説明

シクロオキシゲナーゼインヒビターおよびカルシウムチャネルアンタゴニストの組成物、ならびに泌尿器科の処置において使用するための方法

シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの液体担体中の組成物。この組成物は、泌尿器科の診断処置、介入処置、外科的処置およびその他の医学的処置中に、尿路に投与することができる。開示した組成物の1つは、ケトプロフェンおよびニフェジピンを液体洗浄担体中に含み、かつ可溶化剤、安定剤および緩衝剤を含むものである。1つの実施形態において、L型カルシウムチャネルアンタゴニストが、ベラパミル、ジルチアゼム、ベプリジル、ミベフラジル、ニフェジピン、ニカルジピン、イスラジピン、アムロジピン、フェロジピン、ニソルジピンおよびニモジピンからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年5月20日に出願された、米国仮出願番号60/683,488号の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、泌尿器科の診断処置、介入処置、外科的処置およびその他の医学的処置中に尿路に投与し、泌尿器構造の治療を行うための製剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
泌尿器科の処置の多くは現在、低侵襲性の内視鏡的(膀胱鏡検査または子宮鏡検査など)手法を用いて実施されている。こうした処置には、尿道、膀胱および尿管の検査、前立腺肥大症の治療、腎臓結石および膀胱結石の除去または断片化、結石の流出を容易にする尿道ステントまたは尿管ステントの装着、生検の実施、腫瘍の切除などがある。これらの手法は、開腹手術よりも低侵襲性である一方、処置によって尿路を刺激したり傷つけたりして、疼痛、炎症および平滑筋痙攣につながりかねない。泌尿器科の処置後の術後下部尿路症状(LUTS)には、多くの場合、疼痛、反射亢進(不安定な膀胱収縮)、頻尿、夜尿症および尿意切迫などがあり、さらに場合によって、長期のカテーテル留置を必要とする尿閉などもある。
【0004】
経尿道的前立腺切除術(TURP)など、一部の外科的処置の場合、処置による刺激状態および炎症に起因する頻尿ならびにその他の症状が長期間にわたり持続し、術後の最初の6週間で徐々に回復する場合がある。レーザーを採用する泌尿器処置の場合は、炎症および筋肉痙攣などの術後の合併症が数週間持続することがある。術後の痙攣を抑制し、不安定な収縮の重症度を緩和するため、患者は、経口抗コリン剤を処方されることが多い。しかしながら、患者全員がこうした薬剤に対して適切な反応を示すわけではなく、副作用からこうした薬物を中断する場合もある。
【0005】
泌尿器科の処置を行うときは、同時に尿路を洗浄し、内視鏡の視野が明瞭に維持されるよう血液および壊死組織片を除去することが多い。従来の洗浄溶液としては、生理食塩水、ラクトリンゲル液、グリシン、ソルビトール、マニトールおよびソルビトール/マニトールなどが挙げられる。これらの従来の洗浄溶液には、活性医薬品は含まれない。
【0006】
その開示内容を本明細書に緩用する、デモプロス(Demopulos)らの特許文献1には、疼痛、炎症および/または痙攣を抑制するための外科用洗浄溶液および方法が開示されている。一般の泌尿器科処置中、特にTURP中に、疼痛/炎症インヒビターと抗痙攣剤とを含む洗浄溶液を使用することについては、5種の薬剤を併用する例や9種の薬剤を併用する例が開示されている。だが、この参考資料には、一定の泌尿器科の処置を対象とする疼痛/炎症抑制剤と抗痙攣剤との最適な組み合わせについては何ら教示されていない。
【特許文献1】米国特許第5,858,017号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の概要
本発明は、担体中にケトプロフェンとカルシウムチャネルアンタゴニストとを組み合わせで含む、疼痛/炎症および痙攣を抑制するための局所送達可能な組成物を提供するものである。ケトプロフェンとカルシウムチャネルアンタゴニストは、それぞれ治療有効量で含まれるため、その併用により、局所送達する部位の疼痛/炎症および痙攣が抑制される。
【0008】
本発明の別の態様では、疼痛/炎症および痙攣を抑制するための局所送達可能な組成物が、シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせと、安定剤としての没食子酸プロピルと、液体担体とを含む。各活性剤は、治療有効量で含まれるため、その併用により、局所送達する部位の疼痛/炎症および痙攣が抑制される。
【0009】
本発明の別の態様では、疼痛/炎症および痙攣を抑制するための局所送達可能な組成物が、シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせと、水性液体担体と、共溶媒と、少なくとも1種の安定剤と、緩衝液とを含む。各活性剤は、治療有効量で含まれるため、その併用により、局所送達する部位の疼痛/炎症および痙攣が抑制される。
【0010】
本発明の別の態様は、担体中にケトプロフェンとカルシウムチャネルアンタゴニストとを組み合わせで含む組成物を、尿路に送達することを含む、尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法を提供するものである。ケトプロフェンとカルシウムチャネルアンタゴニストは、それぞれ治療有効量で含まれるため、その併用により、尿路の疼痛/炎症および痙攣が抑制される。
【0011】
さらに、本発明の別の態様は、担体中にケトプロフェンとニフェジピンとを組み合わせで含む組成物を、泌尿器科の処置中に、周術的に尿路に送達することを含む、診断処置、介入処置、外科的処置またはその他の泌尿器科の医学的処置中に尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法を提供するものである。ケトプロフェンとニフェジピンは、それぞれ治療有効量で含まれるため、その併用により、尿路の疼痛/炎症および痙攣が抑制される。
【0012】
さらに、本発明の別の態様は、担体中にシクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとを組み合わせで含む組成物を、尿管内視鏡の処置中に、周術的に尿路に送達することを含む、泌尿器科の処置中に尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法を提供するものである。シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストは、それぞれ治療有効量で含まれるため、その併用により、尿路の疼痛/炎症および痙攣が抑制される。
【0013】
さらに、本発明の別の態様は、担体中にシクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとを組み合わせで含む組成物を、腎臓結石もしくは膀胱結石の除去、断片化または摘出の処置中に、周術的に尿路に送達することを含む、泌尿器科の処置中に尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法を提供するものである。シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストは、それぞれ治療有効量で含まれるため、その併用により、尿路の疼痛/炎症および痙攣が抑制される。
【0014】
さらに、本発明の別の態様は、担体中にシクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとを組み合わせで含む組成物を、尿路組織に熱傷を引き起こす処置中に、周術的に泌尿器構造に送達することを含む、泌尿器科の処置中に尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法を提供するものである。シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストは、それぞれ治療有効量で含まれるため、その併用により、尿路の疼痛/炎症および痙攣が抑制される。
【0015】
さらに、本発明の別の態様は、担体中に疼痛/炎症および/または痙攣を抑制する複数の薬剤を組み合わせで含む組成物を、尿管内視鏡の処置中に、周術的に泌尿器構造に送達することを含む、泌尿器科の処置中に尿路の疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する方法を提供するものである。各薬剤は、治療有効量で含まれるため、その併用により、尿路の疼痛/炎症および/または痙攣が抑制される。
【0016】
さらに、本発明の別の態様は、担体中に疼痛/炎症および/または痙攣を抑制する複数の薬剤を組み合わせで含む組成物を、腎臓結石もしくは膀胱結石の除去、断片化または摘出の処置中に、周術的に泌尿器構造に送達することを含む、泌尿器科の処置中に尿路の疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する方法を提供するものである。各薬剤は、治療有効量で含まれるため、その併用により、尿路の疼痛/炎症および/または痙攣が抑制される。
【0017】
さらに、本発明の別の態様は、担体中に疼痛/炎症および/または痙攣を抑制する複数の薬剤を組み合わせで含む組成物を、尿路組織に熱傷を引き起こす処置中に、周術的に泌尿器構造に送達することを含む、泌尿器科の処置中に尿路の疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する方法を提供するものである。各薬剤は、治療有効量で含まれるため、その併用により、尿路の疼痛/炎症および/または痙攣が抑制される。
次に、一例として添付図面を参照しながら以下に、本発明をより詳細に説明する:
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、泌尿器科の処置中に泌尿器路構造に組成物を局所送達することにより、その処置中の疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する方法および当該組成物を提供するものである。この組成物は、疼痛/炎症抑制剤もしくは痙攣抑制剤である少なくとも1種の薬剤、または疼痛/炎症と痙攣のどちらも抑制するように作用する少なくとも1種の薬剤を含むものである。好ましくは、本発明の組成物および方法は、異なる分子標的(すなわち、酵素、受容体またはイオンチャネル)に作用するか、または異なる作用機序で作用する2種以上の疼痛/炎症抑制剤または痙攣抑制剤を含む。さらに好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも1種の疼痛/炎症抑制剤と少なくとも1種の痙攣抑制剤とを含むものである。
【0019】
本明細書で使用する場合、「疼痛/炎症抑制剤」という語には、鎮痛剤(すなわち、抗侵害受容剤)、炎症を抑制する非ステロイド剤[「非ステロイド抗炎症薬」(すなわち、NSAIDまたはシクロオキシゲナーゼインヒビター)と、ステロイド性ではなくて炎症を抑制するように作用する他の薬剤の両方を含む]、コルチコステロイドおよび局所麻酔薬が含まれる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「痙攣抑制剤」という語には、平滑筋組織の痙攣または収縮を抑制する薬剤および尿路に関連した筋肉組織(前立腺筋の組織など)の痙攣または収縮を抑制する薬剤が含まれる。
【0021】
本発明の別の態様は、シクロオキシゲナーゼ(COX)インヒビターを、適切には、非選択的COX−1/COX−2インヒビターを、好ましくは、プロピオン酸誘導体である非選択的COX−1/COX−2インヒビターを、一層好ましくは、ケトプロフェンを、単独で、あるいは、疼痛/炎症を抑制および/または痙攣を抑制する、カルシウムチャネルアンタゴニストなどの少なくとも1種の別の薬剤との併用で、周術的に尿路に送達することを対象とするものである。
【0022】
本発明の別の態様は、カルシウムチャネルアンタゴニスト(すなわち、カルシウムチャネルブロッカー)を、適切には、L型カルシウムアンタゴニストを、好ましくは、ジヒドロピリジン系カルシウムチャネルアンタゴニストを、一層好ましくは、ニフェジピンを、単独で、あるいは、疼痛/炎症を抑制および/または痙攣を抑制する、COXインヒビターなどの少なくとも1種の別の薬剤との併用で、周術的に尿路に送達することを対象とするものである。
【0023】
本発明の別の態様は、COXインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせを、好ましくは、L型カルシウムアンタゴニストを併用して非選択的COX−1/COX−2インヒビターを、一層好ましくは、ニフェジピンを併用してケトプロフェンを、周術的に尿路に送達することを対象とするものである。ケトプロフェンおよびニフェジピンについては、以下の実施例で説明するように、膀胱痙攣の抑制時に相加効果ないし相乗効果が大きくなることを、本発明者らが明らかにしている。
【0024】
本発明の一態様は、泌尿器科の治療処置、診断処置、介入処置、外科的処置およびその他の医学的処置中に、疼痛、炎症および/または平滑筋痙攣を抑制する目的で、膀胱、尿管、尿道またはその他の尿路構造に、本発明の組成物を局所送達することを必要とする。
【0025】
本明細書で使用する場合、「尿路」および「泌尿器系」という語は、腎臓、尿管、膀胱、尿道ならびにそれらに関連した神経、血管および筋肉をいう。「下部尿路」という語は、膀胱および尿道ならびにそれらに関連した神経、血管および筋肉をいう。
【0026】
本発明の別の態様は、術後の刺激性排尿症状(排尿の頻発、夜尿症、尿意切迫)、疼痛および/または当該泌尿器科の処置後に生じるその他の下部尿路の症状を緩和する目的で、本発明の組成物を尿路構造に局所送達することを必要とする。
【0027】
本発明の別の態様は、当該泌尿器科の処置後に生じる術後の泌尿器機能を改善する目的(望ましくない尿閉を減少させるなど)で、本発明の組成物を尿路構造に局所送達することを必要とする。
【0028】
本発明の組成物は、適切には、泌尿器科の処置の前、処置中および/または処置後、すなわち、処置に先立ち(処置前)、処置の間(処置中)、処置の終了後(処置後)、処置前と処置中、処置前と処置後、処置中と処置後、あるいは処置前、処置中および処置後に尿路に送達されるものである。
【0029】
好ましくは、本発明の組成物は、尿路に「周術的に」局所送達されるものであるが、「周術的に」とは、本明細書で使用する場合、処置中、処置前と処置中、処置中と処置後、あるいは処置前、処置中および処置後をいう。周術的な送達は、処置中に持続的に行われても、間欠的に行われても、どちらで行われてもよい。好ましくは、本発明の組成物は、処置中に「持続的に」送達されるものであるが、「持続的に」とは、本明細書で使用する場合、送達の局所部位における活性剤(単数または複数)の濃度をほぼ一定に維持するように送達することをいう。外科的処置中において周術的に送達されるとき、「手術の前後に」という語は、本明細書では、周術的に、と同義で用いられる場合がある。好ましくは、本発明の組成物は、外科的またはその他の処置による外傷および刺激状態が尿路組織で生じている期間に周術的に送達される。
【0030】
本発明の組成物の尿路への「局所」送達は、本明細書で使用する場合、組成物を尿路の1つまたは複数の構造に直接送達することをいう。局所送達される組成物に含まれる治療薬(単数または複数)は、全身に送達される薬剤とは異なり、所期の治療効果(抑制性など)の得られる局所部位に到達するまで、初回および/または第2回目の通過代謝の影響を受けない。
【0031】
泌尿器科の処置の病態生理学的効果
泌尿器科の処置による外傷は、関連した泌尿器科構造における急性限局性炎症反応の原因になる。炎症は、末梢神経系、免疫細胞、局所脈管構造と、中枢神経系との間における相互の正のフィードバック作用に関連して、局所部位で起こる生化学的プロセスおよび細胞プロセスの複雑なパターンに関係がある。処置による外傷に対する尿路の炎症反応には、サイトカインの放出、炎症細胞の遊走、浮腫、疼痛および痛覚過敏などがある。
【0032】
組織損傷に応答して、多数の局所メディエータが急速に放出され、これが、知覚性C線維の侵害刺激をもたらす。末梢神経の損傷により誘発される炎症反応から、サイトカインに加え、低分子量Gタンパク質受容体に結合した炎症性メディエータもまた、膀胱および尿道の急速な病態生理学的反応を調節することが分かる。泌尿器膀胱の炎症モデルでは、ブラジキニン、ヒスタミン、サブスタンスP(SP)、ロイコトリエンおよびプロスタグランジンが、膀胱から放出されることが明らかになっている。Lecci,A.,ら,Pharmacological Analysis of The Local and Reflex Responses to Bradykinin on Rat Urinary Bladder Motility in Vivo, Br. J. Pharmacol.,114:708〜14(1995); Lecci, A.,ら,Capsaicin Pretreatment Does Not Alter Rat Urinary Bladder Motor Responses Induced by a Kinin B1 Receptor Agonist After Endotoxin Teatment,Neurosci. Lett. 262:73〜76(1999); Vasko, M.,ら,Prostaglandin E2 Enhances Bradykinin−Stimulated Release of Neuropeptides from Rat Sensory Neurons in Culture,J Neurosci.14:4987〜97(1994)。プロスタグランジンおよびキニンなど、ある種の炎症性メディエータは、神経終末の特異的受容体との相互作用を通じてC線維の活性化および感作を行う。下部尿路で説明がなされているその他の炎症性メディエータとしては、タキキニンおよびATP(C線維由来)(Maggi,C,ら,Tachkykinin Antagonists and Capsaicin−Induced Contraction of the Rat Isolated Urinay Bladder: Evidence for Tachykinin−Mediated Cotransmission,Br.J.Pharmacol.103:1535〜41(1991)、CGRP(C線維由来)、セロトニン(肥満細胞および血小板由来)ならびにエンドセリンなどがある。Maggi,C,ら,Contractile Responses of the Human Urinary Bladder,Renal Pelvis and Renal Artery to Endothelins and Sarafotoxin S6b,Gen.Pharmacol.21:247〜49(1990)。これらのメディエータは相乗的に同時に働いて、手術後の痛覚過敏、炎症および筋肉痙攣を悪化させる。この反応に関与するメディエータが多いことにより、疼痛・炎症プロセスの原因が多因子性であることが裏付けられる。
【0033】
知覚神経の即時的な活性化(一次性痛覚過敏)によって、局所脈管構造の変化に関与し、かつ筋肉の収縮力に影響を及ぼす一連のプロセスが引き起こされる。カプサイシン感受性の求心性線維が刺激されると、局所的な遠心性反応が誘発されるが、これには神経終末から神経ペプチド(タキキニンおよびCGRP)を放出させるという特徴がある。この放出により、多くの局所反応が生じ、これが、下部尿路における病態生理学的影響の一部をなしている。こうした影響には:(1)放出された神経伝達物質が平滑筋収縮に及ぼす直接的影響;(2)血漿血管外漏出ならびに膀胱、尿道および前立腺の浮腫を招く微小血管の透過性の変化;(3)免疫細胞の浸潤;および(4)疼痛の増強につながる侵害受容器の感作(二次性痛覚過敏)などがある。こうしたプロセスの結果、正常な膀胱容量および尿意頻数が影響を受け、しばしば、過敏症、疼痛および平滑筋痙攣の原因となる場合がある。
【0034】
処置による尿路の外傷に対する病態生理学的反応は、炎症、疼痛、痙攣および下部尿路症状の原因となる、一連の複雑な分子の情報伝達および生化学的変化に関係している。これらの点は、複数の分子標的に作用して疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する薬理作用のある物質を組み合わせて、周術的に局所送達することにより、本発明の方法および組成物に従って処理されることが好ましい。好ましい薬剤として、シクロオキシゲナーゼインヒビターおよびカルシウムチャネルアンタゴニストなどがあるが、これらを併用すると一層好ましい。
【0035】
シクロオキシゲナーゼインヒビター
プロスタグランジンは、下部尿路を介して産生され、神経伝達、膀胱の収縮力および炎症反応に関与している。ヒト膀胱粘膜には、ヒト排尿筋を収縮されることが知られている、数種のプロスタグランジンが含まれていることが明らかになっている。プロスタグランジンE(PGE)は疼痛および浮腫の強力なメディエータであり、PGEの外来性投与により、炎症性膀胱の収縮反応が誘発される。膀胱内のPGEは、尿意切迫と不随意性膀胱収縮のどちらも引き起こす。Lepor,H.,The Pathophysiology of Lower Urinary Symptoms in the Ageing Male Population,Br.J Urol.,81 Suppl 1:29〜33(1998); Maggi,C,ら,Prostanoids Modulate Reflex Micturition by Acting Through Capsaicin−Sensitive Afferents,Eur.J.Pharmacol.145: 105〜12(1988)。膀胱内にPGEを与えると、尿路上皮内および/または尿路上皮直下の神経からタキキニンを放出することで、排尿を刺激することがある。Ishizuka,O.,ら,Prostaglandin E2−Induced Bladder Hyperactivity in Normal,Conscious Rats: Involvement of Tachykinins?,J Urol.153:2034〜38(1995)。プロスタノイドは、タキキニンの放出を介して、下部尿路の炎症症状で見られる尿意切迫および膀胱過活動双方の一因になる場合がある。理論に束縛されることを希望しないが、こうした作用は、C線維および膀胱平滑筋上に存在する特定のプロスタノイド受容体サブタイプ(EP1R)の活性化により仲介される可能性が高い(図1)。
【0036】
炎症性膀胱においては、PGEの基礎産生量が対照条件に比べて有意に高い。アラキドン酸の産生に関係があるGPCR経路を介して作用する炎症性メディエータの多くが、粘膜および血管内皮におけるプロスタグランジンレベルを上方制御している可能性がある。ブラジキニンは、既知の炎症メディエータであり、ブラジキニン受容体アゴニストは、対照膀胱に比べて、炎症性膀胱においてPGEの産生を刺激する作用が大きい。ブラジキニンの局所塗布は、膀胱知覚神経を活性化する。Lecci,A.,ら,Kinin B1 Receptor−Mediated Motor Responses in Normal or Inflamed Rat Urinary Bladder in Vivo,Regul.Pept.80:41〜47(1999); Maggi,C,ら,Multiple Mechanisms in the Motor Responses of the Guinea−Pig Isolaed Urinary Bladder to Bradykinin,Br.J.Pharmacol.98:619〜29(1989)。ラットの泌尿器膀胱の単離切片でテストした、選択的B1およびB2受容体アゴニストに誘発される収縮反応では、選択的B1アゴニストに対する収縮反応も、炎症性膀胱において増強された。反射排尿におけるブラジキニンの役割についてもまた、連続注入による膀胱内圧測定を用いて、正常ラットで検討が行われている。ブラジキニンを注入すると、排尿現象間の排尿間隔(ICI)が有意に短縮され、B2受容体アンタゴニストにより完全に阻害される膀胱の収縮幅が拡大した。
【0037】
また、NK1受容体を介して作用するサブスタンスPの投与により誘発される微小血管からの漏出も、アラキドン酸のシクロオキシゲナーゼ代謝産物の放出に関与している。Abelli,L.,ら,Microvasucular Leakage Induced by Substance P in Rat Urinary Bladder: Involvement of Cyclo−oxygenase Metabolites of Arachidonic Acid,J.Auton.Pharmacol.12:269〜76(1992)。これらの所見は、異なる炎症性メディエータが非依存性の受容体機序を通じて作用し、プロスタグランジンの産生を誘発することを示している。複数のGPCRの下流にある共通標的で作用して、COX−1/COX−2を抑制するNSAIDは、各種の炎症誘発性メディエータに由来するプロスタグランジンの生成を阻害することができる。
【0038】
多くの研究の結果、COX−1およびCOX−2は、組織に外傷があるときのPGEの産生のほか、急性炎症反応に関与していることが証明されている。Martinez,R.,ら,Involvement of Peripheral Cyclooxygenase−1 and Cyclooxygenase−2 in Inflammatory Pain,J Pharm Pharmacol.54:405〜412(2002); Mazario,J,ら,Cyclooxygenase−1 vs.Cyclooxygenase−2 Inhibitors in the Induction of Antinociception in Rodent Withdrawal Reflexes,Neuropharmacology.40:937〜946(2001); Torres−Lopez,J.,ら,Comparison of the Antinociceptive Effect of Celecoxib,Diclofenac and Resveratrol in the Formalin Test,Life Sci.70:1669〜1676(2002)。正常な膀胱では、B2受容体の活性化が、COX−1活性により仲介された膀胱収縮を惹起する一方、COX−2活性は、B1受容体のみの刺激に起因するPGEの産生に関与している。COX−2は、膀胱炎症時に急速に発現され、かつ劇的に上方制御される主要なアイソフォームである。このアイソフォームは、膀胱の急性炎症および慢性炎症時に、高レベルのプロスタノイドが放出される原因であると考えられている。COX−2は、炎症誘発性サイトカインおよびエンドトキシンまたはシクロホスファミドのいずれかによる膀胱の処理に応答して、上方制御される。したがって、どちらのCOXアイソザイムも、本発明の薬剤組成物の好適な分子標的である。
【0039】
本発明の一態様は、尿路の泌尿器構造に局所送達するのに適した担体中のシクロオキシゲナーゼインヒビターを含む、治療用組成物を対象とする。急性炎症部位におけるプロスタグランジン合成の抑制を最大にするには、どちらのCOXアイソザイムも、抑制することが望ましいと考えられる。
【0040】
したがって、COXインヒビターは、COX−1およびCOX−2の活性に対して非選択的であることが好ましく、本発明では、COXインヒビターは薬剤と定義することができ、(a)COX−1活性の50%抑制に有効な薬剤濃度(IC50)と、(b)COX−2の活性を抑制するIC50との比は、0.1以上、10.0以下であり、一層好ましくは、0.1以上、1.0以下である。COX−1およびCOX−2の抑制効果を判定する好適なアッセイは、Riendau,D.,ら,Comparison of the Cyclooxygenase−1 Inhibitorys Properties of Nonsteroidal Antiinflammatory Drugs(NSAIDs) and Selective COX−2 Inhibitor,Using Sensitive Microsomal and Platelet Assays,Can.J.Physiol.Pharmacol.75:1088〜1095(1997)に開示されている。
【0041】
説明のための好適な非選択的COX−1/COX−2インヒビターとして、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、スルファサラジンおよびオルサラジンなどのサリチル酸誘導体、アセトアミノフェン、インドールならびにインドメタシンおよびスリンダクなどのインデン酢酸等のパラアミノフェノール誘導体、トルメチン、ジクロフェナクおよびケテロラックなどのヘテロアリール酢酸、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェンおよびオキサプロジンなどのアリールプロピオン酸、メファナム酸およびメクロフェナム酸などのアントラニル酸(フェナム酸塩)、ピロキシカムおよびメロキシカムなどのオキシカムならびにナブメトンなどのアルカノン等のエノール酸、ならびにその薬学的に有効なエステル、塩、異性体、コンジュゲートおよびプロドラッグなどが挙げられる。
【0042】
さらに一層好ましくは、非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、アリールプロピオン酸、すなわち、ケトプロフェン、デキスケトプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェンおよびオキサプロジンなどのプロピオン酸誘導体である。最も好ましい当該薬剤は、ケトプロフェンである。
【0043】
本発明の別の態様では、本発明の組成物および方法において用いられる非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、ブラジキニン誘発膀胱平滑筋切片の収縮力を抑制するためのIC50(本明細書において以下に説明する膀胱収縮モデルにより判定)が100μM以下であり、好ましくは25μM以下であり、一層好ましくは5μM以下であり、さらに一層好ましくは2μM未満のものとして選択される。
【0044】
本発明の別の態様では、本発明の組成物および方法において用いられる非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、ブラジキニン誘発プロスタグランジンE(PGE)を抑制するためのIC50(本明細書において以下に説明するPGE膀胱組織解析モデルにより判定)が100μM以下であり、好ましくは25μM以下であり、一層好ましくは5μM以下であり、さらに一層好ましくは2μM未満のものとして選択される。
【0045】
本発明のさらに別の態様では、本発明の組成物および方法において用いられる非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、(a)ブラジキニン誘発膀胱平滑筋切片の収縮力を抑制するためのIC50(本明細書において以下に説明する膀胱収縮モデルにより判定)が100μM以下であり、好ましくは25μM以下であり、一層好ましくは5μM以下であり、さらに一層好ましくは2μM未満であり、および(b)ブラジキニン誘発PGEを抑制するためのIC50(本明細書において以下に説明するPGE膀胱組織解析モデルにより判定)が100μM以下であり、好ましくは25μM以下であり、一層好ましくは5μM以下であり、さらに一層好ましくは2μM未満のものとして選択される。
【0046】
上記のIC50濃度は、本発明の組成物の薬剤濃度を限定するものと解釈されるべきものではなく、IC50は、最大有効性に達するのに必要な濃度を基準に適切に判定することができ、したがって、上記のIC50レベルよりも高くなってもよい。
【0047】
本発明のさらに別の態様では、本発明の組成物および方法において用いられる非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、pA(アンタゴニストの親和性)が7以上のものとして選択され、ここでpAは、アゴニストの濃度反応曲線を2倍だけ平行移動させる、アンタゴニストの濃度の負対数であって、アンタゴニストの親和性を示す対数尺度である。この親和性は、平衡解離定数K100nM以下に相当する。
【0048】
本発明のさらに別の態様では、本発明の組成物および方法において用いられる非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、本明細書において以下に説明するPGE膀胱組織解析モデルにおけるブラジキニン刺激によるPGE反応の動態研究で、10分以下で最大抑制反応が50%を示す。
【0049】
ケトプロフェン
文脈上、その異性体への言及が同時になされない限り、本明細書において本発明のケトプロフェン(すなわち、m−ベンゾイルヒドロアトロパ酸または3−ベンゾイル−α−メチルベンゼン酢酸)の使用について言及するときは、そのS−(+)−鏡像異性体のラセミ体、デキスケトプロフェン、その薬学的に許容される塩またはエステルおよびその薬学的に許容されるプロドラッグまたはコンジュゲートなどの薬学的に許容されるその異性体も含むと理解されるべきである。ケトプロフェンは、本発明で使用するのに好ましいCOXインヒビターである。
【0050】
ケトプロフェンは、プロスタグランジン合成の抑制およびブラジキニンの効果の拮抗に関係がある、強力な抗炎症作用、鎮痛作用および解熱作用を示すものである。ケトプロフェンは、非選択的にCOX−1活性およびCOX−2活性を抑制し、その結果、プロスタグランジンの産生、特にPGEの産生が遮断され、痛覚過敏の発生が阻止される。非選択的COXアッセイでは、ケトプロフェンのIC50値は4〜8nMであり、機能的には、評価を行った他のNSAID(ナプロキセンまたはインドメタシンなど)に比べ6〜12倍強力である。Kantor,T.,Ketoprofen: A review of its Pharmacologic and Clinical Properties,Pharmacotherapy 6:93〜103(1986)。ケトプロフェンはまた、ブラジキニンアンタゴニストの機能活性も有し、その効果は、古典的なNSAID、インドメタシンで見られるよりも8倍大きい。Julou,L.,ら,Ketoprofen(19.583R.P.)(2−(3−Benzoylphenyl)−propionic)。Main Pharmacological Properties − Outline of Toxicological and Pharmacokinetic Data,Scand J Rheumatol Suppl.0:33〜44(1976)。
【0051】
シクロオキシゲナーゼの抑制に加え、ケトプロフェンにはさらに、リポキシゲナーゼを抑制するという抗炎症性の利点があると考えられている。ケトプロフェンはまた、以下の実施例でより詳細に考察されるとおり、膀胱痙攣を抑制する上でニフェジピンとの相乗作用を与えることが明らかになっている。
【0052】
カルシウムチャネルアンタゴニスト
ブラジキニンなどの複数の炎症性メディエータは、組織損傷に応答して膀胱に放出され、これにより、平滑筋の収縮や痙攣が引き起こされる場合がある。泌尿器膀胱平滑筋のトーンは、多数の収縮促進受容体系により制御されている。この受容体系には、ムスカリニック受容体、プリン受容体およびタキキニン受容体などの既知の系があるが[Anderson,K.,ら,Pharmacolgy of the Lower Urinary Tact: Basis for Current and Future reatments for Urinary Incontenance Pharmacol Rev.56:581〜631(2004)]、エンドセリン受容体[Afiatpour,P.,ら,Development Changes in the Functional,Biochemical and Molecular Properties of Rat Bladder Endothelin Receptors,Naunyn Schmiedebergs Arch.Pharmacol.367:462〜72(2003)]、プロテアーゼ活性受容体およびブラジキニン受容体[Kubota,Y.,ら,Role of Mitochondria in the Generation of Spontaneous Activity in Detrusor Smooth Muscles of the Guinea Pig Bladder,J.Urol.170:628〜33(2003);Trevisani,M.,ら,Evidence for In Vitro Expression of B1 Recptor in the Mounse Trachea and Urinary Bladder,Br.J.Pharmacol.126:1293〜1300(1999)]なども含まれる。これらの受容体の多くが、Gタンパク質を介してホスホリパーゼC(PLC)活性化にプロトタイプに共役しているため、そうした受容体により誘発される膀胱収縮は、PLCに関連して細胞内貯蔵部位からCa2+が動員されることで、仲介されている面がある可能性が高い[Ouslander,J.G.,Management of Overactive Bladder,N.Engl.J.Med.,350:786〜99(2004)]。
【0053】
神経に仲介される膀胱および尿道平滑筋の収縮には、細胞内Ca2+の動員に加え、細胞外Ca2+のインフラックスが必要となる。L型カルシウムチャネルを介したCa2+流入は、Ca2+の細胞内放出を引き起こし、これが筋小胞体におけるリアノジン感受性Ca2+放出チャネルを開くことで、筋肉収縮の一因となっている可能性がある。また、膀胱筋のL型カルシウムチャネルが開くことでも、収縮後の細胞内Ca貯蔵庫の中身が入れ換わる。最近の研究によれば、ラット膀胱のカルバコール誘発収縮を介して仲介されるムスカリニック受容体サブタイプのシグナル伝達は、L型カルシウムチャネルを介した、そしておそらく、PLD、PLAおよび貯蔵量に応じて働くCa2+チャネルを介したCa2+流入に大部分を依存しているようである。Schneider,T.,ら,Signal Trasduction Underlying Carbachol−Induced of Rat Urinary Bladder: I.Phospholipases and Ca2+ sources,J Pharmacol Exp Ther(2003)。したがって、L型Ca2+チャネルを遮断すると、複数の内在性GPCRアゴニストにより仲介されて、神経、尿路上皮および平滑筋により惹起される膀胱切片の収縮を抑制できる見込みがある。L型カルシウムチャネルは、過活動による平滑筋収縮につながる可能性がある、複数の炎症性メディエータの集合が統合する点である。
【0054】
また、下部尿路の求心性および遠心性の神経終末に存在するCa2+チャネルは、神経伝達物質の放出を制御する上で重要である。de Groat,W.,ら, Pharmacology of the Lower Urinary Tract,Annu.Rev.Pharmacol Toxicol.41:691〜721(2001)。電位感受性Ca2+チャネルを介して、カプサイシン感受性の求心性ニューロンの末梢神経終末から、Ca2+インフラックスおよび伝達物質放出を引き起こす活性剤は、たくさんある。一定の条件下では、L型Ca2+チャネルも、伝達物質放出の一因となる場合がある。
【0055】
L型Ca2+チャネルには平滑筋収縮を開始させる重要な役割があるため、このチャネルは平滑筋組織の過活動または痙攣に関与する下部尿路の問題を処理する上での有力な治療標的のひとつになり得る。炎症性メディエータの存在下において、このような同じチャネルを介したシグナル伝達は、膀胱の過活動および痙攣を仲介している可能性がある。
【0056】
したがって、本発明の一態様は、尿路の泌尿器構造への送達に適した担体中のカルシウムチャネルアンタゴニストなどの治療用組成物を対象とするものである。カルシウムチャネルアンタゴニストは、好ましくは、ベラパミル、ジルチアゼム、ベプリジル、ミベフラジル、ニフェジピン、ニカルジピン、イスラジピン、アムロジピン、フェロジピン、ニソルジピンおよびニモジピンなどのL型カルシウムチャネルアンタゴニストならびにその薬学的に有効なエステル、塩、異性体、コンジュゲートおよびプロドラッグなどである。さらに一層好ましくは、カルシウムチャネルアンタゴニストは、ニフェジピン、ニカルジピン、イスラジピン、アムロジピン、フェロジピン、ニソルジピンおよびニモジピンなどのジヒドロピリジンならびにその薬学的に有効なエステル、塩、異性体、コンジュゲートおよびプロドラッグなどである。最も適している薬剤は、ニフェジピンである。
【0057】
ニフェジピン
本明細書においてニフェジピン(1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸ジメチルエステル)について言及する場合は、その薬学的に許容される異性体、その薬学的に許容される塩またはエステルおよびその薬学的に許容されるプロドラッグまたはコンジュゲートも含むものと理解するべきである。ニフェジピンは、本発明で使用するのに好ましいカルシウムチャネルアンタゴニストである。
【0058】
ニフェジピンは、L型チャネルに対して薬理学的特異性を有するカルシウムチャネルアンタゴニストのジヒドロピリジンクラスのメンバーである(別にCavl.2α−サブユニットとも呼ばれる)。ニフェジピンは、作用開始が迅速(10分未満)であり、これが泌尿器科処置用として望ましいため、初期作用により長い時間を要する一部の近縁ジヒドロピリジン(dihydropryidine)カルシウムチャネルアンタゴニスト(アムロジピンなど)よりも一層好ましい。定常状態での筋収縮の抑制に対する反応時間は、薬剤の最初の局所送達から10〜15分以内であることが理想的であるが、ニフェジピンは、この基準を満たしている。
【0059】
担体
本発明の疼痛/炎症剤および/または痙攣剤は、適切には、液体担体の溶液中または懸濁液中で送達され、液体担体は、本明細書で使用する場合、生体適合性溶媒、懸濁液、重合可能ゲルおよび非重合可能ゲル、ペーストならびに軟膏を包含することを意図している。好ましくは、担体は、生理食塩水、蒸留水、ラクトリンゲル液、グリシン溶液、ソルビトール溶液、マニトール溶液またはソルビタール/マニトール溶液などの生理的電解質を含んでもよい水性洗浄溶液であるが、これらを含まなくてよい。また、担体には、タンパク質、リポソーム、炭水化物、合成有機化合物または無機化合物で構成された微小粒子、微粒子もしくはナノ粒子などの除放性送達媒体を含めることもできる。
【0060】
本発明の組成物はまた、尿管ステントおよび尿道ステント、カテーテル、放射性種子、種子スペーサーならびにその他の移植可能な装置の表面のほか、外科用機器の表面に被覆して、以下でさらに説明するように、当該装置および機器から尿路に局所送達することができる。薬剤含浸ステントまたはその他の移植可能な装置の製造のために適宜採用できるポリマーには、非限定的な例として、たとえば、ポリ(D,L−乳酸)(PDLLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリオシド)(PLGA)、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(6−ヒドロキシカプロン酸)、ポリ(5−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(4−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO、プルロニック(商標))ブロックコポリマーおよびコポリマーならびに上記のブレンドなどがある。
【0061】
薬剤被覆したステント、カテーテル、その他の移植可能な装置および機器の製造に用いる好適な物質としては、非限定的な例として、たとえば、プルロニック(商標)トリブロックコポリマー、PLLAまたはそのコポリエステル、ポリ(グリコール酸)またはそのコポリエステル、ポリ(エチレンオキシド)−シクロデキストリン(ポリロキタキサン)ヒドロゲル、ポリ[(R)−3−ヒドロキシブチレート]−ポリ(エチレンオキシド)−シクロデキストリンヒドロゲル、酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロースおよび硝酸セルロースなどの生分解性ポリマーおよび重合体ヒドロゲル;2,4−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート、または1,5−ナフチレンジイソシアナートと、1,2−ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリ(1,4−オキシブチレン)グリコール、カプロラクトン、アジピン酸エステル、フタル酸無水物、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコールもしくはジエチレングリコールとの反応生成物などのポリウレタン樹脂;アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチルなどのアクリルポリマー;トルエンスルホンアミドなどのスルホノアミドおよびホルムアルデヒドなどのアルデヒドにより産生されるものなどの縮合ポリマー;イソシアナート化合物;ポリ(オルトエステル);ポリ(無水物);ポリアミド;ポリシアノアクリル酸塩、ポリ(アミノ酸)、ポリカーボネート)、架橋ポリ(ビニルアルコール)、ポリアセタール、ポリカプロラクトンなどがある。これらの生分解性ポリマーに加えて、好適な非生分解性ポリマーとしては、ポリアクリル酸塩、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)およびクロロスルホン化ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0062】
また、本発明の疼痛/炎症および/または痙攣抑制組成物には、取り込み、放出、溶解性および安定性を高めるための賦形剤またはアジュバントなども含まれる。本発明の組成物の製剤の態様については、以下で説明する。
【0063】
付加的な薬剤
本発明のシクロオキシゲナーゼインヒビター、カルシウムチャネルアンタゴニストまたはシクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとを組み合わせた組成物には、疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する他の薬剤または付加的な薬剤を含んでもよい。好適な薬剤には、デモプロス(Demopulos)の米国特許第5,858,017号に開示されている薬剤などがある。
【0064】
特に、好適な他の抗炎症/抗疼痛剤または付加的な抗炎症/抗疼痛剤として、セロトニン受容体アンタゴニスト、(アミトリプチリン、イミプラミン、トラゾドン、デシプラミン、ケタンセリン、トロピセトロン、メトクロプラミド、シサプリド、オンダンセトロン、ヨヒンビン、GRl27935、メチオテピンなど)、セロトニン受容体アゴニスト(ブスピロン、スマトリプタン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴノビンなど)、ヒスタミン受容体アンタゴニスト(プロメタジン、ジフェンヒドラミン、アミトリプチリン、テルフェナジン、メピラミン(ピリラミン)、トリポリジンなど)、ブラジキニン受容体アンタゴニスト([Leu]デス−Arg−BK、HOE140の[デス−Arg10]誘導体、[leu][デス−Arg10]カリデン、[D−Phe]−BK、NPC349、NPC567、HOE140など)、カリクリエンインヒビター(アプロチニンなど)、ニューロキニン受容体サブタイプアンタゴニスト(GR82334、CP96.345、RP67580など)およびニューロキニン受容体サブタイプアンタゴニスト(MEN10.627、L659.877、(±)−SR48968など)などのタキキニン受容体アンタゴニスト、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体アンタゴニスト[αCGRP−(8−37)など]、インターロイキン受容体アンタゴニスト(Lys−D−Pro−Thrなど)、PLAアイソフォームインヒビター(マノアリドなど)およびPLCγアイソフォームインヒビター(1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン)などのホスホリパーゼインヒビター、リポオキシゲナーゼインヒビター、(AA861など)、エイコサノイドEP−IおよびEP−4受容体サブタイプアンタゴニストならびにトロンボキサン受容体サブタイプアンタゴニストなどのプロスタノイド受容体アンタゴニスト(SC19220など)、ロイコトリエンB受容体サブタイプアンタゴニストおよびロイコトリエンD受容体サブタイプアンタゴニストなどのロイコトリエン受容体アンタゴニスト(SC53228など)、μ−オピオイド受容体サブタイプアゴニスト、δ−オピオイド受容体サブタイプアゴニストおよびκ−オピオイド受容体サブタイプアゴニストなどのオピオイド受容体アゴニスト(DAMGO、スフェンタニル、フェンタニル、モルヒネ、PL017、DPDPE、U50,488など)、P2X受容体アンタゴニストおよびP2Y受容体アゴニストなどのアゴニストおよびアンタゴニスト(スラミン、PPADSなど)、アデノシン三リン酸(ATP)感受性カリウムチャネルオープナー、(クロマカリム、ニコランジル、ミノキシジル、P1075、KRN2391、(−)ピナシジル)、ニューロンニコチン性アゴニスト((R)−5−(2−アゼチジニルメトキシ)−2−クロロピリジン(ABT−594)、(S)−5−(2−アゼチジニル−メトキシ)−2−クロロ−ピリジン(ABT−594のS−エナチオマー)、2−メチル−3−(2−(S)−ピロロリジニル−メトキシ)−ピリジン(ABT−089)、(R)−5−(2−アゼチジニルメトキシ)−2−クロロピリジン(ABT−594)、(2,4)−ジメトキシ−ベンジリデンアナバセイン(GTS−21)、SBI−1765F、RJR−2403)、3−((1−メチル−2(S)−ピロロリジニル)メトキシ)ピリジン(A−84543)、3−(2(S)−アゼチジニルメトキシ)ピリジン(A−85380)、(+)−アナトキシン−Aおよび(−)アナトキシン−A(1R)−1−(9−アザビシクロ[4.2.2]ノン−2−エン−2−イル)−エタノアートフマル酸塩、(R,S)−3−ピリジル−1−メチル−2−(3−ピリジル)−アゼチジン(MPA)、シスチシン、ロベリン、RJR−2403、SIB−1765F、GTS−21、ABT−418)、α2−アドレナリン作動性受容体アゴニスト[クロニジン、デクスメデトミジン、オキシメタゾンリン、(R)−(−)−3’−(2−アミノ−1−ヒドロキシエチル)−4’−フルオロ−メタンスルホアニリド(NS−49)、2−[(5−メチルベンズ−1−オキサ−4−アジン−6−イル)イミノ]イミダゾリン(AGN−193080)、AGN191103;AGN192172、5−ブロモ−N−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−キノキサリンアミン(UK14304)、5,6,7,8−テトラヒドロ−6−(2−プロペニル)−4H−チアアゾール[4,5−d]アゼピン−2−アミン(BHT920)、6−エチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−4H−オキサアゾール[4,5−d]アゼピン−2−アミン(BHT933)、5,6−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフィル−イミダゾリン(A−54741)など]、マイトジェン活性タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビター(4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール、[4−(3−ヨード−フェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール]、[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール]、[4−(4−フルオロ−フェニル)−2−(4−ニトロフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール]、2’−アミノ−3’−メトキシ−フラボンなど)、可溶性受容体(腫瘍壊死要因(TNF)可溶性受容体、インターロイキン−1(IL−1)サイトカイン受容体、クラスIサイトカイン受容体および受容体チロシンキナーゼなど)、コルチコステロイド(コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、フルルドロコルチゾン、6α−メチルプレドニゾロン、トラムシノロン、ベタメタゾン、デキサメタゾンなど)ならびに局所麻酔薬(ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、コカイン、エチオドカイン、リドカイン、メピバカイン、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパラカイン、ロピバカイン、テトラカイン、ジブカイン、QX−222、ZX−314、RAC−109、HS−37など)が挙げられる。
【0065】
好適な他の痙攣抑制剤または付加的な痙攣抑制剤には、セロトニン受容体アンタゴニスト(アミトリプチリン、イミプラミン、トラゾドン、デシプラミン、ケタンセリン、トロピセトロン、メトクロプラミド、シサプリド、オンダンセトロン、ヨヒンビン、GR127935、メチオテピン、オキシメタゾリンなど)、ニューロキニン受容体サブタイプアンタゴニスト(GR82334、CP96.345、RP67580など)およびニューロキニン受容体サブタイプアンタゴニスト(MEN10.627、L659.877、(±)−SR48968)などのタキキニン受容体(recptor)アンタゴニスト、アデノシン三リン酸(ATP)感受性カリウムチャネルオープナー、(クロマカリム、ニコランジル、ミノキシジル、P1075、KRN2391、(−)ピナシジルなど)、一酸化窒素ドナー、(ニトログリセリン、ナトリウムニトロプルシド、SIN−1、SNAP、FK409(NOR−3)、FR144420(NOR−4)、エンドセリン受容体アンタゴニスト、(BQ123、FR139317、BQ610など)ならびに抗ムスカリン薬(ジトロパン、トロピカミド、シクロペントレート、スコポラミン、アトロピン、ホマトロピンおよびオキシブチニンなど)、抗ニコチン薬(トリメタファン、マカミラミン、ペントリニウム、ペンピジンおよびヘキサメトミウムなど)および第一世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)などの抗コリン作用薬などがある。
【0066】
使用法
周術的な送達
本発明の組成物を手術の前後に局所送達すると、これを送達しない場合に泌尿器科の処置に付随する疼痛、炎症および平滑筋痙攣を予防的に抑制できると考えられる。本発明の組成物は、疼痛、炎症および痙攣の経路と機序を惹起する分子標的、すなわち、受容体、酵素およびイオンチャネルに作用する。本発明は、周術的な局所送達を採用し、これらの病態生理学的プロセスが惹起されたときに、それを抑制するものである。たとえば、複数の炎症誘発性ペプチドが、以下の実施例に示すように、曝露後最初の5分以内で膀胱組織からのPGEの放出を刺激する。投与を処置後に限ると、治療薬はこうしたプロセスが始まる前に効力を発揮することができない。
【0067】
局所送達
本発明に従って薬剤を局所送達すれば、同一の薬剤を全身(経口的、静脈内、筋肉内、皮下など)に投与するときに必要とされる用量の使用を大幅に減少させても、尿路の同じ局所レベルで所定の抑制効果を達成できる。本発明の集中的な局所送達は、薬剤を全身送達する場合に比べ、薬剤の血漿濃度の大幅な低下につながるため、尿路の同じ局所レベルで所定の抑制効果を達成でき、したがって、望ましくない全身性副作用の可能性が低下する。局所送達を行えば、初回および第2回目の通過代謝中に分解されるため、全身送達に感受性のないペプチドなどの薬剤を本発明の組成物に加えることが可能になる。
【0068】
本発明に従った薬剤組成物の局所送達は、代謝または臓器機能の変化に左右されない尿路局所部位において、一定の迅速な集中治療を可能にする。処置中に組成物の送達を行っている間、薬剤を一定濃度に維持することができる。
【0069】
泌尿器科の処置
本発明の組成物は、膀胱鏡検査、すなわち、尿路構造を検査する目的で、下部尿路に挿入された膀胱鏡による尿道および膀胱の内視鏡検査の前、検査中および/または検査後、好ましくはその処置中に周術的に局所送達することができる。本発明の組成物はまた、生検のための組織の除去、増殖腫瘍の除去、異物の除去、膀胱結石または腎臓結石の除去、尿道ステントの装着、抜去および操作、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)、電気焼灼もしくはレーザーまたは局所化学療法による腫瘍の処理、膀胱の出血処理または尿道の障害物の除去などを目的とした、膀胱鏡を介した外科用機器の挿入による膀胱鏡検査と同時に行われる、その他の診断処置、介入処置、医学的処置および外科的処置の前、処置中および/または処置後(好ましくは周術的に)に使用しても良いものである。
【0070】
本発明の組成物は、尿管内視鏡検査、すなわち、尿路構造を検査する目的で、尿道および膀胱を介して尿管に挿入された尿管内視鏡による尿管および腎臓組織の内視鏡検査の前、検査中および/または検査後、好ましくは当該処置中の手術の前後に(periperatively)尿路に局所送達してもよいものである。尿管内視鏡検査は、多くの場合、腎臓結石処理の一環として、または逆行性腎盂造影用にカテーテルを尿管に装着する目的で、各腎臓からの尿試料の抽出、尿管ステントの装着、抜去および操作のために実施されているが、本発明の組成物は、そうした処置の前、処置中および/または処置後、好ましくは当該処置中に周術的に送達してもよいものである。尿管内視鏡を経由して用いられるバスケットまたはその他の機器を利用して結石を捕促してもよいし、レーザーまたは衝撃波砕石術で尿管内視鏡を介して結石を粉砕してもよく、あるいは、尿管内視鏡を用いて嵌頓結石を腎臓に押し戻し、後からレーザーまたは体外衝撃波結石破砕法(ESWL)で粉砕して流出できるようにしてもよい。
【0071】
本発明の組成物は、適切には、レーザー処理、膀胱鏡検査、尿管内視鏡検査または砕石術を用いた腎臓結石の除去など、一般に尿管痙攣を伴う処置の前、処置中および/または処置後に尿路に局所送達されるが、当該結石除去の際に周術的に尿路に局所送達されるのが好ましい。
【0072】
本発明の組成物はまた、尿路内および/または尿路に関連した組織に熱傷を引き起こす泌尿器科の処置の前、処置中および/または処置後に(好ましくは周術的に)尿路に局所送達されてもよい。こうした処置には、結石の断片化または組織の切断を行うレーザー処理、組織のマイクロ波アブレーション(前立腺組織を除去するための経尿道的マイクロ波温熱治療(TUMT)など)、組織の高周波アブレーション(前立腺組織を除去するための経尿道的ニードルアブレーション(TUNA)など)、組織の電気焼灼もしくは気化または組織の凍結融解壊死治療(cryoblation)などがある。
【0073】
本発明の組成物はまた、組織の切断のためにレーザーを用いた泌尿器科の処置の前、処置中および/または処置後に(好ましくは周術的に)尿路に局所送達されてもよい。レーザーを用いた処置としては、ホルミウム:イットリウム−アルミニウム−ガーネット(Ho:YAG)、ネオジム:イットリウム−アルミニウム−ガーネット(Nd:YAG)およびカリウム−チタニル−ホスフェート(KTP)「緑色」レーザー治療などが挙げられる。こうしたレーザー処置には、非限定的な例として、たとえば、良性前立腺肥大(BPH)および膀胱腫瘍の処理なども含めることができる。
【0074】
また、本発明のケトプロフェン組成物、カルシウムチャネルアンタゴニストとケトプロフェンとを組み合わせた組成物、ケトプロフェンとニフェジピンとを組み合わせた好ましい組成物は、経尿道的前立腺切除術(TURP)の前、処置中および/または処置後に(好ましくは周術的に)尿路に局所送達されてもよい。
【0075】
上記に説明したような経尿道的処置に加えて、本発明の組成物は、その他の低侵襲の泌尿器科の処置中に局所送達するためにも適切に用いることができる。こうした処置の例としては、前立腺癌または前立腺炎の治療を目的とした放射性種子および種子スペーサーの移植中における、前立腺構造およびその周囲の解剖構造への本発明の組成物の経直腸的または経腹膜的送達ならびに前立腺炎の治療を目的とした前立腺への本発明の組成物の経直腸的または経腹膜的送達などがある。
【0076】
本発明の組成物(compostions)は、TURP、経尿道的前立腺切開術(TUIP)、レーザー前立腺切除、膀胱鏡検査、尿管内視鏡検査および手術野からの血液と壊死組織片との除去により可視化を支援するために、洗浄を用いるその他の処置など、洗浄を標準的に含む処置の前、処置中および/または処置後に(好ましくは周術的に)尿路に局所送達されることが適切である。本発明の組成物は、たとえば、生理食塩水、蒸留水、ラクトリンゲル液、グリシン、ソルビトール、マニトール、ソルビタール/マニトールなど、当該処置に標準的に使用される洗浄溶液に加えてもよいものであるが、泌尿器科医の標準的処置に変化を及ぼさない低濃度で加えるべきである。
【0077】
本発明の組成物はまた、尿管ステント、尿道(uretheral)ステント、カテーテル、放射性種子、種子スペーサーまたはその他の移植可能な装置もしくは外科用機器(instuments)を被覆することにより、またはステント、カテーテル、放射性種子、種子スペーサーまたは高分子材料もしくはメッシュから構成されたその他の移植可能な装置または外科用機器の本体に治療薬を含浸させる、あるいは別途塗布することにより、局所送達することができるものである。装置を薬剤で被覆する手法および装置を薬剤で含浸する手法は、当業者によく知られており、被覆または高分子材料については、移植時および移植後の一定期間継続して、薬剤(COXインヒビターおよびカルシウムチャネルアンタゴニストなど)が尿路に穏和に放出するように設計されてもよい。
【0078】
製剤
本発明の一態様は、シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとを含む組成物を対象とするものであり、好ましくは、非経口送達(好ましくは膀胱内送達)のために、水性溶液に溶解させたケトプロフェンおよびニフェジピンを含む組成物を対象とするものである。あるいは、当該組成物を凍結乾燥形態で製造し、投与前に水性溶媒により再構成するという順番にしてもよい。
【0079】
シクロオキシゲナーゼインヒビターおよびカルシウムチャネルアンタゴニストは、モル比(シクロオキシゲナーゼインヒビター:カルシウムチャネルアンタゴニスト)が10:1から1:10、好ましくは5:1から1:5、一層好ましくは4:1から1:1、最も好ましくは3:1で含まれるのが適切である。同様に、好ましい組成物では、ケトプロフェンおよびニフェジピンは、モル比(ケトプロフェン:ニフェジピン)が10:1から1:10、好ましくは5:1から1:5、一層好ましくは4:1から1:1、最も好ましくは約(すなわち、+/−20%)3:1で含まれるのが適切である。
【0080】
液体担体中で局所送達されるように製剤される組成物の場合、ケトプロフェンなどのシクロオキシゲナーゼインヒビターは、濃度(局所送達用に希釈される)が500,000ナノモル以下、好ましくは300,000ナノモル以下、一層好ましくは100,000ナノモル以下、最も好ましくは50,000ナノモル未満で含まれるのが適切である。ニフェジピンなどのカルシウムチャネルアンタゴニストは、濃度(局所送達用に希釈される)が200,000ナノモル以下、好ましくは100,000ナノモル以下、一層好ましくは50,000ナノモル以下、最も好ましくは25,000ナノモル未満で含まれるのが適切である。
【0081】
本発明の組成物は、水性溶媒または有機溶媒で製剤できるが、好ましくは、水性溶媒で製剤する。水性溶液を使用するときは、さらに溶媒(単数または複数)(すなわち、共溶媒または可溶化剤)を適切に含ませて、薬剤の溶解を助けることができる。好適な溶媒の例として、種々の分子量のポリエチレングリコール(PEG)(PEG200、300、400、540、600、900、1000、1450、1540、2000、3000、3350、4000、4600、6000、8000、20,000、35,000)、プロピレングリコール、グリセリン、エチルアルコール、オイル、オレイン酸エチル、安息香酸ベンジルおよびジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。本発明の組成物の好ましい共溶媒はPEGであり、最も好ましいのはPEG400である。
【0082】
本発明の別の態様では、その組成物は、少なくとも1種の安定剤を含む水性溶液中のケトプロフェンおよびニフェジピンを含むのである。安定剤という語は、本明細書で使用する場合、冷蔵保存温度(たとえば2〜8℃)または周囲温度のいずれかの条件下で保管した際に、医薬活性成分の分解を抑制および/または溶液の安定期間を延長させ、かつ酸化防止剤およびキレート化剤の両方を含む薬剤をいう。この溶液はまた、適切には、1種または複数種の共溶媒または緩衝液を含んでもよい。好ましくは、ケトプロフェンとニフェジピンとの水性溶液には、安定剤(単数または複数)としての1種または複数種の抗酸化剤、共溶媒および緩衝液が含まれる。ケトプロフェンとニフェジピンとの好ましい溶液製剤は、2℃から25℃で少なくとも6カ月間、好ましくは1年間、一層好ましくは2年間、最も好ましくは2年を超えて保管されたときに安定的であり、かつ泌尿器科の処置中に膀胱内に局所送達する際に、泌尿器の標準的な洗浄溶液により容易に希釈することができる。
【0083】
本発明の組成物の安定剤として用いるのに適した抗酸化剤の例として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、チオグリセリン、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオ尿素、ジチスレイトールおよびグルタチオンなどの水溶性抗酸化剤または没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、パルミチン酸アスコルビル、ノルジヒドログアヤレチック酸およびα−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤などが挙げられる。本発明の好ましい安定剤は、没食子酸プロピルである。共溶媒は、水性組成物(compositon)に含ませる場合、没食子酸プロピルなどの可溶化油溶性抗酸化剤に含ませる。本発明のケトプロフェンとニフェジピンとの好ましい水性組成物は、共溶媒としてPEG400、安定剤として没食子酸プロピルを含み、一層好ましくは水溶性抗酸化剤などの第2の安定剤、最も好ましくはメタ重亜硫酸ナトリウムも含むことができる。抗酸化剤(単数または複数)の濃度の好適な範囲は一般に、組成物の重量の約0.001%から約5%、好ましくは約0.002%から約1.0%、一層好ましくは約0.01%から約0.5%である。
【0084】
二価カチオンが酸化反応の触媒に関与しているため、本発明の組成物には、安定剤としてキレート化剤を加えると有用な場合がある。本発明の組成物に用いるのに適したキレート化剤の例として、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)の種々の塩、β−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびニトリロ三酢酸(NTA)などが挙げられる。
【0085】
本発明の組成物は、適切には、pHを維持するために緩衝剤を含むものである。本発明の組成物に加えるのに適した緩衝剤の例としては、酢酸およびその塩、クエン酸およびその塩、グルタミン酸およびその塩ならびにリン酸およびその塩などがある。また、クエン酸は、二価カチオンのキレート化を行う能力もあるため、酸化を妨害し、したがって、緩衝剤と抗酸化安定剤と2つの機能を果たすこともできる。本発明のケトプロフェンとニフェジピンとの好ましい水性組成物は、緩衝剤および抗酸化剤としてクエン酸(クエン酸ナトリウムの形など)を含むが、一層好ましい組成物は、共溶媒としてPEG400ならびに安定剤として没食子酸プロピルおよびメタ重亜硫酸ナトリウムをも含むものである。
【0086】
本発明の組成物はまた、付加的な賦形剤およびアジュバントも含んでもよい。賦形剤には、特にマルチドーズ容器に対する微生物の増殖を防ぐため、防腐剤を含めることができる。好適な賦形剤としては、ベンジルアルコール、クロロブタノール、チミセロール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンなどの抗菌剤が挙げられる。また、賦形剤には、表面張力を低下させ、したがって、溶解のための湿潤を促進する界面活性剤を含めてもよい。好適な界面活性剤の例としては、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンおよびモノオレイン酸ソルビタンなどが挙げられる。また、賦形剤には、生理液で溶液を等浸透圧にする緊張度調節剤も含めることができる。等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、マンニトール、ブドウ糖、スクロース、トレハロースおよびソルビトールなどが挙げられる。付加的な賦形剤には、FD&C青色No.1、FD&C赤色No.4、赤酸化第二鉄、黄酸化第二鉄、二酸化チタン、カーボンブラックおよびインジゴタール色素などの色を与えるための着色剤がある。
【0087】
表1
尿路送達用のケトプロフェン/ニフェジピン組成物の実施例(希釈前の原液の濃度)
【0088】
【表1】

上記の濃縮溶液を、生理食塩水またはラクトリンゲル液などの標準的な洗浄溶液により、1:1,000(v:v)などの比率で希釈する。したがって、上記実施例の製剤による最終的な希釈溶液に含まれるのは、0.06%のPEG40と、0.00005%のメタ重亜硫酸ナトリウムと、0.00001%の没食子酸プロピル(すべて容量ベース)である。活性成分の最終的な希釈溶液における濃度は、ケトプロフェンが0.00763mg/ml(30,000nM)、ニフェジピンが0.00346mg/ml(10,000nM)である。
【実施例】
【0089】
実施例
本発明は、ケトプロフェンおよびその他のシクロオキシゲナーゼインヒビターと、ニフェジピンと、これらの薬剤の組み合わせとの泌尿器科における効果ならびに当該組成物のある種の製剤における安定性を実証する以下の研究により説明することができる。
【0090】
実施例I
ラット膀胱においてCOXインヒビターがブラジキニン誘発PGE2産生に与える影響
以下の研究では、膀胱において、ブラジキニンが迅速なプロスタグランジンE(PGE)産生を誘発することが証明され、シクロオキシゲナーゼインヒビターがこのプロセスに与える効果が示される。このシステムのテストでは、活性化アゴニストとしてブラジキニンを選択した。これは、ブラジキニンのラット膀胱組織システムへの作用についてキャラクタリゼーションがうまく行われてきており、かつ急性期病態生理における炎症誘発剤としてのその役割が研究されているからである。ブラジキニンはまた、膀胱内に送達されると、B1およびB2受容体サブタイプを活性化することにより、膀胱平滑筋の収縮を刺激することでも知られている。
【0091】
1.緒言
下部尿路における痙攣などの急性限局性炎症反応は、外科的外傷により引き起こされる。組織損傷に応答して、ブラジキニンおよびサブスタンスP(SP)など複数の炎症性メディエータが、膀胱に放出される。これらの炎症誘発性ペプチドの外因性供給または膀胱神経の活性化は、膀胱におけるプロスタグランジン(PG)産生の一因になっている可能性がある。本研究の目的は、炎症性メディエータに応答したPG産生の時間経過のキャラクタリゼーションを行い、インビトロおよびインビボでCOX−1/COX−2インヒビターが膀胱組織の収縮力に与える効果を評価することであった。ラット膀胱組織切片システムは、膀胱平滑筋の収縮力に対して多数の薬剤の薬理学的作用のキャラクタリゼーションを行うためにすでに確立されたシステムである[Edwards,G.,ら,Comparison of the Effects of Several Potassium−Channel Openers on Rat Blader and Rat Portal Vein In Vitro,Br.J.Pharmacol.102:679〜80(1991); Birder,L.,ら,β−adrenoceptor Agonists Stimulate Endothelial Nitric Oxide Synthase in Rat Urinary Bladder Urothelial Cells,J.Neurosci.22:8063〜70(2002)]。
【0092】
2.膀胱切片の収縮力
方法
大きさ1×2×15mmの膀胱平滑筋の単離切片を、COの過剰曝露により屠殺した体重275±25gのウィスター系雌雄ラットから得た。各切片を、エナラプリル酸1μMを加えたクレブス溶液(MK−422)(組成成分(g/l):NaCl6.9、KCl0.35、KHPO0.16、NaHCO2.1、CaCl0.28、MgSO4.7、HO0.29、(+)ブドウ糖1.8)を含む、張力を1gとした10mlの浴に浸し、pH7.4で32℃の95%O/5%COガスでバブリングした。各切片を、等尺性トランスデューサー(ハーバード、#50−7293)および2ペン記録計に接続し、60分にわたり平衡化を行った。実験の開始前に、接続済みの組織について、最低1gの張力が得られるように100μMのメトキサミンで負荷をかけて許容性を確認したところ、結果は100%とみなされた。確認後の組織を、60分にわたり15分ごとに繰り返し洗浄した。次いで、ブラジキニンの濃度を3通り(0.01μM、0.1μMおよび1μM)に変えて、1分間隔で合計3分かけてブラジキニンに対する累積収縮−反応曲線を作成した。その後、この組織を、張力が基準値に戻るまで定期的に洗浄した。2時間後、ケトプロフェンで10分間前処理した場合のブラジキニン累積用量反応(0.01μM、0.1μMおよび1μM)を抑制する能力を判定した。被検物質の濃度をそれぞれ4つの異なる標本で試験した。
【0093】
結果
図2は、アゴニストであるブラジキニンおよびSPに対する、正常動物の累積濃度−反応曲線を示す。ブラジキニンのEC50は、8.5nM、SPは6.5nMであった。これは、NSAID(COXインヒビター)の抑制活性の効果を試験するには有効なシステムであった。
【0094】
図3Aは、0.25μM、1.0μM、2.5μMおよび10μMのケトプロフェンの存在下で得られた、ブラジキニン濃度−反応曲線を示す。実験では、どのケトプロフェン濃度でもアゴニストの最大反応を判定できなかったものの、標準的なHill式を用いてカーブフィッティングを行うと、アゴニストの飽和濃度における最大反応に変化はなかった。Schild解析を用いてケトプロフェンのpA値を算出したところ7.26であったが、これは、ケトプロフェンの5.52×10−8Mの作用部位におけるKDに等しかった(図3Bを参照のこと)。この所見は、この組織アッセイシステムにおける抑制効力が、直接酵素阻害アッセイで得られる値と非常に類似していることを示す。
【0095】
3.PGEの判定:
方法
泌尿器膀胱切片から10mlの組織浴に放出されたPGEを、基礎試料、ブラジキニン誘発COXインヒビター処理試料およびブラジキニン誘発試料を対象に、製造業者の指示(アマシャムファルマシアバイオテク)に従って、指定の酵素免疫測定法(EIA)を用いて測定した。試験したCOXインヒビターは、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、5−ブロモ−2−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メチルスルホニル)チオフェン(すなわち、DUP−697)および1−[(4−メチスホニル)フェニル]−3−トリ−フルオロメチル−5−(4−フルオロフェニル)ピラゾール(すなわち、SC−58125)であった。PGEの判定を行うために、ブラジキニンで10分間の加負荷後に、液体1mLを10mLの組織浴から採取した。試料を直ちに凍結させ、アッセイまで−4℃で保管した。この膀胱切片を、ブロッティングにより穏やかに乾燥させ、次いで秤量した。結果を、組織1ミリグラム当たりのPGE放出量(ピコグラム単位)で表す。
【0096】
結果
図4Aは、ラット膀胱組織切片において、刺激から最初の数分でブラジキニンがPGEの産生を迅速に誘発し、30分以内で最大値に達することを示す。産生のt1/2は、約7.5分であった。図4Bは、最初の10分間に検出された迅速なPGE産生のキネティクスを示す。
【0097】
ブラジキニン誘発膀胱切片収縮に対するケトプロフェンの抑制効果は、表2に示すように、PGE産生の抑制と緊密に相関している。非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、ブラジキニン刺激によるPGEの遮断に有効であることが明らかになった一方、選択的COX−2薬剤に有効性は見られなかった。これは、ブラジキニンで誘発した場合の通常の膀胱内圧測定パラメータではCOX−2インヒビターの活性が欠如することと符号する。
【0098】
表2
ブラジキニン(BK)誘発収縮に対するCOXインヒビターの抑制効果
薬剤
【0099】
【表2】

4.ラットのインビボ膀胱内圧測定モデル
方法
ラットを、1.2g/kgのウレタンを5ml/kgとなるように腹腔内投与することで麻酔した。3方コックを介して生理食塩水または酢酸を注入するために、ポリエチレンカテーテル(PE50)を膀胱に移植した。膀胱内の圧力を測定するため、圧力トランスデューサーを接続した。膀胱内圧測定値が安定するまで(60分以上)、温かい(37℃)生理食塩水を、16.7ml/分(1ml/時間)の定率で膀胱に注入した。その後、0.2%酢酸を、泌尿器膀胱に注入した。アスピリン(10mg/kg静脈内投与)および媒体を、PE−10カテーテルを介して、酢酸の注入開始から5分後と、最初の排尿サイクルの終了時とに大腿静脈に静脈内投与した。ダネット試験を適用し、被検物質処理または媒体処理前の時間と被検物質処理または媒体処理後の時間とを比較検討した。被検物質と媒体対照群との差異を確認するため、独立スチューデントt検定を用いた。p<0.5で差異を有意であるとみなした。
【0100】
結果
図5Aは、酢酸により誘発される排尿間隔(ICI)の縮小に対して、静脈内アスピリン(10mg/kg)が漸進的かつ時間依存的抑制効果をもたらすことを示し、図5Bは、膀胱容量を平行して移動したものを示す。閾値圧力および排尿圧は、アスピリン処理(データは示していない)の影響を受けなかった。
【0101】
6.考察
これらの研究によれば、PGEは、ブラジキニンによる刺激を受けて、ラット膀胱組織で迅速に産生されるが、その産生は、ケトプロフェンによる10分間のプレインキュベーションによって抑制される。非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、膀胱組織におけるPGの迅速な産生および組織の収縮力を同時に遮断したことを示した。アスピリンおよびその他の非選択的COX−1/COX−2インヒビターは、膀胱内での酢酸刺激が誘発する膀胱内圧測定値の変化を有効に抑制した。こうした研究から、尿路へのケトプロフェンの送達が、周術的な膀胱過活動に対して治療上有益であろうと思われる。
【0102】
実施例II
ケトプロフェンおよびニフェジピンが、ラット膀胱組織切片のブラジキニン誘発収縮に対して与える個別の効果
この研究の目的は、ブラジキニンを刺激アゴニストとして用いたアゴニスト刺激によるラット膀胱の収縮力に対して、ケトプロフェン、非選択的COX−1/COX−2インヒビターおよびニフェジピン(L型Ca2+チャネルアンタゴニスト)が与える効果のキャラクタリゼーションを行うことにあった。
【0103】
1.方法
ケトプロフェンUSPおよびニフェジピンUSPを、最終濃度に希釈する前に、DMSOに溶解した。上記実施例Iで説明した膀胱切片の収縮法を用いて、ウィスター系ラットの膀胱組織切片について、調製、変換および平衡化を行った。アッセイ対象の組織を、活性を判定する前に、被検薬で10分間インキュベートした。
【0104】
ブラジキニン濃度を0.001μMから1μMまで3倍刻みで7通りに変えて、1分間隔で合計7分間かけてブラジキニンの累積収縮−反応曲線を作成し、対照とする反応が最大値である100%になる点を特定した。その後、組織を、張力が基準値に戻るまで定期的に洗浄した。24の異なる組織では、10分間のインキュベーション時間後に、それぞれの被検化合物(ケトプロフェン:0.25μM、1μM、2.5μMおよび10μM;ニフェジピン:0.125μM、0.5μM、1.25μMおよび5μM)存在下で、類似したブラジキニン濃度−反応が見られた。組織切片は、アンタゴニスト(ブラジキニン)単独の作用と、ある濃度のアンタゴニスト(ケトプロフェンまたはニフェジピン)の存在下での作用とを研究するため、常に対で用いた。Schildプロットは、コンピュータソフトウェア(ファーマコロジーキューミュラティブシステム、バージョン4)を用いて行い、pA2値を求めた。
【0105】
2.結果
ニフェジピンは、ラット膀胱のインビトロ標本におけるブラジキニン誘発収縮反応に対して非競合型の拮抗作用を示すことが明らかになった。これは、アゴニストの最大反応の低下と、アゴニスト濃度反応曲線(図6)が非平行にわずかながら右方にシフトしたことで示された。これに対し、実施例Iで前述したように、ケトプロフェン(0.25〜10μM)の濃度が上昇すると、一連の濃度−反応曲線(図3Aを参照のこと)では、アゴニスト反応のEC50は、より高い濃度のブラジキニンの方へ徐々に移動した(2桁を超えて右にシフト)が、最大張力への明白な影響は見られなかった。この抑制パターンは、ケトプロフェンの競合的な機序と整合的であるため、さらにSchild回帰分析により抑制パターンの解析を行った。
【0106】
ニフェジピンの場合は、抑制のパターンが非競合的であったため、Schild回帰解析適用の判定基準に合わなかった。ニフェジピンの濃度が最低(0.125μM)でも、アゴニスト反応の大幅な低下を招いた(最大約50%まで)。ケトプロフェンおよびニフェジピンに関するこれらの研究により、ブラジキニン刺激による収縮張力を抑制する、2つの非常に異なるパターンが明らかになった。
【0107】
実施例III
ケトプロフェンとニフェジピンとの併用がラット膀胱組織切片のブラジキニン誘発収縮力に与える効果
この研究は、ニフェジピンとケトプロフェンとの併用投与がラット膀胱組織切片モデルの収縮張力応答に与える効果を評価したものである。
【0108】
1.方法
上記実施例Iで説明した膀胱切片の収縮法を用いて、ウィスター系ラットの膀胱組織切片について、調製、変換および平衡化を行った(変換した切片を、45分間平衡化させた)。累積投薬プロトコールによるブラジキニン受容体脱感作の影響を回避するため、各動物から、2つの組織切片を収集した。対照群は12の切片からなり、処理群用に54の切片を使用した。
【0109】
実験の開始前に、最大収縮の初期差が切片間で+/−15%内に収まるかどうかを判定するために、各組織切片の対を、それぞれ0.03μMのブラジキニンで処理することで、実験条件を満たすものとした。この処置後に、実験条件を満たした組織を、60分にわたり15分ごとに洗浄した。ブラジキニンを適用して累積濃度−反応曲線を生成し、反応が最大になる点を特定した。次いで、対照群(n=12)に関して、濃度を0.1μMから1μMまで3倍しながら9通りに変えて、1分間隔で合計9分間かけてブラジキニンに対する累積収縮−反応曲線を作成し、対照とする反応が最大値である100%になる点を特定した。処理群の反応曲線は、膀胱組織を10分間(n=6)プレインキュベーションした後、ブラジキニンの濃度を12通り(0.1nM〜30μM)に変えてブラジキニン累積容量−反応曲線を作成して得られたものである。
【0110】
各活性剤に対して選択した濃度範囲は、上記の実施例IおよびIIで説明した薬剤単体のインビトロにおける薬理学的研究に基づき算出した。それらの研究によれば、ケトプロフェンは、0.3〜3μM範囲でブラジキニン活性化のEC50に大きな影響を与えた。3μMのケトプロフェンは、筋肉の収縮力に関するブラジキニン活性の反応曲線のEC50をシフトする能力がほぼ最大であった。同様に、ニフェジピンに関する過去のテストでは、ブラジキニン誘発張力の抑制に有効な濃度範囲(0.05〜5μM)が確認された。要因計画を用いて、2種の薬剤ケトプロフェンおよびニフェジピンによる、以下の濃度での9つの異なる併用効果についてキャラクタリゼーションを行った。(i)ケトプロフェン:0.3μM、1.0μMまたは3.0μM;および(ii)ニフェジピン:0.1μM、0.3μMまたは1.0μM。この被検処理群(群2〜10)を、以下の表3にまとめておく:
表3
試験したケトプロフェン−ニフェジピンの組み合わせ
【0111】
【表3】

ブラジキニン濃度−反応データを、3パラメータロジスティック応答(3PL)関数とも呼ばれる可変勾配のシグモイダル式にフィットさせ、最大張力、EC50、曲線の底部が0に固定されたHill勾配を得た。インヒビターの存在下での収縮の力については、インヒビターを加える前の同じ切片内で観察されたブラジキニンの最大効果に対する比で表した。
【0112】
2.結果
すべての曲線の実験データにおいて、カーブフィッティングを行うと、最大張力およびEC50値を正確に規定することができた。図7の対照曲線によれば、BKはpEC50値8.14すなわち72nM(n=12切片)で収縮の力を濃度依存的に増大させた。活性化曲線のキャラクタリゼーションの対象としたのは、0.65という緩やかなHill勾配であった。別の収縮データはすべて、張力およびアンタゴニストの一切存在しない12の組織切片から得たブラジキニンの最大効果に対する比で表した。
【0113】
ブラジキニン誘発膀胱収縮の抑制に用いたニフェジピンおよびケトプロフェンの9種の異なる併用結果を、以下の3つの表および3つの図に示してある。試験したニフェジピンおよびケトプロフェンの濃度が最低(それぞれ0.1μMおよび0.3μM)の場合、対照とする最大張力に対して38%の低下が観察された(表4)。同じ濃度のニフェジピンの存在下でケトプロフェン濃度を上昇(1.0および3.0μM)させると、最大収縮張力がさらに低下したため、対照とした張力に対して各々わずか30および23.4%にしかならなかった。ニフェジピンおよびケトプロフェン(0.3〜3.0μM)の存在下では、ブラジキニンに対する濃度−反応曲線はすべて、右にシフトしており、最大効果が見られたのはケトプロフェン濃度が最高のときだった。この組み合わせでは、同時に、対照に対するpEC50が1.0log単位分だけシフトした。EC50パラメータの変化は、最大張力の変化と相関しなかったようである。この結果は図7に図示するが、この図は対照群と、ニフェジピンの濃度が一律0.1μMでケトプロフェンの濃度に幅がある群とを比較したものである。それぞれの薬剤の組み合わせでの収縮率を、対照とするブラジキニンの最大反応に対する比で表す。抑制の全体的なパターンは、大部分が最大張力の有意な低下を示しており、ニフェジピンとケトプロフェンとを併用すると、ブラジキニン誘発収縮に関して非競合的アンタゴニストの形で機構的に共同で作用することが証明された。
【0114】
表4
0.1μMのニフェジピン(NIF)に0.3〜3.0μMのケトプロフェン(KET)を加えたときの、濃度−反応曲線フィッティング後のパラメータ
【0115】
【表4】

Est.=推定値
SEM=平均値の標準誤差
Tmax=カーブフィッティングにより求めた最大張力。
【0116】
0.3μMのニフェジピンの存在下で、併用処理に含まれるケトプロフェンの濃度を上昇させると、最大張力は、36.4%から16.0%に段階的に低下した。ニフェジピンの濃度を上げて(0.3μM)併用すると、ニフェジピン0.1μMの存在下での対応するケトプロフェンの各濃度に比べ、最大張力の低下が大きくなった。ニフェジピン0.3μMとの併用に対する最大張力のレベルは、ニフェジピンとケトプロフェンとの濃度比を1:1、1:3.3および1:10として、3通りの組み合わせで判定した。カーブフィッティングを行ったパラメータの取得データを表5に示す。
【0117】
表4のケトプロフェン濃度に対応するデータと比較検討すると、すべてケースにおいて、最大張力の低下幅の拡大は、ニフェジピン濃度の上昇と関係があった。最も大きな変化は、ケトプロフェン濃度が最低の0.3μMのときに明白に見て取ることができ、この場合、62.11〜36.41%に低下した。ケトプロフェン濃度を上昇させると、張力はさらに大きく低下し、3.0μMでは、わずか16%にとどまった。張力のこうした変化に伴い、EC50も対照に対して同様に0.5log単位分シフトしており、これは、図8に見られるように、このニフェジピン濃度でのすべてのケトプロフェン濃度で明確に表れた。ニフェジピン0.1μMの場合と同様に、このニフェジピン濃度でのEC50値間の明らかな差異は認められなかった。インヒビターの濃度範囲に対するブラジキニンアゴニスト反応のHill勾配における差異は小さく、有意ではなかった。併用処理におけるケトプロフェン濃度の上昇が濃度−反応曲線に及ぼす影響は、0.1μMのニフェジピンおよび種々のケトプロフェン濃度でのデータに関するグラフに類似したものである。また、これらの図示データは、このようにニフェジピン濃度が上昇したときの併用に対して見られる、BK反応の拮抗作用の非競合的性質も示している。
【0118】
表5
0.3μMのニフェジピン(NIF)に0.3〜3.0μMのケトプロフェン(KET)を加えたときの、濃度−反応曲線フィッティング後のパラメータ
【0119】
【表5】

Est.=推定値
SEM=平均値の標準誤差
Tmax=カーブフィッティングにより求めた最大張力。
【0120】
ニフェジピン1.0μMの存在下で観察された反応曲線の全体的な形状は、ケトプロフェンのすべての濃度で類似していた。ニフェジピン1.0μMでは、最大張力のレベルは、ニフェジピン0.3μMの対応する値よりも小さく(表6および図9)、ケトプロフェンの存在に起因する付加的な変化の大きさは、より低濃度のニフェジピンに比べ、小さくなった。EC50値はすべてのケトプロフェン濃度について約0.51単位分だけ一律にシフトしたが、最大張力とは相関しなかった。こうしたパターンは、他のすべての濃度の組み合わせでの観察結果と整合的であった。このニフェジピンの最高濃度では、ケトプロフェンを1.0μMから3.0μMに変えることで、最大張力の抑制効果が、わずかながらさらに増大することが観察された。最高濃度(ニフェジピン1.0μMとケトプロフェン3.0μM)では、対照とする張力レベルに対して89%抑制することができた。
【0121】
表6
1.0μMのニフェジピン(NIF)に0.3〜3.0μMのケトプロフェン(KET)を加えたときの、濃度−反応曲線フィッティング後のパラメータ
【0122】
【表6】

Est.=推定値
SEM=平均値の標準誤差
Tmax=カーブフィッティングにより求めた最大張力。
【0123】
3.応答局面解析
この併用実験に用いた2つの薬剤(ニフェジピンおよびケトプロフェン)の濃度は、独立変数である。最大張力は、その組み合わせに起因する影響を受けるものであり、応答局面解析の主要な関心事項となる応答変数である。薬剤の組み合わせと応答変数との間の関係は、濃度をx−y平面の直交座標としてプロットし、応答変数(最大張力など)を平面点の上の垂直距離としてプロットした、三次元プロットで表すことができる。こうしてプロットされた空間点の集合は、濃度と反応との総合的な関係を示す1つの図絵を与える。この実験計画法のアドバンテージとして、測定対象の生物反応が、そのシステムのある特定の応答(効果)レベルに限定されないことが挙げられる。したがって、固定比率の濃度を様々に組み合わせることで、2つの薬剤の相互作用の有効性を決定する濃度を広範囲にわたり試験することができる。
【0124】
ある特定のモデルに従って、なだらかな曲線(または直線)がデータに最もフィットする場合がある、単一薬剤の濃度と生物学的効果との関係の場合と同様に、なだらかな局面が、2つの薬剤の併用濃度と反応との関係の三次元プロットのデータにフィットする場合がある。この局面は、その組み合わせの加算性または相互作用を表している。この応答局面のグラフは、実際の併用効果を考察するための参照局面になるほか、データを収集できないような曲線領域の効果の可視化および予測を可能にする。
【0125】
最大張力値およびEC50値の推定に関して、標準的な応答局面解析を実施した。この応答局面法では、それぞれの用量反応曲線における最高アゴニスト濃度での張力値を、応答変数として用いてフィッティングを行った(当該張力値は、30μMのBKに対応する張力であった)。図10は、ケトプロフェンとニフェジピンとの濃度を関数とした縮小モデルのフィッティング後の応答局面を示す。この併用反応曲線は、ケトプロフェンとニフェジピン両方の濃度が上昇すると急降下する。この局面は、ニフェジピン濃度が1μMに、ケトプロフェン濃度が3μMに近づき、最大反応が得られると、かなり平坦になる。ブラジキニンの影響に対して90%の最大抑制効果が得られる濃度の組み合わせは、ケトプロフェン3μMとニフェジピン1μMである。
【0126】
4.考察
この実施例IIIの研究では、平滑筋収縮を刺激するアゴニストとしてブラジキニンを用いて、ニフェジピンとケトプロフェンとの組み合わせた場合の効果を評価した。ブラジキニンはラット膀胱組織切片のアッセイシステム(実施例I〜III)で用いて、収縮の内在性メディエータとして機能させた。ニフェジピンおよびケトプロフェンの各濃度の組み合わせすべてで見られた抑制効果の全体的なパターンは、非競合的拮抗作用という特性を示した。L型電位依存的チャネルに作用することで、細胞膜を介したカルシウムイオンの注入を妨害するニフェジピンは、ブラジキニン受容体活性化による平滑筋収縮を、この受容体を直接抑制することなく減弱する。単一の薬剤としてのニフェジピンの抑制効果は、ブラジキニンの最大反応の低下を引き起こすことを上記(実施例II)に示したが、この反応には、当該アゴニストの残りの反応に対する有効性に統計的に有意な変化が伴わなかった。
【0127】
この研究により、試験したニフェジピン濃度が最低のときにケトプロフェンを加えると抑制効果が大きく高まり、かつその効果は試験した組み合わせのすべての濃度において明白であるという驚くべき所見が明らかになった。低濃度のニフェジピンでは、この抑制効果は相加的どころではない、すなわち、事実上、相乗的である。対照的に、同一濃度のケトプロフェンの単独処理では、最大収縮張力は低下せず、9通りの組み合わせに対するEC50値への有意な効果のほか、ケトプロフェンへの濃度依存性は観察されなかった。したがって、こうした最大張力に対する相乗的な相互作用およびEC50に対する強い影響がないことは、この試験系で単一薬剤として試験した際のケトプロフェン作用に関する研究に基づく予想外の結果であった。
【0128】
総合すると、こられのデータは、炎症誘発性アゴニストであるブラジキニンの影響が、共に平滑筋収縮を増大させる、L型カルシウムチャネルの同時活性化とアラキドン代謝産物の誘導とにより一部仲介され得ることを示す。理論に束縛されることを希望しないが、こうした影響は、細胞レベルおよび組織レベルで作動する正のフィードパックループに起因する可能性がある。ブラジキニン受容体が活性化されると、細胞内に産生されるプロスタグランジンが細胞外の環境に移動する場合があり、そこで相互に作用し、さらにプロスタノイド受容体サブタイプを活性化する可能性がある。プロスタノイド受容体サブタイプは、少なくとも4種類知られており、EP1、EP2、EP3およびEP4と称されている。これらのサブタイプのうち、EP1受容体はGタンパク質を介して共役し、ホホイノシチド加水分解および/またはカルシウムのPLC非依存性注入を刺激すると考えられている。EP1受容体はすでに平滑筋で確認されており、そこで収縮活性を仲介する機能を果たすことができる。したがって、収縮活性に対するケトプロフェンおよびニフェジピンの相乗的な協力作用の発見は、カルシウム動員の同時遮断と、PGE主導のプロスタノイド受容体の活性化に関与する正のフィードバックループの同時抑制との結果である可能性がある。
【0129】
結論として、ニフェジピンとケトプロフェンではどの組み合わせでも、ラット膀胱組織切片アッセイにおいて、いずれかの薬剤単独の場合に比べてブラジキニン誘発最大収縮に対する抑制効果が高まることが分かった。さらに、試験したニフェジピンとケトプロフェンとの複数の組み合わせについて、応答局面解析により最適濃度を決定することができた。ケトプロフェン3.0μMとニフェジピン1.0μMとを含む固定比の組み合わせで、抑制効果が約90%になることが確認された。
【0130】
実施例IV
ニフェジピンおよびケトプロフェンによる、ラット膀胱組織における複数のアゴニスト誘発収縮張力およびPGEの放出の抑制
この研究の目的は、複数のアゴニストを用いることにより、ラット膀胱の収縮力およびアゴニスト刺激によるPGE産生に及ぼすケトプロフェンおよびニフェジピンの効果を評価することであった。ブラジキニン、サブスタンスP、ヒスタミンおよびATPは、急性炎症反応の一部として放出され、それぞれブラジキニン受容体(B1およびB2サブタイプ)、タキキニン受容体(NK1〜3)およびヒスタミン受容体(すべてのサブタイプ)ならびにプリンP2X受容体およびP2Y受容体を活性化することができる内在性メディエータである。カルバミルコリンが、筋肉と、膀胱に存在するニューロンニコチン性アセチルコリンサブタイプまたはムスカリニックアセチルコリン受容体サブタイプ(M1〜5)とを活性化できるアゴニストであるのに対し、メトキサミンは、α−アドレナリン作動性受容体に特異的である。第1の目的は、ラット膀胱組織切片モデルにおいて、それぞれ固定濃度のケトプロフェン(10μM)およびニフェジピン(1μM)が6種のアゴニスト(ブラジキニン、サブスタンスP、カルバミルコリン、メトキサミン、ヒスタミンおよびATP)それぞれにより誘発される収縮張力に与える効果を個別に評価することであった。第2の目的は、平滑筋の収縮張力測定のために採用された同じテスト条件中に、ケトプロフェンまたはニフェジピンいずれかの存在下において、各アゴニストによる刺激に応答して膀胱組織から放出されるPGE量を求めることであった。
【0131】
1.方法
上記実施例Iで説明した膀胱切片の収縮法を用いて、ウィスター系ラットの膀胱組織切片について、調製、変換および平衡化を行った。ケトプロフェン10μMまたはニフェジピン1.0μMのいずれかを、10分にわたりその組織により個別にプレインキュベートした後、張力の刺激を目的として、それぞれのED75に相当する濃度で以下のアゴニストにより刺激した:ブラジキニン0.03μM;サブスタンスP0.03μM;カルボコール3.0μM;メトキサミン30μM;ヒスタミン25μM;ATP20μM。一定濃度のアンタゴニスト(ニフェジピンまたはケトプロフェン)に対するアンタゴニスト活性を、その濃度のアンタゴニストが前記のアゴニスト誘発(ブラジキニン0.03μMでの誘発など)反応を50パーセント以上(≧50%)抑制する能力として求めた。アンタゴニストの各濃度を4種類の組織標本で試験した。
【0132】
複数のアゴニストに応答したPGE放出に与える2つの薬剤の影響を、被検化合物の存在下で、アゴニストによる10分間の同じプレインキュベーションプロトコールと、その後の30分間のインキュベーション時間とを用いて比較検討した。各アゴニスト(ブラジキニン0.03μMなど)による処理後30分でのPGE産生量を、被検化合物の非存在下と存在下とで求めた。最初の試料1.0mlを、アゴニストによる30分間のインキュベーション後に組織浴から取り出した。その後、この組織を、10mlのクレブス溶液を用いて、15分ごとに2時間にわたり洗浄した。被検化合物を加えてから、同一のアゴニストで再度負荷をかける前に10分間にわたりプレインキュベートした。試験対象のアンタゴニストおよびアゴニストの存在下でさらに30分間経過してから、1.0mlを、解析のため浴から取り出した。泌尿器膀胱切片からのPGEの放出量を、規定の酵素免疫測定法(EIA)を用いて測定した。試料を直ちに凍結させ、アッセイまで−4℃で保管した。この膀胱切片を、ブロッティングにより穏やかに乾燥させ、次いで秤量した。結果を、組織1ミリグラム当たりのPGE放出量(ピコグラム単位)で表す。
【0133】
2.結果
調査対象のアゴニストはすべて、作用機序とは無関係に膀胱組織切片収縮を刺激しており、複数のメディエータが膀胱平滑筋収縮張力を増大させ得ることを示した。ニフェジピン(1μM)は、各アゴニストが誘発した収縮張力の増大に対して大きな抑制効果(>67%)を引き起こした(図11)。ブラジキニンに対する収縮反応は、ニフェジピンとケトプロフェンの双方の影響を受けた(抑制効果はそれぞれ81%および67%)。対照的に、サブスタンスP、カルバミルコリンおよびATPにより誘発された収縮張力の増大は、ケトプロフェンの影響を受けなかった。ケトプロフェンはまた、メトキサミンおよびヒスタミンに対する張力の緩和効果もごくわずかにとどまった(<25%)。
【0134】
ブラジキニンは、試験対象の他のアゴニストに比べ、PGEの最も大きな増加を惹起した。ブラジキニンが惹起した放出は、ケトプロフェンにより効果的に抑制された(81%)とはいえ、ニフェジピンによる前処理の影響は最小限にとどまった(12%)(図12)。したがって、ニフェジピンによる平滑筋張力の抑制効果の程度は、アゴニスト誘発PGE反応とは関連がなく、ケトプロフェンの効果と異なった。その他のGPCRアゴニストによる刺激に応答して産生されるPGEの膀胱での絶対レベルは、ブラジキニンで見られる場合の約10分の1であった。
【0135】
要約すると、本研究によれば、平滑筋収縮張力の増大は、膀胱組織の様々なGPCRアゴニストにより誘発される可能性がある。さらに、こうした薬剤の通常のシグナル伝達機序は、ラット泌尿器膀胱におけるL型Ca2+チャネルの活性化を介して一部仲介される。ニフェジピンによるL型Ca2+チャネルの抑制は、痙攣または過活動と関係する膀胱平滑筋張力の増大につながる可能性がある多数の病態生理学的メディエータを抑制する有効な機序を示唆する。ケトプロフェンが、ブラジキニン刺激によるPGE産生および膀胱からのPGE放出を抑制した一方で、ニフェジピンは、こうした反応に対する効果を示さなかった。したがって、ニフェジピンおよびケトプロフェンは、異なる機序で作用し、平滑筋収縮張力および膀胱組織における炎症誘発性プロスタグランジンの放出を抑制する。
【0136】
実施例V
酢酸過活動膀胱モデルにおいて、ラットの膀胱機能に与えるケトプロフェンおよびニフェジピンの影響
本研究の主要な目的は、0.2%酢酸を含む生理食塩水(酸性化生理食塩水)による灌流によって膀胱機能を過活動状態にした雌ラットに対して、膀胱内への局所送達を行い、その送達中におけるケトプロフェンおよびニフェジピンの効果を測定することにあった。膀胱を介して0.2%酢酸を灌流すると、膀胱内圧測定での機能的変化に反映される急性炎症状態が短時間で誘発されることが知られている。
【0137】
1.方法
本研究で用いた方法は、一般に使用されている酢酸誘発過活動膀胱のラットモデルを適合したものである。このモデルでは、生理食塩水に0.2%酢酸を加えたものを膀胱灌流液として用いることで膀胱の急性炎症を引き起こし、外科的処置からの回復期後に、麻酔下で膀胱内圧測定を実施する。最初の安定化期間が生じた後の数時間は、一定間隔の排尿サイクルを確認することができる。注入ポンプに接続した膀胱カテーテルを用いて、規定の定率で薬液を膀胱に直接送達した。
【0138】
当該動物を麻酔し、被検薬を洗浄できるように膀胱カテーテルを外科的に移植した。以下の膀胱内圧測定パラメータについて、メッドアソシエーツシストメトリーステーションおよびソフトウェアプログラムを用いてモニターした:排尿間隔(ICI)、トリガー圧力(TP)、排尿圧(MP)および排尿量(MV)。前段階の生理食塩水注入(15分以上のベースライン安定化、続いて通常の代表的な7回のICI間隔)時に、正常かつ安定的な膀胱内圧測定特性を示したラットだけを研究に用いた。この生理食塩水注入後、0.2%酢酸を含有する生理食塩水に被検薬を加えたものをラットの膀胱に20分間注入し、続いて解析のために、代表的な7回のICI間隔を記録した。この研究では、採用した洗浄溶液の濃度が一定であり、かつ決められた一定時間に対して一定の灌流率としたため、すべての動物に各薬剤を一定かつ均一な用量で送達したことになる。
【0139】
雌ラットの群に、選択した濃度(0.01〜25μM)でケトプロフェンだけを、あるいは選択した濃度(0.1〜10μM)でニフェジピンだけを投与した。各群では、5〜7匹のラットを普通に試験した。酸性化生理食塩水を対照物とした。注入溶液はすべて用時調製したもので、実験日に新鮮であった。各被検薬に関して、3通りの膀胱洗浄時間を採用した:1)ベースライン(生理食塩水のみ)は1時間;2)生理食塩水のみの薬剤は15分;および3)0.2%酸性化生理食塩水中の薬剤は1時間。
【0140】
2.結果
対照動物では、手術後最初の1時間で、生理食塩水0.1μl/分の一定の洗浄率に応答した膀胱収縮のベースラインレベルに至った。収縮から次の収縮までの時間(ICI、秒)と最大排尿圧(MP、mmHg)は、動物個体間でやや異なったようであるが、安定化後の動物個体ではかなり一定していた。0.2%酢酸を灌流緩衝液に加えた後、急激な収縮が見られ、ICIが大幅に短縮された。収縮圧力が増加すると、多くの場合、膀胱収縮から次の収縮までの時間も短縮された。膀胱の機能的反応におけるこうした変化は、図13に示すように、酸性化生理食塩水による膀胱の灌流後に定常的に測定することができた。対照群では、0.2%酢酸での洗浄に応答して、ICIがおおむね40〜50%短縮された(平均%ICI=58.4%±6.8%、n=8)。
【0141】
洗浄緩衝液にケトプロフェンを加えると、ICIの短縮に対する濃度依存的な抑制効果が生じた(図14)。完全な抑制効果は、約3μMのケトプロフェンで認められたが、濃度が上昇すると、100%を上回ることが多かった(データを図示せず)。
【0142】
また、ニフェジピンを洗浄緩衝液に加えても、ICIの短縮に対する濃度依存的な抑制効果が生じた(図15)。完全な抑制効果は確認されなかったものの、1μMのニフェジピンで最大の効果が見られた。濃度を高くしても、ベースラインの約75%で横ばいになることが多かった。
【0143】
実施例VI
ラット膀胱生理食塩水モデルにおける、ニフェジピンとケトプロフェンとの組み合わせの吸収に関する薬物動態
この研究の主要な目的は、ラットに対して、ケトプロフェンとニフェジピンとの組み合わせを膀胱内に局所送達する間およびその後に、これらの薬剤の全身血漿濃度を測定することにあった。この研究の第2の目的は、個別にまたは併用して投与された際のケトプロフェンおよびニフェジピンの出現率を判定することであった。最後に、この研究の第3の目的は、膀胱の外科的外傷後と、これに続く各薬剤またはその組み合わせの膀胱内灌流後に、局所薬剤送達が炎症誘発性メディエータであるPGEのラット膀胱組織中での含有量に足しておよぼす効果を評価することにあった。
【0144】
1.方法
この研究には、以下のとおり主に3つの動物処理群がある:ケトプロフェン(10μM)とニフェジピン(10μM)との組み合わせ;ケトプロフェン(10μM)単独;およびニフェジピン(10μM)単独。注入ポンプに接続した膀胱カテーテルを用いて、規定の定率で薬液を膀胱に直接送達した。
【0145】
3種の薬剤処理群それぞれについて、3通りの膀胱洗浄時間を採用し、膀胱灌流溶液ごとに以下のように各時間を決定した:1)ベースライン(生理食塩水のみ)は1時間;2)生理食塩水のみの薬剤は1時間;および3)投与停止後の生理食塩水は30分(分)。動物を麻酔してから、膀胱穹窿部にカテーテルを外科的に移植し、注入ポンプにより100μ/分の一定流量で被検薬を灌流できるようにした。期間1では、使用した灌流液は生理食塩水であり、血漿試料を一切収集しなかった。期間2の開始時に、被検薬を灌流してから0分、15分、30分、45分および60分の時点で血漿試料を収集した。被検薬による灌流から60分後、生理食塩水だけをさらに30分間灌流してから、さらに75分および90分の2つの時点で試料を収集して、灌流後の被検薬の急性期を判定した。この研究では、採用した洗浄溶液の濃度が一定であり、かつ決められた一定時間に対して一定の灌流率としたため、すべての動物に各薬剤を一定かつ均一な用量で送達したことになる。
【0146】
全血試料を、指定の収集時刻にKEDTAチューブに収集した。収集した全血量は、1試料当たり約0.2mLであった。この血液を遠心機でスピンしてから、その血漿をポリプロピレンチューブに移行した。血漿試料を、解析のために出荷するまで−80℃で凍結保管した。ラットをCO吸入により安楽死させ、膀胱を直ぐに解剖してから、液体窒素で凍結させて、組織中PGEの組織含量の測定を行うまで−80℃で凍結保管した。
【0147】
ケトプロフェンとニフェジピンとの組み合わせについては、5mLのガラスバイアル中、pH7.5になるように50mMのクエン酸ナトリウム緩衝液を加えた、ポリエチレングリコール400(PEG400)60%に対して水を40%含む溶媒ベースに、ケトプロフェン(10mM)とニフェジピン(10mM)を含有させる形で、本発明の態様に従って製剤した。使用の直前に、この組み合わせ液を1:1000の比の標準洗浄液で希釈したため、膀胱に直接送達される活性剤の最終濃度は、それぞれ10μMとなった。これらの実験では、ニフェジピンとケトプロフェンとの濃度比を1:1で固定し、洗浄緩衝液に含まれる各薬剤の最終濃度10μMを維持した。
【0148】
2.結果
この研究では、ケトプロフェン10μMを含む生理食塩水で60分間膀胱を灌流した後の、ケトプロフェンの全身吸収が極めて低水準であることが示された。6匹のラットのうち4匹では、60分のときに、4.3〜5.8ng/mlという狭い範囲のCmaxが確認された。60分の時点では、ケトプロフェン10μMでの灌流を中止し、通常の生理食塩水による洗浄をさらに30分にわたり継続した。6匹のラットのうち4匹で最大血漿濃度が約5ng/mlとなった群の場合、血漿濃度は、ケトプロフェンによる灌流の中止後、75分および90分で低下した。この75〜90分のあいだに、ケトプロフェン単独群で他の2匹の動物に吸収の遅延が観察された。
【0149】
比較のために、ケトプロフェンとニフェジピンとの組み合わせに対するケトプロフェンのレベルも求めた。全身血漿濃度の上昇は、最初の60分間の薬剤灌流時には経時的にほぼ線形であり、60分での絶対平均血漿濃度は9.3ng/ml(n=6)と、治療上許容されるケトプロフェンの1日用量を大きく下回った。ケトプロフェン単独群の場合と同様、この組み合わせでの灌流を中止し、通常の生理食塩水による洗浄をさらに30分にわたり継続した。すべての動物(n=6)のケトプロフェン平均値は、60分、75分および90分で有意な差異は認められなかった。
【0150】
ケトプロフェン単独群と組み合わせ群に関するケトプロフェン血漿濃度の平均値の結果を比較したものを、図16に図示してある。この組み合わせでは、各平均値(および平均値の標準誤差、SEM)が60分後に一定の血漿濃度となった。時間軸に沿って一番最初の段階では、わずかな差異が見られたものの、30分以後の組み合わせ群とケトプロフェン単独群のケトプロフェン血漿濃度に関する最大レベルまたは吸収キネティクスいずれにおいても、大きな差異はまったく観察されず、また最大レベルにおいては、ケトプロフェンとニフェジピンとの明らかな薬物間相互作用は存在しないことが示された。
【0151】
ニフェジピンに関して観察された全体的な動態特性は、ケトプロフェンに関して観察されたものと類似していた。ニフェジピン単独の血漿群では、ニフェジピン血漿濃度が、5/6の動物で線形に上昇し、1/6の動物で若干の吸収の遅延が観察された。ニフェジピン群のCmax血漿濃度は、60分のときに5/6の動物で10.6〜16.0ng/mlの範囲にあった。60分のときに観察された最大血漿濃度の平均値は、ニフェジピン経口治療の1日用量を投与した場合にヒトで得られる、最大許容レベルの平均値79±44ng/mlを下回った。
【0152】
また、ケトプロフェンとニフェジピンとの組み合わせを用いた場合のニフェジピンの全身血漿濃度の上昇は、最初の60分間の薬剤灌流時には、時間の経過と共に線形の上昇を示した。60分の時点での組み合わせ群のCmax血漿濃度は、6匹の動物すべての平均値が18.2ng/mlであり、濃度値は8.2〜34.6ng/mlにわたった。60分の時点で観察された最大血漿濃度の平均値は、ニフェジピン経口治療の1日用量を投与した場合に得られる最大レベルの平均値の約4分の1である。
【0153】
図17に示すとおり、ニフェジピンの最大血漿濃度の平均値(およびプロットしたSEM)を比較すると、膀胱内送達の最初の灌流時に似たような線形で増加している。ニフェジピンとケトプロフェンとの組み合わせ群に対して、ニフェジピン単独群にニフェジピン血漿濃度の有意な差異はまったく認められなかった。
【0154】
90分の膀胱灌流時間の終了時に、動物から膀胱を摘出し、続いて酵素免疫測定システムを用いて、PGE含有量について膀胱全体を解析した。図18に示したデータは、1処理群につき動物6匹の平均値の標準誤差をプラスマイナスしたpg/mgタンパク質を単位として、PGEの平均値として表されている。動物をニフェジピンで処理すると、観察された膀胱組織のPGEレベルは、421±97pg/mgタンパク(n=6)であるが、これに対し、ケトプロフェン単独処理群またはケトプロフェンとニフェジピンとの併用処理群の存在下でのレベルは、それぞれ83±22(n=6)および115±63pg/mg(n=5)と統計的に有意(p<0.05)に低くなった。ケトプロフェン処理群の間または併用処理群の間では、統計的に有意な差異はまったく認められなかった。要約すると、膀胱灌流時のケトプロフェンの単独処理または併用処理は、ニフェジピン処理群に比べて、膀胱全体で産生されるPGEを大きく抑制した。
【0155】
3.考察
局所薬剤送達向けの膀胱内灌流法を利用して、本研究での試験対象の薬剤を膀胱内の吸収部位に直接接触させた。持続的に灌流を行うことで、薬剤送達時の膀胱内でのケトプロフェン、ニフェジピンまたはその組み合わせの薬剤濃度を、いずれも一定に維持した。こうした条件下で、1時間の膀胱内灌流時に雌ラットに発生した薬剤の全身曝露は、最低限のものであった。測定した最初の15分のあいだで検出可能な薬剤は、それぞれ低レベルであり、時間の経過に伴って吸収は各薬剤に対する薬剤灌流の一次関数のように徐々に進行した。
【0156】
局所送達された薬剤および薬剤の組み合わせは、尿路上皮、求心性C−線維、遠心性線維および平滑筋などの膀胱構造に曝露された。この研究で得られたデータによれば、この作用は局所的なものであり、試験対象のどちらの薬剤も最初の血漿濃度が非常に低いため、中枢神経系機構を介して仲介される可能性がある全身作用とみなすことはできない。
【0157】
試験対象の各薬剤の血漿濃度と、ヒトに対して通常の経口投薬を行う場合の周知のレベルとを比較すると、観察された差異の大きさが明らかになる。併用処理群では、ケトプロフェンの最大レベルは、治療上許容されるケトプロフェンの1日用量で得られるヒトの最大血漿濃度(Cmax)の約400分の1であった(60分の時点でのラットのケトプロフェン血漿濃度の平均値は9.29±2.13ng/ml)。ちなみに、200mgのケトプロフェン1錠(単回経口投与)に対して許容される1日の最大Cmaxの平均値は、3900ng/mlである。同様に、ニフェジピンに関して観察された最大レベルは、約15ng/mlから25ng/mlであった。最大レベル(Cmax)は一般に、60分の薬剤灌流時間の終了時、またはその後の30分のサンプリング時間に発生する。従来の経口投与による周知の血漿濃度と比較した場合、10mgの短時間作用型ニフェジピン1錠に対して許容される1日のCmaxは、79±44ng/mlと報告されている。全身曝露については、単独投与かニフェジピンとの併用投与かを問わず、ケトプロフェンの血漿濃度に類似していた。同様に、ニフェジピンの血漿濃度は、単独投与かケトプロフェンとの併用投与かを問わず、類似したものであった。
【0158】
また、この研究では、研究の処理条件ごとに膀胱のPGE含有量も求めた。もう1つの重要な所見は、膀胱全体のPGEレベルに関するアッセイで測定されたケトプロフェンの持続的な効果である。膀胱灌流中にケトプロフェンの単独処理または併用処理を低濃度で行うと、ニフェジピン処理群に比べて、膀胱組織で産生されるPGEが大きく抑制された。ケトプロフェンの存在下における膀胱組織のPGEレベルは、併用処理後のレベルと有意な差異がなかった。この研究では薬剤の送達を60分で中止し、次いで生理食塩水を用いて、さらに30分にわたり洗浄したため、薬剤送達停止後の期間にPGEの抑制効果が、依然として活発であることが示された。したがって、膀胱内の局所薬剤送達に関する本モデルにおいて、ケトプロフェンは、抗炎症性活性が長期にわたることが実証された。
【0159】
実施例VII
この研究の目的は、水性液体溶液製剤に対するケトプロフェンおよびニフェジピンの溶解度を評価することであった。
【0160】
1.方法
F3/1、F10/3およびF30/10として示した、ケトプロフェンとニフェジピンとの3種の配合液体製剤を、以下の表8に示す組成物に従って調製した。3種の試験製剤ではすべて、50mMのクエン酸ナトリウム水性緩衝液を使用した。F3/1、F10/3およびF30/10に対するケトプロフェン/ニフィジピン(nifidipine)の標的溶解度は、それぞれ3mM/1mM、10mM/3mMおよび30mM/10mMであった。
【0161】
表8
ニフェジピンとケトプロフェンとの3種の組み合わせ製剤に関する溶解度の結果
【0162】
【表8】

2.結果
製剤にケトプロフェンとニフェジピンの両活性剤を完全に溶解させるため、PEG400の比率が異なる35%v/vPEG400(F3/1)、50%v/vPEG400(F10/3)、60%v/vPEG400(F30/10)を共溶媒として使用した。可溶化剤としてPEG400を用いた場合、3種の製剤すべてに対するケトプロフェンおよびニフェジピンの概算の飽和溶解度は、それぞれの標的溶解度の約1.5倍であった。表8の溶解度の結果は、高濃縮の組み合わせ溶液製剤の調製を望む際に、PEG400が2つの薬剤にとって溶解度を高める好適な薬剤であることを明確に示している。
【0163】
実施例VIII
この研究の目的は、ケトプロフェンとニフェジピンとの水性液体溶液製剤の組み合わせ例の安定性を評価することであった。
【0164】
1.方法
F1〜F4として示した、ケトプロフェンとニフェジピンとの組み合わせ溶液製剤4例を、表9に示す組成物で調製した。4種の製剤すべてで、活性薬剤の濃度は、ケトプロフェンが3mM、ニフェジピンが1mMであった。4種の製剤がすべて、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)と35%v/vのPEG400とを採用した。使用した緩衝液のイオン強度は、F1およびF2が50mMならびにF3およびF4が20mMであった。最初の製剤F1には、抗酸化剤をまったく加えなかった一方、組み合わせ製剤F2、F3およびF4にはそれぞれ、0.05%没食子酸プロピル、0.02%メタ重亜硫酸ナトリウム、0.05%没食子酸プロピルと0.02%メタ重亜硫酸ナトリウムを加えた。
【0165】
表9
試験したニフェジピンとケトプロフェンとの組み合わせ製剤
【0166】
【表9】

異なる期間で保管した後、アイソクラティック高速液体クロマトグラフ(HPLC)法を用いて、これらの試験溶液製剤におけるケトプロフェンおよびニフェジピンならびにその関連物質を定量化した。製剤試料を取り出し、移動相に希釈して、最終濃度がケトプロフェンで約0.76mg/mL〜2.54mg/mL、ニフェジピンで約0.35mg/mL〜約1.15mg/mLになるようにした。関連物質のアッセイのクロマトグラフ条件は以下のとおりであった:(1)検出波長:紫外241nm;(2)カラム:ゾルバックスSB−C18、5μM、4.6×150mm;(3)カラム温度:30±1℃;(4)流量:1.0mL/分;(5)注入量:20μL;(6)分析時間:27分。
【0167】
2.結果
図19は、60℃で1カ月間の保管によるストレス後の組み合わせ溶液製剤F1のクロマトグラム例を示す。2つの活性成分、ケトプロフェンおよびニフェジピンの保持時間は、それぞれ24.19分および19.31分である。主として4つの関連物質があり、ニフェジピンに対する相対保持時間(RRT)は、0.34、0.58、0.75および0.87であった。この安定性データを表10にまとめてある。
【0168】
表10
異なる温度で保管した後の試験対象製剤におけるケトプロフェンおよびニフェジピンの全関連物質(%)
【0169】
【表10】

表10の安定性データは、少量の没食子酸プロピル(0.05%w/v)またはメタ重亜硫酸ナトリウム(0.02%w/v)のいずれかの存在下で、ケトプロフェンおよびニフィジピン(nefidipine)、特にニフェジピンの化学的安定性が、40℃および60℃などの高温において大幅に高まり、この効果が、没食子酸プロピルの場合に予想外に顕著であることを示す。少量の没食子酸プロピル(0.05%w/v)とメタ重亜硫酸ナトリウム(0.02%w/v)との双方をF4に加えると、2つの薬剤の安定性は、抗酸化剤なしで、あるいは2つの抗酸化剤のうち1つだけでも、すべての温度において、その他の3つの組み合わせ製剤に比べて大幅に向上しており、これは、この2つの抗酸化剤の相加または相乗分解抑制効果を示唆する。
【0170】
本発明の好ましい実施形態について、図示および説明を行ってきたが、当然のことながら、開示された解決策および方法に対しては、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされる可能性がある。したがって、本明細書に付与される特許状の範囲は、添付特許請求の範囲の定義のみに限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は、プロスタグランジン活性の作用に関するモデルを示す。
【図2】図2は、実施例Iにおいて、正常な動物から得られた、ブラジキニンおよびサブスタンスPの累積濃度−反応曲線を示す。
【図3】図3Aは、実施例Iにおいて、0.25μM、1.0μM、2.5μMおよび10μMのケトプロフェンの存在下で得られた、ブラジキニン濃度−反応曲線を示す;図3Bは、実施例IにおけるケトプロフェンのpA2解析のSchildプロットを示す。
【図4】図4Aは、実施例Iで試験したラット膀胱組織切片において、刺激から最初の数分でブラジキニンがPGEの産生を迅速に誘発し、30分以内で最大値に達するとともに、産生のt1/2が約7.5分であったことを示す。図4Bは、実施例Iにおいて、数分間のうちに検出された迅速なPGE産生のキネティクスを示す。
【図5】図5Aは、酢酸により誘発される排尿間隔(ICI)の縮小に対して、静脈内アスピリン(10mg/kg)が漸進的かつ時間依存的抑制効果をもたらすことを示し、図5Bは、膀胱容量を実施例Iから平行して移動したものを示す。
【図6】図6は、実施例IIにおいて、ニフェジピン濃度の上昇が、ラット膀胱切片の収縮力に与える効果を示す。
【図7】図7は、実施例IIIにおいて、ニフェジピン(0.1μM)およびケトプロフェン(0.3〜3.0μM)が、ブラジキニン刺激によるラット膀胱切片の収縮力に与える併用効果を示す。
【図8】図8は、実施例IIIにおいて、ニフェジピン(0.3μM)およびケトプロフェン(0.3〜3.0μM)が、ブラジキニン刺激によるラット膀胱切片の収縮力に与える併用効果を示す。
【図9】図9は、実施例IIIにおいて、ニフェジピン(1.0μM)およびケトプロフェン(0.3〜3.0μM)が、ブラジキニン刺激によるラット膀胱切片の収縮力に与える併用効果を示す。
【図10】図10は、実施例IIIにおいて、ラット膀胱切片おける30μMのブラジキニン誘発張力に対応する用量反応曲線から得た個々の張力値の濃度−応答局面(縮小モデル)を示す。
【図11】図11は、実施例IVにおいて、ケトプロフェン(10μM)およびニフェジピン(1μM)が個々に、複数のアゴニスト刺激によるラット膀胱組織切片の張力に与える効果を示す。
【図12】図12は、実施例IVにおいて、ケトプロフェン(10μM)およびニフェジピン(1μM)が個々に、ラット膀胱組織切片からのブラジキニン刺激によるPGE放出に与える効果を示す。
【図13】図13は、実施例Vで説明される灌流された酢酸の効果を実証する、ラット膀胱内圧測定による追跡を示す。
【図14】図14は、実施例Vにおいて、ケトプロフェンの前処理が、酢酸誘発膀胱過活動に与える効果を示す。
【図15】図15は、実施例Vにおいて、ニフェジピンの前処理が、酢酸誘発膀胱過活動に与える効果を示す。
【図16】図16は、実施例VIの薬物動態研究において、ケトプロフェンまたはケトプロフェンとニフェジピンとの組み合わせにより処理されたラットのケトプロフェン血漿濃度の平均値を示す。
【図17】図17は、実施例VIの薬学動態研究において、ニフェジピンまたはケトプロフェンとニフェジピンとの組み合わせにより処理されたラットのニフェジピン血漿濃度の平均値を示す。
【図18】図18は、実施例VIの薬物動態研究において、ニフェジピンと、ケトプロフェンと、ニフェジピンとケトプロフェンとの組み合わせとがラット膀胱内のPGEに与える効果を示す。
【図19】図19は、60℃で1カ月にわたりストレスを受けた後の、実施例VIIIによるニフェジピンとケトプロフェンとの製剤F1のクロマトグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛/炎症および痙攣を抑制するための局所送達可能な組成物であって、局所送達される部位の疼痛/炎症および痙攣が、ケトプロフェンとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせによって抑制されるよう、前記ケトプロフェンと前記カルシウムチャネルアンタゴニストとを各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む、組成物。
【請求項2】
前記カルシウムチャネルアンタゴニストがL型カルシウムチャネルアンタゴニストを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記L型カルシウムチャネルアンタゴニストが、ベラパミル、ジルチアゼム、ベプリジル、ミベフラジル、ニフェジピン、ニカルジピン、イスラジピン、アムロジピン、フェロジピン、ニソルジピンおよびニモジピンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記L型カルシウムチャネルアンタゴニストがジヒドロピリジンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記L型カルシウムチャネルアンタゴニストが、ニフェジピン、ニカルジピン、イスラジピン、アムロジピン、フェロジピン、ニソルジピンおよびニモジピンからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記L型カルシウムチャネルアンタゴニストがニフェジピンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記L型カルシウムチャネルアンタゴニストが10分以内に作用を発現する、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記カルシウムチャネルアンタゴニストがニフェジピンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ケトプロフェンおよびニフェジピンが、ケトプロフェン:ニフェジピンのモル比10:1から1:10で前記組成物に含まれる、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ケトプロフェンおよびニフェジピンが、ケトプロフェン:ニフェジピンのモル比4:1から1:1で前記組成物に含まれる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ケトプロフェンおよびニフェジピンが、ケトプロフェン:ニフェジピンのモル比3:1で前記組成物に含まれる、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ケトプロフェンが濃度500,000ナノモル以下で前記組成物(compositon)に含まれ、ニフェジピンが濃度200,000ナノモル以下で前記組成物に含まれる、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
ケトプロフェンが濃度300,000ナノモル以下で前記組成物(compositon)に含まれ、ニフェジピンが濃度100,000ナノモル以下で前記組成物に含まれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ケトプロフェンが濃度50,000ナノモル以下で前記組成物(compositon)に含まれ、ニフェジピンが濃度25,000ナノモル以下で前記組成物に含まれる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記担体が水性担体を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が少なくとも1種の安定剤を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の安定剤が没食子酸プロピルを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物がメタ重亜硫酸ナトリウムをさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が共溶媒としてポリエチレングリコール400をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物がクエン酸緩衝液をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が緩衝液をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記緩衝液がクエン酸緩衝液を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が共溶媒をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項24】
前記共溶媒がポリエチレングリコールを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記共溶媒がポリエチレングリコール400を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が没食子酸プロピルをさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が少なくとも1種の安定剤をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項28】
前記安定剤が没食子酸プロピルを含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物がナトリウムメタバイルスルファイトをさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
ケトプロフェンが濃度500,000ナノモル以下で前記組成物(compositon)に含まれ、前記カルシウムチャネルアンタゴニストが濃度200,000ナノモル以下で前記組成物に含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
ケトプロフェンが濃度300,000ナノモル以下で前記組成物(compositon)に含まれ、前記カルシウムチャネルアンタゴニストが濃度100,000ナノモル以下で前記組成物に含まれる、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
ケトプロフェンが濃度50,000ナノモル以下で前記組成物(compositon)に含まれ、前記カルシウムチャネルアンタゴニストが濃度25,000ナノモル以下で前記組成物に含まれる、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
ケトプロフェンがそのS−(+)−鏡像異性体であるデキスケトプロフェンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
前記担体が水性担体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が少なくとも1種の安定剤を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記少なくとも1種の安定剤が没食子酸プロピルを含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物がメタ重亜硫酸ナトリウムをさらに含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が共溶媒としてポリエチレングリコール400をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物がクエン酸緩衝液をさらに含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物が緩衝液をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
前記緩衝液がクエン酸緩衝液を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記組成物が共溶媒をさらに含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項43】
前記共溶媒がポリエチレングリコールを含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記共溶媒がポリエチレングリコール400を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記組成物が没食子酸プロピルをさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
前記担体が液体洗浄担体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項47】
前記組成物が移植可能な装置または医療機器に被覆された、請求項1に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物が移植可能な装置または医療機器に含浸された、請求項1に記載の組成物。
【請求項49】
疼痛/炎症および痙攣を抑制するための局所送達可能な組成物であって、局所送達される部位の疼痛/炎症および痙攣が、シクロオイゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせによって抑制されるよう、その各々を治療有効量で組み合わせて含み、さらに、安定剤としての没食子酸プロピルと、液体担体とを含む、組成物。
【請求項50】
前記組成物が共溶媒としてポリエチレングリコールを含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記組成物がポリエチレングリコール400を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物が少なくとも第2の安定剤を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項53】
前記第2の安定剤がメタ重亜硫酸ナトリウムを含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物がクエン酸緩衝液をさらに含む、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物がクエン酸緩衝液をさらに含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項56】
疼痛/炎症および痙攣を抑制するための局所送達可能な組成物であって、局所送達される部位の疼痛/炎症および痙攣が、シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせによって抑制されるよう、その各々を治療有効量で組み合わせて含み、さらに、水性液体担体と、共溶媒と、少なくとも1種の安定剤と、緩衝液とを含む、組成物。
【請求項57】
尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法であって、
前記尿路の疼痛/炎症および痙攣が、ケトプロフェンとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせによって抑制されるよう、前記ケトプロフェンと前記カルシウムチャネルアンタゴニストとを各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、前記尿路に送達することを含む、方法。
【請求項58】
前記組成物が、泌尿器科の診断処置、介入処置、外科的処置およびその他の医学的処置中に周術的に尿路に送達される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が膀胱鏡検査の処置中に周術的に送達される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が尿管内視鏡検査の処置中に周術的に送達される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物が腎臓結石または膀胱結石の除去、断片化または摘出の処置中に周術的に送達される、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物が、尿路組織に熱傷を引き起こす処置中に周術的に送達される、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が、レーザー、マイクロ波アブレーション、高周波アブレーション、電気焼灼または凍結融解壊死治療(cryoblation)の処置中に周術的に送達される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物が経尿道的前立腺切除術中に周術的に送達される、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
前記組成物が周術的に経直腸的または経腹膜的に前立腺に送達される、請求項58に記載の方法。
【請求項66】
前記組成物中の前記カルシウムチャネルアンタゴニストがニフェジピンを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項67】
前記組成物中の前記ケトプロフェンがそのS−(+)−鏡像異性体であるデキスケトプロフェンを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項68】
診断処置、介入処置、外科的処置またはその他の泌尿器科の医学的処置中に、尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法であって、
前記尿路の疼痛/炎症および痙攣が、ケトプロフェンとニフェジピンとの組み合わせによって抑制されるよう、前記ケトプロフェンと前記ニフェジピンとを各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、泌尿器科の処置中に周術的に前記尿路に送達することを含む、方法。
【請求項69】
前記組成物が膀胱鏡検査の処置中である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記組成物が尿管内視鏡検査の処置中に周術的に送達される、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記組成物が腎臓結石または膀胱結石の除去、断片化または摘出の処置中に周術的に送達される、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記組成物が、尿路組織に熱傷を引き起こす処置中に周術的に送達される、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記組成物が、レーザー、マイクロ波アブレーション、高周波アブレーション、電気焼灼または凍結融解壊死治療(cryoblation)の処置中に周術的に送達される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記組成物が、経尿道的前立腺切除術の処置中に周術的に送達される、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
前記組成物が周術的に経直腸的または経腹膜的に前立腺に送達される、請求項68に記載の方法。
【請求項76】
前記組成物中の前記ケトプロフェンがそのS−(+)−鏡像異性体であるデキスケトプロフェンを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項77】
泌尿器科の処置中に、尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法であって、
前記尿路の疼痛/炎症および痙攣が、シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせによって抑制されるよう、前記シクロオキシゲナーゼインヒビターと前記カルシウムチャネルアンタゴニストとを各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、尿管内視鏡検査の処置中に周術的に前記尿路に送達することを含む、方法。
【請求項78】
前記組成物中の前記シクロオキシゲナーゼ(COX)インヒビターが非選択的COX−1/COX−2インヒビターを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
泌尿器科の処置中に、尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法であって、
前記尿路の疼痛/炎症および痙攣が、シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせによって抑制されるよう、前記シクロオキシゲナーゼインヒビターと前記カルシウムチャネルアンタゴニストとを各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、腎臓結石または膀胱結石の除去、断片化または摘出の処置中に周術的に前記尿路に送達することを含む、方法。
【請求項80】
前記組成物中の前記シクロオキシゲナーゼ(COX)インヒビターが非選択的COX−1/COX−2インヒビターを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
泌尿器科の処置中に、尿路の疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法であって、
前記尿路の疼痛/炎症および痙攣が、シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせによって抑制されるよう、前記シクロオキシゲナーゼインヒビターと前記カルシウムチャネルアンタゴニストとを各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、尿路組織に熱傷を引き起こす処置中に周術的に前記尿路に送達することを含む、方法。
【請求項82】
前記組成物中の前記シクロオキシゲナーゼ(COX)インヒビターが非選択的COX−1/COX−2インヒビターを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記組成物が、レーザー、マイクロ波アブレーション、高周波アブレーション、電気焼灼または凍結融解壊死治療(cryoblation)の処置中に周術的に泌尿器構造に送達される、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
泌尿器科の処置中に、疼痛/炎症および痙攣を抑制する方法であって、
疼痛/炎症および痙攣が、シクロオキシゲナーゼインヒビターとカルシウムチャネルアンタゴニストとの組み合わせによって抑制されるよう、前記シクロオキシゲナーゼインヒビターと前記カルシウムチャネルアンタゴニストとを各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、周術的に経直腸的または経腹膜的に前記前立腺に送達することを含む、方法。
【請求項85】
前記組成物中の前記シクロオキシゲナーゼ(COX)インヒビターが非選択的COX−1/COX−2インヒビターを含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
泌尿器科の処置中に尿路の疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する方法であって、
疼痛/炎症および/または痙攣を抑制する複数の薬剤の組み合わせによって前記尿路の疼痛/炎症および/または痙攣が抑制されるよう、前記複数の薬剤を各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、尿管内視鏡検査の処置中に周術的に前記尿路に送達することを含む、方法。
【請求項87】
泌尿器科の処置中に尿路の疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する方法であって、
疼痛/炎症および/または痙攣を抑制する複数の薬剤の組み合わせによって前記尿路の疼痛/炎症および/または痙攣が抑制されるよう、前記複数の薬剤を各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、腎臓結石または膀胱結石の除去、断片化または摘出の処置中に周術的に前記尿路に送達することを含む、方法。
【請求項88】
泌尿器科の処置中に尿路の疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する方法であって、
疼痛/炎症および/または痙攣を抑制する複数の薬剤の組み合わせによって前記尿路の疼痛/炎症および/または痙攣が抑制されるよう、前記複数の薬剤を各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、尿路組織に熱傷を引き起こす処置中に周術的に前記尿路に送達することを含む、方法。
【請求項89】
前記組成物が、レーザー、マイクロ波アブレーション、高周波アブレーション、電気焼灼または凍結融解壊死治療(cryoblation)の処置中に周術的に泌尿器構造に送達される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
泌尿器科の処置中に疼痛、炎症および/または痙攣を抑制する方法であって、
疼痛/炎症および/または痙攣を抑制する複数の薬剤の組み合わせによって疼痛/炎症および/または痙攣が抑制されるよう、前記複数の薬剤を各々治療有効量で組み合わせて担体中に含む組成物を、周術的に経直腸的または経腹膜的に前立腺に送達することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−540646(P2008−540646A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512273(P2008−512273)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/009771
【国際公開番号】WO2006/127096
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(502022025)オメロス コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】