説明

コンピュータ装置及びそのプログラム

【課題】電子ペンにより描画ストロークをページ内に描画したり、当該描画ストロークを電子イレイサーにより消去するシステムにおいて、新規のページを自動的に作成することが容易に可能になる。
【解決手段】ストローク描画手段により、ドットパターンが印刷された書き込み媒体に対する電子ペンの移動に応じて特定される描画ストロークが、処理対象のページ内に描画される。新規ページ作成手段により、前記処理対象のページ内に描画された前記描画ストロークのうち、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が第1所定量以上であることを条件に、新規のページが作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペンにより描画ストロークをページ内に描画したり、当該描画ストロークを電子イレイサーによりページ内から消去するシステムにおいて、新規のページを自動的に作成するためのコンピュータ装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記入した情報を電子化する電子ペンが開発されており、その代表的なものとしてスウェーデンのAnoto社が開発した「アノトペン(Anoto pen)」が知られている。アノトペンは、所定のドットパターンが印刷された専用紙と共に使用される。アノトペンは、ペン先部に、文字等を書くための通常のインクカートリッジに加えて、専用紙に印刷されたドットパターンを撮像するための小型カメラと、撮像したドットパターンから専用紙における位置座標を演算するプロセッサと、演算された位置座標等を外部機器へ送信するデータ通信ユニットとを搭載している。ユーザが専用紙上にアノトペンで文字等を書いたり、専用紙上に図案化されている画像にチェックマークを記入したりすると、ペンの移動に伴って小型カメラが専用紙に印刷されたドットパターンを撮像し、プロセッサによって演算された連続する位置座標から、ユーザが書き込んだ文字、画像等の記入情報が認識される。そして、この記入情報が、データ通信ユニットによりアノトペンから近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の端末装置に送信される(例えば、特許文献1参照)。また、ドットパターンに対向する電子ペン1の角度に起因するドットの画像上の配列を補正する回転補正処理機能については、同社の例えば特許文献2に記載されている。
【0003】
このような電子ペンやコンピュータ等で構成されるシステムを用いて、ドットパターンが印刷された書き込みボードに対して、電子ペンで描画ストロークを記入したり、該描画ストロークを電子イレイサーで消去する技術が、特許文献3及び特許文献4に開示されている。
【0004】
また、教室で授業を行う際に、パーソナルコンピュータ等の端末が各生徒に提供され、各端末に対し同一の教材を同時に配信する技術が特許文献5に開示されている。
【0005】
そして、特許文献3又は4に開示のシステムに対して特許文献4に開示の技術を適用することで、先生が電子ペンで書き込みボードに描画ストロークを記入し、その記入内容を各生徒の端末に配信するといった形態の授業が可能になる。
このような授業では、各生徒の端末の画面表示が、従来の紙媒体のノートのページに相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3872498号公報
【特許文献2】特表2003−529853号公報
【特許文献3】特表2003−508831号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/309839号明細書
【特許文献5】特開平5−113743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような形態の授業では、先生が、先生用のコンピュータ装置や生徒の端末に新規のページを表示させることを所望した場合、先生による明示の指示がなくとも、自動的に新規のページが作成されると、先生と生徒の両者にとって便宜である。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、電子ペンにより描画ストロークをページ内に描画したり、当該描画ストロークを電子イレイサーによりページ内から消去するシステムにおいて、新規のページを自動的に作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンピュータ装置は、コード化パターンが印刷された書き込み媒体に対する電子ペンの移動に応じて特定される描画ストロークを、処理対象のページ内に描画するストローク描画手段と、前記処理対象のページ内に描画された前記描画ストロークのうち、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が第1所定量以上であることを条件に、新規のページを作成する新規ページ作成手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ストローク描画手段により、コード化パターンが印刷された書き込み媒体に対する電子ペンの移動に応じて特定される描画ストロークが、処理対象のページ内に描画される。新規ページ作成手段により、前記処理対象のページ内に描画された前記描画ストロークのうち、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が第1所定量以上であることを条件に、新規のページが作成される。
このように、電子ペンにより描画ストロークをページ内に描画したり、当該描画ストロークを電子イレイサーにより消去するシステムにおいて、新規のページを自動的に作成することが容易に可能になる。また、ユーザにとっては、新規のページを作成するために、電子ペンにより書き込み媒体に記入された内容を全て消去せずとも、所定量を消去すれば足りるため、便宜である。
【0011】
上記コンピュータ装置において、前記処理対象のページ内における前記描画ストロークの全体量を演算するストローク量演算手段をさらに備え、前記新規ページ作成手段は、前記ストローク量演算手段により演算された前記全体量が、第2所定量以上である状態に対して、前記電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が前記第1所定量以上であることを条件に、前記新規のページを作成するとよい。
これにより、処理対象のページ内における描画ストロークの量が未だ少量(第2所定量未満)であるにも関わらず、単に電子イレイサーによりストロークが消去されたことを契機としてむやみに新規のページが作成されてしまうことを防止することができる。
【0012】
上記コンピュータ装置において、前記全体量が前記第2所定量未満であること、又は、前記全体量が前記第2所定量以上であっても、前記消去対象の描画ストロークの量が第1所定量未満であることを条件に、前記消去対象の描画ストロークを、前記処理対象のページから消去するストローク消去手段と、前記ストローク描画手段により前記描画ストロークが描画された後、又は、前記ストローク消去手段により前記消去対象の前記描画ストロークが消去された後の、前記処理対象のページの内容を上書き保存する上書き保存手段とをさらに備え、前記ストローク量演算手段は、前記上書き保存手段により前記処理対象のページの内容が上書き保存された後、前記全体量を演算するとよい。
これにより、処理対象のページ内における描画ストロークの全体量が、描画ストロークの消去後においても更新されていくので、より適切なタイミングで新規のページを作成することができる。
【0013】
また、上記コンピュータ装置において、前記ストローク消去手段は、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーのイレーサー部の移動領域を消去領域として特定し、前記消去領域に基づいて前記消去対象の描画ストロークを決定するとよい。
このように、消去対象の描画ストロークを決定する際に消去領域を用いることで、様々な手法で、消去対象の描画ストロークを決定することが可能である。
例えば次の(1)〜(4)に示す手法の何れかを採用することができる。
(1)消去領域に全体が含まれている描画ストローク
(2)消去領域に一部でも含まれている描画ストローク
(3)消去領域に、所定割合(例えば50%以上)の部分が含まれている描画ストローク
(4)描画ストロークのうち、消去領域に含まれている部分
なお、(4)の手法が採用された場合には、消去領域に含まれる描画ストロークの全体が消去されるのではなく、消去領域に含まれている部分のみが消去される。
【0014】
また、上記コンピュータ装置において、前記新規ページ作成手段は、さらに、前記消去対象の描画ストロークの量が前記第1所定量以上になった時間が所定時間以内であることを条件に、前記新規のページを作成するとよい。
このような所定時間以内に、消去対象の描画ストロークの量が第1所定量以上になったことは、ユーザが現在の描画ストロークを全て消去したい(新規のページに新たな描画ストロークを描画したい)と所望していると推定できる。そこで、このような場合に新規のページを作成することによって、ユーザによる電子イレイサーの操作を迅速に反映させることが可能になる。
【0015】
また、上記コンピュータ装置において、前記新規ページ作成手段は、ユーザによる新規ページ作成の明示的指示が検知されたことを条件として、新規ページを作成し、前記ユーザによる前記明示的指示に、前記処理対象のページ内の前記描画ストロークを前記新規のページに引き継ぐ指示が含まれている場合には、前記描画ストロークを前記新規ページに表示する構成とするとよい。
これにより、ユーザは、電子イレイサーの操作によらずに新規のページの作成を指示することが可能になり、さらに、新規のページの形態として、処理対象のページ内の描画ストロークを引き継ぐ形態と、引き継がない形態(まっさらな形態)とを任意に選択することが可能になる。
【0016】
また、上記コンピュータ装置と、端末装置とを備えるシステムであって、前記コンピュータ装置は、処理対象のページ内における描画ストローク及び新規ページ作成の状態が同期するようデータを前記端末装置へ送信するよう構成するとよい。
これにより、書き込み媒体への電子ペンによるストロークの記載、電子イレイサーによるストロークの消去に応じて処理されるコンピュータ装置と同期して、処理対象のページ内における描画ストローク及び新規ページ作成の状態が、端末装置にも反映され、端末装置を利用するユーザにも便利である。
【0017】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータ装置により実行されるプログラムであって、前記コンピュータ装置を、コード化パターンが印刷された書き込み媒体に対する電子ペンの移動に応じて特定される描画ストロークを、処理対象のページ内に描画するストローク描画手段、前記処理対象のページ内に描画された前記描画ストロークのうち、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が第1所定量以上であることを条件に、新規のページを作成する新規ページ作成手段、として機能させることを特徴とする。
【0018】
上記プログラムにおいて、前記コンピュータ装置を、前記処理対象のページ内における前記描画ストロークの全体量を演算するストローク量演算手段としてさらに機能させ、前記新規ページ作成手段は、前記ストローク量演算手段により演算された前記全体量が、第2所定量以上である状態に対して、前記電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が前記第1所定量以上であることを条件に、前記新規のページを作成するとよい。
【0019】
上記プログラムにおいて、前記コンピュータ装置を、前記全体量が前記第2所定量未満であること、又は、前記全体量が前記第2所定量以上であっても、前記消去対象の描画ストロークの量が第1所定量未満であることを条件に、前記消去対象の描画ストロークを、前記処理対象のページから消去するストローク消去手段と、前記ストローク描画手段により前記描画ストロークが描画された後、又は、前記ストローク消去手段により前記消去対象の前記描画ストロークが消去された後の、前記処理対象のページの内容を上書き保存する上書き保存手段としてさらに機能させ、前記ストローク量演算手段は、前記上書き保存手段により前記処理対象のページの内容が上書き保存された後、前記全体量を演算するとよい。
【0020】
上記プログラムにおいて、前記ストローク消去手段は、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーのイレーサー部の移動領域を消去領域として特定し、前記消去領域に基づいて前記消去対象の描画ストロークを決定するとよい。
【0021】
上記プログラムにおいて、前記新規ページ作成手段は、さらに、前記消去対象の描画ストロークの量が前記第1所定量以上になった時間が所定時間以内であることを条件に、前記新規のページを作成するとよい。
【0022】
上記プログラムにおいて、前記新規ページ作成手段は、ユーザによる新規ページ作成の明示的指示が検出されたことを条件として、新規ページを作成し、前記ユーザによる前記明示的指示に、前記処理対象のページ内の前記描画ストロークを前記新規のページに引き継ぐ指示が含まれている場合には、前記描画ストロークを前記新規ページに表示するとよい。
【0023】
上記プログラムは、処理対象のページ内における描画ストローク及び新規ページ作成の状態が同期するようデータを外部の端末装置へ送信するデータ送信手段をさらに備えるよう前記コンピュータ装置を機能させるとよい。
【0024】
これらのプログラムをコンピュータ装置にインストールして実行することにより、上記コンピュータ装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電子ペンにより描画ストロークをページ内に描画したり、当該描画ストロークを電子イレイサーによりページ内から消去するシステム内のコンピュータ装置において、自動的に新規のページを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態における表示システムのシステム構成図である。
【図2】本実施形態におけるホワイトボードの横断面を示す図である
【図3】ドットパターンにおけるドットの配置と変換される値との関係を示す説明図である。
【図4】(a)は、ドットパターンを模式的に示し、(b)は、それに対応する情報の例を示す図である。
【図5】電子ペンの構造を示す概略図である。
【図6】電子イレイサーの構造を示す概略図である。
【図7】コンピュータ装置の機能ブロック図である。
【図8】座標領域の定義情報及び電子イレイサーの消去の定義情報のデータ構造を模式的に示す図である。
【図9】消去領域による描画ストロークの消去を説明するための概念図である。
【図10】消去領域による描画ストロークの消去を説明するための概念図である。
【図11】ストローク表示処理フローを示すフローチャートである。
【図12】新規のページを作成する様子を示す図である。
【図13】新規のページを作成する様子を示す図である。
【図14】変形例のストローク表示処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
[表示システムの構成]
図1は、本実施形態に係る表示システムの構成を示す。本実施形態の表示システムは、1人の先生が、1人または複数人の生徒に授業をする教室に設置されているものとする。図1に示すように、本実施形態に係る表示システム10は、電子ペン1と、電子イレイサー2と、ホワイトボード3と、コンピュータ装置4と、各生徒が1台ずつ使用するn台の端末5−1〜5−nとを有する。
【0029】
先生は、ホワイトボード3に対して、電子ペン1で描画ストロークを記入したり、電子イレイサー2で当該描画ストロークを消去することによって授業を進める。電子ペン1からの記入情報や、電子イレイサー2からの消去情報は、Bluetooth(登録商標)により、コンピュータ装置4に無線送信される。
【0030】
コンピュータ装置4は、パーソナルコンピュータ(Personal computer)等で構成されている。コンピュータ装置4は、電子ペン1からの記入情報や電子イレイサー2からの消去情報等を受信して、ホワイトボード3上に記入されている描画ストロークの内容を示す画像をディスプレイに表示させると共に、当該内容を示す情報を、Wi-Fi(無線LANの標準規格IEEE802.11シリーズに準拠していることを示す、業界団体による証明マーク。本実施形態では、Wi-Fiマークが付された無線LAN機器間の無線通信方式を示すためにも用いる。)により、n台の各端末5−1〜5−nに無線送信する。
【0031】
n台の各端末5−1〜5−nは、スマートフォンで構成されており、n人の各生徒に1台ずつ提供されている。なお、以下、端末5−1〜5−nを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて単に「端末5」と呼ぶ。端末5は、コンピュータ装置からの情報を受信して記憶させると共に、受信した情報に基づいて、ホワイトボード3上に記入されている描画ストロークの内容を示す画像をディスプレイに表示させる。なお、各端末5は、PDAその他の携帯端末であってもよい。
【0032】
このように、端末5は、従来の紙媒体のノート代わりとして生徒に用いられる。そこで、端末5における記憶及び表示の単位として、紙媒体のノートのページに相当する「ページ」が採用されている。即ち、端末5は、ページ単位で、画像を表示させたり、当該画像に対応する情報を記憶させる。
【0033】
換言すると、コンピュータ装置4は、端末5がページ単位で処理できるように制御をする。具体的には、コンピュータ装置4は、所定の条件が満たされると、新規のページを作成する。そして、コンピュータ装置4は、当該所定の条件が次に満たされるまでの間、電子ペン1からの記入情報に基づいて、ホワイトボード3に記入された描画ストロークを当該ページに描画したり、電子イレイサー2からの消去情報に基づいて、描画ストロークを当該ページから消去する。ただし、先生が電子イレイサー2で所定量以上の描画ストロークを消去した場合、それは、先生が新規のページの作成を所望していると推定できる。そこで、コンピュータ装置4は、消去された描画ストロークの量が所定量以上になることを、上述の所定の条件の1つとして採用し、所定量以上の場合には所定の条件が満たされたとして、新規のページを自動的に作成する。
【0034】
さらに、本実施形態では、先生が新規のページを作成する指示を明示的にしたことも、新規のページを作成するための所定の条件の1つとして採用されている。このような明示的な指示を先生がするために、ホワイトボード3には、新規ページ作成指示領域(引継ぎなし)31と、新規ページ作成指示領域(引継ぎあり)32とが配置されている。新規ページ作成指示領域31は、その時点におけるページ内の描画ストロークを新規のページに引き継がずに新規のページを作成するという指示、即ち、描画ストロークが存在しない空白の新規のページを作成するという指示を先生が行う場合に、電子ペン1によるタップ(後述する図5のペン先部103によるホワイトボード3への軽叩)がなされる。新規ページ作成指示領域32は、その時点におけるページ内の描画ストロークをそのまま引き継いで新規ページを作成するという指示、即ち、その時点におけるページ内の描画ストロークがそのまま描画された新規ページを作成するという指示を先生が行う場合に、電子ペン1によるタップがなされる。
【0035】
図2は、このようなホワイトボード3の横断面を示す図である。図2に示すように、アノト方式のドットパターン(コード化パターン)を構成する各ドット51は、白色のホワイトボード基板52の全面に重畳して印刷されている。ここで、各ドット51は、電子ペン1で読み取ることができるように、赤外線を吸収するカーボンを含有するインクで印刷されている。各ドット51によるドットパターンが重畳して印刷されているホワイトボード基板52の上には、EB(Electron Beam:電子線)硬化樹脂によりEB硬化樹脂保護層53が形成されている。EB硬化樹脂保護層53は、ホワイトボード基板52上に印刷された各ドット51を電子ペン1や電子イレイサー2による摩擦から保護し、ホワイトボード3の経年使用による劣化を防止する。
【0036】
[ドットパターン]
続いて、ホワイトボード3に形成されるアノト方式のドットパターン(コード化パターン)について説明する。図3は、ホワイトボード3に印刷されるドットパターンのドットとそのドットが変換される値との関係を説明する図である。図3に示すように、ドットパターンの各ドットは、その位置によって所定の値に対応付けられている。即ち、ドットの位置を格子の基準位置(縦線及び横線の交差点)から上下左右のどの方向にシフトするかによって、各ドットは、0〜3の値に対応付けられている。また、各ドットの値は、さらに、X座標用の第1ビット値及びY座標用の第2ビット値に変換できる。このようにして対応付けられた情報の組合せにより、ホワイトボード3上の位置座標が決定されるよう構成されている。
【0037】
図4(a)は、あるドットパターンの配列を示している。図4(a)に示すように、縦横約2mmの範囲内に6×6個のドットが、ホワイトボード3上のどの部分から6×6ドットを取ってもユニークなパターンとなるように配置されている。これら36個のドットにより形成されるドットパターンは位置座標(例えば、そのドットパターンがホワイトボード3上のどの位置にあるのか)を保持している。図4(b)は、図4(a)に示す各ドットを、格子の基準位置からのシフト方向によって、図3に示す規則性に基づいて対応づけられた値に変換したものである。この変換は、ドットパターンの画像を撮影する電子ペン1によって行われる。
【0038】
[電子ペン]
次に電子ペン1について説明する。図5に示すように、電子ペン1は、その筐体101の内部に、マーカーペン104、LED105、CMOSカメラ106、圧力センサ107、CPU等により構成されるプロセッサ108、ROMやRAMといったメモリ109、リアルタイムクロック110、アンテナ等により構成される通信ユニット111及びバッテリー112を備える。マーカーペン104の先端は、インクを備えるペン先部103となっており、ユーザ(先生)は、電子ペン1のペン先部103をホワイトボード3上に当接させて、文字等の描画ストローク(手書きストローク)を記入したり、タップ(ペン先部103によるホワイトボード3への軽叩)したりする。ここで、電子ペン1のペン先部103がホワイトボード3に最初に接触することをペンダウンと呼び、接触している(当接している)状態からペン先部103が離れることをペンアップと呼ぶ。電子ペン1のペンダウンからペンアップまでの間に記入される軌跡が1つの描画ストロークとなり、文字や図形等は、1つ又は複数個の描画ストロークからなる。また、電子ペン1をペンダウンすることでペン先部103からホワイトボード3上に流出するインクにより、描画ストロークと略同一軌道の軌跡がホワイトボード3上に表示される。
【0039】
バッテリー112は電子ペン1内の各部品に電力を供給するためのものであり、例えば電子ペン1のキャップ(図示せず)の脱着により電子ペン1自体の電源のオン/オフを行うよう構成させてもよい。リアルタイムクロック110は、現在時刻(タイムスタンプ)を示す時刻情報を発信し、プロセッサ108に供給する。圧力センサ107は、ユーザが電子ペン1によりホワイトボード3に文字やマークを書いたりタップしたりする際にペン先部103からマーカーペン104を通じて与えられる圧力、即ち筆圧を検出し、その値をプロセッサ108へ伝送する。
【0040】
プロセッサ108は、圧力センサ107から与えられる筆圧データに基づいて、LED105及びCMOSカメラ106のスイッチのオン/オフを切替える。即ち、ユーザが電子ペン1でホワイトボード3に文字等を書くと、ペン先部103に筆圧がかかり、圧力センサ107によって所定値以上の筆圧が検出されたときに、プロセッサ108は、ユーザが記入を開始したと判定して、LED105及びCMOSカメラ106を作動させる。そして、通信ユニット111が、圧力センサ107により検出されたペンダウン情報と、後述するペンIDとを関連付けて、記入情報としてコンピュータ装置4へ送信する。また、ユーザが1つの描画ストロークを記入し終えて電子ペン1をホワイトボード3から離すと、圧力センサ107は、所定値以上の筆圧が検出されなくなることでペンアップを検出する。すると、通信ユニット111が、圧力センサ107により検出されたペンアップ情報とペンIDとを関連付けて、記入情報としてコンピュータ装置4へ送信する。
【0041】
LED105とCMOSカメラ106は、電子ペン1のペン先部103付近に取り付けられており、筐体101におけるLED105及びCMOSカメラ106と対向する部分には、開口部102が形成されている。LED105は、ホワイトボード3上のペン先部103近傍に向けて赤外線を照明する。その領域は、ペン先部103がホワイトボード3に接触する位置とはわずかにずれている。CMOSカメラ106には、赤外線を透過し赤外線以外を遮断する赤外線フィルタが設けられており、CMOSカメラ106は、LED105によって照明された領域内におけるドットパターンを撮影し、そのドットパターンの画像データをプロセッサ108に供給する。ここで、ドットのインク素材は、赤外線を反射するため、LED105によって照射された赤外線は、ドットによって反射される。そのため、ドットの部分は、赤外線の反射量が比較的多く、ドット以外の部分は赤外線の反射量が比較的少ない。CMOSカメラ106の撮影により、赤外線の反射量の違いから閾値を設けることによって、ドットの領域とそれ以外の領域を区別することができる。なお、CMOSカメラ106による撮影領域は、図4(a)に示すような約2mm×約2mmの大きさを含む範囲であり、CMOSカメラ106の撮影は毎秒50〜100回程度の定間隔で行われる。また、CMOSカメラ106は、ドットを鮮明に撮影するため、十分な被写界深度を有している。
【0042】
プロセッサ108は、ユーザの記入が行われる間、CMOSカメラ106によって供給される画像データのドットパターンから、ユーザが記入する描画ストローク(筆跡)のホワイトボード3上におけるX,Y座標(単に「位置座標」、「座標情報」とも呼ぶ)を連続的に演算していく。即ち、プロセッサ108は、CMOSカメラ106によって供給される、図4(a)に示されるようなドットパターンの画像データを図4(b)に示すデータ配列に変換し、さらに、X座標ビット値・Y座標ビット値に変換して、そのデータ配列から所定の演算方法によりX,Y座標データを演算する。なお、プロセッサ108は、ドットパターンに対向する電子ペン1の角度に起因するドットの画像上の配列を補正する回転補正処理機能を備えている。そして、プロセッサ108は、リアルタイムクロック110から発信される現在時刻(タイムスタンプ:記入された時刻情報)、筆圧データ及びX,Y座標データを関連付ける。以後、これらの関連付けたデータを、まとめて「座標属性情報」と呼ぶ。なお、ホワイトボード3における6×6のドットパターンは、ホワイトボード3内で重複することはないため、ユーザが電子ペン1で文字等を記入すると、記入された位置がホワイトボード3のどの位置に当たるかを、プロセッサ108による座標演算により特定することができる。
【0043】
メモリ109には、電子ペン1を識別するための「pen01」といったペンID、ペン製造者番号、ペンソフトウェアのバージョン等のプロパティ情報が記憶されている。そして、通信ユニット111は、ペンIDと、座標属性情報(時刻情報と、筆圧データと、X、Y座標データ)とを関連付けて、記入情報としてコンピュータ装置4へ送信する。通信ユニット111によるコンピュータ装置4への送信は、Bluetooth(登録商標)等の無線送信によって、即時的かつ逐次的に行われる。ここで、電子ペン1のペンダウンからペンアップまでの間に生成されてコンピュータ装置4に送信された1個又は複数個の記入情報(座標属性情報)は、コンピュータ装置4により描画ストローク情報として記憶される。換言すると、1つの描画ストロークは、1個又は複数個のX,Y座標(座標点)からなり、コンピュータ装置4は、ペンダウン情報及びペンアップ情報によって、1つの描画ストロークを構成する1個又は複数個の座標属性情報を認識する。このように、ユーザの1つの描画ストロークの記入により、電子ペン1によって生成される座標属性情報の集合を「描画ストローク情報」と呼ぶ。また、ペン先部103は、筆圧をマーカーペン104を介して圧力センサ107に伝達する。
【0044】
[電子イレイサー]
次に電子イレイサー2について説明する。図6に示すように、電子イレイサー2は、筐体201、当該筐体201に対し着脱可能に形成されたホルダー213、ホルダー213に固定されたイレイサー部214、及びイレイサー部214にかかる圧力を検知する圧力センサ207を備える。また、電子イレイサー2は、その筐体201の内部に、LED205、CMOSカメラ206、CPU等により構成されるプロセッサ208、ROMやRAMといったメモリ209、リアルタイムクロック210、アンテナ等により構成される通信ユニット211及びバッテリー212を備える。
【0045】
電子イレイサー2のイレイサー部214は、ホワイトボード消しと同様の構成となっており、ユーザ(先生)は、イレイサー部214をホワイトボード3上に当接させて、電子ペン1により記入された描画ストローク(手書きストローク)、より正確には、当該描画ストロークに対応するインクをふき取ることによって消去する。ここで、電子イレイサー2のイレイサー部214がホワイトボード3に最初に接触することをイレイサーダウンと呼び、接触している(当接している)状態からイレイサー部214が離れることをイレイサーアップと呼ぶ。電子イレイサー2のイレイサーダウンからイレイサーアップまでの間にイレイサー部214によって消去されるひとつながりの領域を消去領域と呼ぶ。
【0046】
バッテリー212は電子イレイサー2内の各部品に電力を供給するためのものであり、例えば電子イレイサー2のキャップ(図示せず)の脱着により電子イレイサー2自体の電源のオン/オフを行うよう構成させてもよい。リアルタイムクロック210は、現在時刻(タイムスタンプ)を示す時刻情報を発信し、プロセッサ208に供給する。圧力センサ207は、ユーザがホワイトボード3に記入された文字やマークを電子イレイサー2により消去する際にイレイサー部214から与えられる消去時の圧力を検出し、その値をプロセッサ208へ伝送する。
【0047】
プロセッサ208は、圧力センサ207から与えられる圧力データに基づいて、LED205及びCMOSカメラ206のスイッチのオン/オフを切替える。即ち、ユーザが電子イレイサー2でホワイトボード3上の文字等を消去すると、イレイサー部214に圧力がかかり、圧力センサ207によって所定値以上の圧力が検出されたときに、プロセッサ208は、ユーザが消去を開始したと判定して、LED205及びCMOSカメラ206を作動させる。そして、通信ユニット211が、圧力センサ207により検出されたイレイサーダウン情報と、後述するイレイサーIDとを関連付けて、消去情報としてコンピュータ装置4へ送信する。また、ユーザが1つの描画ストロークを消去し終えて電子イレイサー2をホワイトボード3から離すと、圧力センサ207は、所定値以上の圧力が検出されなくなることでイレイサーアップを検出する。すると、通信ユニット211が、圧力センサ207により検出されたイレイサーアップ情報とイレイサーIDとを関連付けて、消去情報としてコンピュータ装置4へ送信する。
【0048】
LED205とCMOSカメラ206は、電子イレイサー2の筐体201の先端付近に取り付けられており、筐体201におけるLED205及びCMOSカメラ206と対向する部分には、開口部202が形成されている。電子イレイサー2をホワイトボード2に垂直に当接させた場合にCMOSカメラ206が撮影する領域の中心点を基準点Aとすると、LED205は、ホワイトボード3上の基準点Aに向けて赤外線を照明する。ここで、イレイサー部214は、その一部分Bのみがホワイトボード3に接触して、描画ストロークを消去する。このように、イレイサー部214のうち、実際に描画ストロークを消去する部分Bを、以下、消去部分Bと呼ぶ。即ち、イレイサー部214の消去部分Bは、イレイサー部214の基準点Aから所定距離内側の位置B11から、他端部の所定距離内側の位置B12までの範囲内の部分である。また、消去部分Bとそれ以外の部分との境界となる位置B11は、基準点Aから離間している。位置B11と基準点Aとの離間距離を、以下、離間距離Cと呼ぶ。なお、消去部分Bの長さ及び離間距離Cは、イレイサーIDと関連付けて電子イレイサー情報としてコンピュータ装置4が記憶する。CMOSカメラ206には、赤外線を透過し赤外線以外を遮断する赤外線フィルタが設けられており、CMOSカメラ206は、LED205によって照明された領域内におけるドットパターンを撮影し、そのドットパターンの画像データをプロセッサ208に供給する。ここで、ドットのインク素材は、赤外線を反射するため、LED205によって照射された赤外線は、ドットによって反射される。そのため、ドットの部分は、赤外線の反射量が比較的多く、ドット以外の部分は赤外線の反射量が比較的少ない。CMOSカメラ206の撮影により、赤外線の反射量の違いから閾値を設けることによって、ドットの領域とそれ以外の領域を区別することができる。なお、CMOSカメラ206による撮影領域は、図4(a)に示すような約2mm×約2mmの大きさを含む範囲であり、CMOSカメラ206の撮影は毎秒50〜100回程度の定間隔で行われる。また、CMOSカメラ206は、ドットを鮮明に撮影するため、十分な被写界深度を有している。
【0049】
プロセッサ208は、ユーザによる描画ストロークの消去が行われる間、CMOSカメラ206によって供給される画像データのドットパターンから、ユーザが消去する描画ストローク(消去領域)を特定するために必要な基準点Aのホワイトボード3上におけるX,Y座標を連続的に演算していく。即ち、プロセッサ208は、電子ペン1のプロセッサ108と同様に、CMOSカメラ206によって供給される、図4(a)に示されるようなドットパターンの画像データを図4(b)に示すデータ配列に変換し、さらに、X座標ビット値・Y座標ビット値に変換して、そのデータ配列から所定の演算方法によりX,Y座標データを演算する。なお、プロセッサ108は、ドットパターンに対向する電子ペン1の角度に起因するドットの画像上の配列を補正する回転補正処理機能を備えている。さらに、消去領域を特定するためには、電子イレイサー2のホワイトボード3に対する角度(以下、「消去角度」と呼ぶ)が必要になる。そこで、プロセッサ208は、X,Y座標データを演算する毎に、消去角度も併せて演算する。そして、プロセッサ208は、リアルタイムクロック210から発信される現在時刻(タイムスタンプ)、圧力データ、X,Y座標データ及び消去角度を「消去の座標属性情報」として関連付ける。なお、ホワイトボード3における6×6のドットパターンは、ホワイトボード3内で重複することはないため、ユーザが電子イレイサー2で文字等を消去すると、基準点Aがホワイトボード3のどの位置に当たるかを、プロセッサ208による座標演算により特定することができる。
【0050】
メモリ209には、電子イレイサー2を識別するための「E1」といったイレイサーID、イレイサー製造者番号、イレイサーソフトウェアのバージョン等のプロパティ情報が記憶されている。そして、通信ユニット211は、イレイサーIDと、消去の座標属性情報(時刻情報と、圧力データと、X、Y座標データと、消去角度)とを関連付けて、消去情報としてコンピュータ装置4へ送信する。通信ユニット211によるコンピュータ装置4への送信は、Bluetooth(登録商標)等の無線送信によって、即時的かつ逐次的に行われる。ここで、電子イレイサー2のイレイサーダウンからイレイサーアップまでの間に生成されてコンピュータ装置4に送信された1個又は複数個の消去情報(消去の座標属性情報)は、コンピュータ装置4により消去ストローク情報として記憶される。換言すると、1つの消去ストロークは、1個又は複数個のX,Y座標(座標点)からなり、コンピュータ装置4は、イレイサーダウン情報及びイレイサーアップ情報によって、1つの消去ストロークを特定可能な1個又は複数個の消去の座標属性情報を認識する。このように、ユーザの1回の消去動作に従って、電子イレイサー2によって生成される消去の座標属性情報の集合を「消去ストローク情報」と呼ぶ。消去領域は、コンピュータ装置4によって、消去ストローク情報と、消去ストロークを構成する座標点の各々に対応する消去角度と、電子イレイサー2の消去部分Bの長さ、及び、離間距離Cから求められる。また、イレイサー部214は、消去時の圧力を圧力センサ207に伝達する。
【0051】
[コンピュータ装置]
次に、コンピュータ装置4について説明する。コンピュータ装置4は、ハードウェアとして、電子ペン1や電子イレイサー2とのデータ通信が可能なアンテナ装置、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、ディスプレイ、マウスやキーボード等を含むパーソナルコンピュータ等で構成される。図7は、コンピュータ装置4の機能ブロック図である。コンピュータ装置4は、機能的には、入力手段41、受信手段42、記憶手段43、処理手段44、表示手段45及び送信手段46を備える。そして、コンピュータ装置4は、電子ペン1から受信した記入情報又は電子イレイサー2から受信した消去情報に基づいて所定の処理を行う。
【0052】
入力手段41は、マウスやキーボード等により構成され、ユーザの操作に応じた各種情報を入力し、処理手段44に供給する。受信手段42は、アンテナ受信回路等により構成され、電子ペン1からの記入情報又は電子イレイサー2からの消去情報を受信すると、処理手段44に伝送する。送信手段46は、作成された新規ページのデータ又は上書き保存されたページのデータを各端末5に送信する。なお、端末5へのデータ送信方式は、有線であっても無線であってもよいが、本実施形態ではWi-Fiによる無線通信方式が採用されている。表示手段45は、ディスプレイ等によって構成され、処理手段44によって指示された内容を画像として表示する。
【0053】
記憶手段43は、ハードディスクやROM、RAMといったメモリによって構成される。記憶手段43は、処理手段44の処理命令により、電子ペン1から受信した記入情報をペンID毎に記憶する。また、記憶手段43は、処理手段44の処理命令により、電子イレイサー2から受信した消去情報をイレイサーID毎に記憶する。
【0054】
また、記憶手段43は、図8(A)に示すように、ホワイトボード3の座標領域の定義情報として、左上端座標(X1,Y1)、高さH1、及び幅W1の各データを記憶する。記憶手段43は、新規ページ作成指示領域(引継ぎなし)31の座標領域の定義情報として、左上端座標(X2,Y2)、高さH2、及び幅W2の各データを記憶する。記憶手段43は、新規ページ作成指示領域(引継ぎあり)32の座標領域の定義情報として、左上端座標(X3,Y3)、高さH3、幅W3の各データを記憶する。
【0055】
また、記憶手段43は、図8(B)に示すように、各イレイサーID(E1及びE2)毎の消去部分Bの長さ、及び、位置B11と基準点Aとの離間距離Cの関連付けデータを、消去領域を算出するための電子イレイサー情報として記憶する。なお、図8(A)及び(B)に示す情報の具体的な用途については、後述する。
【0056】
図9及び図10は、電子イレイサー2による描画ストロークの消去を説明するための概念図である。図9に示すように、ホワイトボード3上に記入された描画ストローク(それを示すインク)を消去する場合には、ユーザ(先生)は、電子イレイサー2をホワイトボード3の表面の任意の位置でイレイサーダウンさせて、イレイサーダウンの状態を維持したまま、ホワイトボード3の表面に沿って任意の位置までイレイサー部214を移動させ、当該任意の位置でイレイサーアップする。この場合に、電子イレイサー2の消去部分Bの軌跡が、ホワイトボード3の表面上での消去領域となる。
【0057】
ここで、本実施形態では、図10に示すように、ユーザが、電子イレイサー2をイレイサーダウンさせた後ホワイトボード3の表面に沿って任意の位置(図10ではホワイトボード3の上端又は下端付近)まで移動させてイレイサーアップした後に、所定時間以内にイレイサーダウンして再び移動させる動作をした場合には、これらの動作はコンピュータ装置4によって一連のものとして認識される。
即ち、コンピュータ装置4は、イレイサーアップを検知した後、所定時間以内にイレイサーダウンを継続して検知すると、一連の消去動作として認識する。そして、コンピュータ装置4は、後述する消去ストローク量の判定に際して、一連の電子イレイサー2の消去部分Bの軌跡(消去領域)全体を対象として、判定を行う。
【0058】
図7に戻り、処理手段44について説明をする。処理手段44は、主に、ストローク描画手段441、新規ページ作成手段442、ストローク量演算手段443、消去ストローク量判定手段444、ストローク消去手段445、上書き保存手段446、及びデータ送信手段447により構成される。処理手段44は、ユーザの電子ペン1や電子イレイサー2による入力に応じて、描画ストロークが描画されたページを各端末5に表示させるために必要となる、各種の処理を実行する。
【0059】
ストローク描画手段441は、電子ペン1から送信されて受信手段42に受信された記入情報に基づいて、電子ペン1でホワイトボード3に記入された描画ストロークを、処理対象のページ内の対応する位置に描画する。
ここで、処理対象のページとは、コンピュータ装置4及び各端末5において表示対象になっているページをいう。
また、ストローク描画手段441によって描画ストロークがページに描画された段階では、その描画は確定されずに、コンピュータ装置4や各端末5の表示内容に反映されない。即ち、この段階では、描画された描画ストロークは、コンピュータ装置4や各端末5には未だ表示されない。なお、描画の確定については、上書き保存手段446の説明の一部として後述する。
【0060】
新規ページ作成手段442は、所定の条件が満たされた場合、新規のページを作成する。新規のページが作成されると、それ以降、当該新規のページが処理対象のページになり、コンピュータ装置4や各端末5の表示内容が、これまで表示されていたページから当該新規のページに更新される。
本実施形態では、新規のページを作成するための所定の条件の1つとして、処理対象のページに所定量以上の描画ストロークが存在する状態で、当該ページ内の描画ストロークのうち、消去対象の描画ストロークの量が所定量以上(全体の描画ストロークに対する消去対象の割合が所定割合以上)になること、という条件が採用されている。なお、消去対象の描画ストロークの量が所定量以上か否かの判定は、後述する消去ストローク量判定手段444によってなされる。また、処理対象のページに所定量以上の描画ストロークが存在する状態という要件を課すことによって、格別の効果(後述する図11のステップS111の処理において説明する)を奏することができるが、当該効果が不要の場合等必要に応じて省略してもよい。
また、所定の条件の別の1つとして、新規ページ作成指示領域(引継ぎなし)31や、新規ページ作成指示領域(引継ぎあり)32が電子ペン1でタップされるという条件も採用されている。
【0061】
ストローク量演算手段443は、処理対象のページ内の描画ストロークの量(全体量)を演算する。
具体的には、電子ペン1によって新たに記入された描画ストロークについて、処理対象のページ内での描画を認識すると、ストローク量演算手段443は、認識した描画ストロークの量を加算することで、処理対象のページ内の描画ストロークの全体量を演算(更新)する。より具体的には、描画ストロークの量(全体量)として、処理対象のページ内に存在する描画ストロークの長さの総計、即ち総ストローク長が採用されている。そこで、ストローク量演算手段443は、認識した描画ストロークの長さを算出し、これまでの総ストローク長に加算することで、総ストローク長を更新する。
一方、処理対象のページ内において、電子イレイサー2によって形成された消去領域から特定された消去対象の描画ストロークについて、消去が確定すると、ストローク量演算手段443は、消去が確定した描画ストロークの量を減算することで、処理対象のページ内の描画ストロークの全体量を演算(更新)する。より具体的には、ストローク量演算手段443は、消去が確定した描画ストロークの長さを算出し、消去前の総ストローク長から減算することで、総ストローク長を更新する。
なお、描画ストロークの量(全体量)として、総ストローク長を採用することは必須ではなく、その他として例えば、ページ内におけるストロークの総数、即ち総ストローク数を採用してもよい。
また、ストロークの認識及び消去の確定については、上書き保存手段446の説明の一部として後述する。
【0062】
消去ストローク量判定手段444は、消去対象の描画ストロークの量が、所定量以上であるか否かを判定する。所定量以上であると判定された場合には、上述の新規のページを作成するための所定の条件の1つが満たされたことになるため、新規ページ作成手段442によって新規のページが作成される。
【0063】
ストローク消去手段445は、電子ペン1から送信されて受信手段42に受信された消去情報に基づいて、電子イレイサー2の移動によりホワイトボード3に形成された消去領域(図9や図10参照)を特定する。そして、ストローク消去手段445は、当該消去領域に基づいて、消去対象の描画ストロークを特定して、処理対象のページから消去する。
ここで、ストローク消去手段445によって描画対象のストロークがページから消去された段階では、その消去は確定されずに、コンピュータ装置4や各端末5の表示内容に反映されない。即ち、この段階では、消去対象の描画ストロークは、コンピュータ装置4や各端末5には未だ表示されている。なお、消去の確定については、上書き保存手段446の説明の一部として後述する。
【0064】
上書き保存手段446は、処理対象のページに対して、ストローク描画手段441により新たな描画ストロークが描画されたり、或いはストローク消去手段445により描画ストロークが消去されると、描画又は消去後の内容に更新された処理対象のページのデータをメモリ等に上書き保存する。このような上書き保存手段446の処理を、以下、ページに上書き保存すると表現する。ページに上書き保存された段階で、描画又は消去が確定し、確定後の内容がコンピュータ装置4や各端末5の表示内容に反映される。即ち、この段階で、新たに描画された描画ストロークがコンピュータ装置4や各端末5に表示されたり、消去された描画ストロークがコンピュータ装置4や各端末5の表示から消えることになる。より具体的には、確定後の処理対象のページのデータに基づいて表示手段45の表示内容が更新されると共に、当該データが送信手段46から各端末5に送信される。各端末5は、当該データに基づいて表示内容を更新する。
データ送信手段447は、各端末5における各ページの状態がコンピュータ装置4と同期するよう所定処理のデータを各端末5へ送信手段46により送信する。
【0065】
[ストローク表示処理フロー]
次に、図11を参照して電子ペン1及び電子イレイサー2を用いた表示システム10によるストローク表示処理フローについて説明する。
【0066】
初めに、コンピュータ装置4では、電子ペン1から送信される記入情報や、電子イレイサー2から送信される消去情報を受信して、記憶手段43に記憶させる(S101)。
【0067】
次に、処理手段44は、受信した情報が、記入情報又は消去情報のうち何れの情報であるかを、受信情報にペンIDが含まれるのかイレイサーIDが含まれるのかによって判断する(ステップS102)。処理手段44は、受信した情報は記入情報であると判断した場合(ステップS102:記入情報)、当該記入情報は、新規ページ作成指示領域31又は32におけるものであるか否かを判断する(ステップS103)。具体的には、処理手段44は、図8(A)に示すホワイトボード3、新規ページ作成指示領域31,32の各座標領域の定義情報を記憶手段43から参照して、ステップS1の処理で受信された記入情報の座標情報から得られる座標(以下、「電子ペン座標」と呼ぶ)が、新規ページ作成指示領域31又は32の座標領域に含まれるか、それとも新規ページ作成指示領域31,32以外のホワイトボード3における座標領域に含まれるかを判断することによって、記入情報は、新規ページ作成指示領域31又は32におけるものであるか、その領域以外のホワイトボード3におけるものであるかを判断する。
【0068】
処理手段44は、記入情報が、新規ページ作成指示領域31,32以外のホワイトボード3の領域におけるものと判定した場合(ステップS103:No)、処理手段44のストローク描画手段441は、記入情報から特定される描画ストロークを、処理対象のページに描画する、といったストローク描画処理を行う(ステップS104)。
処理手段44の上書き保存手段446は、当該描画ストロークをそのページ上において記憶手段43に上書き保存する(ステップS105)。
次に、処理手段44のストローク量演算手段443は、ステップS105の処理で上書き保存されたそのページ内のストローク量(全体量)、ここでは総ストローク長を求める(ステップS106)。
このようにして、ステップS106の処理が実行されることで、処理対象のページ内における描画ストロークの量が、更新されていく。そして、次回以降のコンピュータ装置4の処理において、このような描画ストロークの量を所定条件の1つとして用いて新規のページが作成される。よって、より適切なタイミングで新規のページを作成することが可能になる。
次に、データ送信手段447は、ステップS105の処理で上書き保存されたページのデータを各端末5に送信する(ステップS107)。これにより、生徒の各端末5の表示内容が、上書き保存されたページの内容に更新される。そしてコンピュータ装置4は処理を終了する。
【0069】
これに対して、ユーザ(先生)が新規ページ作成指示領域31又は32内で電子ペン1をタップした場合、処理手段44は、図8(A)に示す座標領域の定義情報を参照して、記入情報が電子ペン座標は新規ページ作成指示領域31又は32の座標領域に含まれると判断する(ステップS103:Yes)。この場合、新規ページ作成手段442は、処理対象のページとして現在のページとは異なる新規のページを作成する(ステップS108)。
【0070】
次に、新規ページ作成手段442は、ステップ103において、記入情報の電子ペン座標が、描画ストロークを引き継いで新規ページを作成する新規ページ作成指示領域32におけるものであれば、描画ストロークを引き継ぐものと判断し(ステップS109:Yes)、これらの描画ストロークを新規のページに引き継いで上書き保存する(ステップS110)。即ち、新規のページとして、その時点のページのデータが複製保存される。
これに対して、新規ページ作成手段442は、ステップ103において、記入情報の電子ペン座標が、描画ストロークを引き継がないで新規ページを作成する新規ページ作成指示領域31におけるものである場合には、その時点の描画ストロークを新規ページに引き継がないと判断し(ステップS109:NO)、描画ストロークが何ら描画されていない、まっさらなページが、新規のページとなる。
このようにして、ステップS109:NO又はS110の処理が終了すると、データ送信手段447は、新規のページのデータを各端末5に送信する(ステップS107)。これにより、生徒の各端末5の表示内容が、新規のページの内容に更新される。そしてコンピュータ装置4は処理を終了する。
【0071】
ここで、図1、図12及び図13を参照して、新規ページ作成手段442により作成される新規のページについて説明する。新規ページ作成指示領域(引継ぎなし)31が電子ペン1でタップされた場合(図11のステップS109:NOの場合)には、コンピュータ装置4は、処理対象のページとして、図12(A)に示す現在のページ(P−1)とは異なる、図12(B)に示す新規のページ(P−2)を作成する。この新規のページ(P−2)は、現在のページ(P−1)に描画されていた描画ストロークの情報は一切引き継がれておらず、まっさらなページである。図11のステップS107の処理では、このまっさらな新規のページ(P−2)のデータが各端末5に送信される。すると、各生徒の端末5は、送信されたデータに基づき、図12(B)に示す新規のページ(P−2)を表示させる。
【0072】
他方、新規ページ作成指示領域(引継ぎあり)32が電子ペン1でタップされた場合(図11のステップS109:YESの場合)には、コンピュータ装置4は、ステップS110の処理で、処理対象のページとして、図13(A)に示す現在のページ(P−1)の内容を複製して、図13(B)に示す新規のページ(P−2)を作成する。この新規のページ(P−2)は、現在のページ(P−1)に描画されていた描画ストロークの情報が全て引き継がれているので、現在のページ(P−1)の描画内容と同一内容のページになっている。図11のステップS107の処理では、この新規のページ(P−2)のデータが各端末5に送信される。すると、各生徒の端末5は、送信されたデータに基づき、図13(B)に示す新規のページ(P−2)を表示させる。
なお、各ページの右上の(P−1),(P−2)というシンボルは、各端末5に特に表示させる必要はない。ただし、当該シンボルが表示されていないと、描画内容を引き継ぐときには、ページが移行しても各端末5の表示内容は変化しないので、各端末5を操作する各生徒の中には、ページが新規のページに移行したことに気付かないものもでてくるおそれがある。そこで、各ページの右上の(P−1),(P−2)というシンボルを各端末5に表示させて、現在の処理対象のページを明示的に各生徒に示すことで、各生徒は、ページが新規のページに移行したことに気付くことが容易にできる。
【0073】
次に、図11に戻り、ユーザ(先生)が、電子イレイサー2でホワイトボード3に記入された描画ストロークを消去した場合のコンピュータ装置4の処理について説明する。
この場合、電子イレイサー2は、消去情報をコンピュータ装置4へ逐次送信する。
具体的には、電子イレイサー2は、イレイサーダウン時には、イレイサーダウン情報及びイレイサーIDを関連付けた消去情報を生成して、当該消去情報をコンピュータ装置4へ送信する。また、電子イレイサー2は、描画ストロークの消去中は、消去ストロークに沿って撮影したドットパターンから演算した座標情報(図6の基準点AのX,Y座標)と、消去角度(ホワイトボード3に対する角度)を含む座標属性情報と、時刻情報と、イレイサーIDとを関連付けた消去情報を連続的に繰り返し生成してコンピュータ装置4へ逐次送信する。そして、電子イレイサー2は、イレイサーアップ時には、イレイサーアップ情報及びイレイサーIDを関連付けた消去情報を生成してコンピュータ装置4へ送信する。
処理手段44は、このようにして逐次送信されてくる消去情報を記憶手段43に記憶させる。そして、処理手段44は、イレイサーアップ情報の受信から所定時間以内に、新たなイレイサーダウン情報を含む消去情報を受信したと認識すると、ユーザによる一連の消去動作が継続していると判断して、消去情報の受信及び記憶を継続する。一方、処理手段44は、イレイサーアップ情報の受信から所定時間を経過しても消去情報が受信されない場合、処理手段44は一連の消去動作が終了したと判断して、ステップS102の処理に進む。
【0074】
処理手段44は、ステップS102において、消去情報であると判断すると、処理手段44のストローク量演算手段443は、処理対象のページ内における描画ストロークの量は所定量以上であるか否かを判定する(ステップS111)。
具体的には、ストローク量演算手段443は、前回のコンピュータ装置4の処理におけるステップS106又はS116の処理で求められた描画ストロークの量が、所定量以上であるか否かを判定する。
ここで、描画ストロークの所定量は、新規のページについてユーザ(先生)が電子ペン1で手書きの描画ストロークを記入し始めた初期段階において、当該ユーザがストロークを消去しても新規ページの作成を必要としないであろうと推定できる程度の量であれば足りる。ここではストロークの量としてストローク長が採用されているので、例えば20cm程度を所定量として採用することができる。なお、ストロークの量としてストローク数が採用される場合には、例えば20ストローク数程度を所定量として採用することができる。
即ち、電子イレイサー2によりユーザが消去動作をしたことだけを契機として新規のページを自動的に作成してしまうと、新規のページについてユーザ(先生)が電子ペン1で手書きの描画ストロークを記入し始めた初期段階において、当該ユーザが単にストロークの修正のために電子イレイサー2を使用しただけであっても、新規のページが作成されてしまう。即ち、当該ユーザにとっては、新規のページの作成を何ら所望していないにもかかわらず、新規のページがむやみに作成されてしまう。このように、処理対象のページ内における描画ストロークの量が未だ少量であるにも関わらず、単に電子イレイサー2が使用されたことだけを契機としてむやみに新規のページが作成されてしまうことを防止するために、ステップS111の判定処理が設けられているのである。
【0075】
即ち、ストローク量演算手段443が、処理対象のページ内における描画ストロークの量は所定量未満と判定した場合、新規のページについてユーザが電子ペン1で手書きの描画ストロークを記入し始めた初期段階において、当該ユーザが修正をする可能性があるとして、新規のページが作成されないように、ステップS111においてNOであると判定する。
この場合、処理手段44のストローク消去手段445は、一連の動作として取得された消去情報から特定される消去領域(図9や図10参照)を特定し、当該消去領域から消去対象の描画ストロークを決定して、当該消去対象の描画ストロークを処理対象のページから消去する、といった消去領域のストローク消去処理を行う(ステップS114)。
ここで、消去対象の描画ストロークを決定する手法は、消去領域に基づく手法であれば足り、例えば次の(1)〜(4)の種類の手法の何れかを採用するとよい。
(1)消去領域に全体が含まれている描画ストローク
(2)消去領域に一部でも含まれている描画ストローク
(3)消去領域に、所定割合(例えば50%以上)の部分が含まれている描画ストローク
(4)描画ストロークのうち、消去領域に含まれている部分
なお、(4)の手法が採用された場合には、消去対象の描画ストローク全体が消去されるのではなく、消去領域に含まれている部分のみが消去される。
処理手段44の上書き保存手段446は、当該消去対象の描画ストロークが消去された後の内容を、そのページに上書き保存する(ステップS115)。即ち、ステップS114の消去領域のストローク消去処理による消去対象の描画ストロークの消去が確定し、確定後の内容で、処理対象のページのデータが記憶手段43に上書き保存される。そして、確定後の内容が表示手段45に表示される。即ち、消去対象の描画ストロークが、表示手段45の表示内容から消える。
次に、処理手段44のストローク量演算手段443は、ステップS115の処理で上書き保存されたそのページ内のストローク量(全体量)、ここでは総ストローク長を求める(ステップS116)。
このようにして、ステップS116の処理が実行されることで、処理対象のページ内における描画ストロークの量が、リアルタイムかつ正確に更新されていく。そして、次回以降のコンピュータ装置4の処理において、このような描画ストロークの量を用いて新規のページが作成される(後述ステップS111,112,113参照)。よって、より適切なタイミングで新規のページを作成することが可能になる。
次に、データ送信手段447は、ステップS116の処理で上書き保存されたページのデータを各端末5に送信する(ステップS107)。これにより、生徒の各端末5の表示内容が、上書き保存されたページの内容に更新される。即ち、消去対象の描画ストロークが、各端末5の表示から消える。この処理が終了するとコンピュータ装置4は処理を終了する。
【0076】
これに対して、ストローク量演算手段443が、処理対象のページ内における描画ストロークの量は所定量以上の場合、ステップS111においてYESであると判定し、次のような一連の処理が実行される。
即ち、消去ストローク量判定手段444は、処理対象のページに現在描画されている描画ストローク全体のうち、所定割合以上が消去領域に含まれるか否かを判定する(ステップS112)。
換言すると、消去ストローク量判定手段444は、消去対象の描画ストロークの量が、描画ストロークの全体量に対して所定割合以上か否かを判定する。
ここで、本実施形態では、描画ストロークの全体量として総ストローク長が採用されているので、消去対象の描画ストロークのストローク長が、総ストローク長に対して所定割合以上か否かが判定される。この所定割合は、ユーザ(先生)がホワイトボード3に記入した内容を説明し終え、新たな内容を記入すべく、記入した内容をほぼ全て消去しようと推定される割合を設定するが、例えば70%程度を採用することができる。
なお、描画ストロークの全体量として総ストローク数が採用されている場合には、消去対象の描画ストロークのストローク量が、総ストローク量に対して所定割合以上か否かが判定される。この場合の所定割合は、特に限定されず、例えば70%程度を採用することができる。
【0077】
消去ストローク量判定手段444が、消去領域に含まれている描画ストローク、即ち消去対象の描画ストロークの量は、全体に対して所定割合未満と判定した場合(ステップS112:NO)、処理はステップS114に進み、それ以降の処理が実行される。即ち、この場合には、ユーザ(先生)が新規のページに板書を行いたいのではなく、ホワイトボード3上の描画ストロークを部分的に修正したいのであろうと推定されて、消去対象の描画ストロークのみが消去され、消去後のストロークの状態が上書き保存され、描画ストロークの量が求められる(ステップS114,115,116)。
【0078】
これに対して、消去ストローク量判定手段444が、消去領域に含まれている描画ストローク、即ち消去対象の描画ストロークの量は、全体に対して所定割合以上と判定した場合(ステップS112:YES)、新規ページ作成手段442は、処理対象のページとして現在のページとは異なる新規のページを作成する(ステップS113)。
即ち、消去対象の描画ストロークの量が、全体に対して所定割合以上の場合、ユーザ(先生)がホワイトボード3上の描画ストロークを部分的に修正したいのではなく、新規のページに板書を行うために描画ストロークを全消去している動作の最中であろうと推定されるので、描画ストロークは、コンピュータ装置4上、消去されず、図12(B)に示すようなまっさらな新規のページが自動的に作成される。
このようにして、ステップS113の処理が終了すると、データ送信手段447は、まっさらな新規のページのデータを各端末5に送信する(ステップS107)。これにより、生徒の各端末5の表示内容が、まっさらな新規のページの内容に更新される。この処理が終了するとコンピュータ装置4は処理を終了する。
【0079】
[本実施形態による作用効果]
以上説明したように本実施形態によれば、コンピュータ装置4は、ストローク描画手段441と、新規ページ作成手段442とを備えている。
ストローク描画手段441は、ドットパターンが印刷されたホワイトボード3に対する電子ペン1の移動に応じて特定される描画ストロークを、処理対象のページ内に描画する。
新規ページ作成手段442は、処理対象のページ内に描画された描画ストロークのうち、ホワイトボード3に対する電子イレイサー2の移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が所定量以上であることを条件に、新規のページを作成する。
このように、電子ペンにより描画ストロークをページ内に描画したり、当該描画ストロークを電子イレイサーにより消去するシステムにおいて、新規のページを自動的に作成することが容易に可能になる。また、ユーザにとっては、新規のページを作成するために、電子ペンにより書き込み媒体に記入された内容を全て消去せずとも、所定量だけを消去すれば足りるため、便宜である。
【0080】
[変形例]
なお、本発明は、上記実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態の図11のステップS112の判定処理は、処理対象のページ内の描画ストロークの量が所定量以上の場合(ステップS111:YES)における、新規のページを作成する否かについての判定処理である。この判定処理に対して、上記実施形態では、処理対象のページに現在描画されている描画ストローク全体のうち、所定割合以上が消去領域に含まれるか否かという判定手法が採用されている。しかしながら、当該判定手法は、特にこれに限られない。消去ストローク量判定手段444は、処理対象のページに現在描画されている描画ストローク全体のうち、所定割合以上が消去領域に含まれるか否かを判定していたが、判定手法はこれに限られない。
【0081】
具体的には、図14の変形例のストローク表示処理フローに示すように、ステップS112の消去ストローク量判定手段444による判定処理は、処理対象のページ内における描画ストロークの量が所定量以上の場合(ステップS211:YES)においての、新規のページを作成する否かについての判定処理である。この判定処理に対して、処理対象のページに現在描画されている描画ストローク全体のうち、所定割合以上が消去領域に含まれた時間が所定時間内か否かという判定手法を採用することができる。
ここで、所定時間は、通常、ユーザが、新たな内容の記入を意図して、ホワイトボード3に記入した内容をほぼ全て消去するのにかかる時間を設定するとよく、例えば、イレイサーダウンが行われてから10秒を採用するとよい。
このような、所定時間内に、描画ストローク全体のうち所定割合以上が消去領域に含まれたこと、即ちユーザ(先生)が、所定量以上の描画ストロークを所定時間内に消去したということは、ユーザ(先生)が、ホワイトボード3に記入した内容を全て消去して、新たな内容を記入したい(新規のページに新たな描画ストロークを描画したい)と所望していることを意味すると推定できる。そこで、このような場合(ステップS212:YES)には、新規ページ作成手段442は、ユーザの気持ちを反映して、新規のページを作成する。
他方、所定時間を過ぎても、消去領域に含まれる描画ストロークの割合が所定割合未満であること、即ち、ユーザが所定時間を超えて電子イレイサー2を動かして消去の動作を継続していることは、当該ユーザに新規のページを作成する意図はないことを意味すると推定することもできる。そこで、このような場合(ステップS212:NO)には、通常の消去領域のストローク消去処理、即ち、ユーザが消去の動作をした範囲内で描画ストロークを消去する処理が実行される。
なお、それ以外の図14のステップS201〜S211,S215及びS216の各々の処理は、図11のステップS101〜S111,S115及びS116の各々の処理と基本的に同様の処理であるため、それらの説明は省略する。
【0082】
また、上記実施形態では、新規ページ作成手段442は、ホワイトボード3内の新規ページ作成指示領域31又は32内で電子ペン1がタップされたことを、ユーザによる新規ページ作成の明示的な指示があったと認識して、新規のページを作成する。しかしながら、ユーザによる新規ページ作成の明示的な指示は、特にこれに限られない。
例えば、ユーザが、コンピュータ装置4の入力手段41を用いて所定の操作をしたこと、具体的には例えば、表示手段45に表示されたGUI(Graphical User Interface)画像に含まれる所定のソフトウェアボタンをマウス(入力手段41の一部)で押下操作したことを、ユーザによる新規ページ作成の明示的な指示として採用することができる。
この場合、所定の操作として第1操作と第2操作とを予め用意し、第1操作に対しては、処理対象のページ内の描画ストロークを新規のページに引き継がないという指示を割り当て、第2操作に対しては、処理対象のページ内の描画ストロークを新規のページに引き継ぐという指示を割り当てることができる。例えば、2つのソフトウェアボタンをGUI画像に含めることで、一方のソフトウェアボタンの押下操作を第1操作として、他方のソフトウェアボタンの押下操作を第2操作とすることができる。
この場合、第1操作がなされたときには、図11のステップS108、ステップS109:No、ステップ107の一連の処理と等価の処理が実行される。即ち、図12(A)に示す現在のページ(P−1)が処理対象のページであった場合には、図12(B)に示すように、まっさらな新規のページ(P−2)が作成される。
これに対して、第2操作がなされたときには、図11のステップS108、ステップS109:Yes、ステップS110、ステップ107の一連の処理と等価の処理が実行される。即ち、図13(A)に示す現在のページ(P−1)が処理対象のページであった場合には、図13(B)に示すように、現在のページ(P−1)の描画内容と同一内容の新規ページ(P−2)が作成される。
【0083】
要するに、新規ページ作成手段442は、ユーザによる新規ページ作成の明示的な指示があったことを条件として、新規のページを作成することができる構成を有し、ユーザによる明示の指示には、処理対象のページ内の描画ストロークを新規のページに引き継ぐか否かの指示が含まれていれば足りる。
この場合、ユーザは、新規ページ作成の明示的な指示をだすことが可能になり、さらに、新規のページの形態として、処理対象のページ内の描画ストロークを引き継ぐ形態と、引き継がない形態(まっさらな形態)とを任意に選択することが可能になる。
【0084】
また、上記実施形態では、電子ペン1や電子イレイサー2を用いる対象は、ホワイトボード3とされたが、特にこれに限られず、アノト式のドットパターンが印刷された任意の書き込み媒体であればよい。また、書き込み媒体に印刷されるコード化パターンは、アノト方式のドットパターンに限られなくとも良い。
【符号の説明】
【0085】
1…電子ペン
2…電子イレイサー
3…ホワイトボード
4…コンピュータ装置
5…端末
10…表示システム
41…入力手段
42…受信手段
43…記憶手段
44…処理手段
46…表示手段
47…送信手段
441…ストローク描画手段
442…新規ページ作成手段
443…ストローク量演算手段
444…消去ストローク量判定手段
445…ストローク消去手段
446…上書き保存手段
447…データ送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コード化パターンが印刷された書き込み媒体に対する電子ペンの移動に応じて特定される描画ストロークを、処理対象のページ内に描画するストローク描画手段と、
前記処理対象のページ内に描画された前記描画ストロークのうち、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が第1所定量以上であることを条件に、新規のページを作成する新規ページ作成手段とを備えることを特徴とするコンピュータ装置。
【請求項2】
前記処理対象のページ内における前記描画ストロークの全体量を演算するストローク量演算手段をさらに備え、
前記新規ページ作成手段は、前記ストローク量演算手段により演算された前記全体量が、第2所定量以上である状態に対して、前記電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が前記第1所定量以上であることを条件に、前記新規のページを作成することを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ装置。
【請求項3】
前記全体量が前記第2所定量未満であること、又は、前記全体量が前記第2所定量以上であっても、前記消去対象の描画ストロークの量が第1所定量未満であることを条件に、前記消去対象の描画ストロークを、前記処理対象のページから消去するストローク消去手段と、
前記ストローク描画手段により前記描画ストロークが描画された後、又は、前記ストローク消去手段により前記消去対象の前記描画ストロークが消去された後の、前記処理対象のページの内容を上書き保存する上書き保存手段と
をさらに備え、
前記ストローク量演算手段は、前記上書き保存手段により前記処理対象のページの内容が上書き保存された後、前記全体量を演算することを特徴とする請求項2に記載のコンピュータ装置。
【請求項4】
前記ストローク消去手段は、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーのイレーサー部の移動領域を消去領域として特定し、前記消去領域に基づいて前記消去対象の描画ストロークを決定することを特徴とする請求項3に記載のコンピュータ装置。
【請求項5】
前記新規ページ作成手段は、さらに、前記消去対象の描画ストロークの量が前記第1所定量以上になった時間が所定時間以内であることを条件に、前記新規のページを作成することを特徴とする請求項1〜4のうち何れか一項に記載のコンピュータ装置。
【請求項6】
前記新規ページ作成手段は、ユーザによる新規ページ作成の明示的指示が検知されたことを条件として、新規ページを作成し、
前記ユーザによる前記明示的指示に、前記処理対象のページ内の前記描画ストロークを前記新規ページに引き継ぐ指示が含まれている場合には、前記描画ストロークを前記新規ページに表示する
ことを特徴とする請求項1〜5のうち何れか一項に記載のコンピュータ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうち何れか一項に記載のコンピュータ装置と、端末装置とを備えるシステムであって、
前記コンピュータ装置は、処理対象のページ内における描画ストローク及び新規ページ作成の状態が同期するようデータを前記端末装置へ送信することを特徴とするシステム。
【請求項8】
コンピュータ装置により実行されるプログラムであって、
前記コンピュータ装置を、
コード化パターンが印刷された書き込み媒体に対する電子ペンの移動に応じて特定される描画ストロークを、処理対象のページ内に描画するストローク描画手段、
前記処理対象のページ内に描画された前記描画ストロークのうち、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が第1所定量以上であることを条件に、新規のページを作成する新規ページ作成手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータ装置を、前記処理対象のページ内における前記描画ストロークの全体量を演算するストローク量演算手段としてさらに機能させ、
前記新規ページ作成手段は、前記ストローク量演算手段により演算された前記全体量が、第2所定量以上である状態に対して、前記電子イレイサーの移動に応じて特定される消去対象の描画ストロークの量が前記第1所定量以上であることを条件に、前記新規のページを作成することを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記コンピュータ装置を、
前記全体量が前記第2所定量未満であること、又は、前記全体量が前記第2所定量以上であっても、前記消去対象の描画ストロークの量が第1所定量未満であることを条件に、前記消去対象の描画ストロークを、前記処理対象のページから消去するストローク消去手段と、
前記ストローク描画手段により前記描画ストロークが描画された後、又は、前記ストローク消去手段により前記消去対象の前記描画ストロークが消去された後の、前記処理対象のページの内容を上書き保存する上書き保存手段と
してさらに機能させ、
前記ストローク量演算手段は、前記上書き保存手段により前記処理対象のページの内容が上書き保存された後、前記全体量を演算することを特徴とする請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記ストローク消去手段は、前記書き込み媒体に対する電子イレイサーのイレーサー部の移動領域を消去領域として特定し、前記消去領域に基づいて前記消去対象の描画ストロークを決定することを特徴とする請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記新規ページ作成手段は、さらに、前記消去対象の描画ストロークの量が前記第1所定量以上になった時間が所定時間以内であることを条件に、前記新規のページを作成することを特徴とする請求項8〜11のうち何れか一項に記載のコンピュータ装置。
【請求項13】
前記新規ページ作成手段は、ユーザによる新規ページ作成の明示的指示が検出されたことを条件として、新規ページを作成し、
前記ユーザによる前記明示的指示に、前記処理対象のページ内の前記描画ストロークを前記新規ページに引き継ぐ指示が含まれている場合には、前記描画ストロークを前記新規ページに表示する
ことを特徴とする請求項8〜12のうち何れか一項に記載のプログラム。
【請求項14】
処理対象のページ内における描画ストローク及び新規ページ作成の状態が同期するようデータを外部の端末装置へ送信するデータ送信手段をさらに備えるよう前記コンピュータ装置を機能させることを特徴とする請求項8〜13のうち何れか一項に記載のプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−203462(P2012−203462A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64812(P2011−64812)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】