説明

ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ

【課題】転がり抵抗と耐摩耗性が高いレベルでバランスしたタイヤを提供する。
【解決手段】燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させたのち、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより得られたゴム配合用カーボンブラックを含み、かつゴム成分として、天然ゴムを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を天然ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性天然ゴムを特定の割合で含むゴム組成物であって、(1)前記ゴム配合用カーボンブラックが、下記の関係式、(1)10<X<40、および(2)90<Z<100を満足する。Xは原料導入位置から、第1番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)を示し、Zは最後の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤに関する。更に詳しくは、本発明は、転がり抵抗と耐摩耗性のバランスに優れるタイヤを与える、特定のカーボンブラックを含有しかつ、特定の変性天然ゴムを含有するゴム組成物、及びそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、厳密に制御された条件下において、ファーネス炉内で発生させた、あるいは、外部で発生されて炉内に導入された高温燃焼ガス中へ原料炭化水素を噴霧させ、この原料炭化水素の熱分解又は不完全燃焼により生産される産業上有用な原材料である。カーボンブラックは、ゴム配合時の組成物に対して機械的性質、特に引張り強さ、耐摩耗性などの特性を、飛躍的に向上させることができるという特異な性質を有することから、タイヤをはじめとする各種ゴム製品の充填補強材として広く用いられている。
ゴム配合用カーボンブラックは、その物理化学的特性、即ち、カーボンブラックを構成する単位粒子径、単位質量当たりの表面積(比表面積)、粒子のつながり具合(ストラクチャー)、表面性状などにより配合ゴム組成物の性能に大きな影響を与えるので、要求されるゴム性能、使用される環境等によって各種特性の異なるカーボンブラックが選択的に使用されている。
【0003】
タイヤの接地面に用いられるゴム組成物では、高速度で回転して道路と接触することによる摩耗に対する耐性(耐摩耗性)に優れていると同時に、路面との接触で生じるゴム組成物の繰り返し変形によるヒステリシスロス特性を低下させる(低発熱性)ことが重要な要素であるが、これら2つの特性は二律背反現象であることが知られている。
タイヤトレッド配合用カーボンブラックを用いて耐摩耗性を向上させる手段、例えば、より大きい比表面積、あるいはストラクチャーを有するカーボンブラックを採用した場合、上述したように、耐摩耗性と低発熱性は互いに相反する特性であり、この課題を解決するために種々の特性を有するカーボンブラックが提案されている。
【0004】
これまで、カーボンブラックにおいて、耐摩耗性を向上させる手段として、比表面積{CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)m2/g}を増加させることで、ポリマーとの接触面積を増加させ、また、DBP吸収量を増加させることで、ポリマーとの相互作用を増加させることが行われている。一方、転がり抵抗を低減させる手段として、比表面積を減少させることで、ポリマーとの接触面積を低減させたり、DBP(ジブチルフタレート)吸収量を減少させることなどが行われている。
このように、カーボンブラック特性として、耐摩耗性の向上と転がり抵抗低減を同時に達成することは困難である。
そこで、優れた耐摩耗性と優れたヒステリシス特性(低発熱性)を同時に満たすカーボンブラックとして、例えば(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g、(2)圧縮操作後のDBP吸収量(24M4DBP)が35〜220ml/100g、(3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m2/g、(4)水素放出率(%)>0.260−0.000625×(CTAB)、(5)トルエン着色透過度が90%以上の特性を有するタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック(例えば、特許文献1参照)が開示されている。
【0005】
ところで、近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出の規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に関する要求が高まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。従来、タイヤの転がり抵抗を減少する手法として、タイヤ構造を最適化する手法も検討されてきたが、タイヤに適用するゴム組成物としてより発熱性の低いゴム組成物を用いることが、現在、最も一般的な手法として行われている。
例えば、ゴム組成物中の充填剤とゴム成分との親和性を向上させ、充填剤による補強効果を向上させるために、末端変性により充填剤との親和性を向上させた合成ゴムや、官能基含有単量体を共重合させて充填剤との親和性を向上させた合成ゴム等が開発されている。
特許文献2又は3では、転がり抵抗を低減するためにゴム成分として重合活性末端にアミノ基を導入した変性共役ジエン系重合体を用い、充填材としてカーボンブラックを用いたゴム組成物が提案されている。
【0006】
一方、天然ゴムに関しては、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムをゴム成分として使用することで、ゴム成分と充填剤との親和性を向上させてゴム組成物の補強性を改善し、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を向上させる技術が開示されている(特許文献4参照)。
【0007】
上述のように、ゴム成分として特許文献4に開示の変性天然ゴムを用いることで、ゴム成分と充填剤との親和性が向上して、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性等が向上するが、昨今、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を更に向上させることが要求されている。
【0008】
ここで、変性天然ゴム分子の鎖状分子運動を考慮すると、極性基が分子末端に存在する変性天然ゴムの方が、極性基が分子鎖中に存在する変性天然ゴムよりも、充填剤との相互作用を高めることができると期待され、実際に上述した合成ゴムを変性する技術においは、同様の理由により、末端変性した合成ゴムにてより高い変性効果が得られている。
特許文献4記載の手法に従って、極性基を天然ゴム分子の主鎖に導入することができるが、この場合、極性基が導入される位置は、分子末端に限られない。これに対して、天然ゴムの分子の主鎖の末端を変性することによって、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を更に向上させる技術として、メタセシス触媒と極性基含有オレフィンを用いて天然ゴムの分子の主鎖の末端に極性基を導入する技術が開示されている(特許文献5参照)。
【0009】
従来一般に、タイヤの耐摩耗性の向上には、タイヤを構成するゴム組成物に配合されるカーボンブラックの粒子径やストラクチャーが支配要因として考えられており、カーボンブラックの粒子径を小さくするほど耐摩耗性が向上するが、カーボングラックの粒子径が極端に小さいとゴム中で分散不良を起こし、発熱性が増大することが知られている。かかるゴム組成物でタイヤトレッドを作製した場合、耐摩耗性には優れるが、低燃費性には劣る。即ち、カーボンブラックの粒子径において、耐摩耗性と低発熱性は二律背反の関係にある。又、ストラクチャーについても、これを増加させるほど耐摩耗性は向上する傾向にあるが、増加しすぎると加工性や耐チッピング性が低下し、更に発熱性も増大するなどの問題点がある。更に、カーボンブラック配合部数を増加させることでも耐摩耗性はある程度まで増加するが、高ストラクチャー化の場合と同様の懸念(加工性低下など)が生じる。
【0010】
上述した特許文献5記載のメタセシス触媒と極性基含有オレフィンを用いて天然ゴムの分子の主鎖の末端に極性基を導入する技術においては、変性天然ゴムの製造に用いるメタセシス触媒が高価であることから、製造コストが高くなる。さらに、昨今、天然ゴムのみならず、他のジエン系ゴムを用いたゴム組成物についても、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を更に向上させることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−272734号公報
【特許文献2】特開平8−225604号公報
【特許文献3】特開平8−231658号公報
【特許文献4】国際公開第2004/106397号パンフレット
【特許文献5】特開2007−204637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような状況下になされたもので、転がり抵抗と耐摩耗性が高いレベルでバランスしたタイヤを与える、特定のカーボンブラック含有しかつ、特定の構造を有する変性天然ゴムを含むゴム組成物、及びそれ用いたタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のプロセスにより得られた、特定の性状を有するカーボンブラックを、ゴム成分として特定の構造を有する変性天然ゴムを含むゴム組成物により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1] 燃焼ガス生成帯域と、反応帯域と、反応停止帯域とが連設されてなる反応装置を用い、前記燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで前記反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させたのち、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより得られたゴム配合用カーボンブラックを含み、かつゴム成分として、天然ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を天然ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性天然ゴムを含むゴム組成物であって、
(1)前記ゴム配合用カーボンブラックが、下記の関係式(1)及び(2)
10<X<40 ・・・(1)
90<Z<100 ・・・(2)
(ただし、Xは原料導入位置から、第1番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)を示し、Zは、最後の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)を示す。)を満たすこと、及び
(2)(A)変性天然ゴムを含むゴム成分100質量部に対して、前記(B)ゴム配合用カーボンブラックを、10〜250質量部の割合で含むこと、を特徴とするゴム組成物、
[2] 前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%である上記[1]のゴム組成物、
[3] 前記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、及びスズ含有基からなる群から選ばれる少なくとも一つである上記[1]または[2]のゴム組成物、
[4] (A)変性天然ゴムのゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上である上記[1]のゴム組成物、
[5] 前記天然ゴムラテックスの酸化を、天然ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、酸化することによって行う上記[1]のゴム組成物、
[6] 前記酸化を、空気酸化又はオゾン酸化によって行う上記[1]のゴム組成物、
[7] 前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行う上記[6]のゴム組成物、
[8] 前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及び/又はケトン類である上記[5]のゴム組成物、
[9] 前記ラジカル発生剤が過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれる上記[7]のゴム組成物、
[10] ゴム成分100質量部中に(A)変性天然ゴムを10質量%以上の割合で含む上記[1]〜[9]いずれかのゴム組成物、及び
[11] 上記[1]〜[10]いずれかのゴム組成物を用いてなるタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のゴム組成物は、特定のプロセスにより得られた特定の性状を有するカーボンブラック、及び特定の変性天然ゴムを所定の割合で含有することにより、下記の効果を奏する。
(1)カーボンブラックをゴム組成物に配合した場合、該ゴム組成物に優れた耐摩耗性と低発熱性の両方を付与することは、一般に困難であるが、本発明に係るカーボンブラックを用いることにより、耐摩耗性と低発熱性(低転がり抵抗)が高いレベルでバランスしたゴム組成物を与えることができる。
(2)上記のカーボンブラックとしては、水素放出率が0.30質量%よりも高く、また、DBP吸収量、24M4DBP吸収量及びCTAB吸着比表面積が、それぞれ特定の範囲にあるものが、特に上記効果の点で好適である。
(3)ゴム組成物のゴム成分が、従来より安価に製造できる変性天然ゴムを含むことにより、上記効果が、より良好に発揮される。
(4)本発明のゴム組成物を用いて得られた空気入りタイヤは、耐摩耗性に優れると共に、転がり抵抗にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ゴム配合用カーボンブラックを製造するためのカーボンブラック製造炉の一例の部分縦断正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明のゴム組成物について説明する。
[(A)変性天然ゴム]
本発明のゴム組成物に用いられる(A)成分の変性天然ゴムは、天然ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を天然ゴムの分子鎖の末端に付加させてなることを特徴とする。上記変性天然ゴムにおいては、天然ゴムの分子鎖の末端に極性基が存在するため、例えば上述した特許文献4記載の変性天然ゴムのような極性基が分子鎖中に存在する変性ジェン系ゴムよりも、カーボンブラックやシリカ等の種々の充填剤に対する親和性に優れる。そして、本発明の変性天然ゴムをゴム成分として用いたゴム組成物は、前述した極性基が分子鎖中に存在する変性天然ゴムをゴム成分として用いたゴム組成物に比べて、ゴム成分に対する充填剤の分散性が高く、充填剤の補強効果が十分に発揮されて、耐摩耗性及び低ロス性(低発熱性)が向上している。また本発明のゴム組成物の必須成分である(B)成分であるカーボンブラックを充填材として用いることにより、耐摩耗性及び低ロス性(低発熱性)がさらに向上する。該ゴム組成物をタイヤ、特にタイヤのトレッドに用いることで、転がり抵抗を大幅に低減しつつ、耐摩耗性を著しく改善することができる。尚、(B)成分のゴム配合用カーボンブラックについては後に詳細に述べる。
【0017】
本発明において、酸化反応に用いるゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックスであることが好ましい。合成ゴムの場合は、重合の過程で分子鎖末端に極性基を導入することが可能であるが、天然物である天然ゴムはメタセシス触媒を用いる手法等を除けば不可能であり、本発明により可能となることを考えると天然ゴムラテックスを用いることが好ましい。
【0018】
天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱蛋白ラテックス、前記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。副反応を少なくするためには、天然ゴムラテックスの純度を上げて使用するとよい。
【0019】
上記天然ゴムラテックスの酸化は公知の方法で行うことができる。例えば、特開平8−81505号公報に従って、有機溶剤に1〜30質量%の割合で溶解した上記天然ゴムラテックスを金属系酸化触媒の存在下で空気酸化することによって上記ジエン系ゴムラテックスの酸化を行うことができる。ここで、空気酸化を促進するために用いられる金属系酸化触媒の好適な金属種はコバルト、銅、鉄等であり、これらの塩化物や有機化合物との塩や錯体が用いられる。なかでも塩化コバルト、コバルトアセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト等のコバルト系触媒が好適である。
【0020】
有機溶媒としては、それ自体がゴムと反応せず、また容易に酸化されることがなく、ゴムを溶解するものであれば良く、種々の炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、有機ハロゲン系溶媒等が好適に用いられる。炭化水素系溶媒としては、例えばヘキサン、ガソリン等が使用可能である。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等が使用可能である。有機ハロゲン系溶媒としては、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等が使用可能である。中でも芳香族炭化水素系のトルエンを用いるのが好適である。また、それらとアルコール等との混合溶媒を用いることも可能である。
【0021】
また、特開平9−136903号公報こ記載されているように、上記天然ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、天然ゴムラテックスを酸化することによって、天然ゴムラテックスの酸化を行うことができる。天然ゴムラテックスに添加するカルボニル化合物は、ゴム分に関係なくラテックス容量に対して20容量%(V/V%)以下、好ましくは0.5〜10容量%となるように添加するのが適当である。カルボニル化合物の濃度が上記範囲を超えても問題はないが、反応性を高めないばかりか、経済的に不利となるおそれがある。ここで、カルボニル化合物の好適な例としては、種々のアルデヒド類、ケトン類等があげられる。
【0022】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、カプロアルデヒド、ヘプタアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、バニリン、ピベロナール、メチルバレルアルデヒド、イソカプロアルデヒド、パラホルムアルデヒド等があげられる。
【0023】
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、ジエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、ベンジルメチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、イソブチルメチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−プチロフェノン、ベンゾフェノン、3−ニトロ−4’−メチルベンゾフェノン等があげられる。
【0024】
上述したカルボニル化合物を上記天然ゴムラテックスに添加することによって酸化を行うことができるが、酸化方法として、空気酸化を行う場合、特開平9−136903号公報に記載されているように、空気酸化を促進するためにラジカル発生剤の存在下で空気酸化を行うのが好ましい。ラジカル発生剤としては、例えば過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤、アゾ系ラジカル発生剤等が好適に用いられる。過酸化物系ラジカル発生剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシシカルボナート、ジシクロへキシルペルオキシシカルボナート等が使用できる。
【0025】
レドックス系ラジカル発生剤としては、例えばクメンヒドロキシペルオキシシドとFe(II)塩、過酸化水素とFe(II)塩、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムと亜硫酸ナトリウム、硫酸セリウム(IV)とアルコール、アミン又は澱粉、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物とジメチルアニリン、tert−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミン等が使用できる。
【0026】
アゾ系ラジカル発生剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等が使用できる。
【0027】
上述のラジカル発生剤は上記ジェン系ゴムラテックス中に溶解又は分散させて用いられる。ラジカル発生剤の添加量は、天然ゴム固形分に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜1質量%であるのが適当である。ラジカル発生剤の濃度が上記範囲より低いと空気酸化の速度が遅く実用的でない。一方、ラジカル発生剤の濃度が上記範囲を超えると、分子鎖切断が進み、分子量の低下に伴い、ゴム組成物としての低ロス性、耐摩耗性、破壊強度が悪化するおそれがある。
【0028】
空気酸化では、溶液を空気と均一に接触させることが望ましい。空気との接触を均一にする手法は特に限定されないが、例えば振返フラスコ中で振返させるほか、撹拌や空気を吹き込むバブリング等により容易に行うことができる。空気酸化を進める温度は、通常、室温〜100℃で行われるが、特に限定されるものではない。反応は、通常1〜5時間程度で終了する。
【0029】
また、特開2001−261707号公報の記載に従って、天然ゴムラテックスにオゾン含有ガスを吹き込み、オゾンの酸化作用で天然ゴムラテックスの酸化を行うことができる。この方法では、過酸化水素の添加により、分解反応が促進される。
【0030】
本発明においては、上記の手法によって、上記天然ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を添加する。ここで、後述するように、天然ゴムラテックスを酸化して得られた酸化天然ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加してもよいし、又は得られた酸化天然ゴムラテックスを凝固して得られた酸化天然ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加してもよい。
【0031】
上記手法で得られた酸化天然ゴムラテックスは、天然ゴム分子鎖の末端にカルボニル基を有する。極性基含有ヒドラジド化合物は、高い反応性を有し、そのため、酸化天然ゴムラテックス又は該酸化天然ゴムラテックスを凝固して得られた酸化天然ゴム中の天然ゴム分子末端のカルポニル基と容易に反応する。
よって、酸化天然ゴムラテックス又は酸化天然ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加することで、高価な触媒を用いることなく、天然ゴム分子末端に、簡便かつ安価に極性基を導入することができる。
【0032】
上記極性基含有ヒドラジド化合物としては、分子内に少なくとも一つの極性基を有するヒドラジド化合物であれば特に制限されない。具体的には、例えば、アミノ基、イミノ基ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基などを好適に挙げることができる。これらの極性基含有ヒドラジド化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
上記アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有するヒドラジド化合物が挙げられる。これらのアミノ基含有ヒドラジド化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
第1級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−アミノアセトヒドラジド、3−アミノプロピオン酸ヒドラジド、4−アミノブタン酸ヒドラジド、2−アミノベンゾヒドラジド、4−アミノベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0035】
第2級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−(メチルアミノ)アセトヒドラジド、2−(エチルアミノ)アセトヒドラジド、3−(メチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(エチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(プロピルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(イソプロピルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、4−(メチルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(エチルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(プロピルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(イソプロピルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、2−(メチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(エチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(プロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(イソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(メチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(エチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(プロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(イソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0036】
第3級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、N,N−ジ置換アミノアルキルヒドラジド化合物、N,N−ジ置換ベンゾヒドラジド化合物等が挙げられる。これらの化合物としては、例えば、2−(ジメチルアミノ)アセトヒドラジド、2−(ジエチルアミノ)アセトヒドラジド、3−(ジメチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(ジエチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジト、3−(ジプロピルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(ジイソプロピルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、4−(ジメチルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(ジエチルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(ジプロピルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(ジイソプロピルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、2−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジエチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジイソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジエチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジイソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0037】
また、アミノ基の代わりに含窒素複素環基であってもよく、その含窒素複素環基としては、例えば、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、含窒素複素環は、他のへテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を有するヒドラジド化合物としては、例えば、イソニコチノヒドラジド、ピコリノヒドラジドが挙げられる。これら含窒素複素環基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0038】
上記ニトリル基を有するヒドラジド化合物としては、2−ニトロアセトヒドラジド、3−ニトロプロピオン酸ヒドラジド、4−ニトロブタン酸ヒドラジド、2−ニトロベンゾヒドラジド、4−ニトロベンゾヒドラジド等が挙げられる。これらのニトリル基含有ヒドラジド化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0039】
上記ヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物としては、1分子中に少なくとも1個の第1級、第2級又は第3級ヒドロキシル基を含有するヒドラジド化合物が挙げられる。このようなヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−ヒドロキシアセトヒドラジド、3−ヒドロキシプロピオン酸ヒドラジド、4−ヒドロキシブタン酸ヒドラジド、2−ヒドロキシベンゾヒドラジド、4−ヒドロキシベンゾヒドラジドが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0040】
上記カルボキシル基を含有するヒドラジド化合物としては、3−カルボキシプロピオン酸ヒドラジド、4−カルボキシブタン酸ヒドラジド等が挙げられる。これらカルボキシル基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0041】
上記エポキシ基を有するヒドラジド化合物としては、2−(オキシラン−2−イル)アセトヒドラジド、3−(オキシラン−2−イル)プロピオン酸ヒドラジド、3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロピオン酸ヒドラジド等が挙げられる。これらエポキシ基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0042】
上記スズ含有基を有するヒドラジド化合物としては、3−(トリブチルスズ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(トリメチルスズ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(トリフェニルスズ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(トリオクチルスズ)プロピオン酸ヒドラジド、4−(トリブチルスズ)ブタン酸ヒドラジド、4−(トリメチルスズ)ブタン酸ヒドラジド、4−(トリフェニルスズ)ブタン酸ヒドラジド、4−(トリオクチルスズ)ブタン酸ヒドラジド、2−(トリブチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリブチルスズ)ベンゾヒドラジド、2−(トリメチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリメチルスズ)ベンゾヒドラジド、2−(トリオクチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリオクチルスズ)ベンゾヒドラジド等のスズ含有ヒドラジド化合物を挙げることができる。これらスズ含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0043】
極性基含有ヒドラジド化合物の添加方法としては、下記の通り3つ挙げられる。第1の方法では、上記酸化反応した天然ゴムラテックスを凝固、粉砕し、クラム化した後、上記極性基含有ヒドラジド化合物を添加する。その後、例えば、ミキサー、押出機、混練機(プリブレーカー)等を用いて混練を行い、乾燥した変性天然ゴムを得ることができる。
【0044】
第2の方法では、上記酸化反応した天然ゴムラテックスを凝固、粉砕、乾燥した後、上記極性基含有ヒドラジド化合物を添加する。例えば、乾燥後の固形の酸化天然ゴムへの極性基含有ヒドラジド化合物溶液の添加をミキサー、押出機、混練機等により行う工程が挙げられ、好ましくは、分散性向上の点から混練磯で混合することが好ましい。
【0045】
第3の方法では、上記酸化反応した天然ゴムラテックス中に、水及び必要に応じて乳化剤を加えたものの中に上記極性基含有ヒドラジド化合物を加え、所定の温度で撹拌して反応させる。上記極性基含有ヒドラジド化合物の酸化天然ゴムラテックスへの添加に際しては、予め酸化天然ゴムゴムラテックス中に乳化剤を加えておくか、あるいは極性基含有ヒドラジド化合物を乳化した後、酸化天然ゴムラテックスに加える。必要に応じて有機過酸化物を添加することもできる。使用し得る乳化剤としては、特に限定されないが、ノニオン系の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。このようにして極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、反応させて得られた変性天然ゴムラテックスを凝固、乾燥することによって、変性天然ゴムを得ることができる。
【0046】
なお、上述した3つの方法において、酸化天然ゴムラテックス又は変性天然ゴムラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。また、酸化天然ゴムラテックス又は変性天然ゴムラテックスの乾燥は、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて行うことができる。
【0047】
上記のようにして得られた変性天然ゴムは、天然ゴムの分子鎖の末端に、
下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは、置換基としてアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルポ二ル基、エポキシ基、オキシカルポニル基、スズ含有基からなる群から選ばれる極性基を少なくとも1種有する炭素数1〜4のアルキレン基、置換基として該極性基を少なくとも1種有するフェニレン基、又は含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基である)で表される極性基含有官能基を有する。なお、上記一般式(I)中のRは上述したような極性基含有ヒドラジド化合物のヒドラジド基以外の部分に由来するものである。
【0048】
また、上記変性天然ゴムは、ゴム組成物として、優れた低ロス性、耐摩耗性及び破壊強度を確保するという観点から、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であるのが好ましく400,000以上であるのがより好ましい。
【0049】
[(B)ゴム配合用カーボンブラック]
次に、本発明のゴム組成物の必須成分である(B)成分のゴム配合用カーボンブラックについて詳細に説明する。
本発明のゴム組成物は、燃焼ガス生成帯域と、反応帯域と、反応停止帯域とが連設されてなる反応装置を用い、前記燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで前記反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させたのち、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより得られたゴム配合用カーボンブラックを含むものである。
【0050】
(ゴム配合用カーボンブラックの製造方法)
本発明のゴム組成物に用いられるゴム配合用カーボンブラックの製造方法について説明する。
カーボンブラック製造炉内部は、燃焼帯域と反応帯域と反応停止帯域とを連接した構造であり、その全体は耐火物で覆われている。
カーボンブラック製造炉は、燃焼帯域として、可燃性流体導入室と、炉頭部外周から酸素含有ガス導入管によって導入された酸素含有ガスを、整流板を用いて整流して可燃性流体導入室へ導入する酸素含有ガス導入用円筒と、酸素含有ガス導入用円筒の中心軸に設置され、可燃性流体導入室へ燃料用炭化水素を導入する燃料油噴霧装置導入管とを備える。燃焼帯域内では、燃料用炭化水素の燃焼により高温燃焼ガスを生成する。
【0051】
カーボンブラック製造炉は、反応帯域として、円筒が次第に収れんする収れん室と、収れん室の下流側に例えば4つの原料油噴霧口を含む原料油導入室と、原料油導入室の下流側に反応室とを備える。原料油噴霧口は、燃焼帯域からの高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入する。反応帯域内では、高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入し、不完全燃焼又は熱分解反応により、原料炭化水素をカーボンブラックに転化する。
【0052】
図1は、当該ゴム配合用カーボンブラックを製造するためのカーボンブラック製造炉の一例の部分縦断正面説明図であって、カーボンブラックの原料(原料炭化水素)を含んだ高温ガスが導入される反応室10及び反応継続兼冷却室11を示す。図1に示すように、カーボンブラック製造炉1は、反応停止帯域として、多段急冷媒体導入手段12を有する反応継続兼冷却室11を備える。多段急冷媒体導入手段12は、反応帯域からの高温燃焼ガス流に対して、水などの急冷媒体を噴霧する。反応停止帯域内では、高温燃焼ガス流を急冷媒体により急冷して反応を終結する。
また、カーボンブラック製造炉1は、反応帯域あるいは反応停止帯域において、ガス体を導入する装置を更に備えてもよい。ここで、「ガス体」としては、空気、酸素と炭化水素の混合物、これらの燃焼反応による燃焼ガス等が使用可能である。
このようにして、カーボンブラック製造において、反応ガス流が反応停止帯域に入るまでの各帯域における平均反応温度と滞留時間を制御して、トルエン着色透過度X、Y及びZを所望の値にすることにより、本発明のゴム組成物に用いられるゴム配合用カーボンブラックが得られる。
【0053】
ここで、本発明における各帯域について説明する。
燃焼帯域とは、燃料と空気との反応により高温ガス流が生成される領域であり、この下流端は原料油が反応装置内に導入される点(複数位置で導入される場合は最も上流側)、例えば原料油が導入される点よりも上流側(図1では左側)を指す。
また、反応帯域とは、原料炭化水素が導入された点(複数位置の場合は最も上流側)から反応継続兼冷却室11内の多段急冷水噴霧手段12(これらの手段は反応継続兼冷却室11内で抜き差し自在であり、生産する品種、特性により使用位置は選択される)の作動(水等の冷媒体を導入する)点までを指す。すなわち、例えば第3番目の原料油噴霧口で原料油を導入し、多段急冷媒体導入手段12で水を導入した場合、この間の領域が反応帯域となる。反応停止帯域とは、急冷水圧入噴霧手段を作動させた点よりも下側(図1では右側)の帯域を指す。
図1において、反応継続兼冷却室11という名称を用いたのは、原料導入時点から前記反応停止用急冷水圧入噴霧手段の作動時点までが反応帯域、それ以降が反応停止帯域であり、この急冷水導入位置が要求されるカーボンブラック性能により移動することがあるためである。
【0054】
[ゴム配合用カーボンブラックの性状]
本発明においては、前記のようにして得られたゴム配合用カーボンブラックは、下記の関係式(1)及び(2)
10<X<40 ・・・(1)
90<Z<100 ・・・(2)
を満たすことが必要である。
前記Xは、原料導入位置から、第1番目の急冷媒体導入手段(図1において、12−X)より急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)を示し、前記Zは、最後の急冷媒体導入手段(図1において、12−Z)により急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)を示す。すなわち、第1番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックは、トルエン着色透過度が10%より高く、40%未満であって、最後の急冷媒体導入後のカーボンブラック(ゴム配合用カーボンブラック)は、トルエン着色透過度が90%より高く、100%未満の範囲にあることが必要である。当該ゴム配合用カーボンブラックのトルエン着色透過度が90%以下であれば、該カーボンブラックは、その中に含有される重質タール成分が多く存在し、ゴムに対して十分な補強性を与えることができず、耐摩耗性が低下する。
また、前記Xが40以上であると、カーボンブラックの補強性が下がり、耐摩耗性が低下する。
【0055】
このような性状を有するゴム配合用カーボンブラックは、下記のように反応温度及び滞留時間を制御することにより、得ることができる。
すなわち、反応帯域内に原料が噴霧導入されてから、第1番目の急冷媒体が導入されるまでの帯域における滞留時間をt1(秒)、この帯域での平均反応温度をT1(℃)とし、第1番目の急冷媒体が導入されてから、第2番目の急冷媒体導入手段(図1において、12−Y)により急冷媒体が導入されるまでの帯域における滞留時間をt2(秒)、この帯域での平均反応温度をT2(℃)とし、更に、第2番目の急冷媒体が導入されてから、最後の急冷媒体が導入されるまでの帯域における滞留時間(即ち、反応停止帯域通過までの帯域における滞留時間)をt3(秒)、この帯域内での平均反応温度をT3(℃)とした場合、下記の関係式(3)、(4)及び(5)
2.00≦α1≦5.00 ・・・(3)
5.00≦α2≦9.00 ・・・(4)
−2.5×(α1+α2)+85.0≦β≦90.0 ・・・(5)
(ただし、α1=t1×T1、α2=t2×T2、β=t3×T3である。)
を満たすように制御することにより、当該ゴム配合用カーボンブラックを得ることができる。
【0056】
カーボンブラック製造炉1は、炉内の温度をモニターするため、任意の数箇所に熱電対を炉内に挿入できる構造を備える。平均反応温度T1、T2、T3を算出するために、各工程(各帯域)で、少なくとも2箇所、望ましくは3〜4箇所の温度を測定することが好ましい。
更に、滞留時間t1、t2、t3の算出は、公知の熱力学的計算方法によって導入反応ガス流体の体積を算出し、次式により算出するものとする。尚、原料油の分解反応および急冷媒体による体積増加は無視するものとする。
滞留時間t1(sec)=
{原料炭化水素導入位置から第1番目の急冷媒体導入位置までの反応炉内通過容積(m3)/ 反応ガス流体の体積(m3/sec)}
滞留時間t2(sec)=
{第1番目の急冷媒体導入位置から第2番目の急冷媒体が導入されるまでの反応炉内通過容積(m3)/ 反応ガス流体の体積(m3/sec)}
滞留時間t3(sec)=
第2番目の急冷媒体導入位置から最後の急冷媒体が導入されるまでの反応炉内通過容積(m3)/ 反応ガス流体の体積(m3/sec)
【0057】
更に、当該ゴム配合用カーボンブラックとして、下記の関係式(6)、(7)及び(8)
20<X<40 ・・・(6)
50<Y<60 ・・・(7)
90<Z<95 ・・・(8)
(式中、Yは第2番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度を示し、X及びZは前記と同じである。)
を満たすように制御して得られたものを好適に用いることができる。
なお、上記トルエン着色透過度は、JIS K 6218:1997の第8項B法に記載の方法により測定され、純粋なトルエンとの百分率で表示される。
【0058】
当該ゴム配合用カーボンブラックは、水素放出率が、0.3質量%を超えることが好ましい。この水素放出率が0.3質量%を超えると、本発明のゴム組成物は耐摩耗性が高く、かつ発熱性も小さくなる。該水素放出率は0.35質量%以上が好ましい。その上限は、通常0.4質量%程度である。
なお、上記水素放出率は、(1)カーボンブラック試料を105℃の恒温乾燥機中で1時間乾燥し、デシケータ中で室温まで冷却し、(2)スズ製のチューブ状サンプル容器に約10mgを精秤し、圧着・密栓し、(3)水素分析装置(堀場製作所EMGA621W)でアルゴン気流下、2000℃で15分間加熱したときの水素ガス発生量を測定し、その質量分率で表示される。
【0059】
更に、当該ゴム配合用カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸収量(DBP)が95〜220mL/100g、圧縮DBP吸収量(24M4DBP)が90〜200mL/100g、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)が70〜200m2/gであるものが好ましい。
なお、ジブチルフタレート吸収量(DBP)及び圧縮DBP吸収量(24M4DBP)は、ASTM D2414−88(JIS K6217−4:2001)に記載の方法により測定され、カーボンブラック100g当たりに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の体積mLで表示される。また、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)は、JIS K6217−3:2001に記載の方法により測定され、カーボンブラック単位質量当たりの比表面積m2/gで表示される。
【0060】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、(A)変性天然ゴムを含むゴム成分100質量部に対して、(B)前述したゴム配合用カーボンブラックを、10〜250質量部の割合で含むことを要する。
前記カーボンブラックの含有量が10質量部未満では、ゴム組成物の補強効果が十分に発揮されず、所望の耐摩耗性が得られない。一方250質量部を超えると、低転がり抵抗などの所望の物性を有するゴム組成物が得られない。前記(B)成分のカーボンブラックの含有量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、20〜150質量部であることが好ましく、30〜120質量部であることがより好ましい。
前記(B)成分のゴム配合用カーボンブラックは、前述の方法で製造され、かつ前述した物性を有するものが用いられるが、該カーボンブラックの形態としては、例えばFEF、SRF、HAF、ISAF、ISAF−LS、SAF−LSなどが挙げられる。
【0061】
(その他のゴム成分)
ゴム成分中に含まれるその他ゴム成分としては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、合成イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴムなど共役ジエン系ゴムの中から選ばれる少なくとも一種を挙げることができ、ゴム成分全てが共役ジエン系ゴムからなることが好ましい。
本発明においては、ゴム成分中に、少なくとも一方の分子末端を、カーボンブラックと相互作用を有する官能基を含む化合物からなる変性剤で変性してなる前述の(A)変性天然ゴムを含むことが必要である。これによって、得られるゴム組成物の耐摩耗性と低転がり抵抗性がさらに改善される。
【0062】
(ゴム組成物の調製)
本発明のゴム組成物には、前記(A)変性天然を含むゴム成分及び(B)ゴム配合用カーボンブラック以外に、その他成分、例えば無機充填材、加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。また、上記ゴム組成物は、(A)変性天然を含むゴム成分と、(B)配合ゴム用カーボンブラックと、適宜選択した各種配合剤とを配合して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー、インテンシブミキサー等を用いて混練り後、熱入れ、押出等することにより調製することができる。
【0063】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに適用したことを特徴とする。ここで、本発明のタイヤにおいては、本発明のゴム組成物をトレッドに用いることが特に好ましく、上記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、耐摩耗性に優れると共に、転がり抵抗が低く低燃費性にも優れる。なお、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスが挙げられる。本発明のゴム組成物をトレッドに用いる場合は、例えばトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、タイヤの耐摩耗性及び転がり抵抗は、以下に示す方法に従って評価した。
(1)耐摩耗性
ランボーン型摩耗試験機を用い、室内におけるスリップ率60%での摩耗量を測定し、第4表では比較例1を,第5表では比較例3を100として指数表示した。指数が大きい程、耐摩耗性は良好である。
(2)転がり抵抗
粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を使用し、温度50℃、歪5%、周波数Hzでtanδ(50℃)を測定し、第4表では比較例1を,第5表では比較例3を100として指数表示した。指数が小さい程、低発熱性である。
また、カーボンブラックのトルエン着色透過度、水素放出率、DBP吸収量、24M4DBP吸収量及びCTAB吸着比表面積は、明細書本文記載の方法に従って測定した。
【0065】
製造実施例1
(酸化天然ゴム製造工程)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拝機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、1000gの水を加えた。その後、過硫酸カリウム9.0g、プロピオンアルデヒド3.0gを添加し、60℃、30時間撹拝しながら反応させることで酸化天然ゴムラテックスを得た。
次に、ギ酸を加えることでpHを4.7に調整し凝固させた。この固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーを通してクラム化した。
【0066】
(変性工程)
得られた凝固物の乾燥ゴム含有量を求めた後、乾燥ゴム量換算で600gの凝固物とイソニコチノヒドラジド3.0gのエマルジョン溶液を混練機(プレブレーカー)内で室温にて30rpmで2分間練りこみ、均一に分散させ、乾燥した変性天然ゴムAを得た。
また、該変性天然ゴムAを石油エーテルで抽出し、さらにアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することにより、未反応のヒドラジド化合物の分離を行ったところ、抽出物の分析から未反応のヒドラジド化合物は検出されず、よって該変性天然ゴムAにおけるイソニコチノヒドラジドの付加量は天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.51質量%であった。また、ゲルバーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RD)で単分散ポリスチレンを基準として、変性天然ゴムAのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。測定結果を第1表に示す。
【0067】
製造実施例2
イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、3−(ジメチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド3.0gを加え、それ以外は上記製造実施例1と同様にして変性天然ゴムBを得た。変性天然ゴムBにおける極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析し、重量平均分子量(Mw)を求めた、測定結果を第1表に示す。
【0068】
製造実施例3
イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、4−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド3.9gを加え、それ以外は上記製造実施例1と同様にして変性天然ゴムCを得た。変性天然ゴムCにおける極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析し、重量平均分子量(Mw)を求めた、測定結果を第1表に示す。
【0069】
製造比較例1
フィールドラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、フィールドラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して天然ゴム0を得た。製造実施例1と同様にして、天然ゴム0の重量平均分子量(Mw)を求めた。結果を第1表に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
製造実施例4 カーボンブラックaの製造
図1に示すカーボンブラック製造炉を用いて、カーボンブラックaを製造した。ただし、図1において多段急冷媒体導入手段12として、第1番目の急冷媒体導入手段12−X、第2番目の急冷媒体導入手段12−Y及び最後の急冷媒体導入手段12−Zからなる3段急冷媒体導入手段を用いた。
また、製造炉内の温度をモニターするため、任意の数ヶ所に熱電対を炉内に挿入できる構造を備える上記製造炉を用いた。カーボンブラック製造炉において、燃料には比重0.8622(15℃/4℃)のA重油を用い、原料油としては第2表に示した性状の重質油を使用した。また、カーボンブラック製造炉の操作条件及びカーボンブラックの特性を第3表に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
製造実施例5〜6 カーボンブラックb及びcの製造
第3表に示す操作条件を採用した以外は、製造実施例4と同様にしてカーボンブラックb〜cを製造した。各カーボンブラックの特性を第3表に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
実施例1〜6及び比較例1〜2
実施例1〜6は、第1表に示す各変性天然ゴムA〜Cを用い、カーボンブラックについては、第3表に示すカーボンブラックa及びbを用いた。両者の組み合わせは第4表の記載ン従い、バンバリーミキサーにより、第6表に示すゴム組成物1の配合処方の6種のゴム組成物を調製した。
比較例1〜2は、第1表に示す各変性天然ゴムOを用い、カーボンブラックについては、第3表に示すカーボンブラックb及びcを用いた。両者の組み合わせは、第4表の記載に従い、バンバリーミキサーにより、第6表に示すゴム組成物1の配合処方の2種のゴム組成物を調整した。
【0076】
実施例7〜12及び比較例3〜4
実施例7〜12は、第1表に示す各変性天然ゴムA〜Cを用い、カーボンブラックについては、第3表に示すカーボンブラックa及びbを用いた。両者の組み合わせは第5表の記載に従い、バンバリーミキサーにより、第6表に示すゴム組成物2の配合処方の6種のゴム組成物を調製した。
比較例3〜4は、第1表に示す各変性天然ゴムOを用い、カーボンブラックについては、第3表に示すカーボンブラックb及びcを用いた。両者の組み合わせは、第5表の記載に従い、バンバリーミキサーにより、第6表に示すゴム組成物2の配合処方の2種のゴム組成物を調整した。
次に、これら16種のゴム組成物を常法により加硫することで評価試験用の試料を作成し、転がり抵抗及び耐摩耗性を評価した。結果を第4表及び第5表に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

[注]
1)天然ゴム:製造実施例1〜3、及び製造比較例1で得た天然ゴム
2)ポリブタジエンゴム:宇部興産(株)製、商品名「UBEPOL−BR150L」(ビニル結合含有量:1%、重量平均分子量(Mw):520,000)
3)カーボンブラック:製造実施例4〜6で得たカーボンブラック
4)老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」
5)加硫促進剤CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ」
【0080】
第4表及び第5表から、本発明で規定するカーボンブラックの製造条件及び物理化学特性を満たすカーボンブラック及び変性天然ゴムを用いた実施例は、比較例に対して、転がり抵抗及び耐摩耗性の両性能共著しく向上し、高度にバランスしていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のゴム組成物は、充填材として特定のプロセスにより得られた、特定の性状を有するカーボンブラックと、ゴム成分として特定の構造を有する変性天然ゴムを所定の割合で含有することにより、耐摩耗性と低発熱性(低転がり抵抗)が高度にバランスしたタイヤを与えることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 カーボンブラック製造炉
10 反応室
11 反応継続兼冷却室
12 多段急冷媒体導入手段
12−X 第1番目の急冷媒体導入手段
12−Y 第2番目の急冷媒体導入手段
12−Z 最後の急冷媒体導入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガス生成帯域と、反応帯域と、反応停止帯域とが連設されてなる反応装置を用い、前記燃焼ガス生成帯域内で高温燃焼ガスを生成させ、次いで前記反応帯域に原料を噴霧導入してカーボンブラックを含む反応ガス流を形成させたのち、反応停止帯域にて、多段急冷媒体導入手段により、該反応ガス流を急冷して、反応を終結させることにより得られたゴム配合用カーボンブラックを含み、かつゴム成分として、天然ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を天然ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性天然ゴムを含むゴム組成物であって、
(1)前記ゴム配合用カーボンブラックが、下記の関係式(1)及び(2)
10<X<40 ・・・(1)
90<Z<100 ・・・(2)
(ただし、Xは原料導入位置から、第1番目の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)を示し、Zは、最後の急冷媒体導入後のカーボンブラックのトルエン着色透過度(%)を示す。)を満たすこと、及び
(2)(A)変性天然ゴムを含むゴム成分100質量部に対して、前記(B)ゴム配合用カーボンブラックを、10〜250質量部の割合で含むこと、を特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基及びスズ含有基からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
(A)変性天然ゴムのゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記天然ゴムラテックスの酸化を、天然ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、酸化することによって行う請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記酸化を、空気酸化又はオゾン酸化によって行う請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行う請求項6記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及び/又はケトン類である請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記ラジカル発生剤が過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれる請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項10】
ゴム成分100質量部中に(A)変性天然ゴムを10質量%以上の割合で含む請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物を用いてなるタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−213912(P2011−213912A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84393(P2010−84393)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】