情報しか記憶されていない場合があると考えられる。
【0047】
このような場合、コンテクスト装置100は、イベント確度を算出するパラメータに対応するコンテクスト端末300のコンテクストを取得する要求を、対応するコンテクスト装置100に送信する。例えば、図6の(c)の例において、コンテクスト装置100のコンテクスト記憶部121に、発報中を示すイベント情報が記憶されているが、煙異常を示すイベント情報が記憶されていない場合、コンテクスト装置100−16は、コンテクスト装置100−14に対して、カメラ300−11のコンテクストを示すコンテスト情報の取得要求を行い、取得要求に応じてコンテクスト装置100−14から送信されるイベント強度を示す情報に基づいて、イベント確度を算出することができる。
【0048】
このように、本発明によれば、様々なサービスアプリケーションに接続された広範なネットワークに出力される様々なコンテクスト情報を複合化し、階層化して、様々なコンテクスト情報を有効に活用し、適切なサービスを提供することを可能にするコンテクスト装置を提供することが可能となる。
【0049】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりコンテクストサービスを行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0050】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態によるコンテクスト伝播網の概念を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によるコンテクスト伝播網の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態によるコンテクスト伝播網の概念を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるコンテクスト装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態によるイベント情報とコンテクスト定義の項目例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態によるコンテクスト伝播網をイベントが伝播する概念を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態によるコンテクスト装置の状態遷移モデルを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態によるコンテクスト装置の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
100 コンテクスト装置
110 コンテクスト伝播装置
111 実行部
112 監視コンテクスト定義記憶部
113 コンテクスト認識部
114 コンテクスト伝播部
115 コンテクスト実行フロー記憶部
120 コンテクスト管理装置
121 コンテクスト記憶部
122 コンテクスト受信部
123 コンテクスト送信部
130 イベント伝播装置
200 コンテクスト伝播網
300 コンテクスト端末
300−1 携帯電話端末
300−2 カメラ
300−3 センサ
300−4 携帯電話端末
300−5 ロボット
300−6 携帯電話端末
300−7 RFID
300−8 センサ
300−9 RFID
400 ネットワーク
400−1 SIPネットワーク
400−2 WEB通信ネットワーク
400−3 SIPネットワーク
400−4 WEB通信ネットワーク
400−5 WEB通信ネットワーク
400−6 SIPネットワーク
400−7 その他のネットワーク
500−1 携帯電話端末
500−2 ロボット
500−3 携帯電話端末
300−10 センサ
300−11 カメラ
300−12 煙センサ
300−13 携帯電話端末
300−14 携帯電話端末
300−15 携帯電話端末
300−16 コンソール
300−17 コンソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められる処理実行条件の比較対象となるイベント情報をそれぞれ受信する複数のコンテクスト装置であって、
予め定められる前記処理実行条件と、前記受信するイベント情報に基づくコンテクスト情報とを比較して、前記コンテクスト情報が、前記処理実行条件を満たすか否かを判定するコンテクスト認識部と、
前記コンテクスト認識部によって、前記コンテクスト情報が、前記処理実行条件を満たすと判定された場合に、当該処理実行条件に予め対応付けられたサービス処理を実行する実行部と、
前記コンテクスト情報と、前記実行部により実行された前記サービス処理の実行結果とに基づいて、新たなコンテクスト情報を生成し、当該新たなコンテクスト情報を比較対象とする前記処理実行条件を有する他のコンテクスト装置に、当該新たなコンテクスト情報を含む前記イベント情報を送信するコンテクスト伝播部と
を備えることを特徴とするコンテクスト装置。
【請求項2】
前記イベント情報は、当該イベント情報の強度を示すイベント強度を含み、
前記処理実行条件は、定められた前記イベント強度の閾値を含み、
前記コンテクスト伝播部は、前記イベント情報に含まれるイベント強度を、定められた比率で減衰し、減衰した当該イベント強度が、前記処理実行条件に含まれる前記イベント強度の閾値を超える場合に、前記新たなコンテクスト情報を含む前記イベント情報を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンテクスト装置。
【請求項3】
前記予め定められる処理実行条件は、定められた複数の前記イベント情報に基づく前記コンテクスト情報と比較されることを含み、
前記コンテクスト認識部は、前記定められた複数のイベント情報の全てを受信していない場合に、受信していない前記イベント情報を取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンテクスト装置。
【請求項4】
予め定められる処理実行条件の比較対象となるイベント情報をそれぞれ受信する複数のコンテクスト装置のコンピュータに、
コンテクスト認識部が、予め定められる前記処理実行条件と、前記受信するイベント情報に基づくコンテクスト情報とを比較して、前記コンテクスト情報が、前記処理実行条件を満たすか否かを判定するステップと、
実行部が、前記コンテクスト認識部によって、前記コンテクスト情報が、前記処理実行条件を満たすと判定された場合に、当該処理実行条件に予め対応付けられたサービス処理を実行するステップと、
コンテクスト伝播部が、前記コンテクスト情報と、前記実行部により実行された前記サービス処理の実行結果とに基づいて、新たなコンテクスト情報を生成し、当該新たなコンテクスト情報を比較対象とする前記処理実行条件を有する他のコンテクスト装置に、当該新たなコンテクスト情報を含む前記イベント情報を送信するステップと
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−245321(P2009−245321A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93100(P2008−93100)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【Fターム(参考)】