コンバイン
【課題】エンジンで駆動されるブロワを用いて、コンバインの車体の清掃作業を安全に行なえるものとする。
【解決手段】ブロワ3の圧風吹き出し側に連通した風路5を穀粒搬送風路6と清掃用風路7とに分岐させ、該風路5の分岐部にブロワ3からの圧風を穀粒搬送風路6側へ送る状態と清掃用風路7側へ送る状態とのいずれかの状態に切替える風路切替え装置を設け、該風路切替え装置を清掃用風路7側へ送風する状態に切替えた場合にブロワクラッチ9を接続可能とする清掃スイッチを設け、コンバインの車体1に装備した駐車ブレーキ装置11を制動状態に保持しているときにのみ清掃スイッチの操作でブロワクラッチ9を接続できる構成とする。
【解決手段】ブロワ3の圧風吹き出し側に連通した風路5を穀粒搬送風路6と清掃用風路7とに分岐させ、該風路5の分岐部にブロワ3からの圧風を穀粒搬送風路6側へ送る状態と清掃用風路7側へ送る状態とのいずれかの状態に切替える風路切替え装置を設け、該風路切替え装置を清掃用風路7側へ送風する状態に切替えた場合にブロワクラッチ9を接続可能とする清掃スイッチを設け、コンバインの車体1に装備した駐車ブレーキ装置11を制動状態に保持しているときにのみ清掃スイッチの操作でブロワクラッチ9を接続できる構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアーブロワによる穀粒搬出装置を装備したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から主として大豆等を収穫するコンバインにおいて、穀粒に損傷を与えずに商品価値を損なわないまま収穫するために、グレンタンクから穀粒を機外に搬出するとき、オーガー式の穀粒排出装置に代えて、穀粒表面に傷のつき難い空気搬送が利用されている。そして、例えば、下記特許文献1、特許文献2には、空気を利用した穀粒搬出装置を装備したコンバインにおいて、刈取脱穀作業や穀粒の搬出作業をしないとき(特許文献1では穀粒の搬出作業と同時に清掃等に使用できる空気の取出しが可能な構成になっている。)に、搭載しているエアーブロワを利用してコンバイン各部の清掃や切藁の拡散、更には、キャビンのない運転席の前にエアーカーテンの如く噴出させて塵埃を吹き飛ばしてオペレータを塵埃から守る手段、その他、広範囲に利用できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−273411号公開特許公報
【特許文献2】特開2002−65047号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、グレンタンクの穀粒をブロワから吹き出す圧風を利用して機外に搬出する穀粒搬出装置を備えたコンバイン(特許文献1参照)において、刈取脱穀作業や穀粒の搬出作業をしないときには、そのブロワを他の清掃作業等に利用する公知技術がある。例えば、ブロワから吹き出す風を、ラジエーターの防塵網の清掃に利用したり、オペレータを塵埃から保護するために、運転席前方に浮遊する塵埃を吹き払う等に利用する技術が公開されている。
【0005】
このように、ブロワから噴出す圧風を利用してコンバイン車体の清掃をする場合、従来の構成では、車体の固定(駐車ブレーキによる車体の停止)が行なわれておらず、清掃中に、コンバインが自然に移動したり、不用意に走行操作レバーに手が触れて走行クラッチが誤作動して入力し、伝動が接続される等の安全性に欠ける問題があった。
【0006】
又、近年、エンジンにおける自動回転制御装置に関する技術が発達し、この種のコンバインに搭載されるエンジンにも自動回転制御装置が装備され、付属作業機のクラッチを入り側に操作すると、関連して自動的にエンジン回転制御装置が働いて、増速され高速回転になるコンバインが多い。この種のコンバインで、ブロワを利用して清掃作業を行う場合、清掃スイッチを入り操作してブロワを始動し、作業の準備をすると、途端にエンジンが高速回転に制御される危険性がある。
【0007】
このような場合、ブロワを利用する清掃作業では、ブロワに接続する清掃ホースに高圧の圧風が送り込まれてホースが波打ってのたうち回る等の危険な状態となる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、車体(1)に搭載したグレンタンク(2)内の穀粒を、ブロワ(3)による圧風で機外に搬出するエア式穀粒搬出装置(4)を備えたコンバインにおいて、前記ブロワ(3)の圧風吹き出し側に連通した風路(5)を穀粒搬送風路(6)と清掃用風路(7)とに分岐させ、該風路(5)の分岐部にブロワ(3)からの圧風を穀粒搬送風路(6)側へ送る状態と清掃用風路(7)側へ送る状態とのいずれかの状態に切替える風路切替え装置(8)を設け、該風路切替え装置(8)を清掃用風路(7)側へ送風する状態に切替えた場合にブロワクラッチ(9)を接続可能とする清掃スイッチ(10)を設け、コンバインの車体(1)に装備した駐車ブレーキ装置(11)を制動状態に保持しているときにのみ清掃スイッチ(10)の操作でブロワクラッチ(9)を接続できる構成としたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0009】
このように、清掃作業時には、常に、コンバインの車体(1)には、駐車ブレーキ装置(11)によってブレーキが働く構成にしているから、清掃中に車体(1)が移動することはなく、安全に清掃作業ができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記車体(1)に自動回転制御装置(12)を装備したエンジン(13)を搭載し、前記駐車ブレーキ装置(11)を制動状態に保持し、且つ、前記清掃スイッチ(10)をブロワクラッチ(9)が接続される側に操作した場合に、前記自動回転制御装置(12)の作動が牽制される構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0011】
このように、ブロワ(3)を利用する清掃作業では、清掃スイッチ(10)をブロワクラッチ(9)が接続される側に操作した場合に、エンジン(13)の自動回転制御装置(12)を牽制してエンジン(13)の回転速度が低速回転速度の状態でブロワクラッチ(9)が接続されるから、清掃用風路(7)から清掃ホースに高圧の圧風が送り込まれてこの清掃ホースが波打ってのたうち回る等の危険を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、圧風を噴出するブロワ(3)を利用して清掃作業を行うときには、常に、コンバインの車体(1)に駐車ブレーキ装置(11)が働き、制動状態にあるから、車体(1)が傾斜地に置かれたり、不用意に走行操作レバーに手が触れ走行クラッチが繋がるような誤作動があったとしても、車体(1)が移動することはなく、安心して安全に清掃作業を行なうことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、清掃スイッチ(10)を操作してブロワクラッチ(9)を接続したときには、エンジン(13)の自動回転制御装置(12)を牽制して低速回転からスタートできるから、エンジン(13)の回転速度の不用意な上昇によって清掃用風路(7)に接続する清掃ホースに高圧の圧風が送り込まれてこの清掃ホースが波打ってのたうち回り危険な状態になることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の制御機構を示すブロック図
【図2】コンバインの側面図
【図3】コンバインの平面図
【図4】グレンタンクの背面図
【図5】分岐した両風路に風路切替え装置を設けた正面図
【図6】風路切替え装置を穀粒搬出側に切り替えた状態の側面図
【図7】風路切替え装置を穀粒搬出側に切り替えた状態の正面図
【図8】風路切替え装置を清掃側に切り替えた状態の側面図
【図9】風路切替え装置を清掃側に切り替えた状態の正面図
【図10】他の実施例を備えたコンバインの側面図
【図11】他の実施例を備えたコンバインの側面図
【図12】前図11のグレンタンク背面図
【図13】他の実施例を備えたコンバインの側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、コンバインは、図2、及び図3に示すように、主として大豆等の穀物を収穫する汎用型の構成であって、左右一対のクローラ15,15を装備した車体1上に全稈投入型の脱穀装置16を搭載し、その前側に刈取前処理装置17を、上下回動可能に装着して構成している。そして、該刈取前処理装置17は、前部上側に掻込みリール18を軸架し、その下方位置には刈幅の広い刈取装置19を装備し、該刈取装置19の後方で低位置にある受枠20上には、横送り掻込みオーガー21を横軸に軸装し、刈取った穀稈を一側(実施例では進行方向の左側)に搬送して集め、側部のコンベヤ装置22の搬送始端部に供給する構成としている。そして、コンベヤ装置22は、斜め上方の終端部まで搬送した穀稈の全てを前記脱穀装置16に供給する構成としている。
【0016】
そして、グレンタンク2は、図面に示すように、車体1上において、前記脱穀装置16の横に併設して搭載し、脱穀、選別後の穀粒を揚穀して貯留する構成としている。
つぎに、穀粒搬送風路6は、図2に示すように、ブロワ3の噴出し口に連通させた風路5に、始端部を接続し、前記グレンタンク2の下方を通して後側から上方にまで延長し、更に、コンバインの上方を通して前方側に向けて伸ばしてエアー式穀粒搬出装置4を構成している。そして、該エアー式穀粒搬出装置4は、実施例の場合、上部では柔軟なホースではなく、硬い排出筒23から構成して収納具24に収納自在とし、その終端部には穀粒排出口25を開口して構成している。そして、前記穀粒搬送風路6は、コンバイン1の上方において、前記穀粒排出口25から穀粒を排出する位置が選択できるように、前記排出筒23を上下方向と左右方向(平面視で360度近くまで旋回できる。)とに回動調節自由に構成している。
【0017】
そして、前記ブロワ3は、その内部には起風翼車を内装、軸架しており、車体1上に搭載しているエンジン13から伝動機構を経由し、入・切、切替え操作されるブロワクラッチ9を介して伝動される回転動力によって駆動される構成としている。そして、前記ブロワクラッチ9は、穀粒搬出時には、排出スイッチ27の一段目のON操作で接続し、清掃作業時には、清掃スイッチ10のON操作によって接続され、伝動可能になる構成としている。
【0018】
つぎに、穀粒フィーダ(穀粒定量繰出装置)26は、図2に示すように、前記グレンタンク2の底の部分と前記穀粒搬送風路6との間に配置し、公知の装置であるから詳細な説明は省略するが、回転繰出ローターを回転駆動しながら定量の穀粒を下側の穀粒搬送風路6内に供給できる構成としている。なお、穀粒フィーダ26は、運転席32に設けた前記排出スイッチ27の二段目(前述のように、一段目押込み操作でブロワクラッチ9を入り操作する。)の押込みによるON操作で電動モーターを始動して回転駆動される構成としている。
【0019】
つぎに、清掃用風路7は、図5、図7、図9に示し、既に説明したように、ブロワ3に連通させた前記風路5を、穀粒搬送風路6側と、その上側にもう一つの風路7とに分岐させて二又に構成している。そして、二又に分岐した前記穀粒搬送風路6と清掃用風路7との間には、風路切替え装置8を配置して取り付け、二つに分かれた風路6,7の始端部において、圧風の送り方向を切り替える切替弁30を、外側から切替操作レバー31によって、穀粒搬出側と清掃側とに選択して切替できる構成としている。
【0020】
このように、風路切替え装置8は、切替弁30と切替操作レバー24とからなり、切替操作によって、ブロワ3から風路5に噴出される圧風を、前記穀粒搬送風路6を閉として前記清掃用風路7を開として清掃側にも取り出しができる構成としている。なお、実施例の場合、清掃用風路7は、清掃ホース7aによって構成している。
【0021】
つぎに、実施例のコンバインは、駐・停車時には、安全のために、車体1に駐車ブレーキを掛けるように駐車ブレーキ装置11を設け、運転席32の前に駐車ブレーキペダル33を配置した構成としている。そして、実施例は、前記風路切替え装置8の切替操作レバー31を操作して切替弁30を切り替えて、清掃用風路8を開き穀粒搬送風路6を閉じた後、前記清掃スイッチ10をON操作した場合には、前記駐車ブレーキ装置11が制動状態にある場合にのみ、既に説明したブロワクラッチ9が接続できる構成としている。
【0022】
したがって、実施例は、ブロワ3から吹き出す圧風を清掃用風路7側に利用するときには、コンバインが動くことがないように、確実に駐車ブレーキ装置11の掛かった状態で停止し、安全性が確保できるものとなっている。
【0023】
そして、実施例に係るコンバインのエンジン13は、近年普及している自動回転制御装置12が装備されており、コンバインを構成している各作業装置、例えば、脱穀装置16や刈取前処理装置17等のクラッチを入り操作すると、関連して自動的に増速されて高速側に変速する構成となっている。しかしながら、実施例の場合、前記清掃スイッチ10は、清掃作業を開始する前に、ON操作して、ブロワクラッチ9を接続してブロワ3の伝動を開始しても、そのときには前記自動回転制御装置12を牽制する機構が働いてエンジン13は増速されず、通常のアイドリング回転速に保持される構成としている。
【0024】
したがって、実施例は、清掃スイッチ10をON操作してブロワクラッチ9を接続してブロワ3を伝動しても、駆動の最初から高速になることが避けられ、圧風も弱く、その後において、オペレータの手動操作でエンジン速度が選択できるものとなっている。そのため、清掃ホース7aは、波打ってのたうち回る等の危険な状態が回避され、安全に清掃作業ができる効果がある。
【0025】
つぎに、実施例の制御機構について、図1に基づき説明する。
まず、コントローラ35は、入力側に、切替弁位置センサ36、駐車ブレーキセンサ37、エンジン回転数センサ38、脱穀スイッチ39、排出スイッチ27、清掃スイッチ10、排出筒位置センサ40、エンジン始動スイッチ41等を接続し、操作情報や検出情報が入力される構成としている。そして、コントローラ35は、出力側に、ブロワクラッチ9、穀粒フィーダ26、イグニッションコイル42、燃料調整弁43等をそれぞれ接続して、出力する制御信号に基づいて作動する構成としている。
【0026】
そして、コントローラ35は、既に説明しているように、清掃スイッチ10がON操作されたとき、駐車ブレーキセンサ37から入力される検出情報に基づき、車体1に駐車ブレーキが掛かっている場合にのみ、ブロワクラッチ9を接続する制御信号を出力し、アクチュエータを介してクラッチを接続するのである。更に、コントローラ35は、自動回転制御装置12を装備したエンジン13を搭載した実施例の場合、清掃スイッチ10をON操作すると、自動的に自動回転制御装置12を牽制する機構が働き、燃料調整弁43にアイドリング回転時の燃料噴射量を保持するように制御信号を出力して制御し、エンジン回転の増速を牽制することができる。
【0027】
つぎに、排出筒位置センサ40は、排出筒23が車体1上方の収納具24にあるときに、それを検出した情報をコントローラに入力し、排出スイッチ27をON操作しても、作業安全のためにブロワクラッチ9が接続しない牽制制御が働く構成としている。この場合、コントローラ35は、清掃スイッチ10をON操作すると、他の条件が満足された状態であれば、排出筒位置センサ40の検出情報が入力されていても、ブロワクラッチ9が接続されてブロワ3が駆動されるように、上記牽制が解除される制御が可能になる構成としている。
【0028】
このように構成した実施例の場合、コンバインは、例えば、倉庫等の狭い場所に収納して、しかも、エアー式穀粒搬出装置4の排出筒23を正規の収納位置に収納した状態にあっても、ブロワ3が駆動できることとなって清掃作業が可能になる特徴がある。
【0029】
以上述べたように、この発明の実施例は、清掃作業を行うにあたり、エアーを噴出するブロワ3のクラッチを接続するときには、常に、コンバインの車体1には駐車ブレーキ装置11が働き、制動状態にあるから、清掃中に、車体1が自然に移動したり、不用意に走行操作レバーに手が触れて走行クラッチが繋がるような誤作動があったとしても、車体1が移動することはなく、安心して安全に清掃作業ができるものとなっている。
【0030】
そして、実施例の場合、エンジン13は、清掃スイッチ10を操作してブロワクラッチ9を接続したときには、前記エンジン13に装備されている自動回転制御装置12が牽制され、脱穀装置16や刈取前処理装置17の伝動を接続したときと異なり、アイドリング程度の低速回転からスタートできる制御になっている。したがって、清掃ホース7aは、高圧の圧風が急に噴き込まれ、突然に波打ってのたうち回るような危険な状態を回避することができる安全性に優れた利点がある。そして、オペレータは、エンジン速度をアクセルレバーの手操作によって自由に調整しながら清掃作業ができる。
【0031】
つぎに、本件出願に係るエアーブロワの穀粒搬出装置におけるブロワ3を利用した清掃装置に関し、その他の実施例について説明する。
まず、一つの実施例として、この種の穀粒搬出装置に清掃装置を併用したコンバインは、エンジン13の始動に関し、風路切替え装置8の切替操作レバー31が清掃側にあるときには、エンジン13の始動ができないように牽制する構成にして穀粒の風路6内への詰まりを未然に防止する構成としている。エアー式穀粒搬出装置4は、切替操作レバー31が清掃側でエンジン始動をして、ブロワ3からの圧風を清掃ホース7aに逃がした状態で排出スイッチ27を操作すると、穀粒フィーダ26や穀粒搬送風路に穀粒の詰まりが発生する虞があり、誤操作による詰まりを未然に防止するために牽制機能を保持させている。
【0032】
つぎの実施例は、清掃ホース7aの巻取り、収納に関し、実施例の場合、図2、及び図4に示すように、グレンタンク2の下側空間部分に装置している燃料タンク45の上方外側に巻取収納部46を形成して設けた巻取枠48にホースを巻き付けて収納する構成としている。
【0033】
このように構成することによって、清掃ホース7aは、図面に示すように、燃料タンク45の上方外側部の巻取枠48に巻き付けて収納し、燃料タンク45は曲面が多く、ホース7aに接触してもホースを損傷することがない利点がある。更に、清掃ホース7aは、グレンタンク2や脱穀装置16の伝動機構からも離れた位置にあって、これらに干渉する虞もない利点がある。
【0034】
なお、清掃ホース7aは、図2に示すように、風路5から分岐して上方に延長する基部に近い部分を、支持具47によって機体側に支持する構成としている。この場合、実施例の支持具47は、U字型にして融通を持たせてホースを保持できる構成にしていると、清掃ホース7aの移動時に無理を与えない利点がある。
【0035】
つぎに、ブロワ3から噴出する圧風温度に関し、2,3の実施例を述べる。
まず、ブロワ3から噴出する圧風は、図8、及び図9に示すように、切替操作レバー31の操作角度によって切替弁30と風路6,7の孔径(閉塞度)との間に隙間(風が逃げる隙間)が生じ、噴出する風の温度に差が生じることが解っている。例えば、図8に示した実施例の場合、切替操作レバー31を清掃に切替えた位置(切替弁30が図9に示すように、穀粒搬送風路6を閉めて清掃用風路7を開けた)に切り替えると、清掃用風路7に流入する圧風は、大径風路(風路5)から小径風路(清掃用風路7)に圧縮状態で噴き込まれて、温度が急激に上昇して高温化する弊害が発生する。
【0036】
したがって、実施例は、清掃作業に入るとき、急激な温度上昇を防止するために、切替操作レバー31を清掃に切替えた位置(最端位置まで切替えた位置)でも、前記切替弁30が穀粒搬送風路6を完全に閉めないで周囲に圧風の逃げる隙間ができる程度に閉鎖する構成としている。
【0037】
このように構成した実施例は、圧風の温度の上昇を押さえることができるから、高温のために清掃ホース7aや取付部分で起きる弊害(やけど、火災等)を未然に防止して安全に作業ができる利点がある。
【0038】
つぎに、図10に示した実施例は、図面に示すように、穀粒フィーダ26より搬送方向の下手側において、穀粒搬送風路6の途中部に、清掃ホース7aの始端部を着脱自由に取り付けできる装着部50を構成している。このように、清掃ホース7aは、エアー式穀粒搬出装置4の搬送途中に接続部分を構成しておき、オプション装置として短時間で着脱できる着脱機構を設けて構成すれば、穀粒搬出作業をしないときにエアーブロワ3を有効に利用することができる。
【0039】
この場合、清掃ホース7aは、装着部50の着脱機構をワンタッチ式にすれば、広く普及することができる。
つぎに、図11、及び図12に示した実施例について説明する。
【0040】
実施例は、風路5を、穀粒搬送風路6と、清掃用風路7に代わる乾燥風取出し風路51とに分岐させて設け、該乾燥風取出し風路(ホース)51の終端部をグレンタンク2の下部に連通させて連結し、ブロワ3からの圧風を乾燥風として利用する構成としている。実施例の乾燥風供給装置は、既に説明した清掃装置を構成している切替操作レバー31と切替弁30とをそのまま利用して構成できる。
【0041】
このように構成すると、実施例は、コンバイン作業に伴って順次グレンタンク2に貯留される穀粒、特に、湿り気の多い場合等に有効に利用することができるものとなり、前の実施例で説明したように、圧風の温度も上昇できるから、効果的な予備乾燥が可能になる実用的効果がある。
【0042】
つぎに、図13に示した実施例は、リモコンオーガーのアンテナ52の取付け位置に関するものである。この種のコンバインは、各装置を、リモコンを利用して遠隔操作をする構成にしており、例えば、エアー式穀粒搬出装置4の場合、排出筒(穀粒搬送風路6)23を、補助作業者がコンバインの車体1から離れた位置に居ながら、リモコン操作により上下回動や旋回操作をして、穀粒排出位置に移動する場合等がある。
【0043】
そこで、実施例に係るアンテナ52は、図13に示すように、グレンタンク2上において、キャビン53のルーフ54より後方に設けた高い位置のプレクリーナー55と、排出筒23の基部旋回中心位置との間で、アンテナ機能を発揮できる程度の高さ(前記クリーナー55の上部と排出筒23の基部回動中心とを結んだ線より上に出ない高さ)を保持して取り付けた構成としている。
【0044】
この種のコンバインは、倉庫等に収納して保管するときに車体1全体をシートカバーで覆って保護するが、従来構成では、前記アンテナ52が、車体1を覆ったシートカバーによって折り曲げられて破損されることがあった。
【0045】
実施例は、コンバイン上部のアンテナ52を上記のようなシートカバーによる事故から保護し、長期間使用できるように、損傷を受け難い位置に取り付けるものとしている。
【符号の説明】
【0046】
1 車体
2 グレンタンク
3 ブロワ
4 エアー式穀粒搬出装置
5 風路
6 穀粒搬送風路
7 清掃用風路
7a 清掃ホース
8 風路切替え装置
9 ブロワクラッチ
10 清掃スイッチ
11 駐車ブレーキ装置
12 自動回転制御装置
13 エンジン
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアーブロワによる穀粒搬出装置を装備したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から主として大豆等を収穫するコンバインにおいて、穀粒に損傷を与えずに商品価値を損なわないまま収穫するために、グレンタンクから穀粒を機外に搬出するとき、オーガー式の穀粒排出装置に代えて、穀粒表面に傷のつき難い空気搬送が利用されている。そして、例えば、下記特許文献1、特許文献2には、空気を利用した穀粒搬出装置を装備したコンバインにおいて、刈取脱穀作業や穀粒の搬出作業をしないとき(特許文献1では穀粒の搬出作業と同時に清掃等に使用できる空気の取出しが可能な構成になっている。)に、搭載しているエアーブロワを利用してコンバイン各部の清掃や切藁の拡散、更には、キャビンのない運転席の前にエアーカーテンの如く噴出させて塵埃を吹き飛ばしてオペレータを塵埃から守る手段、その他、広範囲に利用できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−273411号公開特許公報
【特許文献2】特開2002−65047号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、グレンタンクの穀粒をブロワから吹き出す圧風を利用して機外に搬出する穀粒搬出装置を備えたコンバイン(特許文献1参照)において、刈取脱穀作業や穀粒の搬出作業をしないときには、そのブロワを他の清掃作業等に利用する公知技術がある。例えば、ブロワから吹き出す風を、ラジエーターの防塵網の清掃に利用したり、オペレータを塵埃から保護するために、運転席前方に浮遊する塵埃を吹き払う等に利用する技術が公開されている。
【0005】
このように、ブロワから噴出す圧風を利用してコンバイン車体の清掃をする場合、従来の構成では、車体の固定(駐車ブレーキによる車体の停止)が行なわれておらず、清掃中に、コンバインが自然に移動したり、不用意に走行操作レバーに手が触れて走行クラッチが誤作動して入力し、伝動が接続される等の安全性に欠ける問題があった。
【0006】
又、近年、エンジンにおける自動回転制御装置に関する技術が発達し、この種のコンバインに搭載されるエンジンにも自動回転制御装置が装備され、付属作業機のクラッチを入り側に操作すると、関連して自動的にエンジン回転制御装置が働いて、増速され高速回転になるコンバインが多い。この種のコンバインで、ブロワを利用して清掃作業を行う場合、清掃スイッチを入り操作してブロワを始動し、作業の準備をすると、途端にエンジンが高速回転に制御される危険性がある。
【0007】
このような場合、ブロワを利用する清掃作業では、ブロワに接続する清掃ホースに高圧の圧風が送り込まれてホースが波打ってのたうち回る等の危険な状態となる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、車体(1)に搭載したグレンタンク(2)内の穀粒を、ブロワ(3)による圧風で機外に搬出するエア式穀粒搬出装置(4)を備えたコンバインにおいて、前記ブロワ(3)の圧風吹き出し側に連通した風路(5)を穀粒搬送風路(6)と清掃用風路(7)とに分岐させ、該風路(5)の分岐部にブロワ(3)からの圧風を穀粒搬送風路(6)側へ送る状態と清掃用風路(7)側へ送る状態とのいずれかの状態に切替える風路切替え装置(8)を設け、該風路切替え装置(8)を清掃用風路(7)側へ送風する状態に切替えた場合にブロワクラッチ(9)を接続可能とする清掃スイッチ(10)を設け、コンバインの車体(1)に装備した駐車ブレーキ装置(11)を制動状態に保持しているときにのみ清掃スイッチ(10)の操作でブロワクラッチ(9)を接続できる構成としたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0009】
このように、清掃作業時には、常に、コンバインの車体(1)には、駐車ブレーキ装置(11)によってブレーキが働く構成にしているから、清掃中に車体(1)が移動することはなく、安全に清掃作業ができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記車体(1)に自動回転制御装置(12)を装備したエンジン(13)を搭載し、前記駐車ブレーキ装置(11)を制動状態に保持し、且つ、前記清掃スイッチ(10)をブロワクラッチ(9)が接続される側に操作した場合に、前記自動回転制御装置(12)の作動が牽制される構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとしたものである。
【0011】
このように、ブロワ(3)を利用する清掃作業では、清掃スイッチ(10)をブロワクラッチ(9)が接続される側に操作した場合に、エンジン(13)の自動回転制御装置(12)を牽制してエンジン(13)の回転速度が低速回転速度の状態でブロワクラッチ(9)が接続されるから、清掃用風路(7)から清掃ホースに高圧の圧風が送り込まれてこの清掃ホースが波打ってのたうち回る等の危険を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、圧風を噴出するブロワ(3)を利用して清掃作業を行うときには、常に、コンバインの車体(1)に駐車ブレーキ装置(11)が働き、制動状態にあるから、車体(1)が傾斜地に置かれたり、不用意に走行操作レバーに手が触れ走行クラッチが繋がるような誤作動があったとしても、車体(1)が移動することはなく、安心して安全に清掃作業を行なうことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、清掃スイッチ(10)を操作してブロワクラッチ(9)を接続したときには、エンジン(13)の自動回転制御装置(12)を牽制して低速回転からスタートできるから、エンジン(13)の回転速度の不用意な上昇によって清掃用風路(7)に接続する清掃ホースに高圧の圧風が送り込まれてこの清掃ホースが波打ってのたうち回り危険な状態になることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の制御機構を示すブロック図
【図2】コンバインの側面図
【図3】コンバインの平面図
【図4】グレンタンクの背面図
【図5】分岐した両風路に風路切替え装置を設けた正面図
【図6】風路切替え装置を穀粒搬出側に切り替えた状態の側面図
【図7】風路切替え装置を穀粒搬出側に切り替えた状態の正面図
【図8】風路切替え装置を清掃側に切り替えた状態の側面図
【図9】風路切替え装置を清掃側に切り替えた状態の正面図
【図10】他の実施例を備えたコンバインの側面図
【図11】他の実施例を備えたコンバインの側面図
【図12】前図11のグレンタンク背面図
【図13】他の実施例を備えたコンバインの側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、コンバインは、図2、及び図3に示すように、主として大豆等の穀物を収穫する汎用型の構成であって、左右一対のクローラ15,15を装備した車体1上に全稈投入型の脱穀装置16を搭載し、その前側に刈取前処理装置17を、上下回動可能に装着して構成している。そして、該刈取前処理装置17は、前部上側に掻込みリール18を軸架し、その下方位置には刈幅の広い刈取装置19を装備し、該刈取装置19の後方で低位置にある受枠20上には、横送り掻込みオーガー21を横軸に軸装し、刈取った穀稈を一側(実施例では進行方向の左側)に搬送して集め、側部のコンベヤ装置22の搬送始端部に供給する構成としている。そして、コンベヤ装置22は、斜め上方の終端部まで搬送した穀稈の全てを前記脱穀装置16に供給する構成としている。
【0016】
そして、グレンタンク2は、図面に示すように、車体1上において、前記脱穀装置16の横に併設して搭載し、脱穀、選別後の穀粒を揚穀して貯留する構成としている。
つぎに、穀粒搬送風路6は、図2に示すように、ブロワ3の噴出し口に連通させた風路5に、始端部を接続し、前記グレンタンク2の下方を通して後側から上方にまで延長し、更に、コンバインの上方を通して前方側に向けて伸ばしてエアー式穀粒搬出装置4を構成している。そして、該エアー式穀粒搬出装置4は、実施例の場合、上部では柔軟なホースではなく、硬い排出筒23から構成して収納具24に収納自在とし、その終端部には穀粒排出口25を開口して構成している。そして、前記穀粒搬送風路6は、コンバイン1の上方において、前記穀粒排出口25から穀粒を排出する位置が選択できるように、前記排出筒23を上下方向と左右方向(平面視で360度近くまで旋回できる。)とに回動調節自由に構成している。
【0017】
そして、前記ブロワ3は、その内部には起風翼車を内装、軸架しており、車体1上に搭載しているエンジン13から伝動機構を経由し、入・切、切替え操作されるブロワクラッチ9を介して伝動される回転動力によって駆動される構成としている。そして、前記ブロワクラッチ9は、穀粒搬出時には、排出スイッチ27の一段目のON操作で接続し、清掃作業時には、清掃スイッチ10のON操作によって接続され、伝動可能になる構成としている。
【0018】
つぎに、穀粒フィーダ(穀粒定量繰出装置)26は、図2に示すように、前記グレンタンク2の底の部分と前記穀粒搬送風路6との間に配置し、公知の装置であるから詳細な説明は省略するが、回転繰出ローターを回転駆動しながら定量の穀粒を下側の穀粒搬送風路6内に供給できる構成としている。なお、穀粒フィーダ26は、運転席32に設けた前記排出スイッチ27の二段目(前述のように、一段目押込み操作でブロワクラッチ9を入り操作する。)の押込みによるON操作で電動モーターを始動して回転駆動される構成としている。
【0019】
つぎに、清掃用風路7は、図5、図7、図9に示し、既に説明したように、ブロワ3に連通させた前記風路5を、穀粒搬送風路6側と、その上側にもう一つの風路7とに分岐させて二又に構成している。そして、二又に分岐した前記穀粒搬送風路6と清掃用風路7との間には、風路切替え装置8を配置して取り付け、二つに分かれた風路6,7の始端部において、圧風の送り方向を切り替える切替弁30を、外側から切替操作レバー31によって、穀粒搬出側と清掃側とに選択して切替できる構成としている。
【0020】
このように、風路切替え装置8は、切替弁30と切替操作レバー24とからなり、切替操作によって、ブロワ3から風路5に噴出される圧風を、前記穀粒搬送風路6を閉として前記清掃用風路7を開として清掃側にも取り出しができる構成としている。なお、実施例の場合、清掃用風路7は、清掃ホース7aによって構成している。
【0021】
つぎに、実施例のコンバインは、駐・停車時には、安全のために、車体1に駐車ブレーキを掛けるように駐車ブレーキ装置11を設け、運転席32の前に駐車ブレーキペダル33を配置した構成としている。そして、実施例は、前記風路切替え装置8の切替操作レバー31を操作して切替弁30を切り替えて、清掃用風路8を開き穀粒搬送風路6を閉じた後、前記清掃スイッチ10をON操作した場合には、前記駐車ブレーキ装置11が制動状態にある場合にのみ、既に説明したブロワクラッチ9が接続できる構成としている。
【0022】
したがって、実施例は、ブロワ3から吹き出す圧風を清掃用風路7側に利用するときには、コンバインが動くことがないように、確実に駐車ブレーキ装置11の掛かった状態で停止し、安全性が確保できるものとなっている。
【0023】
そして、実施例に係るコンバインのエンジン13は、近年普及している自動回転制御装置12が装備されており、コンバインを構成している各作業装置、例えば、脱穀装置16や刈取前処理装置17等のクラッチを入り操作すると、関連して自動的に増速されて高速側に変速する構成となっている。しかしながら、実施例の場合、前記清掃スイッチ10は、清掃作業を開始する前に、ON操作して、ブロワクラッチ9を接続してブロワ3の伝動を開始しても、そのときには前記自動回転制御装置12を牽制する機構が働いてエンジン13は増速されず、通常のアイドリング回転速に保持される構成としている。
【0024】
したがって、実施例は、清掃スイッチ10をON操作してブロワクラッチ9を接続してブロワ3を伝動しても、駆動の最初から高速になることが避けられ、圧風も弱く、その後において、オペレータの手動操作でエンジン速度が選択できるものとなっている。そのため、清掃ホース7aは、波打ってのたうち回る等の危険な状態が回避され、安全に清掃作業ができる効果がある。
【0025】
つぎに、実施例の制御機構について、図1に基づき説明する。
まず、コントローラ35は、入力側に、切替弁位置センサ36、駐車ブレーキセンサ37、エンジン回転数センサ38、脱穀スイッチ39、排出スイッチ27、清掃スイッチ10、排出筒位置センサ40、エンジン始動スイッチ41等を接続し、操作情報や検出情報が入力される構成としている。そして、コントローラ35は、出力側に、ブロワクラッチ9、穀粒フィーダ26、イグニッションコイル42、燃料調整弁43等をそれぞれ接続して、出力する制御信号に基づいて作動する構成としている。
【0026】
そして、コントローラ35は、既に説明しているように、清掃スイッチ10がON操作されたとき、駐車ブレーキセンサ37から入力される検出情報に基づき、車体1に駐車ブレーキが掛かっている場合にのみ、ブロワクラッチ9を接続する制御信号を出力し、アクチュエータを介してクラッチを接続するのである。更に、コントローラ35は、自動回転制御装置12を装備したエンジン13を搭載した実施例の場合、清掃スイッチ10をON操作すると、自動的に自動回転制御装置12を牽制する機構が働き、燃料調整弁43にアイドリング回転時の燃料噴射量を保持するように制御信号を出力して制御し、エンジン回転の増速を牽制することができる。
【0027】
つぎに、排出筒位置センサ40は、排出筒23が車体1上方の収納具24にあるときに、それを検出した情報をコントローラに入力し、排出スイッチ27をON操作しても、作業安全のためにブロワクラッチ9が接続しない牽制制御が働く構成としている。この場合、コントローラ35は、清掃スイッチ10をON操作すると、他の条件が満足された状態であれば、排出筒位置センサ40の検出情報が入力されていても、ブロワクラッチ9が接続されてブロワ3が駆動されるように、上記牽制が解除される制御が可能になる構成としている。
【0028】
このように構成した実施例の場合、コンバインは、例えば、倉庫等の狭い場所に収納して、しかも、エアー式穀粒搬出装置4の排出筒23を正規の収納位置に収納した状態にあっても、ブロワ3が駆動できることとなって清掃作業が可能になる特徴がある。
【0029】
以上述べたように、この発明の実施例は、清掃作業を行うにあたり、エアーを噴出するブロワ3のクラッチを接続するときには、常に、コンバインの車体1には駐車ブレーキ装置11が働き、制動状態にあるから、清掃中に、車体1が自然に移動したり、不用意に走行操作レバーに手が触れて走行クラッチが繋がるような誤作動があったとしても、車体1が移動することはなく、安心して安全に清掃作業ができるものとなっている。
【0030】
そして、実施例の場合、エンジン13は、清掃スイッチ10を操作してブロワクラッチ9を接続したときには、前記エンジン13に装備されている自動回転制御装置12が牽制され、脱穀装置16や刈取前処理装置17の伝動を接続したときと異なり、アイドリング程度の低速回転からスタートできる制御になっている。したがって、清掃ホース7aは、高圧の圧風が急に噴き込まれ、突然に波打ってのたうち回るような危険な状態を回避することができる安全性に優れた利点がある。そして、オペレータは、エンジン速度をアクセルレバーの手操作によって自由に調整しながら清掃作業ができる。
【0031】
つぎに、本件出願に係るエアーブロワの穀粒搬出装置におけるブロワ3を利用した清掃装置に関し、その他の実施例について説明する。
まず、一つの実施例として、この種の穀粒搬出装置に清掃装置を併用したコンバインは、エンジン13の始動に関し、風路切替え装置8の切替操作レバー31が清掃側にあるときには、エンジン13の始動ができないように牽制する構成にして穀粒の風路6内への詰まりを未然に防止する構成としている。エアー式穀粒搬出装置4は、切替操作レバー31が清掃側でエンジン始動をして、ブロワ3からの圧風を清掃ホース7aに逃がした状態で排出スイッチ27を操作すると、穀粒フィーダ26や穀粒搬送風路に穀粒の詰まりが発生する虞があり、誤操作による詰まりを未然に防止するために牽制機能を保持させている。
【0032】
つぎの実施例は、清掃ホース7aの巻取り、収納に関し、実施例の場合、図2、及び図4に示すように、グレンタンク2の下側空間部分に装置している燃料タンク45の上方外側に巻取収納部46を形成して設けた巻取枠48にホースを巻き付けて収納する構成としている。
【0033】
このように構成することによって、清掃ホース7aは、図面に示すように、燃料タンク45の上方外側部の巻取枠48に巻き付けて収納し、燃料タンク45は曲面が多く、ホース7aに接触してもホースを損傷することがない利点がある。更に、清掃ホース7aは、グレンタンク2や脱穀装置16の伝動機構からも離れた位置にあって、これらに干渉する虞もない利点がある。
【0034】
なお、清掃ホース7aは、図2に示すように、風路5から分岐して上方に延長する基部に近い部分を、支持具47によって機体側に支持する構成としている。この場合、実施例の支持具47は、U字型にして融通を持たせてホースを保持できる構成にしていると、清掃ホース7aの移動時に無理を与えない利点がある。
【0035】
つぎに、ブロワ3から噴出する圧風温度に関し、2,3の実施例を述べる。
まず、ブロワ3から噴出する圧風は、図8、及び図9に示すように、切替操作レバー31の操作角度によって切替弁30と風路6,7の孔径(閉塞度)との間に隙間(風が逃げる隙間)が生じ、噴出する風の温度に差が生じることが解っている。例えば、図8に示した実施例の場合、切替操作レバー31を清掃に切替えた位置(切替弁30が図9に示すように、穀粒搬送風路6を閉めて清掃用風路7を開けた)に切り替えると、清掃用風路7に流入する圧風は、大径風路(風路5)から小径風路(清掃用風路7)に圧縮状態で噴き込まれて、温度が急激に上昇して高温化する弊害が発生する。
【0036】
したがって、実施例は、清掃作業に入るとき、急激な温度上昇を防止するために、切替操作レバー31を清掃に切替えた位置(最端位置まで切替えた位置)でも、前記切替弁30が穀粒搬送風路6を完全に閉めないで周囲に圧風の逃げる隙間ができる程度に閉鎖する構成としている。
【0037】
このように構成した実施例は、圧風の温度の上昇を押さえることができるから、高温のために清掃ホース7aや取付部分で起きる弊害(やけど、火災等)を未然に防止して安全に作業ができる利点がある。
【0038】
つぎに、図10に示した実施例は、図面に示すように、穀粒フィーダ26より搬送方向の下手側において、穀粒搬送風路6の途中部に、清掃ホース7aの始端部を着脱自由に取り付けできる装着部50を構成している。このように、清掃ホース7aは、エアー式穀粒搬出装置4の搬送途中に接続部分を構成しておき、オプション装置として短時間で着脱できる着脱機構を設けて構成すれば、穀粒搬出作業をしないときにエアーブロワ3を有効に利用することができる。
【0039】
この場合、清掃ホース7aは、装着部50の着脱機構をワンタッチ式にすれば、広く普及することができる。
つぎに、図11、及び図12に示した実施例について説明する。
【0040】
実施例は、風路5を、穀粒搬送風路6と、清掃用風路7に代わる乾燥風取出し風路51とに分岐させて設け、該乾燥風取出し風路(ホース)51の終端部をグレンタンク2の下部に連通させて連結し、ブロワ3からの圧風を乾燥風として利用する構成としている。実施例の乾燥風供給装置は、既に説明した清掃装置を構成している切替操作レバー31と切替弁30とをそのまま利用して構成できる。
【0041】
このように構成すると、実施例は、コンバイン作業に伴って順次グレンタンク2に貯留される穀粒、特に、湿り気の多い場合等に有効に利用することができるものとなり、前の実施例で説明したように、圧風の温度も上昇できるから、効果的な予備乾燥が可能になる実用的効果がある。
【0042】
つぎに、図13に示した実施例は、リモコンオーガーのアンテナ52の取付け位置に関するものである。この種のコンバインは、各装置を、リモコンを利用して遠隔操作をする構成にしており、例えば、エアー式穀粒搬出装置4の場合、排出筒(穀粒搬送風路6)23を、補助作業者がコンバインの車体1から離れた位置に居ながら、リモコン操作により上下回動や旋回操作をして、穀粒排出位置に移動する場合等がある。
【0043】
そこで、実施例に係るアンテナ52は、図13に示すように、グレンタンク2上において、キャビン53のルーフ54より後方に設けた高い位置のプレクリーナー55と、排出筒23の基部旋回中心位置との間で、アンテナ機能を発揮できる程度の高さ(前記クリーナー55の上部と排出筒23の基部回動中心とを結んだ線より上に出ない高さ)を保持して取り付けた構成としている。
【0044】
この種のコンバインは、倉庫等に収納して保管するときに車体1全体をシートカバーで覆って保護するが、従来構成では、前記アンテナ52が、車体1を覆ったシートカバーによって折り曲げられて破損されることがあった。
【0045】
実施例は、コンバイン上部のアンテナ52を上記のようなシートカバーによる事故から保護し、長期間使用できるように、損傷を受け難い位置に取り付けるものとしている。
【符号の説明】
【0046】
1 車体
2 グレンタンク
3 ブロワ
4 エアー式穀粒搬出装置
5 風路
6 穀粒搬送風路
7 清掃用風路
7a 清掃ホース
8 風路切替え装置
9 ブロワクラッチ
10 清掃スイッチ
11 駐車ブレーキ装置
12 自動回転制御装置
13 エンジン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)に搭載したグレンタンク(2)内の穀粒を、ブロワ(3)による圧風で機外に搬出するエア式穀粒搬出装置(4)を備えたコンバインにおいて、前記ブロワ(3)の圧風吹き出し側に連通した風路(5)を穀粒搬送風路(6)と清掃用風路(7)とに分岐させ、該風路(5)の分岐部にブロワ(3)からの圧風を穀粒搬送風路(6)側へ送る状態と清掃用風路(7)側へ送る状態とのいずれかの状態に切替える風路切替え装置(8)を設け、該風路切替え装置(8)を清掃用風路(7)側へ送風する状態に切替えた場合にブロワクラッチ(9)を接続可能とする清掃スイッチ(10)を設け、コンバインの車体(1)に装備した駐車ブレーキ装置(11)を制動状態に保持しているときにのみ清掃スイッチ(10)の操作でブロワクラッチ(9)を接続できる構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記車体(1)に自動回転制御装置(12)を装備したエンジン(13)を搭載し、前記駐車ブレーキ装置(11)を制動状態に保持し、且つ、前記清掃スイッチ(10)をブロワクラッチ(9)が接続される側に操作した場合に、前記自動回転制御装置(12)の作動が牽制される構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項1】
車体(1)に搭載したグレンタンク(2)内の穀粒を、ブロワ(3)による圧風で機外に搬出するエア式穀粒搬出装置(4)を備えたコンバインにおいて、前記ブロワ(3)の圧風吹き出し側に連通した風路(5)を穀粒搬送風路(6)と清掃用風路(7)とに分岐させ、該風路(5)の分岐部にブロワ(3)からの圧風を穀粒搬送風路(6)側へ送る状態と清掃用風路(7)側へ送る状態とのいずれかの状態に切替える風路切替え装置(8)を設け、該風路切替え装置(8)を清掃用風路(7)側へ送風する状態に切替えた場合にブロワクラッチ(9)を接続可能とする清掃スイッチ(10)を設け、コンバインの車体(1)に装備した駐車ブレーキ装置(11)を制動状態に保持しているときにのみ清掃スイッチ(10)の操作でブロワクラッチ(9)を接続できる構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記車体(1)に自動回転制御装置(12)を装備したエンジン(13)を搭載し、前記駐車ブレーキ装置(11)を制動状態に保持し、且つ、前記清掃スイッチ(10)をブロワクラッチ(9)が接続される側に操作した場合に、前記自動回転制御装置(12)の作動が牽制される構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−135794(P2011−135794A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296494(P2009−296494)
【出願日】平成21年12月26日(2009.12.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月26日(2009.12.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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