説明

サイクロ減速機

【課題】焼結加工や機械加工によって製造するに比べ安価に内側歯車を製造することのできるサイクロ減速機を提供することにある。
【解決手段】第1内側歯車80および第2内側歯車86は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものであるため、従来内側歯車を焼結加工や機械加工によって製造する際に必要とされた設備や工数を省くことができるので、焼結加工や機械加工によって製造するに比べ安価に内側歯車を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロ減速機に関し、特にサイクロ減速機の製造コストを安価にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイクロ減速機は、たとえば特許文献1に示すように、(a) 第1軸心回りに回転するとともに、その第1軸心から偏心した第2軸心を中心とする外周面が形成された偏心部を有する入力軸と、(b) その第2軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部を備え、その入力軸の偏心部に相対回転可能に支持される内側歯車と、(c) その第1軸心と同軸に位置固定に設けられその内側歯車の外周歯と噛み合う内周歯を有する環状の外側歯車と、(d) その内側歯車の突部が遊嵌される穴部を備えて前記第1軸心回りに回転する出力軸とを備え、(e) 前記入力軸の回転を減速して前記出力軸から出力するものである。
【0003】
上記のようなサイクロ減速機おいて、上記内側歯車は、たとえば特許文献1の図9で示すように、入力軸の偏心部に相対回転可能に支持されるように厚み方向に突き出たボス部や上記突部(内ピン144)を備えており、その内側歯車の形状を成形するために、通常内側歯車は焼結金属加工や機械加工によって製造されるものである。
【特許文献1】特開2006−283916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように上記内側歯車を焼結金属加工によって製造する場合には、金型内に金属粉を充填しプレス加工によって成形した後に、強度を付与するためにその成形後の金属粉を焼結するための熱処理工程が必要となるため、そのための設備や工数がかかり、上記サイクロ減速機の製造コストを安価にすることが困難であった。また、機械加工によって製造する場合でも、旋盤や歯切り盤などの設備や工数を必要とするので、同様にサイクロ減速機の製造コストを安価にすることが困難であった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、焼結加工や機械加工によって製造するに比べ安価に内側歯車を製造することのできるサイクロ減速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 第1軸心回りに回転するとともに、その第1軸心から偏心した第2軸心を中心とする外周面が形成された偏心部を有する入力軸と、(b) その第2軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部と外周歯とを備え、その入力軸の偏心部に相対回転可能に支持される内側歯車と、(c) その第1軸心と同軸に位置固定に設けられその内側歯車の外周歯と噛み合う内周歯を有する環状の外側歯車と、(d) 前記内側歯車の突部が遊嵌される穴部を備えて前記第1軸心回りに回転する出力軸とを含み、(e) 前記入力軸の回転を減速して前記出力軸から出力するサイクロ減速機であって、(f) 前記内側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものである。
【0007】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記外側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものである。
【0008】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、(a) 前記内側歯車の突部が遊嵌される穴部と前記第1軸心から偏心した第3軸心を中心とする外周面が形成された偏心部とを有して前記第1軸心まわりに回転する中間軸と、(b) その第3軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部を備えてその中間軸の偏心部に相対回転可能に支持される第2の内側歯車と、(c) 前記第1軸心と同軸に位置固定に設けられその第2の内側歯車の外周歯を噛み合う内周歯を有する環状の第2の外側歯車とを更に含み、(d) 前記出力軸の穴部には、前記第2の内側歯車の突部が遊嵌されており、(e) 前記第2の内側歯車および前記第2の外側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されている。
【0009】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、(a) 前記入力軸は電動機により回転駆動されるものであり、(b) 前記出力軸は、ドラムブレーキの一対のブレーキシューの一端部間に配設されたカム部材に相対回転不能に連結されるものであり、(c) 前記電動機を駆動することにより前記サイクロ減速機を介してカム部材が回動するとともに前記一対のブレーキシューの一端部間が離間し、ドラムブレーキが制動するものである。
【0010】
また、請求項5に係る発明の要旨とするところは、請求項4に係る発明において、(a) 前記カム部材は、前記ドラムブレーキのバッキングプレートを貫通するように延長した軸部を有し、(b) 前記軸部の先端部は、前記出力軸と相対回転不能に連結するものであって、(c) 前記バッキングプレートには、前記カム部材の軸部をその軸心まわり回動可能に嵌め入れるために一端に開口する貫通穴と、前記サイクロ減速機を収容するためにその貫通穴に続いてその貫通穴よりも大径に形成されて他端に開口する収容穴とを有するアンカー部材が固設されている。
【0011】
また、請求項6に係る発明の要旨とするところは、請求項5に係る発明において、(a) 前記入力軸と前記カム部材の軸部との間には、それらの軸心回りに回動可能な円柱形状または円筒形状の中間部材が配設されており、(b) 前記中間部材と前記入力軸および前記第2の内側歯車との間には、それぞれ軸受が配設されている。
【0012】
また、請求項7に係る発明の要旨とするところは、請求項5または6に係る発明において、前記アンカー部材の収容穴には、前記外側歯車および第2の外側歯車が嵌め入れられ、その収容穴の開口縁部が内側へ塑性変形されることにより、その外側歯車の側面を押圧するように前記外側歯車および第2の外側歯車が前記アンカー部材にかしめ着けられているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明のサイクロ減速機によれば、(f) 前記内側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものであるため、従来内側歯車を焼結加工や機械加工によって製造する際に必要とされた設備や工数を省くことができるので、焼結加工や機械加工によって製造するに比べ安価にサイクロ減速機を製造することができる。
【0014】
請求項2に係る発明のサイクロ減速機によれば、前記外側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものであるため、前記サイクロ減速機の歯車である前記内側歯車および前記外側歯車を平板状の金属部材から成形することができ、一層安価にサイクロ減速機を製造することができる。また、外側歯車の厚み方向の距離が従来のサイクロ減速機の内側歯車および外側歯車よりも短くなので、前記サイクロ減速機を好適に小型化することができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明のサイクロ減速機によれば、(a) 前記内側歯車の突部が遊嵌される穴部と前記第1軸心から偏心した第3軸心を中心とする外周面が形成された偏心部とを有して前記第1軸心まわりに回転する中間軸と、(b) その第3軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部を備えてその中間軸の偏心部に相対回転可能に支持される第2の内側歯車と、(c) 前記第1軸心と同軸に位置固定に設けられその第2の内側歯車の外周歯を噛み合う内周歯を有する環状の第2の外側歯車とを更に含み、(d) 前記出力軸の穴部には、前記第2の内側歯車の突部が遊嵌されており、(e) 前記第2の内側歯車および前記第2の外側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されているため、2段歯車のサイクロ減速機の歯車を平板状の金属部材から製造することができ、それら厚み方向の距離が従来の2段歯車のサイクロ減速機の歯車よりも短くなるので、2段歯車のサイクロ減速機を一層小型化することができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明のサイクロ減速機によれば、(a) 前記入力軸は電動機により回転駆動するものであり、(b) 前記出力軸は、ドラムブレーキの一対のブレーキシューの一端部間に配設されたカム部材に相対回転不能に連結されるものであり、(c) 前記電動機を駆動することにより前記サイクロ減速機を介してカム部材が回動するとともに前記一対のブレーキシューの一端部間が離間し、ドラムブレーキが制動するものであるため、サイクロ減速機を使用するドラムブレーキの製造コストを好適に安価にすることができる。
【0017】
また、請求項5に係る発明のサイクロ減速機によれば、(a) 前記カム部材は、前記ドラムブレーキのバッキングプレートを貫通するように延長した軸部を有し、(b) 前記軸部の先端部は、前記出力軸と相対回転不能に連結するものであって、(c) 前記バッキングプレートには、前記カム部材の軸部をその軸心まわり回動可能に嵌め入れるために一端に開口する貫通穴と、前記サイクロ減速機を収容するためにその貫通穴に続いてその貫通穴よりも大径に形成されて他端に開口する収容穴とを有するアンカー部材が固設されていることから、前記アンカー部材に備えられた前記収容穴および前記貫通穴によって前記カム部材と前記サイクロ減速機を一体的に保持することができるので、前記サイクロ減速機の出力軸から出力された回転を好適に前記カム部材に伝達することができる。
【0018】
また、請求項6に係る発明のサイクロ減速機によれば、(a) 前記入力軸と前記カム部材の軸部との間には、それらの軸心回りに回動可能な円柱形状または円筒形状の中間部材が配設されており、(b) 前記中間部材と前記入力軸および前記第2の内側歯車との間には、それぞれ軸受が配設されているため、2段歯車のサイクロ減速機において前記内側歯車の回転を前記第2の内側歯車に好適に伝達することができる。
【0019】
また、請求項7に係る発明のサイクロ減速機によれば、前記アンカー部材の収容穴には、前記外側歯車および第2の外側歯車が嵌め入れられ、その収容穴の開口縁部が内側へ塑性変形されることにより、その外側歯車の側面を押圧するように前記外側歯車および第2の外側歯車が前記アンカー部材にかしめ着けられているものであるため、例えば、前記外側歯車が平板状の金属部材からプレス加工の打ち抜きによって成形される際、前記外側歯車に反りが発生しても前記収容穴の開口縁部が内側へ塑性変形させられるとともにその外側歯車の側面が押圧されてプレス加工によって発生した反りが好適に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の一実施例のパーキングブレーキ用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10を中央部に備えたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12の図示されていないハット型デイスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型デイスクは、円板状外周部と有底円筒状中央部とを備え、その円板状外周部がディスクブレーキの摩擦板として機能し、その有底円筒状中央部が回転ドラム14として機能するように構成されている。この回転ドラム14は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円は回転ドラム14の内周面16を示している。
【0022】
ドラムブレーキ10は、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材である非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18を備えている。このバッキングプレート18には、前記ハット型デイスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0023】
また、ドラムブレーキ10は、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設される円弧形状の一対のブレーキシュー22、24と、その一対のブレーキシュー22、24の一端部すなわち図1の上端部間においてバッキングプレート18に位置固定に設けられたブレーキシュー拡開機構26と、一対のブレーキシュー22、24の一端部を互いに接近する方向に常時付勢してブレーキシュー拡開機構26に当接させるために、その一端部間に張設されたリターンスプリング28と、一対のブレーキシュー22、24の他端部すなわち図1の下端部間に介在させられてアジャストホイール30aの回転に伴って全長が伸長させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置30と、それら他端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置30を狭持する付勢力を発生させるためにブレーキシュー22、24の他端部間に張設されたコイル状のスプリング32とを備えている。
【0024】
上記スプリング32の中間部は間隙調節装置30のアジャストホイール30aに接触させられており、アジャストホイール30aが振動等によって回転しないようになっている。それら間隙調節装置30およびスプリング32は、一対のブレーキシュー22、24の他端部を相対回転可能に連結するものであるので、間隙調節機能を備えた連結装置として機能している。
【0025】
一対のブレーキシュー22、24は、何れもバッキングプレート18の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ34、36と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された円弧形状のシューリム38、40と、それらシューリム38、40の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング42、44とを備えてそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー22、24は、シューウェブ34、36にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置46、48によってバッキングプレート18側へ押圧されることによりそのバッキングプレート18に対して面方向の相対移動可能に保持されている。上記バッキングプレート18、シューウェブ34,36、シューリム38,40は、いずれも鋼板から打ち抜かれかつ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。
【0026】
図2は、図1のドラムブレーキ10のブレーキシュー拡開機構26を拡大した拡大図であって、ブレーキシュー拡開機構26を説明するものである。また、図3、図4は、図2のIII-III視断面図、図2のIV-IV視断面図である。
【0027】
ブレーキシュー拡開機構26は、図2乃至図4に示すように、たとえば図示されていないパーキングレバーの操作によって駆動され回転軸50aが回転される電動機50と、その電動機50の回転駆動によって入力軸52が回転されるとともに、その入力軸52に入力された回転が減速され且つトルクが高められて出力軸54から出力されるサイクロ減速機56と、一対のブレーキシュー22、24の一端部間に配設され且つ出力軸54の出力によって回動されるとともに一対のブレーキシュー22、24の一端部間が離間されるカム部材58と、そのカム部材58がその軸心回り回動可能に支持され且つドラムブレーキ10の制動時または非制動時に一対のブレーキシュー22、24の一端部が受け止められるアンカー部材60とによって構成されている。また、ブレーキシュー拡開機構26には、電動機50に取り付けられた取付板62と、その取付板62とバッキングプレート18との間に配設されたケース部材64とが備えられており、上記取付板62、ケース部材64、バッキングプレート18、アンカー部材60は、一対のボルト66によって固定されているものである。
【0028】
アンカー部材60は、図3に示すように、バッキングプレート18の一面に密接され且つ前記一対のボルト66によって固定される固定部60aと、その固定部60aのバッキングプレート18側とは反対側の一面に突設されたシュー受け部60bと、そのシュー受け部60bの先端部すなわちアンカー部材60の一端部に開口し、カム部材58をその軸心回りに回動可能に嵌め入れる貫通穴60cと、固定部60aのバッキングプレート18側の一面からバッキングプレート18の所定位置に貫通された貫通穴18aを挿通し裏面に突設され且つその内部に貫通穴60cと連通しサイクロ減速機56を収容するために他端に開口する略円柱形状の収容穴60dを有する取付部60eとを備えている。シュー受け部60bは、先端側が基部側よりも小径の段付き円筒形状に構成されており、一対のブレーキシュー22、24のシューウェブ34、36は、その小径部の外周面すなわちシュー受け面68に当接している。
【0029】
カム部材58は、図3および図4に示すように、アンカー部材60の貫通穴60cに差し通される略T字状のT字ロッド70と、そのT字ロッド70上に配設されるスライドカム72とによって構成されている。
【0030】
T字ロッド70は、全体が略円柱形状の軸部70aと、その一端においてその径方向の一方向に沿って伸びる矩形断面の案内突部70bとを備えてT字状を成している。また、T字ロッド70は、その軸部70aにおいて貫通孔60c内に軸心回りの回転可能に刺し通されており、案内突部70bの下面70cがシュー受け部60bの開口端面60fに当接している。
【0031】
また、T字ロッド70とアンカー部材60の貫通穴60bとの間には、Oリング74が配設されており、バッキングプレート18からのアンカー部材60内への水の侵入を防ぐ。また、T字ロッド70の軸部70aとアンカー部材60の貫通穴60cの内周面との間には、ベアリング76が配設されており、その貫通穴60c内においてカム部材58すなわちT字ロッド70はその軸心回りに滑らかに回動することができる。また、ベアリング76には、ベアリング76のカバーの脱落を防止するCリング78が配設されている。
【0032】
スライドカム72は、図2および図4に示すように、円形の周縁部の一部が互いに平行且つ中心に関して対称的な2直線によって切除された形状を有する板状部72aと、その外周縁のうち円弧形状が残存し且つ中心に関して対称的な2位置において、その板状部72aの一面から垂直方向すなわちバッキングプレート18側に突設された一対の脚部72bとから構成されている。
【0033】
板状部72aは、図3および図4に示すように、その脚部72bとは反対側の一面において、一対の円弧の各々の中点を結ぶ方向における中央部に、他の部分すなわち円弧状の外周縁近傍の部分72cよりも高くされた図2において矩形の段部72dを備えると共に、脚部72b側の一面の中央部に、上記中点を結ぶ方向に垂直な方向に沿って伸びる案内溝72eを備えたものである。この案内溝72eは、上記垂直な方向すなわち案内方向に沿って相対移動可能にT字ロッド70の案内突部70bが嵌め合わされるものである。
【0034】
一対の脚部72bは、図4に示すように、板状部72aの一面から垂直方向すなわちバッキングプレート18側に伸びるカム部72fと、そのカム部72fの先端部から板状部72aの円弧状外周縁に略沿って且つその一面に平行に伸びる一対のガイド部72gとを、それぞれ備えている。また、カム部72fは、図2に示されるように略矩形断面を成し、案内溝72eの長手方向における幅寸法が、非制動時における一対のブレーキシュー22、24のシューウェブ34、36の端部の間隔に略一致する(図2、図4参照)。
【0035】
また、スライドカム72は、その案内溝72eがT字ロッド70の案内突部70bに嵌め入れられ、そのシュー受け部60dの小径部の外周側に一対の脚部72bが位置する状態でアンカー部材60の開口端面60fに載せられている。そのため、スライドカム72は、T字ロッド70に案内溝72eの長手方向に沿って相対移動可能且つその軸部70aの軸心回りの相対回動不能に係合させられている。
【0036】
サイクロ減速機56は、アンカー部材60の収容穴60d内に収容されており、図5に詳しく示すように、電動機50の回転軸50aの軸心と同軸である第1軸心L1回りに回転するとともに、その第1軸心L1から所定の偏心量eだけ偏心した第2軸心L2を中心とする外周面52aが形成された偏心部52bを有する入力軸52と、厚み方向に突設された円柱状の突部80aを備えて外周面52aに嵌合されることにより入力軸52の偏心部52bに相対回転可能に支持される第1内側歯車(内側歯車)80と、第1軸心L1と同軸に位置固定に設けられ第1内側歯車80の外周歯80bと噛み合う内周歯(外ピン)92を有する環状の第1外側歯車(外側歯車)82と、第1内側歯車80の突部80aが遊嵌される円形の穴部84aと第1軸心L1から所定の偏心量eだけ偏心した第3軸心L3を中心とする外周面84bが形成された偏心部84cとを有して第1軸心L1回りに回転する中間軸84と、厚み方向に突設された円柱状の突部86aを備えて外周面84bに嵌合されることにより中間軸84の偏心部84cに相対回転可能に支持される第2内側歯車(第2の内側歯車)86と、第1軸心L1と同軸に位置固定に設けられ第2内側歯車86の外周歯86bと噛み合う内周歯(外ピン98)を有する環状の第2外側歯車(第2の内側歯車)88と、第2内側歯車86の突部86aが遊嵌される円形の穴部54aを備えて第1軸心L1回りに回転する出力軸54とを備えるものである。
【0037】
上記入力軸52には、三角歯状の内周歯を有した連結穴52cが備えられており、電動機50の回転軸50aの先端部の外周面に設けられた三角歯状のセレーション部50bがその連結穴52c内に相対回転不能且つその軸心方向移動可能に嵌め入れられているため、入力軸52および回転軸50aは、第1軸心L1回りに相対回転不能に連結するものである。
【0038】
上記出力軸54には、三角歯状の内周歯を有した連結穴54bが備えられており、T字ロッド70の軸部70aの先端部の外周面に設けられた三角歯状のセレーション部70cがその連結穴54b内に相対回転不能且つその軸心方向移動可能に嵌め入れられているため、出力軸52およびT字ロッド70の軸部70aは、第1軸心L1回りに相対回転不能に連結するものである。
【0039】
第1内側歯車80は、図6に示すように、第1外側歯車82の内周歯(外ピン92)に噛み合わされる例えばエピトロコイド形状の外周歯80bと、第2軸心L2回りの一円周上に位置する複数個(本実施例では8個)出力軸54側に突設された突部80aと、それら突部80aの外周面にその突部80aに対して相対回転可能に嵌合された円筒状のメタルベアリング89とを備えるものであり、入力軸52の偏心部52bの外周面52a上に等間隔で配設された複数本(本実施例では30本)の円柱形状のコロ90を介して、入力軸52に対して相対回転可能に第2軸心L2回りに相対回転可能に偏心部52bにより支持されている。
【0040】
第1外側歯車82は、図6に示すように、第1内側歯車80の外周歯80bと噛み合う第1外側歯車82の内周面に設けられた複数本(本実施例では36本)の円柱形状の外ピン92が一様な間隔で配設されることによって形成された内周歯と、それら外ピン92の外周面にその外ピン92に対して相対回転可能に嵌合された図示されていない円筒状のメタルベアリングとを備えるものであって、アンカー部材60の収容穴60dの取付部60eの内周面60gに位置固定に嵌め着けられている。
【0041】
中間軸84は、第1内側歯車80の突部80aの径より大きい所定の径を有し第1軸心L1回りの一円周上に複数個(本実施例では8個)掘られた穴部84aと、第1軸心L1から偏心した第3軸心L3を中心とする外周面84bが形成された偏心部84cとを備えるものであって、第1軸心L1回りに回転するものである。
【0042】
第2内側歯車86は、図7に示すように、第2外側歯車88の内周歯(外ピン98)に噛み合わされる例えばエピトロコイド形状の外周歯86bと、第3軸心L3回りの一円周上に位置する複数個(本実施例では8個)突設された突部86aと、それら突部86aの外周面にその突部86aに対して相対回転可能に嵌合された円筒状のメタルベアリング94とを備えるものであって、中間軸84の偏心部84cの外周面84b上に等間隔で配設された複数本(本実施例では30本)の円柱形状のコロ96を介して、中間軸84に対して相対回転可能に第3軸心L3回りに相対回転可能に偏心部84cにより支持されている。
【0043】
第2外側歯車88は、図7に示すように、第2内側歯車86の外周歯86bと噛み合う第2外側歯車88の内周面に設けられた複数本(本実施例では36本)の円柱形状の外ピン98が一様な間隔で配設されることによって形成された内周歯と、それら外ピン98の外周面にその外ピン98に対して相対回転可能に嵌合された図示されていない円筒状のメタルベアリングとを備えるものであって、アンカー部材60の取付部60eの収容穴60dの内周面60gに位置固定に嵌め着けられるものである。
【0044】
図5に示すように、第1外側歯車82と第2外側歯車88との間には、リング状のスペーサ104が配設されており、そのスペーサ104によって中間軸84と第1内側歯車80および第2内側歯車86との間には僅かな隙間が形成され、第1内側歯車80の回転を中間軸84を介して第2内側歯車86に好適に伝達することができるようになっている。
【0045】
また、図5に示すように、アンカー部材60は、カム部材58すなわちT字ロッド70の軸部70aをその軸心まわり回動可能に貫通する貫通穴60cと、サイクロ減速機56を取り付ける収容穴60dを備える取付部60eとを有するため、アンカー部材60に備えられた取付部60eの収容穴60dおよび貫通穴60cによってカム部材58とサイクロ減速機56とを一体的に保持することができ、サイクロ減速機56の出力軸54から出力された回転を好適にカム部材58のT字ロッド70に伝達することができる。また、図5に示すように、アンカー部材60の収容穴60dの内周面60gには、第1外側歯車82、スペーサ104、第2外側歯車88を保持する段差状の段付部60iが配設されており、その段付部60iによって第1外側歯車82、スペーサ104、第2外側歯車88は第1軸心L1方向における出力軸54側の移動が制限される。
【0046】
また、図5に示すように、第1外側歯車82、第2外側歯車88、スペーサ104の外周面の一部には、断面半円形状に掘られた溝部82b、88b、104aが備えられ、アンカー部材60の内周面60gの一部には、上記溝82b、88b、104aと略同じ形状の溝60hが備えられている。そのため、それらの溝82b、88b、104a、60h内に円柱状のノックピン106が嵌合されることにより第1外側歯車82、第2外側歯車88、スペーサ104は、アンカー部材60に対して第1軸心L1回りの回転不能に固定されるものである。
【0047】
図6および図7に示すように、入力軸52とカム部材58すなわちT字ロッド70の軸部70aとの間には、それらの軸心すなわち第1軸心L1回りに回動可能な円柱形状または円筒形状の中間部材100が配設されており、中間部材100と入力軸52および中間軸84との間には、それぞれニードルベアリング102が配設されているため、入力軸52および中間軸84が第1軸心L1回りに精度よく回転することができ、第1内側歯車80の回転をその中間軸84を介して第2内側歯車86に好適に伝達することができる。
【0048】
図5乃至図7に示すように、第2軸心L2および第3軸心L3は、第1軸心L1に対して対称であり、第1軸心L1に対する第2軸心L2、第3軸心L3の偏心量eは同じである。また、第1内側歯車80と第2内側歯車86とは、軸心位置が異なるだけで形状は同じであり、第1外側歯車82と第2外側歯車88との形状は同じである。そのため、中間軸84の穴部84aと出力軸54の穴部54aとの直径の大きさは同じであって、その直径の大きさは、たとえば、第1内側歯車80または第2内側歯車86のメタルベアリング89、94の外径に入力軸52または中間軸84の回転おける、第1軸心L1から第1内側歯車80の突部80aまたは第2内側歯車86の突部86aまでの距離の変化量である上記偏心量eの2倍の距離を足したものである。
【0049】
このように構成されたサイクロ減速機56によれば、電動機50の回転軸50aから入力軸52に回転が入力されると、入力軸52が第1軸心L1回りに回転するとともに第1内側歯車80はその入力軸52の偏心部52bを介してその突部80aを中間軸84の穴部84aの内周面に摺動させて第2軸心L2回りに回転してその回転を突部80aを介して中間軸84に伝達する。そして、第1内側歯車80の回転が中間軸84に伝達されると、中間軸84は、第1軸心L1回りに回転するとともに第2内側歯車86は、その中間軸84の偏心部84cを介してその突部86aを出力軸54の穴部54aの内周面に摺動させて第3軸心L3回りに回転してその回転を突部86aを介して出力軸54に伝達する。
【0050】
図8は、第1内側歯車80および第2内側歯車86の斜視図である。第1内側歯車80および第2内側歯車86は、その図8に示すように、綱板等の平板状の金属板をプレス加工による打ち抜きによって外周歯80b、86bおよび円柱形状の貫通穴80c、86cが成形され、その後、図10に示すように、プレス加工による穴抜きを途中で止めた状態にして凸形状を作るためのハーフブランキングによって、その厚み方向に突き出された略円柱形状の突部80a、86aが成形される。つまり、第1内側歯車80および第2内側歯車86は、プレス加工によって一体的に平板状に成形されるものである。上記打ち抜きとハーフブランキングとの順序は逆であってもよい。
【0051】
そのため、従来焼結金属を金型内に充填してプレス加工により成形するとともに、その後熱処理工程により強度が付与させる焼結加工や機械加工によって製造される内側歯車に比べ、第1内側歯車80および第2内側歯車86は、平板状の金属部材をプレス加工だけで製造することができるため、焼結加工や機械加工のように設備や工数を要しないので、焼結加工や機械加工によって製造するに比べ安価に内側歯車を製造することができる。
【0052】
図9は、第1外側歯車82および第2外側歯車88の斜視図であり、第1外側歯車82および第2外側歯車88は、その図9に示すように、平板状の金属板をプレス加工による打ち抜きによって内周歯である外ピン92、98を配設可能な内周面82a、88aおよびロックピン106が嵌合される溝82b、88bを成形するものである。
【0053】
第1内側歯車80、第2内側歯車86および第1外側歯車82、第2外側歯車88は、平板状の金属部材からプレス加工によって平板状に成形されたものであるため、それら厚み方向すなわち第1軸心L1方向の距離が従来のサイクロ減速機の内側歯車および外側歯車よりも短くなので、サイクロ減速機56を好適に小型化することができる。
【0054】
図5に示すように、アンカー部材60の取付部60eにおいて、収容穴60dの開口縁部である側縁部60hは、一点鎖線で示すように、図示しないかしめ装置を用いて第1外側歯車82の側面を軸心方向に押圧するようにその第1外側歯車82側に内側へかしめ変形させられるため、第1外側歯車82および第2外側歯車88が平板状の金属部材からプレス加工による打ち抜きによって成形され、たとえばその第1外側歯車82および第2外側歯車88に反りが発生しても、そのかしめによって第1外側歯車82および第2外側歯車88の両側面はスペーサ104やアンカー部材60の取付部60eを介して押圧されるので、その側縁部60hのかしめ変形部と収容穴60d内の段付部60iとの間で挟圧されることによりプレス加工の打ち抜きによって発生した反りを好適に抑制してそれら外側歯車82、88の精度を向上させることができる。
【0055】
以上のように構成されるブレーキシュー拡開機構26を備えたドラムブレーキ10は、前記パーキングブレーキの制動操作が行われると電動機50の回転軸50aが回転され、サイクロ減速機56を介してT字ロッド70がその軸心回りに回動させられて、図11に示すように、T字ロッド70と共にスライドカム72すなわちカム部材58がR方向に回動させられる。
【0056】
それによって、カム部72fの側面すなわち一対の押圧面108によってブレーキシュー22、24のシューウェブ34、36の一端部がそれぞれドラムブレーキ10の外周側に向かって押圧されるので、それらブレーキシュー22、24は、それぞれ矢印P1、P2方向に回動させられる。すなわち、拡開させられる。このとき、ブレーキシュー22、24は、略対称的に回動することとなる。なお、上記押圧面108は、前記図4と対比すれば明らかなように、板状部72aとガイド部72gとの間に形成された凹所の底面に設けられている。
【0057】
図12は、上記のように拡開させられることにより、ブレーキシュー22、24の一方、図12においてはブレーキシュー24が回転ドラム14の内周面16に押し付けられた拡開中の段階を示している。この状態から更にT字ロッド70をR方向に回動させると、ブレーキシュー22は、未だ回転ドラム14の内周面16に接していないことから外周側に回動させられるが、既に回転ドラム14の内周面16に押し付けられているブレーキシュー24は、回動することができない。
【0058】
そのため、スライドカム72がブレーキシュー22、24から受ける反力は、ブレーキシュー24から作用するものが相対的に大きくなるので、スライドカム72は、そのブレーキシュー24からの大きな反力を押圧面108に受けて、R方向に回動しつつT字ロッド70に対して矢印S方向に移動させられる。前述したように、スライドカム72は、その案内溝72eにおいてT字ロッド70の案内突部70bにその長手方向の相対移動可能に嵌め合わされていることから、R方向の回動量に応じてそのT字ロッド70に対して摺動させられるのである。これにより、ブレーキシュー24が図示の位置に留まったまま、ブレーキシュー22のみが矢印P1方向に回動させられる。
【0059】
図13は、ブレーキシュー22が回転ドラム14の内周面16に押し付けられることによって拡開が終了した段階を示している。この図13において、ブレーキシュー24は図12に示す段階と同位置に留まっているが、スライドカム72が回動させられつつその案内溝72eの長手方向すなわち案内方向に沿ってブレーキシュー22側に移動させられることにより、その押圧面108でブレーキシュー22を外周側に向かって押圧するので、そのブレーキシュー22が、図12に示す段階よりも更に回動させられていることが判る。この状態で回転ドラム14に回転力が伝えられると、ブレーキシュー22、24のいずれか一方の一端部がアンカー部材60のシュー受け面68に当接し、ドラムブレーキ10に制動力が発生する。
【0060】
なお、上記の作動は、一対のブレーキシュー22、24のシュー間隙が相違する場合のものであり、シュー間隙が同一である場合には、スライドカム72の押圧面108がそれら一対のブレーキシュー22,24から同様な大きさの反力を受けたまま、それら一対のブレーキシュー22、24が回転ドラム14の内周面16に同時に押し当てられることとなる。そのため、この場合には、そのT字ロッド70に対するスライドカム72の相対移動は生じない。
【0061】
本実施例のサイクロ減速機56によれば、第1内側歯車80および第2内側歯車86は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものであるため、従来内側歯車を焼結加工や機械加工によって製造する際に必要とされた設備や工数を省くことができるので、焼結加工や機械加工によって製造するに比べ安価にサイクロ減速機56を製造することができる。
【0062】
また、本実施例のサイクロ減速機56によれば、第1外側歯車82および第2外側歯車88は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものであるため、サイクロ減速機56の歯車である内側歯車80、86および外側歯車82、88を平板状の金属部材から成形することができ、一層安価にサイクロ減速機56を製造することができる。また、外側歯車82、88の厚み方向の距離が従来のサイクロ減速機の内側歯車および外側歯車よりも短くなので、サイクロ減速機56を好適に小型化することができる。
【0063】
また、本実施例のサイクロ減速機56によれば、(a) 第1内側歯車80の突部80aが遊嵌される穴部84aと第1軸心L1から偏心した第3軸心L3を中心とする外周面84bが形成された偏心部84cとを有して第1軸心L1まわりに回転する中間軸84と、(b) 第3軸心L3回りの一円周上に厚み方向に突設された突部86aを備えてその中間軸84の偏心部84cに相対回転可能に支持される第2内側歯車86と、(c) 第1軸心L1と同軸に位置固定に設けられその第2内側歯車86の外周歯86bを噛み合う内周歯(外ピン98)を有する環状の第2外側歯車88とを更に含み、(d) 出力軸54の穴部54aには、第2内側歯車86の突部86aが遊嵌されており、(e) 第2内側歯車86および第2外側歯車88は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されているため、2段歯車のサイクロ減速機56の内側歯車80、86および外側歯車82、88を平板状の金属部材から製造することができ、それら厚み方向の距離が従来の2段歯車のサイクロ減速機の内側歯車および外側歯車よりも短くなるので、2段歯車のサイクロ減速機56を一層小型化することができる。
【0064】
また、本実施例のサイクロ減速機56によれば、(a) 入力軸52は電動機50により回転駆動するものであり、(b) 出力軸54は、ドラムブレーキ10の一対のブレーキシュー22、24の一端部間に配設されたカム部材58に相対回転不能に連結されるものであり、(c) 電動機50を駆動することによりサイクロ減速機56を介してカム部材58が回動するとともに一対のブレーキシュー22、24の一端部間が離間し、ドラムブレーキ10が制動するものであるため、サイクロ減速機56を使用するドラムブレーキ10の製造コストを好適に安価にすることができる。
【0065】
また、本実施例のサイクロ減速機56によれば、(a) カム部材58は、ドラムブレーキ10のバッキングプレート18を貫通するように延長した軸部70aを有し、(b) 軸部70aの先端部は、出力軸54と相対回転不能に連結するものであって、(c) バッキングプレート18には、カム部材58の軸部70aをその軸心まわり回動可能に嵌め入れるために一端に開口する貫通穴60cと、サイクロ減速機56を収容するために貫通穴60cに続いてその貫通穴60cよりも大径に形成されて他端に開口する収容穴60dとを有するアンカー部材60が固設されていることから、アンカー部材60に備えられた収容穴60dおよび貫通穴60cによってカム部材58とサイクロ減速機56を一体的に保持することができるので、サイクロ減速機56の出力軸54から出力された回転を好適にカム部材58の軸部70aに伝達することができる。
【0066】
また、本実施例のサイクロ減速機56によれば、(a) 入力軸52とカム部材58の軸部70aとの間には、それらの軸心すなわち第1軸心L1回りに回動可能な円柱形状または円筒形状の中間部材100が配設されており、(b) 中間部材100と入力軸52および第2内側歯車86との間には、それぞれニードルベアリング102が配設されているため、2段歯車のサイクロ減速機56において第1内側歯車80の回転を第2内側歯車86に好適に伝達することができる。
【0067】
また、本実施例のサイクロ減速機56によれば、アンカー部材60の収容穴60dには、前記第1外側歯車82および第2外側歯車88が嵌め入れられ、その収容穴60dの開口縁部である側縁部60hが内側へ塑性変形されることにより、第1外側歯車82および第2外側歯車88の側面を押圧するように第1外側歯車82および第2外側歯車88がアンカー部材60にかしめ着けられているものであるため、例えば、第1外側歯車82および第2外側歯車88が平板状の金属部材からプレス加工の打ち抜きによって成形される際、第1外側歯車82および第2外側歯車88に反りが発生しても取付部60eの側縁部60hが内側へ塑性変形されるとともにその第1外側歯車82および第2外側歯車88の側面が押圧されてプレス加工によって発生した反りが好適に抑制される。
【0068】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0069】
たとえば、本実施例のサイクロ減速機56は、ドラムブレーキ10に適用されていたが他のものに適用されても何等差し支えはない。
【0070】
また、本実施例のサイクロ減速機56は、第1内側歯車80、第2内側歯車86および第1外側歯車82、第2外側歯車88を有する2段歯車のサイクロ減速機56であったがサイクロ減速機56は2段に限定されるものではなく何段であっても良い。
【0071】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のサイクロ減速機が使用されたパーキング用ブレーキ装置として機能するドラムブレーキを示す図である。
【図2】図1の実施例のドラムブレーキのブレーキシュー拡開機構を説明する図である。
【図3】図2におけるIII-III視断面図である。
【図4】図2におけるIV-IV視断面図である。
【図5】図3の実施例のブレーキシュー拡開機構に備えられたサイクロ減速機を説明する図である。
【図6】図5におけるVI-VI視断面図である。
【図7】図6におけるVII-VII視断面図である。
【図8】図5のサイクロ減速機に備えられた第1内側歯車および第2内側歯車を説明する斜視図である。
【図9】図5のサイクロ減速機に備えられた第1外側歯車および第2外側歯車を説明する斜視図である。
【図10】図8におけるX-X視断面図である。
【図11】ブレーキシュー拡開機構によるブレーキシュー拡開開始時を示す図である。
【図12】ブレーキシューの一方が回転ドラム内周面に押し付けられた拡開中の段階を示す図である。
【図13】ブレーキシューが回転ドラムの内周面に押し付けられることによって拡開が終了した段階を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10:ドラムブレーキ
18:バッキングプレート
22,24:一対のブレーキシュー
50:電動機
52:入力軸
52a:外周面
52d:偏心部
54:出力軸
54a:穴部
56:サイクロ減速機
58:カム部材
60:アンカー部材
60c:貫通穴
60d:収容穴
60h:側縁部
70a:軸部
80:内側歯車(第1内側歯車)
80a:突部
80b:外周歯
82:外側歯車(第1外側歯車)
84:中間軸
84a:穴部
84b:外周面
84c:偏心部
86:第2の内側歯車(第2内側歯車)
86a:突部
86b:外周歯
88:第2の外側歯車(第2外側歯車)
100:中間部材
102:軸受(ニードルベアリング)
L1:第1軸心
L2:第2軸心
L3:第3軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸心回りに回転するとともに、該第1軸心から偏心した第2軸心を中心とする外周面が形成された偏心部を有する入力軸と、該第2軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部と外周歯とを備え、該入力軸の偏心部に相対回転可能に支持される内側歯車と、該第1軸心と同軸に位置固定に設けられ該内側歯車の外周歯と噛み合う内周歯を有する環状の外側歯車と、前記内側歯車の突部が遊嵌される穴部を備えて前記第1軸心回りに回転する出力軸とを含み、前記入力軸の回転を減速して前記出力軸から出力するサイクロ減速機であって、
前記内側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものであることを特徴とするサイクロ減速機。
【請求項2】
前記外側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されたものである請求項1のサイクロ減速機。
【請求項3】
前記内側歯車の突部が遊嵌される穴部と前記第1軸心から偏心した第3軸心を中心とする外周面が形成された偏心部とを有して前記第1軸心まわりに回転する中間軸と、
該第3軸心回りの一円周上に厚み方向に突設された突部を備えて該中間軸の偏心部に相対回転可能に支持される第2の内側歯車と、
前記第1軸心と同軸に位置固定に設けられ該第2の内側歯車の外周歯を噛み合う内周歯を有する環状の第2の外側歯車とを更に含み、
前記出力軸の穴部には、前記第2の内側歯車の突部が遊嵌されており、
前記第2の内側歯車および前記第2の外側歯車は、平板状の金属部材からプレス加工によって成形されていることを特徴とする請求項1または2のサイクロ減速機。
【請求項4】
前記入力軸は、電動機により回転駆動されるものであり、
前記出力軸は、ドラムブレーキの一対のブレーキシューの一端部間に配設されたカム部材に相対回転不能に連結されるものであり、
前記電動機を駆動することにより前記サイクロ減速機を介してカム部材が回動するとともに前記一対のブレーキシューの一端部間が離間し、ドラムブレーキが制動するものである請求項1乃至3のいずれか1のサイクロ減速機。
【請求項5】
前記カム部材は、前記ドラムブレーキのバッキングプレートを貫通するように延長した軸部を有し、
前記軸部の先端部は、前記出力軸と相対回転不能に連結するものであって、
前記バッキングプレートには、前記カム部材の軸部をその軸心まわり回動可能に嵌め入れるために一端に開口する貫通穴と、前記サイクロ減速機を収容するために該貫通穴に続いて該貫通穴よりも大径に形成されて他端に開口する収容穴とを有するアンカー部材が固設されていることを特徴とする請求項4のサイクロ減速機。
【請求項6】
前記入力軸と前記カム部材の軸部との間には、それらの軸心回りに回動可能な円柱形状または円筒形状の中間部材が配設されており、
前記中間部材と前記入力軸および前記第2の内側歯車との間には、それぞれ軸受が配設されていることを特徴とする請求項5のサイクロ減速機。
【請求項7】
前記アンカー部材の収容穴には、前記外側歯車および第2の外側歯車が嵌め入れられ、該収容穴の開口縁部が内側へ塑性変形されることにより、該外側歯車の側面を押圧するように前記外側歯車および第2の外側歯車が前記アンカー部材にかしめ着けられているものである請求項5または6のサイクロ減速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−133382(P2009−133382A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309486(P2007−309486)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】