説明

コンロッド、内燃機関、自動車両およびコンロッドの製造方法

【課題】優れた機械的特性を部位ごとに有し、且つ、十分な軽量化を行い得るコンロッドを提供する。
【解決手段】本発明によるコンロッドは、ロッド本体部10と、ロッド本体部10の一端に設けられた小端部20と、ロッド本体部10の他端に設けられた大端部30とを有し、大端部30がロッド本体部10に向かってすぼむように湾曲したアール部30Rを含むコンロッドである。大端部30は、ロッド本体部10とは異なる組成の金属材料で形成されてロッド本体部10に接合されており、大端部30とロッド本体部10との接合箇所Wは、アール部30Rのロッド本体部10側の端REよりも小端部20側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロッドおよびその製造方法に関する。また、本発明は、コンロッドを備えた内燃機関や自動車両にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両の内燃機関には、クランクシャフトとピストンとを連結するためにコンロッド(あるいはコネクティングロッド)と呼ばれる部材が用いられている。図16に、一般的なコンロッド401を示す。コンロッド401は、棒状のロッド本体部410と、ロッド本体部410の一端に設けられた小端部420と、ロッド本体部410の他端に設けられた大端部430とを有している。
【0003】
小端部420は、ピストンピンを通すためのピストンピン孔425を有し、ピストンピンを介してピストンに接続される。一方、大端部430は、クランクピンを通すためのクランクピン孔435を有し、クランクピンを介してクランクシャフトに接続される。
【0004】
大端部430は、ロッド本体部410の一端に連続するロッド部433と、ロッド部433にボルト440によって結合されるキャップ部434とに分割されている。そのため、図16に示したコンロッド401は、分割型のコンロッドと呼ばれる。コンロッドとしては、他に、大端部が分割されないタイプのコンロッドも知られている。
【0005】
従来、コンロッドの材料としては鋼が広く用いられてきたが、近年、チタン合金を用いることが提案されている(例えば特許文献1)。チタン合金を用いてコンロッドを軽量化することにより、クランクシャフトその他のエンジン部品を軽量化できるので、エンジン全体をより軽量化できる。そのため、出力の向上や燃料消費量の削減が可能になる。
【特許文献1】特開昭60−247432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンロッドの材料としてチタン合金を用いると、以下のような問題が発生することがわかった。
【0007】
コンロッドに要求される機械的特性は部位ごとに異なる。例えば、コンロッドの小端部やロッド本体部は、使用中に疲労破壊したり衝撃破壊したりしないように、高い強度、高い靭性を有することを要求される。一方、コンロッドの大端部は、クランクピンとの摩擦を小さくするために、クランクシャフトの回転運動によってもクランクピン孔の内周面が変形しないこと、つまり、高剛性、高弾性係数を有し、高速運転をしても変形しにくいことを要求される。
【0008】
そのため、鋼に比べて弾性係数の低いチタン合金をコンロッドの材料として用いると、軽量化は果たせるものの大端部の剛性が不足してしまう。また、十分な剛性が得られるような大きさにすると、軽量化の利点が失われてしまう。
【0009】
そこで、本願発明者は、コンロッドの部位ごとに異なる金属材料を用いることを着想した。異なる組成の金属からなる複数の部材を接合してコンロッドを形成することにより、コンロッドの部位ごとに所望の機械的特性を与えることができる。例えば、小端部やロッド本体部には軽量で疲労強度に優れた金属材料を用いる一方で、大端部には高剛性、高弾性係数の金属材料を用いることにより、大端部の剛性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【0010】
しかしながら、本願発明者が詳細な検討を行ったところ、このような手法を用いても、実際には十分な軽量化を行うのは難しいことがわかった。コンロッドは、ピストンから伝えられる爆発力をクランクシャフトに伝達するので、高い強度が要求される。そのため、複数の部材を接合することによってコンロッドを形成すると、接合箇所の強度が低下し、十分な強度が得られない。また、低下する強度を補うためにコンロッドを肉厚にして接合箇所の断面積を大きくすれば、その分重量の増加を招いてしまい、異なる金属材料を用いるメリットを得られない。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた機械的特性を部位ごとに有し、且つ、十分な軽量化を行い得るコンロッドおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるコンロッドは、ロッド本体部と、前記ロッド本体部の一端に設けられた小端部と、前記ロッド本体部の他端に設けられた大端部と、を有し、前記大端部は、前記ロッド本体部に向かってすぼむように湾曲したアール部を含むコンロッドであって、前記大端部は、前記ロッド本体部とは異なる組成の金属材料で形成されて前記ロッド本体部に接合されており、前記大端部と前記ロッド本体部との接合箇所は、前記アール部の前記ロッド本体部側の端よりも前記小端部側に位置しており、そのことによって上記目的が達成される。
【0013】
ある好適な実施形態において、前記ロッド本体部は、前記大端部よりも比重の小さい材料から形成されている。
【0014】
ある好適な実施形態において、前記大端部と前記ロッド本体部とは摩擦圧接により接合されている。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記小端部および前記ロッド本体部は、前記大端部よりも比強度の高い材料から形成されている。
【0016】
ある好適な実施形態において、前記小端部および前記ロッド本体部は、チタン合金、アルミニウム合金またはマグネシウム合金から形成されている。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記小端部および前記ロッド本体部は、マルエージング鋼、合金鋼または炭素鋼から形成されている。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記大端部は、高炭素鋼、非調質鋼または焼結鍛造材から形成されている。
【0019】
ある好適な実施形態において、前記大端部は鉄合金から形成されており、前記小端部および前記ロッド本体部はチタン合金から形成されている。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記大端部の表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量は0.3質量%未満であり、前記アール部の前記ロッド本体部側の端から前記接合箇所までの距離は3mm以上である。
【0021】
ある好適な実施形態において、前記大端部の表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量は0.3質量%以上0.5質量%以下であり、前記アール部の前記ロッド本体部側の端から前記接合箇所までの距離は5mm以上である。
【0022】
ある好適な実施形態において、前記大端部の表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量は0.5質量%を超え、前記アール部の前記ロッド本体部側の端から前記接合箇所までの距離は7mm以上である。
【0023】
本発明による内燃機関は、上記の構成を有するコンロッドを備えている。
【0024】
本発明による自動車両は、上記の構成を有する内燃機関を備えている。
【0025】
本発明によるコンロッドの製造方法は、ロッド本体部、前記ロッド本体部の一端に設けられた小端部、および前記ロッド本体部の他端に設けられた大端部を有するコンロッドの製造方法であって、第1の金属材料から形成された第1の部材を用意する工程と、前記第1の金属材料とは異なる組成の第2の金属材料から形成された第2の部材を用意する工程と、前記第1の部材と前記第2の部材とを直動摩擦圧接により接合する工程と、を包含し、そのことによって上記目的が達成される。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記大端部は、前記ロッド本体部に向かってすぼむように湾曲したアール部を含み、前記接合工程は、前記第1の部材と前記第2の部材との接合箇所が、前記アール部の前記ロッド本体部側の端よりも前記小端部側に位置するように行われる。
【0027】
ある好適な実施形態において、前記大端部は、クランクピンが挿通される貫通孔を有し、前記接合工程は、前記第1の部材と前記第2の部材とを、前記貫通孔の中心軸方向と前記ロッド本体部の延びる方向とに直交する方向に沿って擦り合わせるように行われる。
【0028】
ある好適な実施形態において、前記大端部は、クランクピンが挿通される貫通孔を有し、前記接合工程は、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記貫通孔の中心軸方向に沿って擦り合わせるように行われる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によるコンロッドでは、小端部およびロッド本体部と、大端部とが異なる組成の金属で形成されている。そのため、小端部およびロッド本体部と大端部とで異なる機械的特性を実現でき、コンロッドの部位ごとに優れた機械的特性を付与することができる。
【0030】
本発明によるコンロッドでは、さらに、大端部とロッド本体部との接合箇所は、大端部のアール部のロッド本体部側の端よりも小端部側に位置している。このように、本発明によるコンロッドでは、最も応力の集中するアール部の端からずれた位置に接合箇所が設けられているので、接合による強度の低下を補うために接合箇所の断面積を増やす必要が少ない。そのため、優れた機械的特性を確保しつつ、十分な軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
図1に、本実施形態におけるコンロッド1を示す。コンロッド1は、図1に示すように、棒状のロッド本体部10と、ロッド本体部10の一端に設けられた小端部20と、ロッド本体部10の他端に設けられた大端部30とを有している。
【0033】
小端部20には、ピストンピンを通すための貫通孔(「ピストンピン孔」と呼ばれる。)25が形成されている。一方、大端部30には、クランクピンを通すための貫通孔(「クランクピン孔」と呼ばれる。)35が形成されている。クランクピン孔35は、典型的にはピストンピン孔25よりも大径である。
【0034】
以下の説明においては、ロッド本体部10の延びる方向を「長手方向」と呼び、クランクピン孔35の中心軸の方向を「軸方向」と呼ぶ。また、長手方向および軸方向に直交する方向を「幅方向」と呼ぶ。また、図面において、長手方向を矢印Zで示し、軸方向を矢印Xで示し、幅方向を矢印Yで示す。
【0035】
大端部30は、図2に示すように、ロッド本体部10の端に連続するロッド部33と、ロッド部33にボルト40によって結合されるキャップ部34とに分割されている。ロッド部33とキャップ部34とは、破断分割法によって分割されていることが好ましい。破断分割法とは、ロッド部33およびキャップ部34を一体に形成した後に脆性破断によって分割する工法である。この工法によれば、ロッド部33およびキャップ部34の破断面Fに、脆性破断によって微細な凹凸が相補的に形成される。ロッド部33およびキャップ部34の破断面Fが互いに相補的な凹凸を有することにより、ロッド部33とキャップ部34の位置決めが正確になされる。また、破断面Fの凹凸同士が嵌合することによって、ロッド部33とキャップ部34との結合がより強固となり、大端部30全体の剛性が向上する。
【0036】
本実施形態におけるコンロッド1は、大端部30が小端部20およびロッド本体部10とは異なる組成の金属で形成されてロッド本体部10に接合されている点において、従来のコンロッドと異なっている。図1および図2には、大端部30とロッド本体部10との接合箇所を参照符号Wで示している。
【0037】
コンロッド1の大端部30には、疲労強度はさほど重要ではなく、高剛性、高弾性係数であることが必要とされる。また、上述した破断分割法を用いる場合には、脆性破断が容易であることも重要である。一方、小端部20およびロッド本体部10には、高剛性、高弾性係数であることよりも、疲労強度が高いことが必要とされる。従来のコンロッドでは、すべての部分が同じ材料を用いて一体に形成されるので、上述した好ましい条件をすべて満足させることは難しかった。
【0038】
本実施形態では、大端部30が小端部20およびロッド本体部10とは異なる組成の金属で形成されているので、コンロッド1の部位ごとに優れた機械的特性を実現することができる。具体的には、大端部30を高剛性で高弾性係数を有する(さらには破断分割の容易な)金属材料で形成し、小端部20およびロッド本体部10を疲労強度の高い金属材料から形成することによって、コンロッド1の機械的特性に好ましい分布(従来のコンロッドでは得られなかった分布)を持たせることができる。さらに、小端部20およびロッド本体部10を大端部30よりも比重(密度)の小さい金属材料から形成することによって、大端部30の剛性を確保しつつコンロッド1全体の軽量化を図ることができる。例えば、大端部30を鉄合金から形成し、小端部20およびロッド本体部10をチタン合金から形成することによって、軽量で、且つ、機械的特性に優れたコンロッド1が得られる。
【0039】
本実施形態におけるコンロッド1は、さらに、大端部30とロッド本体部10との接合箇所Wの位置にも特徴を有している。大端部30は、図1に示すように、ロッド本体部10に向かってすぼむように湾曲した(つまり内側に向かって凹む)アール部30Rを含んでおり、接合箇所Wは、このアール部30Rの端(ロッド本体部10側の端)REよりも小端部20側に位置している。
【0040】
小端部20およびロッド本体部10の材料として大端部30よりも比重(密度)の小さい金属材料を用いることによる軽量化効果を最大限に得るためには、アール部30Rの端REで接合を行う(つまりアール部30Rの端REと接合箇所Wとを一致させる)ことが好ましいと一見思える。しかしながら、複数の部材同士を接合した場合、接合箇所Wの強度が低下してしまうので、コンロッド1においてもっとも応力がかかるアール部30Rの端REで接合を行うと、強度不足を補うために接合箇所Wの断面積を大きくする必要がある。そのため、その分重量が増加し、十分な軽量化を行うことができない。
【0041】
これに対し、本実施形態のように、最も応力の集中するアール部30Rの端REからずれた位置に接合箇所Wを設けると、接合による強度の低下を補うために接合箇所Wの断面積を増やす必要が少ない。そのため、優れた機械的特性を確保しつつ、十分な軽量化を図ることができる。
【0042】
なお、小端部20から大端部30に向かう方向(図1中の長手方向Z)に沿ってコンロッド1の断面積の変化を考えると、ロッド本体部10では小端部20側から大端部30側に向かうにつれて断面積は一定の割合で増加する。そのため、典型的には、アール部30Rの端REは、この断面積の増加率が一定の値から変化する(より高くなる)部分と規定される。
【0043】
大端部30とロッド本体部10との接合は、種々の方法を用いて行うことができるが、摩擦圧接によって行うことが好ましい。摩擦圧接とは、接合する部材同士を高速で擦り合わせ、生じる摩擦熱によって部材を軟化させると同時に圧力を加えて接合する技術である。勿論、融接法を用いてもよいが、融接法を用いて異種材料の接合を行うと、もろい合金や金属間化合物が形成されてしまうことがある。摩擦圧接によれば、そのようなもろい合金や金属間化合物の形成を抑制できるので、種々の異種材料の組み合わせについて接合を好適に行うことができる。また、接合に中間材(第3部材)を用いる方法(溶接、ろう付け等)を用いてもよいが、摩擦圧接法によれば、そのような中間材を用いる方法に比べ、異種の金属材料同士を高強度で接合することが容易である。
【0044】
また、摩擦圧接によれば、位置精度よく(具体的には0.05mm程度の精度で)接合を行うことができるので、そのことによってさらなる軽量化を図ることも可能になる。従来のコンロッドでは、すべての部分が一体で鍛造されるので、ピストンピン孔とクランクピン孔とを三次元的な位置関係を精度良く保って形成することは難しかった。そのため、そのような位置ずれを見込んでコンロッドを肉厚に作る必要があった。例えば、図3(a)に示す小端部の最小肉厚Tminや、図3(b)に示す割り振りA1、A2を大きくする必要があった。これに対し、摩擦圧接によれば、そのような位置ずれを小さくすることができる。具体的には、従来、軸方向Xについて0.2mm程度、幅方向Yおよび長手方向Zについて0.3mm程度であった位置ずれを0.05mm程度に小さくすることができる。そのため、ずれを見込んでコンロッド1を肉厚に形成する必要がなく、さらなる軽量化を図ることができる。コンロッド1の軽量化により往復重量が小さくなると、クランクシャフトやバランサーの重量も小さくすることができるため、内燃機関や自動車両全体の軽量化も可能になる。
【0045】
また、摩擦圧接によれば、接合箇所Wの空隙が少なく、中間材を用いる必要もないため、小端部20から大端部30への熱伝導が良くなる。さらに、中間材が不要なので、接合工程を行うための設備を簡易化しやすく、接合工程の自動化を行いやすい。
【0046】
摩擦圧接は、接合する部材の一方(あるいは両方)を回転させる回転摩擦圧接と、図4に示すように接合する部材の一方を直線的に往復運動させる直動摩擦圧接(Linear Friction Welding)とに大別されるが、コンロッド1は一般に円形の断面を有していないので、直動摩擦圧接を用いることが好ましい。
【0047】
なお、摩擦圧接により接合を行っても、接合箇所Wの金属組織が変化するので接合箇所Wの強度はいくぶん低下する。しかし、本実施形態のように接合箇所Wの位置をアール部端RE(最も応力が集中する箇所)からずらすことにより、強度低下を補うために断面積を増加させる必要が少なくなる。また、アール部30Rの端REから接合箇所Wまでの距離D(図1参照)が長いほど、接合による金属組織の変化の影響をアール部端REが受けにくく、アール部端REにおける疲労強度の低減を抑制することができる。以下、大端部30を鉄合金から形成し、小端部20およびロッド本体部10をチタン合金から形成した場合について、アール部端REから接合箇所Wまでの距離Dの好ましい範囲を具体的に説明する。
【0048】
表1に、距離D(mm)を変化させたときの、コンロッド全体の重量(g)、アール部端REの深さ0.1mmでのビッカース硬さ(HV)、アール部端REの疲労強度(MPa)を示す。なお、表1に示したデータは、大端部30の材料として、表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量が0.3質量%未満の鉄合金(鋼)を用いるとともに、小端部20およびロッド本体部10の材料として、組成がTi−6Al−4Vの(つまり約6質量%のAlおよび約4質量%のVを含む)チタン合金を用いたときのものである。
【0049】
【表1】

【0050】
まず、コンロッド1の重量に着目すると、コンロッド1の重量は、距離Dが短いほど小さいことがわかる。これは、距離Dが短いほど、より多くの部分がチタン合金から形成されるからである。
【0051】
ところが、アール部端REの硬さおよび疲労強度に着目すると、距離Dが短すぎると、アール部端REの硬さが低く、疲労強度が低いことがわかる。これは、距離Dが短すぎると、接合箇所Wにおける金属組織の変化の影響をアール部端REが受けてしまうからである。
【0052】
表1には、アール部端REにおいて好ましい疲労強度が得られるように接合箇所Wの断面積を調整した(具体的には増加させた)ときのコンロッド1の重量(「調整重量」と称する)も併せて示している。この調整重量に着目すると、距離Dが短すぎると、かえって重量が増加してしまうことがわかる。
【0053】
図5に、アール部端REから接合箇所Wまでの距離Dと、アール部端REの疲労強度およびコンロッド1の調整重量との関係を示す。
【0054】
図5から、距離Dが長くなるほど疲労強度が向上し、距離Dが3mm以上になると疲労強度がほぼ一定の値をとることがわかる。これは、距離Dを3mm以上にすることにより、アール部端REが接合箇所Wにおける金属組織の変化の影響をほとんど受けなくなることを意味している。また、このことと対応するように、距離Dが長くなるほど調整重量が小さくなり、距離Dを3mm以上とすることによって、軽量化効果が十分に得られることがわかる。コンロッド1の全体を鋼から形成したときの重量は表1に示すように338gであるので、ここで例示した場合について言えば、距離Dを3mm以上とすることによって、約20%程度の軽量化を図ることができる。なお、図5からもわかるように、距離Dは3mm未満であっても3mmに十分に近ければ(例えば2.5mm以上であれば)実用上十分な軽量化効果は得られる。
【0055】
続いて、表2および図6に、大端部30の材料として、表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量が0.3質量%以上0.5質量%以下の鉄合金(鋼)を用いたときのデータを示す。小端部20およびロッド本体部10の材料については、表1および図5にデータを示したコンロッドと同じである。
【0056】
【表2】

【0057】
表2および図6から、距離Dが長くなるほど疲労強度が向上し、距離Dが5mm以上になると疲労強度がほぼ一定の値をとることがわかる。また、距離Dが長くなるほど調整重量が小さくなり、距離Dを5mm以上とすることによって、軽量化効果が十分に得られることがわかる。従って、この場合には、アール部端REから接合箇所Wまでの距離Dを5mm以上とすることにより、アール部端REの疲労強度を十分に高く確保し、十分な軽量化を図ることができる。勿論、図6からもわかるように、距離Dは5mm未満であっても5mmに十分に近ければ(例えば4.5mm以上であれば)実用上十分な軽量化効果は得られる。
【0058】
また、表3および図7に、大端部30の材料として、表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量が0.5質量%を超える鉄合金(鋼)を用いたときのデータを示す。小端部20およびロッド本体部10の材料については、表1および図5にデータを示したコンロッドと同じである。
【0059】
【表3】

【0060】
表3および図7から、距離Dが長くなるほど疲労強度が向上し、距離Dが7mm以上になると疲労強度がほぼ一定の値をとることがわかる。また、距離Dが長くなるほど調整重量が小さくなり、距離Dを7mm以上とすることによって、軽量化効果が十分に得られることがわかる。従って、この場合には、アール部端REから接合箇所Wまでの距離Dを7mm以上とすることにより、アール部端REの疲労強度を十分に高く確保し、十分な軽量化を図ることができる。勿論、図7からもわかるように、距離Dは7mm未満であっても7mmに十分に近ければ(例えば6.5mm以上であれば)実用上十分な軽量化効果は得られる。
【0061】
表1から表3および図5から図7に具体的に示したように、本発明によるコンロッド1では、接合箇所Wをあえて小端部20側にずらすことによって、逆にコンロッド1を軽量化し得るという予想外の効果が得られる。
【0062】
なお、いずれの場合についても、距離Dに特に上限はない。ただし、距離Dが長すぎると、チタン合金から形成される部分が少なくなり、余分な重量の増加を招いてしまうので、距離Dは、10mm以下であることが好ましい。
【0063】
次に、本実施形態におけるコンロッド1の製造方法を説明する。
【0064】
まず、図8(a)に示すような、小端部20およびロッド本体部10を含みチタン合金から形成された第1の部材P1を用意する。また、これとは別に、図8(b)に示すような、大端部30を含み鉄合金から形成された第2の部材P2を用意する。第1の部材P1および第2の部材P2は、鍛造工程、機械加工工程、熱処理工程などを含む公知の種々の手法によって形成することができる。
【0065】
次に、用意した第1の部材P1と第2の部材P2とを、直動摩擦圧接により接合する。図9に、直動摩擦圧接を行うための摩擦圧接装置50を示す。
【0066】
摩擦圧接装置50は、第1の部材P1を保持する第1のホルダ51、第2の部材P2を保持する第2のホルダ52、第1のホルダ51に連結されたアクチュエータ53および第2のホルダ52に連結された油圧シリンダ54を備えている。アクチュエータ53としては、例えば、油圧サーボ式や電気モータ式のものが用いられる。アクチュエータ53によって第1の部材P1を直線状に往復運動させながら、油圧シリンダ54によって第2の部材P2を第1の部材P1に圧接させることにより、摩擦圧接が行われ、第1の部材P1と第2の部材P2とが接合される。この接合工程は、第1の部材P1と第2の部材P2との接合箇所Wが、アール部30Rのロッド本体部10側の端REよりも小端部20側に位置するように行われる。接合を行った後に、接合箇所Wのバリを切削することによって、コンロッド1が完成する。
【0067】
図10に、第1のホルダ51および第2のホルダ52の一例を示す。図10に示す第1のホルダ51は、ピストンピン孔25に挿通されるピン55と、ロッド本体部10を両側方から押さえるクランプ56とによって第1の部材P1を強固に保持する。また、図10に示す第2のホルダ52は、クランクピン孔35に挿通されるピン57と、大端部30のボルト孔に挿入されるボルト58とによって第2の部材P2を強固に保持する。
【0068】
ここで、接合工程における第1の部材P1の好ましい振動方向を図11(a)および(b)を参照しながら説明する。図11(a)および(b)は、ロッド本体部10の断面と好ましい振動方向とを示す図である。
【0069】
接合工程は、図11(a)に示すように、第1の部材P1と第2の部材P2とを、コンロッド1の幅方向D1(図1における方向Yに相当)に沿って擦り合わせるように行われることが好ましい。幅方向D1は、接合面に平行な面内でもっともモーメントの高い(つまり剛性の高い)方向であるので、幅方向D1に沿って第1の部材P1を振動させることにより、接合時の弾性変形や塑性変形を少なくすることができる。そのため、接合時に必要な振幅を小さくでき、また、接合精度を向上することができる。
【0070】
あるいは、接合工程は、図11(b)に示すように、第1の部材P1と第2の部材P2とを軸方向D2(図1における方向Xに相当)に沿って擦り合わせるように行われることが好ましい。軸方向D2は、接合面に平行な面内でもっともモーメントの低い(つまり剛性の低い)方向であるので、軸方向D2に沿って第1の部材P1を振動させることにより、接合時に部材が弾性変形しやすくなる。そのため、接合面同士をなじませやすく、接合箇所Wの空隙が少なくなる。それ故、接合強度を向上させることができる。
【0071】
幅方向D1および幅方向D2のいずれに第1の部材P1を振動させるかは、接合箇所W近傍の部材の形状や材質、要求性能(例えば接合精度と接合強度のいずれを重視するか)などに応じて適宜設定すればよい。
【0072】
なお、ここでは第1の部材P1を振動させる場合を例として製造方法を説明したが、第1の部材P1ではなく第2の部材P2を振動させてもよいことは言うまでもない。
【0073】
続いて、図12および図13を参照しながら接合箇所W近傍の好ましい断面形状を説明する。
【0074】
図12(a)および(b)に示すように、接合箇所Wにおける断面形状をH字状にすると、座屈強度(断面モーメント)を下げることなく軽量化を図ることができる。また、図13(a)および(b)に示すように、接合箇所Wにおける断面形状を略矩形とすると、座屈強度(断面モーメント)を下げることなく接合面の面積を大きくできるので、接合強度を向上させることができる。
【0075】
本実施形態では、小端部20およびロッド本体部10をチタン合金から形成し、大端部30を鉄合金(鋼)から形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
小端部20およびロッド本体部10は、例えば、チタン合金、アルミニウム合金またはマグネシウム合金から形成されていることが好ましい。これらの金属材料は、高い比強度を有しているので、これらの金属材料を用いることにより、コンロッド1を軽量化することができる。
【0077】
従来のコンロッドでは、小端部およびロッド本体部をこれらの金属材料から形成した場合には、必然的に大端部もこれらの金属材料から形成される。上記の金属材料は比較的高価なので、大端部には高い比強度が必要とされないにもかかわらずこのような高価な材料を用いると、製造コストの増加を招いてしまう。また、上記の金属材料を用いて同等の機械的強度を確保しようとすると大端部が大きくなってしまい、そのことによっても製造コストが上昇する。
【0078】
本発明によれば、大端部30を小端部20およびロッド本体部10と異なる組成の金属材料で形成するので、小端部20およびロッド本体部10のみをチタン合金、アルミニウム合金またはマグネシウム合金から形成することにより、これらの高価な金属材料の使用量を従来に比べて大端部30の分だけ削減できる。そのため、製造コストを低減できる。特に鍛造によりコンロッドを形成する場合、従来は、大端部の大きさに合わせるために小端部となる部分の材料の歩留まりが低かった。本発明は、歩留まりの向上にも効果がある。
【0079】
また、大端部がチタン合金やアルミニウム合金、マグネシウム合金から形成されている場合、クランク側面との摺動により焼付きが生じやすくなるため、表面処理またはスラストワッシャの使用が必要となる。本発明によれば、表面処理を施したりスラストワッシャを用いたりする必要性が低くなる。
【0080】
あるいは、小端部20およびロッド本体部10は、マルエージング鋼、合金鋼または炭素鋼から形成されていることも好ましい。これらの金属材料は、高い疲労強度を有しているので、小端部20およびロッド本体部10の材料として好適に用いられる。
【0081】
従来のコンロッドでは、小端部およびロッド本体部をこれらの金属材料から形成した場合には、必然的に大端部もこれらの金属材料から形成される。上記の金属材料は熱処理後には加工しにくいので、大端部には高い疲労強度が必要とされないにもかかわらずこのような材料を用いると、小端部に比べて加工量の多い大端部の加工が困難になる。
【0082】
本発明によれば、小端部20およびロッド本体部10のみをマルエージング鋼、合金鋼または炭素鋼から形成することにより、大端部30の加工を容易に行うことができる。また、これらの金属材料は比較的高価でもあるため、これらの金属材料を大端部30に用いる必要がなくなることにより、製造コストを低減することもできる。
【0083】
大端部30は、例えば、高炭素鋼、非調質鋼または焼結鍛造材から形成されていることが好ましい。これらの金属材料は、高弾性係数を有し、脆性が高いので、破断分割が容易である。
【0084】
従来のコンロッドでは、大端部をこれらの金属材料から形成した場合には、必然的に小端部やロッド本体部もこれらの金属材料から形成される。上記の金属材料は、比較的疲労強度が低いため、小端部やロッド本体部がこれらの金属材料から形成されていると、疲労破壊が問題となる。
【0085】
本発明によれば、大端部30のみを高炭素鋼、非調質鋼または焼結鍛造材から形成することにより、小端部20およびロッド本体部10の疲労破壊は問題とならない。破断分割の容易な上記金属材料から大端部30が形成されていると、破断分割工程を簡略化できる。具体的には、冷却工程の省略、破断起点溝作成の簡易化、破断設備の出力の低減が可能となる。また、高弾性係数を有する上記金属材料から大端部30が形成されていると、大端部30の変形が抑制され、その結果、大端部30での焼付が起こりにくくなる。
【0086】
なお、本実施形態では、異なる組成の金属材料の組み合わせの例として、ベースとなる金属が異なる合金同士の組み合わせを示したが、金属材料の組み合わせはこれに限定されるものではない。ベースとなる金属が同じである合金材料の組み合わせであってもよく、例えば、SCM435とマルエージング鋼というような鉄合金同士の組み合わせであってもよい。
【0087】
また、本実施形態では、大端部30とロッド本体部10とを接合する好ましい方法として摩擦圧接を例示したが、電子ビーム溶接法やレーザー溶接法を用いることも好ましい。これらの方法では、溶融量が少ないために強度を低下させるもろい合金や金属間化合物が発生しにくく、また、中間材(第3部材)を用いる必要がないので、これらの方法を用いても、異なる組成の金属材料から形成された大端部30とロッド本体部10とを好適に接合することができる。また、電子ビーム溶接法やレーザー溶接法を用いると、ワークを移動させないので、さらに位置精度を向上させ得る(具体的には0.01mm程度まで)という利点が得られる。また、接合工程の自動化が容易であるという利点も得られる。
【0088】
また、本実施形態では分割型のコンロッドを例示したが、本発明は、大端部が分割されないタイプのコンロッドにも好適に用いられる。
【0089】
本実施形態におけるコンロッド1は、自動車両用や機械用の各種の内燃機関(エンジン)に広く用いられる。図14に、本実施形態におけるコンロッド1を備えたエンジン100の一例を示す。
【0090】
エンジン100は、クランクケース110、シリンダブロック120およびシリンダヘッド130を有している。
【0091】
クランクケース110内にはクランクシャフト111が収容されている。クランクシャフト111は、クランクピン112およびクランクウェブ113を有している。
【0092】
クランクケース110の上に、シリンダブロック120が設けられている。シリンダブロック120には、円筒状のシリンダスリーブ121がはめ込まれており、ピストン122は、シリンダスリーブ121内を往復し得るように設けられている。
【0093】
シリンダブロック120の上に、シリンダヘッド130が設けられている。シリンダヘッド130は、シリンダブロック120のピストン122やシリンダスリーブ121とともに燃焼室131を形成する。シリンダヘッド130は、吸気ポート132および排気ポート133を有している。吸気ポート132内には燃焼室131内に混合気を供給するための吸気弁134が設けられており、排気ポート内には燃焼室131内の排気を行うための排気弁135が設けられている。
【0094】
ピストン122とクランクシャフト111とは、コンロッド1によって連結されている。具体的には、コンロッド1の小端部20の貫通孔(ピストンピン孔)にピストン122のピストンピン123が挿入されているとともに、大端部30の貫通孔(クランクピン孔)にクランクシャフト111のクランクピン112が挿入されており、そのことによってピストン122とクランクシャフト111とが連結されている。大端部30の貫通孔の内周面とクランクピン112との間には、軸受けメタル114が設けられている。軸受けメタル114は、軸受け係止溝によって係止されている。
【0095】
本実施形態におけるコンロッド1は、既に述べたように十分な軽量化を図り得るので、エンジン100の吹き上がりを良くし、燃料消費量を少なくすることができる。
【0096】
図15に、図14に示したエンジン100を備えた自動二輪車を示す。
【0097】
図15に示す自動二輪車では、本体フレーム301の前端にヘッドパイプ302が設けられている。ヘッドパイプ302には、フロントフォーク303が車両の左右方向に揺動し得るように取り付けられている。フロントフォーク303の下端には、前輪304が回転可能なように支持されている。
【0098】
本体フレーム301の後端上部から後方に延びるようにシートレール306が取り付けられている。本体フレーム301上に燃料タンク307が設けられており、シートレール306上にメインシート308aおよびタンデムシート308bが設けられている。
【0099】
また、本体フレーム301の後端に、後方へ延びるリアアーム309が取り付けられている。リアアーム309の後端に後輪310が回転可能なように支持されている。
【0100】
本体フレーム301の中央部には、図14に示したエンジン100が保持されている。エンジン100には、本実施形態におけるコンロッド1が用いられている。エンジン100の前方には、ラジエータ311が設けられている。エンジン100の排気ポートには排気管312が接続されており、排気管312の後端にマフラー313が取り付けられている。
【0101】
エンジン100には変速機315が連結されている。変速機315の出力軸316に駆動スプロケット317が取り付けられている。駆動スプロケット317は、チェーン318を介して後輪310の後輪スプロケット319に連結されている。変速機315およびチェーン318は、エンジン100により発生した動力を駆動輪に伝える伝達機構として機能する。
【0102】
図15に示した自動二輪車は、本実施形態におけるコンロッド1が用いられたエンジン100を備えているので、好適な性能が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によると、優れた機械的特性を部位ごとに有し、且つ、十分な軽量化を行い得るコンロッドが提供される。
【0104】
本発明によるコンロッドは、各種の内燃機関(例えば自動車両用のエンジン)に広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドを模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドを模式的に示す斜視図である。
【図3】(a)は小端部の最小肉厚を示す図であり、(b)は割り振りを示す図である。
【図4】直動摩擦圧接を説明するための図である。
【図5】アール部端から接合箇所までの距離と、アール部端の疲労強度およびコンロッドの調整重量との関係を示すグラフである。
【図6】アール部端から接合箇所までの距離と、アール部端の疲労強度およびコンロッドの調整重量との関係を示すグラフである。
【図7】アール部端から接合箇所までの距離と、アール部端の疲労強度およびコンロッドの調整重量との関係を示すグラフである。
【図8】(a)および(b)は、本実施形態におけるコンロッドの製造方法において用意される第1の部材および第2の部材を模式的に示す平面図である。
【図9】直動摩擦圧接を行うための摩擦圧接装置を模式的に示す図である。
【図10】摩擦圧接装置が有する第1のホルダおよび第2のホルダの一例を模式的に示す図である。
【図11】(a)および(b)は、接合工程における好ましい振動方向を説明するための図である。
【図12】(a)はコンロッドの接合箇所近傍を示す平面図であり、(b)は(a)中の12B−12B’線に沿った断面図である。
【図13】(a)はコンロッドの接合箇所近傍を示す平面図であり、(b)は(a)中の13B−13B’線に沿った断面図である。
【図14】本発明の好適な実施形態におけるコンロッドを備えたエンジンの一例を模式的に示す断面図である。
【図15】図14に示すエンジンを備えた自動二輪車を模式的に示す断面図である。
【図16】従来の分割型コンロッドを模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 コンロッド
10 ロッド本体部
20 小端部
25 ピストンピン孔
30 大端部
30R アール部
RE アール部端
33 ロッド部
34 キャップ部
35 クランクピン孔
40 ボルト
W 接合箇所
100 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド本体部と、前記ロッド本体部の一端に設けられた小端部と、前記ロッド本体部の他端に設けられた大端部と、を有し、前記大端部は、前記ロッド本体部に向かってすぼむように湾曲したアール部を含むコンロッドであって、
前記大端部は、前記ロッド本体部とは異なる組成の金属材料で形成されて前記ロッド本体部に接合されており、
前記大端部と前記ロッド本体部との接合箇所は、前記アール部の前記ロッド本体部側の端よりも前記小端部側に位置しているコンロッド。
【請求項2】
前記ロッド本体部は、前記大端部よりも比重の小さい材料から形成されている請求項1に記載のコンロッド。
【請求項3】
前記大端部と前記ロッド本体部とは摩擦圧接により接合されている請求項1または2に記載のコンロッド。
【請求項4】
前記小端部および前記ロッド本体部は、前記大端部よりも比強度の高い材料から形成されている請求項1から3のいずれかに記載のコンロッド。
【請求項5】
前記小端部および前記ロッド本体部は、チタン合金、アルミニウム合金またはマグネシウム合金から形成されている請求項1から4のいずれかに記載のコンロッド。
【請求項6】
前記小端部および前記ロッド本体部は、マルエージング鋼、合金鋼または炭素鋼から形成されている請求項1から3のいずれかに記載のコンロッド。
【請求項7】
前記大端部は、高炭素鋼、非調質鋼または焼結鍛造材から形成されている請求項1から6のいずれかに記載のコンロッド。
【請求項8】
前記大端部は鉄合金から形成されており、前記小端部および前記ロッド本体部はチタン合金から形成されている請求項1から3のいずれかに記載のコンロッド。
【請求項9】
前記大端部の表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量は0.3質量%未満であり、
前記アール部の前記ロッド本体部側の端から前記接合箇所までの距離は3mm以上である請求項8に記載のコンロッド。
【請求項10】
前記大端部の表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量は0.3質量%以上0.5質量%以下であり、
前記アール部の前記ロッド本体部側の端から前記接合箇所までの距離は5mm以上である請求項8に記載のコンロッド。
【請求項11】
前記大端部の表面から深さ0.2mmまでの平均炭素含有量は0.5質量%を超え、
前記アール部の前記ロッド本体部側の端から前記接合箇所までの距離は7mm以上である請求項8に記載のコンロッド。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のコンロッドを備えた内燃機関。
【請求項13】
請求項12に記載の内燃機関を備えた自動車両。
【請求項14】
ロッド本体部、前記ロッド本体部の一端に設けられた小端部、および前記ロッド本体部の他端に設けられた大端部を有するコンロッドの製造方法であって、
第1の金属材料から形成された第1の部材を用意する工程と、
前記第1の金属材料とは異なる組成の第2の金属材料から形成された第2の部材を用意する工程と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを直動摩擦圧接により接合する工程と、
を包含するコンロッドの製造方法。
【請求項15】
前記大端部は、前記ロッド本体部に向かってすぼむように湾曲したアール部を含み、
前記接合工程は、前記第1の部材と前記第2の部材との接合箇所が、前記アール部の前記ロッド本体部側の端よりも前記小端部側に位置するように行われる請求項14に記載のコンロッドの製造方法。
【請求項16】
前記大端部は、クランクピンが挿通される貫通孔を有し、
前記接合工程は、前記第1の部材と前記第2の部材とを、前記貫通孔の中心軸方向と前記ロッド本体部の延びる方向とに直交する方向に沿って擦り合わせるように行われる請求項14または15に記載のコンロッドの製造方法。
【請求項17】
前記大端部は、クランクピンが挿通される貫通孔を有し、
前記接合工程は、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記貫通孔の中心軸方向に沿って擦り合わせるように行われる請求項14または15に記載のコンロッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−192399(P2007−192399A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331359(P2006−331359)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】