説明

シクロブタレンの製造方法

【課題】 600℃以上の高温を必要とすることのないエネルギー的に有利で、かつ塩化水素を発生しない条件でシクロブタレンを製造する方法を提供する。
【解決手段】 エステル化されたメチル基を有し、かつオルソ位にメチル基または少なくとも1個の水素をもつ置換メチル基を有する芳香族化合物を、周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される少なくとも1種の元素を担体に担持してなる触媒と接触させることを特徴とするシクロブタレンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシクロブテン環が形成された芳香族炭化水素であるアリールシクロブテン(一般的にはシクロブタレンと呼ばれている)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロブタレン、特にベンゾシクロブテンは高性能ポリマーの製造に有用なモノマーを製造するための重要な中間体である。特許文献1にはビスシクロブタレンを処理してポリマーを製造することが記載されている。このポリマーは高い熱安定性、耐溶剤性、良好な機械的物性、低い誘電率等高い電気特性を示し、電子工業用向けなど高機能樹脂として有用である。
【0003】
従来、シクロブタレンは非特許文献1に示されるようにオルソ−メチル−ベンジルクロライド誘導体のフラツシユ真空熱分解によつて製造されていた。例えば、α−クロロ−オルソ−キシレンのフラツシユ真空熱分解からベンゾシクロブテンが合成される。この反応は600℃以上の高温で行われる。また特許文献2では、不活性溶媒存在下、オルト−アルキルハロメチル芳香族化合物を熱分解することによりベンゾシクロブテンを得ている。また特許文献3では水蒸気熱分解によりベンゾシクロブテンを得ている。
【0004】
これらの反応では塩素化された原料を用いるために塩化水素が発生するという問題点がある。また収率を向上させるためには550℃以上の高温を要し、高収率を得るためには700℃程度の高温が必要とされる。このようにこれらの方法では高温の塩化水素が発生し、機器類の腐食の問題や、高温を必要とするためにエネルギー的に不利といった問題点がある。
【0005】
一方、ハロメチル化合物を用いない方法として、アセトキシルメチル化合物を用いる方法が特許文献3や非特許文献2等に提案されているが、特許文献3には実施例が示されていないため具体的方法は不明である。しかしながら、このハロメチル化合物を用いない方法においても収率を上げるためには700℃以上の高温を必要とし、さらに副反応が多く、選択率も低いという問題点を有している。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,540,763号公報
【特許文献2】特公昭64−4493号公報
【特許文献3】特開平1−146830号公報
【非特許文献1】シース(Schiess)外,「テトラヘドロン・レター(Tetrahedron Letter)」,(英国),1978年,第46巻,p.4569−4572
【非特許文献2】「アメリカン・ケミカル・ソウサイアティー・プレプリンツ・ディビジョン・オブ・ペトロウリアム・ケミストリー(American Chemical Society Preprints Division of Petroleum Chemistry)」,(米国),1979年,第24巻,第4号,p.1082−1086
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの従来技術の欠点に鑑み、600℃以上の高温を必要とすることのないエネルギー的に有利で、かつ塩化水素を発生しない条件でシクロブタレンを製造する方法が求められている。本発明はそのような方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明らは鋭意研究した結果、特定の芳香族化合物を金属担持触媒を用いて接触反応させることにより前記課題を解決できることを見出し本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、エステル化されたメチル基を有し、かつオルソ位にメチル基または少なくとも1個の水素をもつ置換メチル基を有する芳香族化合物を、周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される少なくとも1種の元素を担体に担持してなる触媒と接触させることを特徴とするシクロブタレンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法により、300〜550℃という比較的低い反応温度で、塩化水素の発生もなく、収率良くシクロブタレン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明において出発原料として用いる芳香族化合物は、エステル化されたメチル基を有し、かつそれに対してオルソ位にメチル基または少なくとも1個の水素をもつ置換メチル基を有する芳香族化合物である。ここで、少なくとも1個の水素をもつ置換メチル基とは、メチル基の1個又は2個の水素が任意の原子または基で置換された基を意味し、特に炭素数1〜10のアルキル基で置換されたアルキル置換メチル基が好ましい。また芳香族化合物としては、芳香族部分がベンゼン、ナフタレン、アントラセンまたはフェナントラセンである芳香族化合物を使用することができる。
【0011】
前記芳香族化合物としては下記式で示される化合物が特に好ましい。
【化2】

【0012】
上記式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。炭素数1〜10のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基およびデシル基が挙げられる。
Rとしては、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基またはエチル基である。
上記式中、R’は水素又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、2つのR’は同一でも異なっていても良い。R’としては水素、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
上記式中、R”は反応条件に対して安定な基を示す。R”としては、反応条件に対して安定な基であれば特に限定されないが、例えば、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、ニトロ基、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる。nは0〜4の整数であり、好ましくは0又は1である。
【0013】
本発明は、前記芳香族化合物を、周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される少なくとも1種の元素を担体に担持してなる触媒と接触させることにより、シクロブタレンを製造するものである。
周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される元素としては、好ましくはランタン、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、すず、インジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ビスマスを挙げることができ、さらに好ましくはランタン、コバルト、鉄、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、白金である。また、これらの元素を主成分としてこれに、少量の他の元素を組み合わせて使用することも出来る。
【0014】
本発明において用いる担体としては公知の触媒担体を使用することできる。例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、珪藻土、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、マグネシア、チタニア、ジルコニア、カルシアおよびそれらの複合体を挙げることができる。これらのうち、ゼオライトは結晶構造に特に制限はなく、例えば、ZSM−5、フォ−ジャサイト、エリオナイト、オフレタイト、モルデナイト、フェリエライトなどの合成ゼオライトおよび天然ゼオライトが使用できる。またこれらゼオライトのカチオン種はプロトン、アルカリ金属、アルカリ土類金属のいずれであってもよい。本発明においては、これらのうち特にシリカが好ましく用いられる。
【0015】
担体としては通常入手可能な市販品を使用することができるが、表面積が50〜500m/g、平均細孔径が50〜500オングストローム、細孔容積が0.3〜1.2ml/gの担体が好適に用いられる。これら担体の形状は特に制限はなく、粉末状のもの又は成形品を用いることができる。例えば、粉末、顆粒、タブレットの打錠成形品、球状又は棒柱状の押し出し成形品等が好ましく用いられる。
【0016】
周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される元素を担体に担持する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることが出来る。例えば、沈殿法、イオン交換法、含浸法、沈着法、混練法などの各種方法を用いて担持することができる。
例えば、含浸法についてさらに例示するならば、周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される元素を含む原料物質を適当な溶媒に溶解し、これを担体に浸漬させ、必要ならば所定の時間静置した後、公知の方法で溶媒を除去・乾燥した後、必要により焼成処理して触媒を得る。乾燥雰囲気は真空下でも窒素のような不活性雰囲気下や、空気下、あるいは水素ガス等の還元性ガス中であってもよく特に限定されるものではない。また焼成温度は、好ましくは120〜700℃、さらに好ましくは300〜500℃である。
【0017】
触媒を調製するにあたり使用する周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される元素を含む原料物質は特に限定するものではなく、通常、これらの元素の塩、錯化合物、有機金属錯体、水酸化物などが使用される。
前記元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、アセチルアセトナート塩等が使用できる。
また前記元素の錯化合物、有機金属錯体としては、ランタンの場合は、例えば、トリスシクロペンタジエニルランタン、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオネイト)ランタン等が用いられる。ハフニウムの場合は、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロロド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウム等が用いられる。バナジウムの場合は、例えば、バナドセンジクロリド、バナドセン、バナジルアセチルアセトナート、ビスシクロペンタジエニルバナジウムカルボニル等が用いられる。クロムの場合は、例えば、クロムヘキサカルボニル、ベンゼンクロミウムトリカルボニル、ペンタメチルシクロペンタジエニルクロムジカルボニルダイマー等が使用できる。マンガンの場合は、例えば、ペンタカルボニル臭化マンガン、ビスシクロペンタジエニルマンガン、シクロペンタジエニルマンガントリカルボニル等が使用できる。鉄の場合は、例えば、クロロフィル鉄ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸一ナトリウム・鉄(III)、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、フェロセン、シクロペンタジエニル鉄ジカルボニルダイマー等が使用できる。コバルトの場合は、例えば、ビスシクロペンタジエニルコバルト、コバルトカルボニル等が使用できる。ニッケルの場合は、例えば、テトラシアノニッケル酸カリウム、ビスシクロペンタジエニルニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエニル)ニッケル、塩化ヘキサアミンニッケル等が使用できる。銅の場合は、例えば、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、テトラアンミン銅硫酸塩等が使用できる。亜鉛の場合は、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム亜鉛、テトラアンミン亜鉛炭酸塩等が使用できる。レニウムの場合は、例えば、シクロペンタジエニルレニウムトリカルボニル、レニウムペンタカルボニルクロリド等が使用できる。オスミウムの場合は、例えば、オスモセン、オスミウムカルボニル等が使用できる。イリジウムの場合は、例えば、イリジウムカルボニル、クロロ1,5−シクロオクタジエンイリジウムダイマー、シクロオクタジエンアセチルアセトナートイリジウム、シクロペンタジエニルシクロオクタジエンイリジウム等が使用できる。パラジウムの場合は、例えば、テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム、テトラブロモパラジウム(II)酸ナトリウム、テトラアンミンパラジウム(II)ジクロライド、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロライド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロライド、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(II)等が使用できる。白金の場合は、例えば、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(II)酸ナトリウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、テトラアンミン白金(II)ジクロライド、ジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)白金(II)、テトラキストリフェニルフォスフィン白金(0)等が使用できる。ルテニウムの場合は、例えば、ヘキサクロロルテニウム(IV)酸カリウム、ルテニウム(VI)酸ナトリウム、ヘキサアンミンルテニウム(III)ブロミド、トリス(オキサラート)ルテニウム(III)酸カリウム、ドデカカルボニルトリルテニウム(0)、ジクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ルテニウム(II)等を使用することができる。ロジウムの場合は、例えば、ヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、ヘキサアンミンロジウム(III)トリクロライド、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(I)、ジクロロテトラカルボニルニロジウム(I)、ドデカカルボニル四ロジウム(0)等を使用することができる。銀の場合は、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオネート銀、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀等を使用できる。すずの場合は、例えば、ヘキサフルオロアセチルアセトナートすず、ジ−n−ブチルすずビスアセチルアセトナート等が使用できる。インジウムの場合は、例えば、シクロペンタジエニルインジウム、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)インジウム等が使用できる。ビスマスの場合は、例えば、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオネート)ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が使用できる。
【0018】
周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される元素の担体への担持量は、担体の重量に対して0.001〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1重量%である。担持量が0.001重量%より少ないと実質的な反応速度が得られず、また10重量%より多いと経済的に不利となる。
【0019】
本発明においては、前記芳香族化合物を前記担持触媒と接触させて反応させることにより、エステル化されたメチル基と、オルソ位のメチル基または置換メチル基の水素との反応によりシクロブテン環が形成され、シクロブタレンが製造される。
反応温度は300〜550℃が好ましく、より好ましくは350〜550℃であり、最も好ましくは400〜500℃である。
反応圧力は大気圧以下であれば特に限定されないが、生成シクロブタレン化合物の縮合を防ぐために6Pa〜10kPaが好ましく、10Pa〜5kPaであることがより好ましい。
反応は窒素、ヘリウムやアルゴンといった不活性気体流通下で行うことができる。またベンゼン、置換ベンゼンなどの気化不活性化合物共存下でも行うこともできる。
【0020】
反応は、例えば、気化させた原料を、触媒を充填し所定の温度に加熱した管状反応器中に流通させることにより行うことができる。反応管材料は反応剤に対して不活性であり、且つ反応条件で安定である材料であれば特に限定されるものではなく、例えば石英などが用いられる。また、管の形状は実用上できるだけ大きい長さ:直径の比をもつことが望ましい。例えば、10:1より大きい長さ:直径の比をもつ管状反応器が好ましく採用される。原料となる芳香族化合物は任意の方法で大気圧以下に減圧された反応器に供給することができる。反応器に入る前に反応試剤を気化させることが好ましく、また、不活性気体や気化不活性化合物共存下に行う場合、任意の方法で原料と混合できる。好ましくは原料気化時にあらかじめ混合し反応器に供給する。触媒を通過した生成物はすみやかに冷却し回収する。蒸留など任意の方法で目的物を分離することができる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
塩化白金酸カリウム12.5mgを蒸留水10mlに溶解し、担体としてのシリカ(富士シリシア化学株式会社製:Q−10)10gに浸漬した後、エバポレータを用いて水を留去した。得られた固形物を120℃で12時間乾燥させた後、窒素雰囲気で500℃、3時間焼成することにより、シリカに白金が担持された触媒を得た。該白金担持触媒における白金の担持量は、シリカに対して0.05重量%であった。
次に、内径10mm、長さ60cmの石英管熱分解反応器を用い、この反応器中央に調製した触媒1gを充填した。触媒が移動しないように石英グラスウールで固定し、電気炉に入れて450℃の平均温度に加熱した。減圧し窒素を流通させ圧力を130Paとし、窒素流通下の触媒を充填した反応器に、加熱気化させた200mgのα−アセトキシル−オルソーキシレンを1時間かけて供給した。反応器流出ガスは液体窒素で冷却凝縮させた。
収集した流出物は内部標準物質としてテトラデカンを使用してガスクロマトグラフにより有機相を分析した。その結果、44%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の26.0%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシル−オルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は11.4%であった。
【0023】
(実施例2)
実施例1において触媒担体をシリカからアルミナ(日揮化学社製)に代えた以外(白金担持量は実施例1と同様0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、59%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の14.0%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシル−オルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は8.3%であった。
【0024】
(実施例3)
実施例1において担持元素を白金からパラジウムに代えた以外(パラジウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、34%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の29%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は9.8%であった。
【0025】
(実施例4)
実施例1において担持元素を白金からイリジウムに代えた以外(イリジウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、33%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の26%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は8.6%であった。
【0026】
(実施例5)
実施例1において担持元素を白金からロジウムに代えた以外(ロジウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、68%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の6%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は4.1%であった。
【0027】
(実施例6)
実施例1において担持元素を白金からルテニウムに代えた以外(ルテニウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、39%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の22%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は8.6%であった。
【0028】
(実施例7)
実施例1において担持元素を白金からオスミウムに代えた以外(オスミウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、70%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の5%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は3.5%であった。
【0029】
(実施例8)
実施例1において担持元素を白金からレニウムに代えた以外(ロジウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、40%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の15%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は6%であった。
【0030】
(実施例9)
実施例1において担持元素を白金から銀に代えた以外(銀担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、30%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の20%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は6%であった。
【0031】
(実施例10)
実施例1において担持元素を白金からニッケルに代えた以外(ニッケル担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、30%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の25%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は7.5%であった。
【0032】
(実施例11)
実施例1において担持元素を白金からインジウムに代えた以外(インジウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、73%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の14%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は10%であった。
【0033】
(実施例12)
実施例1において担持元素を白金から銅に代えた以外(銅担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、40%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の21%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は8.4%であった。
【0034】
(実施例13)
実施例1において担持元素を白金からコバルトに代えた以外(コバルト担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、55%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の29%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は16%であった。
【0035】
(実施例14)
実施例1において担持元素を白金から亜鉛に代えた以外(亜鉛担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、78%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の23%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は18%であった。
【0036】
(実施例15)
実施例1において担持元素を白金から鉄に代えた以外(鉄担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、46%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の25%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は12%であった。
【0037】
(実施例16)
実施例1において担持元素を白金からすずに代えた以外(すず担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、30%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の10%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は3%であった。
【0038】
(実施例17)
実施例1において担持元素を白金からクロムに代えた以外(クロム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、40%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の15%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は6%であった。
【0039】
(実施例18)
実施例1において担持元素を白金からビスマスに代えた以外(ビスマス担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、40%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の20%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は8%であった。
【0040】
(実施例19)
実施例1において担持元素を白金からランタンに代えた以外(ランタン担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、42%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の31%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は13%であった。
【0041】
(実施例20)
実施例1において担持元素を白金からハフニウムに代えた以外(ハフニウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、60%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の9%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は5%であった。
【0042】
(実施例21)
実施例1において担持元素をバナジウムに代えた以外(バナジウム担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、80%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の5%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は4%であった。
【0043】
(実施例22)
実施例1において担持元素をマンガンに代えた以外(マンガン担持量は0.05重量%)は実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシル−オルソーキシレンの反応を行ったところ、60%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応し、その内の4%がベンゾシクロブテンとなった。よって、α−アセトキシルオルソーキシレンからベンゾシクロブテンへの収率は2%であった。
【0044】
(比較例1)
実施例1で用いた触媒に代えて石英ビーズ1gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でα−アセトキシルオルソーキシレンの反応を行ったところ、60%のα−アセトキシル−オルソーキシレンが反応したが、ベンゾシクロブテンは得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化されたメチル基を有し、かつオルソ位にメチル基または少なくとも1個の水素をもつ置換メチル基を有する芳香族化合物を、周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される少なくとも1種の元素を担体に担持してなる触媒と接触させることを特徴とするシクロブタレンの製造方法。
【請求項2】
前記芳香族化合物が下記式で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【化1】

(ここで、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、R’は水素又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、2つのR’は同一でも異なっていても良く、R”は反応条件に対して安定な基を示し、nは0〜4の整数を示す。)
【請求項3】
前記式中のRが、メチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記式中のR”が、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、ニトロ基、塩素、臭素またはヨウ素であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族および第15族から選択される元素が、ランタン、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、すず、インジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金およびビスマスから選択される元素であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
担体がシリカであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
大気圧以下、300℃〜550℃の反応条件下に接触させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−257076(P2006−257076A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36563(P2006−36563)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(599103731)
【Fターム(参考)】