説明

コンデンサ

【課題】表皮効果による高周波電流の損失を抑制することが可能な配線材、電子デバイス及びコンデンサを提供する。
【解決手段】本開示の配線材1は、任意の箔状の導体11の端部における表面及び裏面に一対の分岐用の箔状の導体12,13が接続された分岐構造B1を備え、分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線材、電子デバイス、及びコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの高効率化の観点から、電気自動車を含む運輸機械、誘導磁気加熱装置を含む工業生産機械、IHヒータ、インバータエアコンを含む家電製品、情報通信機器に用いられる電源回路及び電気回路の消費エネルギーを低減するために、電源周波数の高周波化が年々進行している。また、電子デバイスにおいても、高い効率でエネルギーを蓄積させるため、薄膜多層コンデンサや積層型電解コンデンサ(例えば、特許文献1等参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−275476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、駆動周波数が概ね10kHz程度以上を超えると、表皮効果(Skin Effect)と呼ばれる電磁界現象が顕著に発現する傾向にある。この「表皮効果」とは、一般に、導体を送通する交流信号(電流信号、電力信号)の周波数が高くなるほど、電流が導体の表面に集中するため、導体抵抗(交流抵抗とも呼ばれる)が有意に高くなってしまう現象であり、高周波電力によって生じる磁界の密度が導体の中心部ほど大きくなり、その磁界によって発生する逆起電力が電流の流れを妨げるように作用することに起因する事象であって、導体材料によって抵抗値に若干の相違はあるものの、高周波駆動の電子デバイスやそれに用いられる配線材では、不可避的に深刻な問題となり得る。
【0005】
具体的には、このような表皮効果の影響により、例えば高周波電源が使用される機器を構成する配線材や当該配線材を用いて形成されるコイルの抵抗(高周波抵抗)が過度に高くなり、これに起因して、損失が不都合な程度にまで増大してしまうといった問題が生じ得る。また、薄膜多層コンデンサや積層型電解コンデンサでは、かかる表皮効果が顕著になると、積層部において多層に配置された導体(電極)のうち、主として表面側に配置された導体に電流が流れる一方、内部の導体には電流が極めて流れにくくなる。このため、その表面側に配置された導体に電流が集中し、コンデンサにおける抵抗(高周波抵抗)が過度に増大してしまい、その結果、コンデンサによる損失の増大や所望の容量を確保し難くなる等の問題も生じ得る。
【0006】
そこで、表皮効果による高周波電流(電力)の損失を抑制することが可能な配線材、電子デバイス、及び、かかる電子デバイスの一つとしてのコンデンサを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示による配線材は、任意の導体に対して一対の分岐用の導体が接続された分岐構造を備え、その分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられているものである。
【0008】
上述したとおり、高周波電流が導体を流れる際には、表皮効果によって導体の表面に電流が集中し、導体の表面における電流密度が増加する結果、その導体における抵抗が増大する傾向があるのに対し、本開示による上記構成を有する配線材では、任意の導体を流れる高周波電流が、分岐構造において当該任意の導体に接続された一対の(2つの)導体に分流されるので、電流が流れる部分すなわち表面の面積が増大する。これにより、電流が流れる体積が実効的に増大し、電流密度が減少するので、表皮効果による高周波電流に対する抵抗(高周波抵抗)を十分に低下させて高周波電流の損失を格段に抑制することが可能となる。
【0009】
また、例えば、分岐構造は、任意の導体の端部に対して一対の分岐用の導体が接続されたものである。このように、一対の分岐用の導体が任意の導体の「端部」に接続されることにより、その分岐構造の分岐部分において、任意の導体から一対の分岐用の導体へ更に高い効率で高周波電流が分流される。
【0010】
また、例えば、分岐構造は、任意の導体の端部における表面及び裏面に一対の分岐用の導体が接続されたものであってもよい。かかる構成では、任意の導体の表面側を流れる高周波電流は、当該任意の導体の表面側に接続された分岐用の導体へ流れる。一方、任意の導体の裏面側を流れる高周波電流は、当該任意の導体の裏面側に接続された分岐用の導体へ流れる。従って、任意の導体の表面及び裏面を流れる電流が、分岐構造において十分に高い効率で一対の分岐用の導体へ分流される。
【0011】
さらに、導体は、箔状であってもよい。このように箔状の導体を用いることにより、近接効果を抑制することができる。この「近接効果」とは、近接する導体を流れる電流によって発生する磁束が他の導体を横切る際に発生する渦電流によって引き起こされる現象である。箔状の導体を流れる電流が作る磁界は、箔面に沿って平行な磁束となる。従って、導体が箔状で極めて薄い場合には、近接導体を鎖交する面積が極めて小さくなる。鎖交面積が小さければ渦電流(による損失)は小さくなることから、近接効果が抑制される。
【0012】
またさらに、例えば、2つ以上の分岐構造が、同一位置に重ならないように配置されているようにしてもよい。これによって、分岐構造が重なるためにこの部分の厚さが大きくなることを抑えることができるので、利用可能なスペースに制限があるときに有利となる。
【0013】
或いは、例えば、任意の分岐用の導体は、当該分岐用の導体の一方端及び他方端のそれぞれにおいて他の導体と分岐構造をなして接続され、それらの2つの分岐構造間の距離(間隔)を分岐用の導体の幅よりも長くする。これにより、任意の導体を流れる高周波電流が、次の分岐構造に到達するまでに当該導体の表面に均一に広がる(送通する)ことが可能となる。この結果、高周波電流が導体の表面における特定の部位に偏在してその部位の電流密度が他の部位よりも高くなってしまうこと(すなわち、その他の部位の抵抗が増大してしまうこと)が抑制されるので、それに起因する高周波電流の損失を抑制することができる。
【0014】
また、以上のことから、本開示による配線材は、任意の導体に対して3本以上の導体をまとめて接続ないし接合させると、内側の導体部分がバルク体となり、その外側の表面を構成する導体にしか流れなくなることに対する対策を施した配線材であるといえる。すなわち、任意の導体としての箔状の導体の端部における表面及び裏面に、一対の分岐用の導体としての箔状の導体が接続された(上記一対の導体が絶縁層または空気層によって絶縁された)分岐構造を備え、その分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられており、2つ以上の分岐構造が、同一位置に重ならないように配置されており、任意の分岐用の導体は、その分岐用の導体の一方端及び他方端のそれぞれにおいて他の導体との接続部を有し、それらの2つの接続部の間隔が分岐用の導体の幅よりも広いものであると表現してもよい。かかる構成により、表皮効果による高周波電流の損失を格段に且つ確実に抑制し易くなる傾向にある。
【0015】
また、本開示による電子デバイスは、本開示による配線材を用いて有効に形成されるものであり、任意の導体に対して一対の分岐用の導体が接続された分岐構造を備え、分岐構造が、少なくとも2つ連続して形成された配線材を用いて形成されたものであり、電子デバイスは、例えば、コンデンサ又はコイルである。
【0016】
そして、本開示によるコンデンサは、任意の導体に対して一対の分岐用の導体が接続された分岐構造を備え、その分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられている第1配線材と、任意の導体に対して一対の分岐用の導体が接続された分岐構造を備え、その分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられている第2配線材とを備え、第1配線材の末端の分岐用の導体と、第2配線材の末端の分岐用の導体とが誘電体層又は絶縁層を介して対向配置されているものである。これにより、第1配線材の末端の分岐用の導体及び第2配線材の末端の分岐用の導体に低損失で高周波電流を供給できることから、コンデンサの蓄積容量を増加させることが可能となり、また、高速のスイッチング動作に十分に応答することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の配線材を示す断面図である。
【図2】実施例1の配線材を示す平面図である。
【図3】実施例1の配線材の変形例を示す平面図である。
【図4】実施例1の配線材の変形例を示す断面図である。
【図5】実施例1の配線材の変形例を示す断面図である。
【図6】実施例1の配線材の変形例を示す断面図である。
【図7】実施例2のコンデンサを示す断面図である。
【図8】薄膜プロセスを用いて形成される実施例3の配線材を示す断面図である。
【図9】薄膜プロセスを用いて形成される実施例3の配線材を示す断面図である。
【図10】薄膜プロセスを用いて形成される実施例3の配線材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本開示は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0019】
(実施例1)
図1は、本実施例1の配線材1を示す断面図である。図1に示すように、配線材1は、導体11〜17を備える。導体11の一方端の表面に導体12の一方端が接続され、導体11の一方端の裏面に導体13の一方端が接続されている。また、導体12の他方端の表面には導体14の一方端が接続され、導体12の他方端の裏面には導体15の一方端が接続されている。さらに、導体13の他方端の表面には導体16の一方端が接続され、導体13の他方端の裏面には導体17の一方端が接続されている。
【0020】
実施例1の配線材1は、導体11の端部における表裏面に一対の導体12,13が接続された分岐構造B1と、導体12の端部における表裏面に一対の導体14,15が接続された分岐構造B2と、導体13の端部における表裏面に一対の導体16,17が接続された分岐構造B3とを備える。このように、本実施例の配線材1では、分岐構造が少なくとも2つ連続して設けられている。すなわち、分岐構造B1における分岐後の導体12,13に対してそれぞれ分岐構造B2,B3が設けられている。なお、導体14,15,16,17のいずれか1つ又は全部にさらなる分岐構造を繰り返し設けても良い。
【0021】
導体は、金属又は合金であればよく、例えば銅が使用される。ただし、銅以外にも、アルミニウム、白金、金、銀、パラジウム、スズ、ニッケル、クロム等を用いてもよい。
【0022】
導体として、金属箔(箔状の導体)を用いてもよい。この場合には、例えば、銅、アルミニウム、白金、金、銀、スズ、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、真鍮、ジュラルミン、あるいはステンレス等からなる金属箔が用いられる。箔状の導体の厚さは、例えば200μm以下である。箔状の導体を用いることにより、近接効果を抑制することができる。近接効果とは、近接する導体を流れる電流によって発生する磁束が他の導体を横切る際に発生する渦電流によって引き起こされる現象である。箔状の導体を流れる電流が作る磁界は、箔面に沿って平行な磁束となる。従って、導体が箔状で極めて薄い場合には、近接導体を鎖交する面積が極めて小さくなる。鎖交面積が小さければ渦電流は小さくなることから、近接効果が抑制される。
【0023】
導体と導体との接合には、例えばハンダ付け、ろう付け、溶接、ダイレクトボンディング、熱溶着、超音波溶接等が用いられる。図示はしないが、分岐構造における接続以外の不要な接続を防止するため、導体の表面には、絶縁被覆層が形成されている。絶縁被覆層は、例えば、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、アミラン又はポリプロピレンの何れか一つ又はその組み合わせにより形成される。
【0024】
図2は、配線材1の平面図である。図2に示すように、導体12の一方端は導体11に接続され、導体12の他方端は導体14に接続されている。導体11と導体12の接続部と、導体12と導体14の接続部との間隔Lは、導体12の幅Wよりも長い。これにより、分岐構造B1において導体11から導体12へと分流された高周波電流が、次の分岐構造B2に到達するまでに導体12の表面に均一に広がることが可能となる。この結果、高周波電流が導体の特定の表面に偏在することが抑制されることから、1つの導体を流れる高周波電流の電流密度を小さくすることができ、高周波電流に対する抵抗を低くすることができる。
【0025】
実施例1の配線材1では、導体11を流れる高周波電流は、分岐構造B1において当該導体11に接続された一対の導体12,13に均等に分流される。そして、導体12に分流された電流は、分岐構造B2において一対の導体14,15に均等に分流される。また、導体13に分流された電流は、分岐構造B3において一対の導体16,17に均等に分流される。高周波電流が導体を流れる際には、表皮効果により、導体の表面に電流が集中し、導体の表面における電流密度が増加する結果、導体の抵抗が増加する傾向にある。本実施例では、分岐構造B1,B2,B3において高周波電流が分流されることから、1つの導体を流れる高周波電流の電流密度を小さくすることができ、表皮効果による電流密度の増加を抑制できる。従って、高周波電流に対して低い抵抗をもち、かつ高周波電流の損失を抑制した配線材を提供することができる。
【0026】
配線材1(図1,4〜6参照)を、図中、矢印方向に巻きつけることにより、コイルが形成される。この際には、適当な芯材を用いればよい。配線材の巻き方に限定はなく、配線材1を同心円状(渦巻き状)に巻いても、らせん状に巻いてもよい。
【0027】
以下に図面を参照して配線材1の変形態様について説明する。
【0028】
図3は、実施例1の配線材1の変形例を示す平面図である。図3に示すように、導体12の他方端と導体13の他方端とが平面的にずれていてもよい。これは、例えば配線材の厚さに制限がある場合に有効である。
【0029】
図4は、実施例1の配線材1の変形例を示す断面図である。図4に示すように、任意の導体の表面側の分岐構造B2と、裏面側の分岐構造B3とが、平面的にずれていてもよい。図4に示す例では、導体12の分岐構造B2と導体13の分岐構造B3とが、平面的にずれている。図4に示す配線材1も、図1に示す配線材と同様の効果を奏することができる。これもまた、例えば配線材の厚さに制限がある場合に有効である。
【0030】
図5は、実施例1の配線材1の変形例を示す断面図である。図5に示すように、導体11の途中の表面に導体12の一方端が接続され、導体11の途中の裏面に導体17の一方端が接続されている。また、導体12の途中の表面には導体14の一方端が接続されている。このように、分岐構造において、任意の導体と、当該導体に接続される一対の導体のうちの1つの導体とを一体に構成してもよい。
【0031】
上記構成の配線材1であっても、導体11に接続された分岐構造B1と、分岐構造B1において分岐した導体11,12のそれぞれに設けられた分岐構造B2,B3を備える。そして、導体11を流れる高周波電流は、分岐構造B1において一対の導体11,12にほぼ均等に分流される。そして、導体12に分流された電流は、分岐構造B2において一対の導体12,14にほぼ均等に分流される。また、分岐構造B1を通過して導体11を流れる電流は、分岐構造B3において一対の導体11,17にほぼ均等に分流される。
【0032】
図6は、実施例1の配線材1の変形例を示す断面図である。図6に示すように、導体11の一方端が導体12と導体13とに分割されることにより、分岐構造B1が形成されている。また、一方端が導体11に接続された導体12の他方端が、導体14と導体15とに分割されることにより分岐構造B2が形成されている。さらに、また、一方端が導体11に接続された導体13の他方端が、導体16と導体17とに分割されることにより分岐構造B3が形成されている。本実施例は、任意の導体の表面側の部位と裏面側の部位が分割されることにより、分岐構造が形成されているものである。このように、分岐構造において、任意の導体の一部と、当該導体に接続される一対の導体が一体に構成されていてもよい。さらに、このような一体に構成された分岐構造を平面内でずらして、図3、図4に示した変形例のように配置してもよい。
【0033】
上記構成の配線材1であっても、導体11に接続された分岐構造B1と、分岐構造B1において分岐した導体12,13のそれぞれに設けられた分岐構造B2,B3を備える。そして、導体11を流れる高周波電流は、分岐構造B1において一対の導体12,13にほぼ均等に分流される。そして、導体12に分流された電流は、分岐構造B2において一対の導体14,15にほぼ均等に分流される。また、導体13に分流された電流は、分岐構造B3において一対の導体16,17にほぼ均等に分流される。
【0034】
(実施例2)
図7は、実施例1の配線材を用いて形成されるコンデンサ2を示す断面図である。図7に示すように、コンデンサ2は、2つの配線材10,20を用いて形成される。
【0035】
配線材(第1配線材)10の構成は、実施例1の配線材1と同じである。すなわち、図7に示すように、配線材10は、導体11〜17を備える。導体11の一方端の表面に導体12の一方端が接続され、導体11の一方端の裏面に導体13の一方端が接続されている。また、導体12の他方端の表面には導体14の一方端が接続され、導体12の他方端の裏面には導体15の一方端が接続されている。さらに、導体13の他方端の表面には導体16の一方端が接続され、導体13の他方端の裏面には導体17の一方端が接続されている。
【0036】
配線材10は、導体11の端部における表裏面に一対の導体12,13が接続された分岐構造B1と、導体12の端部における表裏面に一対の導体14,15が接続された分岐構造B2と、導体13の端部における表裏面に一対の導体16,17が接続された分岐構造B3とを備える。このように、配線材10では、実施例1と同様に、分岐構造が少なくとも2つ連続して設けられている。なお、導体14,15,16,17のいずれか1つ又は全部にさらに分岐構造を繰り返し設けても良い。
【0037】
配線材(第2配線材)20の構成も、実施例1の配線材1と同じである。ただし、配線材20の分岐の広がり方向は、配線材10の分岐の広がり方向とは逆に配置されている。図7に示すように、配線材20は、導体21〜27を備える。導体21の一方端の表面に導体22の一方端が接続され、導体21の一方端の裏面に導体23の一方端が接続されている。また、導体22の他方端の表面には導体24の一方端が接続され、導体22の他方端の裏面には導体25の一方端が接続されている。さらに、導体23の他方端の表面には導体26の一方端が接続され、導体23の他方端の裏面には導体27の一方端が接続されている。
【0038】
配線材20は、導体21の端部における表裏面に一対の導体22,23が接続された分岐構造B4と、導体22の端部における表裏面に一対の導体24,25が接続された分岐構造B5と、導体23の端部における表裏面に一対の導体26,27が接続された分岐構造B6とを備える。このように、配線材20では、実施例1と同様に、分岐構造が少なくとも2つ連続して設けられている。なお、導体24,25,26,27のいずれか1つ又は全部にさらなる分岐構造を設けても良い。
【0039】
図7に示すように、配線材10の末端の導体14〜17と、配線材20の末端の導体24〜27とが互い違いに配置されている。そして、配線材10の末端の導体14〜17と、配線材20の末端の導体24〜27との間には誘電体層及び/又は絶縁層Iが形成されている。誘電体層及び/又は絶縁層Iの材料として、薄膜プロセスにより形成される薄膜コンデンサに用いられているような高誘電率材料、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)酸化チタン(TiO2)、アルミナ、窒化珪素(Si43)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化タンタル(Ta25)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)等を用いることができる。あるいは、誘電体層及び/又は絶縁層Iとして、上述した絶縁被覆層と同様の絶縁性材料、例えばガラスエポキシ、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、アミラン又はポリプロピレン等を用いることができる。
【0040】
以上のように、電荷の蓄積層を複数有する多層のコンデンサ2が構成されている。コンデンサ2では、導体14と導体24、導体24と導体15、導体15と導体25、導体25と導体16、導体16と導体26、導体26と導体17、導体17と導体27との間にそれぞれ電荷が蓄積される。
【0041】
実施例2のコンデンサでは、第1配線材11から末端の導体14〜17へと低損失で高周波電流を供給できる一方で、第2配線材21から末端の導体24〜27へと低損失で高周波電流を供給することができる。したがって、実施例2では、多層のコンデンサを構成できるとともに、末端の導体に低損失で高周波電流を供給できることから、コンデンサの蓄積容量を増加させることが可能となる。
【0042】
(実施例3)
実施例3では、薄膜プロセスを用いて形成された箔状の導体を備える配線材の例について説明する。図8は、実施例3の配線材3の断面図である。
【0043】
図8に示すように、絶縁性の基板30上に、薄膜プロセスを用いて配線材3が形成されている。配線材3は、導体31〜37を備える。導体31の一方端の表面にプラグPを介して導体32の一方端が接続され、導体31の一方端の裏面にプラグPを介して導体33の一方端が接続されている。また、導体32の他方端の表面にはプラグPを介して導体34の一方端が接続され、導体32の他方端の裏面にはプラグPを介して導体35の一方端が接続されている。さらに、導体33の他方端の表面にはプラグPを介して導体36の一方端が接続され、導体33の他方端の裏面にはプラグPを介して導体37の一方端が接続されている。図8に示す例では、基板30側から順に、導体37の層、導体33の層、導体36の層、導体31の層、導体35の層、導体32の層、導体34の層が積層されている。各導体の層の間には、絶縁層38が設けられている。
【0044】
実施例3の配線材3は、導体31の端部における表裏面に一対の導体32,33が接続された分岐構造B1と、導体32の端部における表裏面に一対の導体34,35が接続された分岐構造B2と、導体33の端部における表裏面に一対の導体36,37が接続された分岐構造B3とを備える。このように、薄膜プロセスを用いて形成される本実施例の配線材3においても、実施例1と同様に、分岐構造を少なくとも2つ連続して設けることが可能である。なお、導体34,35,36,37のいずれか1つ又は全部にさらに分岐構造を繰り返し設けることも可能である。
【0045】
導体は、金属又は合金であればよく、例えば銅が使用される。ただし、銅以外にも、アルミニウム、白金、金、銀、パラジウム、スズ、ニッケル、クロム等を用いてもよい。導体の層は、例えばスパッタリング法、蒸着法、めっき法、印刷法,フォトリソグラフィ法等の方法により形成される。
【0046】
絶縁層38の材料に限定はないが、例えば、窒化シリコン、酸化アルミニウム、二酸化シリコン等の無機系絶縁体のみならず、ポリイミド、エポキシ樹脂等の有機系絶縁体を使用できる。これらの絶縁膜は、塗布法又は蒸着法等の方法により形成される。
【0047】
以上のように、薄膜プロセスを用いても本開示の配線材を形成することができる。したがって、薄膜プロセスを用いて、表皮効果による高周波電流の損失を抑制することが可能な配線材を形成できる。また、図7に示したコンデンサの構造も、薄膜プロセスを用いて形成することができる。
【0048】
以下に図面を参照して薄膜プロセスを用いて形成された配線材3の変形態様について説明する。
【0049】
図9は、実施例3の配線材3の変形例を示す断面図である。図9に示すように、導体31の途中の表面にプラグPを介して導体32の一方端が接続され、導体32の途中の表面にプラグPを介して導体34の一方端が接続されている。また、導体31の途中の表面にはプラグPを介して導体36の一方端が接続されている。
【0050】
上記構成の配線材3であっても、導体31に接続された分岐構造B1と、分岐構造B1において分岐した導体31,32のそれぞれに設けられた分岐構造B2,B3を備える。このように、薄膜プロセスを用いて形成された配線材3についても、分岐構造において、任意の導体と、当該導体に接続される一対の導体のうちの1つの導体とを一体に構成してもよい。
【0051】
図10は、実施例3の配線材3の変形例を示す断面図である。図10に示すように、導体31の端部の表面にプラグPを介して導体32の一方端が接続され、導体31の端部の裏面にプラグPを介して導体33の一方端が接続されている。導体32の途中の表面にはプラグPを介して導体39の一方端が接続され、導体39の他方端はプラグPを介して導体34の一方端に接続されている。導体39は、他の導体とは逆方向に延在している。また、導体33の途中の裏面にプラグPを介して導体37が接続されている。
【0052】
図10に示す配線材3では、分岐構造B2において導体32と導体39とで電流が逆方向に流れるように、導体が配置されている。このように、配線材3の内部において、導体の延在方向を一部逆にしてもよい。
【0053】
なお、上述したとおり、本開示は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示の配線材、電子デバイス及びコンデンサは、高周波電流に対する高効率化及び低損失化が望まれている電気自動車を含む運輸機械、誘導磁気加熱装置を含む工業生産機械、IHヒータ、インバータエアコンを含む家電製品、情報通信機器に用いられる電源回路及び電気回路等に適用することができる。具体的には、本開示の配線材、電子デバイス及びコンデンサは、例えば、電気自動車、蓄積キャパシタ、電磁弁、インバータ、コンバータ、フライバックトランス、チョークコイル、高周波コイル、誘導磁気加熱器、IHヒータに適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1,3…配線材、2…コンデンサ、10…配線材(第1配線材)、11,12,13,14,15,16,17…導体、20…配線材(第2配線材)、21,22,23,24,25,26,27…導体、30…基板、31,32,33,34,35,36,37,39…導体、38…絶縁層、B1,B2,B2,B4,B5,B6…分岐構造、P…プラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の導体としての箔状の導体の端部における表面及び裏面に、一対の分岐用の導体としての箔状の導体が接続された分岐構造を備え、
前記分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられており、
2つ以上の前記分岐構造が、同一位置に重ならないように配置されており、
前記任意の分岐用の導体は、当該分岐用の導体の一方端及び他方端のそれぞれにおいて他の導体との接続部を有し、該2つの接続部の間隔が前記分岐用の導体の幅よりも広い、
配線材。
【請求項2】
任意の導体に対して一対の分岐用の導体が接続された分岐構造を備え、
前記分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられている、
配線材。
【請求項3】
前記分岐構造は、前記任意の導体の端部に対して一対の分岐用の導体が接続されたものである、
請求項2記載の配線材。
【請求項4】
前記分岐構造は、前記任意の導体の端部における表面及び裏面に一対の分岐用の導体が接続されたものである、
請求項2記載の配線材。
【請求項5】
前記導体は、箔状である、
請求項2記載の配線材。
【請求項6】
2つ以上の前記分岐構造が、同一位置に重ならないように配置されている、
請求項2記載の配線材。
【請求項7】
前記任意の分岐用の導体は、当該分岐用の導体の一方端及び他方端のそれぞれにおいて他の導体との接続部を有し、該2つの接続部の間隔が前記分岐用の導体の幅よりも広い、
請求項2記載の配線材。
【請求項8】
任意の導体に対して一対の分岐用の導体が接続された分岐構造を備え、該分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられている第1配線材と、
任意の導体に対して一対の分岐用の導体が接続された分岐構造を備え、該分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられている第2配線材と、
を備え、
前記第1配線材の末端の分岐用の導体と、前記第2配線材の末端の分岐用の導体とが誘電体層及び/又は絶縁層を介して対向配置されている、
コンデンサ。
【請求項9】
任意の導体に対して一対の分岐用の導体が接続された分岐構造を備え、前記分岐構造が、少なくとも2つ連続して設けられている配線材を用いて形成された、
電子デバイス。
【請求項10】
前記電子デバイスは、コンデンサ又はコイルである、
請求項9記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−129636(P2011−129636A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285400(P2009−285400)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(509348786)エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー (117)
【Fターム(参考)】