説明

シトラール又はシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤

【課題】シトラール含有製品のシトラールは製造、流通、保存等の各段階で環化、水和、異性化等の反応によりその構造が変化し、さらに酸化反応によりp−クレゾール、p−メチルアセトフェノン等の非常に強い劣化臭を生じる。それ故、安全性が高く、しかも製品本来の香味に影響を与えることのないシトラール由来の劣化臭の生成抑制剤及びその抑制方法を提供することである。
【解決手段】アシタバ、アボカド、オオバコ、半発酵茶葉、エビスグサおよびサンザシからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物含有することを特徴とするシトラール又はシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シトラール又はシトラールを含有する製品に広く適用することができるシトラールの劣化臭生成抑制剤並びその生成抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シトラールはレモン様の特徴的な香りを有する重要な成分であるが、加熱もしくは経時的に減少しオフフレーバーが生成することが知られている(非特許文献1参照)。特に酸性条件下ではシトラール含有製品中のシトラールは、製造、流通、保存期間中の各段階で減少し、環化、水和、異性化等の反応によりその構造が変化し、その結果フレッシュ感の低下を引き起こす。さらにはシトラール由来の生成物の酸化反応により非常に強い劣化臭原因物質であるp−メチルアセトフェノン及びp−クレゾールが生成することにより著しい製品の品質低下を招く。従来、シトラールから生成する種々の劣化臭原因物質に関して、その発生防止の目的でイソアスコルビン酸等の酸化防止剤の添加(非特許文献2参照)等様々な試みがなされたが、p−クレゾールおよびp−メチルアセトフェノンの生成抑制に関しては有効な方法は見出されていない。
【0003】
そこで加熱若しくは経時的に生成するシトラールの劣化臭、特にp−クレゾール及びp−メチルアセトフェノンの生成に対して強い生成抑制効果を有すると同時に、安全で安価なシトラールの劣化抑制剤もしくは劣化抑制方法が要望されてきた。
【非特許文献1】Peter Schieberle and Werner Grosch; J. Agric. Food Chem., 36, 797-800(1988)
【非特許文献2】Val E. Peacock and David W. Kuneman; J. Agric. Food Chem., 33, 330-335(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術における問題点に鑑み、シトラール又はシトラール含有製品の製造、流通、保存等の各段階で、加熱もしくは経時的に生成するシトラール由来の劣化臭原因物質(p−クレゾール及びp−メチルアセトフェノン)の生成を抑制でき、また安全性が高く、しかも最終製品本来の香味又は香気に影響を与えることのない劣化臭生成抑制剤並びに劣化臭生成抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、加熱によるシトラールの劣化臭生成について詳細に検討した結果、特定の植物又は半発酵茶葉、発酵茶葉の溶媒抽出物が、シトラール又はシトラール含有製品の非常に強い劣化臭原因物質であるp−クレゾール及びp−メチルアセトフェノンの生成抑制に顕著な効果があることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明はシトラール又はシトラール含有製品に、アシタバ、アボカド、オオバコ、半発酵茶葉、発酵茶葉、エビスグサおよびサンザシからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を含有することを特徴とするシトラール又はシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤である。
さらに溶媒が水、極性有機溶媒又はこれらの混合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の劣化臭生成抑制剤をシトラール又はシトラールを含有する製品に使用することにより、経時変化もしくは加熱によるシトラール由来の劣化臭生成を効果的に抑制することができる。よって、本発明の劣化臭生成抑制剤の使用により、シトラール含有製品中の製造、流通、保存期間中の各段階で徐々に進行する劣化臭の生成を効率的に抑制し、フレッシュ感を維持することにより、安価かつ長期間安定に製品の品質を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(1)原材料
本発明に使用する植物は、下記に列挙した群から選ばれる少なくとも1種であり、これらは単独で又は併せて使用することができる。
アシタバ(学名:Angelica keiskei(Miq.)Koidz.)
アボカド(学名:Persea Americana)
オオバコ(学名:Plantago asiatica L.)
エビスグサ(学名:Cassia obtusifolia L. 又は C. tora L)
サンザシ(学名:Crataegus cuneata Sieb. et Zucc.)
上記の植物については、根、茎(枝幹)、葉、果実を原材料として後述の抽出処理に付される。アシタバについては茎又は葉、アボカドは果皮、サンザシは果実、エビスグサは種子、オオバコは種子又は葉を使用することが好ましい。
半発酵茶葉、発酵茶葉はいずれも茶(Camellia sinensis var. sinensis又はCamellia sinensis var. assamica)の生葉からつくられ、発酵度の違いにより半発酵茶と発酵茶に分類される。半発酵茶は茶の生葉を萎凋・撹拌する際に、生葉のカテキン類などを自らの酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)で30〜70%発酵(酸化)させてつくられる。発酵茶は生葉を萎凋・揉捻後、自らの酸化酵素で完全に発酵させてつくられる。半発酵茶の例としてウーロン茶、包種茶、発酵茶の例として紅茶、紅だん茶が挙げられるが、半発酵茶葉としてはウーロン茶葉、発酵茶葉としては紅茶葉を用いることが好ましい。
【0009】
(2)抽出処理
(ア)溶媒
抽出処理に使用する溶媒は、水又は極性有機溶媒であり、有機溶媒は含水物であっても良い。
極性有機溶媒としては、アルコール、アセトン、酢酸エチル等が上げられる。中でも人体への安全性と取扱性の観点から水またはエタノール、プロパノール、ブタノールのような炭素数2〜4の脂肪族アルコールが望ましい。特に水又はエタノール又はこれらの混合物が望ましい。
抽出に用いる溶媒の量は任意に選択できるが、一般には上記原材料1重量部に対し溶媒量2〜100重量部を使用する。
なお、抽出の前処理としてヘキサン等の非極性有機溶媒であらかじめ脱脂処理をし、後の抽出処理時に余分な脂質が抽出されるのを防止することもできる。またこの脱脂処理で結果的に脱臭等の精製ができる場合がある。また脱臭の目的で抽出前に水蒸気蒸留処理を施してもよい。
【0010】
(イ)抽出処理方法
抽出処理方法としては、溶媒の種類、量等により種々の方法を採用することができる。例えば前記各種天然物を粉砕したものを溶媒中に入れ、浸漬法又は加熱還流法で抽出することができる。なお浸漬法による場合は加熱条件下、室温又は冷却条件下のいずれであってもよい。
ついで、溶媒に不溶な固形物を除去して抽出液を得るが、固形物除去方法としては遠心分離、濾過、圧搾等の各種の固液分離手段を用いることができる。
得られた抽出液はそのままでもシトラール劣化臭生成抑制剤として使用できるが、例えば水、エタノール、グリセリン、トリエチルシトレート、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等の液体希釈剤で適宜希釈して使用してもよい。またはデキストリン、シュークロース、ペクチン、キチン等を加えることもできる。これらをさらに濃縮してペースト状の抽出エキスとしても、また凍結乾燥又は加熱乾燥などの処理を行い粉末として使用してもよい。
また超臨界抽出による抽出、分画、または脱臭処理したものも使用可能である。
【0011】
(ウ)精製
上記方法で得られた抽出物は、そのままシトラール含有製品に配合することができるが、さらに、脱色、脱臭等の精製処理をすることができる。精製処理には活性炭や多孔性のスチレン-ジビニルベンゼン共重合体からなる合成樹脂吸着剤などが使用できる。精製用の合成樹脂吸着剤としては例えば三菱化学株式会社製「ダイヤイオンHP−20(商品名)」やオルガノ株式会社製「アンバーライトXAD−2(商品名)」などが使用できる。
【0012】
(3)劣化臭生成抑制剤の調製
劣化臭生成抑制剤は、上記のとおり得られた抽出物を原材料として例えば以下のように調製される。
一般的には各種成分を組み合わせて、例えば水、アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の(混合)溶剤に適当な濃度で溶解させて(具体的には、水/エタノール、水/エタノール/グリセリン、水/グリセリン等の混合溶剤)液剤とする。また、各種成分の溶液に賦形剤(デキストリン等)を添加し噴霧乾燥によりパウダー状にすることも可能であり、用途に応じて種々の剤形を採用することができる。
【0013】
(4)用法
本発明の劣化臭生成抑制剤又は劣化臭生成抑制方法を適用し得る製品としては特に限定はなく、シトラス系香料の他、食品では店頭陳列される場合が多い炭酸飲料、果汁、果汁飲料、乳性飲料、茶飲料等のシトラス系飲料、シトラール含有のヨーグルト、ゼリー、アイスクリーム等の冷菓、キャンディー、水飴、ガム等の菓子等、食品素材、シトラス系香料等の食品添加物、各種シトラス風味のドレッシング等が挙げられる。食品以外ではシトラールを含有する香水、化粧品、洗口剤、歯磨、洗剤、石鹸、シャンプー、リンス、入浴剤、芳香剤等の香粧品が挙げられる。
【0014】
本発明の劣化臭生成抑制剤はシトラール含有製品の加工段階で適宜添加することができる。添加量については、使用する劣化臭生成抑制剤の成分の純度、あるいは添加対象の種類により異なるが、一般的に1〜500ppmの添加量が適当である。対象製品が食品の場合には、本来の香味にほとんど影響を及ぼさないという観点からは1〜200ppm、特に1〜100ppmが好ましい。
また劣化臭生成抑制剤を2種類以上併用する場合の混合割合は、特に限定されるものではない。混合した抑制剤の添加量については、使用する抑制剤の成分の純度、あるいは添加対象の製品の種類により異なるが、1〜500ppmが適当であり、特に1〜100ppmの範囲が好ましい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各天然物の抽出例を以下のとおり示す。
【0016】
〔抽出例1〕
乾燥したアシタバの葉100gに、50重量%エタノール水溶液1000gを加え1時間、加熱還流して抽出した。不溶物を濾過により除去した後、濾液を10gの活性炭にて脱色した。濾過により活性炭を除去後、濾液を150gまで減圧で濃縮した。
この濃縮液50gを多孔性合成吸着剤(ダイヤイオンHP−20)100mlに吸着させた。水400mlを用いて洗浄後、50重量%エタノール水溶液400mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮後、凍結乾燥し茶褐色の粉末5.7g(以下「アシタバ抽出物」と呼ぶ)を得た。物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図1に示すとおりである( 測定濃度:10ppm、希釈溶剤:50重量%エタノール水溶液)。
λmax:286nm
b) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノール水溶液に易溶、エタノールに不溶。
【0017】
〔抽出例2〕
乾燥したアボカド果皮50gを粉砕し、50重量%エタノール水溶液500gを加え1時間還流して抽出した。
不溶物を濾過により除去した後、濾液を濃縮、凍結乾燥し赤褐色の粉末(以下「アボカド抽出物」と呼ぶ)11.2g得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図2に示すとおりである( 測定濃度:10ppm、希釈溶剤:50重量%エタノール水溶液)。
λmax:280nm、201nm
b) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノール水溶液に易溶、エタノールに不溶。
【0018】
〔抽出例3〕
乾燥したオオバコ種子100gを粉砕し、2kgの25重量%エタノール水溶液に入れ、1時間、加熱還流して抽出した。不溶物を濾過後、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮液を凍結乾燥し、暗褐色粉末5.9g(以下「オオバコ抽出物」と呼ぶ)を得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図3に示すとおりである( 測定濃度:10ppm、希釈溶剤:25重量%エタノール水溶液)。
λmax:330nm、285nm
b) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノール水溶液に易溶、エタノールに不溶。
【0019】
〔抽出例4〕
紅茶葉50gを、95重量%エタノール水溶液1kg中に入れ、1時間、加熱還流して抽出した。不溶物を濾過により除去した後、濾液に活性炭5gを添加し室温で1時間撹拌した。活性炭を濾過により除去後、減圧濃縮した。
続いて濃縮物を凍結乾燥し茶褐色の粉末10.1g(以下「紅茶抽出物」と呼ぶ)を得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図4に示すとおりである( 測定濃度:10ppm、希釈溶剤:95重量%エタノール水溶液)。
λmax:273nm、207nm
b) 溶解性:水に不溶、50重量%エタノール水溶液に可溶、エタノールに易溶
【0020】
〔抽出例5〕
ウーロン茶葉100gを、50重量%エタノール水溶液2kg中に入れ、12時間、室温で静置抽出した。不溶物を濾過により除去した後、減圧濃縮し、続いて濃縮物を凍結乾燥して茶褐色の粉末25g(以下「ウーロン茶抽出物」と呼ぶ)を得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図5に示すとおりである( 測定濃度:10ppm、希釈溶剤:50重量%エタノール水溶液)。
λmax:274nm、205nm
b) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノール水溶液に易溶、エタノールに不溶
【0021】
〔抽出例6〕
乾燥したエビスグサの種子50gを粉砕し、50重量%エタノール水溶液1000gで2時間加熱還流し、不溶物を濾過した。濾液を10gの活性炭を添加し室温で1時間撹拌した。活性炭を濾過により除去後、濾液を100gまで減圧下で濃縮した。
この濃縮液100gを多孔性合成吸着剤(ダイヤイオンHP−20)100mlに吸着させた。水400mlを用いて洗浄後、50%重量エタノール水溶液400mlで溶出した。溶出液を減圧濃縮後、凍結乾燥して褐色の粉末2.0g(以下「エビスグサ抽出物」と呼ぶ)を得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図6に示すとおりである( 測定濃度:10ppm、希釈溶剤:50重量%エタノール水溶液)。
λmax:277nm、279nm、224nm
b) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノール水溶液に易溶、エタノールに不溶。
【0022】
〔抽出例7〕
乾燥したサンザシ果実50gを粉砕し、50重量%エタノール水溶液250g中に入れ、1時間、加熱還流して抽出した。不溶物を濾過により除去した後、減圧濃縮し、続いて濃縮物を凍結乾燥して茶褐色の粉末5g(以下「サンザシ抽出物」と呼ぶ)を得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図7に示すとおりである( 測定濃度:10ppm、希釈溶剤:50重量%エタノール水溶液)。
λmax:280nm
b) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノール水溶液に易溶、エタノールに不溶
【0023】
試験例および実施例において単品試薬として以下のものを使用した。
1)L−アスコルビン酸:
ナカライテスク(株)製のL(+)−アスコルビン酸を使用した。
2)ルチン:
ナカライテスク(株)製のルチンを使用した。
3)クロロゲン酸:
和光純薬(株)製のクロロゲン酸を使用した。
【0024】
上記劣化臭生成抑制剤をレモンモデル飲料に添加し、p−クレゾール、p−メチルアセトフェノンの生成抑制効果を評価した。
〔試験例1〕
1/10Mクエン酸−1/5Mリン酸水素二ナトリウムで調整したpH3.0の緩衝溶液に、蔗糖を5重量%、シトラールを10ppmとなるように添加し酸性シトラール溶液を調製した。この溶液に各種劣化臭生成抑制剤及び比較例として強い抗酸化効果を有するL−アスコルビン酸、ルチン、クロロゲン酸を添加し(L−アスコルビン酸は1重量%/水溶液として、それら以外は1重量%/50重量%エタノール水溶液として添加した)、100ml容量のガラスバイアル(ポリテトラフルオロエチレン製キャップ付き)に各100g詰めた。それぞれのバイアルを恒温槽中(50℃)にて7日間保管した。各酸性シトラール溶液をジクロロメタンで抽出後、ガスクロマトグラフィーにてp−クレゾール及びp−メチルアセトフェノンの生成量を測定した。表1にp−クレゾール、p−メチルアセトフェノンの生成量を無添加50℃、7日間保管品でのp−クレゾール、p−メチルアセトフェノンの生成量を100とした場合の相対値で表した。
【0025】
【表1】

【0026】
〔試験例2〕 レモン風味飲料
砂糖50g、クエン酸1g、シトラールを含有するレモン香料2g及び各種劣化臭生成抑制剤の1重量%/50重量%エターノール水溶液を表2の濃度になるよう適量添加し、精製水で全量を1000gに調整した。同様に、比較例として劣化臭生成抑制剤に代えて酸化防止剤(L−アスコルビン酸、ルチン、クロロゲン酸)の1重量%/50重量%エターノール水溶液各6gを添加した溶液を調製した。この溶液を70℃にて10分間殺菌後、缶につめ、レモン風味飲料を作成し、50℃にて7日間、恒温槽中で保管した。習熟したパネル10名を選んで官能評価を行った。対照レモン風味飲料として劣化臭生成抑制剤及び酸化防止剤無添加の冷蔵保管品(評価点:0)と、劣化臭生成抑制剤および酸化防止剤無添加の50℃、7日間保管品(評価点:4)を使用し、各レモン風味飲料の香味の劣化度合いを相対評価した。その結果は表2のとおりである。
なお、表2中の評価の点数は以下の基準で採点した各パネルの平均点である。
(採点基準)
異味、異臭*を非常に強く感じる:4点
異味、異臭*を強く感じる :3点
異味、異臭*を感じる :2点
異味、異臭*を若干感じる :1点
異味、異臭*を感じない :0点
* p−クレゾール様(薬品臭)、p−メチルアセトフェノン様(桂皮様)の異臭
【0027】
【表2】

【0028】
表2から明らかなように、アシタバ、アボカド、オオバコ、紅茶、ウーロン茶、エビスグサ、サンザシ各々の抽出物からなる劣化臭生成抑制剤をレモン風味飲料に添加することにより、p−クレゾール様及びp−メチルアセトフェノン様の劣化臭の生成を強く抑制した。一方、ルチン、クロロゲン酸、L−アスコルビン酸を添加してもp−クレゾール様及びp−メチルアセトフェノン様の劣化臭生成抑制効果はほとんど認められなかった。
【0029】
〔試験例3〕 弱酸性リンス用モデルベース(pH 2.95)
下記の処方により弱酸性リンス用モデルベースを作成した。
メチルパラベン 0.1g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.3g
95%エタノール 1.0g
クエン酸 2.0g
クエン酸ソーダ 0.9g
精製水 96.6g
【0030】
上記モデルベース100gにレモン香料0.5g及び各種劣化臭生成抑制剤の1重量%/50重量%エタノール水溶液を0.3g添加して弱酸性リンス用モデルベースを作成し、40℃にて14日間、恒温槽中で保管した。同様に比較例の酸化防止剤としてルチン、クロロゲン酸、L−アスコルビン酸を表3に示す濃度添加して弱酸性リンス用モデルベースを作成し、40℃にて14日間、恒温槽中で保管し弱酸性リンス用モデルベースを作成した。習熟したパネル10名を選んで官能評価を行った。対照として劣化臭生成抑制剤及び酸化防止剤無添加の香料入りモデルベース冷蔵保管品(評価点:0)と、劣化臭生成抑制剤及び酸化防止剤無添加の香料入り40℃、14日間保管品(評価点:4)を使用し、各種劣化臭生成抑制剤及び酸化防止剤を添加した香料入りモデルベースの劣化度合いを相対評価した。その結果は表3のとおりである。
なお、表3中の評価の点数は以下の基準で採点した各パネルの平均点である。
(採点基準)
異臭*を非常に強く感じる:4点
異臭*を強く感じる :3点
異臭*を感じる :2点
異臭*を若干感じる :1点
異臭*を感じない :0点
* p−クレゾール様(薬品臭)およびp−メチルアセトフェノン様(桂皮様)の異臭
【0031】
【表3】

【0032】
表3から明らかなように、アシタバ、アボカド、オオバコ、紅茶、ウーロン茶、エビスグサおよびサンザシ各々の抽出物からなる劣化臭生成抑制剤を弱酸性リンス用モデルベースに添加することにより、p−クレゾール様及びp−メチルアセトフェノン様の劣化臭の生成を強く抑制した。一方、強い酸化防止剤であるルチン、クロロゲン酸、L−アスコルビン酸を添加してもp−クレゾール様及びp−メチルアセトフェノン様の劣化臭生成抑制効果はほとんど認められなかった。
【0033】
〔実施例1〕アシタバ抽出物の実施例(殺菌乳酸菌飲料)
発酵乳原液(全固形分54%、無脂乳固形分4%)20gに蒸留水を加えて合計100gとなるように希釈した。レモン香料0.1g及びアシタバ抽出物の1重量%/50重量%エタノール水溶液を0.3g添加し、ガラス容器に充填後、殺菌(70℃、10分間)し、殺菌乳酸菌飲料を完成した。
【0034】
〔実施例2〕アボカド抽出物、サンザシ抽出物+オオバコ抽出物(重量比1:1混合物)の実施例(ヨーグルト飲料)
牛乳94g、脱脂粉乳6gを混合後、殺菌(90〜95℃、5分間)した。48℃に冷却した後、スターターを接種した。これを40℃、4時間発酵させた。冷却後、5℃にて保存しヨーグルトベースとした。一方、糖液は上白糖20g、ペクチン1g、水79gを混合後、90〜95℃で5分間過熱し、ホットパック充填したものを使用した。上記ヨーグルトベース60g、糖液40g、シトラス香料0.1g、1重量%アボカド抽出物/50重量%エタノール水溶液0.3gを混合し、ホモミキサー処理し完成した。同様にサンザシ抽出物+オオバコ抽出物の重量比1:1混合物についても、混合物としての濃度が1重量%となるように50重量%エタノール水溶液に溶解し、この溶液を上記ヨーグルトベースに0.3g添加してヨーグルト飲料を完成した。
【0035】
〔実施例3〕サンザシ抽出物、エビスグサ抽出物+ウーロン茶抽出物(重量比2:1混合物)の実施例(洗口剤)
以下の処方により洗口剤を作成した。
エタノール 15.00g
グリセリン 10.00g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2.00g
サッカリンナトリウム 0.15g
安息香酸ナトリウム 0.05g
香料(シトラール含有品) 0.30g
リン酸二水素ナトリウム 0.10g
着色剤 0.20g
サンザシ抽出物の1重量%/50重量%エタノール水溶液 0.05g
精製水 72.10g
サンザシ抽出物の場合と同様に、エビスグサ抽出物+ウーロン茶抽出物(重量比2:1混合物)を同濃度添加し洗口剤を作成した。
【0036】
〔実施例4〕オオバコ抽出物、エビスグサ抽出物+紅茶抽出物(重量比1:2混合物)の実施例(化粧水)
以下の処方により化粧水を調製した。
1,3−ブチレングリコール 60.0g
グリセリン 40.0g
オレイルアルコール 1.0g
POE(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 5.0g
POE(15)ラウリルアルコールエーテル 5.0g
95%エタノール 100.0g
香料(シトラール含有品) 2.0g
メチルパラベン 1.0g
クチナシ黄色素 0.1g
オオバコ抽出物の1重量%/50重量%エタノール水溶液 4.0g
精製水 781.9g
オオバコ抽出物の場合と同様に、エビスグサ抽出物+紅茶抽出物(重量比1:2混合物)を同濃度添加し化粧水を作成した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】抽出例1におけるアシタバ抽出物の紫外線吸収スペクトル図
【図2】抽出例2におけるアボカド抽出物の紫外線吸収スペクトル図
【図3】抽出例3におけるオオバコ抽出物の紫外線吸収スペクトル図
【図4】抽出例4における紅茶抽出物の紫外線吸収スペクトル図
【図5】抽出例5におけるウーロン茶抽出物の紫外線吸収スペクトル図
【図6】抽出例6におけるエビスグサ抽出物の紫外線吸収スペクトル図
【図7】抽出例7におけるサンザシ抽出物の紫外線吸収スペクトル図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシタバ、アボカド、オオバコ、半発酵茶葉、エビスグサおよびサンザシからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒抽出物を含有することを特徴とするシトラール又はシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤。
【請求項2】
前記溶媒抽出物が、水、極性有機溶媒またはこれらの混合物で抽出して得られるものである請求項1記載のシトラール又はシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤。
【請求項3】
劣化臭がp−クレゾール及びp−メチルアセトフェノンによる劣化臭である請求項1又は2記載のシトラール又はシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤。
【請求項4】
シトラール含有製品がシトラス系香料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤。
【請求項5】
シトラール含有製品がシトラス系飲料又はシトラス系菓子類であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤。
【請求項6】
シトラール含有製品が香粧品であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のシトラール含有製品の劣化臭生成抑制剤。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの項に記載の劣化臭生成抑制剤を1〜500ppm添加することを特徴とするシトラール又はシトラール含有製品の劣化臭生成抑制方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかの項に記載の劣化臭生成抑制剤が1〜500ppm添加されてなるシトラール又はシトラール含有製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−280539(P2008−280539A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154884(P2008−154884)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【分割の表示】特願2002−173613(P2002−173613)の分割
【原出願日】平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】