説明

コーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品

【課題】コーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品を提供する。
【解決手段】透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置されおり、コーティング部材で絵柄層が形成され、前記剥離性部材を排除した後、透過性基材の表面に形成されてなる該絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材で表面層が形成されており、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング部材。
【効果】透過性基材の表面に、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与したコーティング部材であって、シリコーン樹脂、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、顔料が程よく含有されてなる塗膜層を形成するコーティング部材を製造し、提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品に関するものであり、更に詳しくは、プラスチック、ガラス、紙、木材、竹、繊維、陶器、セラミックス、それらの組み合わせ、及びそれらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムからなる群より選ばれた1種の材料からなる光を透過する基材に付加価値を付与する新規コーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品に関するものである。本発明は、例えば、プラスチック、ガラス、紙、木材、竹、繊維、陶器、セラミックス、それらの組み合わせ、及びそれらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムからなる群より選ばれた1種の材料からなる光を透過する基材を利用し、これらの透過性基材表面に文字、絵、柄、ロゴ、マークの絵柄層にステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与し、かつ、これを長期間に亘って維持することを可能とする新規コーティング部材を製造し、提供すること、そして、それにより、透過性基材の技術分野における新技術・新産業を創出すること、を可能とするものとして有用である。
【背景技術】
【0002】
ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性を有する新規コーティング部材により、例えば、ステレス性を強調する外観を得るには、絵柄層と表面層を同色又は同系色を用いて塗膜形成することにより絵柄層は隠れた状態に形成されて視認できないが、光を照射することにより絵柄層が浮き出る感じで視認できるようになるというステレス性の外観を有する塗膜層を表面に形成でき、グラデーション性若しくはぼかし性を強調する外観を得るには、絵柄層と表面層が同色又は同系色を用いて塗膜形成することにより、ステレス性のグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成することが可能であり、色調を楽しむグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成したい場合には、絵柄層と表面層の色相が相違する2種類以上を用いることで色鮮やかな、グラデーション性若しくはぼかし性をより強調する表面を形成することができる。これらの付加価値を付与するために用いる透過性基材の中で、ガラス、陶器、セラミックスなどの無機系素材に絵柄を付与する場合には着色顔料を高温で焼成するのが一般的である。また、常温での用途が多い有機系素材のプラスチック、紙、木材、竹、繊維などへ絵柄を付与する場合には塗料、インキ、染料などの着色材が用いられている。中でも塗料は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂など多くの種類が存在している。しかしながら、特にプラスチックの表面に常温で密着性と耐擦傷性、更には色彩性を付与することは、なかなか困難であり、従来、様々な製品の研究開発が行われているが実用化されているのは少ないのが実情である。そのため、無機系、有機系の素材を問わず常温施工により、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を形成する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与することは、製品の新規性と高耐久性化、長寿命化することができ、それによって、製品を高付加価値化することが可能となる。
【0003】
特に常温による着色材の密着性が難しい有機系素材のプラスチックは、無機系素材のガラスと比較して、軽量で、かつ安全性、加工性、ファッション性などにおいて優れており、さらに近年、耐擦傷性、耐摩耗性を含むハードコート技術の開発により急速に普及してきた。このようにプラスチックは、広範囲に使用されるようになってきたが、ガラスに比べて傷が付き易いという欠点を有している。そこで、この欠点を改善するためのプラスチック塗料として、例えば、特許第3934152・プラスチック塗料用樹脂組成物およびそれを用いたプラスチック塗料。特許第3727663・海面活性剤含有アセトアセトキシ官能及びエナミン官能ポリマー。特許第3608008・水性プラスチック塗料用樹脂組成物。特許第3038273・プラスチック塗料用樹脂組成物。特許第2683063・プラスチック塗料用樹脂組成物。又、アルコキシシランおよびコロイダルシリカの混合物形成される耐磨耗性塗料などが開示されている。
【特許文献1】特許第3934152号公報
【特許文献2】特許第3727663号公報
【特許文献3】特許第3608008号公報
【特許文献4】特許第3038273号公報
【特許文献5】特許第2683063号公報
【0004】
更に、付加価値を高める塗装方法としては、例えば、特許第3562350・多色塗装用の塗装装置および塗装方法。特許第4098608号・着色塗膜にダイレクトプラズマを作用させるグラデーション調の外観を有する塗膜。特許第3359697号・濃食部分と発光光線透過部分の境界部分に遮光層を設けた自動車窓ガラス。等が提案されている。
【特許文献6】特許第3562350号公報
【特許文献7】特許第4098608号公報
【特許文献8】特許第3359697号公報
【0005】
しかしながら、これらの塗料の塗膜は、ポリカーボネイトなど、他の幾つかのプラスチック素材においては密着性が悪いか、或いは最初は良くても経時変化により、剥離するなどの欠点がある。そこで密着性の得にくいプラスチック素材の場合には、プライマーを使用するなどの方法が行われているが、プライマーを使用すると、塗装設備、又は手順が煩雑になると共に、工程が長くなり長時間を必要とするなど生産性に課題があり、プライマー処理なしで直接塗布する方法が望まれていた。このように従来、ケイ酸塩やシリカ、シリコーン化合物を塗料組成物として使用することは公知技術である。しかしながら、当該技術分野において、ケイ酸塩及びシリカ、シリコーン化合物のコーティング膜を施して有機系素材からなるプラスチックを含む製品に、常温施工によるステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与することは実現されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況の中で本発明は、上記背景技術に鑑みて、従来技術の諸問題を抜本的に解決すると共に透過性基材が例えば、プラスチック、ガラス、紙、木材、竹、繊維、陶器、セラミックス、それらの組み合わせ、及びそれらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムからなる群より選ばれた1種の材料からなる基材に、常温施工によるステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与することにより、製品の新規性と高耐久性化、長寿命化することができ、それによって、製品を高付加価値化することが可能となるコーティング部材を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置されおり、その上からシリコーン樹脂、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、顔料を含有するコーティング部材で絵柄層が形成され、前記絵柄層の乾燥後に前記剥離性部材を排除してから、透過性基材の表面に形成されてなる該絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材により表面層が形成されており、該絵柄層及び前記表面層は、あいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング部材、及び、透過性基材の表面に、シリコーン樹脂、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、顔料を含有するコーティング部材で表面層が形成され、該表面層の一部または全部の上に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置され、該剥離性部材の上から更に前記コーティング部材で絵柄層が形成されており、該絵柄層及び前記表面層は、あいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング部材が得られることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、上記の点に鑑み、安価で、製造プロセスがエネルギー低消費型であり、使用後の廃棄物を処理する際に有害な物質が発生することもなく、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層効果を長期間持続できるコーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置されおり、その上からシリコーン樹脂0.1〜10重量%、アルコキシシロキサン0.1〜10重量%、アルコキシシラン0.5〜30重量%、顔料0.5〜30重量%を含有するコーティング部材で絵柄層が形成され、前記剥離性部材を排除した後、透過性基材の表面に形成されてなる該絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材で表面層が形成されており、該表面層及び前記絵柄層は、あいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング部材。
(2)前記透過性基材の表面に、シリコーン樹脂0.1〜10重量%、アルコキシシロキサン0.1〜10重量%、アルコキシシラン0.5〜30重量%、顔料0.5〜30重量%を含有するコーティング部材で表面層が形成され、該表面層の一部または全部の上に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置され、該剥離性部材の上から更に前記コーティング部材で絵柄層が形成されており、該絵柄層及び前記表面層があいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とする(1)記載のコーティング部材。
(3)前記透過性基材が、プラスチック、ガラス、紙、木材、竹、繊維、陶器、セラミックス、それらの組み合わせ、及びそれらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムからなる群より選ばれた1種の材料であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のコーティング部材。
(4)前記透過性基材の表面に、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成するコーティング部材を製造方法する方法であって、透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置されおり、その上からシリコーン樹脂0.1〜10重量%、アルコキシシロキサン0.1〜10重量%、アルコキシシラン0.5〜30重量%、顔料0.5〜30重量%を含有するコーティング部材で絵柄層が形成され、前記剥離性部材を排除した後、透過性基材の表面に形成されてなる該絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材で表面層が形成されており、該表面層及び前記絵柄層は、あいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング部材の製造方法。
(5)前記透過性基材の表面に、シリコーン樹脂0.1〜10重量%、アルコキシシロキサン0.1〜10重量%、アルコキシシラン0.5〜30重量%、顔料0.5〜30重量%を含有するコーティング部材で表面層が形成され、該表面層の一部又は全部の上に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置され、その剥離性部材を含めた上から更に前記コーティング部材で絵柄層が形成されており、該絵柄層及び前記表面層があいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とする(4)記載のコーティング部材の製造方法。
(6)(1)から(3)のいずれか1項に記載のコーティング部材を構成要素として含むステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング製品。
(7)(4)又は(5)のいずれか1項に記載のコーティング部材の製造方法で、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなる透明性基材の近傍に配置されてなる光源の照射光に応じて、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された絵柄層は視認性を呈することを特徴とする(6)に記載するコーティング製品。
【0008】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、有機系素材、無機系素材を問わない透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置されおり、その上からシリコーン樹脂、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、顔料を含有するコーティング部材で絵柄層が形成され、前記絵柄層の乾燥後に前記剥離性部材を排除してから、透過性基材の表面に形成されてなる該絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材により表面層が形成されており、該絵柄層及び前記表面層は、あいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング部材、及び、透過性基材の表面に、シリコーン樹脂、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、顔料を含有するコーティング部材で表面層が形成され、該表面層の一部または全部の上に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置され、該剥離性部材の上から更に前記コーティング部材で絵柄層が形成されており、該絵柄層及び前記表面層は、あいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与するコーティング部材を製造することを特徴とするものである。本発明では、上記透過性基材として、好適には、例えば、プラスチック、ガラス、紙、木材、竹、繊維、陶器、セラミックス、それらの組み合わせ、及びそれらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムからなる群より選ばれた1種の材料が例示される。しかし、これらに限定されるものではなく、これらと同等ないし類似のものであれば同様に使用することができる。このように、本発明では、上記のような柔軟性があり、有機系素材及び無機系素材からなる透過性基材を原料として用いられる。
【0009】
本発明で用いられる剥離性部材とは、必要としない場所にコーティング部材からなる絵柄層や表面層が形成されないようにするための部材であって、接着性の有無には関係なく、いかなる部材を用いてもかまわない。例えば、接着性の全く無い部材でシールする場合には、コーティング時に位置がずれるのを防ぐため部材の上部に移動防止用の錘を載せるものであってよい。また、接着性のある部材を用いる場合には、剥離した後に接着剤が残らないものが好まれる。接着剤が残っているとコーティング時にピンホールなどができ易く不具合の原因になる。
【0010】
本発明で用いられるシリコーン樹脂は、シリコーン本来の性質を利用したストレートシ
リコーンレジンと、他の樹脂等と変性して多様な特性を付与した物がよく、好適には、例えば、シリコーンと有機樹脂がそれぞれ有する特徴をあわせ持っている変性シリコーンレジンが例示できる。変性シリコーンレジンは、耐熱性、耐候性等に優れており、特に強靭な密着性機能を有しており、各種バインダーとして重宝されている、コスト、安全性の面及び入手の容易さなどから最も好ましい。
【0011】
次に、本発明で用いられるアルコキシシロキサンは、Si−O結合(シロキサン結合)を持ち、分子内にアルコキシ基を有するものである。アルコキシシロキサンを主成分とする硬化性組成物とは、空気中の水分によって硬化反応(重合反応)するもので、アルコキシシロキサン単体でも、それにアルコキシドを少量混合したもの等でもよい。また、アルコキシシロキサンは、その分子量や構造によって種々の粘度のものがあるためアルコール等通常の溶媒で希釈したものでもよい。このアルコキシシロキサンは、優れた高硬化機能による耐擦傷性の付与に貢献する。この硬化性組成物は特別なものである必要はなく、市販されているものであってよい。
【0012】
更に、本発明の一例として用いられているアルコキシシラン化合物の加水分解物は、オルトケイ酸テトラエチルに適量な水又は水とアルコールの混合液と必要に応じ酢酸を加えて加水分解を進行させながら又は完全に加水分解を進行させて得られる加水分解物が挙げられる。オルトケイ酸テトラエチルは加水分解を受けて、まずシラノールになり、続いてシラノールの脱水重合により無定形シリカの薄膜を形成する。従って、オルトケイ酸テトラエチル加水分解物は、樹脂とフィラーの複合化において混合時の分散性を高め、複合材料の強度、透明性、密着性を向上させる作用を有しており、コスト面及び入手の容易さ等からも望ましい。
【0013】
次に、本発明で用いられる顔料としては、無機顔料、天然無機顔料、合成無機顔料、セラミック顔料、有機顔料、不溶性色素、アゾ系顔料、多環式系顔料、レーキ顔料等であって何らかまわない。その中でも日本工業規格で規定されている顔料である、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄、ウルトラマリン青、プロシア青、カーボンブラックが例示される。これらの群より選ばれた1種又は複数種を調合して用いるのが望ましい。
【0014】
また、透過性基材の表面に絵柄層や表面層を形成する手段としては、例えば、スプレーコーティング、フローコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、等が好まれる。また、乾燥は室温でも加熱乾燥でも良く、後者の方が速く固化することができ、その際、赤外線加熱、紫外線過熱、温風機なども用いることが好まれる。
【0015】
次に、コーティング部材の濃度としては、0.5重量%〜50重量%程度、好ましくは、1.0重量%〜20重量%程度が望ましい。コーティング部材の濃度がこの範囲内であると丈夫なコーティング膜が得られる。濃度がこれよりも高すぎると密着不良やクラック発生の原因となる。また、低すぎると、強度が劣ると共に、色鮮やかな色彩の発現が難しくなり必要以上に積層コーテンングしなければならなくなり生産性が悪くなる。従って素材を吟味して適切な濃度を選択する必要がある。また、乾燥手段としては、自然乾燥や加熱乾燥を用いることを可能とするが加熱乾燥の場合には急速加熱するとひびや剥離が生じるため、遠赤外線ランプやハロゲンランプなどを使用して均一に乾燥した方がひびなどのない、きれいな絵柄層や表面層が構成されて好ましい。
【0016】
このようにして得られたコーティング部材で形成する絵柄層や表面層の塗膜厚は、好ましくは、0.1μm〜1mmの範囲内であることが望まれる。余りに薄膜の場合には、透過性基材の近傍に配置された光源で光照射しても表現されている、文字、絵、柄、ロゴ、マークが視認できない場合がある。また、過剰に施すと多くの材料を浪費すると共にクラック発生など不具合の原因になる。
【0017】
本発明によるコーティング部材の組成物としては、シリコーン樹脂、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、顔料が程よく含有されており、形成する絵柄層や表面層は、夫々の物性があいまって、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与し、かつ、これを長期間に亘って維持することを可能とする新規コーティング部材であることが好まれる。
【0018】
ステレス性の塗膜層は、透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材を配置して、その上から本発明のコーティング部材で、好ましくは、0.1μm〜100μm、より好ましくは、1.0μm〜5.0μmの絵柄層を形成し、該絵柄層が乾燥した後、前記剥離性部材を取り除き、透過性基材の表面に形成された前記絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材で好ましくは、1.0μm〜50μm、より好ましくは、10.0μm〜30.0μmの表面層を形成する。この場合に用いるコーティング部材は、絵柄層及び表面層の色相が同色又は同系色が好ましく、前記絵柄層及び前記表面層は、あいまって絵柄層が視認できないステレス性の塗膜層を形成することが望まれる。
【0019】
グラデーション性の塗膜層は、透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置して、その上から本発明のコーティング部材で、好ましくは、0.1μm〜100μm、より好ましくは、1.0μm〜5.0μmの絵柄層を形成し、該絵柄層が乾燥した後、前記剥離性部材を取り除き透過性基材の表面に形成された前記絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材で好ましくは、1.0μm〜100μm、より好ましくは、10.0μm〜50.0μmの表面層を形成する。この場合に用いるコーティング部材は、絵柄層及び表面層の色相が同色又は同系色であれば、絵柄層と表面層の境界部に視認できないステレス性のグラデーションが形成され、色相が相違する2種類以上を用いることで色鮮やかな視認性を有するグラデーション性の塗膜層を形成することが好まれる。
【0020】
ぼかし性の塗膜層は、透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材の下に、好ましくは0.1mm〜10.0cm、より好ましくは、1.0mm〜1.0cmの敷物で該剥離性部材と前記透過性基材表面の間に隙間を構成し配置して、その上から本発明のコーティング部材で、好ましくは、0.1μm〜100μm、より好ましくは、1.0μm〜5.0μmの絵柄層を形成し、該絵柄層が乾燥した後、前記剥離性部材を取り除き、透過性基材の表面に形成された前記絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材で好ましくは、1.0μm〜100μm、より好ましくは、10.0μm〜50.0μmの表面層を形成する。しかして、該表面層と前記絵柄層の境界部付近は、ぼかし性の塗膜層が形成される。この場合に用いるコーティング部材は、絵柄層及び表面層の色相が同色又は同系色であれば、絵柄層と表面層の境界部に視認できないステレス性のぼかし塗膜層が形成され、色相が相違する2種類以上を用いることで色鮮やかな視認性を有する、ぼかし性の塗膜層を形成することが望ましい。
【0021】
上記のように、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成するコーティング部材からなる絵柄層及び表面層の色相は、同色、同系色若しくは相違する2種類以上で調合されたものなど何の定めもなく、全く異色なものであっても一向に構わない。
【0022】
更に、本発明のコーティング部材を用いることにより、ステルス性コーティング製品、グラデーション性コーティング製品及びステレス&グラデーション性コーティング製品、ぼかし性コーティング製品及びステレス&ぼかし性コーティング製品を作製し提供することができる。本発明に係る夫々のコーティング製品としては、例えば、プラスチック、ガラス、紙、木材、竹、繊維、陶器、セラミックス、それらの組み合わせ、及びそれらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムからなる群より選ばれた1種の材料からなる製品が挙げられる。
【0023】
本発明のコーティング部材を用いて作成される、ステルス性コーティング製品は、透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材を配置し、その上からコーティング部材で絵柄層を形成し、前記剥離性部材を排除した後、透過性基材の表面に形成された該絵柄層を含めた上から、同色又は同系色の前記コーティング部材表面層を形成すると、該表面層及び前記絵柄層は、あいまってステレス性の外観を有する塗膜層を表面に形成するため視認できない状態となる。或いは、透過性基材の表面に、コーティング部材で表面層を形成し、該表面層の一部又は全部の上に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材を配置し、その剥離性部材を含めた上から更に前記コーティング部材で絵柄層を形成することにより、該絵柄層及び前記表面層があいまってステレス性の外観を有する塗膜層を表面に形成するため視認できない状態となる手段が好まれる。このように通常の状態では形成されているであろう、絵柄層の形状は視認できない状態である。しかしながら近傍に配置された光源による照射光に応じて、絵柄層の形状が鮮やかに浮かび上がった状態となり確実に視認できるようになるのが望ましい。
【0024】
本発明のコーティング部材を用いて作成される、グラデーション性コーティング製品は透過性基材の表面の一部にラインを形成する剥離性部材を配置し、その上からコーティング部材で絵柄層を形成し、前記剥離性部材を排除した後、透過性基材の表面に形成された該絵柄層を含めた上から同色又は同系色の前記コーティング部材で表面層を形成することにより該表面層及び前記絵柄層は、あいまってステレス性のラインとなり視認できない外観を有する塗膜層を表面に形成するステレス&グラデーション性コーティング製品を簡単に製作することができる。また、透過性基材の表面にコーティング部材で表面層を形成し、該表面層の一部にラインを形成する剥離性部材を配置し、その上から前記コーティング部材と異なる色相のコーティング部材で絵柄層を形成すると、表面層と絵柄層の境界部に色鮮やかな視認性を有するグラデーション性コーティング製品が構成される手段であることが好まれる。
【0025】
本発明のコーティング部材を用いて作成された、ぼかし性コーティング製品は、透過性基材の表面の一部に、ぼかしを形成する剥離性部材を配置し、その上からコーティング部材で絵柄層を形成し、前記剥離性部材を排除した後、透過性基材の表面に形成された該絵柄層を含めた上から同色又は同系色の前記コーティング部材で表面層を形成することにより該表面層及び前記絵柄層は、あいまってステレス性のぼかし性となり視認できない外観を有する塗膜層を表面に形成するステレス&ぼかし性コーティング製品を簡単に製作することができる。また、透過性基材の表面にコーティング部材で表面層を形成し、該表面層の一部に、ぼかしを形成する剥離性部材を配置し、その上から前記コーティング部材と異なる色相のコーティング部材で絵柄層を形成すると、表面層と絵柄層の境界部に色鮮やかな視認性を有するぼかし性コーティング製品が構成される手段であることが望まれる。
【0026】
このように、本発明のコーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品は常温施工によるステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を形成する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与する優れものである。これらの機能を有しているため表面に付着した汚れの除去作業が簡単になり、雑巾を用いての拭き掃除であっても、剥離や傷が付かない等の安心感と色彩性による癒しを得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、コーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品に係るものであり、本発明により、(1)透過性基材の表面に、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与したコーティング部材であって、シリコーン樹脂、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、顔料が程よく含有されてなるコーティング部材を製造し、提供することができる。(2)本発明のコーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品は低コストで製造でき、常温施工によるステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を形成する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与することにより、製品の新規性と高耐久性化、長寿命化する優れものであり、機能を維持するためのエネルギーを必要とせず、埃の付着による汚れ、手の指紋の油の付着、菌やかび、藻などによる汚れの付着であっても、洗剤を付けた雑巾等で擦り洗いしても擦り傷が付かないなどの効果を発揮することができる。(3)更に、上記コーティング部材により形成されるステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する効果と、色鮮やかな色彩を提供することにより、心に安らぎと癒やし、を与える作用を有しているため、これらの技術分野で種々の用途に活用することができる。(4)上記(1)〜(3)により、新規コーティング部材及びその製品を提供することができる、という効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、当該実施例によって、何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
本実施例では、コーティング部材を用いて、長さ・20cm×幅・20cm×厚み・5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板に、ステルス性の文字を形成し、ステレス性コーティング製品を製作した。
(1)部材の製作
イソプロピルアルコール(三井化学)70gをマグネチックスターラーで撹拌しながら、変性シリコーン樹脂(ST−K102a・石原産業)10gを静かに添加し撹拌を続け、次にアルコキシシロキサン及びアルコキシシランを含有している(X−40−2327・信越化学)10gを静かに加え、更に白色顔料(UTCO−501・大日精化)10gを添加しながら十分な撹拌を施して白色コーティング部材を得た。この場合の白色コーティング部材の不揮発分は14.9%である。次に、HAPPYと表現された長さ・10cm×幅・10cm×厚み・0.3mmの剥離性部材のカッティングシール(SERIA・621)を、長さ・20cm×幅・20cm×厚み・5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板からなる透明性基材の中央付近に貼り付けた後、HAPPYと表現されている以外の必要の無い場所にコーティング部材が付着しないよう剥離性部材からなるマスカーにて養生した後、前記白色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、20g/mあたりの分量をスプレー塗布して絵柄層を形成し、25℃の室温の机上に30分間静置し乾燥を施した。次に、カッティングシール及びマスカーを含む剥離性部材を除去した後、前記透明性基材表面にHAPPYと形成された絵柄層を含めた上から、再度、前記白色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、50g/mあたりの分量をスプレー塗布して表面層を形成し、25℃の室温の机上に60分間静置し乾燥を施してステレス性コーティング製品を得た。
(2)試験方法及び結果
1.ステレス性コーティング製品の表面は、一面が白色塗膜層で形成されており、HAPPYと形成されているはずの絵柄層の文字は表面層とあいまった塗膜層により視認できない状態になっている。
2.ステレス性コーティング製品に10cm離れた場所から60Wの照明器具で光照射したところ、HAPPYの文字が鮮やかに浮き出た感じで視認できる。
3.次に、25℃の室温の机上に24時間静置し完全乾燥を施したステレス性コーティング製品の表面に、醤油を1ml垂らして30分間静置した後、洗剤(ファミリーフレッシュ・花王)を付けたスポンジで擦り、汚れの除去具合と密着性及び耐擦傷性を確認したところ、醤油のシミは完全に除去されているが擦過傷跡は皆無であり密着性も良好な状態であることが確認できた。
【実施例2】
【0030】
本実施例では、コーティング部材を用いて、長さ・20cm×幅・20cm×厚み・5mmの透明板ガラス(旭硝子)に、ステルス性の文字を形成し、ステレス性コーティング製品を製作した。
(1)部材の製作
イソプロピルアルコール(三井化学)70gをマグネチックスターラーで撹拌しながら、変性シリコーン樹脂(ST−K102a・石原産業)10gを静かに添加し撹拌を続け、次にアルコキシシロキサン及びアルコキシシランを含有している(X−40−2327・信越化学)10gを静かに加え、更に赤色顔料(UTCO−032・大日精化)10gを添加して十分な撹拌を施して赤色コーティング部材を得た。この場合の赤色コーティング部材の不揮発分は14.9%である。次にHAPPYと表現された長さ・10cm×幅・10cm×厚み・0.3mmの剥離性部材のカッティングシール(SERIA・621)を、長さ・20cm×幅・20cm×厚み・5mmの透明板ガラス(旭硝子)からなる透明性基材の中央付近に貼り付けた後、HAPPYと表現されている以外の必要の無い場所にコーティング部材が付着しないよう剥離性部材からなるマスカーにて養生後、前記赤色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、20g/mあたりの分量をスプレー塗布して絵柄層を形成し、25℃の室温の机上に30分間静置し乾燥を施した。次に、カッティングシール及びマスカーを含む剥離性部材を除去した後、前記透明性基材表面にHAPPYと形成された絵柄層を含めた上から、再度、前記赤色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、50g/mあたりの分量をスプレー塗布して表面層を形成し、25℃の室温の机上に60分間静置し乾燥を施してステレス性コーティング製品を得た。
(2)試験方法及び結果
1.ステレス性コーティング製品の表面は、一面が赤色塗膜層で形成されており、HAPPYと形成されているはずの絵柄層の文字は表面層とあいまった塗膜層により視認できない状態になっている。
2.ステレス性コーティング製品に10cm離れた場所から60Wの照明器具で光照射したところ、HAPPYの文字が鮮やかに浮き出た感じで視認できる。
3.次に、25℃の室温の机上に24時間静置し完全乾燥を施したステレス性コーティング製品の表面に、醤油を1ml垂らして30分間静置した後、洗剤(ファミリーフレッシュ・花王)を付けたスポンジで擦り、汚れの除去具合と密着性及び耐擦傷性を確認したところ、醤油のシミは完全に除去されているが擦過傷跡は皆無であり密着性も良好な状態であることが確認できた。
【実施例3】
【0031】
本実施例では、コーティング部材を用いて、長さ・20cm×幅・20cm×厚み・5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板に、ステレス性グラデーションを形成し、ステレス&グラデーション性コーティング製品を製作した。
(1)部材の製作
イソプロピルアルコール(三井化学)70gをマグネチックスターラーで撹拌しながら、変性シリコーン樹脂(ST−K102a・石原産業)10gを静かに添加し撹拌を続け、次にアルコキシシロキサン及びアルコキシシランを含有している(X−40−2327・信越化学)10gを静かに加え、更に緑色顔料(UTCO−061・大日精化)10gを添加して十分な撹拌を施して緑色コーティング部材を得た。この場合の緑色コーティング部材の不揮発分は14.8%である。次に、一辺が波状に形成された、長さ・10cm×幅・20cm×厚み・0.3mmの剥離性部材のカッティングシール(SERIA・621)を、長さ・20cm×幅・20cm×厚み・5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板からなる透明性基材に、一辺が波状に形成された側が中央になるように貼りつけて、剥離性部材を含む透明性基材の表面に、前記緑色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、20g/mあたりの分量をスプレー塗布して絵柄層を形成し、25℃の室温の机上に30分間静置し乾燥を施した。次に、カッティングシールからなる剥離性部材を除去した後、前記カッティングシールにより前記緑色コーティング部材が塗布されていない半面側と中央に一辺が波状に形成された絵柄層側を含めた上から、再度、前記緑色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、50g/mあたりの分量をスプレー塗布して表面層を形成し、25℃の室温の机上に60分間静置し乾燥を施してステレス&グラデーション性コーティング製品を得た。
(2)試験方法及び結果
1.ステレス&グラデーション性コーティング製品の表面は、一面が緑色塗膜層で形成されており、グラデーションが中央部に形成されているはずの絵柄層は表面層とあいまった塗膜層により視認できない状態になっている。
2.ステレス&グラデーション性コーティング製品に10cm離れた場所から60Wの照明器具で光照射したところ、波状のグラデーションラインが中央の境界部に鮮やかに浮き出た感じで視認できる。
3.次に、25℃の室温の机上に24時間静置し完全乾燥を施したステレス性コーティング製品の表面に、醤油を1ml垂らして30分間静置した後、洗剤(ファミリーフレッシュ・花王)を付けたスポンジで擦り、汚れの除去具合と密着性及び耐擦傷性を確認したところ、醤油のシミは完全に除去されているが擦過傷跡は皆無であり密着性も良好な状態であることが確認できた。
【実施例4】
【0032】
本実施例では、コーティング部材を用いて、長さ・20cm×幅・20cm×厚み・5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板に、グラデーションを形成し、色鮮やかなグラデーション性コーティング製品を製作した。
(1)部材の製作
イソプロピルアルコール(三井化学)70gをマグネチックスターラーで撹拌しながら、変性シリコーン樹脂(ST−K102a・石原産業)10gを静かに添加し撹拌を続けながら、アルコキシシロキサン及びアルコキシシランを含有している(X−40−2327・信越化学)10gを静かに加え、更に白色顔料(UTCO−501・大日精化)10gを添加しながら十分な撹拌を施して白色コーティング部材を得た。この場合の白色コーティング部材の不揮発分は14.9%である。次に、イソプロピルアルコール(三井化学)70gをマグネチックスターラーで撹拌しながら、変性シリコーン樹脂(ST−K102a・石原産業)10gを静かに添加し撹拌を続けながら、アルコキシシロキサン及びアルコキシシランを含有している(X−40−2327・信越化学)10gを静かに加え、更に、赤色顔料(UTCO−032・大日精化)10gを添加しながら十分な撹拌を施して赤色コーティング部材を得た。この場合の赤色コーティング部材の不揮発分は14.9%である。次に、長さ・20cm×幅・20cm×厚み・5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板からなる透明性基材の表面に、前記白色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、20g/mあたりの分量をスプレー塗布して表面層を形成し、25℃の室温の机上に30分間静置し乾燥を施した。更に一辺が波状に形成された、長さ・10cm×幅・20cm×厚み・0.3mmの剥離性部材のカッティングシール(SERIA・621)を、透明性基材からなる表面層の上に、一辺が波状に形成された側が中央になるように貼りつけて、前記表面層に貼り付けた前記剥離性部材を含めた上から、前記赤色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、50g/mあたりの分量をスプレー塗布して絵柄層を形成し、25℃の室温の机上に60分間静置し乾燥を施して、グラデーション性コーティング製品を得た。
(2)試験方法及び結果
1.グラデーション性コーティング製品の表面は、半面が白色表面層で対向半面が赤色絵柄層からなる塗膜層で形成されており、その中央の境界部には色鮮やかなグラデーションの外観を有する塗膜層が表面に形成されている。
2.次に、25℃の室温の机上に24時間静置し完全乾燥を施したグラデーション性コーティング製品の表面に、醤油を1ml垂らして30分間静置した後、洗剤(ファミリーフレッシュ・花王)を付けたスポンジで擦り、汚れの除去具合と密着性及び耐擦傷性を確認したところ、醤油のシミは完全に除去されているが擦過傷跡は皆無であり密着性も良好な状態であることが確認できた。
【実施例5】
【0033】
本実施例では、コーティング部材を用いて、20cm×20cm×5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板に、ステレス性ぼかしを形成し、ステレス&ぼかし性コーティング製品を製作した。
(1)部材の製作
イソプロピルアルコール(三井化学)70gをマグネチックスターラーで撹拌しながら、変性シリコーン樹脂(ST−K102a・石原産業)10gを静かに添加し撹拌を続け、次に、アルコキシシロキサン及びアルコキシシランを含有している(X−40−2327・信越化学)10gを静かに添加し、更に緑色顔料(UTCO−061・大日精化)10gを添加して十分な撹拌を施して緑色コーティング部材を得た。この場合の緑色コーティング部材の不揮発分は14.8%である。次に、20cm×5cmのカッティングシール(SERIA・621)の裏面に、20cm×4cm×1cm・高さサイズの敷物をカッティングシールの幅より夫々0.5cm狭くなるように貼って、前記敷物を貼ったカッティングシールを20cm×20cm×5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板の中央付近に貼り付けた後、前記緑色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、20g/mあたりの分量をスプレー塗布して絵柄層を形成した後、25℃の室温の机上に30分間静置して乾燥を施した。次に、カッティングシールと共に敷物を除去すると、カッティングシール幅の境界部に夫々5cmから4.5cmがぼけた状態に塗布された絵柄層が表れた。前記透明プラスチックに形成された絵柄層を含めた上から、再度、前記緑色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、50g/mあたりの分量をスプレー塗布して表面層を形成し、25℃の室温の机上に60分間静置して乾燥を施してステレス&ぼかし性コーティング製品を得た。
(2)試験方法及び結果
1.ステレス&ぼかし性コーティング製品の表面は、一面が緑色塗膜層で形成されており
ぼかしが形成されているはずの絵柄層は表面層とあいまった塗膜層により視認できない状態になっている。
2.ステレス&ぼかし性コーティング製品から10cm離れた場所から60Wの照明器具で光照射したところ、カッティングシール幅双方の境界部には、0・5cm幅で、ぼかしが鮮やかに浮き出た感じで視認できる。
3.次に、25℃の室温の机上に24時間静置し完全乾燥を施したぼかし性コーティング製品の表面に、醤油を1ml垂らして30分間静置した後、洗剤(ファミリーフレッシュ・花王)を付けたスポンジで擦り汚れの除去具合と密着性及び耐擦傷性を確認したところ、醤油のシミは完全に除去されており、擦過傷跡は皆無で密着性も良好であった。
【実施例6】
【0034】
本実施例では、コーティング部材を用いて、20cm×20cm×5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板に、ぼかしを形成し、ぼかし性コーティング製品を製作した。
(1)部材の製作
イソプロピルアルコール(三井化学)70gをマグネチックスターラーで撹拌しながら、変性シリコーン樹脂(ST−K102a・石原産業)10gを静かに添加し撹拌を続け、次に、アルコキシシロキサン及びアルコキシシランを含有している(X−40−2327・信越化学)10gを静かに添加し、更に緑色顔料(UTCO−061・大日精化)10gを添加して十分な撹拌を施して緑色コーティング部材を得た。この場合の白色コーティング部材の不揮発分は14.8%である。次に、イソプロピルアルコール(三井化学)70gをマグネチックスターラーで撹拌しながら、変性シリコーン樹脂(ST−K102a・石原産業)10gを静かに添加し撹拌を続けながら、アルコキシシロキサン及びアルコキシシランを含有している(X−40−2327・信越化学)10gを静かに添加し、更に赤色顔料(UTCO−032・大日精化)10gを添加して十分な撹拌を施して赤色コーティング部材を得た。この場合の赤色コーティング部材の不揮発分は14.8%である。
次に、20cm×20cm×5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板の表面に、緑色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により20g/mあたりの分量をスプレー塗布して表面層を形成した後、25℃の室温の机上に30分間静置して乾燥を施した。次に、20cm×10cmのカッティングシール(SERIA・621)の裏面に、20cm×9.5cm×1cm・高さサイズの敷物を0.5cm狭くなるように貼って、その敷物を貼ったカッティングシールを表面層の中央側に0.5cmの差のある方を貼り付けた後、赤色コーティング部材を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、50g/mあたりの分量をスプレー塗布して表面積層を形成し、25℃の室温の机上に60分間静置して乾燥を施して、ぼかし性コーティング製品を得た。
(2)試験方法及び結果
1.ぼかし性コーティング製品の表面は、中央より片面が緑色の表面層、もう片面が赤色の表面積層が形成されており、その境界部には0.5cm程度のカッティングシールに応じた、ぼかしが色鮮やかに形成されている。
2.次に、25℃の室温の机上に24時間静置し完全乾燥を施した、ぼかし性コーティング製品の表面層及び表面積層の上に、醤油を1ml垂らして30分間静置した後、洗剤(ファミリーフレッシュ・花王)を付けたスポンジで擦り汚れの除去具合と密着性及び耐擦傷性を確認したところ、醤油のシミは完全に除去されており、擦過傷跡は皆無で密着性も良好であった。
【実施例7】
【0035】
本実施例は比較のため一般販売されているポリウレタン系合成樹脂塗料を用いて、20cm×20cm×5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板に、ステレス性文字が形成できるか、ステレス性コーティング製品と同一の手順で比較品を作成した。
(1)部材の製作
ポリウレタン系合成白色樹脂塗料(#80白・アトミックス)100gを準備した。この塗料の不揮発分は約30%である。次に、HAPPYと表現された15cm×10cmのカッティングシール(SERIA・621)を20cm×20cm×5mmの透明プラスチック(アクリル・住友化学)板の中央付近に貼り付けた後、前記ポリウレタン系合成白色樹脂塗料を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、20g/mあたりの分量をスプレー塗布して絵柄層を形成しようとしたが、プラスチック表面で塗料が弾き、上手く塗装できない状態であったが、委細かまわず進行し絵柄層を形成した後、25℃の室温の机上に30分間静置して乾燥を施した。次に、カッティングシールを除去した後、前記透明プラスチックに塗料が弾いた状態でHAPPYと形成された絵柄層を含めた上から、再度前記ポリウレタン系合成白色樹脂塗料を低圧温風塗装機(ボリュメール、仏国)により、50g/mあたりの分量をスプレー塗布して表面層を形成しようとしたが、プラスチック表面で塗料が弾き、上手く塗装できない状態であったが、委細かまわず進行し、25℃の室温の机上に60分間静置して乾燥を施した。
(2)試験方法及び結果
1.ポリウレタン系合成白色樹脂塗料製品の表面は、一面が弾いた斑状態の白色塗膜層で形成されており、HAPPYと形成されているはずの絵柄層の文字は視認できない。このポリウレタン系合成白色樹脂塗料はプラスチックへの使用は不適当であることが確認できた。
2.ポリウレタン系合成白色樹脂塗料製品から10cm離れた場所から60Wの照明器具で光照射したところ、HAPPYの文字は、絵柄層と表面層の塗料が同一化し、全く判読できない状態である。
3.次に、25℃の室温の机上に24時間静置し完全乾燥を施したポリウレタン系合成白色樹脂塗料製品の表面に、醤油を1ml垂らして30分間静置した後、洗剤(ファミリーフレッシュ・花王)を付けたスポンジで擦り、汚れの除去具合と密着性及び耐擦傷性を確認したところ、醤油のシミと共にポリウレタン系合成白色樹脂塗料も斑に剥げ取れ密着性にも課題のあることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上詳述したように、本発明は、コーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品に係るものであり、本発明により、(1)透過性基材の表面に、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与したコーティング部材であって、シリコーン樹脂、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、顔料が程よく含有されてなる塗膜層を形成するコーティング部材を製造し、提供することができる。(2)本発明のコーティング部材及びその製造方法ならびにコーティング製品は低コストで製造でき、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を表現する色彩性と共に、密着性、耐擦傷性の機能性を付与した優れものであり、機能を維持するためのエネルギーを必要とせず、埃の付着による汚れ、手の指紋の油の付着、菌やかび、藻などによる汚れの付着であっても、洗剤を付けた雑巾等で擦り洗いしても擦り傷が付かないなどの効果を発揮することができる。(3)更に、コーティング部材は、含有されてなる顔料効果により、色鮮やかな色彩が提供でき、心に安らぎを与える作用効果を有しているため、これらの技術分野で種々の用途に活用することができる。(4)上記(1)〜(3)により、新規コーティング部材及びその製品を提供することができる、という効果が奏される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置されおり、その上からシリコーン樹脂0.1〜10重量%、アルコキシシロキサン0.1〜10重量%、アルコキシシラン0.5〜30重量%、顔料0.5〜30重量%を含有するコーティング部材で絵柄層が形成され、前記剥離性部材を排除した後、透過性基材の表面に形成されてなる該絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材で表面層が形成されており、該表面層及び前記絵柄層は、あいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング部材。
【請求項2】
前記透過性基材の表面に、シリコーン樹脂0.1〜10重量%、アルコキシシロキサン0.1〜10重量%、アルコキシシラン0.5〜30重量%、顔料0.5〜30重量%を含有するコーティング部材で表面層が形成され、該表面層の一部または全部の上に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置され、該剥離性部材の上から更に前記コーティング部材で絵柄層が形成されており、該絵柄層及び前記表面層があいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とする請求項1記載のコーティング部材。
【請求項3】
前記透過性基材が、プラスチック、ガラス、紙、木材、竹、繊維、陶器、セラミックス、それらの組み合わせ、及びそれらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムからなる群より選ばれた1種の材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング部材。
【請求項4】
前記透過性基材の表面に、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成するコーティング部材を製造方法する方法であって、透過性基材の一部または全部の表面に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置されおり、その上からシリコーン樹脂0.1〜10重量%、アルコキシシロキサン0.1〜10重量%、アルコキシシラン0.5〜30重量%、顔料0.5〜30重量%を含有するコーティング部材で絵柄層が形成され、前記剥離性部材を排除した後、透過性基材の表面に形成されてなる該絵柄層を含めた上から、前記コーティング部材で表面層が形成されており、該表面層及び前記絵柄層は、あいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング部材の製造方法。
【請求項5】
前記透過性基材の表面に、シリコーン樹脂0.1〜10重量%、アルコキシシロキサン0.1〜10重量%、アルコキシシラン0.5〜30重量%、顔料0.5〜30重量%を含有するコーティング部材で表面層が形成され、該表面層の一部又は全部の上に、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された剥離性部材が配置され、その剥離性部材を含めた上から更に前記コーティング部材で絵柄層が形成されており、該絵柄層及び前記表面層があいまってステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とする請求項4記載のコーティング部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティング部材を構成要素として含むステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなることを特徴とするコーティング製品。
【請求項7】
請求項4又は5のいずれか1項に記載のコーティング部材の製造方法で、ステレス性又はグラデーション性若しくはぼかし性の外観を有する塗膜層を表面に形成してなる透明性基材の近傍に配置されてなる光源の照射光に応じて、文字、絵、柄、ロゴ、マークが表現された絵柄層は視認性を呈することを特徴とする請求項6に記載するコーティング製品。

【公開番号】特開2010−105256(P2010−105256A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279077(P2008−279077)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 〔博覧会名〕 パテントソリューションフェア2008 〔主催者名〕 特許庁、関東経済産業局、広域関東圏知的財産戦略本部 〔開催日〕 2008年10月1日〜10月3日
【出願人】(598163857)有限会社総合技研 (10)
【Fターム(参考)】