説明

コンバイン

【課題】刈取部が接地した場合であっても刈取部が地中に突き刺さってしまう前に刈取部を上昇させることができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、刈取部4を昇降させる油圧シリンダ9と、刈取部4の接地を検出する接地式刈高さセンサ90と、接地式刈高さセンサ90の検出結果に基づいて、油圧シリンダ9を駆動させて刈取部4の上昇制御を行う制御装置70と、を備え、刈取部4が接地した際の走行速度vが第二設定速度V2以上の場合、制御装置70は、刈取部4の上昇速度を速くする制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関し、特に、昇降装置を駆動させて刈取部の昇降制御を行う昇降制御装置を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取部の接地を検出する接地センサを有し、接地センサからの信号により刈取部を上昇させる上昇手段を備えたコンバインが公知となっている(例えば、特許文献1参照)。また、刈取部の先端に設け接地センサを構成する分草体が、圃場面の凹部に至り押し上げられると、接地センサがONになり、刈取部を上昇させるようにしたコンバインも公知となっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−28439号公報
【特許文献2】特開平10−295138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のコンバインにおいては、刈取部が接地した際の走行速度が速い場合、刈取部を上昇させる速度が遅いと、刈取部を上昇させる前に、刈取部が地中に突き刺さってしまう可能性があった。また、刈取部が接地した際の走行速度が遅い場合であっても、刈取部が接地している時間が長ければ、刈取部が地中に突き刺さってしまう可能性がある。
また、刈取部を上昇させる制御を行っている際に、操作手段による刈取部の下降操作が誤って行われた場合、手動操作が優先されて刈取部を下降させてしまい、刈取部が地中に突き刺さってしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は以上の如き状況に鑑み、刈取部が接地した場合であっても刈取部が地中に突き刺さってしまう前に刈取部を上昇させることができるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、刈取部を昇降させる昇降装置と、刈取部の接地を検出する接地センサと、前記接地センサの検出結果に基づいて前記昇降装置を駆動させて刈取部の上昇・下降制御を行う昇降制御手段と、を備え、刈取部が接地した際の走行速度が設定速度以上の場合、昇降制御手段は、刈取部の上昇速度を速くする制御を行うものである。
【0008】
請求項2においては、前記刈取部が接地した際の走行速度が設定速度未満の場合であって、接地センサが一定時間以上接地状態であると検出した場合、昇降制御手段は、刈取部の上昇速度を速くする制御を行うものである。
【0009】
請求項3においては、刈取部の昇降操作を行う操作手段を備え、操作手段は前記昇降制御手段と接続され、前記昇降制御手段が刈取部の上昇速度を速くする制御を行っている場合には、前記昇降制御手段は、前記操作手段の操作による刈取部の上昇・下降よりも前記昇降制御手段による刈取部の上昇を優先するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、刈取部が接地した際の走行速度が速い場合には、刈取部を上昇させる速度が速くすることができるため刈取部が地中に突き刺さってしまう前に刈取部を上昇させることができる。
【0012】
請求項2においては、刈取部が接地した際の走行速度が遅い場合であって、刈取部が接地している時間が長い場合にも、刈取部を上昇させる速度が速くなるため、刈取部が地中に突き刺さってしまう前に刈取部を上昇させることができる。
【0013】
請求項3においては、接地センサの検出結果に基づく刈取部の上昇制御を行っている際に、操作手段の操作による刈取部の上昇・下降が行われた場合であっても、前記接地センサの検出結果に基づく刈取部の上昇制御が優先されるため、刈取部が地中に突き刺さってしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの走行機体の側面図。
【図2】走行機体の平面図。
【図3】動力伝達のスケルトン図。
【図4】運転室内の平面図。
【図5】接地式刈高さセンサの側面図。
【図6】図5のA−A線矢視一部断面図。
【図7】図5のB−B線矢視断面図。
【図8】制御装置の接続構成を示すブロック図。
【図9】接地式刈高さセンサの検出結果に基づく刈取部の上昇制御を示すフローチャート図。
【図10】接地式刈高さセンサの検出結果に基づく刈取部の上昇制御を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係るコンバインについて図1及び図2を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、走行機体1は走行クローラ2aが備えられた左右一対の走行装置2を有する。走行機体1の進行方向に向かって左側には脱穀部3を搭載し、走行機体1の前部には単動式の油圧シリンダ9により昇降動可能な刈取部4を配置する。刈取部4の下部フレームの下部側にはバリカン式の刈刃装置5が配置される。また、刈取部4の前方には図2に示すように、6条分の穀稈引起装置6が配置され、穀稈引起装置6と脱穀部3における扱胴13に穀稈を供給するためのフイードチェン7の前端との間には穀稈搬送装置8が配置され、穀稈引起装置6の下部前方には6条分の分草体10が突出している。走行機体1の右側前部に運転室11が配置され、その後側に穀粒タンク12が配置されている。前記穀稈搬送装置8では、穀稈引起装置6引き起こされた穀稈の株元部を挟持しながら搬送してフイードチェン7の前端部に株元部を受け継がせる。
【0016】
次に、コンバインの動力伝達系について図3を用いて説明する。
図3に示すように、エンジン35からの出力の一方は、クラッチ36を介して穀粒タンク12内の底コンベヤ37及び縦コンベヤ38に動力伝達し、次いで排出オーガ内のスクリューコンベヤ(図示せず)に伝達される。エンジン35からの他の出力は、動力分岐用ミッション39を介して扱胴駆動軸40、選別駆動軸41、走行用の油圧ポンプ油圧モータ式(HST式)走行駆動部42への駆動軸43及び刈取部4への定速回転駆動軸44に動力伝達される。そして、エンジン35からの他の出力は、動力分岐用ミッション39内の脱穀クラッチ48aを介して動力伝達のON・OFFを実行し、扱胴駆動軸40または選別駆動軸41を介して扱胴13及び処理胴29、一番受樋のスクリューコンベヤ26a、唐箕フアン、二番受け樋のスクリューコンベヤ26b、排藁チェン31、吸引フアン30及び排藁カッタ33に伝達される。
【0017】
他方、前記(HST式)走行駆動部42より出力する刈取同調駆動軸45から、(走行駆動部の正回転時のみ伝達可能な)ワンウエイクラッチ45a及び同調クラッチ46を介して刈取軸47に動力伝達させ、フイードチェン7に直接伝達する。また、刈取軸47に設けた刈取クラッチ49を介して刈取部4への動力伝達をON・OFFするように構成されている。脱穀クラッチ48a,同調クラッチ46,流込みクラッチ48,刈取クラッチ49をそれぞれON・OFF操作するには、それぞれのクラッチに対応する電磁ソレノイド等のクラッチアクチュエータをON・OFF動作するように構成されている。なお、同調クラッチ46はベルトのテンションを緊張・緩和することにより動力継断するテンションクラッチであっても良い。従って、後述するように、車速同調制御を禁止(中止)する場合等で、動力分岐用ミッション39の定速回転駆動軸44を介して刈取軸47に動力伝達し、HST式走行駆動部42より出力する刈取同調駆動軸45の回転数が前記定速回転駆動軸44からの回転数より低い場合や、刈取同調駆動軸45がコンバインの後退方向に回転する場合には、ワンウエイクラッチ45aが空回りする。
【0018】
なお、前記HST式(2油圧モータ2油圧ポンプによる無段階変速機構内に機械的変速機構を組み込んだもの)走行駆動部42の各油圧ポンプ等の斜板を調節して車速を無段階変速するための主変速レバー85は、図4に示すように、前記運転室11内の座席11aの側方操作部にて前後回動し、ほぼ垂直姿勢の中立位置(停止位置)に対して前に倒すと前進位置であり、垂直に対する傾斜角度が大きいほど車速が速くなる。後方に傾斜させると後退となり、その傾斜角度が大きいほど車速が速くなる。
【0019】
同じく座席11aの側方操作部に配置した副変速レバー86は、HST式走行駆動部42内に設けた機械的変速機構(図示せず)を操作する伝動モータ等のアクチュエータを制御するためのものであり、副変速レバー86を路上走行モード、標準作業モード、低速作業モードの各位置に切換えると、コンバインに搭載したマイクロコンピュータ式の制御装置(コントローラユニット)70の指令により、前記各作業モード時に適応する走行駆動部42の出力(馬力)及び回転数を所定のレンジに設定保持することができる。
【0020】
なお、走行機体1を前進走行させながら通常の刈取脱穀作業を実行するとき(低速作業モード時及び標準作業モード時)には、動力分岐用ミッション39における流込みクラッチ48をOFF(動力遮断)し、脱穀クラッチ48a,同調クラッチ46及び刈取クラッチ49はON(動力接続)の状態にし、燃料噴射量センサ及び車速センサの検出値を監視しながら、走行駆動部42の出力に同調させた回転数の刈取同調駆動軸45を介して刈取軸47を駆動させて刈取部4及びフイードチェン7を同調駆動する一方、扱胴駆動軸40及び選別駆動軸41を駆動させて、扱胴13等を駆動させるのである。
【0021】
また、圃場内での刈取脱穀作業途中において走行機体を方向転換等を実行するに際して、走行機体1を停止または後退させるとき、刈取部4とフイードチェン7との駆動を停止する時には、同調クラッチ46及び流込みクラッチ48をOFFにする。フイードチェン7のみ駆動するには、刈取クラッチ49をOFFにする。この場合、刈取部4への動力伝達はなく、動力分岐用ミッション39から刈取軸47を介してフイードチェン7にのみ動力伝達される。
【0022】
次に、接地式刈高さセンサ90の構成について図5から図7を用いて説明する。
図5から図7に示すように、前記刈取部4における下部の前端に突出させて配置した複数の分草体10のうち前進方向に向かって最右端に配置された回動式分草体10aの適宜箇所に接地式刈高さセンサ90を設置するものであって、他の分草体10は刈取部4を支持する下部フレーム4a等に固定されている。
【0023】
前記回動式分草体10aの後方において、前後長手方向に配設された下部フレーム4aに取付けプレート91が立設され、取付けプレート91にヒッチバネホルダ92がボルト93にて固定され、ヒッチバネホルダ92の前板92aとその後方位置の中途板92bとに摺動ロッド94を貫通支持させ、前係止鍔95aを摺動ロッド94の前寄り部位にピン固定し、この前係止鍔95aに前端を支持させた付勢バネ(圧縮コイルバネ)96を摺動ロッド94に被嵌する。付勢バネ96の後端は、摺動ロッド94に遊嵌し、前記中途板92bにて後退不能に当接した後係止鍔95bに支持されることにより、摺動ロッド94は前方に突出付勢されている。ヒッチバネホルダ92の後板92cに対してセンサ体98は調節ねじ97にて前後位置調節可能に装着されている。そして、センサ体98の前端から出没可能に突出したセンサ棒98aは、前記調節ねじ97による前後位置調節操作にて、前記摺動ロッド94の後端面に対して当接もしくは適宜の隙間を隔てて対峙するように設定される。センサ体98は、本実施形態ではスイッチ構成とし、前記突出付勢されているときOFFのセンサ棒98aが所定量だけ後退するとONとなるように構成されているが、センサ体として、フォトインタラプタ等の光センサ、や、静電容量型センサを使用しても良い。
【0024】
図7に示すように、前記下部フレーム4aの前端にボルト固定したホルダ100の左右両側板100a,100bには、枢支軸101が回動可能に支持され、該枢支軸101に前記回動式分草体10aにおける正面視略三角形状の分草板102を上下回動可能に支持する連動アーム103の基部の被嵌筒部103cがキー104を介して一体的に回転するように連結されている。前記一方の側板100bの外側において、枢支軸101に固定した縦方向の回動アーム105には、前記摺動ロッド94の前端と対峙するように当接板105aが設けられている。
【0025】
また、図5及び図7に示すように、前記分草板102の下端には、圃場面の摺接可能な橇体107が固着されており、さらにその後方において、分草板102の裏面側の取付けブラケット102aと前記連動アーム103の前部位である水平部103aとを枢軸ピン108を介して連結すると共に、水平部103aから立設するブラケット109と前記取付けブラケット102aとを、円弧溝穴110を介してボルト111により固定し、分草板102の上下傾き姿勢を調節できるように構成されている。連動アーム103は、図5に示すように、圃場面に近接した水平部103aの長さは、該水平部103aから後上向きに傾斜して回動支点である枢支軸101方向に延びる傾斜部103bの長さよりも短くなるように設定している。
【0026】
さらに、橇体107を、圃場面に対して接地可能な姿勢と接地しない姿勢とに選択可能とする連動機構として、前記連動アーム103から立設する補助アーム112の上部に操作ワイヤ113の先端を連結し、操作ワイヤ113の他端を操作レバー116と連結している。該操作ワイヤ113は可撓性のアウタ管114に挿入されて案内され、アウタ管114の先端は前記下部フレーム4aに立設したブラケット115に固定され、該アウタ管114及び操作ワイヤ113を前記運転室11内の側方操作部にまで延長し、操作盤の前後長手方向に穿設した案内溝117に沿って回動する操作レバー116に操作ワイヤ113を連結するように構成している(図5〜図7参照)。操作レバー116を前倒しするときには、橇体107が圃場面に接地可能となり、圃場面の凹凸に合わせて連動アーム103が上下回動可能となる。操作レバー116を後傾動させて案内溝117の係止溝のいずれかの位置に係止させると、連動アーム103、ひいては橇体107を圃場面から大きく離れ、上昇位置に保持されるようになっている。
【0027】
なお、前記ホルダ100には、分草板102、橇体107、連動アーム103の自重により橇体107の先端側が下向き回動するときの下限位置を規制し、且つその位置を変更するために、規制片118に対して位置調節できるようにボルト・ナット119を設けている。通常の場合、固定式の分草体10に比べて、回動式の分草体10aにおける橇体107の高さ位置を適宜寸法だけ低い位置になるように設定し、前記固定式の分草体10よりも早く圃場面に接地して、この接地状態を感知できるように調節するものである。
【0028】
次に、刈取部4の上昇・下降制御を行う昇降制御手段としての制御装置70の構成について図8を用いて説明する。
図8に示すように、制御装置70は、マイクロコンピュータ等の電子式制御装置であり、各種演算処理や制御を実行するための中央処理装置(CPU)や、RAMやROMから構成される記憶装置、タイマ機能としてのクロック等を備える。
制御装置70には、接地式刈高さセンサ90のセンサ体98が接続されている。また、制御装置70には、オペレータが手動で刈取部4の上昇、下降を行うための操作手段としての手動スイッチ76が接続されている。また、制御装置70は、昇降装置としての油圧シリンダ9を作動させるための、電磁弁50に設けられた電磁ソレノイド50aと接続されている。また。制御装置70には、走行速度を検知するための走行速度センサ75が接続されている。また、制御装置70には、刈取部上昇制御の入・切を切り換えるための上昇制御開始スイッチ74が接続されている。
【0029】
手動スイッチ76は、オペレータが手動で刈取部4の上昇、下降を行うための操作手段である。手動スイッチ76は、刈取部4を上昇、停止、及び下降の何れかの状態に切り換えることができる。
電磁弁50は電磁比例弁より構成され、制御装置70からの制御信号(昇降信号)に応じて油圧シリンダ9への送油量を変更可能に構成して、伸長速度(上昇速度)を変更可能としている。
走行速度センサ75は車軸近傍に配置され、車軸の回転数を検知して走行速度を検知するようにしているが、センサの種類や取り付け位置は限定するものではない。
【0030】
次に、接地式刈高さセンサ90を用いた刈取部4の上昇制御について図9及び図10を用いて説明する。
図9及び図10に示すように、まず、刈取部自動上昇制御が開始されるか否かについて判断する(ステップS10)。具体的には、運転室11内の操作盤に設けられた上昇制御開始スイッチ74がON状態となったか否かについて判断する。また、副変速レバー86がON状態となった否かについて判断する。また、作業状態が刈取状態になったか否かについて判断する。作業状態が刈取状態になったか否かについては、例えば、刈取クラッチ49がON状態になったか否かによって判断する。また、手動スイッチ76が故障していないか否かについて判断する。また、通信状態や断線・故障等が発生していないかも判断する。また、車速vが第一設定速度V1以上であるか否かについて判断する。第一設定速度V1とは、上昇制御を開始するのに最低必要な速度であり、例えば、V1は0.03m/sに設定している。
ステップS10において、上昇制御が開始されていないと判断された場合、言い換えれば、上昇制御開始スイッチ74がOFF状態であること、または、副変速レバー86がOFF状態であること、または、作業状態が刈取状態でないこと、または、手動スイッチ76が故障していること、または、通信状態や断線・故障等が発生していること、または、車速vが第一設定速度V1未満であること、のいずれかが成立している場合には、再びステップS10に移行する。
【0031】
ステップS10において、上昇制御が開始されたと判断された場合、言い換えれば、上昇制御開始スイッチ74がON状態であること、及び、副変速レバー86がON状態であること、及び、作業状態が刈取状態であること、及び、手動スイッチ76が故障していないこと、及び、通信状態や断線・故障等が発生していないこと、及び、車速vが第一設定速度V1以上であることの全ての条件が成立している場合には、接地状態であるか否かについて判断する(ステップS20)。具体的には、接地式刈高さセンサ90が接地状態を感知したか否かについて判断する。ステップS20において、接地状態ではないと判断された場合には、再びステップS20に移行する。
【0032】
ステップS20において、接地状態であると判断された場合には、刈取部4の上昇を開始する(ステップS30)。具体的には、単動式の油圧シリンダ9を伸長させることにより刈取部4を上昇させるものである。
【0033】
ステップS30において刈取部4の上昇を開始した後、走行速度センサ75によって検出された走行速度vが閾値としての第二設定速度V2以上であるか否かについて判断する(ステップS40)。ここで、第二設定速度V2とは、この値以上走行速度vが速くなると橇体107が地面に潜ってしまう可能性のある速度である。または、回動式分草体10aが地面の凹凸に追随できず突っ込んでしまう速度である。
【0034】
ステップS40において、走行速度vが第二設定速度V2以上であると判断された場合には、刈取部4の上昇速度を上昇させる(ステップS50)。つまり、油圧シリンダへの単位時間当たりの送油量を増加させる。その後、刈取部自動上昇制御が終了されるか否かについて判断する(ステップS57)。
【0035】
また、ステップS40において、走行速度vが第二設定速度V2未満であると判断された場合には、接地状態が所定時間T1以上継続しているか否かについて判断する(ステップS55)。具体的にはステップS20において、接地状態であると判断された時点を記憶しておき、当該時点から所定時間T1の間、継続して接地式刈高さセンサ90が接地状態を感知しているか否かについて判断する。ステップS55において、接地状態が所定時間T1以上継続していると判断された場合には、刈取部4の上昇速度を上昇させる(ステップS56)。つまり、回動式分草体10aが地面にいまだ接地した状態であるため、速やかに脱出するために上昇速度を上昇させるのである。その後ステップS60に移行する。また、ステップS55において、接地状態が所定時間T1以上継続していないと判断された場合には、ステップS57に移行する。
【0036】
ステップS57において、具体的には、運転室11内の操作盤に設けられた上昇制御開始スイッチ74がOFF状態となったか否かについて判断する。また、副変速レバー86がOFF状態となった否かについて判断する。また、作業状態が刈取状態でなくなったか否かについて判断する。作業状態が刈取状態でなくなったか否かについては、例えば、刈取クラッチ49がOFF状態になったか否かによって判断する。また、手動スイッチ76が故障しているか否かについて判断する。また、通信状態や断線・故障等が発生しているかも判断する。また、車速vが第一設定速度V1未満であるか否かについて判断する。第一設定速度V1とは、上昇制御を開始するのに最低必要な速度であり、例えば、V1は0.03m/sに設定している。
【0037】
ステップS57において、上昇制御が終了されると判断された場合、言い換えれば、上昇制御開始スイッチ74がOFF状態であること、または、副変速レバー86がOFF状態であること、または、作業状態が刈取状態でないこと、または、手動スイッチ76が故障していること、または、通信状態や断線・故障等が発生していること、または、車速vが第一設定速度V1未満であること、のいずれかが成立している場合には、後述するステップS80へ移行し刈取部上昇を停止する。
【0038】
ステップS57において、上昇制御が継続されていると判断された場合、言い換えれば、上昇制御開始スイッチ74がON状態であること、及び、副変速レバー86がON状態であること、及び、作業状態が刈取状態であること、及び、手動スイッチ76が故障していないこと、及び、通信状態や断線・故障等が発生していないこと、及び、車速vが第一設定速度V1以上であることの全ての条件が成立している場合には、接地状態であるか否かについて判断する(ステップS60)。具体的には、刈取部4を上昇させた後であっても、接地式刈高さセンサ90の接地状態を感知しているか否かについて判断する。
【0039】
ステップS60において、接地状態であると判断された場合には、刈取部4を継続して上昇させる(ステップS65)。ステップS50またはステップS56において刈取部4の上昇速度を上昇させた場合には、上昇速度を上昇させたまま刈取部4を上昇させる。その後再びステップ57において、刈取部自動上昇制御が終了されるか否かについて判断する。
【0040】
ステップS60において、接地状態ではないと判断された場合、言い換えれば、刈取部4が接地しない位置まで上昇された場合、刈取部自動上昇制御が終了されるか否かについて判断する(ステップS67)。
【0041】
ステップS67において、具体的には、運転室11内の操作盤に設けられた上昇制御開始スイッチ74がOFF状態となったか否かについて判断する。また、副変速レバー86がOFF状態となった否かについて判断する。また、作業状態が刈取状態でなくなったか否かについて判断する。作業状態が刈取状態でなくなったか否かについては、例えば、刈取クラッチ49がOFF状態になったか否かによって判断する。また、手動スイッチ76が故障しているか否かについて判断する。また、通信状態や断線・故障等が発生しているかも判断する。また、車速vが第一設定速度V1未満であるか否かについて判断する。第一設定速度V1とは、上昇制御を開始するのに最低必要な速度であり、例えば、V1は0.03m/sに設定している。
【0042】
ステップS67において、上昇制御が終了されると判断された場合、言い換えれば、上昇制御開始スイッチ74がOFF状態であること、または、副変速レバー86がOFF状態であること、または、作業状態が刈取状態でないこと、または、手動スイッチ76が故障していること、または、通信状態や断線・故障等が発生していること、または、車速vが第一設定速度V1未満であること、のいずれかが成立している場合には、後述するステップS80へ移行し刈取部上昇を停止する。
【0043】
ステップS67において、上昇制御が継続されていると判断された場合、言い換えれば、上昇制御開始スイッチ74がON状態であること、及び、副変速レバー86がON状態であること、及び、作業状態が刈取状態であること、及び、手動スイッチ76が故障していないこと、及び、通信状態や断線・故障等が発生していないこと、及び、車速vが第一設定速度V1以上であることの全ての条件が成立している場合には、上昇開始から所定時間T2経過したか否かについて判断する(ステップS70)。所定時間T2とは、上昇制御により刈取部4の上昇が開始された場合に刈取部4の上昇を行う最低時間であり、刈取部4が接地状態でなくなった場合でも必ず所定時間T2の間は刈取部4の上昇を行う。所定時間T2は予め設定されている。具体的には、ステップS30において刈取部4の上昇させた時点を記憶しておき、その時点から所定時間T2が経過したか否かについて判断する。
【0044】
ステップS70において、上昇開始から所定時間T2が経過していないと判断された場合には、刈取部4を継続して上昇させる(ステップS75)。ステップS50またはステップS56において刈取部4の上昇速度を上昇させた場合には、上昇速度を上昇させたまま刈取部4を上昇させる。その後、ステップS67において、刈取部自動上昇制御が終了されるか否かについて判断する。
ステップS70において、上昇開始から所定時間T2が経過したと判断された場合には、刈取部4の上昇を停止して(ステップS80)、制御を終了する。
【0045】
接地式刈高さセンサ90を用いた刈取部4の上昇制御が行われている間は、手動スイッチ76による刈取部4の上昇・下降操作よりも優先して、前記上昇制御による刈取部4の上昇が行われる。すなわち、上昇制御開始スイッチ74がON状態となっている間には、制御装置70は、手動スイッチ76の上昇・停止及び下降の切換に基づく電磁弁50の切り換えを行わず、前記上昇制御に基づく電磁弁50の開閉のみを行い、油圧シリンダ9の摺動を行うものである。
【0046】
以上のように、コンバインは、刈取部4を昇降させる油圧シリンダ9と、刈取部4の接地を検出する接地式刈高さセンサ90と、接地式刈高さセンサ90の検出結果に基づいて、油圧シリンダ9を駆動させて刈取部4の上昇制御を行う制御装置70と、を備え、刈取部4が接地した際の走行速度vが第二設定速度V2以上の場合、制御装置70は、刈取部4の上昇速度を速くする制御を行うものである。
このように構成することにより、刈取部4が接地した際の走行速度vが速い場合には、刈取部4を上昇させる速度が速くすることができるため刈取部4が地中に突き刺さってしまう前に刈取部4を上昇させることができる。
【0047】
また、刈取部4が接地した際の走行速度vが第二設定速度V2未満の場合であって、接地式刈高さセンサ90が所定時間T1以上接地状態であると検出した場合、制御装置70は、刈取部4の上昇速度を速くする制御を行うものである。
このように構成することにより、刈取部4が接地した際の走行速度vが遅い場合であって、刈取部4が接地している時間が長い場合にも、刈取部4を上昇させる速度が速くなるため、刈取部4が地中に突き刺さってしまう前に刈取部4を上昇させることができる。
【0048】
また、刈取部4の昇降操作を行う手動スイッチ76を備え、手動スイッチ76は制御装置70と接続され、制御装置70が接地式刈高さセンサ90の検出結果に基づく刈取部4の上昇制御を行っている場合には、制御装置70は、手動スイッチ76の操作による刈取部4の上昇・下降よりも接地式刈高さセンサ90の検出結果に基づく刈取部4の上昇制御による刈取部4の上昇を優先するものである。
このように構成することにより、接地式刈高さセンサ90の検出結果に基づく刈取部4の上昇制御を行っている際に、手動スイッチ76の操作による刈取部4の上昇・下降が行われた場合であっても、接地式刈高さセンサ90の検出結果に基づく刈取部4の上昇制御が優先されるため、刈取部4が地中に突き刺さってしまうのを防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
4 刈取部
9 油圧シリンダ(昇降装置)
50 電磁弁
50a 電磁ソレノイド
70 制御装置
76 手動スイッチ(操作手段)
90 接地式刈高さセンサ(接地センサ)
v 走行速度
V1 第一設定速度
V2 第二設定速度(設定速度)
T1 所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部を昇降させる昇降装置と、刈取部の接地を検出する接地センサと、前記接地センサの検出結果に基づいて、前記昇降装置を駆動させて刈取部の上昇制御を行う昇降制御手段と、を備え、
刈取部が接地した際の走行速度が設定速度以上の場合、昇降制御手段は、刈取部の上昇速度を速くする制御を行うコンバイン。
【請求項2】
前記刈取部が接地した際の走行速度が設定速度未満の場合であって、接地センサが一定時間以上接地状態であると検出した場合、昇降制御手段は、刈取部の上昇速度を速くする制御を行う請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取部の昇降操作を行う操作手段を備え、操作手段は前記昇降制御手段と接続され、
前記昇降制御手段が前記接地センサの検出結果に基づく刈取部の上昇制御を行っている場合には、前記昇降制御手段は、前記操作手段の操作による刈取部の上昇・下降よりも前記接地センサの検出結果に基づく刈取部の上昇制御による刈取部の上昇を優先する請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−59269(P2013−59269A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198415(P2011−198415)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】