説明

サーモパイル赤外線センサアレイ

本発明は、サーモパイル赤外線センサアレイであって、センサチップ半導体基板上に設置された多数のサーモパイルセンサ素子とそれに付随する電子部品とを具備するセンサチップからなり、該センサチップが支持基板上に取り付けられ、キャップで取り囲まれており、該キャップ内にセンサチップの上方中央に入射光学系が配置されているサーモパイル赤外線センサアレイに関する。本発明によって、チップサイズが小さい場合に高い熱分解能を有し、低コストで製造できるモノリシック赤外線アレイを提示する。これを実現するために、該センサチップ(1)の半導体基板上に非導電性材料からなる薄膜(12)が配置されており、また該薄膜上にサーモパイルセンサ素子(13)が配列されており、その際、各サーモパイルセンサ素子(13)の下に位置する薄膜(12)の裏面が蜂の巣上にエッチング除去されており、さらに前記電子部品がセンサチップの周辺領域に配置されており、その際、センサ素子(13,14)の各列又は各行に、下流側にローパスフィルタ(6)が接続された個別の前置増幅器VVが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモパイル赤外線センサアレイであって、センサチップ半導体基板上に設置された多数のサーモパイルセンサ素子とそれに付随する、例えば前置増幅器、アドレス指定機構などの電子部品とを具備するセンサチップからなり、該センサチップが支持基板上に取り付けられ、キャップで取り囲まれており、該キャップ内にセンサチップの上方中央に入射光学系が配置されているサーモパイル赤外線センサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンマイクロメカニクス技術で製造できる、さまざまな種類の赤外線センサが知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1に、シリコンマイクロメカニクス技術によって製造されるモノリシックサーモパイルセンサアレイが提示されている。
【0004】
センサ素子には、裏面側からウェットエッチング技術が用いられ、幾分複雑なエッチング法によって12mm×12mmの比較的大きな薄膜のセンサ素子の間に残留部が生じる。全体的には、32×32個の素子用の、16mm×16mmというかなり大きなチップが生じる。
【0005】
アレイの全ての素子は、チップ上に組み込まれたマルチプレクサを介して直列アナログ信号に変換され、同様に組み込まれた前置増幅器によって増幅される。この増幅器は、少なくともイメージ周波数(例えば20Hz)と素子数(提示されている例では1024)とからなる帯域幅、従って、例えば20kHz超を有する。センサ素子のノイズ及び前置増幅器のノイズはこの増幅器の帯域幅によって影響されるので、かなり大きなノイズが生じる。これは、検出限界(熱分解能)をさらに高い温度にする。従って、提示されているアレイは、100℃を超える高温の温度測定にも用いられる。低温(例えば室温)の場合には、十分な信号対雑音比が生じない。
【0006】
提示されているこのウェットエッチング技術で得られるチップは比較的大きく、製造コストが高くなる。
【0007】
非特許文献2では、モノリシックサーモパイルセンサアレイが提示され、該センサでは、センサ素子が、犠牲層を用いた表面マイクロメカニクス技術によって製造される。CCDレジスタを用いた読み出し技術によって比較的良好な分解能が可能となるが、しかし、これは、センサチップが真空密封ハウジング内に収容されている場合に限られる。しかし、真空密封ハウジングは、センサコストをかなり増大させ、低コスト大量利用としての可用性を制限する。
【0008】
非特許文献3及び特許文献1では、バルクシリコンマイクロメカニクス技術によって製造されたモノリシックサーモパイルセンサアレイが提示されている。そこでも、ウェットエッチング技術が裏面側から用いられている。生じる比較的大きな薄膜は、非特許文献1の場合とは対照的に、ピクセル間の太い金の縁部によって熱的に分離される。
【0009】
センサ素子には、裏面側からウェットエッチング技術が用いられる。非特許文献3で提示されているモノリシック16×16アレイチップも、7.4mm×12mmというかなりの大きさであり、また製造コストも高い。前置増幅のために、チップの2つの側にそれぞれ2つの前置増幅器が配置されている。前置増幅器がどのように配線されているかは、説明されていない。しかし、256個の素子を有する回路の総ノイズは、帯域幅が高いために比較的大きい。あるいは、イメージ周波数が低いままであり、ただ1Hzというイメージ周波数だけが示されている。チップの2つに側に配置されている前置増幅器は、自らの電力損失のためにサーマルオフセットの一因となる。従って、代替案として、センサチップと前置増幅器とを分離することが提案される。
【0010】
しかし、各前置増幅器がセンサチップの外部に配置される場合、必要なスペースと製造コストがさらに増大する。
【0011】
非特許文献4ではモノリシックサーモパイルセンサアレイが提示され、該センサアレイでは、センサ素子が、表面マイクロメカニクス技術を用いて、前面側からのウェットエッチングによって製造される。各センサ素子は、1つの高感度センサ素子だけを含む。
【0012】
原則として、この方法によって、許容できる温度分解能が得られ、そこでは、真空密封のセンサハウジングが提案される。
【0013】
この真空密封ハウジングも、低コスト大量生産の障害となる。
【0014】
非特許文献5では、バルクシリコンマイクロメカニクス技術によって製造されるモノリシックサーモパイルセンサアレイが提示されている。
【0015】
64個の素子が、8mm×8mmの大きさのチップ上にあり、その際、各素子は、ウェットエッチング技術によるシリコン壁によって熱的に分離される。チップの大きさは技術上制限があるので、製造コストが比較的大きくなり、また、低コストの大量利用が難しくなる。
【0016】
これらのサーモパイルによる方策以外に、低コスト赤外線アレイのための方策がある。
【0017】
非特許文献6又は特許文献2では、赤外線センサアレイ用のモノリシックボロメータ構造が提案されている。
【0018】
これらの赤外線センサアレイの場合、センサ素子は、表面マイクロメカニクス技術によって製造され、その際、犠牲層の除去によって、熱的に非常に良好に絶縁されたセンサブリッジが、評価回路を含むシリコン基板上に約2.5μmの幅で形成される。
【0019】
センサブリッジを用いたこのような赤外線ボロメータは、現在では多くの態様がある。それらは、素子の寸法を非常に小さくすることを可能にするので、高分解能の赤外線アレイで非常に普及している。
【0020】
原則として、この方法では、センサ素子の寸法が小さいにもかかわらず、非常に良好な温度分解能が得られる。ただし、この小さな素子寸法が、シリコン表面に必然的に、センサチップを真空密封することを必要とし、これもまた、低コスト大量生産の障害となる。
【0021】
非特許文献7及び非特許文献8では、シリコン内に読み出し回路を有するハイブリッド焦電センサアレイが提案されている。
【0022】
焦電センサアレイは、センサ素子が高感度であるために、高い熱分解能を可能にする。ただし、ハイブリッド技術は、シリコン技術によるモノリシックセンサ装置に比して、コストを増大させる。また、焦電センサには、一般的に、変化する対象にしか反応しないという短所がある。休止している対象を熱画像表示(これが通常の場合の表示)するには、放射束の連続的な変調を必要とする。この変調は、大抵の場合、機械的なチョッパで得られる。機械的に動く部材を追加することは、信頼性を低下させ、赤外線センサアレイの機械的大きさ及びコストを増大させることにつながる。
【0023】
上で引用した従来技術では、熱赤外線センサが提案されており、それらは、赤外線センサアレイを大量に製造するために、
−大面積のチップ技術(非特許文献1、非特許文献3、非特許文献5)、又は、
−高コストの真空ハウジング技術(非特許文献2、非特許文献4、非特許文献6)、又は、
−追加的な機械的チョッパ組立品
を用いることで、コスト上の短所を含んでいる。
【非特許文献1】A. D. Oliver, K. D. Wise (University of Michigan): “1024 element Bulk micromachined thermopile IR Arrays”, Sensors & Actuators 73 (1999), p. 222-231
【非特許文献2】T. Kanno et al. (NEC Corp.): “Uncooled focal plane array having 128x128 thermopile detector elements”, B. Andersen (Ed.), Infrared Technology, Proc. SPIE 2269, Vol XX, San Diego, July 1994, p. 450-459
【非特許文献3】A. Schaufelbuhl, U. Munch (ETC Zurich): “256 pixel CMOS integrated Thermoelectric Infrared Sensor Array”, MEMS 2001, The 14th Intern Conference on Micro Mechanical Systems Interlaken, Switzerland, Jan. 21-25, 2001, Proceedings p.200-203
【非特許文献4】Masaki Hirota et al. (NISSAN Motor Comp.): “Thermoelectric Infrared Imaging Sensors for automotive applications”; Proc. Of SPIE, Vol 5359, p.111-125
【非特許文献5】HORIBA product information: “8x8 element thermopile Imager”, Tech Jam International, 26. Sept. 2002
【非特許文献6】B.E. Cole, C.J. Han (Honeywell Technology Center): “Monolithic 512x512 arrays for infrared scene projection”, Conference Transducers '95 / Eurosensors; Stockholm, Swedem, 25-29 June, 1995; p. 628-631
【非特許文献7】Q.Q. Zhang, B.P. Loss et. al (Hong Kong University): “Integrated Pyroelectric Array based on PCLT/P(VDF/TrFE) composite”, Sensors & Actuators 86 (2000), p. 216-219
【非特許文献8】R. Kennedy McEwen (GEC Marconi): “European Uncooled Thermal Imaging Technology”, SPIE Vol. 3061, 1997, p.179-190
【特許文献1】米国特許第6040579号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0869341号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の課題は、チップサイズが小さい場合に高い熱分解能を有し、高コストの真空ハウジング技術又は機械的に動く付加部材を用いずに低コストで大量生産できるモノリシック赤外線アレイを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のこの課題は、冒頭に挙げた種類のサーモパイル赤外線センサアレイの場合に、センサチップの半導体基板上に非道通性の材料からなる薄膜が配置されており、さらに該薄膜上にサーモパイルセンサ素子が配列されており、その際、各サーモパイルの下にある薄膜の裏面がエッチング除去されていることによって、及び、電子部品がセンサチップの周辺領域に配置されており、その際、少なくともセンサ素子の4列毎又は4行毎に、好ましくは各列又は各行にそれぞれ1つの前置増幅器が設けられていることによって解決される。
【0026】
本発明によって、特に良好な熱分解能が得られ、前置増幅器などの必要な電子部品の電力損失によるサーモパイルセンサ素子に対する熱影響は最小となる。
【0027】
本発明の特殊な構成は、付随する従属請求項に記載されている。
【0028】
本発明の第1の構成では、センサチップの半導体基板に、サーモパイルセンサ素子の下側に中空部が次のように設けられている。すなわち、センサ素子間の境界領域に、半導体基板材料からなる薄い垂直の、又はほとんど垂直の隔壁が存在し、その際、薄膜が該中空部を覆い、センサチップが大きな周辺領域を有するように中空部が設けられている。
【0029】
隔壁によって、低温のサーモパイルセンサ素子用のヒートシンクと、サーモパイルセンサ素子の熱分離とが実現される。さらに、これにより、アレイの機械的な安定化が可能となる。
【0030】
本発明の更なる態様では、前記隔壁が支持基板の上方で終了し、これにより、熱遮蔽が実現される。
【0031】
これは、前記大きな周辺領域と支持基板との間にスペーサが配置されていること、又は、隔壁がオーバエッチングによって短くされていることによって得られる。スペーサは、非常に良好な熱伝導性を有する材料、例えば金属、セラミックあるいはまたシリコンからならねばならない。
【0032】
チップを支持基板上に取り付けた後、中空部内の過圧又は負圧によって薄膜が損傷されるのを避けるために、少なくとも各行又は各列に対して、細い通気スリットが隔壁と大きな周辺領域との中を通して設けられている。
【0033】
最後に、各前置増幅器及びその他の電子部品が、発生する熱損失による熱分布が一様になるように、センサチップの周辺領域上に均等に配置されていることが想定されている。
【0034】
好ましくは、センサチップに、一方の側に広くなった少なくとも1つの周辺領域が設けられており、その周辺領域上に、電力損失の大きな電子部品が配置されている。
【0035】
本発明のもう1つの構成は、各前置増幅器が1つ又は複数のローパスフィルタに接続されていることを特徴とする。
【0036】
好適な1つの実施形態では、各前置増幅器がそれぞれ1つのローパスフィルタに接続されており、該ローパスフィルタのカットオフ周波数が、行読み出し周波数あるいは列読み出し周波数と等しい、又は該読み出し周波数よりも高すぎず、せいぜい2倍から3倍の高さである。
【0037】
さらに、各前置増幅器に、本来のセンサ素子のほかに、誤差信号を補償するための少なくとも1つのダミー素子が追加的に付置されていてもよい。
【0038】
その際、これらのダミー素子は、本来のセンサ素子と等しい内部抵抗又は類似した内部抵抗を有し、本来のセンサ素子と同じセンサ層で構成されている。その際、ダミー素子の下には中空部が配置されていないか、あるいは、ダミー素子が、前方に設けられたブラインドによって測定対象の赤外線放射から遮蔽されている。この場合、ダミー素子側を向いたブラインド面は、赤外線を吸収する特性を有するべきである。
【0039】
さらに、ダミー素子には、追加的又は代替的に、赤外線放射を低減させるか、又は反射する表面層が設けられていてもよい。
【0040】
サーモパイルセンサ素子と周辺領域にある電子装置との間に熱絶縁を実現するために、半導体基板が、サーモパイルセンサ素子の外列の最後の隔壁とセンサチップの周辺領域との間に、少なくとももう1つの中空の絶縁領域を有していてもよい。
【0041】
また、キャップが、センサ素子側を向いた面上に、赤外線放射を吸収する表面を有する場合が有利である。
【0042】
キャップの内側に、赤外線放射を反射しない材料からなるアパーチャ、又は赤外線放射を吸収する表面コーティングを有するアパーチャを設けることもできる。
【0043】
最後に、薄膜は、二酸化珪素又は窒化珪素又は類似の材料からなっていてもよい。
【0044】
本発明のもう1つの構成では、センサチップの下面が、少なくともシリコン支持体の下側に高い熱伝導性を有する結合物質によって、支持基板上に取り付けられていることが想定されている。あるいは、結合物質は、隔壁の下に配置することも可能である。
【0045】
結合物質として、特に金属又はセラミックを充填した接着剤、あるいは金属ろう材、あるいは金属又はセラミックが充填されたガラス塊が適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。
【0047】
サーモパイル・センサアレイチップ(以降、センサチップ1と表記)は、図1では、支持基板8上、例えばベースプレート上の中央に配置されており、キャップ9で覆われている。キャップ9は、入射光学系10用の開口部を含み、該入射光学系は、厳密に、センサチップ1のセンサ素子の中央上方に配置されている。入射光学系10は、一方の側が、平行平面フィルタ又はレンズ光学系であってよい。センサチップ1と支持基板8との間の結合は、接着、ろう接、ガラス固化、あるいはまた溶接による結合手段を用いて実施できる。結合手段は、非常に高い熱伝導性を有するべきである。結合手段として適しているのは、例えば、金属又はセラミックを充填した接着剤、あるいは金属を充填したガラス固化、あるいはろう材である。
【0048】
フィルタを具備する態様は、図1には示されていないが、この場合には、レンズがハウジングの外部にも追加して取り付けられねばならない。
【0049】
図1に示された態様の場合、入射光学系10として結像レンズが設けられる。キャップ9とセンサチップ1の寸法及び入射光学系10の焦点距離は、本発明では、結像されるべき対象がレンズを介して鮮明にセンサ素子上で結像されるように選択される。支持基板8上には、通例、接点又はコネクタが配置されており(図1には示されていない)、センサチップ1の出力信号を他の構成部品に伝える。センサチップ1と支持基板8上の接点との間の電気的な接続は、ジャンパ11を介して行われ、このジャンパは、通常のワイヤボンディング技術によって作製することができる。
【0050】
図2aは、センサチップ1の平面図である。センサチップ1の中央部分に、センサアレイのセンサ素子(SE)2,3,4,5があり、それらは正方形の記号によって示されている。センサ素子SEは、m行n列の二次元場として配置されている。従って、センサ素子2は1行1列目のセンサ素子(SE1,1)であり、センサ素子3は1行n列目のセンサ素子(SE1,n)であり、センサ素子4はm行1列目のセンサ素子(SEm,1)であり、センサ素子5はm行n列目のセンサ素子(SEm,n)である。
【0051】
この例では、m=16行、n=16列のアレイが示されている。
【0052】
センサチップ1の外側の領域(すなわちセンサ素子の外部)には、動作に必要な電子構成部品がある。それには、例えば、前置増幅器VV及び符号6で示されたローパスフィルタTP、あるいはその他の電子部品OE7が含まれている。その他の電子部品としては、例えば、アドレスレジスタ、マルチプレクサ、ドライバ、マイクロコントローラ、アナログ/デジタル変換器(ADC)、温度基準器、電圧基準器、シーケンス制御部、インタフェースモジュールなどが考えられる。
【0053】
本発明では、少なくとも、各行(又は各列)に前置増幅器VVが設けられている。すなわち、16行の本例では、少なくとも16個の前置増幅器VVが設けられていることが好ましい。
【0054】
これらの前置増幅器VVの下流側にそれぞれローパスフィルタTPを接続するのが得策であり、ローパスフィルタの帯域幅(ローパスフィルタのカットオフ周波数)は、信号損失を避けるために、少なくともアレイの行の周波数と等しい。従って、符号6は、前置増幅器とその下流に接続されたローパスフィルタとの組み合わせを示している。
【0055】
もちろん、マルチプレクサを上流側に接続することによって、前置増幅器の数を列数又は行数よりも少なくすることもできる。例えば、各行又は各列に1個又は少なくとも1個の前置増幅器VVが接続されていない場合、例えば、2行又は4行が、1個の前置増幅器をマルチプレクサによって共用することができる。
【0056】
例えば、各前置増幅器に1つのローパスフィルタが設けられていない場合、2個又は3個又は4個の前置増幅器が、上流側に接続されたマルチプレクサによって1つのローパスフィルタを共用することができる。
【0057】
各列又は各行に前置増幅器とローパスフィルタとを有する好適な実施形態では、ローパスフィルタのカットオフ周波数は、行の周波数(あるいは列の周波数)よりも著しく高くあってはならない。なぜなら、ローパスフィルタのカットオフ周波数が、センサ素子1と前置増幅器との総ノイズを制限するからである。
【0058】
それに対して、複数の列が1個の前置増幅器を共用する場合、又は複数の前置増幅器が1つのローパスフィルタを共用する場合、ローパスフィルタのカットオフ周波数は、信号損失を避けるために、それに応じて高くされねばならない。ただし、カットオフ周波数を高くすることで、ノイズは大きくなり、熱分解能は悪化することになる。
【0059】
ローパスフィルタ6を有する各前置増幅器の出力は、出力マルチプレクサ(例えば、列マルチプレクサ23)に送られ、出力マルチプレクサが、ローパスフィルタ6を有するそれらの前置増幅器の、並列に印加されている出力信号を1つの直列出力信号に変換する(図7のブロック図も参照のこと)。
【0060】
ローパスフィルタ6を有するこれらの前置増幅器は、ノイズが小さく、オフセット電圧がわずかであるべきである。好ましくは、これは、それ自体公知のチョッパ増幅器(またオートゼロ増幅器)によって実現される。集積されたセンサ素子の熱的な影響を小さく保つために、前置増幅器VVの電力損失は小さくなければならず、とりわけセンサチップ1の周辺部に均一に分散されているべきである。本発明では、これを実現するために、ローパスフィルタ6を有する前置増幅器は、センサチップ1の周辺部に均等に配分されている。
【0061】
例えば、図示された16×16個の素子によるセンサアレイの場合には、ローパスフィルタTP6を有する4個の前置増幅器VVが各側にあり、また、例えば128×128個の素子の場合であれば、ローパスフィルタTP6を有する32個の前置増幅器VVが各側に存在することになるであろう。
【0062】
本発明では、ローパスフィルタTP6を有するn個の前置増幅器VVの電力損失(及びそれによる自己発熱)が、センサチップ1上の主要な熱源であるので、従って、前置増幅器VVを対称的かつ均等に配置することが好ましい。その他の電子部品OE7の1個又は複数個が電力損失に著しく影響する場合、これらの電子部品は、本発明では、均一な熱分布が得られるように、チップ周辺部にローパスフィルタ構造6を有する前置増幅器の間に配置される。
【0063】
原則として、複数の前置増幅器が1つのローパスフィルタを共用することが可能である(すなわち、1つのローパスフィルタを例えば2個以上の前置増幅器が共用する)。これは、スペース消費を低減するが、また同時にノイズ帯域幅を大きくすることになり、従って、得られる温度分解能は悪化する。
【0064】
図2bは、一方の側(図2bの下側)の周辺領域が広くなった、もう1つのセンサチップ1の平面図である。この場合、電力損失がより大きい電子部品OE7は、この広い周辺領域に配置されており、この領域が、基板への、より良好な熱放散を保証する。この実施形態では、これらの他の電子部品OE7(例えば、マルチプレクサ、ドライバの部品、A/D変換器、マイクロコントローラなど)の一部が、チップの1つの側又は複数の側に、前置増幅器及びローパスフィルタと並んで配置される。従って、1つ又は複数の側では、それ以外の側に比して縁部の幅が大きくされる。
【0065】
幅が大きくなった分、付加される電子部品OE7のより大きな電力損失(損失熱)を相殺することができる。この幅の広い基板周辺部は、接触面が大きくなるためにそれに比例して、電子部品OE7から発生する熱をより多く支持基板8へ逃がすので、その結果、チップ上では均一な熱分布が維持され続ける。
【0066】
図3は、サーモパイルセンサ素子13(熱電導体路)の部分断面図であり、該素子の上に各サーモパイルセンサ素子13用の吸収体パターン14が配置されている。サーモパイルセンサ素子13は全て、良好な熱絶縁性を有する薄膜12上にあり、スイッチングトランジスタとアドレスライン15とによって駆動され、さらに読み出しマルチプレクサ(行マルチプレクサ21、列マルチプレクサ23)に接続される(図7を参照)。
【0067】
薄膜12の下のシリコン基板は、マイクロメカニズムによるエッチング工程によって蜂の巣状に、図に示されている通り、下側から中空部が設けられている(中空部16’)。シリコン基板には、蜂の巣構造を画定する薄い、好ましくは垂直の隔壁16だけが、各サーモパイルセンサ素子13の間に残っており、この隔壁は支持基板8に結合されている。さらに、隔壁16には、下方に支持基板8の領域にそれぞれ通気スリット16”を設けることができる。そのために、シリコン基板は下側から少し、例えば基板厚さの1/10から1/2程度、エッチングされる。図9aは、隔壁16へ内設された通気スリット16”の概略図であり、図9bは、通気スリット16”を有する薄膜12の下にあるシリコン基板の図である。通気スリットは、センサ素子2,3,4,5の全アレイにわたって延設されている。この種のチップは、各行又は各列に少なくとも1つの細い通気スリットを含み、その際、通気スリットの深さは、基板から薄膜までの深さよりも小さい。
【0068】
内設されたこれらのスリットは、各中空部16’とハウジング内部との間の圧力調整を可能にする。センサチップ1を支持基板8上に固定する際、各中空部16’と支持基板8とが完全に密閉されている場合にも、通気スリット16”によるガス交換が、中空部16’内の過圧又は負圧による薄膜12の破損を防止する。
【0069】
薄膜12は、CMOS互換性のある誘電体材料(例えば、二酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素など、あるいはそれらからなるサンドイッチ構造)からなり、CMOSプロセスでCVD法によって析出され、その典型的な厚さは約1μmである。その際、原則として、約0.3μmから4.0μmまでの厚さが可能である。材料パラメータは、シリコン基板と比較しながら選択すべきであり、析出後にできる限り機械的なねじれが生じないように選択すべきである。
【0070】
薄膜12上に、各サーモパイルセンサ素子SE1,1からm,nまでが配置されている。各サーモパイルセンサ素子13は、サーモパイル構造を有する。それ自体公知であるサーモパイルは、異なったゼーベック係数を有する2つの材料からなる。これらの材料は、CMOSプロセスで多結晶シリコン又はシリコン/ゲルマニウム及びアルミニウムの析出によって、あるいは、好ましくはn型及びp型多結晶シリコンによって製造される。
【0071】
各熱電対は、n型ポリシリコンの脚1つとp型ポリシリコンの脚1つとからなる。両ポリシリコンは、好ましくは、互いに重ねて配置されており、終端がそれぞれ次の熱電対あるいは前の熱電対に接続されている。これにより、薄膜の中心に「温」接点が生じ、シリコン周辺領域17には、ヒートシンクとして働くシリコン隔壁16を介して「冷」接点が生じる。シリコン周辺領域17は、同時にシリコン隔壁17としても機能する。
【0072】
これらの温接点上に、吸収層が設置されており、この吸収層は、赤外線放射に対して特に高い吸収係数を有する。
【0073】
信号電圧を高めるために、多くの熱素子が列状に接続され、その結果、サーモパイルが生じる。
【0074】
センサ素子13の下にある中空部16’のエッチングは、例えば、それ自体公知であるいわゆる「深堀りRIE法」における反応性イオンエッチング(RIE)によって行われる。このエッチングは、裏面から行われ、薄膜12の下面、例えば酸化膜のところで終わる。酸化膜は、シリコンに比べてエッチング速度が非常に低い。
【0075】
深堀りRIE法によって、実質的に垂直の壁を有する隔壁16を作製することが可能となる。これらのシリコン隔壁16は、以下の複数の機能を持つ。
−サーモパイルの冷接点用ヒートシンクとしての機能
−上下に重ねられたサーモパイルを熱分離する(熱クロストークを回避する)機能
−薄膜12とアレイとを機械的に安定化させる機能
図4は、サーモパイルセンサアレイの本発明に係るもう1つの構成を示し、スペーサ18が付加されている。図1に示された基本構造とは異なり、センサチップ1の断面が描かれている。
【0076】
この図には、センサ素子と吸収体パターン14が示されており、センサ素子の間にシリコン隔壁16が描かれている。センサチップ1の周辺領域に、前置増幅器VVとローパスフィルタTP6あるいはその他の電子部品7が配置されている。これらの電子部品は、シリコン支持体17の大きな周辺領域上に配置されている。これは、電子部品6及び7に生じる電力損失(熱)をできる限り良好にベースプレート8に放散するためである。寸法決めにおける目標は、周辺領域6,7で生じる温度上昇をできる限り小さく保ち、薄膜12に対するセンサ素子14の影響(図3)を防ぐことである。電子部品6,7及びセンサ素子及び吸収体パターン14は、ジャンパ11を介して支持基板8に電気的に接続されている。
【0077】
図4はまた、本発明の別の構成も示している。外部センサ素子と吸収体パターン14と周辺領域におけるシリコン支持体17との間に、もう1つの中空部が熱絶縁領域19として実施されており、その際、その領域の上方に延設された薄膜12上にはセンサ素子14が存在しない。付加されたこの絶縁領域19は、センサ素子14への電子部品6,7の熱クロストークをさらに低減するはずである。絶縁領域19は、センサ素子の下にある中空部16’と同時に作製される。
【0078】
本発明のもう1つの構成は、スペーサ18に関連し、このスペーサがセンサチップ1のシリコン支持体17を支持基板8に接続する。一方、センサ素子間のシリコン隔壁16は、支持基板8と接触していない。スペーサ18は、熱伝導性が非常に良好な材料(例えば、金属又はセラミック又はシリコン)からならねばならない。しかしまた、スペーサ18は、センサチップ1の構成要素であってもよい。
【0079】
装置全体は、キャップ9によって取り囲まれており、このキャップは、支持基板8上に固定されており、キャップ内にセンサチップ1の上方中央に入射光学系10、例えばレンズが存在する。
【0080】
図5には、サーモパイルセンサアレイの本発明に係るまた別の構成が示されており、異なった深さにエッチングされたシリコン隔壁16を有している。この配置の場合、熱絶縁の改良は、図4の場合とは異なり、スペーサ18ではなく、図に示されているように、下側からシリコン隔壁16をさらに除去することによって実現される。これにより、支持基板8上方の間隙20がエッチング除去されることで生じる。これは、エッチング工程を追加することによって実現され、このエッチング工程で、センサチップ1の中央領域における隔壁16の下端がエッチング除去される。その際、同時にまた、シリコン支持体17の下端はマスクされねばならない。
【0081】
センサチップ1の取り付け後、センサチップ1の周辺領域、すなわちシリコン支持体17は、直接、支持基板8上に載っており、一方、シリコン隔壁16と支持基板8との間に間隙20が残っている。
【0082】
それ以外の構造は、図4の構造と同じである。
【0083】
図6は、センサアレイの本発明に係るもう1つの構成を示す。電気的接触用のジャンパ11と入射光学系10とを具備するセンサチップ1を支持基板8上に有するセンサアレイの基本構造に、本構成では、アパーチャ30が含まれている。アパーチャ30は、キャップ9内に周回状に配置されている。このアパーチャ30は、例えば、プラスチック、ガラスあるいは金属材料、セラミック材料又はその他の絶縁材料から作製することができる。
【0084】
センサチップ1側を向いた面31は、赤外線放射に対して反射性を有してはならない。これは、材料の選択(大抵のセラミック材料及びプラスチック材料は反射性を持たず、層を追加する必要はない)を通じて、あるいは、金属の場合、吸収層によって実現可能である。
【0085】
赤外線放射を反射しない表面31は、入射光学系10からの散乱放射が、キャップ9の内壁で反射されてセンサ素子SEに達することを防止する。
【0086】
図7は、本発明に係るセンサアレイのブロック図を示し、駆動部22を具備する行マルチプレクサ21と、各列用の前置増幅器・ローパスフィルタ構成部6と、駆動部24を具備する列マルチプレクサとが含まれている。さらに、アナログ出力部25が設けられており、この出力部が列マルチプレクサ23の出力部に接続されている。
【0087】
図8aには、本発明に係る回路構成のもう1つのブロック図が示されている。ここでは、アドレスレジスタ26、シーケンス制御部27、アナログ/デジタル変換器28の各モジュールが追加されている。これらの全てのモジュールは、外側へ及び外側からデジタルインタフェース29を介して接続される。その他の点に関しては、図8aは図7と等しい。
【0088】
図8bでは、図8aに示されたブロック図に、さらに温度基準器32,33が備えられている。その際、温度基準器32はセンサチップ1内に、温度基準器33はキャップ9内に配置されている。追加されたこれらの温度基準器32,33は、直接、列マルチプレクサ23に接続されており、測定値の良好な補正を行う。
【0089】
アレイの制御は、外部からアドレスを印加することによって、また内部では、内部クロック発振器とシーケンス制御部27とを介して行うことができる。その際、行マルチプレクサ21を介して、アレイセンサフィールドのそれぞれの行が次々と(又は必要に応じて、選択的なアクセスによって)駆動される。
【0090】
列の全てのサーモパイルセンサ素子は、その列に付随する出力前置増幅器VV6に並列につながっており、この前置増幅器によって増幅される。行の素子の1つのみが駆動されているとき、この時点では出力情報だけが列マルチプレクサ22に印加されている。好ましくは、前置増幅器の下流に接続されたローパスフィルタ6は、サンプルアンドホールド増幅器と結合されており、このサンプルアンドホールド増幅器が、1行期間中に積算された信号値を一定に保持する。一方、各列信号は次々と問い合わされ、列マルチプレクサ23の出力に接続される。
【0091】
各前置増幅器VVあるいはローパスフィルタTP6のドリフト効果と不均質性(例えば、閾値電圧、バイアス電流)とを補償するために、センサ素子の各列にダミー素子(例えば、同一の抵抗を有するが、信号電圧を持たないサーモパイル構造)を連結することが得策である。ダミー素子は、基準電圧として一緒に読み出され、好ましくは複数の期間にわたってノイズ低減のために累算され(平均化され)、ドリフト効果の補償のために利用される。その際、ダミー素子は、例えば、自らの薄膜を有する、対象からの赤外線放射に対して遮蔽されたセンサ素子であってもよく、また、単にエッチングされた薄膜を具備しないサーモパイル13の抵抗構造体であってもよい。
【0092】
図10は、本発明に係るもう1つの構成を示し、1列のダミー素子34がセンサチップ1の外周辺部上に配置されている。この構成の場合、ダミー素子の下にはそれぞれ1つの自らの中空部があり、本来のセンサ素子14と同じように構成されている。センサチップの外部に配置されたブラインド35が、ダミー素子34を測定対象からの赤外線放射に対して遮蔽する。一方、本来のセンサ素子は、ブラインドの脇から入射光学系10と対面している。この解決策は、各前置増幅器及びローパスフィルタのドリフト効果を相殺すること、ならびに、いわゆる「熱衝撃作用」を素早い周囲温度の変化によって補償することを可能にする。
【0093】
図10では、ブラインド35が支持基板8上に取り付けられている。熱環境に応じて(すなわち、「熱衝撃」時の最大入熱に応じて)、ブラインド35はキャップ9にもアパーチャ30にも取り付けることができる。
【0094】
ブラインド35は、図10に示されているように支持基板8上に取り付けることができ、あるいはまた、キャップ9の内側に固定することもできる。もう1つの可能な配置場所は、アパーチャ30の内側であろう。各モジュールへの固定は、接着、ろう接、ガラス固化などの公知の固定方法によって、あるいはまた溶接によって行うことが可能である。
【0095】
ただし、配置場所に関係なく、機能上必須であることは、ダミー素子34側を向いたブラインド35の内側は、赤外線放射を吸収する表面を有していることである。これは、材料の選択(大抵のセラミック材料及びプラスチック材料は反射性を持たない)を通じて、あるいは、金属の場合、吸収層によって実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係るサーモパイル・センサアレイチップの基本構造を示す。
【図2】図2aは、図1に示されたサーモパイル・センサアレイチップの平面図である。図2bは、もう1つのサーモパイル・センサアレイチップの平面図であり、一方の側の周辺部が広くなっており、この周辺部上に電子回路が配置されている。
【図3】本発明に係るサーモパイル・センサアレイチップの概略断面図である。
【図4】本発明に係るサーモパイル・センサアレイチップのもう1つの構成を示し、電子装置とセンサ素子との間の熱絶縁が、スペーサを追加することによって改良されている。
【図5】本発明に係るサーモパイル・センサアレイチップのもう1つの構成を示し、電子装置とセンサ素子との間の熱絶縁が、シリコン隔壁を異なった深さにエッチングすることによって改良されている。
【図6】サーモパイル・センサアレイチップの基本構造のもう1つの変化形態であり、三次元投影能力を改良するためのアパーチャを有する。
【図7】サーモパイル・センサアレイチップの、本発明に係る回路装置のブロック図を示す。
【図8】図8aは、本発明に係るもう1つの回路装置のブロック図を示し、サーモパイル・センサアレイチップのデジタル信号処理回路を有する。図8bは、図8aに示されたブロック図に、温度基準器がセンサチップ上及びハウジング内に追加されている。
【図9】図9aは、センサチップの本発明に係るもう1つの構成の断面図であり、細い通気スリットを有する。図9bは、図9aに示された構成の下面図である。
【図10】本発明に係るもう1つの構成を示し、ダミー素子及びそれに付随するブラインドを有する。
【符号の説明】
【0097】
1 センサチップ
2 SE1,1:センサ素子1行1列目
3 SE1,n:センサ素子1行n列目
4 SEm,1:センサ素子m行1列目
5 SEm,n:センサ素子m行n列目
6 ローパスフィルタを有する前置増幅器
7 OE:他の電子部品
8 支持基板
9 キャップ
10 入射光学系
11 ジャンパ
12 薄膜
13 サーモパイルセンサ素子
14 センサ素子の吸収体パターン
15 センサ素子のスイッチングトランジスタとアドレスライン
16 隔壁
16’ 中空部
16” 通気スリット
17 シリコン支持体
18 スペーサ
19 絶縁領域
20 エッチング除去された間隙
21 行マルチプレクサ
22 行マルチプレクサの駆動部
23 列マルチプレクサ
24 列マルチプレクサの駆動部
25 アナログ出力部
26 アドレスレジスタ
27 シーケンス制御部
28 アナログ/デジタル変換器
29 デジタルインタフェース
30 アパーチャ
31 赤外線を反射しない表面
32 温度基準器
33 温度基準器
34 ダミー素子
35 ダミー素子用ブラインド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサチップ半導体基板上に設置された多数のサーモパイルセンサ素子とそれに付随する電子部品とを具備するセンサチップからなり、その際、該センサチップが支持基板上に取り付けられ、キャップで取り囲まれており、該キャップ内にセンサチップの上方中央に入射光学系が配置されているサーモパイル赤外線センサアレイにおいて、
該センサチップ(1)の半導体基板上に非導電性材料からなる薄膜(12)が配置されており、また該薄膜上にサーモパイルセンサ素子(13)が配列されており、その際、各サーモパイルセンサ素子(13)の下に位置する薄膜(12)の裏面がエッチング除去されていること、及び、前記電子部品(6,7)がセンサチップ(1)の周辺領域に配置されており、その際、少なくともセンサ素子(13,14)の4列毎又は4行毎に、好ましくは各列又は各行に、ローパスフィルタTP(6)を有する前置増幅器VVが設けられていることを特徴とするサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項2】
前記センサチップ(1)の半導体基板に、サーモパイルセンサ素子の下側に中空部(16’)が次のように設けられていること、すなわち、センサ素子間の境界領域に、半導体基板材料からなる薄い垂直の又はほとんど垂直の隔壁(16)が存在し、前記薄膜(12)が該中空部(16’)を覆い、該センサチップ(1)がシリコン支持体(17)としての大きな周辺領域を有するように、中空部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項3】
前記隔壁(16)が前記支持基板(8)の上方で終わっていることを特徴とする請求項2に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項4】
前記大きなシリコン支持体(17)と前記支持基板(8)との間にスペーサ(18)が配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項5】
前記隔壁(16)がオーバエッチングによって短くされていることを特徴とする請求項2又は3に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項6】
前記隔壁(16)に通気スリット(16”)が設けられていることを特徴とする前記請求項1から5のいずれか1項に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項7】
前記各前置増幅器VV(6)と他の電子部品(7)とが、発生する熱損失による熱分布が一様になるように、センサチップ(1)の前記周辺領域(17)上に均等に配分して設置されていることを特徴とする前記請求項1から6のいずれか1項に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項8】
前記センサチップ(1)に、一方の側に広くなっている少なくとも1つの周辺領域が設けられており、該周辺領域上により大きな電力損失を伴う前記電子部品OE(7)が配置されていることを特徴とする前記請求項1から7のいずれか1項に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項9】
前記各前置増幅器(VV)が、1つ又は複数のローパスフィルタ(TP)に接続されており、該ローパスフィルタのカットオフ周波数が、該センサアレイの行読み出し周波数あるいは列読み出し周波数と等しい、又は該読み出し周波数のせいぜい2倍から3倍の高さであることを特徴とする請求項7又は8に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項10】
前記各前置増幅器(VV)が、それぞれ1つのローパスフィルタに接続されており、該ローパスフィルタのカットオフ周波数が、該センサアレイの行読み出し周波数あるいは列読み出し周波数と等しい、又は該読み出し周波数よりも著しくは高くなく、せいぜい2倍から3倍の高さであることを特徴とする請求項7又は8に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項11】
各前置増幅器VVに、前記の本来のセンサ素子のほかに、誤差信号を補償するための少なくとも1つのダミー素子が追加的に付置されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項12】
前記ダミー素子(34)が前記本来のセンサ素子(13)と同じセンサ層で構成されているが、該センサ層の下に中空部が配置されていないことを特徴とする請求項11に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項13】
前記ダミー素子(34)に、赤外線放射を低減させるか、又は反射する表面層が設けられていることを特徴とする請求項11又は12に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項14】
前記ダミー素子(34)が、前記本来のセンサ素子と同じ構成を有しているが、センサチップ(1)の周辺領域に配置されており、ブラインド(35)によって測定対象の放射から遮蔽されていることを特徴とする請求項11に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項15】
前記半導体基板が、サーモパイルセンサ素子の外列の最後の隔壁(16)とセンサチップ(1)の周辺領域との間に、少なくとももう1つの中空の絶縁領域(19)を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項16】
前記キャップ(9)が、センサ素子側を向いた内面に、赤外線放射を吸収する表面(31)を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項17】
前記キャップ(9)の内側にアパーチャ(30)が配置されていることを特徴とする請求項16に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項18】
前記アパーチャ(30)が赤外線放射を反射しない材料からなることを特徴とする請求項17に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項19】
前記アパーチャ(30)の、センサ素子側を向いた面が、赤外線放射を反射する表面コーティングを有することを特徴とする請求項16に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項20】
前記薄膜(12)が、二酸化珪素又は窒化珪素又は類似の材料からなることを特徴とする請求項1に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項21】
センサチップ(1)の下面が、少なくとも前記シリコン支持体(17)の下側に高い熱伝導性を有する結合物質によって、前記支持基板(8)上に取り付けられていることを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項22】
センサチップ(1)の下面が、前記シリコン支持体(17)の下側及び前記隔壁(16)の下側に高い熱伝導性を有する結合物質によって、前記支持基板(8)上に取り付けられていることを特徴とする請求項21に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。
【請求項23】
前記結合物質が、金属又はセラミックを充填した接着剤、あるいは金属ろう材、あるいは金属又はセラミックが充填されたガラス塊であることを特徴とする請求項21又は22に記載のサーモパイル赤外線センサアレイ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−541102(P2008−541102A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511546(P2008−511546)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000841
【国際公開番号】WO2006/122529
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507380997)ハイマン・ゼンゾル・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【Fターム(参考)】