説明

サイクロン式オイルセパレータ

【課題】 本体部の軸方向長さを確保しつつ本体部の軸が鉛直方向に延びている場合に比べてオイルセパレータの高さ方向の寸法を小さくでき、単純にオイルセパレータを斜めにする場合に比べてオイルセパレータの性能悪化を抑制できるサイクロン式オイルセパレータの提供。
【解決手段】本体部20と、オイル混合ガスを本体部20内に導入するガス導入部30と、オイル混合ガスからオイルが分離されたガスを本体部20外に排出するガス排出部40と、オイル混合ガスから分離されたオイルを本体部20外に排出するオイル排出部50と、を有し、本体部20の軸Pが鉛直方向から傾いており、本体部20の上壁21の下面21aが水平面とされており、ガス導入部30が水平に延びている、サイクロン式オイルセパレータ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン式(遠心分離式)オイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、例えば自動車のエンジン等においては、その稼動時において、ピストンリングとシリンダ壁との隙間から漏出するブローバイガスを大気中に排出することは大気汚染の原因になるとして、いわゆるPCV(ポジティブクランクケースベンチレーション)システムにより吸気系に戻し再燃焼させることが行われている。
ところで、ブローバイガス中にはエンジンオイル等の潤滑油が微粒化されたオイルミストが含まれている。そのため、ブローバイガス中のオイルミストを分離回収する手段として、シリンダヘッドカバーの内側やクランクケースと吸気管路とを連結する連結流路の途中等にオイルミスト捕集装置(オイルセパレータ)が設けられている。そのようなオイルセパレータとしては、いわゆるサイクロン式と呼ばれる方式のオイルセパレータが普及している。
【0003】
従来のサイクロン式オイルセパレータは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1開示のオイルセパレータでは、各本体部(サイクロン部、遠心分離部)の軸が鉛直方向に延びている。
【0004】
しかし、従来のサイクロン式オイルセパレータには、次の問題点がある。
本体部の軸が鉛直方向に延びているため、本体部の高さ方向の寸法が比較的大きく、オイルセパレータの車両への搭載制約で問題が生じやすい。
本体部の軸が鉛直方向に延びたままで本体部の軸方向長さを小さくすることも考えられるが、ガス排出部からガスと共に本体部外に持ち去されてしまうオイルの量が増えてしまい、オイルセパレータの性能を確保することが困難になる。
また、図3に示すように、本体部2の軸方向長さを確保しつつオイルセパレータ1を単純に斜めにして車両に搭載することも考えられるが、本体部2の上壁2aの下面とガス導入部3も水平方向から傾いてしまい、ガス導入部3から本体部2内に導入されたオイル混合ガスの旋回流の周方向の一部が下方から上方に向けた流れとなってしまう。そのため、本体部2内の旋回流が重力の影響を受けて乱れやすく、オイルセパレータの性能が悪くなるおそれがある。
【特許文献1】特表2002−540338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、本体部の軸方向長さを確保しつつ本体部の軸が鉛直方向に延びている場合に比べてオイルセパレータの高さ方向の寸法を小さくでき、単純にオイルセパレータを斜めにする場合に比べてオイルセパレータの性能悪化を抑制できるサイクロン式オイルセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 本体部と、
前記本体部の側壁に設けられオイル混合ガスを本体部内に導入するガス導入部と、
前記本体部の上壁に設けられ前記オイル混合ガスからオイルが分離されたガスを前記本体部外に排出するガス排出部と、
前記本体部の下端部に設けられ前記オイル混合ガスから分離されたオイルを前記本体部外に排出するオイル排出部と、
を有し、前記本体部内に導入された前記オイル混合ガスを前記本体部内で旋回運動させ該旋回運動による遠心力によって前記オイル混合ガスからオイルを分離させるサイクロン式オイルセパレータであって、
前記本体部の軸が鉛直方向から傾いており、前記本体部の上壁の下面が水平面とされており、前記ガス導入部が水平に延びている、サイクロン式オイルセパレータ。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)のサイクロン式オイルセパレータによれば、本体部の軸が鉛直方向から傾いているため、本体部の軸が鉛直方向に延びている場合に比べてオイルセパレータの上下方向の寸法を小さくすることができる。
また、本体部の上壁の下面が水平面とされておりガス導入部が水平に延びているため、本体部の軸が鉛直方向から傾いている場合であっても、本体部内の旋回流の周方向の一部が下方から上方に向いてしまうことを抑制できる。そのため、単純にオイルセパレータを斜めにする場合に比べて、本体部内の旋回流が重力の影響を受けて乱れることを抑制でき、オイルセパレータの性能悪化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータを、図1、図2を参照して、説明する。
本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータ(以下、単にオイルセパレータともいう)10は、たとえば、図示略の自動車エンジンのクランクケース内に発生するオイル混合ガス(オイルミスト混合ガス、ブローバイガス)からオイル(オイルミスト)を分離させて、分離させたオイルをクランクケースに戻すオイルセパレータである。ただし、オイルセパレータ10は、自動車エンジン以外の内燃機関の内部で発生するオイル混合ガス中のオイルを分離するオイルセパレータであってもよい。
【0009】
オイルセパレータ10は、図1に示すように、本体部20と、ガス導入部30と、ガス排出部40と、オイル排出部50と、を有する。
【0010】
本体部20は、上壁21と側壁22とを備える容器であって、内部に空間(サイクロン室、遠心分離室)を備える。
上壁21の下面21aは、水平面(略水平面を含む)とされている。
側壁22は、下方にいくにつれて径が縮小される円錐形状となっている。ただし、側壁22は、円錐形状の上端に下端で連なる図示略の円筒形状の円筒部を備えていてもよい。側壁22の下端は、閉塞しておらず、下方に開放されている。
本体部20の軸Pは、鉛直方向から90°未満で傾いている。軸Pの鉛直方向からの傾斜角度は、傾けることによるオイルセパレータ10の性能低下を抑制するために、45°以内、望ましくは30°以内、さらに望ましくは15°以内、さらに望ましくは10°以内とされている。
【0011】
ガス導入部30は、オイル混合ガスを本体部20内に導入する部分である。ガス導入部30は、管状であり、側壁22の上端部またはその近傍に設けられている。ガス導入部30は、図2に示すように、側壁22に、側壁22の内周面の接線方向外方に向かって延びて設けられている。ガス導入部30が側壁22から延びる(突出する)方向は、水平(または略水平を含む)とされている。
【0012】
ガス排出部40は、オイル混合ガスからオイルが分離されたガスを本体部20外に排出する部分である。ガス排出部40は、図1に示すように、管状であり、上壁21の中央部またはその近傍に設けられている。ガス排出部40の下端は、本体部20内に入り込んでおり、ガス導入部30の下端またはその近傍と同じ上下方向高さにある。ガス排出部40の上端は、上壁21の上面と同じ上下方向高さにあってもよく、上壁21よりも上方に位置していてもよい。
ガス排出部40は、本体部20内でオイルが遠心分離されたガスが比較的スムーズに本体部20外に排出されるように、本体部20の軸Pと平行な方向に直線状に延びて設けられている。ガス排出部40の上端及び下端は水平(または略水平を含む)とされている。
【0013】
オイル排出部50は、オイル混合ガスから分離されたオイルを本体部20外に排出する部分である。オイル排出部50は、本体部20の下端部に設けられている。オイル排出部50は、側壁22の下端の開口からなる。オイル排出部50は水平(または略水平を含む)とされている。
【0014】
ここで、本発明実施例の作用を説明する。
図示略のクランクケース内に発生したオイル混合ガスは、ガス導入部30から本体部20内に流入し、本体部20内で旋回運動をする。オイル混合ガスが旋回運動をするため、旋回運動による遠心力によりオイル混合ガス中のオイル(ミスト)が本体部20の側壁内面22aに当たり凝集されて液滴となり、オイル混合ガスからオイルが分離される。
オイル混合ガスからオイルが分離されたガスは、ガス排出部40から排出され図示略の内燃機関の吸気系に吸引される。
オイル混合ガスから分離されたオイルは、オイル排出部50から本体部20外に排出され図示略のクランクケース内に戻る。
【0015】
本発明実施例では、本体部20の軸Pが鉛直方向から傾いているため、本体部の軸方向長さを確保しつつ本体部の軸が鉛直方向に延びている場合に比べて、本体部20の軸方向長さLを確保しつつオイルセパレータ10の高さ方向の寸法を小さくできる。
また、本体部20の上壁21の下面21aが水平面とされておりガス導入部30が水平に延びているため、本体部20の軸Pが鉛直方向から傾いている場合であっても、本体部20内の旋回流の周方向の一部が下方から上方に向いてしまうことを抑制できる。そのため、単純にオイルセパレータを斜めにする場合に比べて、本体部20内の旋回流が重力の影響を受けて乱れることを抑制でき、オイルセパレータ10の性能悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータの側面図である。
【図2】本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータのガス導入部部位での断面図である。
【図3】従来のサイクロン式オイルセパレータの、本体部の軸方向長さを確保しつつオイルセパレータを単純に斜めにした場合の概略側面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 サイクロン式オイルセパレータ
20 本体部
21 上壁
21a 上壁の下面
22 側壁
22a 側壁の内面
30 ガス導入部
40 ガス排出部
50 オイル排出部
P 本体部の軸
L 本体部の軸方向長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部の側壁に設けられオイル混合ガスを本体部内に導入するガス導入部と、
前記本体部の上壁に設けられ前記オイル混合ガスからオイルが分離されたガスを前記本体部外に排出するガス排出部と、
前記本体部の下端部に設けられ前記オイル混合ガスから分離されたオイルを前記本体部外に排出するオイル排出部と、
を有し、前記本体部内に導入された前記オイル混合ガスを前記本体部内で旋回運動させ該旋回運動による遠心力によって前記オイル混合ガスからオイルを分離させるサイクロン式オイルセパレータであって、
前記本体部の軸が鉛直方向から傾いており、前記本体部の上壁の下面が水平面とされており、前記ガス導入部が水平に延びている、サイクロン式オイルセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−99607(P2010−99607A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274167(P2008−274167)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】