説明

サンドブラスト用感光性樹脂積層体

【課題】 感度、解像度、密着性に優れ、サンドブラスト用のマスク材として被加工基材に微細なパターンを歩留まりよく加工できる感光性樹脂積層体、及びそれを用いたサンドブラスト表面加工方法を提供する。
【解決手段】 特定のポリウレタンプレポリマーと、アルカリ可溶性高分子と、光重合開始剤と、エチレン性不飽和付加重合性モノマーより成る感光性樹脂組成物、またはそれを支持体上に積層した感光性樹脂積層体を用いて、サンドブラスト表面加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なサンドブラスト用感光性樹脂積層体に関し、更に詳しくはガラス、低融点ガラス、セラミック等の被加工基材、特にプラズマディスプレイパネルの背面板に適用する際に、感度、解像度、密着性に優れ、サンドブラスト用のマスク材として被加工基材に微細なパターンを歩留まりよく加工できる感光性樹脂積層体、及びそれを用いたサンドブラスト表面加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年フォトリソグラフィー技術及びサンドブラスト技術の進歩に伴い、ガラスやセラミックを微細なパターンに加工することが可能になってきた。特に低融点ガラス等のガラス基材をサンドブラストで加工して、格子状やストライプ状、又はワッフル形状に隔壁を形成することが必要なプラズマディスプレイパネルの背面板(以下、単にパネルともいう。)の製造においては、画素ピッチの狭幅化に伴い、最近150μmピッチ以下のパターン形成が要求されるようになってきた。
このような微細な隔壁パターンを歩留り良く製造する為に、支持体となるフィルム上に感光性樹脂層を積層し、更に必要に応じ保護層を積層したサンドブラスト用感光性樹脂積層体が用いられている。
【0003】
サンドブラスト用感光性樹脂積層体を用いて、プラズマディスプレイパネルの背面板の隔壁を形成する方法を説明する。(I)感光性樹脂積層体の保護層を剥がしながら、ガラス基板(以下単純に基板と略記する。)上にホットロールラミネーターを用いて支持体に積層された感光性樹脂層を密着させるラミネート工程、(II)所望の微細パターンを有するフォトマスクを支持体上に密着させた状態で、或いは数十〜数百μm離した状態で、活性光線源を用いて露光を施す露光工程、(III)支持体を剥離した後アルカリ現像液を用いて感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去し、微細なレジストパターンを基板上に形成する現像工程、(IV)形成されたレジストパターン上からブラスト材を基板に吹き付け、基板を目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、(V)レジストパターンをアルカリ剥離液を用いて基板から除去する剥離工程、の各工程を経て、プラズマディスプレイパネルの背面板の隔壁を形成することができる。
最近、プラズマディスプレイパネルの需要が急速に拡大していることに伴い、パネルの生産性を向上させる為に、1枚の大型の基板に2〜3枚又はそれ以上のパネルを同時に一括製造し、その後で個々のパネルに切り分ける、いわゆるパネルの多面取りが進んでいる。現状、1m幅で1.5m長さ程度の大型の基板を使用し、42インチサイズのパネルを3面取りするところもある。
このような大型の基板上に、上記のようなサンドブラスト用の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを形成する場合に、現像工程において大きな課題がある。
【0004】
ひとつ目の課題は、大型の基板の中央部と周辺部において、感光性樹脂層の未露光部分の現像液に対する溶解速度は中央部が遅く周辺部が速くなることである。すなわち、中央部のレジストパターンが正常に形成するような現像時間に設定してパネルを作成しようとすると、基板の周辺部においてはレジストパターンが正常に形成する現像時間より長い時間現像(過剰現像)されることになる。レジストパターンは現像される時間が長くなれば長くなるほど膨潤し、その膨潤による応力がレジストパターンを基材から引き剥がす力となって作用する為、密着性を確保するのが非常に困難になる。
またふたつ目の課題として、最近の世界的な環境に対する取り組みの中から鉛フリーの材料に対する要望が強くなってきた。プラズマディスプレイパネルの背面板に好適に使用される低融点ガラスには通常鉛が含有されており、鉛フリーの低融点ガラスに転換するべく開発が進められている。鉛を含有させずに低融点を達成する一つの方法のとしては、アルカリガラスを低融点ガラスの構成成分に加えることが知られている。
ところが、このようなアルカリ成分を多量に含む低融点ガラス基板上に、従来の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを形成する場合には、現像工程においてレジストパターンが基板に充分に密着せずに剥がれてしまう傾向がある(特許文献1参照)。特に、現像工程における現像時間や、その後につづく水洗時間が増大(過剰水洗)すると、その傾向がさらに顕著となる。
【0005】
上述したように、レジストパターンの密着性が低下する場合には、パネルの量産において、プロセスマージンが極めて狭くなり、生産性や生産歩留まりの点で好ましくない。従って、現像時間や水洗時間が過剰に行われた場合でも、レジストパターンが基材に正常に密着していることが求められている。
これまで、サンドブラスト用の感光性樹脂組成物や感光性樹脂積層体が多数開示されている。例えば、二つの感光性樹脂層を積層してなる感光性樹脂積層体(特許文献2参照)、特定の構造単位を含有する感光性樹脂積層体(特許文献3参照)などが開示されている。しかしながら、これらの感光性樹脂組成物や感光性樹脂積層体を用いた場合でも、前述したプラズマディスプレイパネル大型化や鉛フリー化に伴う要望には十分に応えられていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−326839号公報
【特許文献2】特開平10−138142号公報
【特許文献3】特開2000−66391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を克服し、現像が過剰になされた場合であっても、レジストパターンの密着性に優れ、サンドブラスト用のマスク材として微細なパターンを歩留まりよく加工できる耐サンドブラスト性に優れた感光性樹脂組成物、及びこれを用いた感光性樹脂積層体、並びに該組成物または該積層体を用いた表面加工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明の次の構成によって達成することができる。
1)(i)末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)と、ポリイソシアネート(b)と、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内に共に有する化合物(c)より得られるポリウレタンプレポリマー10〜70質量%と、(ii)アルカリ可溶性高分子10〜70質量%と、(iii)光重合開始剤0.01〜20質量%と、(iv)エチレン性不飽和付加重合性モノマー5〜40質量%より成る感光性樹脂組成物において、前記末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)の50質量%以上が、下記化学式(1)または(2)で示される化合物からなる群より選ばれる1種類以上の化合物であることを特徴とするサンドブラスト用感光性樹脂組成物。
【0009】
【化1】

(上式において、R1 はテトラメチレン基、R2 はプロピレン基、R3 はエチレン基を表す。pは2以上100以下の整数であり、q、及びrは100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位からなる構造は、各々ランダムで構成されてもよいし、ブロックで構成されてもよい。)
【0010】
【化2】

(上式において、m、n、oは1以上100以下の整数であり、R4 、及びR5 はアルキレン基である。テトラメチレンオキシド、並びにR4 、及びR5 に基づく繰り返し単位からなる構造はブロックで構成される。)
2)末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)の50質量%以上が、下記化学式(3)〜(9)のいずれかで示される化合物、又は複数の該化合物の混合物である(1)記載のサンドブラスト用感光性樹脂組成物。
【0011】
【化3】

(上式において、pは2以上100以下の整数である。)
【0012】
【化4】

(上式において、a 、及びcは1以上100以下の整数であり、bは2以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びプロピレンオキシドの繰り返し単位からなる構造は、ブロックで構成される。)
【0013】
【化5】

(上式において、d、及びfは1以上100以下の整数であり、eは2以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【0014】
【化6】

(上式において、g、h、及びiは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びプロピレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【0015】
【化7】

(上式において、j、k、及びlは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【0016】
【化8】

(上式において、sは2以上100以下の整数であり、t、及びuは0以上100以下の整数であり、t+uは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はランダムで構成される。)
【0017】
【化9】

(上式において、sは2以上100以下の整数であり、t、及びuは0以上100以下の整数であり、t+uは1以上100以下の整数である。R6 、R7 は炭素数が2以上10以下のアルキレン基であり、v、及びwは1以上100以下の整数である。[ ] 内のテトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はランダムで構成される。[ ] 外のアルキレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はブロックで構成される。)
3) 基材フィルムからなる支持体(A)上に、(1)または(2)記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層したサンドブラスト用感光性樹脂積層体。
4) 被加工基材上に(1)若しくは(2)記載の感光性樹脂組成物、または(3)記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成し、露光工程、現像工程によりレジストパターンを形成した後、サンドブラスト処理を行うことを特徴とする表面加工方法。
5) 被加工基材上に(1)若しくは(2)記載の感光性樹脂組成物、または請求項(3)記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成し、露光工程、現像工程によりレジストパターンを形成した後、サンドブラスト処理を行う工程を含むプラズマディスプレイパネルの背面板の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のサンドブラスト用感光性樹脂組成物、及びこれを用いた感光性樹脂積層体、並びに該組成物または該積層体を用いた表面加工方法は、現像が過剰になされた場合であってもレジストパターンの密着性に優れ、サンドブラスト用のマスク材として微細なパターンを歩留まりよく加工できるという効果を有する。ガラス、低融点ガラス、セラミック等の被加工基材、プラズマディスプレイパネル、特に大型に基板に適用する場合により顕著な効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明の組成物の(i)成分のポリウレタンプレポリマーは、末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)とポリイソシアネート(b)の付加重合により得られるポリウレタンの末端イソシアネート基に対して、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内に共に有する化合物(c)を反応させることによって得られる。
本発明で用いられる、末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)は、下記化学式(1)または(2)で示される化合物を少なくとも1種類以上含有することが必須である。
【0020】
【化10】

(上式において、R1 はテトラメチレン基、R2 はプロピレン基、R3 はエチレン基を表す。pは2以上100以下の整数であり、q、及びrは0以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位からなる構造は、各々ランダムで構成されてもよいし、ブロックで構成されてもよい。)
【0021】
【化11】

(上式において、m、n、oは1以上100以下の整数であり、R4 、及びR5 はアルキレン基である。テトラメチレンオキシド、並びにR4 、及びR5 に基づく繰り返し単位からなる構造はブロックで構成される。)
【0022】
上記化学式(1)で示される化合物は、テトラメチレンオキシド基を繰り返し単位の一つとして有するポリアルキレングリコール化合物である。好ましい構造には、下記化学式(3)で示されるような、ポリ(テトラメチレングリコール)(PTMG)に代表される化合物が挙げられる。また、下記化学式(4)及び(5)で代表されるような、PTMGの末端水酸基を利用してブロック共重合によりプロピレンオキシド基やエチレンオキシド基を導入したグリコール化合物や、下記化学式(6)及び(7)で代表されるような、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコール(PPG)の末端水酸基を利用してブロック共重合によりテトラメチレンオキシド基を導入したグリコール化合物などのPTMG誘導体も挙げられる。また、下記化学式(8)で代表されるような、テトラヒドロフラン(THF)とエチレンオキシドやプロピレンオキシドをランダム共重合して得られるグリコール化合物や、下記化学式(9)に代表されるような、下記化学式(8)の化合物の末端水酸基を利用してブロック共重合により更にエチレンオキシド基やプロピレンオキシド基やテトラメチレンオキシド基を導入したグリコール化合物も挙げられる。下記化学式(3)〜化学式(9)に示した構造のなかでも、下記化学式(3)に示す構造が好ましい。
上記化学式(1)において、pは、レジストパターンの密着性向上の観点から4以上が好ましく現像性維持の観点から70以下が好ましい。より好ましくは6以上、55以下である。qは、レジストパターンの密着性向上の観点から0以上10以下が好ましい。rはレジストパターンの密着性向上の観点から0以上10以下が好ましい。
【0023】
【化12】

(上式において、pは2以上100以下の整数である。)
【0024】
【化13】

(上式において、a 、及びcは1以上100以下の整数であり、bは2以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びプロピレンオキシドの繰り返し単位からなる構造は、ブロックで構成される。)
【0025】
【化14】

(上式において、d、及びfは1以上100以下の整数であり、eは2以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【0026】
【化15】

(上式において、g、h、及びiは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びプロピレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【0027】
【化16】

(上式において、j、k、及びlは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【0028】
【化17】

(上式において、sは2以上100以下の整数であり、t、及びuは0以上100以下の整数であり、t+uは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はランダムで構成される。)
【0029】
【化18】

(上式において、sは2以上100以下の整数であり、t、及びuは0以上100以下の整数であり、t+uは1以上100以下の整数である。R6 、R7 は炭素数が2以上10以下のアルキレン基であり、v、及びwは1以上100以下の整数である。[ ] 内のテトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はランダムで構成される。[ ] 外のアルキレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はブロックで構成される。)
【0030】
上記化学式(2)で示される化合物は、PTMGの末端水酸基を利用してラクトンを開環重合させたポリオール化合物である。上記化学式(2)において、mは0以上が好ましく、レジストパターンの密着性向上の観点から10以下が好ましい。nは、レジストパターンの密着性向上の観点から4以上が好ましく現像性維持の観点から70以下が好ましい。oは0以上が好ましく、レジストパターンの密着性向上観点から10以下が好ましい。
上記化学式(1)または(2)で示される化合物の中で最も好ましい化合物は、上記化学式(3)で示される化合物である。レジストパターンの密着性向上の観点から好ましい。
上記化学式(1)または(2)で示される化合物の水酸基価は、22〜380mgKOH/gが好ましい。レジストパターンの密着性を向上させる点から380mgKOH/g以下が好ましく、良好な現像性を維持する点から22mgKOH/g以上が好ましい。より好ましくは28〜230mgKOH/gである。更に好ましくは32〜115mgKOH/gである。極めて好ましくは32〜78mgKOH/gである。
【0031】
水酸基価とは、試料1gから得られるアセチル化物に結合している酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。試料を過剰のアセチル化剤、たとえば無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物のケン化価を測定したのち、次の数式に従って計算する。但しAはアセチル化後のケン化価、Bはアセチル化前のケン化価を表す。
【0032】
【数1】

水酸基価を測定する方法の一例を下記する。3g程度の試料を精密に秤量し、無水酢酸とピリジンとNMP(n−メチルピロリドン)をそれぞれ1質量部、4質量部、15質量部の割合で混合した溶液20mlに溶解する。得られた溶液を100℃のオイルバスで5時間攪拌し、更に5g程度の精製水を加え更に1時間100℃で攪拌する。溶液を室温にまで冷却した後、指示薬としてフェノールフタレインのメタノール溶液を数滴添加し、1/2規定の水酸化カリウム水溶液で中和滴定しアセチル化後のケン化価を測定する。アセチル化前のケン化価は上記において、試料を含有しない溶液について同様の処理と中和滴定を行い求める。 本発明で用いられる、末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)には、上記化学式(1)または(2)で示される化合物以外のポリマーまたはモノマーを併用することも可能である。
【0033】
そのようなポリマーとしては、ポリエチレングリコールアジペート、ポリプロピレングリコールアジペート、ポリ(1,4―ブタンジオール)アジペートなどのポリエステルポリオールや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオールや、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオールなどのラクトンジオールや、ポリカーボネートジオールや、末端水酸基を有する1,4−ポリブタジエン、水添または非水添1,2−ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
そのようなモノマーとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類等が挙げられる。本発明のポリウレタンプレポリマーにカルボン酸を導入する場合には、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等の、分子内にカルボキシル基を有するジオール等を用いることもできる。
【0034】
本発明で用いられる、末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)は、上記化学式(1)または(2)で示される化合物を、50質量%以上100質量%以下含有することがレジストパターンの密着性を向上させる点から好ましい。より好ましくは70質量%以上100質量%以下である。更に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
本発明で用いられる、ポリイソシアネート(b)としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、α,α’−ジメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α,α’−ジメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α,α’−ジメチル−p−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’−トリメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’−トリメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’−トリメチル−p−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−p−キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。ジイソシアネート化合物の芳香環を水添化した化合物、例えばm−キシリレンジイソシアネートの水添化物(三井武田ケミカル製タケネート600)なども挙げられる。
【0035】
本発明で用いられる、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内に共に有する化合物(c)の具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オリゴテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0036】
(i)成分のポリウレタンプレポリマーのエチレン性不飽和結合濃度は、2×10-4mol/g以上10-2mol/g以下が好ましい。十分に架橋させて耐サンドブラスト性を確保する点から2×10-4mol/g以上が好ましく、硬化膜を柔らかく保ち耐サンドブラスト性を確保する点から10-2mol/g以下が好ましい。
(i)成分のポリウレタンプレポリマーの重量平均分子量は1,500以上500以下が好ましい。耐サンドブラスト性を維持する点から1,500以上が好ましく、現像性を維持する点から50,000以下が好ましい。より好ましくは5,000以上30,000以下である。更に好ましくは9,000以上25,000以下である。ここでいう重量平均分子量とはGPC法(カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン)によるポリスチレン換算重量平均分子量のことである
(i)成分のポリウレタンプレポリマーの骨格にカルボン酸を導入する場合には、ポリウレタンプレポリマーの酸価が0〜10mgKOH/gであることがレジストパターンの密着性を向上させる点で好ましい。より好ましくは0〜7mgKOH/gである。酸価とは、試料1gに含まれる遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。
【0037】
酸価を測定する方法の一例を下記する。5g程度の試料を精密に秤量し、アセトンとメタノールを50質量部づつ混合した溶液20mlに溶解する。指示薬としてフェノールフタレインのメタノール溶液を数滴加えた後、1/10規定の水酸化カリウム水溶液で中和滴定して、中和に必要な水酸化カリウムのミリグラム数を求める。
(i)成分のポリウレタンプレポリマーの含有量は感光性樹脂組成物の全質量基準で10質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上65質量%以下、更に好ましくは25質量%以上60質量%以下である。十分な耐サンドブラスト性を確保する点から10質量%以上であり、現像性を確保する点から70質量%以下が好ましい。
(i)成分のポリウレタンプレポリマーはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の組成物の(i)成分のポリウレタンプレポリマーは、例えば特開平11−188631号公報の実施例に開示されている方法で作成することができる。
本発明の組成物の(ii)成分のアルカリ可溶性高分子としてはカルボン酸含有ビニル共重合体やカルボン酸含有セルロース等が挙げられる。
カルボン酸含有ビニル共重合体とは、α,β−不飽和カルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種の第1単量体と、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドとその窒素上の水素をアルキル基またはアルコキシ基に置換した化合物、スチレン及びスチレン誘導体、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリル酸グリシジルの中から選ばれる少なくとも1種の第2単量体をビニル共重合して得られる化合物である。 カルボン酸含有ビニル共重合体に用いられる第1単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、及びマレイン酸半エステル等が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせてもよい。カルボン酸含有ビニル共重合体における第1単量体の割合は、15質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上35質量%以下が好ましい。アルカリ現像性を保持させる為、15質量%以上が好ましく、カルボン酸含有ビニル共重合体の溶解度の観点から40質量%以下が好ましい。
【0039】
カルボン酸含有ビニル共重合体に用いられる第2単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボン酸含有ビニル共重合体における第2単量体の割合は、60質量%以上85質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以上80質量%以下である。
【0040】
カルボン酸含有ビニル共重合体の重量平均分子量は、2万以上30万以上が好ましく、より好ましくは3万以上15万以下である。この場合の重量平均分子量とはGPC法によるポリスチレン換算重量平均分子量のことである。硬化膜の強度を維持する為2万以上が好ましく、感光性樹脂組成物を積層して感光性樹脂層を形成する際の安定性の観点から、30万以下であることが好ましい。
カルボン酸含有セルロースとしては、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシエチル・カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子の含有量は感光性樹脂組成物の全質量基準で10質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上60質量%以下である。アルカリ現像液に対する分散性を維持する点から10質量%以上が好ましい。十分な耐サンドブラスト性を得る点から70質量%以下が好ましい。
【0041】
本発明の組成物の(iii)成分の、光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジプロピルケタール、ベンジルジフェニルケタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−フルオロチオキサントン、4−フルオロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの芳香族ケトン類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、α、α−ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルグリシン、N−フェニルグリシンさらに1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、2,3−ジオキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル−2−(O−ベンゾイルカルボニル)−オキシム等のオキシムエステル類、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸及びp−ジイソプロピルアミノ安息香酸並びにこれらのアルコールとのエステル化物、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール類、テトラゾール類が挙げられる。その中でも特に2−(o−クロロフェニル)−4、5−ジフェニルイミダゾリル二量体とミヒラーズケトン若しくは4,4’−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの組み合わせが好ましい。
【0042】
(iii)成分の光重合開始剤の含有量は感光性樹脂組成物の全質量基準で0.01質量%以上20質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。十分な感度を得る点から0.01質量%以上が好ましく、感光性樹脂層の底の部分を十分に硬化させる為に、20質量%以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の組成物の(iv)成分のエチレン性不飽和付加重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(アクリロイルオキシ)プロピルフタレート、1,4−テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(トリエチレングリコールメタクリレート)ノナプロピレングリコール、ビス(テトラエチレングリコールメタクリレート)ポリプロピレングリコール、ビス(トリエチレングリコールメタクリレート)ポリプロピレングリコール、ビス(ジエチレングリコールアクリレート)ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA系(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子中にエチレンオキシド鎖とプロピレンオキシド鎖の双方を含む化合物などが挙げられる。
【0044】
また、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどの多価イソシアネート化合物と、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアクリレート化合物とのウレタン化化合物も用いることができる。この場合のウレタン化化合物はGPCによるポリスチレン換算数平均分子量で1,500未満のものである。これらのエチレン性不飽和付加重合性モノマーはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(iv)成分のエチレン性不飽和付加重合性モノマーの含有量は感光性樹脂組成物の全質量基準で5質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上35質量%以下である。十分に架橋させ耐サンドブラスト性を発揮するため5質量%以上が好ましい。硬化膜を柔らかく保ち耐サンドブラスト性を発揮する為に40質量%以下が好ましい。
【0045】
感光性樹脂組成物の熱安定性、保存安定性を向上させる為に本発明の感光性樹脂組成物にラジカル重合禁止剤を含有させることは好ましい。このようなラジカル重合禁止剤としては、例えばp−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、t−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物には染料、顔料等の着色物質が含有されていてもよい。このような着色物質としては、例えばフクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS、パラマジェンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、及びダイヤモンドグリーン等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の感光性樹脂組成物に光照射により発色する発色系染料を含有させてもよい。このような発色系染料としては、ロイコ染料とハロゲン化合物の組み合わせが良く知られている。ロイコ染料としては、例えばトリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、及びトリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。一方ハロゲン化合物としては臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルホン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン等が挙げられる。
さらに本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて可塑剤等の添加剤を含有させてもよい。このような添加剤としては、例えばジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルホン酸アミド、p−トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物のエチレン性不飽和結合濃度は5.0×10-4mol/g以上3.0×10-3mol/g以下が好ましい。十分な解像度を得る点から5.0×10-4mol/gが好ましく、硬化膜を柔らかく保ち耐サンドブラスト性を発揮する為に3.0×10-3mol/g以下が好ましい。より好ましいエチレン性不飽和結合濃度の範囲は8.0×10-4mol/g以上2.5×10-3mol/g以下である。この場合のエチレン性不飽和結合濃度は、感光性樹脂組成物中のエチレン性不飽和付加重合性モノマー及びポリウレタンプレポリマーが含有する不飽和結合数を感光性樹脂組成物の総質量で除することにより算出できる。また、エチレン性不飽和結合濃度は下記の方法により定量することもできる。すなわち、感光性樹脂組成物を溶剤に溶解し、過剰のウイス試薬を加えてエチレン性不飽和結合を臭素化する。未反応のウイス試薬にヨウ化カリウムを加え遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムを用いて滴定することにより、エチレン性不飽和結合濃度を求めることができる。
【0048】
本発明の支持体(A)は、本発明の感光性樹脂層を支持する為のフィルムであり、活性光線を透過させる透明な基材フィルムからなるものが好ましい。このような基材フィルムとしては10μm 以上100μm 以下の厚みのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムがあるが、通常適度な可とう性と強度を有するポリエチレンテレフタレート製の基材フィルムが好ましく用いられる。また、感光性樹脂層からの剥離性を向上させる為に、活性光線を透過させる透明な基材フィルムの片方の表面または両方の表面に剥離剤を形成したものを用いることもできる。ここでいう剥離剤は、基材フィルムを感光性樹脂層から容易に剥離させる性能を有する化合物であり、公知のものを使用することができるが、シリコーンを含有する剥離剤やアルキッド樹脂などが挙げられる。
【0049】
本発明の感光性樹脂積層体には必要に応じて保護層(C)を積層する。感光性樹脂層との密着力において、感光性樹脂層と支持体との密着力よりも感光性樹脂層と保護層の密着力が充分小さいことがこの保護層に必要な特性であり、これにより保護層が容易に剥離できる。このようなフィルムとしては、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等がある。
支持体(A)、感光性樹脂層(B)、及び保護層(C)を順次積層して感光性樹脂積層体を作成する方法は、従来知られている方法で行うことができる。例えば感光性樹脂層に用いる感光性樹脂組成物を、これらを溶解する溶剤と混ぜ合わせ均一な溶液にしておき、まず支持体(A)の予め剥離剤を形成した表面上にバーコーターやロールコーターを用いて塗布して乾燥し、支持体上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層(B)を積層する。次に感光性樹脂層(B)上に保護層(C)をラミネートすることにより感光性樹脂積層体を作成することができる。
【0050】
前記感光性樹脂積層体の感光性樹脂層(B)の365nmにおける光透過率は2%以上30%以下であることが好ましい。感光性樹脂層の底の部分を十分に硬化させる為に2%以上が好ましく、十分な解像度を得る点から30%以下が好ましい。より好ましい光透過率の範囲は3%以上25%以下である。光透過率は365nmに吸収波長を有する化合物、例えば光重合開始剤、染料、顔料、色素、紫外線吸収剤等を配合し、その配合量を変化させることにより制御することができる。光透過率は可視紫外分光光度計を用いて容易に測定することができる。
次に、本発明の感光性樹脂積層体を用いて被加工基材上に微細なパターンを加工する方法の1例について説明する。感光性樹脂積層体の保護層を剥がしながら被加工基材上にホットロールラミネーターを用いて密着させるラミネート工程、所望の微細パターンを有するフォトマスクを支持体上に密着させ活性光線源を用いて露光を施す露光工程、支持体を剥離した後アルカリ現像液を用いて感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去、微細なレジストパターンを被加工基材上に形成する現像工程、形成されたレジストパターン上からブラスト材を吹き付け被加工基材を目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、レジストパターンをアルカリ剥離液を用いて被加工基材から除去する剥離工程を経て、被加工基材上に微細なパターンを加工することができる。
【0051】
前記露光工程において用いられる活性光線源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプなどが挙げられる。
また、より微細なレジストパターンを得るためには平行光光源を用いるのがより好ましい。ゴミや異物の影響を極力少なくしたい場合には、フォトマスクを支持体上から数十〜数百μm浮かせた状態で露光(プロキシミティー露光)する場合もある。
前記現像工程において用いられるアルカリ現像液としては通常炭酸ナトリウム水溶液や界面活性剤水溶液等が用いられる。
前記サンドブラスト処理工程に用いるブラスト材は公知のものが用いられ、例えばSiC,SiO2 、Al2 3 、CaCO3 、ZrO、ガラス、ステンレス等の2〜100μm 程度の微粒子が用いられる。
記剥離工程に用いる剥離液としては通常水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液等が用いられる。なお、剥離工程の代わりに高温でレジストパターンを焼き飛ばす工程を設けることも可能である。
上述した微細なパターンを加工する方法の好適な応用例としては、低融点ガラス等のガラス基板を加工してプラズマディスプレイパネルの背面板を製造することがあげられる。
次に、実施例および参考例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例及び比較例の評価用サンプルの作製方法並びに得られたサンプルについての評価方法及び評価結果について示す。
1.評価用サンプルの作製
実施例及び比較例における感光性樹脂積層体は次の様にして作製した。
<感光性樹脂積層体の作製>
表1に示す組成の感光性樹脂組成物をよく攪拌、混合し、感光性樹脂組成物の溶液を厚さ19μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターを用いて均一に塗布し、90℃の乾燥機中で4分間乾燥して40μm厚みの感光性樹脂層を形成した。次に、感光性樹脂層の表面上に30μm厚みのポリエチレンフィルムを張り合わせて感光性樹脂積層体を得た。
なお、表1に示す組成の略号は、以下に示すものである。ポリウレタンプレポリマーU−1〜10の組成の略号と詳細な構造は表2に示す。
ポリウレタンプレポリマーU−1〜8は、前述の化学式(1)で示される化合物より得られたものである。またポリウレタンプレポリマーU−9は、前述の化学式(2)で示される化合物より得られたものである。
ポリウレタンプレポリマーU−10は、テトラメチレンオキシドとアジピン酸とによるポリエステル化合物をジイソシアネートと反応させることにより得られたものであり、−O−(CH2)4−O(CO)−の構造単位を有するが本発明の範囲には属さない化合物である。
【0053】
P−1:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル(重量比が25/65/10)の組成を有し重量平均分子量が8万である共重合体の35%メチルエチルケトン溶液。
M−1:トリエトキシトリメチロールプロパントリアクリレート
M−2:ヘキサメチレンジイソシアネートとトリプロピレングリコールモノメ タクリレートとのウレタン化物
I−1:ベンジルジメチルケタール
I−2:ベンゾフェノン
I−3:2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体
I−4:4,4’−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
D−1:ロイコクリスタルバイオレット
D−2:ダイヤモンドグリーン
【0054】
<被加工基材の準備>
被加工基材は3mm厚みのソーダガラス及び以下の方法で作成したガラスペースト塗工済みソーダガラスの2種類を用いた。3mm厚みのソーダガラス上に、プラズマディスプレイ用ガラスペースト(日本電気硝子(株)製 PLS−3553)をスクリーン印刷法を用いて、ガラスペーストの乾燥後の厚みが150μmとなるようにソーダガラス上に塗布、乾燥しガラスペースト塗工済みソーダガラスを作成した。
<ラミネート>
感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、被加工基材にホットロールラミネーター(旭化成エンジニアリング(株)製「AL−70」)により105℃でラミネートした。エア圧力は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.0m/minとした。
<露光>
支持体越しに感光性樹脂層にフォトマスク無しあるいは評価に必要なフォトマスクを通して、超高圧水銀ランプ(オーク製作所製HMW−801)により200mJ/cm2 で露光した。
【0055】
<現像>
支持体を剥離した後、30℃の0.4%炭酸ナトリウム水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。
<サンドブラスト>
被加工基材上に形成されたレジストパターンに対し、Xハイパーブラスト装置HCH−3X7BBART−411M(不二製作所(株)製)を用いて、サンドブラスト加工を施した。研磨剤にS9#1200(不二製作所(株)製)を使用し、ホース内圧0.08MPa、ガン移動速度20m/min.、コンベア移動速度100mm/min.、研磨剤噴射量500g/min.とした。
【0056】
2.評価方法
(1)最小現像時間
上記<露光>操作をし、支持体を剥離した後、30℃の0.4%炭酸ナトリウム水溶液をスプレーし、未露光の感光性樹脂層が溶解するのに要する時間を測定し、これを最小現像時間とした。
(2)レジストライン密着性(通常現像)
上記<露光>の際に、露光部と未露光部の幅が1:100の比率のラインパターンを有するフォトマスクを通して、露光した。最小現像時間の1.5倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスク幅をレジストライン密着性の値とした。この密着性により次の様にランク分けした。なお表1中のランク横の数値は密着性の値である。以下(3)〜(4)についても同様である。
70μm以下:○
70μmを越え100μm以下:△
100μmを越える:×
【0057】
(3)レジストライン密着性(過剰現像)
上記<露光>の際に、露光部と未露光部の幅が1:100の比率のラインパターンを有するフォトマスクを通して、露光した。最小現像時間の3.0倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスク幅をレジストライン密着性の値とした。この密着性により次の様にランク分けした。
70μm以下:○
70μmを越え100μm以下:△
100μmを越える:×
(4)レジストライン解像性
上記<露光>の際に、露光部と未露光部の幅が1:1の比率のラインパターンを有するフォトマスクを通して、露光した。最小現像時間の1.5倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスク幅をレジストライン密着性の値とした。この密着性により次の様にランク分けした。
70μm以下:○
70μmを越え100μm以下:△
100μmを越える:×
【0058】
(5)耐サンドブラスト密着性
上記<露光>の際に、露光部と未露光部の幅が1:2の比率のラインパターンを有するフォトマスクを通して、露光し、最小現像時間の1.5倍の現像時間で現像した。次いで、サンドブラスト加工を行い、硬化レジストラインが欠けたり剥がれたりせずに正常に形成されている最小マスク幅を耐サンドブラスト密着性の値とした。この耐サンドブラスト密着性により次の様にランク分けした。
80μm以下:○
80μmを越え100μm以下:△
100μmを越える:×
3.評価結果
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は新規なサンドブラスト用感光性樹脂積層体に関し、更に詳しくはガラス、低融点ガラス、セラミック等の被加工基材、特にプラズマディスプレイパネルの背面板に適用する際に、感度、解像度、密着性に優れ、サンドブラスト用のマスク材として被加工基材に微細なパターンを歩留まりよく加工できる感光性樹脂積層体、及びそれを用いたサンドブラスト表面加工方法として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)と、ポリイソシアネート(b)と、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内に共に有する化合物(c)より得られるポリウレタンプレポリマー10〜70質量%と、(ii)アルカリ可溶性高分子10〜70質量%と、(iii)光重合開始剤0.01〜20質量%と、(iv)エチレン性不飽和付加重合性モノマー5〜40質量%より成る感光性樹脂組成物において、前記末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)の50質量%以上が、下記化学式(1)または(2)で示される化合物からなる群より選ばれる1種類以上の化合物であることを特徴とするサンドブラスト用感光性樹脂組成物。
【化1】

(上式において、R1 はテトラメチレン基、R2 はプロピレン基、R3 はエチレン基を表す。pは2以上100以下の整数であり、q、及びrは0以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位からなる構造は、各々ランダムで構成されてもよいし、ブロックで構成されてもよい。)
【化2】

(上式において、m、n、oは1以上100以下の整数であり、R4 、及びR5 はアルキレン基である。テトラメチレンオキシド、並びにR4 、及びR5 に基づく繰り返し単位からなる構造はブロックで構成される。)
【請求項2】
末端に水酸基を有するポリマーまたはモノマー(a)の50質量%以上が、下記化学式(3)〜(9)のいずれかで示される化合物、又は複数の該化合物の混合物である請求項1記載のサンドブラスト用感光性樹脂組成物。
【化3】

(上式において、pは2以上100以下の整数である。)
【化4】

(上式において、a 、及びcは1以上100以下の整数であり、bは2以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びプロピレンオキシドの繰り返し単位からなる構造は、ブロックで構成される。)
【化5】

(上式において、d、及びfは1以上100以下の整数であり、eは2以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【化6】

(上式において、g、h、及びiは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びプロピレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【化7】

(上式において、j、k、及びlは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造は、ブロックで構成される。)
【化8】

(上式において、sは2以上100以下の整数であり、t、及びuは0以上100以下の整数であり、t+uは1以上100以下の整数である。テトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はランダムで構成される。)
【化9】

(上式において、sは2以上100以下の整数であり、t、及びuは0以上100以下の整数であり、t+uは1以上100以下の整数である。R6 、R7 は炭素数が2以上10以下のアルキレン基であり、v、及びwは1以上100以下の整数である。[ ] 内のテトラメチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はランダムで構成される。[ ] 外のアルキレンオキシドの繰り返し単位に基づく構造はブロックで構成される。)
【請求項3】
基材フィルムからなる支持体(A)上に、請求項1または2記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層したサンドブラスト用感光性樹脂積層体。
【請求項4】
被加工基材上に請求項1若しくは2記載の感光性樹脂組成物、または請求項3記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成し、露光工程、現像工程によりレジストパターンを形成した後、サンドブラスト処理を行うことを特徴とする表面加工方法。
【請求項5】
被加工基材上に請求項1若しくは2記載の感光性樹脂組成物、または請求項3記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成し、露光工程、現像工程によりレジストパターンを形成した後、サンドブラスト処理を行う工程を含むプラズマディスプレイパネルの背面板の製造方法。


【公開番号】特開2006−23369(P2006−23369A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199309(P2004−199309)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】