説明

ゴマ種子由来色素

本発明は、還元型ゴマ種子に由来する色素およびそのような色素を製造する方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年7月28日出願の「ゴマ種子由来色素」と題する米国特許出願第61/083,994号(代理人整理番号OMCA−028/PROV)(特許文献1)の米国特許法第119条(e)項の利益を主張するものであり、その内容は全体が全ての目的で本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的に主としてゴマ種子の殻から抽出される独特な物質に関する。
【背景技術】
【0003】
メラニンは植物、動物および原生生物界に見られる化合物群であり、主として色素として役立つ。この色素群はアミノ酸であるチロシンの誘導体である。生物学的メラニンに最もよく見られる形態はユーメラニンで、ジヒドロキシインドール(ヒドロキノンとしても知られる)とジヒドロキシインドールカルボン酸との茶黒色の重合体である。メラニンによく見られる別の形態はフェオメラニンで、ベンゾチアジン単位からなる赤茶色の重合体であり、赤毛やそばかすの主原因である。メラニンの複雑な性質のため、様々なタイプのメラニンの正確な化学構造はまだ研究中である。
【0004】
フェオメラニンやユーメラニンは両者共にヒトの皮膚や毛髪で発見されているが、ユーメラニンがヒトに最も豊富に存在するメラニンである。
【0005】
ユーメラニン重合体は長い間ずっと、数多くの5,6−ジヒドロキシインドール(DHI)と5,6−ジヒドロキシインドール−2−カルボン酸(DHICA)が架橋した重合体からなると考えられてきた。しかしながら、ユーメラニンの分子構造の正確な姿がまだ確認できていない。ユーメラニンは毛髪と皮膚で発見され、毛髪を灰色、黒、黄色および茶色に着色する。
【0006】
フェオメラニンもまた毛髪と皮膚で発見されているが、明るい色の肌のヒトにも暗い色の肌のヒトにも存在する。一般的に女性は男性よりもフェオメラニンを多く持つので、女性の皮膚は一般的に男性のそれよりも赤い。フェオメラニンはピンクないし赤の色合いを与えるので、特に赤毛の中に多量に発見されている。
【0007】
メラニンは有効なラジカル補足剤と見なされる。
【0008】
メラニンの欠損はパーキンソン病、アルツハイマー病、網膜色素変性症、色素性乾皮症、統合失調症および認知症を発症させ得る。
【0009】
メラニンレベルの増加は毛色の黒色化の増加を助けることができるので、加齢による灰色の毛髪の量を減少させる。
【0010】
従って、1つ以上の上記に特定された病気の治療を助ける、改良したメラニン様薬剤の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第61/083,994号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、驚くべきことに、本明細書で述べる様々な疾患や病気の組み合わせを治療するのに有用なゴマ抽出物とゴマ抽出物の調製方法とを提供する。このゴマ抽出物は、酸化しやすい他の材料、例えばコエンザイムQ10、DHA、ビタミンCなどのビタミンなどの安定化を助けるために使用可能な材料を提供する。
【0013】
還元型メラニンは化学式(I)で表すことができる。
【化1】

式中、mおよびnで示す各単位のXは、それぞれ、互いに独立して、COOH基またはその塩、もしくは水素原子であり、
mおよびnで示す各単位の各Yまたは各Yの少なくとも1つは、互いに独立して、NHであり、他方はCHであり、ただし、YとYの両方が共にNHまたはCHであることはなく、
mおよびnで示す各単位のQおよびQは、それぞれ互いに独立して水酸基、水酸陰イオン基、水素原子、または=O基であり、
ただし、還元型メラニン内にケトン官能基が存在する場合、水酸基のケトン官能基に対するモル比は50パーセント、より特に60パーセント、さらに特に75パーセントより高く、特に少なくとも約80パーセントであり、
【化2】

はπ共役系を表し、
mは1から約40であり、
nは1から約40であり、
m+n=2から約40、より特に3、4、5、6、7、などから約40まで、およびその間のあらゆる範囲と整数であり、式中、個々の"m"および個々の"n"の単量体インドール単位はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
一態様において、"m"および"n"の単量体単位は、還元型メラニンのオリゴマーまたはポリマーのオリゴマー/ポリマー構造全体に亘って任意である。これにはブロック材料と共にランダムなポリマー/オリゴマー材料が含まれる。
【0015】
別の態様において、"m"および"n"の単量体単位は変動せず、2つの単量体単位からなるランダムなオリゴマー/ポリマーである。
【0016】
さらに別の態様において、"m"および"n"の単量体単位は同一でもよく、例えばオリゴマーまたはポリマーの"m"および"n"の両方の部分において同じ単量体単位がオリゴマー化/ポリマー化される。
【0017】
一態様において、Q、Qの少なくとも1つは水酸基であるか、あるいは酸素(=O)を表す。
【0018】
別の態様において、このゴマからのゴマ抽出物のUV−VIS吸収率は、水溶液濃度0.04mg/mlにおいて500nmでは約0.1から約0.16である。
【0019】
別の態様において、nは1でもよく、本明細書中に記載のある様々な苦痛の治療に有用で有り得る。n=1である場合、その(還元型メラニンのオリゴマー/ポリマー形態の基剤となり得る)単量体は次の化学式を有することができ、
【化3】

分子量は133である。
【0020】
本発明は、一態様において、還元型メラニンを含むゴマ抽出物を提供する。還元型メラニンの分子量は約264から約5400ダルトンであり、還元型メラニンの炭素含量は約35から約57重量パーセントであり、還元型メラニンの水素含量は約5から約10重量パーセントであり、窒素含量は約5から約10重量パーセントである。還元型メラニンに酸素が存在している場合、その含量は約33重量パーセントから約37重量パーセントであり、還元型メラニンのカルボニルキノン含量に対する水酸基含量の比はモル基準で少なくとも50パーセント(ケトンカルボニル基に対する水酸基)である。
【0021】
一般的に、還元型メラニン色素は特にゴマ種子の殻や外皮に由来する。
【0022】
一態様において、還元型メラニンの窒素含量は約5重量パーセントから約10重量パーセントである。
【0023】
別の一態様において、還元型メラニンの硫黄含量は約1重量パーセント未満である。
【0024】
さらに別の一態様において、還元型メラニンの赤外スペクトルは約3400cm−1(フェノール−OHの伸縮振動)、約2950cm−1(脂肪族の伸縮振動)、約1600から約1650cm−1(芳香族C=C伸縮振動)、約1380から約1400cm−1(フェノールC−OH、インドールおよびフェノールNHの伸縮振動)、約1260cm−1(フェノールCOH)および約1170cm−1(C=O伸縮振動)に吸収バンドを示す。
【0025】
さらに別の一態様において、還元型メラニンの分子量の範囲は約264から約2000ダルトンの間である。
【0026】
別の一態様において、還元型メラニンの分子量の範囲は約400から約1600ダルトンである。
【0027】
本発明は、また、ゴマ抽出物の調製方法も提供する。この方法は、塩基性水溶液(pHが約10より上、例えば約10から約14の間および例えば約12のpH)と粉砕したゴマ種子とを昇温混合し、続いてその混合物を室温まで冷却することを含む。この結果として得られた混合物を濾過、水洗して、濾液を得る。この濾液と洗浄溶液を塩基性水溶液で処理し、ガスの発生が止んで還元型メラニン色素が形成されるまで還元剤を濾液に添加する。
【0028】
本発明は、また、別のゴマ抽出物の調製方法も提供する。この方法は、塩基性水溶液(pHが約10より上、例えば約10から約14の間および例えば約12のpH)と粉砕したゴマ種子を室温あるいは室温より低い温度で混合することを含む。この混合物を濾過、水洗浄して、濾液を得る。この濾液を酸性水溶液で室温または室温より低い温度で処理して、約4より低いpH、一般的には約1から約2までのpHにする。得られたゴマ抽出物を集める。
【0029】
ゴマ抽出物は栄養補助剤として用いて、毛髪の色を濃くするのを助けたり、肝機能改善を助けたり、(眼の保護剤としての)眼中のルテイン増加を助けたり、網膜色素変性症または色素性乾皮症の軽減または改善を助けたりすることができる。また、抗酸化剤として脳内のフリーラジカルの濃度を下げることによって神経系の治療のためにも使用できる。また、神経系、脳および骨髄の健康、パーキンソン病やアルツハイマー病などの変性疾患、認知力の増強または維持、統合失調症および認知症に対しての栄養補助剤として、皮膚保護剤(紫外線保護、光保護剤)として、金属キレート化用にラジカル捕捉剤として、LDLの酸化を減少または阻害する方法として、アテローム性動脈硬化症や冠動脈疾患などの循環器疾患の治療方法として、潰瘍の治療または予防方法として、および抗酸化剤として用いることができる。
【0030】
複数の実施例を開示するが、本発明の他の実施例は、次の詳細な説明から当業者には明らかであろう。後に明らかように、本発明はその精神と範囲から逸脱することなく様々な明白な態様において変更が可能である。従って、詳細な説明は、本質的に例示するものであって限定的なものではないと考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例3の単離産物TEI V1のFTIRである。
【図2】図2は、実施例4の単離産物TEI V2のFTIRである。
【図3】図3は、実施例4の試料TEI V2のゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量を示す。
【図4】図4は、ゴマ抽出物の存在下におけるLDL酸化を示す。
【図5】図5は、実施例10の酸化された、未処理、および還元されたゴマ抽出物の様々な濃度における用量依存的な遅延時間変化を示す。
【図6】図6は、ゴマ抽出物(還元物または未処理物)によるアスコルビン酸分解防止をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書および請求項において、「を有する」および「を含む」という用語は非限定的な用語であり、「を含むが、...に限定しない」を意味すると解釈されるべきである。これらの用語は、より制限的な用語である「を本質的に含む」および「から成る」を包含する。
【0033】
注意しなければならないことは、本明細書および添付の請求項で用いられる単数形の「1つ(aおよびan)」および「その(the)」は、文脈に明らかにそうで無い旨を指示しない限り、複数の言及を含むことである。同様に、「1つ」、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は本明細書において互換的に使用可能である。また、「を含む」、「を有する」、「ことを特徴とする」および「をもつ」という用語は互換的に使用可能であることにも注意すべきである。
【0034】
定義なき場合、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野における通常の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。特に本明細書で述べられる全ての公表文献および特許は、本発明に関連して使用される可能性のある公表文献に報告されている化学薬品、器具、統計分析法、および手法の記述および開示を含む、その全部が全ての目的で参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書に引用される全ての参照文献は、当分野における技術レベルの指標として捉えるべきである。本明細書では、先願発明によるこのような開示に対して本発明が特許を与えられる資格がないと認めると解釈すべきではない。
【0035】
本明細書で用いる「被験者」とは哺乳類および非哺乳類を意味する。「哺乳類」とは哺乳綱の一員であれば何でも良い。これには、ヒト、チンパンジーや他の類人猿およびサル類などの非ヒト霊長類、牛、馬、羊、ヤギおよび豚などの家畜、ウサギ、犬、ネコなどの飼育動物、ラット、ネズミ、モルモットなどの齧歯類を含む実験用動物などが含まれるが、これらに限定されない。非哺乳類の例としては鳥などが挙げられるが、これに限定されない。「被験者」という用語は特定の年齢や性別を意味しない。
【0036】
本明細書では、「投与すること」または「投与」は還元型メラニンを体の中に、好ましくは体循環へ導入するための如何なる手段をも含む。例えば、皮下、腹腔内、静脈内および筋肉内注射は勿論、経口、頬、舌下腺、肺、経皮、経粘膜などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「担体」という用語は、本発明のゴマ抽出物を投与するのに利用できる液体または固体の如何なる物質も含むことを意図する。これには乳濁液、懸濁液、液体、および食品を含むことができ本明細書に記載される。
【0038】
ゴマ抽出物は、薬学的に許容できる方法により治療上有効量を投与することができる。
【0039】
「治療上有効量」という用語は、ある病気を治療するために被験者に投与する場合にその病気に対する治療を達成するのに充分な量の化合物という意味を意図する。「治療上有効量」は、化合物、治療中の病気の状態、重傷度あるいは治療される病気、被験者の年齢および相対的健康状態、投与の経路と形態、担当する医師または獣医の判断、および他の要因によって変化する。
【0040】
本発明の目的として「治療すること」または「治療」とは、疾患、病気、または不調と闘うための患者の管理および看護を表す。これらの用語は、予防手段すなわち予防薬および緩和治療の両方を包含する。治療には、症状または合併症の発症を防ぐこと、症状または合併症を緩和すること、あるいは、疾患、病気または不調を取り除くために本発明の化合物を投与することが含まれる。
【0041】
ある化合物が治療上有効な量を患者に投与される。ある化合物は単独または薬学的に許容できる組成物の一部として投与可能である。また、ある化合物または組成物は、例えばボーラス注射によって一度に投与しても、一連の錠剤などによって複数回に分けて投与してもよく、あるいは、例えば経皮的送達を用いて一定期間に渡ってほぼ一様に送達してもよい。さらに、化合物の投与量は時間とともに変更してもよい。速放製剤、徐放製剤、またはそれらの組み合わせを用いて化合物を投与してもよい。「徐放」という用語は、持続放出、遅延放出、およびそれらの組み合わせを含む。
【0042】
「薬学的に許容できる」という用語は、連邦政府または州政府の監督官庁により認められていること、米国薬局方の目録に掲載されていること、あるいは、その他動物、特にヒトへの使用の薬種として一般的に認められていることを意味する。「担体」という用語は、治療を実施するのに使用される希釈剤、補助剤、賦形剤、または媒体を言う。このような医薬担体としては、水および油などの滅菌液が可能であり、油には、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒など、石油起源、動物起源、植物起源あるいは合成物起源の油が含まれる。適当な医薬品賦形剤としては、でんぷん、グルコース、ラクトース、蔗糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、要望に応じて、少量の保湿または乳化剤、あるいは酢酸塩やクエン酸塩やリン酸塩などのpH緩衝剤を含んでもよい。ベンジルアルコールやメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、および塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの浸透圧調整剤もまた想定される。製剤は、アンプル、使い捨て注射器、あるいはガラスやプラスチック製の複数回使用バイアルに入れることができる。
【0043】
これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳化液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、継続放出製剤などの形をとることができる。組成物は、伝統的な結合剤とトリグリセリド、微結晶性セルロース、トラガカント・ゴムまたはゼラチンなどの担体とを用いて座薬として処方されてもよい。経口製剤としては、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。適当な薬学的担体の例は、E.W.Martin著「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物には、治療上有効な量の治療薬が好ましくは精製した形で適当な量の担体と共に含まれ、患者への適切な投与形態を提供することになる。製剤は投与の様式に適合させるべきである。
【0044】
ある特定の不調や病気の治療に効果のある本発明のゴマ抽出物の量は、その不調や病気の性質に依存し、標準的な臨床技術によって決定されることになる。製剤において採用される正確な投与量は、投与の経路、およびその病気や不調の深刻さにも依存することになるので、医師の判断および各患者の環境に従って決定されるべきである。有効な投与量は、体外または動物モデル実験によるバイオアッセイまたはシステムから得られた用量反応曲線に基づき外挿してもよい。
【0045】
上に列挙した投与量の投与は繰り返すことができる。1つの実施例においては、上に列挙した投与量は週に1から7回投与される。治療の継続期間は、患者の臨床的進行および治療に対する反応性に依存する。
【0046】
本発明は、本発明の薬剤組成物の1つ以上の成分で満たした1つ以上の容器を有する薬剤パックまたはキットも提供する。このような容器に対して、薬剤または生物学製品の製造、使用、販売を管理する行政機関により規定された形式で注意書きを随意に付けることができる。この注意書きには、機関によるヒトへの投与の製造、使用、販売の承認を反映する。
【0047】
「食物」または「食品」とは、被験者によって摂取されうる固体または液体の如何なる食用の物質をもいう。このような食品としては、焼いた食品、スナック食品(キャンディー、ガム、キャンディーバー、その他)、乳製品(アイスクリーム、ヨーグルト)および飲料(ソーダ、牛乳、コーヒー、茶、その他)および混合飲料などが挙げられる。
【0048】
「メラニン」という用語は当該技術分野において知られており、Hermann社(115,Boulevard Saint−Germain,Paris,France)により1968年に出版されたR.A.Nicolaus著「Melanins」と題された本(その内容は全てが参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される高分子材料を含む。一般的に、メラニンはインドールとチロシンの酸化で生じる他の中間生成物とを含む不規則な光吸収高分子として認識されている。メラニンの基本的な構造単位は、通常、共有結合したインドールによって表される。メラニンの全体構造が知られていないことを強調しておく必要がある。ほとんどのメラニンはインドールを基にした混合ポリマーとみられるが、様々な量のその他のメラニン生合成経路でのインドール前駆体産物を含んでいる可能性がある。メラニンの分子量は、一般的に約10,000ダルトン以上である。代表的な構造を以下に示す。
【化4】

【0049】
「還元型メラニン」という用語は、メラニンを含有する物質、一般的には種子の殻や外皮を、メラニンのカルボニル(ケトン/オルソキノン)含量の大部分をヒドロキシル官能基に還元する条件下で処理したものを指す。一般的に、これは還元型メラニン内に残留するケトン官能基(もし残留していれば)に対する水酸基のモル比が50パーセント、より特に60パーセント、さらに特に75パーセントより大きく、とりわけ少なくとも約80パーセントであることを意味する。
【0050】
一態様において、還元型メラニンは水酸基またはケトン官能基を欠く。
【0051】
この還元型メラニンは以下の化学式(I)で示すことができる:
【化5】

式中、mおよびnで示す各単位のXは、それぞれ、互いに独立して、COOH基またはその塩、もしくは水素原子であり、
mおよびnで示す各単位の各Yまたは各Yの少なくとも1つは、互いに独立して、NHであり、他方はCHであり、ただし、YとYの両方が共にNHまたはCHであることはなく、
mおよびnで示す各単位のQおよびQは、それぞれ互いに独立して、水酸基、水酸陰イオン基、水素原子、または=O基であり、
ただし、還元型メラニン内にケトン官能基が存在する場合、水酸基のケトン官能基に対するモル比は50パーセント、より特に60パーセント、さらに特に75パーセントより高く、特に少なくとも約80パーセントであり、
【化6】

はπ共役系を表し、
mは1から約40であり、
nは1から約40であり、
m+n=2から約40、より特に3、4、5、6、7、などから約40まで、およびその間のあらゆる範囲と整数であり、式中、個々の"m"および個々の"n"の単量体単位はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
一態様において、Q、Qの少なくとも1つは水酸基であるか、あるいは酸素(=O)を表す。
【0053】
ある態様においては、nは1でもよい。
【0054】
n=1である場合、その(本明細書に論じられる本発明の還元型メラニンのオリゴマー/ポリマー形態の基剤となり得る)単量体は次のいずれかの化学式を有することができ、
【化7】

その分子量は133である。
【0055】
オリゴマー/ポリマーの単量体単位として可能なものには、本明細書中に記載のものと以下のものが含まれる:
【化8】

式中のXはCOOH、その塩、または水素原子である。
【0056】
還元型メラニン色素は本明細書に記載されるある特定の単量体単位のホモポリマーまたはオリゴマーであってもよいことは理解されるはずである。あるいは、還元型メラニン色素のオリゴマーまたはポリマーは本明細書に記載される単量体単位を2つ以上含むこともできる。
【0057】
還元型メラニン色素のオリゴマー/ポリマーの末端にある両インドール端は、他の単量体単位と結合するためには、それぞれ別の場所において水素原子で終端していなければならなかったことも理解されるはずである。
【0058】
色素は、活性成分として、ポリマーまたはオリゴマー物質を有する。ポリマーまたはオリゴマーはインドール物質であり、4−および7−位で連結可能である。物質のインドール部分の5−または6−位は水酸基、水酸陰イオン基、水素原子(H)または=O(ケトン官能基のカルボニル基として)と単独に置換可能であり、インドール部分の2−位は−COOHまたはその塩または水素原子のいずれかと置換可能である。インドールの観点から、物質は少なくとも部分的にπ共役系を有する。
【0059】
本発明のポリマーまたはオリゴマーにおいて、水酸基のモル含量は出発メラニン原料よりも高い。一般的に、還元型メラニン中にケトン官能基がもし存在していれば、そのケトン官能基に対する水酸基のモル比は50パーセント、より特に60パーセント、さらに特に75パーセントより大きく、とりわけ少なくとも約80パーセントである。
【0060】
本発明のポリマーまたはオリゴマーにおいて、物質の各単量体単位はインドール化合物である。これらの繰り返し単位(インドール化合物)は、同じであっても異なっていてもよい。本発明の単量体単位は、任意に下の構造のいずれでもよい。
【化9】

【0061】
例えば、一態様において、ポリマーまたはオリゴマーは下に示す共役系(上で述べた各単量体単位の含有物を示す)によって表すことができる。
【化10】

式中、XはCOOH、その塩、または水素原子である。
【0062】
さらに、本発明のポリマーまたはオリゴマーはいくつかの独立した共役部分を有するポリマーであってもよい。この種の複合ポリマーも同じ機能を有する。
【0063】
本発明のポリマーまたはオリゴマーはエステル、エーテル、アルキル基などの追加的な基を含んでもよい。
【0064】
さらに、2つのインドール単位の間の炭素−炭素結合はアルキル鎖などによって置換可能である。
【0065】
別の一態様においては、還元型メラニン物質は化学式(II)によって表すことができ:
【化11】

式中、XはCOOHまたはその塩あるいは水素原子のいずれかであることができ、
またはYの少なくとも一方はNHであり、他方はCHであり、ただし、YとYの両方がともにNHまたはCHであることはなく、
およびQはそれぞれ互いに独立して、水酸基、水酸陰イオン基、水素原子、または=O基であり、
ただし、還元型メラニン中にケトン官能基がもし存在していれば、そのケトン官能基に対する水酸基のモル比は50パーセント、より特に60パーセント、さらに特に75パーセントより大きく、とりわけ少なくとも約100パーセントであり、
【化12】

はπ共役系を示し、
nは少なくとも2から約40、より特に約3、4、5、6、7、などから約40まで、およびその間のあらゆる範囲と整数である。
【0066】
このようなオリゴマーまたはポリマー中の単量体のインドール単位は同じでも異なっていてもよいことは理解されるはずである。
【0067】
別の一態様においては、ゴマ抽出物は0.04mg/mlよりも低い水溶液濃度において500nmでの吸収率が約0.1から約0.16であるUV−VISスペクトルを有することを特徴とすることができる。
【0068】
還元型メラニン色素は約264から約5400ダルトンの間、より特に約264から約2000ダルトンの間、さらに特に約400と約1600ダルトンの間、より特に約264と約1600ダルトンの間、より特に約532と約1064ダルトンの間、および約264から約5400ダルトンの間のあらゆる範囲の分子量を有する。
【0069】
還元型メラニン色素は還元型メラニンの元素組成を特徴としてもよい。還元型メラニンの炭素含量は約35重量パーセントから約57重量パーセントの間、還元型メラニンの水素含量は約5重量パーセントから約10重量パーセントの間、窒素含量は約5重量パーセントから約10重量パーセントの間である。還元型メラニンに酸素がもし存在していれば、その含量は約33重量パーセントから約37重量パーセントの間である。
【0070】
一態様において、還元型メラニンに窒素がもし存在すれば、その含量は約5重量パーセントから約10重量パーセントの間である。
【0071】
別の一態様において、還元型メラニンに硫黄がもし存在すれば、その含量は約1重量パーセントよりも少ない。
【0072】
本発明において有用である黒ゴマ種子は、植物Sesamum indicumから得られる種子である。一般的に、還元型メラニン色素は特にメラニンを含むゴマ種子の種殻や種皮に由来する。あるいは、ゴマ植物の小枝、樹皮、枝、葉、および/または根を、出発材料メラニンを得るのに用いてもよい。黒ゴマ種子の種殻または種皮は、還元型メラニンを提供するのに用いる望ましいメラニンが最も豊富である。
【0073】
一態様において、本発明の還元型メラニンは約3400cm−1(フェノール−OHの伸縮振動)、約2950cm−1(脂肪族の伸縮振動)、約1600から約1650cm−1(芳香族C=Cの伸縮振動)、約1380から約1400cm−1(フェノールC−OH、インドールとフェノールNHの伸縮振動)、約1260cm−1(フェノールCOH)および約1170cm−1(C=O伸縮振動)に特徴的な吸収バンドを示す赤外スペクトルを有する。
【0074】
本発明のゴマ抽出物は、次の用途を1つ以上含む本明細書中に記載の多くの用途を持つ。還元型メラニンは植物性食品の一成分などの栄養補助剤として使用可能である。還元型メラニンはアイスクリームやヨーグルトなどの食品や飲料の一成分として食品産業で利用可能である。
【0075】
本発明のゴマ抽出物は、ルテイン、コエンザイムQ10またはDHLA、DHA、ビタミンCなどのビタミン、ホスホリルコリン、その他を酸化や分解から保護するために使用可能である。
【0076】
本発明のゴマ抽出物は、毛髪の黒色化などの為の毛髪補助剤および/または栄養補助食品/機能性食品として使用可能である。還元型メラニンの長期間の摂取は個人のヘアケアに対する有効な手段であると考えられる。
【0077】
本発明のゴマ抽出物は、目の保護に使用できる。還元型メラニンの使用は眼中のルテイン濃度の維持を助け、支持療法として目の健康や視力ケアに好ましい効果をもたらすことができる。従って、この物質はそのような病気の治療や予防に使用できる。
【0078】
本発明のゴマ抽出物は、脳組織内のフリーラジカル濃度を低下させるなど、神経系の病気に対して有用である。このことは、抗酸化剤および/または神経、脳、骨髄の健康用栄養補助食品と見なし得る。従って、この物質はそのような病気の治療や防止に使用できる。
【0079】
本発明のゴマ抽出物は、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知の増強または維持など、神経系の変性疾患の治療や予防に対して有用となり得る。
【0080】
本発明のゴマ抽出物は、UV防護剤および光防護剤など、皮膚保護剤として使用できる。
【0081】
本発明のゴマ抽出物は、アスピリン(アセチルサリチル酸)などのサリチル酸またはサリチル酸塩の誘導体、サリチル酸ナトリウムなどのアスピリンまたはサリチル酸の誘導体などと組み合わせて、サリチル酸またはサリチル酸塩の誘導体の投与に起因する潰瘍からの痛みを防いだり緩和するのに使用できる。ヤナギ樹皮抽出物はサリチル酸の誘導体と見なすことができるので、本発明のゴマ抽出物と組み合わせて使用可能である。
【0082】
本発明はゴマ抽出物の調製方法も提供する。この方法は、塩基性水溶液と粉砕したゴマ種子を高温で混合したのち、得られた混合物を室温まで冷却することを含む。この結果として得られた混合物を濾過、水洗して、濾液を得る。濾液を酸性水溶液で処理し、ガスの発生が止んでゴマ抽出物が形成されるまで濾液に還元剤を添加する。
【0083】
塩基性水溶液の塩基の濃度は約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの間である。適当な塩基としては、アミン、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの各種金属水酸化物などが挙げられる。一般的に、塩基性水溶液のゴマ種子に対する比率は重量比で約5:1であり、一般的に最初の工程の昇温温度は約40℃から約80℃の間、例えば60℃である。混合物は、一般的に約0.5時間から約5時間の間、例えば3時間加熱する。
【0084】
上記工程で処理した濾液は、還元剤の添加前に撹拌(例えば、かき回したり超音波処理したりなど)される。適当な還元剤としては、ジヒドロリポ酸、水素化ホウ素ナトリウム、またはその他の−SH基を有する還元剤がある。還元剤は、約10℃から約35℃の間の温度、より具体的には約25℃で濾液に添加される。
【0085】
本発明は、別の還元型メラニン色素(メラニン抽出物)の調整法も提供する。この方法は、室温以下で塩基性水溶液と粉砕したゴマ種子とを混合することを含む。混合物を濾過、水洗して、濾液を得る。濾液は、室温以下で酸性水溶液で処理してpHを約7未満から約1の間にする。得られた還元型メラニン色素を集める。
【0086】
工程中の塩基性水溶液の塩基濃度は約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの間(pHは約10よりも高く、例えば約10と約14の間および例えば約12)である。適当な塩基としては、アミン、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの各種金属水酸化物がある。一般的に、塩基性水溶液のゴマ種子に対する比率は重量比で約5:1であり、一般的に混合物の温度は約35℃未満、例えば25℃に維持する。工程a)の混合物は、約0.5時間から約48時間の間、例えば約24時間、混合される。
【0087】
酸性水溶液は、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など、有機酸または鉱酸のいずれでも良く、酸は約15容量%である。濾過の温度は、酸性水溶液の添加中および添加後に約35℃未満、例えば25℃に維持する。一般的に、そのpHは7未満、具体的にはpH約1に下げる。
【0088】
結果として得られた還元型メラニン色素は、濾過や遠心分離など様々な方法により集めることができる。
【0089】
以下の実施例は本質的に例示であり、決して制限するものと見なされるべきではない。
【実施例1】
【0090】
水酸化ナトリウム5gを脱イオン水500mlに溶解し、次に粉砕した黒ゴマ種子100gに加えた。その混合物を撹拌し、60℃に加熱した。その反応混合物を60℃で3時間維持し、次に室温まで冷却した。黒色混合物を濾過し、濾過ケーキを脱イオン水100mlで洗浄した。濾液と洗浄溶液を酸性水溶液(pH約1)で処理した。その溶液を温度25℃で10分間超音波処理した。水素化ホウ素カリウムを25℃以下の反応温度に保ちながらゆっくりと添加した。その混合液を約25分間、ガスの発生が止むまで放置しておいた。水素化ホウ素カリウムはDHLAなどの他の還元剤で置換できる。水素化ホウ素カリウムは水洗によって除去できる。DHLAはエタノールで生成物を洗浄することによって除去できる。この試料を、後述するUV−VIS吸収によるゴマ色素の判定における実施例1の生成物と称する。
【実施例2】
【0091】
水酸化ナトリウム5gを脱イオン水500mlに溶解し、室温まで冷却し、次に粉砕した黒ゴマ種子100gを加えた。反応混合物の温度は25℃未満に維持し、24時間撹拌して濾過した。濾過ケーキを脱イオン水100mlで洗浄した。濾液と洗浄溶液を15%塩酸塩溶液と混合して酸性化し、反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら、最終的なpHを約1.0とした。この懸濁液を遠心分離して固形物を脱イオン水30mlで洗浄した。その固体物質を減圧乾燥して黒色還元ゴマ色素約1gを生成した。(その紫外線吸収係数は出発物質よりも低く、水ミセル中でルテインを保護することが可能であることが分かった。)この試料を、後述するUV−VIS吸収によるゴマ色素の判定における実施例2の生成物と称する。
【実施例3】
【0092】
(TEI VI)
水酸化ナトリウム5gを脱イオン水500mlに溶解し、室温まで冷却して、次に粉砕した黒ゴマ種子100gを加えた。反応混合物の温度は25℃未満に維持し、24時間撹拌して濾過した。濾過ケーキを脱イオン水100mlで洗浄した。濾液を15%塩酸塩溶液と混合して酸性化し、反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら、最終的なpHを約1.0とした。この懸濁液を遠心分離して固形物を脱イオン水30mlで洗浄した。この生成物を集めて減圧乾燥し(−0.095MPa、60℃、4時間)、続いてP上で乾燥した。この乾燥色素を石油エーテルで洗い、再び乾燥させた。還元型メラニン色素の収率は、最初の出発物質を基準として約5%であった。この試料を、後述するUV−VIS吸収によるゴマ色素の判定における実施例3の生成物とした。
図1は単離生成物TEI V1のFTIRである。
【実施例4】
【0093】
(TEI V2)
粉砕した黒ゴマ種子10gを50mlの20%グリセリン水溶液および0.9%NaOHで懸濁した。その混合物を24時間撹拌し、濾過して、石油エーテルで洗浄した。この濾液と洗浄液を15%塩酸塩溶液で酸性化し、反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら、最終的なpHを約1.0とした。この懸濁液を遠心分離して固形物を脱イオン水30mlで洗浄した。この生成物を集めて減圧乾燥し(−0.095MPa、60℃、4時間)、続いてP上で乾燥した。還元型メラニン色素の収率は、最初の出発物質を基準として約3%であった。この試料を、後述するUV−VIS吸収によるゴマ色素の判定における実施例4の生成物と称する。
図2は単離生成物TEI V2のFTIRである。
図3は試料TEI V2のゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量を表す。
【実施例5】
【0094】
本実施例は、還元型ゴマ色素がルテインを分解から保護することを示す。
10ml容量フラスコ中で、ルテイン10mgをテトラヒドロフラン(THF)5.0mlに溶解し、その後無水エタノールで容量まで満たした。
小ビーカーにTween−80を0.5gおよび脱イオン水を15g添加した。この溶液を均質になるまで撹拌し、次に還元ゴマメラニン2mgを添加した(実施例1)。この混合物を溶液が透明になるまで超音波処理した。
上記のルテイン溶液1.0mlを小ビーカーに加え、ルテインを溶解するために軽く振った。小ビーカーから液体1.0mlを10ml容量フラスコに移して脱イオン水で容量まで満たした。
ブランク試料を、還元ゴマ色素溶液を添加せずに上記の通りに調製した。
ルテイン/還元ゴマ試料とブランク試料を両方37℃の水浴中に置き、15Wランプで3時間露光した。446nmでの吸収率をUV−VIS分光光度計で測定して、分解速度を判定した。
【0095】
【表1】

【実施例6】
【0096】
次の実施例は、還元型ゴマ色素がDHAを分解から保護できることを示す。
DHA(ドコサヘキサエン酸)25mgをジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解した。還元ゴマ色素(実施例1)1mgとアルギニン1mgを脱イオン水10mlに溶解した。DHA溶液5mlをゴマ色素溶液1mlと1%H1mlと共に小キュベットに入れた。
ブランク試料を、還元ゴマ色素溶液を添加せずに上記の通りに調製した。
この2つのキュベットを16時間密封した。試料を取り出し、ガス相クロマトグラフィーで分析してDHAの残存率を判定した。
試料中のDHAの残存率を下の表に示す。
【表2】

【実施例7】
【0097】
次の実施例は、還元型ゴマ色素がホスホリルコリン(PC)を分解から保護できることを示す。
ホスホリルコリン(PC)25mgをジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解した。還元ゴマ色素(実施例1)1mgとアルギニン1mgを脱イオン水10mlに溶解した。PC溶液5mlを還元ゴマ色素溶液1mlと1%過酸化水素1mlと共に小キュベットに入れた。
ブランク試料を還元ゴマ色素溶液を添加せずに上記の通りに調製した。
この2つのキュベットを16時間密封放置した。試料をHPLC−ELSDで分析してPCの残存率を判定した。
試料中のホスホリルコリンの残存率を下の表に示す。
【表3】

【実施例8】
【0098】
次の実施例は、還元型ゴマ色素がコエンザイムQ10とDHLA(ジヒドロリポ酸)の組み合わせを保護できることを示す。
DHLAがコエンザイムQ10を保護できることが発見されており、このことはオーストリア特許AT504148A1、米国仮出願60/886,395、米国実用特許11/843,935およびPCT/IB2007/003623に記載され、その内容は全体が本明細書に組み込まれる。
驚くべき事に、還元ゴマ色素はDHLAのコエンザイムQ10を保護する効果を著しく増加できることが分かった。
【0099】
小フラスコに脱イオン水10ml、エタノール30mlおよびテトラヒドロフラン(THF)10mlを入れた。コエンザイムQ10を3mgとジヒドロリポ酸(DHLA)5mgとをその溶液に加え、超音波処理してコエンザイムQ10を完全に溶解した。
【0100】
還元ゴマ色素(実施例1)5mgと水酸化カリウム3mgを脱イオン水5mlに加えた。ゴマ色素溶液1mlをコエンザイムQ10溶液に加えた。この溶液を5分間超音波処理してHPLC(Agilent1100)を用いて、還元型コエンザイムQ10の非還元型コエンザイムQ10に対する比率を分析した。
【0101】
ブランク試料を還元ゴマ色素を添加せずに上記の通りに調製した。
【0102】
試料中の還元型コエンザイムQ10の比率を下の表に示す。
【表4】

本実施例におけるDHLAはビタミンCなどのような他の還元剤で置き換えることができる。
【実施例9】
【0103】
UV−VIS吸収を用いたゴマ色素の判定
試料の精製
色素試料2gをクロロホルム50ml、アセトン50mlおよびエタノール50mlで順に抽出した。その試料を室温で減圧乾燥した。ゴマ色素1gを水酸化ナトリウム1.0gと脱イオン水30mlに溶かした。クロロホルム約25mlとn−ブタノール5mlをその混合物に添加し、得られた混合物を十分に振盪し、次に遠心分離して下層を分離し、濾過した。この水層を1%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。全ての濾液を混合し、HClでpH値を3に調整した。この物質を濾過し、濾液のpHが約6になるまで得られたケーキを脱イオン水で洗浄した。この固体ケーキを減圧乾燥して精製色素を得た。
この全工程は温度管理をして行った。液体温度が25℃を越えることは許さず、不活性ガスを用いて反応を行うのに最良であることが分かった。
【0104】
方法
ゴマ色素20mgと水酸化ナトリウム1.0gを100ml容量フラスコ内で溶解した。この混合物を10分間超音波処理し、このフラスコを脱イオン水で容量まで満たした。試料2mlを10ml容量フラスコに移し、脱イオン水で容量まで満たした。最終溶液のUV−VIS吸収を500nmで測定した。
【0105】
結果
【表5】

【0106】
適用効果
【表6】

条件は実施例5におけるものと同一であった。
【実施例10】
【0107】
LDLの酸化に対するゴマ抽出物の効果
ヒトLDLを新鮮なヒト血液から超遠心分離によって得て、続いて4℃の暗所で24時間かけてPBS(pH7.4)10mMで透析した。LDLを異なる量のゴマ色素(pH7.4のPBSに超音波処理により溶解した)(それぞれ0,10,50,100,250,500μg/mL)と混合した。ゴマ抽出物は付録1で与えられた方法によって得られ、酸化と還元は付録1の記載通りに行った。反応はCuSO4(10μM)溶液を添加することによって開始され、試料はその後37℃で3時間保温静置された。共役ジエンの形成はUV/VIS分光光度計を用いて234nmで測定した。
【0108】
データ評価はジエン形成の増加勾配の比較により行った。最も急な勾配(すなわち、抗酸化剤の添加が無い場合)を100%と設定した。結果は、相対%±s.d.(n=3)として示されている。
【0109】
ジエン形成の開始までの遅延時間は、得られた速度曲線から推定した。結果は、分単位で示されている。
【0110】
形成したジエンのプラトー濃度はモル吸光係数29500M−1cm−1を用いて得られた。結果は、形成ジエンμmol/LDLタンパクmgとして示されている。
【0111】
図4に見られるように、未処理または還元したゴマ色素はLDL酸化を阻害するが、酸化ゴマ色素はほぼ効果が無いことを示した。
【0112】
図5に見られるように、LDL酸化開始までの遅延時間は還元色素に対する用量依存性を示す。未処理の色素は100μg/ml辺りで飽和効果を示したが、酸化色素はほとんど効果を示さなかった。
【0113】
還元型ゴマ色素の有効性は、試験した全ての濃度において未処理色素よりも著しく強かった。
【0114】
還元型ゴマ色素はLDL酸化の強力な阻害剤であり、生体内で動脈硬化症(酸化LDLのプラーク形成)に対する予防薬として働くかもしれない。
【0115】
付録1
色素試料の調製
およそ30gのゴマ種子を細かく粉砕し、およそ25%(m/m)HCL中で1時間煮沸した。その後、残渣を濾過により集めて105℃で乾燥した。乾燥残渣をSoxhelt抽出器で3時間(石油エーテル150mlにて)抽出し、油脂を除去した。
【0116】
その後この残渣を75℃で2時間乾燥した(残渣は約20g)。この残渣にNaHPO0.50gとEDTA0.2gを加えることにより、タンパク質分解を受けさせた。この混合物に水を加えて200mlにし、そのpHを7.4に調整した。その次に、トリプシン(110.000IU/mg)100mgを添加し、混合物を室温で12時間撹拌した。
【0117】
次にこの混合物のpHをHClで3.0以下に調整し、さらに4時間撹拌し、沈殿物を遠心分離(5000gで30分間)によって集めた。
【0118】
沈殿物を次に200mlの水/NHOH(pH=10.5)の中に懸濁し、室温で2時間撹拌した。その懸濁液を次に濾過して不溶性物質を除去した。濾液を(HClで)pH2.0−2.5に酸性化させ、室温で4時間撹拌した。沈殿物を濾過によって集めた。その沈殿物を0.01M HClで数回、温水で1回洗浄した。この残渣を集めて60℃で一晩乾燥し、続いてP上で保管して僅かに残った水を除去した。集められた試料を測定し725mgであった。
【0119】
分光光度計による評価に基づいて、その試料はイカ墨メラニン標準物と比較してメラニンを33%含んでいた。メラニンはモンゴウイカ(Sepia officinalis)の墨袋から単離されたもの(イカ墨メラニン)が天然ユーメラニンの標準物質として提案されている。M2649(Sigma−Aldrich)は市販品である。
【0120】
ゴマ色素の還元
ゴマ色素は先に述べた工程(Horak&Gillette,1971)に従い、Ti3+で処理して還元した。ゴマ色素100mgを水に懸濁したものを、シュウ酸ナトリウム0.1Mと硫酸1Mを含む溶液20mlと混合した。次に、TiClを希釈硫酸(容量比で1:10)に溶解してTiCl濃度を80mMとした液を5ml添加した。この混合物を120分間保温静置し、還元した色素を遠心により分離した。沈殿物を希釈硫酸と水で洗浄した。最後に、還元色素をミリQ水に対して24時間透析した。還元試料を蒸留水中に懸濁し、NaOHを0.1M滴下して加えてpHを7.5に調整した。このようにして得られた溶液をNalgene0.45−mmシリンジフィルターで濾過した。全ての操作はNの下で行った。
【0121】
還元試料は実施例10と図4および図5において「還元色素」と呼ばれる。
【0122】
形成したジエンのプラトー量は表1〜3に示すような結果が得られた。
【0123】
【表7】

【0124】
【表8】

【0125】
【表9】

【0126】
上に述べたように、還元色素の効果は未処理色素のそれよりも強く、一方で、酸化色素は全く効果を示さなかった。
【0127】
色素の酸化
色素の特性に対する酸化/還元の効果をさらに確認するために、ゴマ色素に酸化を施した。
【0128】
ゴマ色素100mgを水20mlに溶解し、NaOHでpH=11.0にした。この溶液に空気を送るポンプに接続した密封小瓶の中にこの溶液を入れて40℃で24時間撹拌した。さらに、H溶液(3%m/m)1mlを3回に分けて添加した。最後に、HClによるpH=2.0への酸性化、遠心分離および濾過による収集によって酸化生成物を集めた。温水で十分に洗浄した後、酸化色素をミリQ水に対して24時間透析した。酸化した試料を蒸留水で懸濁し、0.1MNaOHを滴下してpHを7.5に調整した。この様にして得られた溶液をNalgene0.45−mmシリンジフィルターで濾過した。
【0129】
酸化試料は実施例10と図4および5において「酸化色素」と呼ばれる。
【0130】
アスコルビン酸(ビタミンC)の酸化分解
アスコルビン酸5mgを0.01Mリン酸緩衝液pH=7.5に溶解し、最終容量を10mlにした。ゴマ色素(未処理試料または上記実施例4の還元試料)2mgをアスコルビン酸溶液に加えて超音波処理によって溶解した。
【0131】
選択した時点(最大96時間まで)で、試料0.5mlを取り出し、リン酸(pH=2.5)で1:10に希釈した。色素を含む試料を遠心法により清澄にし、アスコルビン酸測定用に調整したHPLCシステムに注入した。
【0132】
図6に示すように、還元型ゴマ色素はアスコルビン酸を分解から保護する。さらに、還元ゴマ色素は未処理のゴマ色素よりも有効である。
【0133】
還元ゴマ抽出物はアスコルビン酸に対して安定剤として働く。生体内でゴマ色素はビタミンCの安定性を増加させたりリサイクルさせたりすることによりビタミンCを節約する効果を発揮する可能性がある。
【0134】
次の1から79までの連続番号で列挙したパラグラフは、本発明の多様な態様を提示する。1つの実施例において、最初のパラグラフ(1)で、本発明は、還元型メラニンを有する色素を提供する。この色素において、還元型メラニンの分子量は約264から約5400ダルトンの間であり、還元型メラニンの炭素含量は約49重量パーセントから約57重量パーセントの間であり、還元型メラニンの水素含量は約5重量パーセントから約10重量パーセントの間であり、還元型メラニンの酸素含量は約33重量パーセントから約37重量パーセントの間であり、還元型メラニンのカルボニルキノン基に対する水酸基の割合はモル基準で少なくとも50パーセントである。
【0135】
2.還元型メラニンが種殻または種皮由来であるパラグラフ1の色素。
【0136】
3.種殻または種皮がゴマ種子由来のものであるパラグラフ1または2の色素。
【0137】
4.還元型メラニンの窒素含量が約5重量パーセントから約10重量パーセントの間であるパラグラフ1から3のいずれかの色素。
【0138】
5.還元型メラニンの硫黄含量が約1重量パーセント未満であるパラグラフ1から4のいずれかの色素。
【0139】
6.還元型メラニンの赤外スペクトルが約3400cm−1、約2950cm−1、約1600から約1650cm−1、約1380から約1400cm−1、約1260cm−1および約1170cm−1に吸収バンドを示すパラグラフ1から5のいずれかの色素。
【0140】
7.カルボニル基含量に対する水酸基含量のモルパーセント比が少なくとも60パーセントであるパラグラフ1から6のいずれかの色素。
【0141】
8.還元型メラニンの分子量の範囲が約264から約2000ダルトンの間であるパラグラフ1から7のいずれかの色素。
【0142】
9.還元型メラニンの分子量の範囲が約400から約1600ダルトンの間であるパラグラフ1から8のいずれかの色素。
【0143】
10.a)塩基性水溶液と粉砕したゴマ種子を高温で混合し、続いて黒色混合物を室温まで冷却する工程と、
b)混合物を濾過し、水で洗浄して濾液を得る工程と、
c)濾液を酸性水溶液で処理する工程と、
d)ガス発生が止まって還元型メラニン色素が形成されるまで濾液に還元剤を添加する工程と、
からなる還元型メラニン色素の調製方法。
【0144】
11.工程a)の塩基性水溶液の塩基濃度は約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの間であるパラグラフ10の方法。
【0145】
12.塩基は水酸化ナトリウムであるパラグラフ10または11いずれかの方法。
【0146】
13.ゴマ種子に対する塩基性水溶液の比は重量基準で約5:1であるパラグラフ10から12のいずれかの方法。
【0147】
14.工程a)の高温温度は約40℃から約80℃の間であるパラグラフ10から13のいずれかの方法。
【0148】
15.温度が60℃であるパラグラフ14の方法。
【0149】
16.混合物が約0.5時間から約5時間の間加熱されるパラグラフ10から15のいずれかの方法。
【0150】
17.混合物が約3時間加熱されるパラグラフ16の方法。
【0151】
18.工程c)で処理される濾液が還元剤の添加前に撹拌されるパラグラフ10から17のいずれかの方法。
【0152】
19.還元剤が約10℃から約35℃の間の温度で工程d)の濾液に添加されるパラグラフ10から18のいずれかの方法。
【0153】
20.濾液の温度が約25℃であるパラグラフ19の方法。
【0154】
21.還元型メラニン色素が還元型メラニンを含み、還元型メラニンの分子量は約264から約5400ダルトンの間であり、還元型メラニンの炭素含量は約49重量パーセントから約57重量パーセントの間であり、還元型メラニンの水素含量は約5重量パーセントから約10重量パーセントの間であり、還元型メラニンの酸素含量は約33重量パーセントから約37重量パーセントの間であり、還元型メラニンのカルボニルキノン基に対する水酸基の割合はモル基準で少なくとも50パーセントであるパラグラフ10から20のいずれかの方法。
【0155】
22.還元型メラニンの窒素含量が約5重量パーセントから約10重量パーセントの間であるパラグラフ10から21のいずれかの方法。
【0156】
23.還元型メラニンの硫黄含量が約1重量パーセント未満であるパラグラフ10から22のいずれかの方法。
【0157】
24.還元型メラニンの赤外スペクトルが約3400cm−1、約2950cm−1、約1600から約1650cm−1、約1380から約1400cm−1、約1260cm−1および約1170cm−1に吸収バンドを示すパラグラフ10から23のいずれかの方法。
【0158】
25.カルボニル基含量に対する水酸基含量のモルパーセント比が少なくとも60パーセントであるパラグラフ10から24のいずれかの方法。
【0159】
26.還元型メラニンの分子量の範囲が約264から約2000ダルトンの間であるパラグラフ10から25のいずれかの方法。
【0160】
27.還元型メラニンの分子量の範囲が約400から約1600ダルトンの間であるパラグラフ10から26のいずれかの方法。
【0161】
28.a)塩基性水溶液と粉砕したゴマ種子を室温以下で混合する工程と、
b)混合物を濾過し、水で洗浄して濾液を得る工程と、
c)濾液を酸性水溶液で室温以下で処理し、pHを約1から約7未満の間にする工程と、
d)還元型メラニン色素を集める工程と、
からなる還元型メラニン色素の調製方法。
【0162】
29.工程a)の塩基性水溶液の塩基濃度が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの間であるパラグラフ28の方法。
【0163】
30.塩基が水酸化ナトリウムであるパラグラフ28または29いずれかの方法。
【0164】
31.ゴマ種子に対する塩基性水溶液の比が重量基準で約5:1であるパラグラフ28から30のいずれかの方法。
【0165】
32.工程a)の混合物の温度が約35℃未満に維持されるパラグラフ28から31のいずれかの方法。
【0166】
33.工程a)の混合物が約5時間から約48時間の間混合されるパラグラフ28あるいは32のいずれかの方法。
【0167】
34.混合物が24時間混合されるパラグラフ33の方法。
【0168】
35.工程c)の酸性水溶液が約15容量%の酸であるパラグラフ28から34のいずれかの方法。
【0169】
36.工程c)の酸が塩酸であるパラグラフ28から35のいずれかの方法。
【0170】
37.工程c)の濾液の温度が約10℃から約25℃の間に維持されるパラグラフ28から36のいずれかの方法。
【0171】
38.工程c)の濾液の温度が約25℃に維持されるパラグラフ37の方法。
【0172】
39.工程c)の濾液のpHが約1であるパラグラフ28から38のいずれかの方法。
【0173】
40.還元型メラニン色素が遠心分離により集められるパラグラフ28から39のいずれかの方法。
【0174】
41.還元型メラニン色素が還元型メラニンを含み、還元型メラニンの分子量が約264から約5400ダルトンの間であり、還元型メラニンの炭素含量が約49重量パーセントから約57重量パーセントの間であり、還元型メラニンの水素含量が約5重量パーセントから約10重量パーセントであり、還元型メラニンの酸素含量が約33重量パーセントから約37重量パーセントの間であり、還元型メラニンのカルボニルキノン基に対する水酸基の割合がモル基準で少なくとも50パーセントであるパラグラフ28から40のいずれかの方法。
【0175】
42.還元型メラニンの窒素含量が約5重量パーセントから約10重量パーセントの間であるパラグラフ28から41のいずれかの方法。
【0176】
43.還元型メラニンの硫黄含量が約1重量パーセント未満であるパラグラフ28から42のいずれかの方法。
【0177】
44.還元型メラニンの赤外スペクトルが約3400cm−1、約2950cm−1、約1600から約1650cm−1、約1380から約1400cm−1、約1260cm−1および約1170cm−1に吸収バンドを示すパラグラフ28から43のいずれかの方法。
【0178】
45.カルボニル基含量に対する水酸基含量のモルパーセント比が少なくとも60パーセントであるパラグラフ28から44のいずれかの方法。
【0179】
46.還元型メラニンの分子量の範囲が約264から約2000ダルトンの間であるパラグラフ28から45のいずれかの方法。
【0180】
47.還元型メラニンの分子量の範囲は約400から約1600ダルトンの間であるパラグラフ28から46のいずれかの方法。
【0181】
48.次の化学式を含む色素であって、
【化13】

式中、mおよびnで示す各単位のXは、それぞれ、互いに独立して、COOH基またはその塩、もしくは水素原子であり、式中、mおよびnで示す各単位の各Yまたは各Yの少なくとも1つは、互いに独立して、NHであり、他方はCHであり、ただしYとYの両方が共にNHまたはCHであることはなく、
式中、mおよびnで示す各単位のQおよびQは、それぞれ互いに独立して水酸基、水酸陰イオン基、水素原子、または=O基であり、
還元型メラニン内のケトン官能基に対する水酸基のモル比は50パーセントより大きく、
式中、
【化14】

はπ共役系を表し、
式中、mは1から約40であり、
式中、nは1から約40であり、
式中、m+nは2から約40であり、
式中の各単量体単位であるmとnは同一であっても異なっていてもよい。
【0182】
49.還元型メラニンの窒素含量が約5重量パーセントから約10重量パーセントの間であるパラグラフ48の色素。
【0183】
50.還元型メラニンの硫黄含量が約1重量パーセント未満であるパラグラフ48または49いずれかの色素。
【0184】
51.色素の赤外スペクトルが約3400cm−1、約2950cm−1、約1600から約1650cm−1、約1380から約1400cm−1、約1260cm−1および約1170cm−1に吸収バンドを示すパラグラフ48から50のいずれかの色素。
【0185】
52.カルボニル基含量に対する水酸基含量のモルパーセント比が少なくとも60パーセントであるパラグラフ48から51のいずれかの色素。
【0186】
53.色素の分子量の範囲が約264から約2000ダルトンの間であるパラグラフ48から52のいずれかの色素。
【0187】
54.色素の分子量の範囲が約400から約1600ダルトンの間であるパラグラフ48から53のいずれかの方法。
【0188】
55.色素がパラグラフ48から54のいずれかを含むパラグラフ10の方法。
【0189】
56.色素がパラグラフ48から54のいずれかを含むパラグラフ28の方法。
【0190】
57.n=1であるパラグラフ48の色素。
【0191】
58.少なくとも2つの異なる単量体単位が以下のものから選択されるパラグラフ48の色素。
【化15】

【0192】
59.1つの単量体単位が以下のものから選択されるパラグラフ48の色素。
【化16】

【0193】
60.眼中のルテイン濃度を維持または増加させることと、視力を維持させることと、生理学的状態においてフリーラジカルを減少させることと、神経、脳、または骨髄の健康促進を助けることと、パーキンソン病やアルツハイマー病を含む神経系の変性疾患のためと、UV保護など皮膚保護のためとのうち、1つ以上の病気を治療または予防する方法。
【0194】
61.パラグラフ1から9、または48から54、または57から59のいずれかと担体とを含む植物性食品栄養補助剤。
【0195】
62.食用物質または消費可能な液体とパラグラフ1から9、または48から54、または57から59の何れかの色素とを含む食品または飲料。
【0196】
63.食品がアイスクリームまたはヨーグルトであるパラグラフ62の食品。
【0197】
64.ルテイン、DHLAと組み合わせたコエンザイムQ10、DHA、またはホスホリルコリンのいずれかの物質を、請求項1から9または48から54または57から59のいずれかの色素で処理する工程からなる、物質の分解を防止または軽減する方法。
【0198】
65.パラグラフ1から9、または48から54、または57から59の何れかの色素と許容可能な担体を含む毛髪を黒色化するための毛髪栄養補助剤。
【0199】
66.パラグラフ1から9、または48から54、または57から59の何れかの色素を提供することによって被験者の認知を増強または維持する方法。
【0200】
67.水溶液の濃度が0.04mg/mlの時に500nmで約0.10から約0.16のUV−VIS吸収値をもつゴマ抽出物を含む組成物。
【0201】
68.還元型メラニンの分子量が約264から約5400ダルトンの間であるパラグラフ67に記載の組成物。
【0202】
69.還元型メラニンの炭素含量が約35重量パーセントから約57重量パーセントの間であり、水素含量が約5重量パーセントから約10重量パーセントの間であり、窒素含量が約5重量パーセントから約10重量パーセントの間であるパラグラフ67または68いずれかに記載の組成物。
【0203】
70.還元型メラニンの硫黄含量が約1重量パーセント未満であるパラグラフ67から69のいずれかに記載の組成物。
【0204】
71.還元型メラニンの赤外スペクトルが約3400cm−1、約2950cm−1、約1600から約1650cm−1、約1380から約1400cm−1、約1260cm−1および約1170cm−1に吸収バンドを示すパラグラフ67から70のいずれかに記載の組成物。
【0205】
72.還元型メラニンの分子量が約264から約2000ダルトンの間であるパラグラフ67と69から71のいずれかに記載の組成物。
【0206】
73.還元型メラニンの分子量が約400から約1600ダルトンの間である、パラグラフ67と69から71のいずれかに記載の組成物。
【0207】
74.充分な量のパラグラフ67から73の組成物のいずれかとビタミンとを混合する工程を含むビタミンの酸化を防止または減少させる方法。
【0208】
75.ビタミンがビタミンCであるパラグラフ74の方法。
【0209】
76.LDLの酸化の減少または阻害を必要とする被験者に、LDLに対して十分な量のパラグラフ67から73の組成物のいずれかを与えてLDLの酸化を減少または阻害することを含む、LDLの酸化を減少または阻害する方法。
【0210】
77.循環器疾患の治療または予防を必要とする被験者に、治療上有効量のパラグラフ67から73のいずれかの組成物を与えて循環器疾患を治療または予防することを含む、循環器疾患を治療または予防する方法。
【0211】
78.循環器疾患がアテローム性動脈硬化症または冠動脈疾患であるパラグラフ77の方法。
【0212】
79.潰瘍の治療または予防を必要とする被験者に、治療効果のある十分な量のパラグラフ67から73の組成物のいずれかを与えて潰瘍の治療または予防をすることを含む、潰瘍の治療または予防の方法。
【0213】
本発明は、好適な実施例を参照して説明してきたが、当業者ならば、本発明の精神と範囲から逸脱すること無く形態と詳細において変更可能なことは認識されるであろう。本明細書を通じて引用した全ての参照文献は従来技術にあるものも含めて、その全体が本明細書に組み込まれる。当業者ならば、特にここに述べられた本発明の具体的な実施例と同等な多くの例を日常的な実験を用いて認識または確認できるであろう。このような同等例は以下の特許請求の範囲の範囲に含まれると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度0.04mg/ml水溶液において500nmでのUV−VIS吸収値が約0.10から0.16のゴマ抽出物を含む組成物。
【請求項2】
還元型メラニンの分子量が約264から約5400ダルトンの間である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
還元型メラニンの炭素含量が約35から約57重量パーセントであり、水素含量が約5から約10重量パーセントであり、窒素含量が約5から約10重量パーセントである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
還元型メラニンの硫黄含量が約1重量パーセント未満である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
還元型メラニンの赤外スペクトルが約3400cm−1、約2950cm−1、約1600から約1650cm−1、約1380から約1400cm−1、約1260cm−1、および約1170cm−1において吸収バンドを示す請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
還元型メラニンの分子量が約264から約2000ダルトンの間である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
還元型メラニンの分子量が約400から約1600ダルトンの間である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
充分な量の請求項1−7のいずれかに記載の組成物とビタミンとを混合する工程を含む、ビタミンの酸化を防止または減少させる方法。
【請求項9】
ビタミンがビタミンCである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
LDLの酸化の減少または阻害を必要とする被験者に、LDLに対して十分な量の請求項1の組成物を与えてLDLの酸化を減少または阻害することを含む、LDLの酸化を減少または阻害する方法。
【請求項11】
循環器疾患の治療または予防を必要とする被験者に、治療上有効量の請求項1の組成物を与えて循環器疾患を治療または予防することを含む、循環器疾患を治療または予防する方法。
【請求項12】
循環器疾患がアテローム性動脈硬化症または冠動脈疾患である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
潰瘍の治療または予防を必要とする被験者に、治療上有効量の請求項1の組成物を与えて潰瘍を治療または予防することを含む、潰瘍を治療または予防する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−529099(P2011−529099A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520496(P2011−520496)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059775
【国際公開番号】WO2010/012751
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(507128344)オムニカ ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】