説明

ゴム成形装置

【課題】熱入れ加工時の発熱を充分に分散して、ゴム温度を均一に保持することにより、均一な形状のゴム部材を安定的に成形することができるゴム成形装置を提供する。
【解決手段】練りゴムをオープンロール11により熱入れした後、所定形状に成形するゴム成形装置であって、オープンロール11を幅方向に、練りゴムの熱入れを行う生産側領域およびゴム替えの準備を行う準備側領域に分割する分割ガイド板12が設けられており、ゴム替えに際して前記準備側領域に投入された練りゴムの押圧力により、分割ガイド板12が生産側領域方向に移動して、準備側領域と生産側領域とが切り替えられるように構成されており、さらに、分割ガイド板の移動範囲が、下記式を満足するように構成されているゴム成形装置。0.5<L1/L≦0.9但し、L :オープンロールの全幅L1:生産側領域のロール幅。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッドゴム部材などのタイヤ用ゴム部材の製造に際して、安定した熱入れ状態でゴムの成形加工が可能なゴム成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレッドゴム部材などのタイヤ用ゴム部材の成形加工においては、所定配合の練りゴムをオープンロールにより加熱した(熱入れ)後、押出機などの成形機に供給して、所定形状に成形することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
そして、成形すべきゴム部材を変更する際には各ゴム部材に応じた練りゴムへ取り替え(ゴム替え)、熱入れを行う必要があるが、このゴム替えに際しては、生産性の低下やコストの上昇を招くことなく能率的に行う必要がある。
【0004】
そこで、上記した熱入れ工程において、オープンロールにガイド板(分割ガイド板)を配置してオープンロール面を幅方向に2つの領域に分割して、片方の領域(生産側領域)で練りゴムの熱入れを行いながら、ゴム量が所定量以下になった時点で、他方の領域(準備側領域)に次のゴム部材に使用される練りゴムを投入して熱入れの準備を開始し、生産側領域における熱入れが完了した後は、準備側領域が新たな生産側領域となって次の熱入れを開始する、即ち、生産側領域と準備側領域とを交互に切り替えることが従来より行われている。このように、2つの領域を交互に生産側領域と準備側領域とすることにより、能率的なゴム替えを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−150511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この分割ガイド板は、従来、オープンロールの幅方向の中央部に固定配置されていたため、熱入れ加工面積が相対的に小さく、練りゴムとロール面との接触面積を充分に確保することが困難であった。この結果、熱入れ加工時の発熱を充分に分散させることができず、ゴム温度を均一に保持することが困難であった。ゴム温度が均一に保持されていない状態で成形を行った場合、不均一な形状のゴム部材が成形され、製品タイヤの品質を低下させる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、熱入れ加工時の発熱を充分に分散して、ゴム温度を均一に保持することにより、均一な形状のゴム部材を安定的に成形することができるゴム成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
練りゴムをオープンロールにより熱入れした後、所定形状に成形するゴム成形装置であって、
前記オープンロールの外周面には、前記オープンロール面を幅方向に、前記練りゴムの熱入れを行う生産側領域およびゴム替えの準備を行う準備側領域に分割する分割ガイド板が設けられており、
ゴム替えに際して前記準備側領域に投入された練りゴムの押圧力により、前記分割ガイド板が前記生産側領域方向に移動して、前記準備側領域と生産側領域とが切り替えられるように構成されており、
さらに、前記分割ガイド板の移動範囲が、下記式を満足するように構成されている
ことを特徴とするゴム成形装置である。
0.5<L1/L≦0.9
但し、L :オープンロールの全幅
L1:生産側領域のロール幅
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記所定形状に成形する方法が、押出し成形法であることを特徴とする請求項1に記載のゴム成形装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
トレッドゴム部材製造用の成形装置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム成形装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱入れ加工時の発熱を充分に分散して、ゴム温度を均一に保持することにより、均一な形状のゴム部材を安定的に成形することができるゴム成形装置を提供することができる。
【0012】
そして、分割ガイド板の移動に際しては、練りゴムの押圧力を利用しているため、分割ガイド板を駆動させるために特別な装置を設ける必要がなく、設備コストや使用エネルギーの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機のオープンロールおよび分割ガイド板を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機の分割ガイド板の移動機構を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機の分割ガイド板の移動機構を模式的に示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機のオープンロールの生産側領域および準備側領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
【0015】
1.ゴム成形装置
ゴム成形装置は、練りゴムに熱入れ加工を行う熱入れ加工機と、熱入れ加工された練りゴムを所定形状に成形する押出し成形を行う押出成形機とを備えている。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機を示す斜視図である。図1に示すように、熱入れ加工機1は、練りゴムの熱入れ加工を行うオープンロール11と、可動式の分割ガイド板12と、オープンロール11の軸方向における分割ガイド板12の位置を変えるための移動機構14とを備えている。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機のオープンロールおよび分割ガイド板を模式的に示す側面図である。図2に示すように、オープンロール11は、前後に平行に配置されている前側ロール11aと後側ロール11bとを備えており、それぞれのロール11a、11bの内部には温調配管(図示省略)が配置されている。
【0018】
そして、分割ガイド板12は、下端部がオープンロール11の前側ロール11aおよび後側ロール11bの外周面に沿って先細りに形成されている。
【0019】
図3は、本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機の分割ガイド板の移動機構を示す平面図である。図4は、本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機の分割ガイド板の移動機構を模式的に示す正面図である。
【0020】
図3に示すように、移動機構14は、オープンロール11の上方に配置される前後一対のガイド14a、14bと、ガイド14a、14b間に架設されてガイド14a、14bに沿ってスライドする保持部材13とを備えている。そして、図4に示すように、分割ガイド板12は、保持部材13に取り付けられることにより二点鎖線で示すように移動可能となっている。
【0021】
図5は、本発明の実施の形態のゴム成形装置の熱入れ加工機のオープンロールの生産側領域および準備側領域を示す図であり、(a)は図面左側を生産側領域としたときの熱入れ開始の状態を、(b)は、熱入れ終了直前の生産側領域が狭くなった状態を示している。図5に示すように、オープンロール11は、分割ガイド板12により第1領域Aおよび第2領域Bに区分けされ、第1領域Aおよび第2領域Bの間では、分割ガイド板12の移動により生産側領域および準備側領域の切り替えが行われる。なお、図5において、Lはオープンロールの全幅であり、L1は生産側領域のロール幅であり、L2は準備側領域のロール幅である。
【0022】
準備側領域に練りゴムが投入された場合、分割ガイド板12の移動により、準備側領域が広くなる一方、生産側領域が狭くなる。分割ガイド板12の移動範囲については、L1/L≦0.5の場合は、練りゴムの熱入れが不均一になる。一方、L1/L>0.9に設定したときは、準備側領域に投入される練りゴムの量が少なくなり、分割ガイド板12に対する押圧力が不足するため、設備(スイングコンベア)が必要になり、これに伴い分割ガイド板12を移動させるための設備の設置スペースが必要になる。以上より、0.5<L1/L≦0.9の条件を満足する必要がある。
【0023】
そして、例えば、全幅Lが2100mmのオープンロールの場合、生産側領域のオープンロール11のロール幅L1は約1800mmに調整され、オープンロールの他端からの分割ガイド板の距離であるL2は約300mmに調整される。
【0024】
なお、オープンロール11の両端には、ゴム材料をせき止めるための固定式のせき止め板(図示省略)が配置されている。
【0025】
2.熱入れ加工機による練りゴムの熱入れ加工の説明
熱入れ加工を開始するときには、いずれか一方の領域(本実施の形態では第1領域)を生産側領域としてこの領域に練りゴムを投入して熱入れ加工を行う。
【0026】
熱入れが行われた練りゴムは、図外のナイフで所定幅に切断されて押出成形機に向けて供給される。そして、ゴム替えが必要な場合、第1領域(生産側領域)におけるゴム量が所定量以下になった時点で、第2領域を準備側領域としてこの領域に第1領域の練りゴムとは異なる練りゴムを投入する。
【0027】
分割ガイド板12は、第2領域(準備側領域)に投入された練りゴムの押圧力により、練りゴム量が減少した第1領域側(生産側領域)に徐々に移動する。これにより、第2領域が徐々に拡がって熱入れ加工するための練りゴムを準備することができる。
【0028】
そして、第1領域(生産側領域)における熱入れが終了したときに、第1領域が新たな準備側領域となる一方、第2領域が新たな生産側領域となってゴム替えが行われて次の熱入れが開始される。
【0029】
そして、第2領域(生産側領域)における練りゴム量が所定量以下になった時点で、第1領域(準備側領域)に新たな練りゴムが投入され、分割ガイド板12が第1領域(準備側領域)に投入された練りゴムの押圧力により、練りゴム量が減少した第2領域側(生産側領域)に徐々に移動する。
【0030】
そして、第2領域(生産側領域)における熱入れが終了したときに、第2領域が再び新たな準備側領域となる一方、第1領域が新たな生産側領域となって熱入れが行われる。
【0031】
そして、以上の動作を繰り返すことにより、第1領域Aと第2領域Bとの間では、生産側領域と準備側領域との切り替えが行われる。
【0032】
このように、第1領域Aおよび第2領域Bは、いずれか一方の領域が練りゴムが投入されて熱入れを行う生産側領域となり、他方の領域が前記練りゴムとは異なる練りゴムが投入されてゴム替えの準備を行う準備側領域となる。
【0033】
3.本実施の形態の効果
(1)オープンロールに供給される練りゴムの量に応じた分割ガイド板12の準備側領域への移動により、オープンロールの生産側領域を拡げることができるため、熱入れ加工時の発熱が充分に分散されて、練りゴムの温度を均一に保つことができる。この結果、均一な形状のゴム部材が成形され、製品タイヤの品質を向上させることができる。
【0034】
(2)また、分割ガイド板12の移動は、練りゴムの押圧力により行われるため、駆動動力源を必要としない。このため、設備コストを抑え、省エネルギー化を図ることができる。
【0035】
(3)しかも、熱入れの終了とに共に第1領域Aと第2領域Bとの間で、自動的に生産側領域と準備側領域との切り替えが行われるため、ゴム替え時の段替ロスを抑えることができて生産性を確保することができる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【0037】
径660mm×幅2134mmの前側ロールおよび後側ロールから構成される中田エンヂニアリング(株)製のオープンロールに、表1の実施例1、2に示す各位置に分割ガイド板を配置して、5ロット分のトレッドゴム部材用の練りゴムを用いて、それぞれ熱入れを行った。なお、オープンロール表面の温度(熱入れ温度)は、40℃に温調設定した。比較例として、オープンロール11の中央(分割ガイド板の位置50%に相当)に分割ガイド板が固定された従来の固定式の熱入れ加工機を用いて、実施例と同様にして熱入れを行った。
【0038】
このとき、それぞれの熱入れ加工時の練りゴム温度を測定し、最大値と最小値の差を求め、ゴム温度Rとした。
【0039】
次に、熱入れ加工後の練りゴムを押出成形機に供給し、トレッドゴム部材を成形した。押出成形品の仕上り形状を、狙い形状に対するズレ量(幅、ゲージ、断面積)を測定することにより評価した。評価は、比較例における測定値を100とする相対評価とし、数値が大きいほど仕上り形状が良好であることを示す。
【0040】
次に、各例について段替を行い、そのときの段替ロスを測定し、比較例における測定値を100とする相対評価で、生産性を評価した。数値が大きいほど生産性が高いことを示す。
【0041】
また、実施例に用いた可動式の分割ガイド板を備えたオープンロールにおける設備コストと、比較例の従来の固定式の熱入れ加工機における設備コストを求め、比較例における設備コストを100として相対評価を行った。数値が大きいほど設備コストが高いことを示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1より、実施例1、2におけるオープンロール内ゴム温度Rは、10℃、6℃であり、比較例における15℃に比べてそれぞれ5℃、9℃低減していることが分り、均一な熱入れ加工が行われたことが分かる。そして、押出成形品仕上り形状が良好であることも分かる。
【0044】
この結果より、可動性の分割ガイド板を設けることにより、均一な熱入れ加工が可能となり、均一な形状の成型品を得ることができることが確認された。また、分割ガイド板の位置の上限を90にしても問題がないことが確認された。
【0045】
また、実施例1、実施例2の生産性(段替ロス)は比較例と同等であり、可動性の分割ガイド板を設けた場合でも、生産性を充分に維持することができることが分かる。
【0046】
そして、設備コストについては、比較例に比べて20%も低減できている。これは、分割ガイド板を配置するための特別な設備を必要としないため、設備コストを低減できたと考えられる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 熱入れ加工機
11 オープンロール
11a 前側ロール
11b 後側ロール
12 分割ガイド板
13 保持部材
14 移動機構
14a、14b ガイド
A 第1領域
B 第2領域
L オープンロールの全幅
L1 生産側領域のロール幅
L2 準備側領域のロール幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
練りゴムをオープンロールにより熱入れした後、所定形状に成形するゴム成形装置であって、
前記オープンロールの外周面には、前記オープンロール面を幅方向に、前記練りゴムの熱入れを行う生産側領域およびゴム替えの準備を行う準備側領域に分割する分割ガイド板が設けられており、
ゴム替えに際して前記準備側領域に投入された練りゴムの押圧力により、前記分割ガイド板が前記生産側領域方向に移動して、前記準備側領域と生産側領域とが切り替えられるように構成されており、
さらに、前記分割ガイド板の移動範囲が、下記式を満足するように構成されている
ことを特徴とするゴム成形装置。
0.5<L1/L≦0.9
但し、L :オープンロールの全幅
L1:生産側領域のロール幅
【請求項2】
前記所定形状に成形する方法が、押出し成形法であることを特徴とする請求項1に記載のゴム成形装置。
【請求項3】
トレッドゴム部材製造用の成形装置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86265(P2013−86265A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225461(P2011−225461)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】