説明

サイドエアバック制御装置

【課題】カーテンエアバック等のサイドエアバックの展開を適切に制御することのできるサイドエアバック制御装置を提供する。
【解決手段】側面衝突時にサイドエアバック4を展開させるエアバックコントローラ3を備えたサイドエアバック制御装置1であって、シート7の下部に設けられ、シート7に乗員が着座したときにシート7に加わる荷重を計測する荷重センサA〜Dと、荷重センサA〜Dからの計測結果に基づいて、乗員が大人であるか子供であるかを判別するとともに、乗員が大人である場合にその乗員が車幅方向外側に偏って着座しているか否かを判別する乗員検知ユニット2とを備え、エアバックコントローラ3は、乗員が車幅方向外側に所定値以上偏って着座していると乗員検知ユニット2が判別したとき、サイドエアバック4の展開を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突時に作動するカーテンエアバック等のサイドエアバックの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートの下部前後左右4箇所に荷重センサを設け、シートに乗員が着座したときに当該シートに加わる荷重を荷重センサで計測し、その計測結果から、その乗員が大人か、又はチャイルドシートに着座した子供かを検知する乗員検知システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−246456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、乗員が大人の場合であるが、乗員がシートに正常な姿勢で着座せず、車幅方向外側に大きく偏って着座したり、さらにはサイドドアに寄りかかった格好で着座したりする場合がある。このような場合に、側面衝突があってカーテンエアバックが作動すると、乗員の間近でカーテンエアバックが展開することになり、カーテンエアバックの効果が薄れるだけでなく、乗員の肩等に展開中のカーテンエアバックが直接ぶつかったりすることがある。
【0004】
本発明の課題は、カーテンエアバック等のサイドエアバックの展開を適切に制御することのできるサイドエアバック制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、側面衝突時にサイドエアバックを展開させる制御手段を備えたサイドエアバック制御装置であって、シートの下部に設けられ、シートに乗員が着座したときに該シートに加わる荷重を計測する荷重センサと、前記荷重センサからの計測結果に基づいて、乗員が大人であるか子供であるかを判別するとともに、乗員が大人である場合にその乗員が車幅方向外側に偏って着座しているか否かを判別する判別手段とを備え、前記制御手段は、乗員が車幅方向外側に所定値以上偏って着座していると前記判別手段が判別したとき、サイドエアバックの展開を禁止することを特徴としている。
【0006】
上記構成によれば、乗員が車幅方向外側に所定値以上偏って着座していると判別されたときは、サイドエアバックの展開が禁止されるので、乗員に展開中のサイドエアバックが直接ぶつかったりすることがなく、サイドエアバックの展開を適切に制御することが可能となる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記判別手段は、前記荷重センサで計測した計測結果のうち、総荷重に対する車幅方向外側の荷重の割合の閾値を、該総荷重によって一定の割合で変化させることにより、子供がチャイルドシートに着座していて該チャイルドシートをシートベルトで締め付けた状態と、大人が着座した状態とを判別することを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記サイドエアバックはカーテンエアバックであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カーテンエアバック等のサイドエアバックの展開を適切に制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例】
【0011】
図1は本発明に係るサイドエアバック制御装置の全体構成図である。また、図2は車両用シート(例えばドライバシート:以下シートという)を示しており、(a)はその平面図、(b)は側面図である。
【0012】
図1に示すように、本発明に係るサイドエアバック制御装置1は、判別手段としての乗員検知ユニット2と、制御手段としてのエアバックコントローラ3と、サイドエアバック(カーテンエアバッグ)4と、乗員状態表示ランプ5と、エアバック系故障表示用ワーニングランプ6と、シート7に設けられた荷重センサA〜Dとを備えている。
【0013】
荷重センサA〜Dの各々は乗員検知ユニット2に電気的に接続され、また、エアバックコントローラ3は、乗員検知ユニット2、サイドエアバック4、乗員状態表示ランプ5、及びエアバック系故障表示用ワーニングランプ6にそれぞれ電気的に接続されている。
【0014】
シート7は、図2に示すように、シートクッション8とシートバック9とを有し、シートクッション8下方の脚部10に荷重センサA〜Dが設けられている。荷重センサAは車幅方向外側の前側脚部に、荷重センサBは車幅方向外側の後側脚部に、荷重センサCは車幅方向内側の前側脚部に、荷重センサDは車幅方向内側の後側脚部にそれぞれ取り付けられている。荷重センサA〜Dは、乗員がシート7に着座したとき、シート7に加わる荷重(実際には、シートクッション8を介して脚部10に加わる荷重)を計測する。
【0015】
次に、上記構成におけるサイドエアバック制御装置1の作用について説明する。
【0016】
まず、図3は総荷重に対する外側荷重割合分布を示した図であり、実験によって求めたものである。図3において、「CRS」はチャイルドシートを用いた場合を示し、また「ATD」はダミーを着座させた場合を、「Live」は実際に人をシートに着座させた場合をそれぞれ示している。また、「yr」は年齢を示しており、例えば「6yr」は6歳のことである。
【0017】
図3においては、太線Lよりも左側の分布は、子供もしくは子供のダミーがチャイルドシート無しでシートに着座、又はチャイルドシートを用いて着座した場合のデータである。また、太線Lよりも右側の分布は、大人もしくは大人のダミーがシートに着座した場合のデータである。そして、太線Lは、子供もしくは子供のダミーが着座した場合と、大人もしくは大人のダミーが着座した場合と分ける閾値を示している。
【0018】
また、図4はサイドエアバック制御装置1の動作手順を示したフローチャートである。乗員がシート7に着座すると、荷重センサA〜Dでの計測結果が乗員検知ユニット2に送られ、乗員検知ユニット2は前記計測結果に基づいてシート7に加わる総荷重Wを計測する。そして、乗員検知ユニット2は総荷重Wが所定の閾値Wth1以上か否かを判断する(ステップS1)。ここで、Wth1は31kg(図3参照)に設定されている。なお、図3において、閾値Wth1の範囲は太線L1の部分である。
【0019】
総荷重WがWth1未満であれば乗員は子供と判断され、この場合はステップS2へ進む。ステップS2は通常のルーチンであり、側面衝突があれば、サイドエアバック4を展開させる。
【0020】
ステップS1において、総荷重WがWth1以上であれば乗員は大人と判断され、この場合は、アウタ側荷重の和の総荷重Wに対する割合Rを計算する(ステップS3)。すなわち、乗員が車幅方向外側に所定値以上偏って着座している場合は、荷重センサA,Bは比較的大きな荷重を計測し、荷重センサC,Dは比較的小さな荷重を計測するので、アウタ側荷重の和を算出することができ、その算出結果と総荷重Wとを比較することにより、割合Rを計算することが可能である。なお、乗員が車幅方向外側に所定値以上偏って着座している場合、その旨が乗員状態表示ランプ5に表示される。
【0021】
そして、アウタ側荷重の割合Rが総荷重Wに応じた閾値Rth1を超えているか否かを判断する(ステップS4)。アウタ側荷重の割合Rが閾値Rth1以下であれば、乗員は車幅方向外側にあまり偏って着座しておらず、この場合はステップS1へ進む。なお、図3において、閾値Rth1の範囲は太線L2の部分である。
【0022】
ステップS4において、アウタ側荷重の割合Rが閾値Rth1を超えていれば、次に、アウタ側荷重の割合Rが一定値Rth2以上の割合か否かを判断する(ステップS5)。ここで、Rth2は78%(図3参照)に設定されている。そして、アウタ側荷重の割合Rが一定値Rth2以下であれば、ステップS2へ進む。なお、図3において、閾値Rth2の範囲は太線L3の部分である。
【0023】
ステップS5において、アウタ側荷重の割合Rが一定値Rth2以上の割合であれば、サイドエアバック不展開と判定し(ステップS6)、側面衝突があっても、サイドエアバック4の展開を禁止、つまりサイドエアバック4を展開させない。
【0024】
なお、図5は、側面衝突があって、サイドエアバック4が正常に展開した様子を示している。
【0025】
本実施例によれば、大人の乗員が車幅方向外側に所定値以上偏って着座しているときは、側面衝突があっても、サイドエアバック4を展開させないようにしたので、乗員の肩等に展開中のカーテンエアバックが直接ぶつかったりすることがなく、サイドエアバック4の展開を適切に制御することができる。
【0026】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。例えば、側面衝突時に、サイドエアバック4を一切展開させないという制御方法ではなく、サイドエアバック4を弱展開させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るサイドエアバック制御装置の全体構成図である。
【図2】車両用シートを示しており、(a)はその平面図、(b)は側面図である。
【図3】乗員がシートに着座したときの、総荷重に対する外側荷重割合分布を示した図である。
【図4】本発明に係るサイドエアバック制御装置の動作手順を示したフローチャートである。
【図5】側面衝突があって、サイドエアバックが正常に展開した様子を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 サイドエアバック制御装置
2 乗員検知ユニット
3 エアバックコントローラ
4 サイドエアバック
7 シート
A〜D 荷重センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面衝突時にサイドエアバックを展開させる制御手段を備えたサイドエアバック制御装置であって、
シートの下部に設けられ、シートに乗員が着座したときに該シートに加わる荷重を計測する荷重センサと、
前記荷重センサからの計測結果に基づいて、乗員が大人であるか子供であるかを判別するとともに、乗員が大人である場合にその乗員が車幅方向外側に偏って着座しているか否かを判別する判別手段とを備え、
前記制御手段は、乗員が車幅方向外側に所定値以上偏って着座していると前記判別手段が判別したとき、サイドエアバックの展開を禁止することを特徴とするサイドエアバック制御装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記荷重センサで計測した計測結果のうち、総荷重に対する車幅方向外側の荷重の割合の閾値を、該総荷重によって一定の割合で変化させることにより、子供がチャイルドシートに着座していて該チャイルドシートをシートベルトで締め付けた状態と、大人が着座した状態とを判別することを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ制御装置。
【請求項3】
前記サイドエアバックはカーテンエアバックであることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドエアバッグ制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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